説明

転がり軸受および転がり軸受の締結状態監視方法

【課題】転動体の円滑な転動状態を確保することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】自動調心ころ軸受11は、2つの分割内輪部材12a、12bを締結して形成される内輪12と、内輪12の軌道面18a、18b上を転動する球面ころ14aと、隣合う分割内輪部材12a、12bの分割面を間にして一方の分割内輪部材12aと他方の分割内輪部材12bとに跨って配置され、隣合う分割内輪部材12a、12b間の隙間の変化を圧縮応力の変化により感知し、出力するセンサとしての歪ゲージ22aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受および転がり軸受の締結状態監視方法に関し、特に、複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪を備える転がり軸受およびこのような転がり軸受の締結状態監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電機の主軸に使用される軸受は、風を受けるためのブレードの自重に対するラジアル荷重と、風力に対するアキシアル荷重とを受ける必要がある。さらに、風力発電機の主軸は、ブレードが設けられた先端側を片持ち支持するような構造となっている。したがって、風力発電機の主軸には、ラジアル荷重とアキシアル荷重とを受けることができ、さらに、主軸の撓みに対応できる自動調心ころ軸受が使用されているのが一般的である。
【0003】
図10は、風力発電機の主軸に使用される自動調心ころ軸受の概略断面図である。図10を参照して、自動調心ころ軸受101は、内輪102と、外輪105と、内輪102および外輪105の間に複列で配置される複数の球面ころ103a、103bと、複数の球面ころ103a、103bを保持する保持器104a、104bとから構成される。自動調心ころ軸受101は、風を受けるブレード111を先端側に設けた主軸112に取り付けられ、ハウジング113に組み込まれる。
【0004】
風を受けるためのブレードが取り付けられた風力発電機の主軸を支持する転がり軸受については、大きな荷重を受ける必要があるため、軸受自体も大型となる。そうすると、転動体や保持器等、転がり軸受を構成する各構成部材も大型となり、部材の生産や組み立てが困難となる。このような場合、各部材を分割可能とすると、生産や組み立てが容易となる。
【0005】
ここで、軸受構成部材である内輪や外輪を分割した自動調心ころ軸受に関する技術が、特開2002−139032号公報(特許文献1)および特開2005−9669号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献1においては、内輪を、軸方向、すなわち、回転中心軸を含む平面で切断する方向で、2つの分割体に分割している。2つの分割体は、軸方向に突き出した嵌合部に締付け輪を嵌合し、締付け輪を締付けボルトで締付けることにより、一体に結合されている。特許文献2においては、外輪を、径方向、すなわち、回転軸に直交する断面で切断し、分割している。
【0006】
一方、軸受の焼付きや機械装置の異常検出等の目的から、軸受に温度を検出するための温度センサを設ける技術が、特開2006−337323号公報(特許文献3)に開示されている。特許文献3によると、軸受の内部に温度センサを設けることにより、軸受が強風化に曝されていたとしても、より正確な軸受内部の温度検出を可能にしている。
【特許文献1】特開2002−139032号公報
【特許文献2】特開2005−9669号公報
【特許文献3】特開2006−337323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2において開示される軌道輪を分割したタイプの転がり軸受については、組立てに際し、各分割体を組合わせて、隣合う分割体間に隙間が生じないように締結する必要がある。しかし、軸受の稼働中に締結力が弱くなったり、温度変化による熱収縮等により、各分割体間に隙間が生じる恐れがある。このような分割体間の隙間が大きくなると、軌道面の隙間も大きくなり、軌道面上を転動する転動体の円滑な転動を阻害することになる。
【0008】
この発明の目的は、転動体の円滑な転動状態を確保することができる転がり軸受を提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、長寿命化が可能な風力発電機の主軸支持構造を提供することである。
【0010】
この発明のさらに他の目的は、簡易な構成で、分割された軌道輪部材の締結状態を監視することができる転がり軸受の締結状態監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る転がり軸受は、複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪と、軌道輪の軌道面上を転動する転動体と、隣合う分割軌道輪部材の分割面を間にして一方の分割軌道輪部材と他方の分割軌道輪部材とに跨って配置され、隣合う分割軌道輪部材間の隙間の変化をそれ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサとを備える。
【0012】
このように構成することにより、隣合う分割軌道輪部材間の隙間の変化を、それ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサによって知ることができる。そうすると、例えば、センサの出力により、分割軌道輪部材間の隙間が大きくなっていることを知った場合には、その隙間を小さくするよう調整することができる。したがって、転動体の円滑な転動状態を確保することができる。
【0013】
好ましくは、センサは、圧縮応力を負荷された状態で配置される。こうすることにより、負荷された圧縮応力が小さくなれば、分割軌道輪部材間の隙間が大きくなったことを知ることができる。また、センサは、引張応力を負荷された状態で配置されることにしてもよい。こうすることにより、負荷された引張応力が大きくなれば、分割軌道輪部材間の隙間が大きくなったことを知ることができる。
【0014】
さらに好ましくは、センサは、一方および他方の分割軌道輪部材に離れて設けられる一対の部材で構成される。こうすることにより、センサは、非接触で、それ自身の物理量の変化を感知することができる。センサは、一対の部材間のレーザ光の変化を感知し、出力する構成であってもよいし、一対の部材間の静電容量の変化を感知し、出力する構成であってもよい。
【0015】
さらに好ましくは、センサは、分割軌道輪部材の幅方向端面に設けられている。こうすることにより、センサの取付け等が容易になる。
【0016】
この発明の他の局面においては、風力発電機の主軸支持構造は、風力を受けるブレードと、その一端がブレードに固定され、ブレードとともに回転する主軸と、固定部材に組み込まれ、主軸を回転自在に支持する転がり軸受とを含む風力発電機の主軸支持構造であって、転がり軸受は、複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪と、軌道輪の軌道面上を転動する転動体と、隣合う分割軌道輪部材の分割面を間にして一方の分割軌道輪部材と他方の分割軌道輪部材とに跨って配置され、隣合う分割軌道輪部材間の隙間の変化をそれ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサとを備える。
【0017】
このような風力発電機の主軸支持構造は、転動体の円滑な転動状態を確保することができる転がり軸受を含むため、長寿命化を図ることができる。
【0018】
この発明のさらに他の局面においては、転がり軸受の締結状態監視方法は、複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪と、軌道輪の軌道面上を転動する転動体と、隣合う分割軌道輪部材の分割面を間にして一方の分割軌道輪部材と他方の分割軌道輪部材とに跨って配置され、隣合う分割軌道輪部材間の隙間の変化をそれ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサとを備える転がり軸受の締結状態監視方法である。ここで、転がり軸受の締結状態監視方法は、センサによって物理量の変化を感知して出力し、出力された物理量の変化により、隣合う分割軌道輪部材間の隙間の変化を監視する。
【0019】
このような転がり軸受の締結状態監視方法は、隣合う分割軌道輪部材の隙間の変化を、センサの出力により知ることができるため、センサの出力を監視することにより、隣合う分割軌道輪部材の隙間の変化を容易に把握することができる。したがって、簡易な構成で、分割された軌道輪部材の締結状態を監視することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、隣合う分割軌道輪部材間の隙間の変化を、それ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサによって知ることができる。そうすると、例えば、センサの出力により、分割軌道輪部材間の隙間が大きくなっていることを知った場合には、その隙間を小さくするよう調整することができる。したがって、転動体の円滑な転動状態を確保することができる。
【0021】
また、このような風力発電機の主軸支持構造は、転動体の円滑な転動状態を確保することができる転がり軸受を含むため、長寿命化を図ることができる。
【0022】
また、このような転がり軸受の締結状態監視方法は、隣合う分割軌道輪部材の隙間の変化を、センサの出力により知ることができるため、センサの出力を監視することにより、隣合う分割軌道輪部材の隙間の変化を容易に把握することができる。したがって、簡易な構成で、分割された軌道輪部材の締結状態を監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施形態に係る自動調心ころ軸受11の一部を示す断面図であり、一点鎖線で示す自動調心ころ軸受11の回転中心軸21を含む平面で切断した場合を示す。図1は、図2に示す自動調心ころ軸受11を、図2中のI―Iで切断した場合の断面図である。図3は、図1および図2に示す自動調心ころ軸受11に含まれる内輪12を、外径側から見た図、すなわち、図1中の矢印IIIで示す方向から見た図を示す。なお、以下の図面において、L等で表す分割内輪部材12a、12b間の隙間は、微小である。
【0024】
図1、図2および図3を参照して、この発明の一実施形態に係る自動調心ころ軸受11の構成について説明する。自動調心ころ軸受11は、内輪12と、外輪13と、内輪12および外輪13の間に複列で配置される複数の球面ころ14a、14bと、複数の球面ころ14a、14bをそれぞれ保持する保持器15a、15bとを備える。
【0025】
内輪12は、回転軸(図示せず)の外周側に組み込まれる。内輪12の外径側には、2列の球面状の軌道面18、19が設けられている。球面ころ14a、14bは、各軌道面18、19上を転動する。内輪12のうち、複列の軌道面18、19の幅方向の外側には、外径側、すなわち、図2中の矢印IIの方向に延びる小鍔16a、16bが設けられている。また、内輪12のうち、複列の軌道面18、19の間には、外径側に延びる中鍔17が設けられている。
【0026】
外輪13の内径側には、内輪12と同様に、球面状の軌道面20が設けられている。軌道面20は、軸受中心を中心とする球面状である。したがって、軸受稼動時において外輪13が傾いた場合でも、球面ころ14a、14bは軌道面20上を、適切に、すなわち、軌道面20に球面ころ14a、14bが片当りすることなく転動することができる。
【0027】
内輪12は、回転中心軸21を含む平面で切断した形状の2つの分割内輪部材12a、12bを締結することにより形成される。2つの分割内輪部材12a、12bは、それぞれの軌道面18a、18bが連なるように配置され、締結される(図1参照)。この場合、分割内輪部材12a、12bは、周方向に隣合うことになる。締結に際しては、例えば、図2に示すように、分割内輪部材12a、12bを外輪13よりも幅広、すなわち、幅方向に長い構成とし、分割内輪部材12a、12bの幅方向両端の外径側に締付け輪24a、24bを備え、これを内径側に締付けることにより締結するようにする。
【0028】
また、外輪13についても、それぞれの軌道面20a、20bが連なるように2つの分割外輪部材13a、13bを締結することにより形成される。この場合も、2つの分割外輪部材13a、13bは、周方向に隣合うことになる。
【0029】
ここで、隣合う2つの分割内輪部材12a、12bの間には、圧縮応力を感知し、出力するセンサとしての歪ゲージ22a、22bが設けられている。歪ゲージ22a、22bは、分割内輪部材12a、12bの分割面を間にして一方の分割内輪部材12aと他方の分割内輪部材12bとに跨って配置される。歪ゲージ22a、22bはそれぞれ、軌道面18、19が位置する軸方向の離れた位置に配置される。歪ゲージ22a、22bは、隣合う分割内輪部材12a、12b間の隙間Lの変化をそれ自身の物理量、ここでは、圧縮応力の変化により感知し、出力する。出力は、歪ゲージ22a、22bから延びているリード線(図示せず)を通じて、パソコン(図示せず)等の外部装置に出力される。同様に、隣合う2つの分割外輪部材13a、13bの間にも、圧縮応力を感知し、出力するセンサとしての歪ゲージ23aが設けられている。
【0030】
このように構成することにより、隣合う分割内輪部材12a、12b間の隙間Lの変化を、圧縮応力の変化により感知し、出力する歪ゲージ22a、22bによって知ることができる。そうすると、分割内輪部材12a、12b間の隙間Lが大きくなっている場合には、締付け部材の締め直し等により、大きくなった隙間Lを小さくすることができる。同様に、分割外輪部材13a、13b間の隙間Lの変化についても、歪ゲージ23aの出力によって知ることができる。したがって、球面ころ14a、14bの円滑な転動状態を確保することができる。
【0031】
ここで、この発明の一実施形態に係る転がり軸受の締結状態監視方法について説明する。まず、歪ゲージ22a、22bによる圧縮応力の変化を感知して出力する。この場合、歪ゲージ22a、22bから延びているリード線をパソコン等に繋いておく。そして、その出力の変化をパソコン等によって監視する。この場合、例えば、出力された圧縮応力が、数秒前、または数分前等の圧縮応力よりも、所定の値以上変化しているか否かを監視する。このようにして、隣合う分割内輪部材12a、12b間の隙間の変化を監視する。こうすることにより、簡易な構成で、隣合う分割内輪部材12a、12b間の隙間Lを監視することができる。
【0032】
なお、上記の実施の形態においては、歪ゲージは、圧縮応力を負荷された状態で配置されることとしたが、これに限らず、歪ゲージは、引張応力を負荷された状態で配置されるように構成してもよい。
【0033】
図4は、この場合における自動調心ころ軸受に備えられる内輪の一部を、軸方向から見た図である。図5は、図4に示す内輪を、図4中の矢印Vで示す方向から見た図であり、図3に対応する。
【0034】
図4および図5を参照して、この発明の他の実施形態に係る自動調心ころ軸受に備えられる内輪31は、2つの分割内輪部材32a、32bを締結して形成される。分割内輪部材32a、32bは、軌道面33a、33bが連なるように配置され、締結される。ここで、歪ゲージ34aは、隣合う分割内輪部材32a、32bの分割面を間にして、一方の分割内輪部材32aと他方の分割内輪部材32bとに跨って配置される。ここでは、歪ゲージ34aは、各分割内輪部材32a、32bの幅方向の一方側の端面35a、35bに跨って、引張応力を負荷された状態で配置されている。また、各分割内輪部材32a、32bの他方側の端面36a、36bにも、歪ゲージ34bが配置されている。
【0035】
このように構成することにより、歪ゲージ34a、34bによって感知される引張応力が小さくなれば、分割内輪部材32a、32b間の隙間が大きくなったことを知ることができる。この場合、分割内輪部材32a、32b間の隙間が大きくなったことのみならず、分割内輪部材32a、32bの位置がずれた場合にも、引張応力が大きくなるため、このような隙間の変化についても、歪ゲージ34a、34bの出力により、知ることができる。
【0036】
また、上記の実施の形態においては、センサとして歪ゲージを用いることにしたが、これに限らず、他のセンサであってもよい。
【0037】
図6は、この発明のさらに他の実施形態に係る自動調心ころ軸受に備えられる内輪の一部を、軸方向から見た図であり、図4に対応する。また、図7は、図6に示す内輪を、図6中の矢印VIIで示す方向から見た図であり、図5に対応する。
【0038】
図6および図7を参照して、この発明のさらに他の実施形態に係る自動調心ころ軸受に備えられる内輪41は、上記と同様に、2つの分割内輪部材42a、42bを締結して形成される。分割内輪部材42a、42bは、軌道面43a、43bが連なるように配置され、締結される。ここで、一対の部材、ここでは、発光部となる部材44aと受光部となる部材44bで構成されるレーザ検出型のセンサ44が、分割面を間にして一方の分割内輪部材42aと他方の分割内輪部材42bとに跨って配置される。部材44aは、分割内輪部材42aの端面45aに配置され、部材44bは、分割内輪部材42bの端面45bに配置される。部材44aと部材44bは、離れて、すなわち、所定の間隔を開けて設けられる。同様に、センサ46を構成する部材46aは、分割内輪部材42aの他方側の端面47aに配置され、センサ46を構成する部材46bは、分割内輪部材42bの他方側の端面47bに配置される。
【0039】
ここで、締結力が弱くなり、分割内輪部材42a、42b間の隙間が大きくなるように変化すると、受光部としての部材44b、46aが発光部としての部材44a、46bから受光する光量は、小さくなる。このようなレーザ検出型のセンサ44、46の光量の変化を感知し、出力することにより、分割内輪部材42a、42b間の隙間の変化を知ることができる。また、例えば、レーザ光の入射角等の変化を感知し、出力することにしてもよい。
【0040】
なお、図6および図7に示す実施形態において、誘電容量型センサを設けることにしてもよい。例えば、部材44aおよび部材44bから構成されるセンサ44および部材46aおよび部材46bから構成されるセンサ46において、静電容量の変化を感知し、出力することにより、分割内輪部材42a、42b間の隙間の変化を知ることができる。
【0041】
図8および図9は、この発明の一実施形態に係る自動調心ころ軸受を主軸支持軸受75として適用した、風力発電機の主軸支持構造の一例を示している。主軸支持構造の主要部品を支持するナセル72のケーシング73は、高い位置で、旋回座軸受71を介して支持台70上に水平旋回自在に設置されている。風力を受けるブレード77を一端に固定する主軸76は、ナセル72のケーシング73内で、軸受ハウジング74に組み込まれた主軸支持軸受75を介して、回転自在に支持されている、主軸76の他端は増速機78に接続され、この増速機78の出力軸が発電機79のロータ軸に結合されている。ナセル72は、旋回用モータ80により、減速機81を介して任意の角度に旋回させられる。
【0042】
軸受ハウジング74に組み込まれた主軸支持軸受75は、この発明の一実施形態に係る自動調心ころ軸受であって、複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪と、軌道輪の軌道面上を転動する転動体としての球面ころと、隣合う分割軌道輪部材の分割面を間にして一方の分割軌道輪部材と他方の分割軌道輪部材とに跨って配置され、隣合う分割軌道輪部材間の隙間の変化をそれ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサとを備える。
【0043】
このような風力発電機の主軸支持構造は、球面ころの円滑な転動状態を確保することができる自動調心ころ軸受を含むため、長寿命化を図ることができる。
【0044】
なお、上記の実施の形態においては、回転中心軸を含む平面で内輪を2つに分割した形状の分割内輪部材から内輪が形成されることにしたが、これに限らず、例えば、回転中心軸と直交する平面で内輪を2つに分割した形状の分割内輪部材から内輪が形成される構成としてもよい。さらに、2つ以上に分割してもよいし、複数の方向に分割された形状であってもよい。
【0045】
また、上記の実施の形態において、複数の種類のセンサを併用することにしてもよい。こうすることにより、さらに確実に隣合う分割内輪部材間の隙間の増加を知ることができ、転動体の円滑な転動状態を確保することができる。
【0046】
なお、上記したセンサと温度センサ等とを併用することにしてもよい。例えば、軸受の温度が低下すると、分割内輪部材は熱収縮して、隣合う分割内輪部材間の隙間が大きくなる。この場合、温度センサによる温度低下の検出に加え、上記したセンサによって、隣合う分割内輪部材間の隙間の増加を知ることができる。
【0047】
また、上記の実施の形態においては、転動体として、球面ころを使用することにしたが、これに限らず、円錐ころや円筒ころ、玉等の他の転動体であってもよい。さらに、上記した自動調心ころ軸受は、複列であったが、単列の自動調心ころ軸受にも適用される。
【0048】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明に係る自動調心ころ軸受は、風力発電機の主軸を支持する軸受として、有効に利用される。
【0050】
また、この発明に係る風力発電機の主軸支持構造は、長寿命化が要求される場合に、有効に利用できる。
【0051】
また、この発明に係る自動調心ころ軸受の締結状態監視方法は、複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪の締結状態を、簡易な構成で監視することが要求される場合に、有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動調心ころ軸受の一部を示す断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る自動調心ころ軸受の一部を、回転中心軸を含む平面で切断した場合の断面図である。
【図3】図2に示す自動調心ころ軸受に含まれる内輪を、図1中の矢印IIIの方向から見た図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る自動調心ころ軸受に含まれる内輪の一部を、軸方向から見た図である。
【図5】図4に示す自動調心ころ軸受に含まれる内輪を、図4中の矢印Vの方向から見た図である。
【図6】この発明のさらに他の実施形態に係る自動調心ころ軸受に含まれる内輪の一部を、軸方向から見た図である。
【図7】図6に示す自動調心ころ軸受に含まれる内輪を、図6中の矢印VIIの方向から見た図である。
【図8】この発明に係る自動調心ころ軸受を用いた風力発電機の主軸支持構造の一例を示す図である。
【図9】図8に示す風力発電機の主軸支持構造の図解的側面図である。
【図10】風力発電機の主軸に使用される自動調心ころ軸受の概略断面図である。
【符号の説明】
【0053】
11 自動調心ころ軸受、12,31,41 内輪、12a,12b,32a,32b,42a,42b 分割内輪部材、13 外輪、13a,13b 分割外輪部材、14a,14b 球面ころ、15a,15b 保持器、16a,16b 小鍔、17 中鍔、18,18a,18b,19,20,20a,20b,33a,33b,43a,43b 軌道面、21 回転中心軸、22a,22b,23a,34a,34b 歪ゲージ、24a,24b 締付け輪、35a,35b,36a,36b,45a,45b,47a,47b 端面、44,46 センサ、44a,44b,46a,46b 部材、70 支持台、71 旋回座軸受、72 ナセル、73 ケーシング、74 軸受ハウジング、75 主軸支持軸受、76 主軸、77 ブレード、78 増速機、79 発電機、80 旋回用モータ、81 減速機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪と、
前記軌道輪の軌道面上を転動する転動体と、
隣合う前記分割軌道輪部材の分割面を間にして一方の前記分割軌道輪部材と他方の前記分割軌道輪部材とに跨って配置され、隣合う前記分割軌道輪部材間の隙間の変化をそれ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサとを備える、転がり軸受。
【請求項2】
前記センサは、圧縮応力を負荷された状態で配置される、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記センサは、引張応力を負荷された状態で配置される、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記センサは、一方および他方の前記分割軌道輪部材に離れて設けられる一対の部材で構成される、請求項1〜3のいずれかに記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記センサは、前記一対の部材間のレーザ光の変化を感知し、出力する、請求項4に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記センサは、前記一対の部材間の静電容量の変化を感知し、出力する、請求項4に記載の転がり軸受。
【請求項7】
前記センサは、前記分割軌道輪部材の幅方向端面に設けられている、請求項1〜6のいずれかに記載の転がり軸受。
【請求項8】
風力を受けるブレードと、
その一端が前記ブレードに固定され、ブレードとともに回転する主軸と、
固定部材に組み込まれ、前記主軸を回転自在に支持する転がり軸受とを含む風力発電機の主軸支持構造であって、
前記転がり軸受は、複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪と、前記軌道輪の軌道面上を転動する転動体と、隣合う前記分割軌道輪部材の分割面を間にして一方の前記分割軌道輪部材と他方の前記分割軌道輪部材とに跨って配置され、隣合う前記分割軌道輪部材間の隙間の変化をそれ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサとを備える、風力発電機の主軸支持構造。
【請求項9】
複数の分割軌道輪部材を締結して形成される軌道輪と、前記軌道輪の軌道面上を転動する転動体と、隣合う前記分割軌道輪部材の分割面を間にして一方の前記分割軌道輪部材と他方の前記分割軌道輪部材とに跨って配置され、隣合う前記分割軌道輪部材間の隙間の変化をそれ自身の物理量の変化により感知し、出力するセンサとを備える転がり軸受の締結状態監視方法であって、
前記センサによって前記物理量の変化を感知して出力し、
出力された前記物理量の変化により、隣合う前記分割軌道輪部材間の隙間の変化を監視する、転がり軸受の締結状態監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−47240(P2009−47240A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213942(P2007−213942)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】