説明

近距離無線システム、近距離無線装置及び近距離無線方法

【課題】2つの通信機器間での近距離無線システムにおいて、2つの通信機器間の距離の測定を安価なシステムで行い、低消費電力化で安定した高速伝送の両立を実現する。
【解決手段】例えば屋内において、2つの通信機器のうち距離測定側の通信機器は既知信号生成回路101から信号をアンテナ100から送信し、他方の距離被測定側の通信機器はその信号をアンテナ100で受けて既知信号処理回路105で所定処理後にアンテナ100から距離測定側の通信機器に返信する。距離測定側の通信機器は、パルスの送信開始から受信までの信号到来時間を到来時間算出回路106で算出し、この到来時間に基づいて距離算出回路が2つの通信機器間の距離を算出し、この算出された距離に基づいて送信電力制御回路103が送信すべき信号の送信電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信する2つの通信機器が無線通信する近距離無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話システムでは、基地局が、移動局の電波の到来方向と遅延時間とに基づいて移動局の位置をある程度の精度で計算し、その計算した移動局の位置とセル配置とを対応付けたマップを参照することにより、移動局が属するセルを判定している。そして、判定した移動局の在圏セルが、現時点で通信を行っている基地局のセルと異なる場合には、移動局と当該基地局との通信を移動先のセルの基地局との通信に切り替えて、周波数利用効率を低下させることなく通話品質の劣化や通話切断を回避しつつ、基地局や移動局の処理負担を増大させずにハンドオーバーすることを行っている。
【0003】
前記のように、携帯電話システムでは、例えば特許文献1のように基地局が移動局のみの位置を測位し、セルの切り替え等を行ってきた。
【0004】
図11は、従来の携帯電話システムおける測位を使った無線通信の構成例を示す。同図において、200は4本のアンテナ、201はデータ変調回路、202は指向性制御回路、203は遅延時間測定回路、204は到来方向測定回路、205は位置計算回路、206はゲイン制御回路、207はデータ復調回路である。尚、ここに示す構成は4つアンテナを適応したものである。
【0005】
図11では、各基地局は、移動局が発する電波の到来方向を測定する到来方向測定回路204と、移動局が発する電波の遅延時間を測定する遅延時間測定回路203と、前記到来方向測定回路204により測定された到来方向S205と前記遅延時間測定回路203により測定された遅延時間S204とから移動局の位置を計算する位置計算回路205と、送受信する電波の指向方向を制御する指向性制御回路202と、前記位置計算回路205が算出した移動局の位置S206に対応して当該指向性制御回路202の指向方向を決定し、移動局の方向へ指向性を形成して移動局と通信するデータ変調回路201と、データ復調回路206とを具備し、移動局の位置とセル配置とを対応付けたマップを参照して移動局が属するセルを判定し、この判定した移動局の在圏セルが、現時点で通信を行っている基地局のセルと異なる場合に、移動局と当該基地局との通信を移動先のセルの基地局との通信に切り替えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−169325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、昨今、マイクロ波やミリ波による数100Mbps〜数Gbpsの高速近距離無線システムにおいて、特に屋内での高速ファイル転送、高速ストリーミング等のユースケースが市場より注目されている。
【0008】
このような特に屋内での2つの通信機器間、例えば携帯電話とBlu−ray装置との間での近距離無線システムを実現する場合には、携帯電話での消費電力を少なく抑えつつ、安定した高速伝送を実現させることが必要である。
【0009】
しかしながら、前記従来に示した測位を使った携帯電話システムは、大規模な基地局、及びGPSのようなシステムを使っており、また測位精度も悪く、セルの切り替えを目的としたものであった。また、測位の対象は基地局が移動局のみに対して行っていた。従って、前記従来の携帯電話システムをそのまま屋内等での近距離無線システムに適用することはできず、携帯電話等での低消費電力化ができない。
【0010】
本発明の目的は、特に屋内での近距離無線システムにおいて、低消費電力化を図りつつ、安定した高速通信を実現することにある。
【0011】
尚、前記従来の携帯電話システムでの一般的な測位システムの欠点を以下に示す。
【0012】
1.GPSを用いた測位
ノードの消費電力やコストが高く、また衛星から電波が届かない屋内や地下での推定精度が低い。
【0013】
2.送受する無線信号の到達時間を用いた測位
一部の固定設置した基準ノードの位置を元に、他のノードの位置を推定する。しかし、ノードでの時間処理精度を高める必要がある(LNA、MIXER等アナログ回路の温度変動による精度劣化)。
【0014】
3.無線信号の受信電力を用いた測位
一部の固定設置した基準ノードの位置を元に、他のノードの位置を推定する。しかし、受信電力が距離に反比例して減衰する性質(距離減衰)を利用してノード間の距離の推定をすると、マルチパス・フェージングの影響を受け、同じ距離であっても周辺の環境によって大きく影響される。
【0015】
また、前記従来の携帯電話システムでの主要技術の概略を説明しておくと、次の通りである。指向性を制御する方法の1つとして、ビーム・フォーミング、ビーム・ステアリング、ヌル・ステアリングがある。ビーム・フォーミングは、近接する基地局が同じ周波数帯域を使えるようにする技術であって、電波の利用効率を大幅に高める効果があり、その実現に際しては、干渉局が位置する方向に電波が飛ばないようにし且つその方向からの電波を受信しないようにするヌル・ステアリングと、基地局の電波を特定の方向に集中して送るビーム・ステアリングとの2つの技術を組み合わせる。即ち、ヌル・ステアリングで基地局間及び端末−基地局間の干渉が起こらないようにしつつ、ビーム・ステアリングにより基地局からより遠くにある端末と通信できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明では、近距離無線システムにおいて、2つの通信機器同士で通信を開始する前にその2つの通信機器間の距離を測定し、その測定値に基づいて送信信号の送信電力を適切に制御することにより、低消費電力で且つ安定した高速通信の両立を実現することとする。
【0017】
具体的に、請求項1記載の発明の近距離無線システムは、2つの通信機器間で電波の送受信を近距離で行う近距離無線システムであって、前記2つの通信機器間の距離を推定し、前記推定された距離に基づいて、前記電波を送信する送信側通信機器において前記電波の送信電力を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、前記2つの通信機器は、その2つの通信機器間でデータを無線通信するデータ通信モードを持ち、前記データを送信する側の送信側通信機器は、データ送信用のアンテナと、前記データ通信モード時に、送信するデータを変調するデータ変調手段と、前記データ変調手段により変調されたデータの送信電力を、前記推定された2つの通信機器間の距離に基づいて制御し、その電力制御後のデータを前記アンテナから送信する送信電力制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、前記距離の推定は、前記電波の到来時間及び受信電力の少なくとも一方に基づいて行われることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、前記電波を受信する受信側通信機器は、前記送信側通信機器からの電波を受信した受信信号の制御ゲインを制御する受信電力制御を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明は、前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、前記2つの通信機器は、指向性アンテナを有し、自己の通信機器に対して通信相手側の通信機器が位置する角度を推定し、前記推定した角度の方向に前記指向性アンテナを制御することを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明は、前記請求項3記載の近距離無線システムにおいて、前記2つの通信機器は、この2つの通信機器間の距離を測定する測距モードを持ち、前記2つの通信機器のうち測距側の通信機器は、前記測距モード時に、予め定められた既知信号を生成してアンテナから送信する既知信号生成手段を有し、被測距側の通信機器は、前記測距モード時に、前記既知信号生成手段からの既知信号を受信し、この既知信号に基づく信号を返信信号としてアンテナから返信する既知信号処理手段を備え、前記測距側の通信機器は、更に、前記2つの通信機器間の距離の推定について、前記既知信号の送信から前記被測距側の通信機器からの返信信号の到来までの到来時間を算出する到来時間算出手段と、前記到来時間算出手段で算出された到来時間に基づいて、前記2つの通信機器間の距離を算出する距離算出手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の発明は、前記請求項3記載の近距離無線システムにおいて、前記2つの通信機器は、この2つの通信機器間の距離を測定する測距モードを持ち、前記2つの通信機器のうち測距側の通信機器は、前記測距モード時に、予め定められた既知信号を生成してアンテナから送信する既知信号生成手段を有し、被測距側の通信機器は、前記測距モード時に、前記既知信号生成手段からの既知信号を受信し、この既知信号に基づく信号を返信信号としてアンテナから返信する既知信号処理手段を備え、前記測距側の通信機器は、更に、前記2つの通信機器間の距離の推定について、前記被測距側の通信機器からの返信信号の受信電力を解析する受信電力解析手段と、前記受信電力解析手段で解析された受信電力に基づいて、前記2つの通信機器間の距離を算出する距離算出手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
請求項8記載の発明は、前記請求項7記載の近距離無線システムにおいて、前記測距側の通信機器からの既知信号の送信と、前記被測距側の通信機器からの返信信号の返信とは、前記アンテナを通信相手の通信機器の方向に指向して行われることを特徴とする。
【0025】
請求項9記載の発明は、前記請求項4記載の近距離無線システムにおいて、前記受信側通信機器は、前記送信側通信機器からの電波の受信信号の制御ゲインを、前記算出した距離に基づいて制御する受信電力制御手段と、前記受信電力制御手段により制御された制御ゲインで調整された電波である受信信号をデータに復調するデータ復調手段とを備えたことを特徴とする。
【0026】
請求項10記載の発明は、前記請求項5記載の近距離無線システムにおいて、前記2つの通信機器は、この2つの通信機器間での電波の通信方向の角度を測定する測位モードを持ち、前記測位モード時に前記指向性アンテナの指向方向を複数回変更する指向性制御手段と、前記2つの通信機器のうち測位側の通信機器は、前記測位モード時に、前記指向性アンテナにより受信された電波と、前記指向性制御手段により変更された前記指向性アンテナの指向方向とに基づいて、前記受信された電波の到来方向の角度を算出する測角手段を備え、前記測角手段により算出された電波の到来方向に、前記指向性アンテナの指向方向が固定されることを特徴とする。
【0027】
請求項11記載の発明は、前記請求項10記載の近距離無線システムにおいて、前記指向性制御手段は、前記指向性アンテナの指向性の3次元の広がりを任意に変更可能であることを特徴とする。
【0028】
請求項12記載の発明は、前記請求項10記載の近距離無線システムにおいて、前記指向性制御手段は、前記測位モード時に前記指向性アンテナの指向方向を複数の方向に振り、前記測角手段は、前記指向性アンテナから受信された電波と、前記指向性制御手段による前記指向性アンテナの指向性制御情報とに基づいて、前記電波の受信電力を解析し、その受信電力解析情報を出力する電力解析手段と、前記電力解析手段の前記受信電力解析情報に基づいて、受信した電波の方向の角度を算出する角度算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0029】
請求項13記載の発明は、前記請求項10記載の近距離無線システムにおいて、前記指向性制御手段は、前記指向性アンテナの指向方向を前記角度算出手段で算出された角度に固定し、前記電力解析手段は、前記角度が固定された指向性アンテナから受信された電波の受信電力を再解析することを特徴とする。
【0030】
請求項14記載の発明は、前記請求項12又は13記載の近距離無線システムにおいて、前記指向性アンテナで受信した電波を所定の制御ゲインで増幅するゲイン制御手段と、前記電力解析手段の受信電力解析情報に基づいて、前記ゲイン制御手段の所定の制御ゲインを算出して前記ゲイン制御手段に出力するゲイン算出手段と、前記ゲイン制御手段の前記所定の制御ゲインで増幅された電波のデータを復調するデータ復調手段とを備えたことを特徴とする。
【0031】
請求項15記載の発明は、前記請求項12又は13記載の近距離無線システムにおいて、前記電力解析手段の受信電力解析情報に基づいて、電波の受信電力の変動値が所定の閾値を超えたことを検出する受信電力変動検出手段を備え、前記受信電力変動検出手段の検出信号は、測位開始信号として、前記指向性制御手段及び前記測角手段に通知されることを特徴とする。
【0032】
請求項16記載の発明は、前記請求項6記載の近距離無線システムにおいて、前記被測距側の通信機器には、周囲温度を検出し、その検出した温度情報を前記測距側の通信機器に送信する温度検出手段が備えられ、前記測距側の通信機器に備える前記到来時間算出手段は、前記温度検出手段から送信された温度情報に基づいて、前記算出する到来時間を補正することを特徴とする。
【0033】
請求項17記載の発明の近距離無線通信機器は、2つの通信機器間で電波の送受信を近距離で行う近距離無線システムで使用する近距離無線通信機器であって、受けた電波に基づいて前記2つの通信機器間の距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段により算出された距離に基づいて、送信する電波の送信電力を制御する送信電力制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0034】
請求項18記載の発明の近距離無線方法は、2つの通信機器間で電波の送受信を近距離で行う近距離無線方法において、前記2つの通信機器間の距離を算出し、その後、前記算出した距離に基づいて、送信する電波の送信電力を制御することを特徴とする。
【0035】
前記により、請求項1〜18記載の発明では、データの送受信の前に、通信する2つの通信機器間において、例えば通信機器間の電波の到来時間や、電波の受信電力に基づいて2つの通信機器間の距離を推定し、この推定した距離に基づいて電波の送信電力を適切に制御するので、低消費電力で安定した高速通信が実現できる。
【0036】
特に、請求項5記載の発明では、2つの通信機器間の通信では、アンテナを指向性アンテナとし、通信相手方の通信機器の方向に向けて電波を送信するので、2つの通信機器間の距離の推定が正確になり、電波の送信電力の制御がより適切になり、より一層の低消費電力化が可能である。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、請求項1〜18記載の発明によれば、近距離無線システムにおいて、データの送受信の前に、通信する2つの通信機器間の距離を推定し、この推定した距離に基づいて電波の送信電力を適切に制御するので、低消費電力で安定した高速通信が実現可能である。
【0038】
特に、請求項5記載の発明によれば、2つの通信機器間の通信を通信相手方の通信機器の方向に向けた指向性を持たせたので、2つの通信機器間の距離の推定をより正確にして、電波の送信電力の制御がより適切にでき、より一層の低消費電力化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1の近距離無線システムを示すブロック図である。
【図2】同近距離無線システムの動作を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の実施形態2の近距離無線システムの動作を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の実施形態3の近距離無線システムを示すブロック図である。
【図5】同近距離無線システムの動作を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の実施形態4の近距離無線システムを示すブロック図である。
【図7】同近距離無線システムの動作を示すフローチャート図である。
【図8】本発明の実施形態3の近距離無線システムにおけるミリ波規格のプリアンブル長の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態5の近距離無線システムを示すブロック図である。
【図10】同近距離無線システムの動作を示すフローチャート図である。
【図11】従来の近距離無線システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0041】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の近距離無線システムの構成を示す。
【0042】
同図において、100は4本のアンテナ、101は既知信号生成回路、102はデータ変調回路、103は送信電力制御回路、104は指向性制御回路、105は既知信号処理回路、10は測距回路、11は測角回路、106は到来時間算出回路、107は距離算出回路、108は電力解析回路、109は角度算出回路、110はゲイン制御回路、111はデータ復調回路である。尚、図1に示した構成は、4つアンテナでビーム・フォーミングに適応したものである。尚、アンテナ100の本数は、2つ以上あれば良い。
【0043】
図1の構成は1つの通信機器の構成を示す。この構成を持つ2つの通信機器のうち、一方の通信機器が測位モード時に測距をする側(以降、通信機器1という)となり、他方の通信機器が測位モード時に測距をされる側(以降、通信機器2という)になって、この2つの通信機器がデータ通信モード時に無線通信する近距離無線システムである。
【0044】
尚、通信機器1と通信機器2とは、近距離無線システム部については前記図1に示した同じ構成を有し、それ以外の構成については、違う構成要素であっても良い。例えば、BDレコーダー、DSC、DVC、Kiosk端末等に近距離無線システム部が搭載されているケースなどである。
【0045】
以下、前記各回路の概略構成を説明する。図1において、既知信号生成回路101は、測位モード信号S0を入力とし、測位モード時に、予め定められた送信信号(電波)S1を出力し、アンテナ100より送信する。データ変調回路102は、データ通信モード信号S2と送信電力値S4とゲイン制御値S17とを入力とし、データ通信モード時に、送信データを変調して送信信号S3を出力する。送信電力制御回路103は、データ通信モード信号S2と送信信号S3とを入力とし、データ通信モード時に、送信電力制御後の送信信号S5をアンテナ100より送信する。
【0046】
指向性制御回路104は、測位モード信号S0と受信電力情報S12と角度情報S13とを入力とし、測位モード時に、アンテナ100の指向性を制御する指向性制御信号S6と指向性制御情報S7とを出力する。前記アンテナ100の指向性の制御時には、指向性制御回路104はアンテナ100を毎回振る角度(指向性の3次元の広がり)を任意に設定変更可能である。既知信号処理回路105は、測位モード信号S0とアンテナ100より受信された受信信号S8とを入力とし、測位モード時に、予め定められた受信信号を所定信号処理した後にアンテナ100より送信する。
【0047】
また、測距回路10は、測位モード信号S0とアンテナ100により受信された受信信号S8と受信電力情報S12とを入力とし、測位モード時に、2つの通信機器1、2間の距離を算出し、距離情報S11として出力する。測角回路11は、測位モード信号S0と指向性制御情報S7と受信信号S8とを入力とし、測位モード時に、受信電力と各々の通信相手となる通信機器1、2の位置方向の角度を算出し、受信電力情報S12と角度情報S13とを出力する。
【0048】
更に、ゲイン制御回路110は、データ通信モードS2と受信信号S7と距離情報S11とを入力とし、データ通信モード時に、ゲイン制御を行い、ゲイン制御後の受信信号S14と、距離情報S11から算出したゲイン制御値S17とを出力する。データ復調回路111は、データ通信モード信号S2とゲイン制御後の受信信号S14とを入力とし、データ通信モード時に、受信信号S14の復調を行い、受信データS15と通信機器1の送信電力値S16と通信機器1のゲイン制御値S18とを出力する。
【0049】
前記測距回路10は、到来時間算出回路106と距離算出回路107とから構成されている。前記到来時間算出回路106は、測位モード信号S0と受信信号S8とを入力とし、測位モード時に、送信信号の送信時から通信相手からその送信信号が返信されてくるまでの到来時間を算出し、到来時間情報S10を出力する。距離算出回路107は、測位モード信号S0と到来時間情報S10と受信電力情報S12とを入力とし、前記算出した到来時間と受信電力との1つ以上の情報に基づいて、2つの通信機器1、2間の距離を算出し、距離情報S11を出力する。
【0050】
更に、前記測角回路11は、電力解析回路108と角度算出回路109とから構成されている。前記電力解析回路108は、測位モード信号S0と指向性制御情報S7と受信信号S8とを入力とし、測位モード時に、受信電力解析情報S11と指向性の方向の固定後の受信電力S12とを出力する。前記角度算出回路109は、測位モード信号S0と受信電力解析情報S11とを入力し、測位モード時に、各々の通信相手となる通信機器1、2への位置方向の角度を算出し、角度情報S13を出力する。
【0051】
次に、前記図1の近距離無線システムの各回路の動作を図2に示したフローチャートにより、詳細に説明する。
【0052】
通信機器1(例えば携帯電話)では、図2左側に記載したように、測位モード信号S0の有効時に、指向性制御回路104から出力される指向性制御信号S6によりアンテナ100を先ず無指向性に設定し、その後、既知信号生成回路101から生成された予め定めた送信信号S1を前記無指向性のアンテナ100から任意の間隔で送信する。尚、前記予め定められた送信信号S1は、パルス信号でも良く、また、その他の信号でも良い。
【0053】
前記通信機器2(例えばBlu-ray記録再生装置)では、図2右側に記載したように、測位モード信号S0の有効時に、指向性制御回路104から出力される指向性制御信号S6によりアンテナ100を無指向性に設定した後、この無指向性のアンテナ100により信号を受け、この受けた信号の電力解析を電力解析回路108で行い、その電力解析の結果の受信電力情報S12がある閾値を越えた場合に、通信機器1から送信信号が来たと判断する。そして、送信信号が来たと判断した場合には、指向性制御回路104から出力される指向性制御信号S6により、アンテナ100を指向性に設定し、アンテナ100の指向性を複数の方向に振りながら、電力解析回路108により電力解析を行って、受信電力と指向性制御情報S7とから受信電力の大きさとアンテナ100の指向性の方向の対応付けを行った受信電力解析情報S11を作成する。角度算出回路109では、前記作成された受信電力解析情報S11に基づいて、通信相手の通信機器1の位置方向の角度を算出し、送信信号の到来方向を推定する。更に、通信機器2では、到来方向の推定の完了後、指向性制御回路104から出力される指向性制御信号S6により、アンテナ100の指向性を通信機器1が位置する推定方向に指向性の角度を固定させる。その後、通信機器1からの送信信号S1を前記指向性が通信機器1の方向に固定されたアンテナ100で受信し、既知信号処理回路105による所定の信号処理後、送信信号S9として指向性の固定されたアンテナ100から通信機器1へ返信する。尚、前記所定の信号処理は、通信機器1からの送信波形を検波し、波形整形する処理でも良く、また、その他の処理でも良い。
【0054】
その後は、通信機器1では、自己の無指向性に設定したアンテナ100により受信された信号の電力解析を電力解析回路108で行い、その解析結果の受信電力が所定の閾値を越えた場合に、通信機器2から返信されて来た送信信号S9を受信したと判断する。そして、この通信機器2からの送信信号S9の受信と判断した場合には、以後、その受信信号S9に基づいて、その受信信号の受信電力と、自己の通信機器1からの送信信号S1の送信時から受信信号S9の受信までの信号の到来時間とを算出し、この算出した受信電力と到来時間との少なくとも何れか一方に基づいて2つの通信機器1、2間の距離を算出、推定する。
【0055】
以下、その通信機器1、2間の距離の算出、推定を説明する。通信機器1では、前記通信機器2からの送信信号S9を受信したと判断した後、指向性制御回路104から出力される指向性制御信号S6によりアンテナ100を指向性に設定し、そのアンテナ100の指向性を複数の方向に振りながら、前記通信機器2からの送信信号S9について測角回路10の電力解析回路108により電力解析を行い、その解析結果の受信電力と前記指向性制御回路104の指向性制御情報S7とに基づいて、前記通信機器2からの送信信号S9の受信電力の大きさと指向性の方向の対応付けを行った受信電力解析情報S11を作成する。その後、測角回路10の角度算出回路109では、前記受信電力解析情報S11に基づいて、通信機器2の位置方向の角度を算出し、送信信号S9の到来方向を推定する。更に、通信機器1では、前記到来方向の推定完了後、指向性制御回路104から出力される指向性制御信号S6により、アンテナ100の指向性を通信機器2が位置すると推定される方向に指向性の角度を固定させる。
【0056】
前記測角回路11の処理と並行して、通信機器1では、測距回路10の到来時間算出回路106により、自己の通信機器1からの送信信号S1の送信時から通信機器2を経て自己の通信機器1に送信信号S9として到来してくるまでの到来時間を、下記式1、2に基づいて算出する。
【0057】
到来時間=送信到達時間(通信機器1→通信機器2)
+内部処理時間(通信機器2の固定遅延)
+受信到来時間(通信機器2→通信機器1) …式1
通信機器1、2の到来時間=(到来時間−内部処理時間)/2 …式2
前記到来時間算出回路106は、前記算出した通信機器1、2間の送信信号の到来時間を到来時間情報S10として出力する。距離算出回路107は、下記式3により、前記算出した到来時間から、通信機器1、2間の距離を算出する。
【0058】
距離=時間×光速(3×10m/s) …式3
前記距離の算出は、前記式1、2、3に基づいたが、それ等以外の式に基づいて算出しても良い。
【0059】
前記式1及び2において、それ等式に含まれる内部処理時間は、主に既知信号処理回路105の処理時間である。この既知信号処理回路105の構成は種々の回路構成が想定できるが、その構成要素であるアナログ回路から構成されるブロックを信号通過して行く際に、誤差成分が含まれ、この誤差成分はそのアナログ回路の温度変動に応じて変動するため、距離情報S11に対する温度変動の影響が大きくなる。そこで、前記到来時間に基づく通信機器1、2間の距離の推定に加えて、受信電力に基づく距離の推定を行う。
【0060】
この受信電力に基づく距離の推定は、次のようにして行う。即ち、通信機器2から送信信号S9を指向性の固定されたアンテナ100から通信機器1に返信するに際して、その送信信号S9の送信電力を、予め定めた送信電力に設定しておく。そして、通信機器1、2のアンテナ100の指向性を通信相手の方向の角度に固定した状態で、通信機器1の電力解析回路108を用いて、前記送信信号S9の受信電力の再測定を行う。これにより、指向性が固定された後であるので、マルチパスの影響を受けない受信電力を測定することができる。そして、この受信電力に基づいて通信機器1、2間の距離を推定する。この距離の推定は、受信電力の伝播損失が距離の2乗に比例し、波長の2乗に反比例する性質を利用することにより、距離の算出、推定を行う。
【0061】
このように、算出された到来時間情報S10と再測定された受信電力情報S12とのうち1つ以上の情報を使って測距をすることにより、測距の精度向上を図ることができる。送信電力制御回路103は、前記算出推定された距離情報S11に基づいて、送信電力を制御する。この送信電力制御は、送信電力制御回路103の内部に、距離と送信電力値との対応関係を予め記憶したテーブルを持つことにより可能であり、このテーブルにより、送信電力制御回路103の特性を考慮した送信電力制御もできる。また、その他の方法でも良い。
【0062】
更に、前記到来時間情報S10と再測定された受信電力情報S12とのうち1つ以上の情報を使って測距された距離情報S11に基づいて、ゲイン制御回路(受信電力制御手段)110に予め通信機器1の適切なゲイン制御値S17を設定することが可能である。これは、先に述べたように距離により受信電力の伝播損失が算出できるからである。
【0063】
前記測位モードが終了して、測位モードからデータ通信モードに移行すると、受信データの復調は次のように行う。即ち、通信機器1から通機機器2への最初の無線通信の際に、通信機器1の送信電力制御回路103で算出された適切な送信電力値S4、及びゲイン制御回路110で設定された適切なゲイン制御値S17をデータ変調回路102に送り、これ等の情報S4、S17を他のデータと共に変調して送信信号S3とし、この送信信号S3の送信電力を送信電力制御回路103で前記制御された送信電力値に制御して、送信信号S5として指向性アンテナ100より送信する。通信機器2では、指向性アンテナ100により受信された前記通信機器1からの送信信号S5をゲイン制御回路110で所定ゲイン値で制御した後、データ復調回路111において、通信機器1での送信電力値S16と、通信機器1でのゲイン制御値S17とを復調し、この通信機器1の送信電力値S16を自己の通信機器2の送信電力制御回路103に、通信機器1のゲイン制御値S17を自己の通信機器2のゲイン制御回路110に再設定する。そして、通信機器1、2間でのデータの送受信に際しては、送信電力制御回路103での送信データの適切な送信電力制御が行われると共に、ゲイン制御回路110での適切なゲイン制御値S17を基準とした受信データのゲイン制御を行った後にデータ復調回路111でそのゲイン制御後の受信データが復調される。
【0064】
よって、2つの通信機器同士で通信を開始する前に単純な測位方式で測位を行い、その値により送信電力及び受信電力を適切に制御し、また指向性アンテナを制御することにより、低消費電力と、マルチパスの影響を受けない安定した高速近距離無線通信を実現することができる。
【0065】
(実施形態2)
続いて、本発明の実施形態2の近距離無線システムについて説明する。
【0066】
図3は、本発明の実施形態2の近距離無線システムの動作フローチャートを示す。本実施形態では、指向性アンテナ100の指向性制御に関する。尚、本実施形態の近距離無線システムの構成は図1と同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図3では、通信機器1において、測位モード信号S0の有効時に、指向性制御回路104から出力される指向性制御信号S6によってアンテナ100を指向性に設定すると共に、その指向性アンテナ100を複数の方向に振りながら、既知信号生成回路101から生成された送信信号S1をその指向性アンテナ100から任意の時間間隔で送信する。尚、前記送信信号S1は、パルス信号でも良く、また、その他の信号でも良い。
【0068】
これにより、測位モード時でも、実施形態1の場合の無指向性のアンテナ100で送信する設定よりも、指向性にすることによって、より指向性ゲインを得ることができ、それに対応した送信電力の削減ができ、更なる低消費電力化を測ることが出来る。
【0069】
しかし、通信機器1、2共に各々のアンテナ100の指向性を複数の方向に振っているため、お互いの指向性方向が当たらなくて、正確な受信電力を見つけるのに時間がかかる場合がある。この場合、通信機器2の電力解析回路108である所定の時間を過ぎても受信電力が検出できないときは、通信機器1、2の指向性の3次元の広がりを広げて受信電力の検出を早めても良い。これ以降の実施形態2の動作フローについては、実施形態1と同様である。
【0070】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3の近距離無線システムについて説明する。
【0071】
図4は本発明の実施形態3の近距離無線システムの構成を示す。同図において、100は4本のアンテナ、101は既知信号生成回路、102はデータ変調回路、103は送信電力制御回路、104は指向性制御回路、105は既知信号処理回路、10は測距回路、11は測角回路、106は到来時間算出回路、107は距離算出回路、108は電力解析回路、109は角度算出回路、110はゲイン制御回路、111はデータ復調回路である。以上の構成は図1と同様である。
【0072】
本実施形態では、更に、ゲイン算出回路112が追加される。このゲイン算出回路112は、通信機器1、2の各々のアンテナ100の指向性が固定された後、再測定された受信電力情報S12を入力とし、ゲイン制御回路110のゲイン制御値S17を算出して出力する。
【0073】
次に、図5のフローチャートを参照に、各部の動作をより詳細に説明する。図3のフローチャートと異なる点は、通信機器1では、測位モード時において、電力解析回路108で再測定後の受信電力情報S12に基づいて、ゲイン算出回路112が再測定後の自己の受信電力情報S12に応じた適切なゲイン制御値S17を算出し、この算出したゲイン制御値S17をゲイン制御回路110の初期値として設定する。これにより、図8に示したように、ミリ波の規格(IEEE802.15.3c、ECMA、NGmS等)で規定されているプリアンブルが短い(約2μ〜3μ)場合であっても、高速に受信信号のゲイン制御を行うことができ、安定した高速通信をすることが出来る。また、通信機器2でも、前記と同じように、自己の電力解析回路108で再測定後の受信電力情報S12に基づいて、ゲイン算出回路112が再測定後の自己の受信電力情報S12に応じた適切なゲイン制御値S17を算出し、このゲイン制御値S17を自己のゲイン制御回路110の初期値として設定する。これにより、更に安定した高速通信をすることが出来る。
【0074】
(実施形態4)
図6は、本発明の実施形態4の近距離無線システムの構成を示す。
【0075】
同図において、100は4本のアンテナ、101は既知信号生成回路、102はデータ変調回路、103は送信電力制御回路、104は指向性制御回路、105は既知信号処理回路、10は測距回路、11は測角回路、106は到来時間算出回路、107は距離算出回路、108は電力解析回路、109は角度算出回路、110はゲイン制御回路、111はデータ復調回路である。以上の構成は図1と同様である。
【0076】
本実施形態では、更に、受信電力変動検出回路113が追加される。この受信電力変動検出回路113は、通信機器1、2の各々のアンテナ100の指向性が固定された後、受信電力の再測定後も継続して受信電力を測定した受信電力情報S12を入力とし、指向性制御回路104に受信電力変動情報S20を出力する。
【0077】
次に、本実施形態の近距離無線システムの動作を図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0078】
前記実施形態1又は2と同様に、データ通信モード時では、通信機器1、2は、相互に、その相手方の位置方向の角度にアンテナ100を指向させた状態で、データ変調回路102で変調されたデータを両通信機器間の距離に応じた送信電力値で送信すると共に、受信したデータを受信電力に応じた適切な制御ゲイン値を基準にゲイン制御された後、データ復調回路111で復調される。
【0079】
ここで、受信電力変動検出回路113は、常に電力解析回路108で継続的に受信電力を測定した受信電力情報S12を入力とし、この受信電力情報S12が所定の閾値より超えた場合には、通信機器1、2の位置移動等が発生したものと判断して、指向性制御回路104及び測角回路11に対して測位開始信号として前記受信電力変動情報S20を出力し、測位モード以降に戻って、再度、測位シーケンスでキャリブレーションを行う。
【0080】
従って、受信電力の変化を監視することにより、通信機器1、2の相対位置移動などの状況の変化に追従できて、安定した高速通信を行うことができる。
【0081】
(実施形態5)
図9は本発明の実施形態5の近距離無線システムの構成を示す。
【0082】
同図において、100は4本のアンテナ、101は既知信号生成回路、102はデータ変調回路、103は送信電力制御回路、104は指向性制御回路、105は既知信号処理回路、10は測距回路、11は測角回路、106は到来時間算出回路、107は距離算出回路、108は電力解析回路、109は角度算出回路、110はゲイン制御回路、111はデータ復調回路である。以上の構成は図1と同様である。
【0083】
本実施形態では、更に、前記既知信号処理回路105の内部に、温度検出回路1050が配置される。この温度検出回路1050の機能及び動作を以下に説明する。
【0084】
既述した前記式1、2の通り、通信機器1、2間での信号の到来時間は、既知信号処理回路105の処理時間にも依存し、この処理時間は既知信号処理回路105の温度変動によって変動するため、本実施形態では、前記既知信号処理回路105に内蔵した温度検出回路1050により既知信号処理回路105の温度を検出し、この温度情報に基づいて前記式1、2による通信機器1、2間での信号の到来時間を補正するようにしている。
【0085】
具体的には、図10のフローチャートに示したように、温度検出回路1050により検出された温度情報S21は送信信号S9に多重されて、通信機器2の指向性の固定されたアンテナ100から通信機器1に送信される。通信機器1では、到来時間算出回路106により、前記温度情報S21に基づいて到来時間の補正を行う。この補正は、例えば、既知信号処理回路105の温度に対応した内部処理時間に影響する時間をテーブルに記憶しておき、このテーブルに従って、到来時間算出回路106の算出する到来時間を補正する。
【0086】
従って、本実施形態では、既知信号処理回路105の温度変動に影響されずに、通信機器1、2間の距離算出精度を高めて、送信信号の送信電力をより適切に制御することができる。
【0087】
尚、データ通信モードS2の有効時に温度情報S21を通信機器2から通信機器1へ通知しても良い。その場合、再度、電力制御値を再設定する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、データの送受信の前に、通信する2つの通信機器間の距離を推定し、この推定した距離に基づいて電波の送信電力を適切に制御し、低消費電力で安定した高速通信が実現可能であるので、屋内などでのミリ波による数100Mbps〜数Gbpsの高速近距離無線システムに適用して有用である。
【符号の説明】
【0089】
100、200 アンテナ
101 既知信号生成回路(既知信号生成手段)
102、201 データ変調回路(データ変調手段)
103 送信電力制御回路(送信電力制御手段)
104、202 指向性制御回路(指向性制御手段)
105 既知信号処理回路(既知信号処理手段)
10 測距回路
106 到来時間算出回路(到来時間算出手段)
107 距離算出回路(距離算出手段)
11 測角回路(測角手段)
108 電力解析回路(電力解析手段、受信電力解析手段)
109 角度算出回路(角度算出手段)
110 ゲイン制御回路(ゲイン制御手段、受信電力制御手段)
111、206 データ復調回路(データ復調手段)
112 ゲイン算出回路(ゲイン算出手段)
113 受信電力変動検出回路(受信電力変動検出手段)
203 遅延時間測定回路(遅延時間測定手段)
204 到来方向測定回路(到来方向測定手段)
205 位置計算回路(位置計算手段)
1050 温度検出回路(温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの通信機器間で電波の送受信を近距離で行う近距離無線システムであって、
前記2つの通信機器間の距離を推定し、
前記推定された距離に基づいて、前記電波を送信する送信側通信機器において前記電波の送信電力を制御する
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項2】
前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、
前記2つの通信機器は、その2つの通信機器間でデータを無線通信するデータ通信モードを持ち、
前記データを送信する側の送信側通信機器は、
データ送信用のアンテナと、
前記データ通信モード時に、送信するデータを変調するデータ変調手段と、
前記データ変調手段により変調されたデータの送信電力を、前記推定された2つの通信機器間の距離に基づいて制御し、その電力制御後のデータを前記アンテナから送信する送信電力制御手段とを備えた
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項3】
前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、
前記距離の推定は、前記電波の到来時間及び受信電力の少なくとも一方に基づいて行われる
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項4】
前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、
前記電波を受信する受信側通信機器は、
前記送信側通信機器からの電波を受信した受信信号の制御ゲインを制御する受信電力制御を行う
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項5】
前記請求項1記載の近距離無線システムにおいて、
前記2つの通信機器は、
指向性アンテナを有し、
自己の通信機器に対して通信相手側の通信機器が位置する角度を推定し、
前記推定した角度の方向に前記指向性アンテナを制御する
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項6】
前記請求項3記載の近距離無線システムにおいて、
前記2つの通信機器は、この2つの通信機器間の距離を測定する測距モードを持ち、
前記2つの通信機器のうち測距側の通信機器は、前記測距モード時に、予め定められた既知信号を生成してアンテナから送信する既知信号生成手段を有し、
被測距側の通信機器は、前記測距モード時に、前記既知信号生成手段からの既知信号を受信し、この既知信号に基づく信号を返信信号としてアンテナから返信する既知信号処理手段を備え、
前記測距側の通信機器は、更に、前記2つの通信機器間の距離の推定について、前記既知信号の送信から前記被測距側の通信機器からの返信信号の到来までの到来時間を算出する到来時間算出手段と、前記到来時間算出手段で算出された到来時間に基づいて、前記2つの通信機器間の距離を算出する距離算出手段とを備える
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項7】
前記請求項3記載の近距離無線システムにおいて、
前記2つの通信機器は、この2つの通信機器間の距離を測定する測距モードを持ち、
前記2つの通信機器のうち測距側の通信機器は、前記測距モード時に、予め定められた既知信号を生成してアンテナから送信する既知信号生成手段を有し、
被測距側の通信機器は、前記測距モード時に、前記既知信号生成手段からの既知信号を受信し、この既知信号に基づく信号を返信信号としてアンテナから返信する既知信号処理手段を備え、
前記測距側の通信機器は、更に、前記2つの通信機器間の距離の推定について、前記被測距側の通信機器からの返信信号の受信電力を解析する受信電力解析手段と、前記受信電力解析手段で解析された受信電力に基づいて、前記2つの通信機器間の距離を算出する距離算出手段とを備える
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項8】
前記請求項7記載の近距離無線システムにおいて、
前記測距側の通信機器からの既知信号の送信と、前記被測距側の通信機器からの返信信号の返信とは、前記アンテナを通信相手の通信機器の方向に指向して行われる
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項9】
前記請求項4記載の近距離無線システムにおいて、
前記受信側通信機器は、
前記送信側通信機器からの電波の受信信号の制御ゲインを、前記算出した距離に基づいて制御する受信電力制御手段と、
前記受信電力制御手段により制御された制御ゲインで調整された電波である受信信号をデータに復調するデータ復調手段と
を備えたことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項10】
前記請求項5記載の近距離無線システムにおいて、
前記2つの通信機器は、この2つの通信機器間での電波の通信方向の角度を測定する測位モードを持ち、
前記測位モード時に前記指向性アンテナの指向方向を複数回変更する指向性制御手段と、
前記2つの通信機器のうち測位側の通信機器は、前記測位モード時に、前記指向性アンテナにより受信された電波と、前記指向性制御手段により変更された前記指向性アンテナの指向方向とに基づいて、前記受信された電波の到来方向の角度を算出する測角手段を備え、
前記測角手段により算出された電波の到来方向に、前記指向性アンテナの指向方向が固定される
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項11】
前記請求項10記載の近距離無線システムにおいて、
前記指向性制御手段は、
前記指向性アンテナの指向性の3次元の広がりを任意に変更可能である
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項12】
前記請求項10記載の近距離無線システムにおいて、
前記指向性制御手段は、前記測位モード時に前記指向性アンテナの指向方向を複数の方向に振り、
前記測角手段は、
前記指向性アンテナから受信された電波と、前記指向性制御手段による前記指向性アンテナの指向性制御情報とに基づいて、前記電波の受信電力を解析し、その受信電力解析情報を出力する電力解析手段と、
前記電力解析手段の前記受信電力解析情報に基づいて、受信した電波の方向の角度を算出する角度算出手段とを備えた
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項13】
前記請求項10記載の近距離無線システムにおいて、
前記指向性制御手段は、前記指向性アンテナの指向方向を前記角度算出手段で算出された角度に固定し、
前記電力解析手段は、前記角度が固定された指向性アンテナから受信された電波の受信電力を再解析する
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項14】
前記請求項12又は13記載の近距離無線システムにおいて、
前記指向性アンテナで受信した電波を所定の制御ゲインで増幅するゲイン制御手段と、
前記電力解析手段の受信電力解析情報に基づいて、前記ゲイン制御手段の所定の制御ゲインを算出して前記ゲイン制御手段に出力するゲイン算出手段と、
前記ゲイン制御手段の前記所定の制御ゲインで増幅された電波のデータを復調するデータ復調手段とを備えた
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項15】
前記請求項12又は13記載の近距離無線システムにおいて、
前記電力解析手段の受信電力解析情報に基づいて、電波の受信電力の変動値が所定の閾値を超えたことを検出する受信電力変動検出手段を備え、
前記受信電力変動検出手段の検出信号は、測位開始信号として、前記指向性制御手段及び前記測角手段に通知される
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項16】
前記請求項6記載の近距離無線システムにおいて、
前記被測距側の通信機器には、周囲温度を検出し、その検出した温度情報を前記測距側の通信機器に送信する温度検出手段が備えられ、
前記測距側の通信機器に備える前記到来時間算出手段は、前記温度検出手段から送信された温度情報に基づいて、前記算出する到来時間を補正する
ことを特徴とする近距離無線システム。
【請求項17】
2つの通信機器間で電波の送受信を近距離で行う近距離無線システムで使用する近距離無線通信機器であって、
受けた電波に基づいて前記2つの通信機器間の距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段により算出された距離に基づいて、送信する電波の送信電力を制御する送信電力制御手段とを備えた
ことを特徴とする近距離無線通信機器。
【請求項18】
2つの通信機器間で電波の送受信を近距離で行う近距離無線方法において、
前記2つの通信機器間の距離を算出し、
その後、前記算出した距離に基づいて、送信する電波の送信電力を制御する
ことを特徴とする近距離無線方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−41211(P2011−41211A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189433(P2009−189433)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】