説明

転動装置部品の品質検査方法及び転動装置部品用品質検査装置

【課題】転動装置部品の品質に異常があるか否かを簡便かつ迅速に検査することのできる転動装置部品の品質検査方法及び転動装置部品用品質検査装置を提供する。
【解決手段】検査すべき転動装置または転動装置部品を電磁誘導センサ30の励磁コイル32に交流電圧を印加して発生する交流磁界内に配置し、交流磁界の磁束密度の変化に伴って誘導コイル33に発生した誘導起電力の変化から転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受、ボールねじ、直動案内軸受装置などの転動装置を構成する転動装置部品(例えば軌道輪、保持器、ねじ軸、ナット、案内レール、スライダ、転動体など)の品質に異常があるか否かを検査する方法及び転動装置部品用品質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道輪、ねじ軸、スライダおよび転動体などの転動装置部品は、合金鋼などの金属材料から形成され、熱処理により発生した歪みによりクラックや表面疵が生じやすい。また、熱処理後の加工時に負荷が加わったり摩擦熱が発生したりすることによってクラックが転動装置部品内部に生じやすくなる。そのため、転がり軸受、ボールねじ、直動案内軸受装置などの転動装置を組立てる際には、クラックなどの内部欠陥や表面疵などの表面欠陥が転動装置部品にあるか否かの品質検査を行っている。
【0003】
たとえば、転がり軸受の軌道輪に割れなどの内部欠陥や表面疵などの表面欠陥があるか否かを検査する方法として、超音波探傷プローブを軌道輪の軌道面に対向して配置し、軌道輪を回転させながら超音波探傷プローブを軌道輪の軸方向に動かして軌道輪の全断面を超音波探傷する方法が知られている(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平11−337530号公報
【特許文献2】特開2000−314427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に示された方法では、軌道輪を回転させると共に超音波探傷プローブを軌道輪の軸方向に動かす必要があるため、検査時間が長くなるという問題がある。また、液体などの超音波伝達媒体中に被測定物を配置したり、超音波伝達媒体を軌道輪の表面に塗布したりしなければならないため、洗浄等の工程が必要となり、コストがかかるという問題もある。
【0005】
本発明は上述した問題点に着目してなされたものであり、その目的は、転動装置部品の品質に異常があるか否かを簡便かつ迅速に検査することのできる転動装置部品の品質検査方法及び転動装置部品用品質検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、検査すべき転動装置部品または転動装置を交流磁界内に配置し、該交流磁界の磁束密度の変化から前記転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査することを特徴とする。
請求項2の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、検査すべき転動装置部品または転動装置を励磁コイルに印加された交流電圧によって発生する交流磁界内に配置し、該交流磁界の磁束密度の変化から前記転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査するに際して、前記交流磁界内に誘導コイルを配置し、該誘導コイルに発生した誘導起電力の変化から前記転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査することを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明に係る転動装置部品用品質検査装置は、転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査する装置であって、励磁コイルと、該励磁コイルに供給された交流電流のインピーダンス変化を検出するインピーダンス変化検出手段とを具備してなることを特徴とする。
請求項4の発明に係る転動装置部品用品質検査装置は、転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査する装置であって、励磁コイルと、該励磁コイルに印加された交流電圧によって発生する交流磁界内に配置される誘導コイルと、該誘導コイルのインダクタンス変化を検出するインダクタンス変化検出手段とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
請求項5の発明に係る転動装置部品用品質検査装置は、請求項4記載の転動装置部品用品質検査装置において、前記励磁コイルと前記誘導コイルが一体の筐体内に収納されていることを特徴とする。
請求項6の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項2記載の転動装置部品の品質検査方法において、前記転動装置部品の製造工程で発生した欠陥を検出するセンサとして、励磁コイルと誘導コイルとからなる複数の電磁誘導センサを用いることを特徴とする。
【0009】
請求項7の発明に係る転動装置部品用品質検査装置は、請求項4または5記載の転動装置部品用品質検査装置において、前記誘導コイルに発生した誘導起電力を閾値と比較し、前記誘導起電力が閾値より大きい場合に欠陥有りと判定する比較判定手段と、この比較判定手段の判定結果を記録媒体に記録する記録装置とを備えたことを特徴とする。
請求項8の発明に係る転動装置部品用品質検査装置は、請求項7記載の転動装置部品用品質検査装置において、前記比較判定手段の判定結果を記憶する記憶装置を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項9の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項1または2または6記載の検査方法が欠陥の有無を検査する方法であることを特徴とする。
請求項10の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項9記載の転動装置部品の品質検査方法において、前記転動装置部品が転がり軸受の軌道輪であって、当該軌道輪の被検面となる表面部の粗さが0.4μmRa以下であり、かつ前記軌道輪の回転軸線を含み且つ回転軸に平行な方向の断面の全てを含む被検体積内に存在する欠陥の面積を平方根した長さが0.2mm以下となるように管理することを特徴とする。
【0011】
請求項11の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項9記載の転動装置部品の品質検査方法において、前記転動装置部品が転がり軸受の軌道輪であって、当該軌道輪の被検面となる表面部の粗さが0.4μmRa以下であり、かつ前記被検面から転動体直径の2%に相当する深さまでの被検体積内に存在する欠陥の面積を平方根した長さが0.2mm以下となるように管理することを特徴とする。
【0012】
請求項12の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が異材混入の有無を検査する方法であることを特徴とする。
請求項13の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が表面疲労の有無を検査する方法であることを特徴とする。
【0013】
請求項14の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が溶接剥れの有無を検査する方法であることを特徴とする。
請求項15の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が表面硬さを検査する方法であることを特徴とする。
【0014】
請求項16の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が焼入れ深さを検査する方法であることを特徴とする。
請求項17の発明に係る転動装置部品の品質検査方法は、請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が金属組織の変化を検査する方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る転動装置部品の品質検査方法及び転動装置部品用品質検査装置によれば、超音波探傷プローブの場合のように超音波伝達媒体を用いる必要がないので、転動装置部品の品質に異常があるか否かを簡便かつ迅速に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の第1の実施形態に係る転動装置部品用品質検査装置の概略構成を図1に示す。同図に示される転動装置部品用品質検査装置は励磁コイル21と、この励磁コイル21に交流電流を供給する交流電源22と、この交流電源22から励磁コイル21に供給された交流電流のインピーダンス変化を検出するインピーダンス変化検出回路23と、このインピーダンス変化検出回路23で検出されたインピーダンス変化を予め設定された閾値と比較し、インピーダンス変化検出回路23の検出値が閾値より大きい場合に被測定物(転動装置または転動装置部品)26に表面疵などの欠陥が有りと判定する比較判定回路24と、この比較判定回路24の判定結果を記憶する記憶装置27とを備えており、比較判定回路24の判定結果はCRT等の表示器25に供給されるとともに、比較判定回路24の判定結果を記録用紙等の記録媒体に記録するプリンタ等の記録装置28に供給されるようになっている。
【0017】
このように構成される転動装置部品用品質検査装置を用いて軌道輪などの転動装置部品に表面疵などの欠陥があるか否かを検査する手順としては、品質検査すべき転動装置部品または転動装置の上方に励磁コイル21を配置し、交流電源22から励磁コイル21に交流電流を供給する。そうすると、交流電源22から励磁コイル21に供給された交流電流によって交流磁界が発生する。このとき、表面疵などの欠陥が転動装置部品にあると交流磁界の磁束密度が変化し、これによって励磁コイル21に供給された交流電流のインピーダンスも欠陥の大きさに応じて変化する。したがって、励磁コイル21に供給された交流電流のインピーダンス変化をインピーダンス変化検出回路23で検出し、インピーダンス変化検出回路23で検出したインピーダンス変化と閾値とを比較判定回路24で比較することによって表面疵などの欠陥が転動装置部品にあるか否かを検査できる。これにより、欠陥を探傷するプローブとして超音波探傷プローブの場合のように超音波伝達媒体を用いる必要がないので、転動装置部品の品質(例えば欠陥の有無、異材混入の有無、表面疲労の有無、溶接剥れの有無、表面硬さ、焼入れ深さ、金属組織の変化)に異常があるか否かを簡便かつ迅速に検査することができる。また、検査後に被測定物を洗浄する必要がないので、検査後の洗浄工程が不要となり、検査コストの低減を図ることができる。
【0018】
次に、本発明の第2の実施形態に係る転動装置部品用品質検査装置の概略構成を図2に示す。同図に示される転動装置部品用品質検査装置は交流電流を出力する交流電源31と、この交流電源31から出力された交流電流により交流磁界を発生する励磁コイル32と、この励磁コイル32と一体の筐体内に設けられた誘導コイル33と、この誘導コイル33のインダクタンス変化を検出するインダクタンス変化検出回路34と、このインダクタンス変化検出回路34で検出されたインダクタンス変化を予め設定された閾値と比較し、インダクタンス変化検出回路34の検出値が閾値より大きい場合に被測定物(転動装置または転動装置部品)37に表面疵などの欠陥が有りと判定する比較判定回路35と、この比較判定回路35の判定結果を記憶する記憶装置38とを備えており、比較判定回路35の判定結果はCRT等の表示器36に供給されるとともに、比較判定回路35の判定結果を記録用紙等の記録媒体に記録するプリンタ等の記録装置39に供給されるようになっている。なお、誘導コイル33は励磁コイル32に一部を接触させて励磁コイル32と同軸に巻回されている。また、励磁コイル32と誘導コイル33は、割れなどの内部欠陥を電磁誘導方式にて検出する電磁誘導センサ30を構成している。
【0019】
このように構成される転動装置部品用品質検査装置を用いて軌道輪などの転動装置部品に割れなどの欠陥があるか否かを検査する手順としては、転動装置部品の上方に励磁コイル32を配置し、交流電源31から励磁コイル32に交流電流を供給する。そうすると、励磁コイル32に供給された交流電流によって交流磁界が発生し、このとき、割れなどの欠陥が転動装置部品にある場合は交流磁界の磁束密度が欠陥の大きさに応じて変化する。
【0020】
また、交流電源31から励磁コイル32に供給された交流電流によって交流磁界が発生すると誘導コイル33に誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル33に発生した誘導起電力は交流磁界の磁束密度に応じて変化するため、誘導コイル33のインダクタンス変化をインダクタンス変化検出回路34で検出し、インダクタンス変化検出回路34で検出したインダクタンス変化と閾値とを比較判定回路35で比較することによって表面疵などの欠陥が転動装置部品にあるか否かを検査できる。これにより、欠陥を探傷するプローブとして超音波探傷プローブの場合のように超音波伝達媒体を用いる必要がないので、転動装置部品の品質(例えば欠陥の有無、異材混入の有無、表面疲労の有無、溶接剥れの有無、表面硬さ、焼入れ深さ、金属組織の変化)に異常があるか否かを簡便かつ迅速に検査することができる。また、検査後に被測定物を洗浄する必要がないので、検査後の洗浄工程が不要となり、検査コストの低減を図ることができる。
【0021】
次に、転がり軸受部品の内部欠陥検出方法として、前記第2の実施形態に係る転動装置部品用品質検査装置を適用した内部欠陥検出装置の一例を図3に示す。同図に示される内部欠陥検出装置10Aは、被測定物である転がり軸受部品を部品単体または転がり軸受として組立てた状態あるいは半組立て状態として載置するターンテーブル11と、このターンテーブル11の上方に配置された電磁誘導センサ30と、この電磁誘導センサ30をX軸回り(図中矢印θx方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構13と、このセンサ揺動機構13を介して電磁誘導センサ30を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構14と、電磁誘導センサ30を図中X軸方向及びY軸方向に動かしてセンサを位置決めするセンサ位置決め機構16とを備えており、ターンテーブル11は転がり軸受部品の位置決め機構15により図中X軸方向に移動可能となっている。
【0022】
電磁誘導センサ30は、電磁誘導式探傷プローブの励磁コイルに印加された交流電圧により発生する交流磁界内に被測定物を配置し、前記電磁誘導式探傷プローブの誘導コイルに発生する起電力を検出するセンサで、図4に示すように、誘導コイル33と、この誘導コイル33に一部を接触させて誘導コイル33と同軸に巻回された励磁コイル32が一体の筐体内に収納されており、誘導コイル33には、励磁コイル32の励磁によって発生した交流磁界の変化を誘導コイル33に発生した誘導起電力から検出する検出回路(図示せず)が接続されている。
【0023】
なお、図3はターンテーブル11上に転がり軸受部品の外輪ともみ抜き保持器で保持された転動体を半組立ての状態で載置した場合で、転がり軸受は組立てた状態で内輪と外輪が分離可能な円筒ころ軸受であり、符号aは円筒ころ軸受の外輪、bは円筒ころ、cはもみ抜き保持器を示している。
このような内部欠陥検出装置10Aを使用してもみ抜き保持器cの内部に巣などの鋳造欠陥が存在するか否かを検査する手順としては、先ず、図3に示すように、内輪(図示せず)が取り除かれたもみ抜き保持器付き円筒ころ軸受をターンテーブル11上に載置する。次に、ターンテーブル11、センサ揺動機構13、センサ昇降機構14、センサ位置決め機構16及び被測定物である転がり軸受部品の位置決め機構15を駆動して電磁誘導センサ30をもみ抜き保持器cの端面に近づけた後、電磁誘導センサ30の励磁コイル32に交流電圧を印加すると、図5に示すような交流磁界18が電磁誘導センサ30に発生する。このとき、もみ抜き保持器cの内部に巣などの鋳造欠陥がある場合は、電磁誘導センサ30に発生した交流磁界18の磁束密度が変化することによって誘導コイル33に発生する誘導起電力も変化するため、誘導コイル33に発生した誘導起電力の変化を誘導コイル33に接続された検出回路で検出することにより、もみ抜き保持器cの内部に巣などの鋳造欠陥があるか否かを正確に検出することができる。
【0024】
次に、転がり軸受部品の内部欠陥検出方法に使用される内部欠陥検出装置の他の例を図6に示す。同図に示される内部欠陥検出装置10Bは、被測定物である転がり軸受部品を部品単体または転がり軸受として組立てた状態あるいは半組立て状態として載置するターンテーブル11と、このターンテーブル11の上方に配置された電磁誘導センサ30と、この電磁誘導センサ30を図中Z軸回り(図中矢印θz方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構19と、このセンサ揺動機構19を介して電磁誘導センサ30を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構14と、電磁誘導センサ30を図中X軸方向及びY軸方向に動かしてセンサを位置決めするセンサ位置決め機構16とを備えており、ターンテーブル11は転がり軸受部品の位置決め機構15により図中X軸方向に移動可能となっている。
【0025】
電磁誘導センサ30は、図4に示すように、誘導コイル33と、この誘導コイル33に一部を接触させて誘導コイル33と同軸に巻回された励磁コイル32が一体の筐体内に収納されており、誘導コイル33には、励磁コイル32の励磁によって発生した交流磁界の変化を誘導コイル33に発生した誘導起電力から検出する検出回路(図示せず)が接続されている。励磁コイルと誘導コイルを一体の筐体内に収納することにより、一体のユニットとして小型化できると共に作業性が良くなり、転がり軸受内部の狭い空間に設置して欠陥を検出することができる。
【0026】
このような内部欠陥検出装置10Bを使用してもみ抜き保持器cの柱部内に巣などの鋳造欠陥が存在するか否かを検査する手順としては、先ず、図6に示すように、内輪(図示せず)が取り除かれたもみ抜き保持器付き円筒ころ軸受をターンテーブル11上に載置する。次に、ターンテーブル11、センサ揺動機構19、センサ昇降機構14、センサ位置決め機構16及び被測定物である転がり軸受部品の位置決め機構15を駆動して電磁誘導センサ30をもみ抜き保持器cの柱部に近づけた後、電磁誘導センサ30の励磁コイル32に交流電圧を印加すると、図5に示すような交流磁界18が電磁誘導センサ30に発生する。このとき、もみ抜き保持器cの柱部内に巣などの鋳造欠陥がある場合は、電磁誘導センサ30に発生した交流磁界18の磁束密度が変化することによって誘導コイル33に発生する誘導起電力も変化するため、誘導コイル33に発生した誘導起電力の変化を誘導コイル33に接続された検出回路で検出することにより、もみ抜き保持器cの柱部内に巣などの鋳造欠陥があるか否かを正確に検出することができる。
【0027】
上述した実施形態では、内輪が取り除かれたもみ抜き保持器付き円筒ころ軸受をターンテーブル11上に載置して巣などの鋳造欠陥がもみ抜き保持器cの内部にあるか否かを検査したが、図7に示すように、もみ抜き保持器単体をターンテーブル11上に載置して巣などの鋳造欠陥がもみ抜き保持器cの内部にあるか否かを検査するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、転がり軸受部品としてもみ抜き保持器を例示したが、これに限られるものではない。たとえば、図8に示すように、転がり軸受部品として外輪aをターンテーブル11上に載置して外輪aの内部欠陥を電磁誘導センサ30で検出するようにしてもよい。同様に、内輪の内部欠陥の検出にも適用できる。
【0028】
なお、組立てた状態で内輪と外輪が分離可能なころ軸受としては、実施例の円筒ころ軸受に限らず、円錐ころ軸受や自動調心ころ軸受でも手で分解・組立てが可能であり、分解・組立ての繰り返しにより性能に影響する傷等が発生しなければ適用可能である。
また、上述した転がり軸受部品の内部欠陥検出方法において、転がり軸受部品は、内輪、外輪、転動体、保持器及び間座のいずれにも適用できる。また、電磁誘導センサにより転がり軸受部品の内部欠陥を検出するに際しては、転がり軸受の内輪と外輪との間に少なくとも転動体を配した状態または転動体及び保持器またはスペーサを配した状態すなわち転がり軸受を組み立てた状態で内部欠陥を検出することが可能であり、あるいは内輪の外周側または外輪の内周側に転動体及び保持器を配した状態すなわち転がり軸受を半組立の状態で内部欠陥を検出することも可能である。また、転がり軸受部品により構成される転がり軸受は内輪と外輪が組立てた状態で分離可能なころ軸受にも適用でき、さらに転がり軸受部品が銅合金もみ抜き型保持器である場合にも内部欠陥の検出能力が得られる。
【0029】
次に、図2に示した検査装置を用いて転がり軸受の軌道輪に割損などを誘発するおそれのある内部欠陥が存在するか否かを検査する場合に有用な検査方法について、図9を参照して説明する。
転がり軸受の寿命に影響を及ぼす内部欠陥が軌道輪内部に存在するか否かを検査する場合は、先ず、図9に示すように、軌道輪41の軌道面41aをその表面粗さが0.4μm以下になるまで仕上研磨する。次に、図2に示した検査装置を用いて軌道面41aの全断面における探傷検査を行う。このとき、検出した欠陥の面積を平方根した長さが0.2mmより大きい場合は軌道輪を欠陥品として排除し、検出した欠陥の面積を平方根した長さが0.2mm以下のものを転がり軸受の軌道輪として使用することで、軌道輪に割損などが発生し難くなるので、長寿命な転がり軸受を得ることができる。
【0030】
なお、軌道輪41は内輪であってもよいし、外輪であってもよい。また、図2に示した検査装置を用いて軌道輪41を探傷検査する場合、図10に示すように、軌道面41aから転動体直径Da(転動体が円錐ころの場合は小径と大径との和を2で割った値)の2%に相当する深さまでを図2に示した検査装置で探傷検査することが好ましい。
上述した実施形態では励磁コイル32と誘導コイル33とからなる電磁誘導センサ30が1個の場合を示したが、励磁コイルと誘導コイルとからなる複数個の電磁誘導センサを例えば軌道輪の軌道面周囲に配置することにより、一度に複数箇所の探傷検査を多方向から行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る転動装置部品用品質検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る転動装置部品用品質検査装置の概略構成を示す図である。
【図3】転がり軸受部品の内部欠陥検出方法に使用される内部欠陥検出装置の一例を示す図である。
【図4】図3に示される電磁誘導センサの基本的構成を示す図である。
【図5】電磁誘導センサに発生する交流磁界を模式的に示す図である。
【図6】転がり軸受部品の内部欠陥検出方法に使用される内部欠陥検出装置の他の例を示す図である。
【図7】図6に示される内部欠陥検出装置のターンテーブル上にもみ抜き保持器単体を載置した状態を示す図である。
【図8】図6に示される内部欠陥検出装置のターンテーブル上に転がり軸受の軌道輪を載置した状態を示す図である。
【図9】転がり軸受の軌道輪を示す断面図である。
【図10】軌道輪の軌道面を探傷検査する場合の探傷深さを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0032】
22,31 交流電源
23 インピーダンス変化検出回路
24,35 比較判定回路
25,36 表示器
26,37 被測定物
27,38 記憶装置
28,39 記録装置
30 電磁誘導センサ
32 励磁コイル
33 誘導コイル
34 インダクタンス変化検出回路
11 ターンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査すべき転動装置部品または転動装置を交流磁界内に配置し、該交流磁界の磁束密度の変化から前記転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査することを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項2】
検査すべき転動装置部品または転動装置を励磁コイルに印加された交流電圧によって発生する交流磁界内に配置し、該交流磁界の磁束密度の変化から前記転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査するに際して、前記交流磁界内に誘導コイルを配置し、該誘導コイルに発生した誘導起電力の変化から前記転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査することを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項3】
転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査する装置であって、励磁コイルと、該励磁コイルに供給された交流電流のインピーダンス変化を検出するインピーダンス変化検出手段とを具備してなることを特徴とする転動装置部品用品質検査装置。
【請求項4】
転動装置部品の品質に異常があるか否かを検査する装置であって、励磁コイルと、該励磁コイルに印加された交流電圧によって発生する交流磁界内に配置される誘導コイルと、該誘導コイルのインダクタンス変化を検出するインダクタンス変化検出手段とを具備してなることを特徴とする転動装置部品用品質検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の転動装置部品用品質検査装置において、前記励磁コイルと前記誘導コイルが一体の筐体内に収納されていることを特徴とする転動装置部品用品質検査装置。
【請求項6】
前記転動装置部品の製造工程で発生した欠陥を検出するセンサとして、励磁コイルと誘導コイルとからなる複数の電磁誘導センサを用いることを特徴とする請求項2記載の転動装置部品の品質検査方法。
【請求項7】
請求項4または5記載の転動装置部品用品質検査装置において、前記誘導コイルに発生した誘導起電力を閾値と比較し、前記誘導起電力が閾値より大きい場合に欠陥有りと判定する比較判定手段と、この比較判定手段の判定結果を記録媒体に記録する記録装置とを備えたことを特徴とする転動装置部品用品質検査装置。
【請求項8】
請求項7記載の転動装置部品用品質検査装置において、前記比較判定手段の判定結果を記憶する記憶装置を備えたことを特徴とする転動装置部品用品質検査装置。
【請求項9】
請求項1または2または6記載の検査方法が欠陥の有無を検査する方法であることを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項10】
前記転動装置部品が転がり軸受の軌道輪であって、当該軌道輪の被検面となる表面部の粗さが0.4μmRa以下であり、かつ前記軌道輪の回転軸線を含み且つ回転軸に平行な方向の断面の全てを含む被検体積内に存在する欠陥の面積を平方根した長さが0.2mm以下となるように管理することを特徴とする請求項9記載の転動装置部品の品質検査方法。
【請求項11】
前記転動装置部品が転がり軸受の軌道輪であって、当該軌道輪の被検面となる表面部の粗さが0.4μmRa以下であり、かつ前記被検面から転動体直径の2%に相当する深さまでの被検体積内に存在する欠陥の面積を平方根した長さが0.2mm以下となるように管理することを特徴とする請求項9記載の転動装置部品の品質検査方法。
【請求項12】
請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が異材混入の有無を検査する方法であることを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項13】
請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が表面疲労の有無を検査する方法であることを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項14】
請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が溶接剥れの有無を検査する方法であることを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項15】
請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が表面硬さを検査する方法であることを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項16】
請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が焼入れ深さを検査する方法であることを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。
【請求項17】
請求項1,2,6,9〜11のいずれか一項記載の検査方法が金属組織の変化を検査する方法であることを特徴とする転動装置部品の品質検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−32674(P2008−32674A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289101(P2006−289101)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】