説明

透明フィルム並びにそれを用いた液晶ディスプレイ素子及び液晶表示装置

【課題】面内及び膜厚方向のレターデーションが小さく、光学特性のバラツキや温度、湿度などの環境変化による変動が少なく、液晶表示装置の視野角特性を改善でき、さらにカールの絶対値が小さく、また温度、湿度などの環境変化によるカールの変動が小さく、液晶表示装置のワープ特性を改善できる透明フィルムを得る。
【解決手段】セルロースエステルと架橋ポリマーとのセミIPN(半相互貫入型網目構造)型ポリマーアロイを有し、かつ膜厚方向のレターデーション値(Rth(630) :Rth(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である)が−25以上+25以下である透明フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルム、該透明フィルムを基板とした液晶ディスプレイ素子、有機ELディスプレイ素子、有機EL照明装置、タッチパネルなどのディスプレイ素子、光学補償フィルム、偏光板液晶表示装置および該透明フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能など様々な利点からパーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は液晶セル内の液晶の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流である。
【0003】
一般に液晶表示装置は液晶セル、位相差フィルム、偏光板から構成される。位相差フィルムは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。
しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In-Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が様々に研究されている。
【0004】
各種の液晶表示装置の表示モードに対して、視野角特性等を改善するための位相差板、光学補償フィルムの特性は様々であり、それらに応じた偏光板保護フィルムや、位相差板、光学補償フィルムの支持体に対する要求性能も様々である。その結果、偏光板保護フィルムや位相差板や光学補償フィルムの支持体の光学的異方性を高めたものや、光学的等方性を高めたものなどの要求が多様化するとともに、要求性能が厳しくなってきている。
【0005】
偏光板保護フィルムには、光学的等方性が高く、透湿性に富み、偏光子として用いられるPVAとの接着性が高い、セルロースアセテートフィルムが従来から用いられてきた。
近年、従来の常識を覆して、セルロースアシレートフィルムに正の高いレターデーションを付与し、安価で薄膜な位相差板や位相差フィルム付偏光板が開示されている。例えば、特許文献2には、従来の一般的な原則を覆して、光学的異方性が要求される用途にも使用できる正の高いレターデーション値を有するセルロースアセテートフィルムが開示されている。該特許ではセルローストリアセテートで正の高いレターデーション値を実現するために、少なくとも2つの芳香環を有する芳香族化合物、中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物を添加し、延伸処理を行っている。
【0006】
一方、セルロースアセテートフィルムの光学的等方性をさらに高め、正面だけでなく、膜厚方向のレターデーションも小さくすることは、非常に困難である。またセルロースアセテートフィルムは、その親水的特性のために光学特性の温度および湿度依存性が大きく、改善が求められていた。レターデーションを小さくできるセルロースアシレート以外の素材として、ポリカーボネート系のフィルムや環状オレフィン系フィルムが開示されている(特許文献3,4)が、これらのフィルムは偏光子として用いられるPVAとの貼合性に劣るほか、光学特性の不均一性(ばらつき)が問題であった。
【0007】
また最近、液晶表示装置において、長時間の使用時などで内部の回路やバックライトの放熱によりパネル温度が上昇するほか、高温高湿度や低湿の過酷な環境下にて用いられる場合、上記の偏光板の保護フィルムであるトリアセチルセルロースフィルムが温度、湿度や時間経時でRe、Rthなどの光学特性、寸法や含水率などの幾何特性や物理特性が変化し、その光学補償能に変化が生じ、その内部応力やカールが顕在化し、黒表示時に光が漏れる、色味が変わる、または画像にムラが生じるほか、液晶表示装置の液晶パネルがワープするということが問題視されるようになってきており、耐熱性や機械的強度のさらなる向上も求められている。
【0008】
これまでにフィルムの耐熱性や機械的強度を改良する方法として、架橋ポリマーと非架橋ポリマーからなるセミIPN型ポリマーアロイを形成する方法(特許文献5)が提案されているが、開示されている方法では膜厚方向のレターデーションを制御することはできず、光学的な等方性との両立や、更に温度及び湿度が変化した場合における光学的な等方性等の変動抑制に関する技術は開示されていない。
【0009】
さらに、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、電子ペーパー等のディスプレイ素子用基板、あるいはCCD、CMOSセンサー等の電子光学素子用基板、あるいは太陽電池用基板には、最近携帯電話あるいは携帯用の情報端末の普及に伴い、従来のガラスに代えて屈曲性に富み割れにくく軽量で、熱安定性、透明性、水蒸気透過性も一定以上の性能を有する基板が求められている。
【特許文献1】特許第2587398号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開0911656A2号明細書
【特許文献3】特開2001−318233号公報
【特許文献4】特開2002−328233号公報
【特許文献5】特開2004−285159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、面内及び膜厚方向のレターデーションが小さく、光学特性のバラツキや温度、湿度などの環境変化による変動が少なく、液晶表示装置の視野角特性を改善でき、さらにカールの絶対値が小さく、また温度、湿度などの環境変化によるカールの変動が小さく、液晶表示装置のワープ特性を改善できる透明フィルムおよびその製造方法を提供することである。
本発明のさらなる別の目的は、この透明フィルムを用いることにより、透明性、耐熱性が高く、複屈折が温湿度変化、経過時間に依存せず、線膨張率の小さい液晶ディスプレイ素子用、有機ELディスプレイ素子用、またはタッチパネル用のディスプレイ基板を提供することであり、さらに、優れた取り扱い性、視野角特性を有し、歪みや色ずれの少ない光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らによる鋭意検討の結果、ポリマー種、延伸などの工程条件、添加剤の種類や量を適宜調節し、かつ架橋構造を構成する化合物を用いることで、フィルムの光学異方性、とくに膜厚方向のレターデーションを零に近づけるとともに、優れた耐久性を有し、かつさまざまな環境下であっても光学性能や機械強度等の膜物性を維持することができる透明フィルムを得ることに成功した。
本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
【0012】
(1)セルロースエステルと架橋ポリマーとのセミIPN(半相互貫入型網目構造)型ポリマーアロイを有し、かつ膜厚方向のレターデーション値が下記式(I)を満たすことを特徴とする透明フィルム。
式(I) −25≦Rth(630)≦25
[式中、Rth(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
(2)レターデーション低減剤を含有することを特徴とする上記(1)記載の透明フィルム。
【0013】
(3)該透明フィルムの面内レターデーション値が下記式(II)を満たすことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の透明フィルム。
式(II) 0≦Re(630)≦10
[式中、Re(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。]
(4)該透明フィルムがレターデーションの波長分散調整剤を含有し、該透明フィルムの面内レターデーション値および膜厚方向のレターデーション値が下記式(III)および(IV)を満たすことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明フィルム。
式(III) |Re10%−Re80%|≦25
式(IV) |Rth10%−Rth80%|≦35
[式中、Ren%は25℃n%RH下、波長630nmにおける面内レターデーション値(単位:nm)、Rthn%は25℃n%RH下、波長630nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【0014】
(5)該セルロースエステルがアシル化エステルであり、アシル置換度(X+Y)が下記式(V)を満たすことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明フィルム。
式(V) 2.0<X+Y≦3.0
[式中、Xはアセチル置換度、Yはアセチル以外のアシル置換度である。]
(6)該レターデーション低減剤のオクタノール−水分配係数(Log P値)が0〜7であることを特徴とする上記(2)〜(5)のいずれかに記載の透明フィルム。
【0015】
(7)該透明フィルムのカール値が、25℃10%RHから25℃80%RHの温湿度条件のすべての範囲で、前記透明フィルムのMD方向及びTD方向ともに、−21〜+21/mであり、25℃80%RH下での前記透明フィルムのMD方向のカール値CMD,80と25℃10%RH下での前記透明フィルムのMD方向のカール値CMD,10との差が−14/m〜+14/mであり、かつ、25℃80%RH下での前記透明フィルムのTD方向のカール値CTD,80と25℃10%RH下での前記透明フィルムのTD方向のカール値CTD,10との差が−14/m〜+14/mであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の透明フィルム。
【0016】
(8)前記架橋ポリマーが、重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物を架橋重合させた架橋ポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の透明フィルム。
(9)前記架橋ポリマーが、エポキシ化合物と高分子化促進剤との反応形成物からなる架橋ポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の透明フィルム。
(10)前記架橋ポリマーが、親水性基と疎水性基を有する架橋ポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の透明フィルム。
【0017】
(11)前記透明フィルム中に、さらに金属アルコキシドの加水分解重縮合物からなる金属酸化物微粒子が分散されていることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の透明フィルム。
(12)該透明フィルムの60℃、95%RH・24hrの透湿度が、40g/m2・24hr以上500g/m2・24hr以下である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の透明フィルム。
(13)該透明フィルムの、25℃80%RHの平衡含水率が3.0%以下である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の透明フィルム。
(14)該透明フィルムの厚みが30〜120μmである上記(1)〜(13)のいずれかに記載の透明フィルム。
【0018】
(15)セルロースエステル、レターデーション低減剤および架橋性モノマーを含有するセルロースエステル溶液を流延する工程(流延工程)と、上記流延工程により形成された皮膜にエネルギー線照射を行うエネルギー線照射工程とを有することを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法。
(16)セルロースエステル、レターデーション低減剤および架橋性モノマーを含有するセルロースエステル溶液を流延する工程(流延工程)と、上記流延工程により形成された皮膜を加熱する加熱工程とを有することを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法。
【0019】
(17)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の透明フィルムを基板として用いることを特徴とするディスプレイ素子。
(18)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の透明フィルムに、Re(630)=0〜200nmで、且つ|Rth(630)|=0〜400nmの光学異方性層を積層してなることを特徴とする光学補償フィルム。
【0020】
(19)偏光膜の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が上記(1)〜(14)のいずれかに記載の透明フィルムあるいは上記(18)に記載の光学補償フィルムであることを特徴とする偏光板。
(20)視認側保護フィルム上に反射防止膜が設けられていることを特徴とする上記(19)に記載の偏光板。
【0021】
(21)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の透明フィルム、上記(15)に記載のディスプレイ素子、上記(18)に記載の光学補償フィルム、及び上記(19)〜(20)に記載の偏光板、の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
(22)該液晶表示装置がTN、STN、IPS、VA及びOCBのいずれかのモードの液晶セルを有し、透過型、反射型又は半透過型のいずれかの方式であることを特徴とする上記(21)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の透明フィルムは、膜方向のレターデーションが零に近い、すなわち、フィルムの光学異方性が小さいため、液晶表示装置の視野角特性を良化でき、例えばIPSモードの位相差膜として用いることもできる。また、他の部材と組み合わせて本発明の膜方向のレターデーションが小さいフィルムを用いると、他の部材をその光学補償能を阻害することなく用いることが可能となる。更に本発明のセミIPN型架橋構造をとることにより、フィルムの物理特性(寸法変化、カール等)を良化できるのみならず、製造過程でフィルムにかかるテンションによって生じるレターデーションのバラツキを低減することができることが見出された。更に、レターデーションて低下剤等の添加剤を用いた場合には、セミIPN型架橋構造により添加剤の保持性が向上する結果、高温、高湿等の強制条件下でも添加剤の揮発、流出およびそれによりフィルム光学特性等の性能変化を有効に抑制することができる。
【0023】
従って、本発明の透明フィルムは、面内及び膜厚方向のレターデーションが小さく、光学特性のバラツキや温度、湿度などの環境変化による変動が少なく、液晶表示装置の視野角特性を改善でき、さらにカールの絶対値が小さく、また温度、湿度などの環境変化によるカールの変動が小さく、液晶表示装置のワープ特性を改善することができる。
更にこの透明フィルムを用いることにより、透明性、耐熱性が高く、複屈折が温湿度変化、経過時間に依存せず、線膨張率の小さい液晶ディスプレイ素子用、有機ELディスプレイ素子用、またはタッチパネル用のディスプレイ基板を得ることができ、さらに、優れた取り扱い性、視野角特性を有し、歪みや色ずれの少ない光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
〈セミIPN型ポリマーアロイ〉
本発明の透明フィルムは、非架橋ポリマーである本発明に係るセルロースエステルと本発明に係る架橋ポリマーのセミIPN型ポリマーアロイを有することを特徴とする。
【0025】
IPNとは相互貫入網目構造のことであり、セミIPNとは一方が架橋ポリマー、他方が非架橋ポリマーであるIPNのことである。セミIPN型のポリマーアロイは、例えば、非架橋ポリマーを溶解した状態で、架橋ポリマー用のモノマーおよび/またはオリゴマーを架橋重合させる方法や、溶剤の存在または不存在下で架橋ポリマーをモノマーおよび/またはオリゴマーで膨潤させた状態でモノマーを非架橋重合させることにより形成することができる。ただし、本発明においては、架橋ポリマーと非架橋ポリマーが完全に相溶している必要はなく、必要な透明性を保持していれば、相分離しているものも含む。架橋ポリマーと非架橋ポリマーが相分離している場合であっても、架橋ポリマーリッチ相と非架橋ポリマーリッチ相とは、それぞれセミIPN構造を取っていると考えられる。すなわち本発明の透明フィルムは、粒子状に成形した架橋ポリマーと、非架橋ポリマーとをブレンドしたものではなく、このことは、非架橋ポリマーを溶解する溶剤に本発明の透明フィルムを浸漬した時に、大部分の架橋ポリマーが粒子状に分散しないことにより確認できる。
【0026】
上記のセミIPN型ポリマーアロイから実質的になる透明フィルムは、架橋ポリマーが有する寸法安定性、高弾性、耐熱性等の力学物性と、非架橋ポリマーの柔軟性などを両立させることができる。さらに、非架橋ポリマーとして親水性を有するセルロースエステルと親水性及び疎水性を有する架橋ポリマーによって適度な透湿性や含水性を有して温湿度変化による表裏の寸法変化の差を小さく抑えられカール特性を改善できることが明らかとなった。
また、膜厚方向のレターデーションを小さくするために、ポリマーの種類や添加剤の添加、延伸などの方法を組み合わせて実施することができる。特に本発明のセミIPNは添加剤の相溶性あるいは添加剤の保持性に優れるため多量の添加剤を添加でき、添加剤の効果を最大限に発揮することができる。またセミIPNにより添加剤の保持性が向上する結果、フィルムが高温、高湿等の強制条件に置かれた場合でも添加剤の揮散や流出を抑制することができ、レターデーション低減剤などの添加剤含有量の変化によるフィルム光学性能や物理特性の変動を抑制することができる。
さらに、本発明の透明フィルムは製造工程でフィルムに加わるテンションにより発生する面内及び膜厚方向のレターデーションのばらつき(レターデーションの巾方向分布)を小さくすることができることが明らかとなった。
【0027】
〈透明フィルムの光学特性〉
[透明フィルムのレターデーション]
本発明の透明フィルムの25℃60%RH下、波長630nmでの膜厚方向のレターデーション値Rth(630) は下記式(I)を満たす。この式でRthの単位はnmで表す。
式(I) −25 ≦ Rth(630) ≦ 25
【0028】
Rth(630) 値のより好ましい範囲は、−20nm以上20nm以下であり、−15nm以上15nm以下がさらに好ましく、−10nm以上10nm以下が特に好ましい。
【0029】
また、25℃60%RH下、波長630nmでの面内レターデーション値Re(630)値は下記式(II)を満たすことが好ましい。この式でReの単位はnmで表す。
式(II) 0 ≦ Re(630) ≦ 10
【0030】
Re(630)値のより好ましい範囲は0nm以上7nm以下であり、0nm以上5nm以下がさらに好ましく、0nm以上2nm以下が特に好ましい。
膜厚方向のレターデーションが小さい本発明の透明フィルムは、フィルム厚み方向に余計な複屈折を生じないという特徴を有しており、本発明の透明フィルムを用いることにより液晶表示装置の光学設計の自由度を著しく高めることができる。特に面内および膜厚方向のレターデーションがともに小さい透明フィルムを偏光板保護フィルムや光学補償フィルムの支持体として用いた場合、他の部材や光学補償フィルム中の光学補償層の光学補償能を邪魔することなく、それらの部材の複屈折をそのまま利用することが可能となる。
【0031】
本発明の透明フィルムの面内レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましく、下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことが好ましい。
【0032】
式(III) |Re10%−Re80%| ≦ 25
式(IV) |Rth10%−Rth80%| ≦ 35
[式(III)において、Re10%は25℃10%RH下、Re80%は25℃80%RH下、波長630nmでの面内レターデーション、式(IV)において、Rth10%は25℃10%RH下、Rth80%は25℃80%RH下、波長630nmでの膜厚方向レターデーションを表す。]
|Re10%−Re80%|のより好ましい範囲は0〜20nmであり、さらに好ましくは0〜15nmである。
また、|Rth10%−Rth80%|のより好ましい範囲は0〜25nmであり、さらに好ましくは0〜15nmである。
【0033】
本発明の透明フィルムは、波長400nmと700nmでのRe、Rthの差、|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|が小さいことが好ましく、|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35であることが好ましい。より好ましくは、|Re(400)−Re(700)|≦5かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦25であり、|Re(400)−Re(700)|≦3かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦15であることが特に好ましい。
【0034】
Re(λ)は、KOBRA・21ADH(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定することができる。Rth(λ)は、前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA・21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜角(回転軸)としてフィルム法線方向に対して逆方向に10傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つあるいは、それ以上の方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA・21ADHによって算出される。ここで平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(John Wiley & Sons, Inc)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。
【0035】
[レターデーションのばらつき]
レターデーション値のばらつきは、製膜したフィルムの幅方向5点(中央、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)、および中央部と端部の中間部2点)を長手方向に100mごとにサンプリングしたものの値の最大値と最小値との差であり、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることが特に好ましい。
【0036】
〈セルロースエステル〉
本発明のセミIPN構造型ポリマーアロイに用いる非架橋ポリマーとしては、高い透明性、低複屈折であるセルロースエステルが用いられる。
【0037】
上記高い透明性における透明であるとは、フィルムの全光線透過率が50%以上であるものをいう。しかし一般に光学用途に用いられる透明フィルムとしては、全光線透過率が80%以上のものが好ましく、より好ましくは90%以上のフィルムである。
【0038】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられる。
【0039】
上記セルロースエステルであれば本発明の透明フィルムには好ましく用いられるが、より好ましくは、セルロースエステルの置換度を、酢酸によるアセチル置換度をX、プロピオン酸や酪酸などの酢酸以外によるアシル置換度をYとして表した場合に、下記の式(II)を満たすセルロースエステルである。
【0040】
式(II) 2.0<X+Y≦3.0
【0041】
これはX+Yが2.0以上3.0以下の範囲のものが樹脂の溶解性が高く、高濃度のドープ(溶媒に樹脂を溶かした溶解液を以後ドープと呼ぶ)を作製でき、製膜・乾燥時により有利だからである。
【0042】
セルロースを形成するグルコースユニットは、結合できる3つの水酸基を有しており、例えば、セルローストリアセテートにおいて、グルコースユニットの3個の水酸基全てがアセチル基に結合している場合には、アセチル基による置換度は3.0である。セルロースエステルの置換度は高ければ高いほど膜厚方向のレターデーションを小さくすることができ好ましく、より好ましくは、2.85以上3.0以下で、さらに好ましくは2.89以上3.0以下である。特に好ましくは2.91以上3.0以下である。
またセルロースアシレートは置換度が大きくなると固有複屈折が正から負に変わる性質を有している。高置換度で固有複屈折が負であるセルロースアシレートは延伸することによって膜厚方向のレターデーションを低下させることが可能である。
これらアシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0043】
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。また、これらから得られたセルロース誘導体は、それぞれを単独であるいは任意の割合で混合使用することが出来るが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
【0044】
セルロースエステルフィルムの分子量が大きいと弾性率が大きくなるが、分子量を挙げすぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で70,000〜200,000のものが好ましく、100,000〜200,000のものが更に好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルはMw/Mn比が4.0未満であるが、好ましくは1.4〜3.3である。
【0045】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
【0046】
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0047】
セルロースエステルの重合度は、粘度平均重合度で200〜800が好ましく、250〜650がより好ましく、250〜450が更に好ましく、250〜400が特に好ましい。粘度平均重合度は宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に従い測定できる。粘度平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報にも記載がある。
【0048】
〈レターデーション低減剤〉
本発明に用いられるレターデーション低減剤は膜厚方向のレターデーションを低減させる化合物であり、具体的な例としては、下記一般式(1)や一般式(2)で表される化合物などが挙げられるがこれに限られるものではない。
【0049】
【化1】

【0050】
上記一般式(1)において、R11はアルキル基またはアリール基を表し、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R11、R12およびR13の炭素原子数の総和は10以上であることが好ましい。R11、R12およびR13において、各々のアルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよい。
【0051】
上記アルキル基又はアリール基の置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基がより好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。
【0052】
一般式(1)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されない。
【0053】
【化2】

【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】
次に、一般式(2)の化合物について説明する。
式中、R14はアルキル基またはアリール基を表し、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。
【0057】
より好ましくは、R14、R15およびR16はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
【0058】
上記のアルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
【0059】
以下に、一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されない。
【0060】
【化5】

【0061】
【化6】

【0062】
【化7】

【0063】
【化8】

【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
これらのレターデョーション低減剤は、光学異方性を低下させる機能を有している。
この光学異方性を低下させる化合物を含有することにより、透明フィルム中のポリマーが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学異方性を十分に低下させ、Reはゼロに近く、さらにRthは負にすることができる。光学異方性を低下させる化合物は、ポリマーに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
【0069】
(LogP値)
本発明の透明フィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値としてさらに好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
【0070】
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen's fragmentation法
(J. Chem. Inf. Comput. Sci., 27, 21(1987))、Viswanadhan's fragmentation法(J. Chem. Inf. Comput. Sci., 29, 163(1989))、Broto's fragmentation法(Eur. J. Med. Chem. Chim. Theor., 19, 71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen's fragmentation法(J. Chem. Inf. Comput. Sci., 27, 21(1987))がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。
【0071】
本発明の透明フィルムは、光学異方性を低下させる化合物(レターデーション低減剤)を、下記式(a)、(b)を満たす範囲で少なくとも1種含有することが好ましい。
【0072】
(a)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(b)0.01≦A≦100
【0073】
[式中、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)、Aは前記ポリマーの固形分質量を100としたときの化合物の質量(%)である。]
【0074】
上記式(a)、(b)は
(a1)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(b1)0.05≦A≦50
であることがより好ましく、
(a2)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(b2)0.1≦A≦20
であることがさらに好ましい。
【0075】
〈架橋ポリマー〉
本発明のセミIPN構造型ポリマーアロイに用いる架橋ポリマーとしては、特に限定はないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、架橋ビニルポリマー、ポリシアヌレートなどが挙げられる。
【0076】
(架橋ビニルポリマー)
本発明において好ましく用いられるビニルポリマーについて説明する。透過率が高く、高耐熱性である架橋ビニルポリマーは、複数の重合性不飽和二重結合を有する低分子化合物(架橋性モノマー)を、加熱あるいはエネルギー線を照射して重合させることによって得られる。
【0077】
本発明において低分子化合物とは、分子量が1000以下で、それ単体ではフィルムとして成膜できない化合物である。
【0078】
本発明に用いられる複数の重合性不飽和二重結合を有する低分子化合物しては、例えば、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アクリル酸残基、メタクリル酸残基等の不飽和脂肪酸残基等を有する低分子化合物が挙げられる。
【0079】
本発明に用いられる複数の重合性不飽和二重結合を有する低分子化合物しては特に限定はないが、重合前の混合段階でフィルムにヘイズを発生させたり、ブリードアウト、揮発せず相溶するように、セルロース誘導体と水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
【0080】
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホリル基である。
【0081】
このような官能基を有し、かつ同時に重合性不飽和二重結合を有する官能基として、アクリル酸、メタクリル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸の残基を有する低分子化合物が好ましく用いられる。
【0082】
また、重合速度の速いものが好ましく、エネルギー線硬化可能なものが好ましいため、アクリル系および/またはメタクリル系〔これを(メタ)アクリル系と記述する。(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル等についても同様である〕の低分子化合物、即ち(メタ)アクリロイル基含有のものが好ましい。
【0083】
このような条件を満たし、また架橋ポリマーに耐熱性を付与できて本発明に好ましく用いられる重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物として、(メタ)アクリル酸と多価のアルコールとのエステル類が挙げられる。
【0084】
本発明に用いられる多価アルコールとしては次の一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0085】
【化13】

【0086】
(式(3)中、R21はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。)
【0087】
好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0088】
多価アルコールエステルに用いられる不飽和カルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0089】
以下に、本発明に好ましく用いられる重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物である多価アルコール不飽和カルボン酸エステルの具体的化合物を示す。
【0090】
【化14】

【0091】
【化15】

【0092】
【化16】

【0093】
【化17】

【0094】
【化18】

【0095】
またこれら以外にも、重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物として、以下に挙げるような化合物も好ましく用いることができる。
【0096】
例えば、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジアリルフタレート、トリアリールトリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、N,N′−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミド、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリフェニルシラン、(5−ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ボロンビニルジメチルシロキシド、ブテニルトリエトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、ジビニルテトラメチルジシラン、1,3−ジアリルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、ヘキサビニルジシロキサン、メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、メタクリロキシプロピルヘプタシクロペンチル−T8−シルセスキオキサン、オクタビニル−T8−シルセスキオキサン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラアリルシラン、テトラアリロキシシラン、テトラキス(2−メタクリロキシエトキシ)シラン、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、1,1,3,3−テトラビニルジメチルジシロキサン、テトラビニルシラン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリビニルエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、1−フェニル−1−トリメチルシロキシエチレン、2−トリメチルシロキシ−4−アリロキシジフェニルケトン、トリス(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、トリビニルエトキシシラン、トリビニルメチルシラン、トリビニルシラン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシラザン、1,3,5−トリビニル−1,1,3,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アクリル酸アルミニウム、メタクリルオキシトリ−n−ブチルすず、テトラアリルすず、ホウ素ビニルジメチルシロキサイド、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンメタクリレートイソプロポキサイド、ジルコニウムジメタクリレートジブトキサイド、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリ−n−プロポキサイド、銅(II)メタクリルオキシエチルアセトアセテート、エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂等のオリゴマー、等を挙げることができる。
【0097】
これらの重合性不飽和二重結合を有する低分子化合物は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、不飽和二重結合基を1つ有する低分子化合物を架橋ポリマーの構造中に含んでも良いが、架橋ポリマーの耐熱性を保つためには、架橋ポリマーの50質量%以上は、本発明に係る不飽和二重結合基を複数有する低分子化合物からなることが好ましい。
【0098】
また透明フィルム中の本発明に係る架橋ポリマーの含有量としては、透明フィルムの全質量に対して、5〜50質量%が好ましい。該架橋ポリマーの添加量が5質量%より少ないと、架橋ポリマーの添加による耐熱性向上の効果が認められず、高温加熱時に流動しやすくなるため好ましくない。一方、50質量%を越えると、透明フィルムがもろくなってしまうため、好ましくない。
【0099】
(エポキシ化合物)
次に本発明で好ましく用いられるエポキシ化合物について説明する。エポキシ化合物を用いて本発明の透明フィルムを製造する場合、該透明フィルムは少なくとも1種のエポキシ化合物及び少なくとも1種の高分子化促進剤を含有することが好ましい。
エポキシ化合物としては、下記の一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)および一般式(IV)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0100】
【化19】

【0101】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立して、アルキル基またはハロゲン原子を表し、L1、L2は2価の脂肪族の有機基を表す。また、Mは酸素または窒素原子、Aはm価の連結基を表す。a,b,cは0〜4の整数、x,yは0〜20の実数、lは1または2、mは2〜4の整数を表す。)
上記一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)のエポキシ化合物についてより詳しく説明する。
,Lとして例えば、
【0102】
【化20】

【0103】
などが挙げられ、一般式(III)においてAとしては、
【0104】
【化21】

【0105】
などが挙げられる。
1、R2、R3のアルキル基としては、炭素数1〜3が好ましく、ハロゲン原子してはBr、Cl、Fなどが挙げられる。
以下、一般式(I)、(II)、(III)または(IV)で示されるエポキシ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
【化22】

【0107】
【化23】

【化24】

【化25】

【0108】
なお、構造式中にある変数x、yは実数であり、各々0〜20の範囲であれば何でもよい。x、yが必ずしも整数とならないのは、数種類の整数値を有するエポキシ化合物がある比率で混合された状態であり、その平均値を示しているからである。これらのエポキシ化合物は単独で用いても、2種類以上組み合わせても良い。
本発明においては、流延後、加熱することでセルロースエステルに含まれるエポキシ化合物の高分子化(または、架橋)反応を促進させるとともに、セルロースエステルを3次元架橋させないために高分子化促進剤を用いることが好ましい。高分子化促進剤は、それ自身がエポキシ化合物と縮合反応等を起こしたり、触媒として働き、エポキシ化合物同士の反応を促進することで、セルロースエステル中に、網目構造を形成させる化合物である。置換、無置換のアミン類,イミダゾール類、メルカプタン類、酸無水物類、ポリアミド樹脂、有機酸ヒドラジド等の中から選ばれる1種または2種以上の化合物を共存させるのが好ましい。
【0109】
好ましい具体的な化合物としては以下の化合物が挙げられる。
【0110】
【化26】

【0111】
【化27】

【0112】
【化28】

【0113】
その他、ポリスルフィド樹脂(Three Bond 2104)、エチレングリコールビストリメート、グリセロールトリストメリテート等があるがこれらに限定されるわけではない。また、これらをお互いに併用して用いることも好ましい。
本発明においては、二官能のアミン誘導体化合物がセルロースエステルを架橋せずに網目構造を作るという点で最も好ましい。
本発明の化合物であるエポキシ化合物の使用量は、セルロースエステルの質量に対して、1%〜30%であることが好ましい。より好ましくは2%〜20%であり、より好ましくは、3%〜15%である。
また、エポキシ化合物の高分子化または、架橋反応を促進させる上記の化合物を使用する場合には、その使用量は、一般に使用するエポキシ化合物の質量に対し、一般に1%〜100%、より好ましくは5%〜50%、より好ましくは、10%〜40%である。
【0114】
〈エネルギー線、開始剤〉
本発明の共重合体フィルムにおいて、本発明に係るセルロースエステル中の本発明に係る重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物を架橋重合させる方法は、任意であり、例えば、加熱、エネルギー線照射等により架橋重合させることができる。
【0115】
エネルギー線としては、例えば、電子線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線等を用いることができ、中でも装置および取扱いの簡便さから紫外線を用いることが好ましい。照射する紫外線の強度は、0.1〜5000mW/cm2の範囲が好ましく、10〜1000mW/cm2の範囲が更に好ましい。その照射時間も任意であるが、一般に0.1〜100秒程度が好ましい。また、エネルギ−線として紫外線や可視光線を用いる場合には、重合速度を速める目的で、光重合開始剤を含有させることも好ましい。更に、紫外線の照射を不活性ガス雰囲気下で行うことによって、重合速度を速め、かつ重合度を上げることが可能である。
【0116】
このような好ましい光重合開始剤としては、ベンゾイン誘導体、イルガキュア651のようなベンジルケタール誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184)のようなα−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、イルガキュア907のようなα−アミノアセトフェノン誘導体などが挙げられる。
【0117】
また、電子線も本発明に用いることのできる好ましいエネルギー線である。電子線を用いると、溶剤、凝固液、その他の添加剤などの柴外線吸収の影響を受けないため、これらの選択の幅が広がると共に、製膜速度も向上する。なお、加熱により架橋重合させる場合においても、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)のような、重合開始剤を添加することが好ましい。
【0118】
〈波長分散調整剤〉
本発明の透明フィルムは、ReおよびRthの波長による依存性、すなわち波長分散が小さいことが望ましい。この、波長分散を低下させる手段として、本発明においては透明フィルムに対して波長分散を調整する化合物(以下波長分散調整剤ともいう)を添加することが有効である。
波長分散調整剤としては、下記式(c)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物であることが好ましく、本発明の透明フィルムは、この化合物を下記式(d)、(e)をみたす範囲で少なくとも1種含有することが好ましい。
【0119】
(c)ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)
(d)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−2.0
(e)0.01≦B≦30
[式中、ΔRth(B)はRthの波長分散を調整する化合物をB%含有したフィルムのΔRth(nm)、ΔRth(0)はRthの波長分散を調整する化合物を含有しないフィルムのΔRth(nm)、Bはポリマーの固形分質量を100としたときの化合物の質量(%)である。]
【0120】
上記式(d)、(e)は
(d1)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
(e1)0.05≦B≦25
であることがより好ましく、
(d2)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
(e2)0.1≦B≦20
であることがさらに好ましい。
【0121】
上記の波長分散調整剤としては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムのΔRe=|Re(400)−Re(700)|およびΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物であることがより好ましく、このような化合物を少なくとも1種含むことによって、透明フィルムのRe、Rthの波長分散をより効果的に調整することができる。
【0122】
透明フィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は長波長側よりも短波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身が透明フィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0123】
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側ほど大きいと想定されるものを用いることによって、透明フィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はポリマー固形分に十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0124】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。よって、波長分散調整剤を透明フィルムに添加する場合、分光透過率が優れたものを用いることが好ましい。波長分散調整剤の分光透過率としては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であることが好ましく、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがより好ましい。
【0125】
波長分散調整剤は、透明フィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましいため、分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0126】
波長分散調整剤の添加量は、ポリマーの固形分の0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0127】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0128】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(101)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(101): Q101−Q102−OH
(式中、Q101は含窒素芳香族ヘテロ環、Q102は芳香族環を表す。)
【0129】
101は、含窒素方向芳香族へテロ環を表し、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環である。例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
101で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0130】
102で表される芳香族環は、特に限定されず、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよいが、芳香族炭化水素環であることが好ましい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であることが好ましく、炭素数6〜20の芳香族炭化水素環であることがより好ましく、炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であることがさらに好ましく、ナフタレン環、ベンゼン環であることが特に好ましく、ベンゼン環であることが最も好ましい。
【0131】
芳香族ヘテロ環としては、特に限定されないが、好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。この芳香族ヘテロ環の具体例としては、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられる。中でも、ピリジン、トリアジン、キノリンが好ましい。
【0132】
102は、更に置換基を有してもよく、下記の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる)等が挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0133】
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
【0134】
【化29】

【0135】
(式中、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107およびR108はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0136】
101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、およびR108はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
101およびR103として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0137】
102、およびR104として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0138】
105およびR108として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0139】
106およびR107として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0140】
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
【0141】
【化30】

【0142】
(式中、R101、R103、R106およびR107は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
以下に、一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
【0143】
【化31】

【0144】
【化32】

【0145】
以上のベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずにセルロースアシレートフィルムを作製した場合、保留性の点で有利である。
【0146】
また、波長分散調整剤として用いられるベンゾフェノン系化合物としては、下記一般式(102)で示されるものが好ましい。
【0147】
【化33】

【0148】
(式中、Q111およびQ112はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X111は、NR110(R110は水素原子または置換基を表す。)、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0149】
111およびQ112で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
111およびQ112で表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
111およびQ112で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
111およびQ112であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
111およびQ112は更に置換基を有してもよく、前述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0150】
111はNR110(R110は水素原子または置換基を表す。置換基としては前述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表す。X111がNR110である場合、R110として好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。X111として好ましくは、NR110または酸素原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0151】
置換基Tとしては一般式(101)と同様のものを用いることができる。
【0152】
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
【0153】
【化34】

【0154】
(式中、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118およびR119は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0155】
111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118およびR119は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0156】
111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118およびR119として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0157】
112として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0158】
117として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0159】
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
【0160】
【化35】

【0161】
(式中、R120は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
【0162】
120は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
120として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0163】
一般式(102)で表される化合物は特開平11−12219号公報記載の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
【0164】
【化36】

【0165】
【化37】

【0166】
【化38】

【0167】
また、波長分散調整剤として用いられるシアノ基を含む化合物としては、下記一般式(103)で示されるものが好ましい。
【0168】
【化39】

【0169】
(式中、Q121およびQ122はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X121およびX122は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つは少なくともどちらか1つはシアノ基を表す。)
121およびQ122であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0170】
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
【0171】
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0172】
121およびQ122であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
121およびQ122は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。置換基Tは一般式(101)と同様である。
【0173】
121およびX122は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基を表す。X121およびX122で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、X121およびX122はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X121およびX122はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0174】
121およびX122として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR′(R′は:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの))である。
【0175】
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
【0176】
【化40】

【0177】
(式中、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129およびR10は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X121およびX122は一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0178】
121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129およびR130はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0179】
121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129およびR130として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0180】
123およびR128として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0181】
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
【0182】
【化41】

【0183】
(式中、R123およびR128は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X123は水素原子または置換基を表す。)
【0184】
123は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X123として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR″(R″は:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
【0185】
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
【0186】
【化42】

【0187】
(式中、R123およびR128は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R131は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0188】
131として好ましくは、R123およびR128が両方とも水素原子である場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0189】
131として好ましくは、R123およびR128が水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0190】
一般式(103)で表される化合物は、Journal of American Chemical Society 6
3巻 3452頁(1941)に記載の方法によって合成できる。
【0191】
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
【0192】
【化43】

【0193】
【化44】

【0194】
【化45】

【0195】
〈フィルム性質〉
[フィルムのカール特性]
本発明の透明フィルムのカール値は、25℃℃10%RHから25℃80%RHの温湿度条件のすべての範囲で、MD方向及びTD方向ともに、−21〜+21/mであり、より好ましくは−15/m〜+15/mであり、更に好ましくは−10/m〜+10/mであり、−5/m〜+5/mであることが特に好ましい。
【0196】
また本発明の透明フィルムのカールは温度や湿度によって変化しないことが好ましく、25度80%RH下でのMD方向のカール値CMD,80と25度10%RH下でのMD方向のカール値CMD,10との差(CMD,80−CMD,10)が−14/m〜+14/mであり、かつ、25度80%RH下でのTD方向のカール値CTD,80と25度10%RH下でのTD方向のカール値CTD,10との差(CTD,80−CTD,10)が−14/m〜+14/mである。より好ましくは、(CMD,80−CMD,10)および(CTD,80−CTD,10)が−11/m〜11/mであり、更に好ましくは−7/m〜+7/mであり、−5/m〜+5/mであることが特に好ましい。
【0197】
さらに、25℃10%RHでのカール値と45℃10%RHでのカール値の差は、MDおよびTD方向ともに−19/m〜+19/mであることが好ましい。より好ましくは−14/m〜+14/mであり、−9/m〜+9/mであることが特に好ましい。さらにまた、25℃60%RHでのカール値と45℃60%RHでのカール値の差及び25℃80%RHでのカール値と45℃80%RHでのカール値の差が、MDおよびTD方向ともに、−19/m〜+19/mであることが好ましい。より好ましくは−14/m〜+14/mであり、−9/m〜+9/mであることが特に好ましい。
【0198】
本発明の透明フィルムを偏光板保護フィルムとして偏光膜との貼りあわせを行なう場合、特に、長尺の偏光膜と長尺の透明フィルムを効率的に貼りあわせる場合のほか、透明フィルムに表面処理、光学異方性層を塗設したりする際のラビング処理の実施や光学異方性層や様々な機能層の塗設などを長尺品で行なう際に、本発明の透明フィルムのカール値が前述の範囲外では、フィルムのハンドリングに支障をきたし、フィルムの切断が起きるトラブルが発生することがある。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触するために発塵しやすくなり、フィルム上への異物付着が多くなり、光学補償フィルムなどの光学用フィルムとして、擦れ傷、点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えることがある。さらにカール値を上述の範囲とすることで偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減することができる。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
【0199】
[フィルムの厚さ]
本発明の透明フィルムの厚さは、30〜2000μmであることが好ましい。光学補償フィルムや偏光板保護膜としては、30〜120μmであることが好ましく、ディスプレイ素子用基板としては100〜2000μmであること好ましい。光学補償フィルムや偏光板保護膜としては、40〜100μmであることが好ましく、60〜80μmであるがさらに好ましく、65〜75μmであることが特に好ましい。
【0200】
[フィルムの平衡含水率]
本発明の透明フィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃80%RHにおける平衡含水率が、3.0%以下であることが好ましい。0.1〜2.5%であることがより好ましく、1〜2%であることが特に好ましい。3%より大きい平衡含水率であると、光学補償フィルムの支持体として用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎてしまい好ましくない。
含水率の測定法は、本発明の透明フィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0201】
[フィルムの透湿度]
本発明の透明フィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算して40g/m2・24h以上、500g/m2・24h以下であることが好ましい。50〜400g/m2・24hであることがより好ましく、100〜300g/m2・24hであることが特に好ましい。500g/m2・24hを越えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.3nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、本発明の透明フィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.3nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償フィルムや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、透明フィルムの透湿度が50g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、透明フィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
【0202】
透明フィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求めた。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明の透明フィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求めた。
【0203】
[フィルムのヘイズ]
本発明の透明フィルムのヘイズは0.01〜2.0%であることがのぞましい。よりのぞましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらにのぞましい。透明フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、本発明の透明フィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。
【0204】
〈フィルムの添加剤〉
本発明の透明フィルムは種々の添加剤を含有させることができ、添加剤としては、膜厚方向のレターデーションを所望の範囲とできる添加量であれば制限はない。例えば、上述のレターデーション低減剤(光学異方性を低下させる化合物)、架橋構造を形成する化合物の他、波長分散調整剤、その他光学特性調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、等が挙げられる。
種々の添加剤は、製造段階において添加することができる。添加する時期は特に限定されないが、熱可塑性樹脂を熱溶融して透明フィルムを製膜する場合は、熱溶融時に加えることができる。また、ポリマーを均一に溶剤に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープという)の調製工程に添加することができる。この場合、ドープ調製工程の最後の工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。また、これらの添加剤も重合性不飽和二重結合を有する官能基によって置換し、本発明に係る重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物とともに共重合させてもよい。
【0205】
[添加剤の含有量]
本発明の透明フィルムは、0.3質量%以上、例えば0.3質量%以上45質量%以下の添加剤を含有する。添加剤は樹脂素材の光学特性、物理特性などのフィルムの諸特性を樹脂素材のみからなるフィルムよりも広範囲に調整することができる。より好ましくは5〜40質量%であり、さらにのぞましくは10〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下させる化合物、架橋構造を形成する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。これら化合物の総量が0.3質量%未満であると、基材樹脂素材単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45質量%を超えると、透明フィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
【0206】
[添加剤の厚み方向分布]
本発明の透明フィルムは、分子量が3000以下の化合物の添加物を、透明フィルムを構成する樹脂素材質量に対して少なくとも1種類以上、0.3%以上含有し、透明フィルムを厚み方向に10等分した領域の中で、最外層を除く8つの領域それぞれの添加剤存在量が透明フィルム全体の平均添加剤存在量(フィルム中全添加剤量を10で割った値)の80%〜120%である。このように添加剤分布が均一であることにより、常温常湿、低湿、高湿の他、低温や高温でも透明フィルムのカール値を0に近づけることができるものと考えられ、湿度変化によるカールの変動や温度変化によるカールの変動も小さく抑えられるものと考えられる。各領域の添加剤存在量はフィルム平均存在量の85%〜115%であることがより好ましく、90%〜110%であることが特に好ましい。
【0207】
添加剤の厚み方向分布の評価はION―TOF社製TOF−SIMS IV(一次イオンとしてAu1+、25keV)を用いて評価することができる。フィルム流延時の支持体面から空気表面(反支持体面)へ膜厚方向に10等分した各層の添加剤強度を算出し評価する。複数の添加剤を有する場合、それぞれの添加剤ごとに添加強度を算出し、フィルム全体に含有する添加剤量を算出し、その割合に応じて各層の添加剤量を評価することができる。
【0208】
透明フィルムの添加剤の分布を上記の範囲とするには、溶融製膜品についてはフィルム製膜時の押出し、冷却工程における添加剤の飛散性や拡散性の少ない添加剤を用いることにより達成できる。また、添加剤の飛散性や拡散性を考慮した上で、共押出し法により、外側溶融層の添加剤添加量を内部よりも幾分高めに設定することも好ましい方法である。すなわち、下記(1)および(2)の工程を有する方法が挙げられる。
(1)分子量3000以下の添加剤を樹脂素材に対し複数の異なる濃度で添加し、溶融し、前記添加剤の濃度の異なる複数の溶融物を調製する工程。
(2)前記添加剤の濃度の高い溶融物が、得られる透明フィルムの外側層を形成するように、共押出し法により基材上に押出す工程。
なお、前記の外側層とは、透明フィルムを厚み方向に10等分した領域の中での、上下の最外層を意味する。また、最外層の添加剤の濃度は、内側層にくらべて0.1〜15%、さらに好ましくは0.5%〜10%高いのがよい。
【0209】
溶液製膜品については、ドープ溶液流延後の溶剤乾燥工程における添加剤の拡散性や飛散性の少ない添加剤と溶剤の組み合わせを選択することにより達成できる。好ましい添加剤は、溶剤よりも樹脂素材との親和性が強いものが好ましく、乾燥過程で、溶剤がフィルム表面から蒸発する際の添加剤の飛散性や、溶剤濃度が低くなっていく過程で、溶剤がフィルム表面へ拡散する際の添加剤の拡散性が、親和性のより強い樹脂素材によって阻害され、添加剤の分布が不均一とならず、所望の範囲に収めることができる。
【0210】
また、添加剤の拡散性や飛散性を考慮した上で、公知の共流延法あるいは積層流延法により、外側ドープ層(外側層)の添加剤添加量を内部よりも幾分高めに設定することも好ましい。すなわち、下記(3)および(4)の工程を有する方法が挙げられる。
(3)分子量3000以下の添加剤を樹脂素材に対し複数の異なる濃度で添加し、溶剤を加え溶解し、前記添加剤の濃度の異なる複数の溶液を調製する工程。
(4)前記添加剤の濃度の高い溶液が、得られる透明フィルムの外側層を形成するように、共流延法または積層流延法により基材上に流延する工程。
なお、前記の外側層の定義、また最外層と内側層の添加剤の濃度の差異は、前述のとおりである。
【0211】
また、乾燥条件をコントロールすることにより、添加剤の分布を本発明の範囲に収めることができる。すなわち、下記(5)、(6)および(7)の工程を有する方法が挙げられる。
(5)溶剤に樹脂素材および分子量3000以下の添加剤を加え溶解し溶液を調製し、これを基材上に流延する工程。
(6)前記溶液の揮発分量が80%以下40%以上の範囲になるまで乾燥し、フィルムを形成し、前記フィルムを前記基材から剥ぎ取る工程。
(7)前記基材から剥ぎ取ったフィルムの揮発分量を45%以下10%以上の範囲に調整し、これを131℃以上の温度で急速に乾燥する工程。
【0212】
好ましい乾燥条件としては、バンドまたはドラムのような基材からの剥ぎ取りを揮発分量80%以下40%以上、剥ぎ取り速度40m/分以上200m/分以下で行い、131℃以上での乾燥を揮発分量45%以下10%以上で開始し、乾燥時間を24分以内として、急速に乾燥させる条件である。
剥ぎ取り時の揮発分量は70%以下50%以上が好ましく、65%以下58%以上がより好ましい。剥ぎ取り速度は53m/分以上180m/分以下が好ましく、90m/分以上160m以下がより好ましい。剥ぎ取り速度は生産性に影響し、40m/分未満では、安価にフィルムを作製することは難しくなる。
131℃以上での乾燥を揮発分量40%以下15%以上で開始することが好ましく、35%以下18%以上で行うことがより好ましい。乾燥時間は20分以内であることが好ましく、16分以内であることがより好ましい。
乾燥温度は、高いほど迅速に乾燥でき、添加剤の分布を均一化することができ好ましい。ドープの組成にもよるが、混入する水分を速やかに除去するために、131℃以上が好ましく、さらに好ましくは135〜180℃である。
【0213】
[剥離剤]
本発明に使用される樹脂素材、例えばセルロースアシレートフィルムには、剥離時の荷重を小さくするために剥離剤を添加することが好ましい。
剥離剤としては、公知の界面活性剤を用いることが有効である。この界面活性剤としては、リン酸系、スルホン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等の界面活性剤を用いることができ、特に限定されない。ここで用いることができる界面活性剤の例としては、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。
【0214】
なお、剥離剤に関しては、特開2003−055501号公報に、セルロースアシレート溶液の白濁を防止し、フィルム製造剥離性とフィルム面状を改良するため、非塩素系溶剤に溶解したセルロースアシレート溶液で、酸解離指数pKAが1.93〜4.5の多塩基酸部分エステル体、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれる添加剤を含有するセルロースアシレート溶液について記載がある。
なお、添加剤に関しては特開2003−128838号公報には、剥ぎ取り性、面状、膜強度を良化させるために、少なくとも一種類の活性水素と反応する基を2個以上有する架橋剤をセルロースアシレートに対して0.1〜10質量%含有するセルロースアシレートドープ溶液についての記載がある。
また、特開2003−165868号公報には、添加剤を添加し、良好な透湿度を有し、寸法安定性に優れたフィルムを提案している。
本発明では、上記公報に記載されている剥離剤を用いることができる。
【0215】
[マット剤微粒子]
本発明の透明フィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0216】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0217】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0218】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vは、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、透明フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0219】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有する透明フィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行ない、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0220】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0221】
[可塑剤、劣化防止剤]
上記の光学異方性を低下させる化合物、波長分散調整剤などの他に、本発明の透明フィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、透明フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0222】
〈有機−無機ポリマーハイブリッド〉
本発明においては、有機−無機ポリマーハイブリッド(または有機−無機ポリマーコンポジットまたはゾル・ゲル法など)と呼称される手法を併用することができる。
【0223】
有機−無機ポリマーハイブリッドとは、有機ポリマーと無機化合物を組み合わせて、双方の特性を持った材料を合成する手法であるが、有機ポリマーと無機化合物は相溶性に乏しいため、単純に両者を混合するだけでは有用な材料を得ることが難しい。近年になって、無機物を金属アルコキシドのような液体状態から合成する手法が開発されるにいたり、溶液プロセスによって光の波長以下(〜約750nm以下)のナノスケールで有機物と無機物を混合することが可能となり、光学的にも透明で有用な材料が得られるようになってきている。
【0224】
本発明においても、有機ポリマーである本発明に係るセルロースエステル、本発明に係る架橋ポリマー中に、さらに本発明に係る無機化合物である金属酸化物微粒子をハイブリッドすることにより、透明性や光学特性を保ったまま、より耐熱性を向上させることができる。
【0225】
〈無機化合物〉
本発明の透明フィルムに、添加されることが好ましい本発明に係る金属酸化物微粒子について説明する。
【0226】
本発明において金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71記載の金属すなわち半金属性原子を含む金属である。
【0227】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物としては、例えば金属アルコキシド、金属ジケトネート、金属アルキルアセトアセテート、金属イソシアネート、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられるが、好ましくは金属アルコキシドである。中心金属はケイ素、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムが好ましく、特に好ましくは下記一般式(4)で表されるアルコキシシラン化合物である。
【0228】
【化46】

【0229】
(式(4)中、R31、R32は水素原子または一価の置換基を表し、pは3または4である。)
【0230】
加水分解重縮合可能なアルコキシシラン化合物としては、p=4であるような、全てが加水分解可能な置換基で置換されていることが好ましいが、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基によって該金属1原子当たり1つ置換されている化合物が含まれていても良い。このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく、該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(たとえばフラン、チオフェン、ピリジン等)アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
【0231】
このような一般式(4)で表されるアルコキシシランは、理想的には下記の式(5)のように反応が完結し、本発明に係る金属酸化物微粒子が得られる。
【0232】
【化47】

【0233】
このように反応が完結したと仮定した、(R314−pSiOp/2の質量を、本発明では無機物の含有量として算出する。
【0234】
セミIPN構造を有する透明フィルムの無機物の含有量としては、セミIPN構造を有する透明フィルムの全質量に対して、0.1〜40質量%が好ましい。より好ましくは、1.0〜20質量%である。無機物の添加量が0.1質量%より少ないと、有機−無機ハイブリッドによる物性改良効果が認められなくなり、40質量%を越えるとセミIPN構造を有する透明フィルムが脆くなってしまうためである。
【0235】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能なアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラ(t−ブトキシシラン)、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン等が挙げられる。
【0236】
また加水分解されない置換基を有するアルコキシシラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン、等が挙げられる。
【0237】
また、これらの化合物が部分的に縮合した、多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような、数量体のケイ素化合物も挙げられる。
【0238】
またその他の金属化合物としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−ブトキシド、テトラクロロチタン、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、等が挙げられる。
【0239】
〈加水分解触媒〉
本発明の透明フィルムにおいて、前記一般式(4)で表されるのアルコキシシランは、必要に応じて水・触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進してもよい。
【0240】
しかしフィルムのヘイズ、平面性、製膜速度、溶剤リサイクルなどの生産性の観点から、水分はドープ濃度の0.01%以上2.0%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0241】
疎水的な有機金属化合物に水を添加する場合には、有機金属化合物と水が混和しやすいように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒が共存していることが好ましい。また、セルロース誘導体のドープに有機金属化合物を添加する際に、ドープからセルロース誘導体が析出しないよう、該セルロース誘導体の良溶媒も含まれていることが好ましい。
【0242】
ここで触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸、12タングスト(VI)りん酸、12モリブド(VI)りん酸、けいタングステン酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加しゾル・ゲル反応が進行した後に塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が5000ppm未満である事が好ましい(ここでアルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。又、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。
【0243】
また触媒として、このような酸類の代りに、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の塩基を用いることができる。
【0244】
このような、酸またはアルカリ触媒の添加量としては特に制限はされないが、好ましくは加水分解重縮合可能な反応性金属化合物の量に対して1.0%〜20%が好ましい。また、酸及び塩基の処理を複数回併用しても良い。触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。触媒の除去が簡便である、イオン交換樹脂のような固体触媒を使用しても良い。
【0245】
なお該反応性金属化合物の加水分解重縮合は、塗布前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが塗布前に反応を完結させるのが良い。用途によっては、反応は完全に終了しなくても良いが、できれば完結していたほうが良い。
【0246】
〈溶剤〉
本発明に係るセルロースエステルおよび本発明に係る架橋性化合物は、共に溶剤に溶解され、基材上に流延しフィルムを形成させる際に押し出しあるいは流延後に溶剤を蒸発させるという溶剤キャスト法で成膜することが好ましいため、揮発性の溶媒が好ましく、かつ、触媒や架橋性化合物等と反応せず、しかも流延用基材を溶解しないものであり、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。また、本発明に係るセルロースエステルと本発明に係る架橋性化合物を各々別の溶媒に溶解した後に混合しても良い。
【0247】
ここで、以下、本発明に係るセルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
【0248】
良溶媒の例としてはアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレンなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチルおよび塩化メチレンが好ましい。
【0249】
ドープには、上記有機溶媒の他に、炭素原子数1〜4のアルコールを1〜40質量%含有させることが好ましい。これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることでウェブ(支持体上にセルロース誘導体のドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロース誘導体の溶解を促進したりする役割もあるし、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
【0250】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることが出来る。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロース誘導体に対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
【0251】
このような条件を満たし好ましい高分子化合物である本発明に係るセルロースエステルを高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。
【0252】
〈製造方法〉
次に、本発明のセルロースエステル溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースエステルフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースエステル溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースエステルフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0253】
本発明において、流延工程により形成された皮膜にエネルギー線を照射することにより架橋を行う場合には、流延工程後にエネルギー線照射工程を経ることが好ましい。また、流延工程により形成された皮膜を加熱することにより架橋を行う場合には、上記の乾燥工程において加熱することにより、乾燥と同時に化合物を高分子化(または架橋)させる。
加熱温度と加熱時間は、用いる化合物や高分子化促進剤等により異なるが、一般に好ましくは70℃以上170℃以下、より好ましくは80°以上160℃以下、最も好ましいのは、90℃以上150℃以下である。乾燥(加熱)時間は、好ましくは20分〜240分、最も好ましくは30分〜180分である。
【0254】
〈防湿膜〉
本発明の透明フィルムには、水蒸気透過性の低減を目的とした、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物等の皮膜を、防湿膜として透明フィルムの少なくとも一方の面に形成してよい。これらは積層されていても良いし、両面に形成されていても良い。
【0255】
こうした膜に使用される金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物としてはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、スズ、ニオブから選ばれる1種類以上の元素の酸化物あるいは窒化物、酸窒化物が挙げられ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素が好ましいが、特に好ましくは酸化ケイ素が主たる成分である金属酸化物膜である。主たる成分であるとは、主たる成分について防湿膜の成分内の比率が80質量%以上であることをいう。
【0256】
金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物は例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって製膜することができるが、後述する大気圧プラズマ放電処理方法が好ましい方法である。
【0257】
また、J. Sol-Gel Sci. Tech., p141〜146(1998)に開示されているように、金属酸化物や金属窒化物、金属酸窒化物の薄膜はひび割れやすく、割れたクラックから水蒸気がもれてしまうため、金属酸化物や金属窒化物、金属酸窒化物の防湿膜の上に各種コーティング材を塗布することで前記クラックを封止し、一層の透湿度の低減をはかることもできる。
【0258】
〈透明導電膜〉
次に透明導電膜について説明する。
本発明に係る透明導電膜とは、一般に工業材料としてよく知られているものであり、可視光(400〜700nm)をほとんど吸収せず透明で、しかも良導電体の膜のことである。電気を運ぶ自由荷電体の透過特性が可視光域で高く、透明であり、しかも電気伝導性が高いため、有機EL表示装置等の透明電極として用いられる。本発明のように、透明導電膜を有機EL表示装置用として使用する場合には、透明導電膜の膜厚を約100〜140nmとすることが好ましい。
【0259】
透明導電膜としては、SnO2、In23、CdO、ZnO2、SnO2:Sb、SnO2:F、ZnO:AL、In23:Snなどの金属酸化物膜及びドーパントによる複合酸化物膜が挙げられる。
【0260】
ドーパントによる複合酸化物膜としては、例えば、酸化インジウムにスズをドーピングして得られるITO膜、酸化錫にフッ素をドーピングして得られるFTO膜、In23−ZnO系アモルファスからなるIZO膜等が挙げられる。
【0261】
このような透明導電膜は、例えば、塗布に代表される湿式成膜法や、あるいは、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式成膜法で形成されても良いが、本発明の導電性フィルム上に透明導電膜を形成する手段としては、製膜プロセスが簡便な大気圧プラズマ放電処理方法が好ましい方法である。本発明においては、大気圧プラズマ放電処理としては特開2004−285159号と同様な方法を用いることができる。
【0262】
〈活性線硬化樹脂層〉
本発明の透明導電性フィルムにおいて、上記の防湿膜・透明導電膜のような金属化合物層を本発明の透明フィルムに直接形成させてもよいが、他の中間層を少なくとも1層設けた上に形成させてもよい。他の層として、防眩層やクリアハードコート層等を好ましく用いることが出来、これらの層が紫外線等活性線により硬化する活性線硬化樹脂層であることが好ましく、このような紫外線で硬化された樹脂層の上に本発明に係る防湿膜・透明導電膜を形成させることによって耐擦り傷性に優れた透明導電性フィルムを得ることが出来る。
【0263】
この中間層は、大気圧プラズマ処理により金属酸化物層を形成する場合、接着性向上及びプラズマダメージ軽減の作用を有する。このように、中間層を設けることによって、本発明の透明フィルム上に直接、金属化合物層を形成する場合に比して金属化合物層の特性を上げることができる。また、この中間層によって本発明の透明フィルムと金属化合物層との間の密着性を向上させることができる。
【0264】
防眩層及びクリアハードコート層の活性線硬化樹脂層は、重合性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層で、活性線硬化樹脂層である。ここで、活性線硬化樹脂層とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0265】
〈層構成〉
本発明の導電性フィルムは防湿膜と透明導電膜のそれぞれの薄膜が製膜されたものである。これらの層は、互いに積層されていても良いし、基板の片面ずつに成膜されていても良い。また防湿膜は両面に成膜されてもよい。
【0266】
防湿膜と導電膜を積層する場合は、例えば、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、反応ガス雰囲気内でプラズマ放電処理装置を直列に2基を防湿膜・導電膜の順に2層積層するように並べて連続的に処理することが出来、この連続的積層処理は品質の安定やコスト削減、生産性の向上等から本発明の導電性フィルムの作製に適しており好ましい。無論同時に積層せずに、1層処理ごと、処理後巻き取り、逐次処理して積層してもよい。
【0267】
導電膜が積層されていない基板フィルムの裏面側には防汚層を設けても良い。また裏面にも防湿膜がある場合は、防湿膜の上に防汚層や反射防止層を積層しても良い。また、本発明の透明フィルムまたは透明導電性フィルムを他のフィルム状、シート状あるいは板状の成型物と貼り合わせて使用してもよい。
【0268】
防汚層とは、透明基材表面に汚れがついて透過像を見にくくすることがないよう、ゴミ・指紋等を付着しにくく、またふき取りやすく層である。防汚層は、例えば熱架橋性含フッ素ポリマーにイソプロピルアルコールを加えて、0.2質量%の粗分散液を調製し、最表面層の表面にバーコータで塗布することによって形成される。
【0269】
本発明における透明導電性フィルムの好ましい構成例は以下に示す通りである。
(A) 本発明の透明フィルム(基材)/中間層/防湿膜/透明導電膜
(B) 防汚層/本発明の透明フィルム(基材)/中間層/防湿膜/透明導電膜
(C) 防湿膜/中間層/本発明の透明フィルム(基材)/中間層/透明導電膜
(D) 防汚層/防湿膜/中間層/本発明の透明フィルム(基材)/中間層/防湿膜/透明導電膜
【0270】
〈透明、複屈折の波長分散特性〉
本発明の透明フィルム、透明導電性フィルムにおいて、透明であるとは、フィルムの全光線透過率が50%以上であるものをいう。しかし一般に光学用途に用いられる透明フィルムとしては、全光線透過率が80%以上のものが好ましく、より好ましくは85%以上のフィルムである。尚、全光線透過率とは、試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合である(JISK−7361−1参照)。
【0271】
[機能層]
本発明の透明フィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、および該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明の透明フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明の透明フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0272】
[用途(偏光板)]
本発明の透明フィルムの用途について説明する。
本発明の透明フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた透明フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光膜を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0273】
偏光板は偏光膜及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の透明フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
【0274】
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の透明フィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償フィルムなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明の透明フィルムは別の複屈折を持つ光学異方性フィルムあるいは光学異方性層を積層して光学異方性を制御させることができる。
【0275】
したがって本発明の透明フィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、併用する光学異方性フィルムあるいは光学異方性層のRe(590)が0 〜200nmであり、かつ|Rth(590)|が0〜400nmであることが好ましく、この範囲であればどのような光学異方性層でも良い。本発明の透明フィルムが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成しても良い。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
【0276】
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0277】
光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
【0278】
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0279】
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号などに記載の化合物が含まれる。
【0280】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
【0281】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合せての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0282】
また、光学異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを延伸して光学異方性を発現させて光学異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の透明フィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに本発明の透明フィルムと貼合し、あわせて光学異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0283】
[用途(液晶表示装置)]
本発明の液晶表示装置は、例えば、2枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セルと、少なくともその一方に、偏光膜と少なくとも1枚の保護フィルムからなる偏光板を配するものである。
液晶表示装置には、液晶セルと偏光膜の間に少なくとも1枚の光学補償フィルムが配置されていることが好ましく、本発明の透明フィルムを偏光膜の保護フィルム、光学補償フィルムの支持体として用いることができる。本発明の透明フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光膜の透過軸と、透明フィルムを備えた光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。
なお、本発明の液晶表示装置に用いられる液晶セルの液晶層は、通常は、2枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリア層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
【0284】
(液晶表示装置の種類)
本発明の透明フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled BiRefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の透明フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。中でも、液晶モードがIPS方式であることが好ましい。
【0285】
(TN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0286】
(STN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0287】
(VA型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムのReを0乃至150nmとし、Rthを70乃至400nmとすることが好ましい。Reは、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthは150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0288】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは光学補償フィルムの支持体としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明の透明フィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下に配置される前記偏光板保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明の透明フィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のリターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
【0289】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学的性質も、光学異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0290】
(反射型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは光学補償フィルムとして用いてもよい。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、WO00−65384号に記載がある。
【0291】
(その他の液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0292】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の透明フィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の透明フィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の透明フィルムを好ましく用いることができる。
【0293】
[用途(写真フィルム支持体)]
さらに本発明の透明フィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき、下記特許等に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明の透明フィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
【実施例】
【0294】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0295】
[実施例1]
〈本発明の透明フィルム101の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、ジアセチルセルロース(酢化度2.03)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−19)1質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)1.0質量部と、波長分散調整剤(UV−102)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、ガラス板上に巾600mmのドクターブレードで成膜し、得られたフィルムを120℃で30分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム101とした。フィルムの厚みは35μmであった。
【0296】
〈本発明の透明フィルム102の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−19)1質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)1.0質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、ガラス板上に巾600mmのドクターブレードで成膜し、得られたフィルムを120℃で30分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム102とした。フィルムの厚みは55μmであった。
【0297】
〈本発明の透明フィルム103の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−19)2質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−102)0.2質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、ガラス板上に巾600mmのドクターブレードで成膜し、ほぼ溶媒が揮発した後、得られた塗布膜に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させた後ガラス板からはがし、得られたフィルムを120℃で30分間乾燥させて本発明の透明フィルム103とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0298】
〈本発明の透明フィルム104の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−19)3質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)3.0質量部と、波長分散調整剤(UV−102)0.3質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、ガラス板上に巾600mmのドクターブレードで成膜し、得られたフィルムを120℃で30分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム104とした。フィルムの厚みは75μmであった。
【0299】
〈本発明の透明フィルム105の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−18)2質量部と、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例示化合物21)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−101)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−104)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属支持体板上に巾1360mmで成膜し、得られたフィルムを120℃で20分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム105とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0300】
〈本発明の透明フィルム106の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.91)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−18)2質量部と、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例示化合物21)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−101)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−104)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属支持体板上に巾1360mmで成膜し、得られたフィルムを120℃で20分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム106とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0301】
〈本発明の透明フィルム107の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−35)2質量部と、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例示化合物21)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−101)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−104)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属支持体板上に巾1360mmで成膜し、得られたフィルムを120℃で20分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム107とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0302】
〈本発明の透明フィルム108の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−18)2質量部と、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例示化合物35)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−101)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−104)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属支持体板上に巾1360mmで成膜し、得られたフィルムを120℃で20分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム108とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0303】
〈本発明の透明フィルム109の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−18)2質量部と、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例示化合物21)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−103)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−105)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属支持体板上に巾1360mmで成膜し、得られたフィルムを120℃で20分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム109とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0304】
〈本発明の透明フィルム110の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−35)2質量部と、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例示化合物35)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−103)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−105)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属ドラム上に巾1560mmで成膜し、得られたフィルムを120℃で10分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム110とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0305】
〈本発明の透明フィルム111の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−35)2質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例示化合物43)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−103)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−105)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属ドラム上に巾1560mmで成膜し、得られたフィルムを120℃で10分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム111とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0306】
〈本発明の透明フィルム112の作製〉
メタノール12.0質量部とブタノール3.0質量部と塩化メチレン70.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)15.0質量部と、レターデーション低減剤(FA−2)1質量部と、レターデーション低減剤(FB−6)1質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例示化合物43)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−103)0.1質量部と、波長分散調整剤(UV−105)0.1質量部と、トリフェニルホスフェイト0.4質量部と、ビフェニルジフェニルホスフェイト0.2質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属ドラム上に巾1560mmで成膜し、得られたフィルムを130℃で10分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム112とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0307】
〈本発明の透明フィルム113の作製〉
メタノール12.0質量部とブタノール3.0質量部と塩化メチレン70.0質量部の混合溶媒に、セルロースアセテートプロピオネート15.0質量部と、レターデーション低減剤(FA−2)1質量部と、レターデーション低減剤(FB−6)1質量部と、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例示化合物35)2.0質量部と、波長分散調整剤(UV−102)0.2質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、金属ドラム上に巾1560mmで成膜し、得られたフィルムを130℃で10分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させ、本発明の透明フィルム113とした。フィルムの厚みは75μmであった。
【0308】
〈本発明の透明フィルム114の作製〉
テトラメトキシシラン2.5質量部(17mmol)と酢酸メチル1.3質量部、エタノール1.3質量部を混合した後、0.5%硝酸水溶液を0.6質量部加えて加水分解を行い、室温でそのまま1時間攪拌を続けた。
一方、エタノール7.0質量部と酢酸メチル73.0質量部の混合溶媒に、セルロースアセテートブチレート20.0質量部と、レターデーション低減剤(A−18)2質量部と、レターデーション低減剤(A−19)3質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)5.0質量部と、波長分散調整剤(UV−104)0.3質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、テトラメトキシシランを加水分解した前記の溶液を混合し、さらに1時間攪拌を行った後、金属バンド支持体上に巾1360mmで成膜し、得られたフィルムを130℃で20分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させた後、150℃で1時間熱処理を行い、本発明の透明フィルム114とした。フィルムの厚みは70μmであった。
【0309】
〈本発明の透明フィルム115の作製〉
メチルトリエトキシシラン2.7質量部(15mmol)と酢酸メチル1.3質量部、エタノール1.3質量部を混合した後、0.5%硝酸水溶液を0.5質量部加えて加水分解を行い、室温でそのまま1時間攪拌を続けた。
一方、エタノール7.0質量部と酢酸メチル73.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度、2.87)20.0質量部と、レターデーション低減剤(A−18)2質量部と、レターデーション低減剤(A−19)3質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)5.0質量部と、波長分散調整剤(UV−104)0.3質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部を溶解後、メチルトリエトキシシランを加水分解した前記の溶液を混合し、さらに1時間攪拌を行った後、金属ドラム上に巾1560mmで成膜し、得られたフィルムを130℃で10分間乾燥させた後に、150mW/cm2の強度の紫外線を1分間照射させた後、150℃で1時間熱処理を行い、本発明の透明フィルム115とした。フィルムの厚みは65μmであった。
【0310】
〈本発明の透明フィルム116の作製〉
透明フィルム107に用いたトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例示化合物21)2.0質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部に替えて、エポキシ化合物(I−3)2.5質量部と、エポキシ化合物)(I−5)0.5質量部と、高分子化促進剤(H−4)0.3質量部とし、紫外線照射をせず、130℃10分の乾燥を140℃30分とする以外は、透明フィルム107と同様にして透明フィルム116を作製した。
【0311】
〈本発明の透明フィルム117の作製〉
透明フィルム115に用いたトリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)5.0質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部に替えて、エポキシ化合物(II−1)2.5質量部と、エポキシ化合物(I−2)0.5質量部と、高分子化促進剤(H−2)0.3質量部とし、紫外線照射をせず、130℃10分の乾燥を140℃30分とする以外は、透明フィルム115と同様にして透明フィルム117を作製した。
【0312】
〈比較の透明フィルム121の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、ジアセチルセルロース(酢化度 2.03)15.0質量部と、レターデーション低減剤(A−19)1質量部を、溶解後、ガラス板上にドクターブレードで成膜し、ほぼ溶媒が揮発した後、得られた塗布膜に、120mW/cm2の強度の紫外線を2分間照射させた後ガラス板からはがし、得られたフィルムを130℃で25分間乾燥させて比較用透明フィルム121とした。フィルムの厚みは35μmであった。フィルムの透過率は84.3%であり、ヘイズは2.4%と高かった。
【0313】
〈比較の透明フィルム122の作製〉
メタノール9.0質量部と塩化メチレン76.0質量部の混合溶媒に、トリアセチルセルロース(酢化度 2.87)15.0質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(例示化合物27)1.0質量部と、波長分散調整剤(UV−104)0.1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.10質量部をを冷却溶解後、ガラス板上にドクターブレードで成膜し、ほぼ溶媒が揮発した後、得られた塗布膜に、120mW/cm2の強度の紫外線を2分間照射させた後ガラス板からはがし、得られたフィルムを130℃で25分間乾燥させて比較用透明フィルム122とした。フィルムの厚みは63μmであった。
【0314】
以上、フィルムとして得ることができた本発明の透明フィルム101〜117および比較の透明フィルム121〜122について下記の評価を実施した。評価結果を下記表1、表2に示す。
【0315】
(面内レターデーション値Re、膜厚方向のレターデーション値Rth)
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は前記Re(λ)と、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向を0°としてサンプルを10°ごとに50°まで傾斜させて波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値を基に、平均屈折率および膜厚を入力し算出し、表1に示した。
25℃60%RHと同様にして、25℃10%RH及び25℃80%RHにてRe及びRth値を測定して、湿度依存性値Re10%−Re80%及びRth10%−Rth80%を算出し、その絶対値を表1に示した。
また、400nmの波長での値と700nmの波長でのRe値、Rth値から波長依存性 |Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|を算出した。
【0316】
(透湿度)
透湿度はフィルム試料70mmφを60℃、95%RHで24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求め、表2に示した。
【0317】
(平衡含水率)
含水率は、本発明の透明フィルム試料7mm×35mmを25℃80%RHで24時間調湿した後、水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出し、表2に示した。
【0318】
(カール測定)
MD方向及びそれに垂直なTD方向に35mm×3mmのサイズでサンプリングし、25℃60%RHで2時間調湿した後、カール値CMD,60及びCTD,60を測定した。また、25℃10%RHの環境に2時間調湿した後、カール値CMD,10及びCTD,10を測定し、また、別に、25℃80%RHの環境に2時間調湿した後、カール値CMD,80及びCTD,80を測定し、25℃10%RHと25℃80%RHとのカール値の差Δ(CMD,80−CMD,10)及びΔ(CTD,80−CTD,10)を算出した。以上の測定結果を表1に示した。
【0319】
【表1】

【0320】
【表2】

【0321】
表1において、A〜Eは下記の通りを表す。
A:本発明に係るセルロースエステル
B:レターデーション低減剤
C:本発明に係る重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物(架橋性モノマー)
D:波長分散調整剤
E:本発明に係る金属アルコキシドの加水分解重縮合物からなる金属酸化物微粒子
【0322】
比較の透明フィルム121は、表1からレターデーション低減剤を含むものの膜厚方向のレターデーション値がまだ大きく、また、面内のレターデーション及びその湿度依存性が大きいことがわかり、好ましくない。表2を見てわかるように高湿下、MD方向のカール値、MD及びTD方向のカールの湿度依存性が大きいことがわかる。架橋ポリマーを含まないために透湿度、平衡含水率も大きいフィルムである。
比較の透明フィルム122は、表1から膜厚方向のレターデーション値が大きく、また、面内のレターデーションが大きいことがわかり、好ましくない。架橋ポリマーを含むので、表2を見てわかるように透湿度、平衡含水率を抑えられているものの、レターデーション低減剤を含まないためレターデーションが大きいことがわかる。
さらに、レターデーション値の横(延伸に垂直)方向のばらつきは、中央と端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)で6nm〜11nmであり、100mごとに測定した縦(延伸)方向のばらつきも10nmよりも大きかった。
【0323】
一方、本発明の透明フィルム101は、膜厚方向のレターデーションが小さく、セミIPN構造の導入によりDAC単体のフィルム(比較の透明フィルム121)よりも透湿度、平衡含水率が小さく、カールの湿度変化も小さく改善されていることがわかる。
本発明の透明フィルム102は透明フィルム101よりも置換度の高いTACを用いており、膜厚方向のレターデーションが小さく、面内のレターデーションも小さく、これらの湿度依存性も小さく、好ましい透明フィルムであることがわかる。
さらにレターデーション低減剤、架橋ポリマーの多い、高い透明フィルム103、104は、膜厚方向のレターデーションが小さく、湿度依存性を小さくできることがわかる。平衡含水率、透湿度も更に低下していることがわかり、セミIPN構造の導入により、親水部と疎水部が複雑に絡み合った構造が形成されたと考えられる。
また波長分散調整剤により、フィルムの膜厚方向レターデーションの波長依存性が小さく、改善できていることがわかる。
さらに、レターデーション値の横(延伸に垂直)方向のばらつきは、中央と端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)で1nm以下であり、100mごとに測定した縦(延伸)方向のばらつきも1nm以下であった。
【0324】
また、本発明の透明フィルム105〜112も良好な膜厚方向のレターデーションを有し、面内のレターデーション及びこれらの湿度依存性にも優れており、カール特性の他、透湿度、平衡含水率も好ましいことがわかる。
【0325】
また、TACに替えて、CAPやCABとした透明フィルム113や透明フィルム114、酸化ケイ素を本発明の透明フィルムにハイブリッドした透明フィルム114、115、架橋性モノマーとしてエポキシ化合物を用いた透明フィルム116、117も同様な効果が認められた。
【0326】
[実施例2]
実施例1で得られた透明フィルム101〜117上に、クリアハードコート層、防湿膜、透明導電膜を形成した透明導電性フィルム201〜217を作製した。大気圧プラズマ処理によって設けられた防湿膜(酸化ケイ素膜)により、本発明の透明フィルムや比較の透明フィルムの透湿度がさらに低く抑えることができ、また、大気圧プラズマ処理によって、本発明の透明フィルムや比較の透明フィルム上に高い全光線透過率と低い(電気)比抵抗値の透明導電膜を設けることができた。
さらに、透明導電性フィルム201〜217ではほとんど反射率のばらつきが発生しない、好ましい透明導電性フィルムを作製することができた。
【0327】
[実施例3]
また、上述した本発明の透明導電性フィルム201〜217を用いて、TN液晶表示素子を以下の方法で作製した。
【0328】
〈TN液晶表示素子の作製方法〉
透明導電性基材(本発明の透明導電性フィルム201〜217)上に、平滑化のための樹脂層をコートし、さらにその上に直接あるいは二酸化ケイ素層等を介して透明導電膜を形成し、ストライプ形状等にパターニング加工して表示用電極を形成させ、また対向基板側にも同様にして表示用電極を形成し、さらに、配向膜、シール材をそれぞれ印刷法等で形成し、スペーサー散布を行った後、両基板を対向させて圧着し空セルを構成する。そしてこの空セルに真空注入法等で液晶を注入し、対向する表示用電極に駆動電圧が印加されるように端子部を取り出し、必要に応じて位相差板、偏光板、タッチパネル、光源等を組み合わせることによって液晶表示素子を形成する。
【0329】
このようにして作製した液晶表示素子において、本発明の透明導電性フィルム201〜217においては良好な画像が得られた。
【0330】
[実施例4]
さらに、上述した本発明の透明導電性フィルム201〜217を用いて、タッチパネルを以下の方法で組み立てた。
【0331】
〈タッチパネルの組み立て方法〉
下部電極にはタッチパネル用ガラスITO(スパッタリング製膜品)を用い、上部電極には前記の実施例で得られた透明導電性基材(本発明の透明導電性フィルム201〜217)を用いた。そして、透明導電性基材の透明導電膜面を向かい合わせにし、熱硬化タイプドットスペーサを用い、間隔を8μm空けてパネル化してタッチパネルを組み立てた。
【0332】
このようにして組み立てたタッチパネルの下に適当な画像を置き、ななめ45°から視認して、透過して見える画像が歪まずに見えるか視認性試験を行ったところ、本発明の透明導電性フィルム201〜217では歪みなく画像を視認できた。
【0333】
以上、実施例で明らかなように、本発明によれば複屈折が小さく波長分散特性が正分散であって、ガラス転移温度が高く、また線膨張率の低い液晶ディスプレイ素子用、有機ELディスプレイ素子用、またはタッチパネル用透明フィルムを提供することができ、良質な液晶ディスプレイ素子、有機ELディスプレイ素子、タッチパネル等を作製できるようになった。
【0334】
[実施例5]
(偏光板の作製)
実施例1で得た本発明の透明フィルム試料101〜117および121〜122を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.01規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、透明フィルムの表面をケン化した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリけん化処理した透明フィルム試料101〜117及び121〜122を2枚用意して偏光膜を間にして貼り合わせ、両面が透明フィルム101〜117及び121〜122によって保護された偏光板を得た。この際両側の透明フィルム試料101〜117及び121〜122の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。本発明の透明フィルム試料101〜117及び121〜122はいずれも延伸したポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。この偏光板を以下、偏光板101〜117及び偏光板121〜122という。
【0335】
(偏光板耐久性)
偏光板101〜117及び偏光板121〜122を60℃95%RHの条件で500時間放置した後の偏光度を評価したところ、透明フィルム101〜117及び121〜122を用いた偏光板の偏光特性はいずれも優れており、本発明の透明フィルムは偏光板加工した際の耐久性が良好であることが確認できた。
【0336】
[実施例6](IPS型液晶表示装置への実装評価)
実施例1で得た透明フィルムおよび実施例5で得た偏光板を用いて、液晶表示装置へ実装評価してその光学性能が十分であるか確認した。なお本例ではIPS型液晶セル、を用いるが、本発明の透明フィルムを用いた偏光板または光学補償フィルムの用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
【0337】
実施例5で作製した偏光板のうち、偏光板101〜105および偏光板121に対して、アートンフィルム(JSR社製)を一軸延伸した光学補償フィルムを貼合して光学補償機能を持たせた。この際、光学補償フィルムの面内レターデーションの遅相軸を偏光板の透過軸と直交させることで、正面特性を何ら変えることなく視覚特性を向上させることができる。光学補償フィルムの面内レターデーションRe(630)は270nm、膜厚方向のレターデーションRth(630)は0nmでNzファクターは0.5のものを用いた。
【0338】
上記の偏光板101と光学補償フィルムの積層体を2組作製し、光学補償フィルムが各々液晶セル側となるように、「偏光板101と光学補償フィルムの積層体+IPS型の液晶セル+偏光板101と光学補償フィルムの積層体」の順番に重ね合わせて組み込んだ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5度、ラビング方向:基板上下とも75度とした。
【0339】
以上のようにして作製した液晶表示装置において、装置正面からの方位角方向45度、極角方向70度における黒表示時の光漏れ率を測定した結果を表5に記載した。
この値が小さいほど斜め45度方向での光漏れが少なく、表示装置のコントラストが良いことを示し、液晶表示装置の視野角特性を評価できる。本発明の透明フィルムからなる偏光板101〜105を用いた場合は比較試料からなる偏光板121を用いた場合と比較して、光漏れ率が1/50から1/4といずれも小さくなった。また偏光板101〜105を用いた場合は偏光板121を用いた場合と比較して、表示装置の色味変化が小さくなった。これは本発明の透明フィルム試料101〜105のRe、Rthの波長分散性が優れている(波長依存性が小さい)ために、どの波長においても同様の光学補償性能を持つことを示している。以上のように本発明の透明フィルムを用いて作製した光学補償フィルムおよび偏光板が、視野角特性に優れ、表示色味を変化しにくいことがわかった。
【0340】
【表3】

【0341】
[実施例7]
(光学補償フィルム性能)
実施例1〜2で得た本発明の透明フィルム試料を用いて、特開平7−333433号公報の実施例1に記載の方法により光学補償フィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明の透明フィルムが、光学的用途として優れたものであることが判った。
【0342】
[実施例8]
(光学補償フィルム性能)
本発明の透明フィルム試料を用いて、特開2003−315541号公報の実施例1に記載の方法に準じて光学補償フィルム試料を作製した。2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB)から合成された、質量平均分子量(Mw)6万、△nが約0.04のポリイミドを、溶媒にシクロヘキサノンを用い28質量%に調製した溶液を、本発明の透明フィルム試料121(厚さ65μm)に塗布した。その後100℃で10分熱処理後、160℃で16%縦一軸延伸することにより厚さ6μmのポリイミドフィルムが本発明の透明フィルムに塗布された光学補償フィルムを得た。この光学補償フィルムの光学特性は、Re(630)=70nm、Rth(630)=215nm、配向軸のズレ角度は±0.5度以内の光学補償フィルムであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステルと架橋ポリマーとのセミIPN(半相互貫入型網目構造)型ポリマーアロイを有し、かつ膜厚方向のレターデーション値が下記式(I)を満たすことを特徴とする透明フィルム。
式(I) −25≦Rth(630)≦25
[式中、Rth(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項2】
レターデーション低減剤を含有することを特徴とする請求項1記載の透明フィルム。
【請求項3】
該透明フィルムの面内レターデーション値が下記式(II)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の透明フィルム。
式(II) 0≦Re(630)≦10
[式中、Re(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項4】
該透明フィルムがレターデーションの波長分散調整剤を含有し、該透明フィルムの面内レターデーション値および膜厚方向のレターデーション値が下記式(III)および(IV)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明フィルム。
式(III) |Re10%−Re80%|≦25
式(IV) |Rth10%−Rth80%|≦35
[式中、Ren%は25℃n%RH下、波長630nmにおける面内レターデーション値(単位:nm)、Rthn%は25℃n%RH下、波長630nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項5】
該セルロースエステルがアシル化エステルであり、アシル置換度(X+Y)が下記式(V)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明フィルム。
式(V) 2.0<X+Y≦3.0
[式中、Xはアセチル置換度、Yはアセチル以外のアシル置換度である。]
【請求項6】
該レターデーション低減剤のオクタノール−水分配係数(Log P値)が0〜7であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項7】
該透明フィルムのカール値が、25℃10%RHから25℃80%RHの温湿度条件のすべての範囲で、前記透明フィルムのMD方向及びTD方向ともに、−21〜+21/mであり、25℃80%RH下での前記透明フィルムのMD方向のカール値CMD,80と25℃10%RH下での前記透明フィルムのMD方向のカール値CMD,10との差が−14/m〜+14/mであり、かつ、25℃80%RH下での前記透明フィルムのTD方向のカール値CTD,80と25℃10%RH下での前記透明フィルムのTD方向のカール値CTD,10との差が−14/m〜+14/mであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項8】
前記架橋ポリマーが、重合性不飽和二重結合を複数有する低分子化合物を架橋重合させた架橋ポリマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項9】
前記架橋ポリマーが、エポキシ化合物と高分子化促進剤との反応形成物からなる架橋ポリマーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項10】
前記架橋ポリマーが、親水性基と疎水性基を有する架橋ポリマーであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項11】
前記透明フィルム中に、さらに金属アルコキシドの加水分解重縮合物からなる金属酸化物微粒子が分散されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項12】
該透明フィルムの60℃、95%RH・24hrの透湿度が、40g/m2・24hr以上500g/m2・24hr以下である請求項1〜11のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項13】
該透明フィルムの、25℃80%RHの平衡含水率が3.0%以下である請求項1〜12のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項14】
該透明フィルムの厚みが30〜120μmである請求項1〜13のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項15】
セルロースエステル、レターデーション低減剤および架橋性モノマーを含有するセルロースエステル溶液を流延する工程(流延工程)と、上記流延工程により形成された皮膜にエネルギー線照射を行うエネルギー線照射工程とを有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法。
【請求項16】
セルロースエステル、レターデーション低減剤および架橋性モノマーを含有するセルロースエステル溶液を流延する工程(流延工程)と、上記流延工程により形成された皮膜を加熱する加熱工程とを有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれかに記載の透明フィルムを基板として用いることを特徴とするディスプレイ素子。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の透明フィルムに、Re(630)=0〜200nmで、且つ|Rth(630)|=0〜400nmの光学異方性層を積層してなることを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項19】
偏光膜の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が請求項1〜14のいずれかに記載の透明フィルムあるいは請求項18に記載の光学補償フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項20】
視認側保護フィルム上に反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項19記載の偏光板。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれかに記載の透明フィルム、請求項15に記載のディスプレイ素子、請求項18に記載の光学補償フィルム、及び請求項19〜20に記載の偏光板、の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項22】
該液晶表示装置がTN、STN、IPS、VA及びOCBのいずれかのモードの液晶セルを有し、透過型、反射型又は半透過型のいずれかの方式であることを特徴とする請求項21に記載の液晶表示装置。

【公開番号】特開2006−292895(P2006−292895A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111319(P2005−111319)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】