説明

車載用電子機器

【課題】過去の走行経路データを利用して目的地点を推定し、その地点の事件故発生率により予め警告を報知する。
【解決手段】出発地点、到着地点および通過したノードとリンクのデータなどの走行経路の情報を所定数記憶する経路情報DB16bと、実際に走行した経路の情報を抽出し、経路情報DBに記憶する経路抽出記憶手段15と、経路情報DB16bに記憶された経路の代表出発地点および代表目的地点を決定する代表決定手段17と、車両起動時の現在位置と経路情報DBに記憶された代表経路の代表出発地点とを比較して目的地点を推定する目的地点推定手段18と、事件多発エリアデータが記憶された事件多発エリア記憶手段19と、を有し、目的地推定手段18が推定した目的地点に基づいて、事件多発エリアデータを参照し、当該目的地点が位置するエリアの事件発生率が予め設定された所定値以上である場合、報知手段により警告を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電子機器に関するものであり、特に、車両の現在位置(出発地点)や出発時刻等と過去の走行経路データに基づき目的地点を推定し、当該推定目的地点が、事件多発エリア内にあるとき、ユーザーに対し注意を促す警告を行うようにした車載用電子機器に関するものである。
【0002】
なお、本出願において「事件」とは、車両自体の盗難、車両からの車載備品や積載貨物の盗難(いわゆる車上荒らし)、タイヤや塗装への傷付け等のイタズラ、豪雨時の冠水やガケ崩れ等の自然災害、その他車両に関連して発生するあらゆる不都合な事態を意味する。
【背景技術】
【0003】
従来、自動車等で道路を走行する場合に、目的地点に至るまで現在位置を求め、表示画面上に道路地図とともに現在位置を表示し、ユーザーが道に迷うことなく目的地点に到達できるように誘導する車載用のナビゲーション装置が知られている。
【0004】
そのようなナビゲーション装置においては、現在位置を測定するために、GPS(Global Positioning System)システムが利用されている。これは、地球上空を周回している複数の人工衛星からの電波を受信し、受信データを演算処理することによって現在位置を特定するものである。
【0005】
GPSによって特定された現在位置は、ナビゲーション装置の記憶手段等に記憶されている地図データと比較され、例えば現在位置から最も近い道路にマッチング処理を行い、この位置がマッチング処理された現在位置として表示画面に表示される。これにより、GPS測位に僅かな誤差があるような場合でも現在位置を道路上に修正し違和感のない表示を行うことが可能となる。
【0006】
さらに、ナビゲーション装置は、ユーザーによって指定された出発地点から目的地点までの経路探索を行って案内経路を表示画面に表示するとともに、案内経路に従って音声等により案内を行う機能も備えている。
【0007】
車両にナビゲーション装置が備えられている場合であっても、地理的に熟知したエリア内を走行する場合や日常的に繰り返し訪れる地点を目的地にして走行する場合にはナビゲーション機能(経路探索、経路案内)を利用せず、単に走行するエリアの地図を表示して車両の現在位置を確認するだけで車両を走行する場合も多い。ナビゲーション機能を利用することなく走行した経路の情報を学習(記憶)しておき、学習した経路(走行経路の履歴)の情報を後に利用するように構成された車載用のナビゲーション装置も提供されている。
【0008】
例えば、下記の特許文献1には、(特開2005−233647号公報)には、電源がONされた地点から次に電源がOFFされるまでに走行した道路を1区間分の走行道路(利用路)とし、その到着地点とともに記憶(学習)しておき、学習した利用路上を走行している時に、その経路上での渋滞や通行止めなどの交通事象の発生情報を受信した場合には、その報知を行うとともに、受信した交通情報から特定する道路(リンク)のコストを交通情報に応じて変更して走行経路の到着地点を仮の目的地として現在位置からの迂回路を探索し、迂回経路に車両を誘導するナビゲーション装置が開示されている。
【0009】
ところで、このようなナビゲーション装置および音楽プレーヤ、D■Dプレーヤ、アナ
ログ放送やデジタル放送に対応したテレビジョン受像機などの車載用電子機器は、ダッシュボードからの取外しが比較的容易であるため盗難の対象となりやすい。
【0010】
これらこの車載用電子機器が盗難にあった場合の対処方法として種々の提案がなされている。
【0011】
例えば、下記の特許文献2(特開2004−355241号公報)には車両用通信ECUおよびその盗難監視方法の発明が開示されている。
【0012】
この特許文献1に開示された技術は、車載用機器が無線機を通じて外部との間で通信を行う装置に関するものであり、車載用機器の車両への取り付け状態を検出するセンサーを設け、このセンサーによって盗難のような異常な取り外しを監視するようにしたものである。そして、センサーからの検出出力により無線機を通じて管理センターに盗難されたことを知らせるようになっている。同時に、当該無線機を使用不能にロックするようになっている。
【0013】
また、特許文献3(特許第3565125号公報)には、自車の進行方向の所定範囲内に事故多発区間がある場合に警告を行う事故多発区間警報発生装置が開示されている。
【0014】
この特許文献3に開示された技術は、過去に事故が多発している道路区間を、区間の両端および区間内にある交差点などの中間点を緯度、経度で表し、事故多発区間ごとに整理した事故多発区間情報として予め記憶しておき、自車の進行方向の所定範囲内に事故多発区間の両端および中間点のうち少なくとも2点が含まれているか否かを判定し、少なくとも2点が含まれていると判定されたときに事故多発区間への接近を知らせる警告を発するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−233647号公報(段落[0026]、段落[0034]〜段落[0036])
【特許文献2】特開2004−355241号公報(段落[0018]〜段落[0020]、段落[0029]〜段落[0037])
【特許文献3】特許第3565125号公報(段落[0012]、段落[0014]、段落[0016]〜段落[0025])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記特許文献2に開示された車載用電子機器においては、車載用電子機器の車両への取り付け状態を検出するセンサーを設け、センサーが盗難時の異常な取り外しを検出し、この検出出力を無線機を通じ通信で外部の管理センターへ知らせるものであり、車載用電子機器の盗難を発見するために車載用電子機器本体とは別途でセンサーを設けなければならずコストが高くなり、また外部の管理センターとの通信を行なわなくてはならないため、例えば通信障害が生じた場合などに盗難を発見することができなくなるという問題があった。
【0017】
また、上記特許文献3に開示された事故多発区間警報発生装置においては、自車の進行方向の所定範囲内に事故多発区間の両端および中間点のうち少なくとも2点が含まれているか否かを判定し、少なくとも2点が含まれていると判定されたとき事故多発区間への接近を知らせる警告を発するようになっている。しかし、盗難に関しては、運転中に自車の進行方向の所定範囲に盗難多発区間が存在したとしてもその区間を走行することには特別問題はない。盗難において一番注意しなければならないのは、車両を停車させ、運転者が車両から離れたときである。つまり、盗難に関しては車両で走行中ではなく車両を停車させた時点での警告が求められるのだが、引用文献3には自車の停車を判定する手段が設けられていないため盗難多発エリアにおいての警告を発することはできないという問題があった。
【0018】
本願発明者等は、上記の問題を解消すべく種々検討を重ねた結果、車載用電子機器に、車両の現在位置を検出する現在位置検出機能と、盗難多発エリアのデータと、車両の現在位置を判別するエリア判別機能と、車両の停車を検出する車両状態検出機能と、警告機能を設けることで、特別に外部との通信を必要とせずに、車両が盗難多発エリア内で停車したことを検出すると盗難注意を促す警告を発することができる車載用電子機器を発明し、特願2007−283500として出願した。
【0019】
しかしながら、実際の使用場面を想定すると、更に解決すべき課題が有る。即ち、ナビゲーション機能を利用するため目的地点が設定(特定)されなければ、目的地点が事件多発エリアに該当するかを特定することができないから警告を報知することもできず、ユーザーにとっては極めて面倒な操作を要求されることになる。
【0020】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、車両の起動時に、現在位置および/または出発時刻などと、過去の走行経路データを利用して目的地点を推定し、推定した目的地点の事件発生率が所定値以上であれば、推定した目的地点は、事件発生率が高いエリアであるから盗難等に注意する警告を報知できることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0021】
すなわち、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、車両の起動時に、現在位置および/または出発時刻に基づいて、過去の走行経路データを利用して目的地点を推定し、その地点の事件故発生率により予め警告を報知することができる車載用電子機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
現在位置を検出する現在位置検出手段と、前記現在位置検出手段により検出された現在位置に基づいて、実際に走行した経路の情報を抽出し、抽出した該経路の情報を経路情報DBに記憶する経路抽出記憶手段と、前記経路情報DBに記憶された経路の代表出発地点および代表目的地点を決定し、決定した該代表出発地点と代表目的地点を対応づけて前記経路情報DBに記憶する代表決定手段と、車両起動時の現在位置と前記経路情報DBに記憶された代表出発地点とを比較して、目的地点を推定する目的地点推定手段と、事件多発エリアデータが記憶された事件多発エリア記憶手段と、前記目的地推定手段が推定した前記目的地点に基づいて、前記事件多発エリアデータを参照し、当該目的地点が位置するエリアの事件発生率が予め設定された所定値以上である場合、報知手段を介して警告を報知する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、前記経路抽出記憶手段は、前記抽出した経路の出発地点及び目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内にある経路同士を類似経路として分類して前記経路情報DBに記憶し、前記代表決定手段は、分類された前記類似経路毎に代表出発地点および代表目的地点を決定することを特徴とする。
【0024】
また、前記実際に走行した経路の情報には、出発地点の情報と目的地点の情報、さらに出発時刻の情報が含まれており、前記経路抽出記憶手段は、該経路の情報に基づき類似経路の分類を行うことを特徴とする。
【0025】
また、前記代表決定手段は、前記類似経路に含まれる経路の出発地点または目的地点それぞれの中央値または最頻値を代表出発地点または代表目的地点とすることを特徴とする。
【0026】
また、前記目的地点推定手段は、前記現在位置と前記代表出発地点との距離が所定の範囲内である場合に、該代表出発地点に対応する前記代表目的地点を目的地点として推定することを特徴とする。
【0027】
また、前記代表決定手段は、前記類似経路に含まれる経路の出発時刻の中央値または最頻値を代表出発時刻とし、前記代表出発地点および代表目的地点に対応づけて前記経路情報DBに記憶し、前記目的地点推定手段は、現在時刻と前記代表出発時刻とを比較し、現在時刻が前記代表出発時刻を中心とする所定の時間内である場合に、該代表出発時刻に対応する前記代表目的地点を目的地点として推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本願の発明においては、目的地推定手段が推定した前記目的地点に基づいて、前記事件多発エリアデータを参照し、当該目的地点が位置するエリアの事件発生率が予め設定された所定値以上である場合、前記報知手段を介して警告を報知制御手段と、を備える。
【0029】
かかる構成によれば、車両起動時に、目的地点を推定し、当該推定した目的地点の属するエリアにおける事故発生率如何により予め警告を報知することが可能となる。
【0030】
また、経路抽出記憶手段は、前記抽出した経路の出発地点及び目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内にある経路同士を類似経路として分類して前記経路情報DBに記憶し、前記代表決定手段は、分類された前記類似経路毎に代表出発地点および代表目的地点を決定する。
【0031】
かかる構成によれは、類似(所定の距離範囲内)の出発地点、目的地点を有する走行経路をグループ分けして記憶することができるようになる。
【0032】
また、実際に走行した経路の情報には、出発地点の情報と目的地点の情報、さらに出発時刻の情報が含まれており、前記経路抽出記憶手段は、該経路の情報に基づき類似経路の分類を行う。かかる構成によれば、経路の情報に含まれる出発地点、目的地点、出発時刻すべてが所定距離内または時間内にある経路を類似経路とするので、時間条件を加味して類似経路をグループ分けすることができる。
【0033】
また、代表決定手段は、前記複数の経路における出発地点または目的地点それぞれの中央値または最頻値を代表出発地点または代表目的地点とする。かかる構成によれば、大幅なずれが生じない代表出発地点または代表目的地点を求めることができる。
【0034】
また、目的地点推定手段は、前記現在位置と前記代表出発地点との距離が所定の範囲内である場合に、該代表出発地点に対応する代表目的地点を目的地点として推定する。かかる構成によれば、大幅なずれが生じない目的地点推定が可能になる。
【0035】
また、代表決定手段は、前記類似経路に含まれる経路の出発時刻の中央値または最頻値を代表出発時刻とし、前記代表出発地点および代表目的地点に対応づけて前記経路情報DBに記憶し、前記目的地点推定手段は、現在時刻と前記代表出発時刻とを比較し、現在時刻が前記代表出発時刻を中心とする所定の時間内である場合に、該代表出発時刻に対応する前記代表目的地点を目的地点として推定する。かかる構成によれば、時刻条件を加味して目的地点を推定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例における経路情報DBに記憶されているデータの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例における経路抽出記憶手段15による走行経路データの記憶手順を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS310の処理において経路抽出記憶手段15により行われる経路分類の手順および代表決定手段17が類似経路データから代表経路を決定する手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例において、目的地推定手段18による目的地点の推定手順を示すフローチャートである。
【図6】地図上の事件多発エリアを示した図である。
【図7】事件多発エリアデータを示した図である。
【図8】事件多発エリア記憶手段に記憶されるデータおよび警告文のデータの一例を示す図であり、図8(a)は、行政単位で事件多発エリアのデータを記憶した例、図8(b)は、施設における時間帯による事件発生率の高低を示すデータを記憶した例、図8(c)は、事件の種類に応じた適切な警告文の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施例における警告報知の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の車載用電子機器にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0038】
図1は本発明の実施例におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【0039】
ナビゲーション装置1は、自動車等の車両に搭載されることにより車載用として使用されるナビゲーション装置であってもよく、車両から取外されユーザーが携帯し使用できるタイプのものであってもよい。以下の説明においては、これらを総称してナビゲーション装置1という。
【0040】
ナビゲーション装置1は、制御手段10、現在位置検出手段11、経路探索手段12、経路案内手段13、時刻検出手段14、経路抽出記憶手段15、記憶手段16、代表決定手段17、目的地点推定手段18、事件多発エリア記憶手段19、表示手段20、入力手段21、音声出力手段22、通信手段23などを備えて構成されている。
【0041】
制御手段10は、図示しないCPU、RAM、ROMからなるプロセッサで構成され、RAM、ROMに記録された制御プログラムに従ってナビゲーション装置1の各部の動作を制御する。
【0042】
現在位置検出手段11は、例えばGPS受信機等で構成され、地球上空を周回している複数のGPS衛星からの時刻情報を含む電波を受信し、それをもとに現在位置情報を算出するものである。
【0043】
さらに、現在位置検出手段11は、操角センサー、加速度センサー、距離センサーや方位センサーなどからなる自立航法手段を併用するようにしてもよい。この場合、車両の走行距離と走行方位とをそれぞれ検出し、これらの値を基準位置に対して積算することによって現在位置を求める。この現在位置検出方法は、GPS受信と組み合わせることで、GPS電波を受信できないトンネル内や、誤差が生じやすい高層ビル街において効果を発揮する。
【0044】
経路探索手段12は、入力手段21の操作により出発地点や目的地点が指定されると、地図情報DB16aに記憶されている道路データを参照し、出発地点から目的地点に至るまでの最適経路を探索し、案内経路データを作成するものである。この最適経路の探索は、現在位置またはユーザーによって指定された出発地点に対応する道路ノードからユーザーによって指定された目的地点に対応する道路ノードまでに至るリンクとノードをダイクストラ法などの各種の手法によって探索し、リンク長(リンクコスト)や所要時間などを累積し、総リンク長または総所要時間などが最短となる経路を案内経路とし、当該経路に属する道路ノードやリンクを案内経路データとして提供するものである。
【0045】
経路探索手段12によって探索された案内経路は、経路案内手段13によって、表示手段20に現在位置周辺の地図画像と共に表示され、目的地点までの案内に用いられる。
【0046】
時刻検出手段14は、ナビゲーション装置1の電源がONまたはOFFされた時点の時刻を検出する。なお、時刻の検出は、上記GPS衛星から送信される電波に含まれる時刻情報から検出できるほか、別途時計部を設けることで検出することもできる。
【0047】
経路抽出記憶手段15は、経路探索および経路案内を受けることなく車両が走行する度に、出発地点から目的地点に至るまでに通過したノードを地図情報DB16aから抽出し、出発地点および目的地点と、時刻検出手段14で検出された出発時刻と共に、走行経路データとして経路情報DB16bに記憶する。このとき、出発地点から目的地点までの所要時間および距離のデータも併せて記憶させておくものとする。所要時間および距離は実際の走行データから得ることができる。また、経路探索手段12による経路探索によっても所用時間および距離を求めることができる。
【0048】
なお、出発地点とは、ナビゲーション装置1の電源がONされた時点で現在位置検出手段11により検出された地点であり、目的地点とは、ナビゲーション装置1の電源がOFFにされた時点で現在位置検出手段11により検出された地点である。
【0049】
ここで、走行経路データを経路情報DB16bに記憶する方法を説明する。
【0050】
経路抽出記憶手段15は、初めて走行経路データを取得すると、経路情報DB16b内に新しいグループ(グループ1)を作成し、作成したグループ(グループ1)内に、取得した走行経路データを記憶する。
【0051】
そして、次回以降の走行経路データの記憶は、取得した走行経路データに含まれる出発地点・目的地点・出発時刻の3つのデータが、経路情報DB16b内の各グループ内に記憶されている走行経路データに含まれる出発地点・目的地点・出発時刻の3つのデータとそれぞれ類似しているか否かを判別し、類似していると判別した場合、走行経路データを、類似している走行経路データが記憶されているグループ内に記憶する。類似していないと判別した場合は、新たなグループ(グループ2、グループ3・・・グループn)を作成し、作成したグループ内に走行経路データを記憶する。なお、以下、各グループ内に記憶された走行経路データを類似経路データと称し説明を行う。
【0052】
経路抽出記憶手段15によるデータの類似性の判定は、例えば、取得した走行経路データと類似経路データ双方の出発地点の距離差、および目的地点の距離差がそれぞれ所定の距離以下であり、且つ、双方のデータの出発時刻の時間差が所定時間以下である場合に類似と判定する。
【0053】
また、データの類似性を判定する際に用いる類似経路データは、各グループに一番初めに記憶された類似経路データの出発地点、目的地点、出発時刻を用いることができ、また同一のグループに複数の類似経路データが記憶されている場合は、各類似経路データに含まれる出発地点、目的地点、出発時刻の夫々中央値(平均値)を類似性の比較に用いることもできる。
【0054】
次に、図2を用いて経路情報DB16bに記憶されている類似経路データの説明を行う。
【0055】
図2は、経路情報DB16bに記憶されている類似経路データの一例を示す図である。経路探索および経路案内を受けることなく初めて車両で、自宅(緯度、経度:緯○・経○)から会社(緯度、経度:緯×・経×)まで走行した場合、経路抽出記憶手段15は、自宅で車両のエンジンを始動させてから、会社に着いて駐車し、エンジンを停止させるまで、現在位置検出手段11により時々刻々検出される現在位置に対応したノードを地図情報DB16aから抽出し、会社に到着してエンジンを切った段階で、経路情報DB16b内に「グループ1」を作成し、出発地点としての自宅の位置情報と、目的地点としての会社の位置情報と、それらの間のノードデータであるノードデータ1と、出発時刻とを、作成した「グループ1」内に「No.1」の類似経路データとして記憶させる。なお、上述したとおり、走行経路データには、出発地点から目的地点までの所要時間(図示せず)と距離のデータ(図示せず)も併せて記憶させておくものとする。
【0056】
次に、会社から自宅まで走行した場合、会社から自宅までの走行経路データを、「No.2」の類似経路データとして記憶させるが、このとき、「No.1」の類似経路データと「No.2」の類似経路データには、出発地点、目的地点、出発時刻のデータに類似性が無いので、経路情報DB16b内に新たな「グループ2」を作成し、「グループ2」内に記憶させておく。以下、同様にして、経路探索および経路案内を受けることなく車両が走行する度に、走行経路データを経路情報DB16bに記憶させていく。図2に示す例では、グループ1〜グループ3まで類似経路データが分類され記憶された例を示している。
【0057】
記憶手段16には、地図情報DB16aと、経路情報DB16bとがあり、地図情報DB16aには、各道路の交差点や分岐点などの結節点をノードとし、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路ノードデータと道路リンクデータを含む道路データが記憶されている。道路ノードデータには、道路ノードの番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称などが含まれる。また、道路リンクデータには起点および終点となる道路ノードの番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータにはさらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所などのデータが付与される。道路種別は、高速道路や有料道路の別および国道や都道府県道などの別を含む情報である。
【0058】
道路データは、高速道路においてはそれぞれの高速道路に設けられたパーキングエリアやサービスエリアなどの特定エリアの位置情報、各特定エリアに該特定エリアへの進入路、該特定エリアからの脱出路の情報が含まれる。また、道路データは、高速道路、国道、県道、市区町村道などの道路種別や道路幅員、車線数などの属性情報を備え、上り、下りの進行方向別に地図データとして記憶される。
【0059】
地図情報DB16aは、さらに海岸線、湖沼、河川形状などの水系データ、行政境界データ、施設の位置、形状、名称を含む施設データからなる背景データを記憶している。
【0060】
また、地図情報DB16aには、道路データや背景データの他、地図画像を見やすく表示するためにベクター形式で記憶された地図画像データを含んでいてもよい。
【0061】
これらの道路データと背景データおよび地図画像データは、ナビゲーション装置1を使用する際に、ナビゲーション装置1の現在位置を含む所定範囲の地図が地図情報DB16aから抽出され、現在位置を示す現在位置マークや案内経路の画像が重ね合わされて表示手段20に表示される。
【0062】
経路情報DB16bには、上述した通り、経路抽出記憶手段15によって、走行経路データがグループに分類され、類似経路データとして記憶される。
【0063】
代表決定手段17は、経路情報DB16b内の同一グループ内に記憶されている類似の走行経路データが所定数以上に達した場合、各類似経路データにおける各出発地点の中央値および各目的地点の中央値をそれぞれ代表出発地点および代表目的地点として代表経路を決定し、経路情報DB16bに記憶する。
【0064】
また、代表経路決定に当たっては、出発地点と目的地点に加え、出発時刻をも決定要素とし、各出発時刻の中央値を代表出発時刻として代表経路の決定要素とすることもできる。
【0065】
目的地点推定手段18は、車両が起動された時点の現在位置と経路情報DB16b内の各グループの代表経路データの出発地点とを比較し、出発地点が所定の距離範囲内にある場合には当該代表経路の代表目的地点をユーザーが向かうであろう目的地点として推定する。また、目的地を推定するにあたって時刻条件を加味することもできる。その場合は、現在位置と代表経路の出発地点の比較に加え、現在時刻と代表経路の出発時刻を比較して現在時刻が代表経路の出発時刻の所定時間内にあれば、代表経路の代表目的地点を目的地点として推定する。
【0066】
一方、事件多発エリア記憶手段19は、予め車両または車載用ナビゲーション装置の盗難が多発しているエリア、タイヤや車体塗装へのイタズラが多発しているエリア、或いは台風や豪雨の際に冠水しやすいエリアなど、その場所に車両を駐停車することにリスクを伴う各種事件の多発エリアデータが記憶されている。
【0067】
目的地点が推定されると、事件多発エリア記憶手段19を参照して、該目的地点が属するエリアの事件発生率を調べ、事件発生率が所定の値以上である場合で、該目的地点に向かう場合は、事件発生率が高く注意を要する旨の警告を報知することができる。この手順の詳細については後述する。
【0068】
表示手段20は、LCDなどのディスプレイパネルから構成される表示画面を備えた表示ユニットであり、地図画像や探索経路、現在位置検出手段11で決定した現在位置などを表示する。
【0069】
入力手段21は、操作ボタンやタッチパネルなどにより構成され、ナビゲーション装置1の各種機能を操作したり、所要の数値や文字を入力したりするものである。
【0070】
音声出力手段22は、ナビゲーション装置1における各種音声報知を行う。
【0071】
通信手段23は、例えば最寄りの警察本部のサーバと接続して最新の事件多発エリア情報を取得することができ、事件多発エリア記憶手段19を更新するのに使用される。また、事件多発エリア情報は、ユーザー自らが入力手段21を介して入力することも可能である。
【0072】
次に、図3〜図5のフローチャートを参照して、車両が経路案内を受けずに走行した際の走行経路を記憶する手順(図3)と、類似した走行経路をグループ分けして記憶し、グループ内の走行経路が所定数になった際にそのグループの代表経路を決定する手順(図4)、車両が経路案内を受けずに走行を開始した際に、代表経路を参照して目的地点を推定する手順(図5)を説明する。図3の処理と図5の処理は、いずれも車両が経路案内を受けずに走行する場合の処理であるから並行して行われる。図3の処理は経路抽出記憶手段15により実行され、図5の処理は目的地点推定手段18によって実行される処理である。
【0073】
図3は、本発明の実施例における経路抽出記憶手段15による走行経路データの記憶手順を示すフローチャートである。
【0074】
車両のイグニッションがONされナビゲーション装置1の電源がONされたか否かを判別し(ステップS301)、電源がONされると、現在位置検出手段11により現在位置が検出され(ステップS302)、検出された現在位置が、経路抽出記憶手段15により制御手段10内のRAMに出発地点として一時記憶される(ステップS303)。同様に、時刻検出手段14によって現在時刻が検出され(ステップS304)、経路抽出記憶手段15により制御手段10内のRAMに出発時刻として一時記憶される(ステップS305)。
【0075】
次に、走行が開始されると、経路抽出記憶手段15は、現在位置検出手段11によって時々刻々検出される現在位置に対応したノードを地図情報DB16aから抽出し、通過したノードを制御手段10内のRAMに一時記憶する(ステップS306)。
【0076】
ナビゲーション装置1の電源がOFFされると(ステップS307)、目的地点に到着したと判断し、現在位置検出手段11によって現在位置が検出され(ステップS308)、検出された現在位置が、経路抽出記憶手段15により制御手段10内のRAMに目的地点として一時記憶される(ステップS309)。その後、経路抽出記憶手段15により、ステップS303、S305、S306、S309でRAMに一時記憶した各種データを、走行経路データとして経路情報DB16b内の、何れかのグループに分類して記憶される(ステップS310)。
【0077】
ステップS307の処理において電源がOFF(車両のイグニッションがOFF)された場合に備え、別途内部電源を設けておき、内部電源を用いることでステップS307以降の処理を行うことが可能となる。内部電源を設けない場合は、次回電源がONされたときにステップS307以降の処理を行うようにしてもよい。
【0078】
図4は、図3のステップS310の処理において経路抽出記憶手段15により行われる経路分類の手順および代表決定手段17が類似経路データから代表経路を決定する手順を示すフローチャートである。
【0079】
経路抽出記憶手段15は、まず、経路情報DB16bに類似経路データが記憶されたグループが存在するか否かの判別を行い(ステップS401)、類似経路データが記憶されているグループが全くなければ、ステップS408に進み、新たなグループを作成し、作成したグループ内に一時記憶してある走行経路データを記憶する。
【0080】
ステップS401の処理において、類似経路データが記憶されているグループがあれば、該グループ内の、類似経路データの出発地点と、一時記憶してある走行経路データの出発地点との距離の差Zsを算出し、距離の差Zsと、所定値zsとの比較を行い(ステップS402)、比較の結果がZs<zsであった場合、次に該グループ内の、該類似経路データの目的地点と、一時記憶してある走行経路データの目的地点との距離の差Zgを算出し、距離の差Zgと、所定値zgとの比較を行い(ステップS403)、比較の結果がZg<zgであった場合、更に該グループ内の、該類似経路データの出発時刻と、一時記憶してある走行経路データの出発時刻との時間の差Ztを算出し、出発時刻の差Ztと、所定値ztとの比較を行い(ステップS404)、比較の結果がZt<ztであった場合、一時記憶してある走行経路データをグループ内の新たな類似経路データとして記憶する(ステップS405)。
【0081】
ここで、出発地点の距離の所定値zs、目的地点の距離の所定値zgおよび出発時刻の時間の所定値ztは、類似経路を探索する際に、所要時間や距離の誤差が生じない程度の距離範囲とする。
【0082】
ステップS402からステップS404において、算出したZs、Zg、Ztの値がそれぞれ所定値zs、zg、zt以上であった場合、全てのグループについて比較を行ったか否かの判別を行う(ステップS406)。まだ比較していないグループが存在すれば、次のグループへと移り(ステップS407)、比較を行う。全てのグループについて比較を行い、一時記憶している走行経路データが、経路情報DB16bに含まれる全てのグループと類似していなかった場合、新たなグループを作成し、作成したグループ内に一時記憶してある走行経路データを記憶し(ステップS408)、処理を終了する。
【0083】
ステップS405の処理の後、該グループ内に類似経路データが所定数以上あるか否かの判別を行う(ステップS409)。所定数以上無い場合、処理を終了し、所定数以上に達した場合、代表決定手段17により代表経路が決定される。
【0084】
代表経路決定に当たっては、各走行経路データの各出発地点の中央値、各目的地点の中央値、各出発時刻の中央値を算出し(ステップS410〜ステップS412)、それぞれを代表出発地点、代表目的地点および代表出発時刻として代表経路を決定し、経路情報DB16bに保存記憶する(ステップS413)。なお、記憶する代表経路のデータは少なくとも代表出発地点と代表目的地点のデータでよい。出発時刻や到着時刻は時刻条件を利用する場合には記憶し、また、代表出発地点から代表目的地点までの経路の詳細データは必要により経路探索手段12により探索して記憶することができる。
【0085】
図5は、本発明の実施例において、目的地点推定手段18による目的地点の推定手順を示すフローチャートである。
【0086】
車両のイグニッションがONされ、ナビゲーション装置が起動(電源ON)されると(ステップS501)、現在位置検出手段11により現在位置が検出され(ステップS502)、時刻検出手段14により現在時刻が検出される(ステップS503)。次に目的地点推定手段18は、経路情報DB16bに、代表経路を記憶したグループ(類似経路のグループ)があるかどうか検索する(ステップS504)。代表経路を記憶したグループ(ステップS504)。がない場合は処理を終了する。類似する代表経路データがある場合には、現在位置と当該代表経路の代表出発地点との距離の差Zsを算出し、距離の差Zsと所定値zsとの比較を行い(ステップS505)、比較の結果がZs<zsであった場合、次に出発時刻と当該代表経路の代表出発時刻との時間の差Ztを算出し、時間の差Ztと所定値ztとの比較を行い(ステップS506)、比較の結果がZt<ztであった場合、当該代表経路の代表目的地点を目的地点として推定する(ステップS509)。
【0087】
ここで、出発地点の距離の所定値zsおよび出発時刻の時間の所定値ztは、距離や所要時間の誤差が生じない程度の距離範囲とする。
【0088】
ステップS505からステップS506において、算出したZs、Ztの値がそれぞれ所定値zs、zt以上であった場合、全てのグループについて比較を行ったか否かの判断を行う(ステップS507)。まだ比較していないグループが存在すれば、次のグループへと移り(ステップS508)、比較を行う。全てのグループについて比較を行い、全てのグループと類似していなかった場合、処理を終了する。この場合は目的地点の推定ができなかったことになり、事件発生率による警告報知は行われない。
【0089】
次に、事件多発エリアデータについて盗難多発エリアデータを例に説明を行う。
【0090】
図6は記憶手段16に記憶された地図データ上の盗難多発エリアを示した図である。
【0091】
図6において、(a)は案内経路であり、(b)は車両の現在位置、(c)は盗難多発エリアを示している。
【0092】
また、図6に示すように、記憶手段16に記憶されている地図情報データは、全体の地図を所定の経度および緯度で区切った複数の矩形形状のメッシュデータで構成されており、区切られた各メッシュデータには夫々道路ノードデータや道路リンクデータ等が含まれている。
【0093】
また、本実施例における各メッシュデータは、アルファベットと数字を用いて識別可能となっており、図6における盗難多発エリアは太線で囲まれたメッシュデータ(D4)・(D5)・(E4)・(E5)である。
【0094】
次に、図7を用いて事件多発エリア記憶手段19に記憶された盗難多発エリアデータの説明を行う。
【0095】
盗難多発エリアデータは、記憶手段16に記憶された各メッシュデータ上のエリアが事件多発エリアであるか否かが予め設定され、事件多発エリア記憶手段19に記憶されている。図7に示すように、記憶手段16に記憶されたすべてのメッシュデータについて盗難多発エリアであるか否かが設定されており、上記説明をしたように、アルファベットと数字を用いて各メッシュデータが識別されている。
【0096】
図7において盗難多発エリアであるメッシュデータには(1)が設定されており(D4・D5・E4・E5)、盗難多発エリアではないメッシュデータには(0)が設定されている。このように設定を行うことで、盗難多発エリアであるとして(1)が設定されたメッシュデータに含まれる道路データまたは施設データ上で車両が停車したことが検出された場合に警告を行うことになる。
【0097】
なお、上記実施例では、盗難多発エリアのデータは、各メッシュデータ毎に盗難多発エリアであるか否かが設定されているものと説明したが、盗難多発エリアをメッシュデータ単位で設定するのではなく、行政単位で設定することも可能である。
【0098】
更には、ホテル、レストラン、各種遊戯施設、百貨店等の施設単位、都会においてはビル単位で設定することも可能である。また、大規模施設においては複数の駐車場を有する場合もあり、その場合には施設内の駐車場の単位でもよい。
【0099】
図8は、事件多発エリア記憶手段19に記憶されるデータおよび警告文のデータの一例を示す図である。
【0100】
図8(a)は、鳥取県を例に挙げ、行政単位で盗難多発エリアのデータが記憶された図を示している。このデータは、県・市・町・番地まで細かく区分けしてあり、番地毎に盗難多発エリアであるか否かが設定されている。図中においては、鳥取市AAA町1番地、2番地が盗難多発エリアとして(1)が設定されている。また、この他にも倉吉市BBA町1番地、2番地、3番地、BBB町1番地も盗難多発エリアとして(1)が設定されている。この他の地域に関しては盗難多発エリアではないということで(0)が設定されている。
【0101】
なお、本実施例においては番地毎に盗難多発エリアであるか否かの設定を行っているがこれに限ることはなく、市毎、または町毎で盗難多発エリアの設定を行うようにしてもよい。
【0102】
更に、上記の例ではメッシュデータには(0)または(1)が設定されるものとしたが、盗難の発生率(例えば、1週間、1ヶ月間または1年間の平均発生件数による発生頻度、或いはそのような頻度を全国平均値で正規化した相対発生率など、事件発生リスクの大小を表す何らかの数値をここでは発生率と称す)の数値を設定し、設定した発生率が予め設定された所定値を上回る場合は盗難多発エリアとし、下回る場合は盗難多発エリアではないとする。尚、所定値は事件多発エリア記憶手段19の一部、またはプログラムを記憶しているROMの一部に記憶場所を設けておき、予め車載用ナビゲーション装置の製造者が設定しておくが、ユーザーが入力手段21から適宜変更できるようにしてもよい。
【0103】
更に、1年のうちの各月毎の、または季節毎の発生率、または1日のうちの時間帯毎の発生率、或いはその両方を設定しておき、車載用ナビゲーション装置を使用している時季、時間帯に応じた設定値を使うようにしてもよい。
【0104】
図8(b)は、その一例であり、異なる構造を持つ三種類の駐車場毎の時間帯による事件発生率の高低を示すデータである。図中、白丸は事件発生率が比較的に低いことを、また黒丸は比較的に高いことを示すが、実際には上記のように発生率の値を設定しておくのが好ましい。
【0105】
また、車に係る事件にも色々な種類があり、それぞれに応じて適切な警告を発することが好ましい。図8(c)は警告文のデータの一例であり、複数種類の警告文が警告文番号A、B、C・・・と関連づけられて事件多発エリア記憶手段19に記憶される。この場合、図8(b)の各記憶位置には、事件発生率の値とともにその事件種別に対応する警告文番号を併せて記憶するようにするとよい。
【0106】
次に、図9のフローチャートを用いて本発明の車載用ナビゲーション装置における制御手段10の警告報知手順を説明する。
【0107】
本発明の実施例にかかるナビゲーション装置においては、図7、図8を用いて説明した事件発生率のデータを参照し、車両が経路案内を受けずに走行を開始した際に、経路情報DB16bに記憶された代表経路から車両の目的地を推定して、推定した目的地が、事件発生率が高いエリアである場合に、推定した目的地では事件が多発している旨の報知を行う。車両が走行を開始した際に目的地を推定する詳細な手順は図5のフローチャートを参照して説明した通りである。従って、図9のステップS901〜ステップS903までの処理は、図5のステップS501〜ステップS503の処理と同じであり、ステップS904の処理は、図5のステップS504〜ステップ509の処理と同じである。
【0108】
車両のイグニッションがONされ、ナビゲーション装置が起動(電源ON)されると(ステップS901)、現在位置検出手段11により現在位置が検出され(ステップS902)、時刻検出手段14により出発時刻が検出され(ステップS903)、次に目的地点推定手段18により目的地点が推定されると(ステップS904)、事件多発エリア記憶手段19に記憶された事件多発エリアデータとステップS904において推定された目的地点とを比較し、目的地点の事件発生率が所定値以上か否か判断する(ステップS905)。
【0109】
なお、上記の所定値は事件多発エリア記憶手段19の一部、またはプログラムを記憶しているROMの一部に記憶場所を設けておき、予め車載用ナビゲーション装置の製造者が設定しておくが、ユーザーが入力手段21から適宜変更できるようにしてもよい。
【0110】
ステップS905の処理において目的地点エリアの事件発生率が所定値以上であると判断すると、当該目的地点が事件発生率の高いエリアであることを表示し、例えば「このエリアは事件多発エリアです。」または「このエリアは事件多発エリアです。特に車から離れる場合はご注意ください。」等の警告を表示手段20に表示し、或いは音声出力手段22にて音声で警告する(ステップS906)。
【0111】
なお、目的地点の推定は現在位置と代表経路の出発地点に基づいて推定するため、推定される目的地点は複数の場合もあり、かかる場合には、それぞれの目的地点について事件発生率を検証し、該発生率が所定値以上の場合はその旨警告することになる。
【0112】
また、本実施例において車両の盗難に関する警告を行う場合には、当然に用いるデータも車両の盗難多発エリアに関するデータであり、車載用ナビゲーション装置の盗難に関する警告を行う場合には、車載用ナビゲーション装置の盗難に関するデータとなる。
【0113】
車にまつわる事件にも色々な種類があり、それぞれに応じた警告態様が考えられる。例えば盗難の場合にも、車両自体の盗難の場合と、車両内にある車載用ナビゲーション装置等の備品や積載荷物の盗難(いわゆる車上荒らし)の場合があり、それぞれに応じた警告をすることが好ましい。
【0114】
車両盗難に対しては例えば「XX地点に向かう場合、その地点周辺では車両の盗難が多発しております。注意して下さい。」等の警告を、また車上荒らしに対しては例えば「XX地点に向かう場合、その地点周辺では車内盗難が多発しています。貴重品は車内に置かないで下さい。」等の警告をすることが考えられる。
【0115】
また、タイヤや塗装への傷つけ等のイタズラであれば「タイヤや塗装へのイタズラが多発しています。注意して下さい。」等の警告をすることが考えられる。更に、豪雨や台風時に冠水しやすい地点では、「大雨の際には冠水することがあります。注意して下さい。」等の警告をすればよい。同様にして、例えば強風の際に落下物に当たるおそれが高い地点、地震の際にがけ崩れの被害が想定される地点など、各種災害にも応用できる。
【0116】
以上、詳細に説明をしたように、事件発生率を所定値と比較して警告の報知を行うか否かを判断するので、所定値を変えることで報知の範囲、頻度を変えることが可能となる。
【0117】
なお、「発明を実施するための最良の形態」の冒頭でも述べたように、本願発明は、実施例で説明した車載用ナビゲーション装置に限定するものではなく、事件多発エリアのデータと、目的地を推定または入力する手段と、警告を行う機能を有する他の電子機器においても適用可能なものとする。
【0118】
また、上記実施例の説明においては、走行経路データには出発地点、目的地点、出発時刻、出発地点から目的地点までのノード列からなる経路を含むよう構成していたが、この他に、月や曜日の情報も含むよう構成してもよい。
【0119】
月の情報を含むようにした場合、季節によって走行することが困難な道路、例えば冬に雪が積もって走行が困難な道路、を回避するような経路をユーザーに提供することが可能になる。また、曜日の情報を含むようにした場合、より細かく分類することが可能になる。
【0120】
また、本発明により報知される警告を煩わしいと感じる利用者に対しては、当該警告を報知するか否かをユーザーが選択できるようにするとよい。警告を報知しない設定が選択された場合には、図5の目的地点の推定手順、図9の警告報知の手順は実行されない。
【符号の説明】
【0121】
1 :ナビゲーション装置
10 :制御手段
11 :現在位置検出手段
12 :経路探索手段
13 :経路案内手段
14 :時刻検出手段
15 :経路抽出記憶手段
16 :記憶手段
16a:地図情報DB
16b:経路情報DB
17 :代表決定手段
18 :目的地点推定手段
19 :事件多発エリア記憶手段
20 :表示手段
21 :入力手段
22 :音声出力手段
23 :通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を検出する現在位置検出手段と、
前記現在位置検出手段により検出された現在位置に基づいて、実際に走行した経路の情報を抽出し、抽出した該経路の情報を経路情報DBに記憶する経路抽出記憶手段と、
前記経路情報DBに記憶された経路の代表出発地点および代表目的地点を決定し、決定した該代表出発地点と代表目的地点を対応づけて前記経路情報DBに記憶する代表決定手段と、
車両起動時の現在位置と前記経路情報DBに記憶された代表出発地点とを比較して、目的地点を推定する目的地点推定手段と、
事件多発エリアデータが記憶された事件多発エリア記憶手段と、
前記目的地推定手段が推定した前記目的地点に基づいて、前記事件多発エリアデータを参照し、当該目的地点が位置するエリアの事件発生率が予め設定された所定値以上である場合、報知手段を介して警告を報知する制御手段と、を備えたことを特徴とする車載用電子機器。
【請求項2】
前記経路抽出記憶手段は、抽出した前記経路の出発地点及び目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内にある経路同士を類似経路として分類して前記経路情報DBに記憶し、前記代表決定手段は、分類された前記類似経路毎に代表出発地点および代表目的地点を決定することを特徴とする請求項1に記載の車載用電子機器。
【請求項3】
前記実際に走行した経路の情報には、出発地点の情報と目的地点の情報、さらに出発時刻の情報が含まれており、前記経路抽出記憶手段は、該経路の情報に基づき類似経路の分類を行うことを特徴とする請求項2に記載の車載用電子機器。
【請求項4】
前記代表決定手段は、前記類似経路に含まれる経路の出発地点または目的地点それぞれの中央値または最頻値を代表出発地点または代表目的地点とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用電子機器。
【請求項5】
前記目的地点推定手段は、前記現在位置と前記代表出発地点との距離が所定の範囲内である場合に、該代表出発地点に対応する前記代表目的地点を目的地点として推定することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車載用電子機器。
【請求項6】
前記代表決定手段は、前記類似経路に含まれる経路の出発時刻の中央値または最頻値を代表出発時刻とし、前記代表出発地点および代表目的地点に対応づけて前記経路情報DBに記憶し、
前記目的地点推定手段は、現在時刻と前記代表出発時刻とを比較し、現在時刻が前記代表出発時刻を中心とする所定の時間内である場合に、該代表出発時刻に対応する前記代表目的地点を目的地点として推定することを特徴とする請求項5に記載の車載用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−210487(P2010−210487A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57954(P2009−57954)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】