説明

車載用ナビゲーション装置及び車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法

【課題】車が振動した場合でも、表示部の手書き入力エリアから手書き文字がはみ出さないように手書き入力エリアに文字を書き込むことができる「車載用ナビゲーション装置及び車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法」を提供すること。
【解決手段】車載用ナビゲーション装置は、車の振動量及び振動方向を計測する振動計測手段4と、道路地図の表示エリア、手書き入力エリア、及び、手書き入力エリアから入力された手書き文字に基づき抽出された1つ以上の候補文字を表示する候補文字表示エリアを表示画面に表示する表示部7と、振動量及び振動方向に応じて手書き入力エリアを拡大し、或いは手書き入力エリアの位置を移動させる信号を生成する手書き入力エリア拡大・移動信号生成部24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネル(表示部)の手書き入力エリアに目的地、目的地に至るまでに通る道路名又は経由地などを手書き入力する車載用ナビゲーション装置及び車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的な車載用ナビゲーション装置では、地図データ上での自車位置、及び、自車が目的地に行き着くための誘導経路が表示パネルに表示される。
【0003】
これらの機能を行うため、車載用ナビゲーション装置では、一般に、道路の分岐点をノード、また、ノードを連結する道路を道路リンクと定義し、ノード及び道路リンクの集合体を地図データとして記憶している。
【0004】
車載用ナビゲーション装置は、運転者等に、手書き入力が可能な表示パネルから目的地、及び目的地までに経由する道路名や経由地を入力させ、上述の地図データに基づいて誘導経路を作成する。そして、入力した道路名や経由地を含む地図を表示して、目的地への誘導が行われる。
【0005】
なお、一般的な手書き入力が可能な表示パネルは、次の先行技術文献に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−223430号公報
【特許文献2】特開平5−143770号公報
【特許文献3】特開平6−266901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、表示パネルに手書きで文字を入力する場合、車が停車しているときには、手書き入力エリアからはみ出さないように文字を書き込めるが、車が動いているときには、車が左右或いは上下に振動することがあり、そのようなときには、手書き入力エリアから手書き文字の一部がはみ出してしまう。これでは、手書き文字が正確に認識されないことになる。また、入力を何回も繰り返すことになり、迅速に設定を行えない。
【0008】
これを防止するため、当初から手書き入力エリアを広く設定することが考えられるが、その場合、表示パネル上の地図や候補文字の表示が手書き入力エリアに隠れてしまい、誘導経路の把握や候補文字の選択ができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑み創作されたもので、車が振動した場合でも、表示部の手書き入力エリアから手書き文字が極力はみ出さないように手書き入力エリアに文字を書き込むことができる車載用ナビゲーション装置及び車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の基本形態によれば、車の振動量及び振動方向を計測する振動計測手段と、道路地図の表示エリア、手書き入力エリア、及び、該手書き入力エリアから入力された手書き文字に基づき抽出された1つ以上の候補文字を表示する候補文字表示エリアを表示画面に表示する表示部と、前記振動量及び前記振動方向に応じて前記手書き入力エリアを拡大し、或いは前記手書き入力エリアの位置を移動させる信号を生成する手書き入力エリア拡大・移動信号生成部とを有することを特徴とする車載用ナビゲーション装置が提供される。
【0011】
この形態に係る車載用ナビゲーション装置においては、基準振動量を記憶する記憶部と、前記計測された振動量を前記基準振動量と比較する振動量比較部とを有し、前記手書き入力エリア拡大・移動信号生成部は、前記振動量が前記基準振動量を超えたときに、前記手書き入力エリアを拡大し、或いは前記手書き入力エリアの位置を移動させる信号を生成するようにしてもよく、複数の基準振動量を記憶する記憶部と、前記計測された振動量を前記複数の基準振動量と比較する振動量比較部とを有し、前記手書き入力エリア拡大・移動信号生成部は、前記振動量がいずれかの前記基準振動量を超えたときに、該基準振動量に応じて前記手書き入力エリアを拡大する幅、又は前記手書き入力エリアの位置を移動させる距離を設定する信号を生成するようにしてもよい。
【0012】
また、前記手書き文字に対応する1つ以上の候補文字を抽出し、該抽出した候補文字信号を前記候補文字表示エリアに出力する候補文字抽出部を有するようにしてもよく、前記拡大した前記手書き入力エリアを拡大前の大きさに縮小し、或いは移動させた前記手書き入力エリアを移動前の位置に復帰させる手書き入力エリア縮小・復帰信号生成部を有するようにしてもよい。
【0013】
本発明の他の形態によれば、道路地図の表示エリア、手書き入力アリア、及び、該手書き入力エリアから入力された手書き文字に基づき抽出された1つ以上の候補文字を表示する候補文字表示エリアを表示画面に表示する表示部を備えた車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法であって、車の振動量及び振動方向を計測し、前記振動量及び前記振動方向に応じて前記手書き入力エリアを拡大し、又は前記手書き入力エリアの位置を移動させて、前記手書き入力エリアに手書き文字を書き込むことを特徴とする車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法が提供される。
【0014】
また、車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法においては、前記車の進行方向に対して横方向の振動及び縦方向の振動が計測されたとき、前記横方向の振動量に応じて前記横方向に前記手書き入力エリアを拡大するとともに、前記縦方向の振動量に応じて前記縦方向にも前記手書き入力エリアを拡大するようにしてもよい。
また、前記振動量が予め設定された基準振動量を超えたときに、前記手書き入力エリアを拡大し、或いは前記手書き入力エリアの位置を移動させるようにしてもよく、前記基準振動量は複数設定され、前記振動量がいずれかの前記基準振動量を超えたときに、該基準振動量に応じて前記手書き入力エリアを拡大する幅、又は前記手書き入力エリアの位置を移動させる距離を設定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車載用ナビゲーション装置及び車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法によれば、表示部の手書き入力エリアに手書きで目的地、及び目的地までに経由する道路名や経由地等を入力する際に、車が振動したとき、振動量及び振動方向に応じて手書き入力エリアを拡大し、或いは移動させている。これにより、手書き文字が入力エリアからはみ出さないようにし、車載用ナビゲーション装置に手書き文字情報を正確に入力し、目的地などを迅速に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の車載用ナビゲーション装置において手書き入力処理を行う主要な構成部分の一例を示すブロック図である。
【図3】図1の車載用ナビゲーション装置において行う手書き入力処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3の手書き入力処理における入力エリアの拡大又は移動処理の一例を示す表である。
【図5】図3の手書き入力処理における入力エリアの拡大処理に係る表示画面の一例を示す図である。
【図6】一定の大きさの手書き入力エリアに対して行った手書き入力処理に係る表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0018】
(車載用ナビゲーション装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図中、1は、DVD−ROMドライブであり、1aは地図データその他の案内データが記憶されている記憶媒体である。本実施形態では、このようなデータを記憶する記憶媒体としてDVD−ROM1aを使用しているが、ハードディスク又はその他の記憶媒体を使用してもよい。ここに格納されている地図は、1/12500、1/25000、1/50000、1/100000等の各縮尺レベルに応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られており、この地図に含まれる道路、建築物、施設その他の各種物件は、経度及び緯度で表現された点(ノード)の座標集合として記憶されている。地図データは、(1)道路リンクデータ、交差点データ、ノードデータ等からなる道路レイヤ、(2)地図画像上に道路、建築物、公園、河川等を表示するための背景レイヤ、(3)市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名などを指示する文字や地図記号等を表示するための文字・記号レイヤなどから構成されている。
【0020】
道路レイヤにおいて、道路リンクデータは各道路の属性情報を供給するものであり、道路を構成するリンク毎に道路の種別(国道、高速道路、都道府県道、その他の道路)、道路ネットワークの階層化レベル、リンクを構成するノードの数、道路番号(道路名称)、各ノードを接続するリンクの幅などのデータで構成される。交差点データは、交差点に結合されたリンク上のノードのうち交差点に最も近いノードのセットである。ノードデータは、道路を構成するすべてのノードのリストであり、各ノードに対する位置情報やノードが交差点か交差点でないかを識別する情報等で構成される。
【0021】
2は、後述するナビゲーション装置本体10を操作するための操作部である。例えば、リモコン送信機が含まれており、ユーザは手元のリモコン送信機でナビゲーション装置本体10を操作することもできる。
【0022】
3は複数のGPS(Global Positioning System)衛星から送られてくるGPS信号を受信して自車の現在位置の経度、緯度、PDOP(Position DOP)値及びHDOP(Horizontal DOP)値等のGPSデータを生成して出力するGPS受信機を示す。
【0023】
4は自立航法センサを示す。この自立航法センサ4は、自車の進行方向を計測するためのジャイロ等の角度センサ又は加速度センサと、走行距離を計測するため、一定の走行距離毎にパルスを発生する距離センサとにより構成されている。ジャイロ等の角度センサ又は加速度センサは、自車の進行方向を計測するほかに、車が振動したときに後述する手書き入力エリアを拡大し又は移動させるため、車の左向き、右向き、上向き、又は下向きの振動方向及びその振動量を計測する。
【0024】
5は各種のサービスセンタと通信するための車載電話機等の通信機、6は電波ビーコン又は光ビーコンから送られてくるVICS(道路交通情報通信システム)情報を受信するVICS受信機を示す。これらのビーコンは路側に設置され、警察署、道路管理者及び統合センターに接続され、周辺の渋滞情報等を提供する。
【0025】
7は液晶表示パネル等の表示部であり、ナビゲーション装置本体10は、この表示部7に車両の現在位置の周囲の地図を表示したり、出発地から目的地までの誘導経路や車両マーク及びその他の案内情報を表示する。
【0026】
また、表示部7には、その画面上にタッチパネルが設けられ、表示画面の表示内容と対になった各種のボタンが構成される。また、タッチパネルはこれらの各種のボタンで示されるメニュー等を選択するための入力装置となり、ユーザが指等で触れた接触位置に応じた信号を出力する。さらに、タッチパネルには、図6(a)に示すように、目的地、及び目的地までに経由する道路名や経由地等をペンタブレットなどで手書き入力可能な手書き入力エリアが、候補文字表示エリアとともに表示される。候補文字表示エリアでは手書き文字に基づき抽出された1つ以上の候補文字が表示され、これによって、手書き文字を入力しつつ、候補文字表示エリアから手書き文字に対応する正確な文字を選択することができる。道路地図の表示エリア、手書き入力エリア及び候補文字表示エリアは、表示部7の表示画面に同時に表示可能である。
【0027】
8は音声によりユーザに案内情報を提供するためのスピーカーである。
【0028】
ナビゲーション装置本体10は以下のものから構成されている。
【0029】
11はDVD−ROMドライブ1を介してDVD−ROM1aから読み出された地図データを一時的に格納するバッファメモリである。
【0030】
12はマイクロコンピュータ等により構成される制御部を示す。制御部12は、ナビゲーション用のプログラムを内蔵しており、このプログラムに従い、GPS受信機3から出力される信号や、自立航法センサ4から出力される信号に基づいて自車の現在位置を算出したり、表示させたい地図のデータをDVD−ROMドライブ1を介してDVD−ROM1aからバッファメモリ11に読み出したり、バッファメモリ11に読み出された地図データを用いて設定された探索条件で出発地(自車の現在位置)から目的地までの誘導経路を探索するなど、ナビゲーションに係る種々の処理を実行する。
【0031】
また、制御部12は、手書き入力情報を処理するプログラムを内蔵しており、図2に示すように、振動量比較部23と、手書き入力エリア拡大・移動信号生成部24と、手書き入力エリア縮小・復帰信号生成部25と、文字情報取得部26と、候補文字抽出部27とを介して、車の振動量及び振動方向に応じて手書き入力エリアを拡大し、又は移動させて手書き入力を行う処理を実行する。振動量比較部23では、計測された振動量を予め設定された基準振動量と比較する。基準振動量は、1つ又は異なる値で複数設定され、計測された振動量と対比することで、振動量に応じて手書き入力エリアを拡大する幅、又は手書き入力エリアを移動させる距離を設定する。手書き入力エリア拡大・移動信号生成部24では、表示部7に表示される手書き入力エリアを、計測された振動量及び振動方向に応じて左右及び上下の少なくともいずれかの方向に所定の幅拡大し、又は所定の距離移動させる信号を出力する。振動量に対応して拡大幅又は移動距離が決定され、振動方向に対応して拡大又は移動の方向が決定される。手書き入力エリア縮小・復帰信号生成部25では、拡大し又は移動させた手書き入力エリアを拡大又は移動前の状態に戻す信号を出力する。文字情報取得部26では、表示部7の手書き入力エリアから文字情報を取得する。候補文字抽出部27では、文字情報取得部から出力された文字情報を基に後述の文字情報記憶部を参照し、1以上の候補文字を抽出する。
【0032】
さらに、制御部12は、図2に示すように、表示制御部28を有し、表示制御部28は、ナビゲーションや手書き入力における各種処理に関係して必要となる表示を制御する。
【0033】
13はバッファメモリ11に読み出された地図データを用いて地図画像の描画処理を行う地図描画部であり、14は動作状況に応じて各種メニュー画面(操作画面)及び車両位置マーク、カーソル等の各種マークを生成する操作画面・マーク発生部である。
【0034】
15は制御部12で探索した誘導経路を記憶する誘導経路記憶部を示し、16は誘導経路描画部を示す。誘導経路記憶部15には、制御部12によって探索された誘導経路の全ノードが出発地から目的地まで記憶される。誘導経路描画部16は、地図を表示する際に、誘導経路記憶部15から誘導経路情報を読み出して、当該誘導経路を他の道路とは異なる表示態様(色を変える、線幅を太くするなど)で描画する機能を有している。
【0035】
17はハードディスク等で構成される記憶部を示し、図2に示すように、基準振動量記憶部21や文字情報記憶部22を有する。基準振動量記憶部21では、上述した基準振動量を記憶する。文字情報記憶部22では、文字の外形の特徴などに対応付けて手書き文字を認識するための情報を記憶する。
【0036】
18は音声出力部を示し、制御部12からの制御に基づいて音声信号(ナビゲーションに係る案内情報)をスピーカ8に出力する。19は画像合成部を示し、地図描画部13で描画された地図画像に、操作画面・マーク発生部14で生成された各種マークや操作画面、誘導経路描画部16で描画した誘導経路等を重ね合わせて表示部7に表示させる。
【0037】
このように構成された車載用ナビゲーション装置100においては、表示部7の手書き入力エリアに手書きで目的地などを入力する際に、自立航法センサ4を利用して車の振動量及び振動方向を計測し、制御部12により振動量及び振動方向に応じて表示部7の手書き入力エリアを拡大し、或いは移動させることができる。これにより、手書き文字が入力エリアから極力はみ出さないようにして、車載用ナビゲーション装置100に手書き文字情報を正確に入力し、かつ目的地などを迅速に設定することができる。
【0038】
例えば、手書き入力の際に、縦方向の振動があった場合、手書き入力エリアを拡大し、或いは移動させないと、図6(b)に示すように、手書き入力エリアから文字が大きくはみ出し、手書き文字情報を正確に入力できなくなる。このため、候補文字表示エリアには所望の候補文字が表示されないので、所望の候補文字が表示されるまで繰り返し手書き入力を続けなければならず、目的地などの設定が遅れてしまう。
【0039】
(車載用ナビゲーション装置における手書き入力方法)
次に、本発明の実施形態に係る、車載用ナビゲーション装置における手書き入力方法の一例について図3乃至図5を参照して説明する。
【0040】
図3は手書き入力処理について説明するフローチャートである。図4は、車の振動方向及び振動量に対する手書き入力エリアの拡大又は移動処理の一例を示す表である。図5(a)〜(c)は、入力エリアの拡大又は移動処理が行われたときの表示画面の一例を示す図である。
【0041】
なお、この実施形態では、複数の振動方向についてそれぞれ基準振動量は1つ設定され、計測された振動量が基準振動量を越えたとき、振動量の大きさにかかわらず、手書き入力エリアを振動方向に応じて所定の幅拡大し、又は、所定の距離移動させるものとする。また、「操作者」と明示された処理以外は、制御部12が行う処理である。
【0042】
この実施形態の手書き入力処理においては、図3に示すように、操作者により手書き入力を開始する信号が制御部12に入力された後、最初のステップS1で、手書き入力エリアを初期設定し、設定された大きさ、位置で手書き入力エリアを表示部7に表示させる。
【0043】
次のステップS2で、手書き入力中か否かを確認する。この実施形態では、複数の文字を入力するものとし、操作者が一文字を書き終えて終了信号を入力するまでを手書き入力中とし、操作者が一文字の入力の終了信号を入力してから、次の文字の入力の開始信号を入力するまでを手書き入力の中断中である、すなわち手書き入力中でないとする。
【0044】
次のステップS3で、手書き入力中であれば、自立航法センサ4により車の振動量及び振動方向を計測する。
【0045】
次いで、ステップS4で、振動量を基準振動量と比較し、振動量が基準振動量以下の場合、そのままの状態を維持し、操作者は手書き入力を続ける。この間に、繰り返し、振動量を計測し、基準振動量と比較する(S2→S3→S4→S2→・・)。
【0046】
一方、ステップS4で、振動量が基準振動量を越えた場合、ステップS5で、既に入力エリアを同じ振動方向に拡大し又は移動させているかどうかを確認する。既に入力エリアを拡大し又は移動させている場合、入力エリアをそのままの状態に維持し、操作者は手書き入力を続ける。この間に、繰り返し、振動量を計測し、基準振動量と比較する(S2→S3→S4→S2→・・)。
【0047】
一方、ステップS5で、同じ振動方向でまだ入力エリアを拡大し又は移動させていない場合、又は、前に計測された振動方向と異なる振動方向の場合、ステップS6で、対応する振動方向に入力エリアを拡大し、又は移動させる。この場合、右向き、左向き、上向き、下向きの揺れをそれぞれ異なる振動方向としてもよいし、左向きと右向きの揺れ同じ振動方向とし、上向きと下向きの揺れを同じ振動方向とし、かつ、左向き又は右向きの揺れと上向き又は下向きの揺れとを異なる振動方向としてもよい。
【0048】
図4の表に、振動方向と、振動量と、手書き入力エリアの拡大又は移動処理との関係を例示する。ここでは、右向き、左向き、上向き、下向きの揺れに対してそれぞれ基準振動量を1つ設定している。基準振動量は、振動量が電圧で計測されるため、右向き及び上向きの揺れに対して例えば+1Vに設定し、左向き及び下向きの揺れに対して例えば−1Vに設定している。「−」でも「+」でも、絶対値が大きくなるほど揺れが大きいことを示す。
【0049】
図4の表によれば、横方向の振動において、−1V(基準振動量)を負の大きい方に越える左向きの揺れに対して、入力エリアの右又は左の少なくともいずれかの側に入力エリアを所定の幅だけ拡大し、又は入力エリアの位置を所定の距離だけ移動させる。なお、加速度を伴う左向きの車の揺れに対しては、慣性により操作者が持つペンタブレットの先端は入力エリアに対して相対的に右側に移動するため、入力エリアを右側に拡大し又は移動させるとよい。あるいは、左向きの車の揺れに対しても入力エリアを左側に拡大してもよく、これにより、入力エリアが当初よりも広がるため入力エリア内に文字を書き易くなる。あるいは、振動は左右に揺れるものであり、左向きの車の揺れに対して予め入力エリアを左右両側に拡大しておくこともできる。以下、右、下、上向きの揺れについても同じことがいえる。
【0050】
また、+1V(基準振動量)を越える右向きの揺れに対しては、左又は右の少なくともいずれかの方向に入力エリアを所定の幅だけ拡大し、又は入力エリアの位置を所定の距離だけ移動させる。一方、−1V以上かつ+1V以下では、入力エリアを拡大も移動もさせない。
【0051】
縦方向の振動において、−1V(基準振動量)を負の大きい方に越える下向きの揺れに対して、上又は下の少なくともいずれかの側に入力エリアを所定の幅だけ拡大し、又は入力エリアの位置を所定の距離だけ移動させる。また、+1V(基準振動量)を越える上向きの揺れに対して、下又は上の少なくともいずれかの側に入力エリアを所定の幅だけ拡大し、又は入力エリアの位置を所定の距離だけ移動させる。一方、−1V以上かつ+1V以下では、入力エリアを拡大も移動もさせない。
【0052】
図4の表にしたがって手書き入力エリアを所定の幅だけ拡大した場合の表示画面を、図5(a)〜(c)に例示する。図5(a)では、横方向の振動(左右の振動のいずれか)に対して、入力エリアを左側に所定の幅だけ拡大し、図5(b)では、縦方向の振動(上下の振動のいずれか)に対して、入力エリアを上側に所定の幅だけ拡大している。また、図5(c)では、横方向の振動に対して、入力エリアを左側に所定の幅だけ拡大した後、前の横方向の振動と異なる縦方向の振動に対して入力エリアを上側に所定の幅だけ拡大している。
【0053】
ステップS6の後、図5(a)〜(c)に示すいずれかの状態で、操作者は入力エリアに手書き入力を続ける。この間に、繰り返し、振動量を計測し、基準振動量と比較する(S2→S3→S4→S2→・・)。
【0054】
その繰り返しの間に、手書き入力が一文字分終了したら、操作者は表示パネル面の終了ボタン(不図示)を押し、終了信号を制御部12に送信する。ステップS2で、手書き入力が一文字分終了した旨を確認したら、ステップS7で、現在入力エリアを拡大し又は移動させているかどうかを確認し、入力エリアを拡大し又は移動させている場合、候補文字表示エリアの候補文字が手書き入力部に隠れている恐れがあるため、ステップS8で、入力エリアを拡大前の大きさに縮小し、又は移動前の位置に復帰させる。次いで、ステップS9で、操作者は候補文字表示エリアの候補文字を選択する。一方、ステップS7で、入力エリアがこれまで拡大し又は移動させていない場合、入力エリアをそのままの状態に維持し、ステップS9で、操作者は候補文字を選択する。
【0055】
次に、ステップS10で、すべての文字が入力されたかどうかを確認し、すべての文字がまだ入力されていない場合、ステップS2で、操作者は新たな文字の入力を始める。
【0056】
一方、手書き入力がすべての文字について終了したら、操作者は表示パネル面の終了ボタン(図示しない)を押し、終了信号を制御部12に送信する。ステップS10で、手書き入力がすべての文字について終了した旨を確認したら、目的地、及び目的地までに経由する道路名や経由地等を車載用ナビゲーション装置100に設定する。
【0057】
なお、図3のステップS5によって、入力エリアを一度振動方向に拡大し或いは移動させたら、同じ振動方向で振動量が基準振動量を越えても一文字の入力が終了するまで同じ振動方向には入力エリアを拡大し或いは移動させないようにしているが、ステップS5を省略し、振動量が基準振動量を越えるたびに逐次対応する振動方向に入力エリアを拡大し或いは移動させてもよい。
【0058】
また、図4では、左、右、上、下の各振動方向に対してそれぞれ基準振動量を1つ設定し、振動量が基準振動量を越えた場合、振動量の大きさによらず入力エリアを所定の幅だけ拡大し、又は所定の距離だけ移動させているが、1つの振動方向に対して基準振動量を複数設定し、振動量が各基準振動量を越えたとき、基準振動量の大きさに対応して複数の幅のいずれかで入力エリアを拡大し、又は入力エリアの位置を複数の距離のいずれかで移動させることもできる。このとき、左向きと右向きの揺れ(上向きと下向きの揺れ)に対応する拡大幅が異なっており、かつ入力エリアの左右(上下)いずれか片側しか拡大できない場合、大きい方の拡大幅に設定するとよい。
【0059】
また、図4では、右左(上下)の揺れに対してそれぞれ基準振動量を+1V、−1Vに設定しているがこれに限られない。
【0060】
以上のように、本発明の実施の形態に係る車載用ナビゲーション装置における手書き入力処理によれば、手書きで目的地、及び目的地までに経由する道路名や経由地等を入力する際に、車が振動したとき、振動量及び振動方向に応じて表示部の手書き入力エリアを拡大し、或いは移動させる。これにより、手書き文字が入力エリアからはみ出さないようにし、車載用ナビゲーション装置に手書き文字情報を正確に入力し、目的地などを迅速に設定することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…DVDドライブ、
2…操作部、
3…GPS受信機、
4…自立航法センサ、
5…通信機、
6…VICS受信機、
7…表示部、
8…スピーカ、
10…車載用ナビゲーション装置本体、
11…バッファメモリ、
12…制御部、
13…地図描画部、
14…操作画面・マーク発生部、
15…誘導経路記憶部、
16…誘導経路描画部、
17…記憶部、
18…音声出力部、
19…画像合成部、
21…基準振動量記憶部、
22…文字情報記憶部、
23…振動量比較部、
24…手書き入力エリア拡大・移動信号生成部、
25…手書き入力エリア縮小・復帰信号生成部、
26…文字情報取得部、
27…候補文字抽出部、
28…表示制御部、
29…液晶表示パネル、
30…タッチパネル、
100…車載用ナビゲーション装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車の振動量及び振動方向を計測する振動計測手段と、
道路地図の表示エリア、手書き入力エリア、及び、該手書き入力エリアから入力された手書き文字に基づき抽出された1つ以上の候補文字を表示する候補文字表示エリアを表示画面に表示する表示部と、
前記振動量及び前記振動方向に応じて前記手書き入力エリアを拡大し、或いは前記手書き入力エリアの位置を移動させる信号を生成する手書き入力エリア拡大・移動信号生成部とを有することを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
基準振動量を記憶する記憶部と、前記計測された振動量を前記基準振動量と比較する振動量比較部とを有し、
前記手書き入力エリア拡大・移動信号生成部は、前記振動量が前記基準振動量を超えたときに、前記手書き入力エリアを拡大し、或いは前記手書き入力エリアの位置を移動させる信号を生成することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
複数の基準振動量を記憶する記憶部と、前記計測された振動量を前記複数の基準振動量と比較する振動量比較部とを有し、
前記手書き入力エリア拡大・移動信号生成部は、前記振動量がいずれかの前記基準振動量を超えたときに、該基準振動量に応じて前記手書き入力エリアを拡大する幅、又は前記手書き入力エリアの位置を移動させる距離を設定する信号を生成することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記手書き文字に対応する1つ以上の候補文字を抽出し、該抽出した候補文字信号を前記候補文字表示エリアに出力する候補文字抽出部を有することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記拡大した前記手書き入力エリアを拡大前の大きさに縮小し、或いは移動させた前記手書き入力エリアを移動前の位置に復帰させる手書き入力エリア縮小・復帰信号生成部を有することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
道路地図の表示エリア、手書き入力アリア、及び、該手書き入力エリアから入力された手書き文字に基づき抽出された1つ以上の候補文字を表示する候補文字表示エリアを表示画面に表示する表示部を備えた車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法であって、
車の振動量及び振動方向を計測し、
前記振動量及び前記振動方向に応じて前記手書き入力エリアを拡大し、又は前記手書き入力エリアの位置を移動させて、前記手書き入力エリアに手書き文字を書き込むことを特徴とする車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法。
【請求項7】
前記車の進行方向に対して横方向の振動及び縦方向の振動が計測されたとき、前記横方向の振動量に応じて前記横方向に前記手書き入力エリアを拡大するとともに、前記縦方向の振動量に応じて前記縦方向にも前記手書き入力エリアを拡大することを特徴とする請求項6記載の車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法。
【請求項8】
前記振動量が予め設定された基準振動量を超えたときに、前記手書き入力エリアを拡大し、或いは前記手書き入力エリアの位置を移動させることを特徴とする請求項6又は7のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法。
【請求項9】
前記基準振動量は複数設定され、前記振動量がいずれかの前記基準振動量を超えたときに、該基準振動量に応じて前記手書き入力エリアを拡大する幅、又は前記手書き入力エリアの位置を移動させる距離を設定することを特徴とする請求項8記載の車載用ナビゲーション装置の手書き入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−68706(P2012−68706A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210691(P2010−210691)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】