説明

透明電極のグラビア印刷法及び当該方法用インク組成物

基板(19)上に透明電極を形成する方法が開示されている。当該方法は、グラビアオフセット印刷法により、基板上にパターニングされた加熱分解可能なインク組成物を堆積する工程及び、加熱分解可能なインク組成物を加熱分解する工程を有する。加熱分解可能なインク組成物は、可視光波長未満の粒径を有する導電性の金属酸化物、ニトロセルロース結合剤、アルコール溶媒及び、250℃より高温の沸点を有する有機共溶媒を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上に透明電極を形成する方法に関する。特に、本発明は透明電極のグラビアオフセット印刷法に関する。
【0002】
本発明はまた、基板上の透明電極形成に使用される加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用のインク組成物にも関する。基板はオフセット印刷法によって上に堆積されて形成された透明電極を有する。
【背景技術】
【0003】
たとえば液晶ディスプレイ(LCD)素子及びプラズマディスプレイパネル(PDPs)のようなディスプレイ素子は透明な導電性電極が上に形成される基板を有する。
【0004】
例として、既知のパッシブマトリックスLCD素子の断面図を図1に概略的に示す。この図を参照すると、素子1はお互い平行な第1透明ガラス基板3及び第2透明ガラス基板5を有する。第1基板3の内向きの面には列で配列される透明電極アレイ7が供され、第2基板5の内向きの面には行で配列される透明電極アレイ9が供されている。列及び行で配列される電極7及び電極9はインジウムスズ酸化物(ITO)を有する。ITOはインジウムドープの酸化スズで、導電性を有し透明である。ITOは可視光の波長未満の粒径を有する。
【0005】
素子はまた、基板3と基板5の外向きの面上に成膜された平行な偏光膜11と偏光膜13、及びいずれか1つの基板に隣接するバックライト15を有する。
【0006】
列及び行で配列される電極7及び電極9はともに規則的な間隔を保った画素のマトリックスを画成する。各画素は基板3と基板5との間で整合する液晶の積層構造17を有する。
【0007】
使用時、通常バックライト15からの光は画素を透過しない。なぜなら画素中の液晶17がある角度で偏光を回転させ、その偏光が偏光膜13によって吸収されるからである。
【0008】
しかし、画素の行及び列に配列される電極7及び電極9の両方に電圧が印加されるとき、画素中の液晶17は偏光を回転させないため、偏光は偏光膜13を透過する。
【0009】
よって、多数の画素の行及び列に配列される電極7及び電極9に順次電圧を印加することで、バックライトからの入射光が素子を透過し、素子1上に画像が生成される。生成された画像は基板5の前方で見ることができる。
【0010】
前述の説明はパッシブモノクロームLCD素子の構造及び動作に関する。各画素が赤、緑及び青のフィルタに対応する3層の積層構造を有し、液晶の各層が分離された列及び行で配列される電極によってアドレス指定されることを除けば、カラーLCD素子の構造及び動作も同様である。各画素が通常、薄膜トランジスタ及びキャパシタを含むスイッチング回路をも有することを除けば、アクティブマトリックスLCDの構造及び動作もまた同様である。
【特許文献1】米国特許公開第5421926号明細書
【特許文献2】米国特許公開第6274412号明細書
【特許文献3】米国特許公開第5312643号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ディスプレイ素子で使用される基板及び電極のうちの複数が高画質の画像を生成するのに十分な光を確実に透過させることを保証できる程度に透明でなくてはならないことは前述の説明から明らかである。高解像度ディスプレイ素子は、対応する高分解能及び高精度の透明電極を有しなければならないこともまた前述の説明から明らかである。
【0012】
高分解能及び高精度の透明電極を有する透明基板の製造に関する既知の方法はフォトリソグラフィを含む。
【0013】
例として、そのような既知の製造方法のうちの1つの工程を説明する。第1に、スパッタ法によりITO薄膜を透明ガラス基板上に成膜する。第2に、ITO薄膜上にフォトレジストポリマーを成膜する。第3に、所望の電極レイアウトを表すパターンを有するマスクをフォトレジスト層の上に設置して、マスクを介して紫外(UV)光が照射される。第4に、フォトレジスト層はUV露光によって弱くなった領域を除去することで現像される。第5に、フォトレジストで被覆されたITOの領域のみを残すため、ITOの露出された領域が化学エッチングされる。最後に、所望の電極パターンを残すため、ITOの残りの領域からフォトレジストが除去される。
【0014】
前述された既知の方法が高分解能でかつ高精度の透明電極を作製する方法であるにもかかわらず、この方法にはいくつもの克服すべき課題がある。第1に、多数の工程を含むことで時間とコストがかかってしまう。第2に、この方法において、ITO膜を成膜する工程及びITO膜をエッチングする工程が実行されていることは本質的に非効率的である。第3にエッチング処理は大量の廃液を発生させ、この廃液は環境に悪影響を及ぼす。
【0015】
特許文献1及び特許文献2では、透明基板上にITO電極をプリントする方法が開示されている。しかし、インクはスクリーン印刷用に調製されたものであり、それゆえに電極はゆがみやすくなる。従って、この方法で現代のディスプレイ素子応用に求められる高分解能及び高精度の透明電極を作製することは不可能である。
【0016】
特許文献3では、透明基板上にITO電極をグラビアオフセット印刷する方法が開示されている。電極は透明基板上に、2-エチルヘキサン酸インジウム、p-トルイレートスズ(tin p-toluilate)及びブチルカルビトールアセテートの混合物(いわゆる樹脂酸塩ITO)として堆積される。
この混合物は、ITOを形成するために高温(580℃)で加熱される。この高温加熱分解過程は多くのディスプレイ素子の製造上不適切である。なぜなら高温加熱がたとえばアクティブマトリックスディスプレイ素子の薄膜トランジスタのような基板上に成膜された他の層に悪影響を及ぼす恐れがあるからである。第2に、この方法では十分な導電性を有する透明電極を作製することができないため、さらに金属電極を堆積する必要がある。そのような付加的処理ともなう複雑さが製造コストを引き上げる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の態様に従って、基板上に透明電極を形成する方法が提供される。当該方法は、グラビアオフセット印刷法によって、基板上にパターニングされた加熱分解可能なインク組成物を堆積する工程及び、加熱分解可能なインク組成物を加熱する工程を有する。加熱分解可能なインク組成物は可視光の波長未満の粒径を有する導電性金属酸化物、ニトロセルロース結合剤、アルコール溶媒及び、250℃より高い沸点を有する有機共溶媒を有する。
【0018】
フォトリソグラフィを含む既知の技術と比較して、プリントによる透明電極の形成は単純なプロセスで、省コストな方法になるだろう。また堆積した材料はエッチングされないので、本質的に効率的であり、環境に優しい。透明電極のプリントに関わるこれまでの問題は克服される。特に、導電性金属酸化物粒子の懸濁を用いたグラビアオフセット印刷技術は現代のディスプレイ素子応用に必要な高分解能、高精度及び高性能の透明電極を作製することが可能である。この理由は、スクリーン印刷及び従来の無水/ドライオフセット印刷のような他の印刷法と違い、グラビアオフセット印刷はプリント用のインクをほぼ完全に基板に移し、高画質で長距離範囲でも短距離範囲でもゆがみが非常に小さいという特徴を有する。特定の加熱分解可能なインク組成物は低温での加熱分解を可能にする。基板上に堆積されている他の層への熱応力を小さくできるため、低温で加熱分解するインク組成物はほとんどのディスプレイ素子作製において適している。
【0019】
金属酸化物濃度及びレオロジーは当業者に周知の方法で調節可能である。たとえば、金属酸化物、溶媒及び結合剤の対応する組成比を変更することで実現可能である。金属酸化物濃度は加熱分解後の透明電極の厚さに影響する。レオロジーは吸い取り(pick-up)及び滴下(print-down)中のインクの流れ及び分布の具合(splitting)に影響するので、印刷プロセス中の解像度、プリント画質及び精度に影響する。
【0020】
アルコール溶媒は金属酸化物粒子が一定の状態で分散するようにする。ニトロセルロースポリマーはアルコール溶媒との相性が良いことが分かっている。
【0021】
共溶媒の使用は、プリント中ほぼすべてのインクが移動ブランケットから基板に移行するのを補助し、高い印刷品質を得るためである。この理由は、ばらつく代わりに、ブランケットから基板へ十分に移行することで、よりまっすぐな境界線、少ないピンホール及びより滑らかな印刷面を実現するためである。250℃より高温の沸点を有する共溶媒は最も効率的であることが分かった。
【0022】
金属酸化物粒子は0.1μm未満の平均粒径で、0.3μmの最大粒径を有することが好ましい。より好適には、金属酸化物粒子の平均粒径は3nm〜80nmの範囲である。好適には、金属酸化物粒子はインジウムドープの酸化スズである。そのような粒子を有する組成物は高品質でかつ高精度の透明電極を形成することが分かった。
【0023】
溶媒の沸点はわずか250℃で良い。好適には、溶媒の沸点はわずか150℃であり、より好適には100℃であり、さらに好適には50℃である。溶媒はアルキルアルコール、モノアルキルエチレングリコール及びモノアルキルプロピレングリコールのうちの少なくとも1つであることが好ましい。溶媒は(1−メチルエトキシ)エタノールがより好ましい。
【0024】
有機共溶媒はアセテート、アルキルアルコール、エステル、エチレングリコールのモノ、或いはジアルキルエーテル及び、プロピレングリコールのモノ、或いはジアルキルエーテルのうちの少なくとも1つであることが好ましい。有機共溶媒はトリプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールのうちの少なくとも1つであることがより好ましい。
【0025】
当該方法は、パターニングされた加熱分解可能なインク組成物を堆積する前に加熱分解可能なインク組成物を均一化する工程を有することが好ましい。このことが、組成物内での粒子の均一な分散及び均一な結合剤濃度を保証し、そして高品質の透明電極を保証する。
【0026】
パターニングされた加熱分解可能なインク組成物を堆積する工程は、通常使用される層内のパターニングされた溝に加熱分解可能なインク組成物を満たす工程;加熱分解可能なインク組成物を、通常使用される層にブランケットを接触させることで、パターニングされた溝からブランケット表面まで移行する工程;及び、加熱分解可能なインク組成物を、基板にブランケットを接触させることで、ブランケット表面から基板まで移行する工程を有する。そのような工程は小さなゆがみで高い印刷品質を得られることが分かった。
【0027】
高い導電性を有する透明電極を得るのに必要とされる、加熱分解可能なインク組成物を加熱分解する工程は酸素存在下、たとえば大気中又は純粋な酸素雰囲気で、わずか400℃で加熱することが好ましく、より好適には300℃であり、さらに好適には250℃〜300℃の範囲で加熱することである。そのような温度は印刷で透明金属酸化物電極を形成する既知の方法での温度よりも低い。その結果、熱応力が小さくなり、標準的な基板で処理できるようになる。
【0028】
加熱分解可能なインク組成物を加熱分解する工程は具体的に、加熱分解可能なインク組成物を大気中200℃〜400℃の範囲で少なくとも50分加熱する工程;及び、加熱分解可能なインク組成物を窒素中7%水素による減圧環境下で、200℃〜400℃の範囲で少なくとも50分加熱する工程を有して良い。
【0029】
その代わり、加熱分解可能なインク組成物は酸素存在下では550℃までの高温で加熱して良い。そのような高温で、わずかに高い導電性を有する透明電極が作製される。そのような高温は重大な熱応力を生じさせるので、より低い温度が好ましい。
【0030】
もしより高い加熱温度を使用する場合、加熱分解可能なインク組成物を加熱分解する工程は具体的に、加熱分解可能なインク組成物を大気中500℃〜550℃の範囲で少なくとも50分加熱する工程;及び、加熱分解可能なインク組成物を窒素雰囲気中(酸素5ppm未満)で、500℃〜550℃の範囲で少なくとも50分加熱する工程を有して良い。
【0031】
前述の加熱処理は高品質の透明電極を形成する上で有効であることがわかった。
【0032】
たとえばフレキシブル基板のように熱応力を小さくしなければならないような応用では、加熱分解可能なインク組成物は、単純に好適温度範囲110℃〜130℃で乾燥されれば良い。そのような乾燥プロセスはまずまずの導電性を有する透明電極を与える。しかし、一般には加熱分解可能なインク組成物は加熱されることが好ましい。その理由は、加熱によって高い導電性の透明電極が得られるからである。
【0033】
本発明の別な特徴に従って、基板上に透明電極を形成するのに使用される加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物が提供される。当該組成物は、可視光の波長未満の粒径を有する導電性金属酸化物;ニトロセルロース結合剤;アルコール溶媒;及び、250℃より高い沸点を有する有機共溶媒を有する。
【0034】
導電性金属酸化物は0.1μmの平均粒径を有することが好ましく、3nm〜80nmの範囲であることがより好適である。導電性金属酸化物はインジウムドープの酸化スズであることが好ましい。
【0035】
溶媒は極性を有し、比較的穏やかに沸騰するアルコールが好ましい。溶媒の沸点はわずか250℃であって良い。溶媒の沸点は150℃が好適であり、より好適には100℃であり、さらに好適には50℃である。適切な溶媒の典型的な種類は、アルキルアルコール、モノアルキルエチレングリコール及びモノアルキルプロピレングリコールを含む。溶媒はより好適には(1−メチルエトキシ)エタノールを有する。
【0036】
有機共溶媒はアセテート、アルキルアルコール、エステル、エチレングリコールのモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、及びプロピレングリコールのモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテルのうちの少なくとも1つを有することが好ましい。有機共溶媒は、トリプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールをうちの少なくとも1つを有することがより好ましい。
【0037】
ニトロセルロース結合剤は10.7〜12.6質量%の窒素を含んで良く、10.9〜11.3質量%の窒素を含むのが好ましい。ニトロセルロース結合剤は、ブタノール、エチルグリコール、トルエン及びエタノール(ブタノール、エチルグリコール、トルエン及びエタノールの比は1:2:3:4である)中に12質量%含まれている状態で、30〜34(秒)のCochius粘性を有することが好ましい。たとえば、ニトロセルロース結合剤はニトロセルロースA400(商標),A500(商標),E740(商標),E950(商標),E1440(商標)及び、A500(商標)が好ましい。これらはすべてワルスロード(商標)から販売されている。
【0038】
導電性金属酸化物粒子は組成物中に15〜25質量%であることが好ましい。溶媒は組成物中45〜60質量%であることが好ましい。共溶媒は5〜15質量%であることが好ましい。分解可能な結合剤は15〜25質量%であることが好ましい。この方法で生成される組成物は最適な金属酸化物濃度及び最適レオロジーを有する。
【0039】
本発明はまた、パターニングされた前述の組成物を基板上にグラビアオフセット印刷法によって堆積される工程;及び、透明電極を形成するために組成物を加熱する工程によって形成される透明電極を有する基板をも提供する。
【実施例】
【0040】
本発明の前記特徴及び利点をより良く理解するため、添付の図を参照することで実施例をここで説明する。ただし、これらは純粋に例示の意味でしかない。
【0041】
本発明に従った、基板上の透明電極形成に使用される加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物の調製について最初に説明する。
【0042】
1.59グラムのトリプロピレングリコール(TPG)を40質量%のニトロセルロース結合剤を含む8.06グラムの2-(1-メチルエトキシ)エタノール(IPE)に加える。ニトロセルロース結合剤は10.9〜11.3質量%の窒素を含み、ブタノール、エチルグリコール、トルエン及びエタノール(ブタノール、エチルグリコール、トルエン及びエタノールの比は1:2:3:4である)中に12質量%含まれている状態で、30〜34(秒)のCochius粘性を有する。たとえばニトロセルロース結合剤はワルスロード(商標)から販売されているA500(商標)であって良い。
【0043】
そこで混合物は3ロールミル上で少なくとも12時間処理されることで均一化される。そこで8.02グラムのIPE中に43質量%で分散するインジウムスズ酸化物を混合物に加える。インジウムスズ酸化物の平均粒径は25nmである。結果生じる混合物は、へらでかき混ぜることで機械的に均一化される。混合物はさらに3ロールミルで5時間処理されて均一化される。
【0044】
本発明に従った、上記組成物を使用して基板上に透明電極を形成する方法についてここで図2を参照しながら説明する。
【0045】
図2を参照すると、グラビアオフセット印刷装置23の台上に設置する前に、最初にガラス基板19を発煙硝酸で清浄にする。ガラス基板の厚さは0.7mmである。
【0046】
通常使用されるポリマー25もまたグラビアオフセット印刷装置23の台上に設置される。通常使用される25の表面は深さ20μmの溝27を含み、その溝は基板19上で形成される所望の透明電極パターンを表している。別な実施例では、電子ビーム描画された印刷用プレートを使用しても良い。通常使用されるポリマー25表面内の溝27は前述の加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物29で満たされる。溝27は0.1mmのくぼみが存在する当該ポリマー上を毎秒0.1mの速度で移動する薄いスチール製のドクターブレードによって満たされる。
【0047】
グラビアオフセット印刷装置23は移行ブランケット31と適合するように設定される。移行ブランケット31は標準的なブランケットよりも滑らかなシリコーン製の表面層を有する。最適なブランケット直径を与えるため、ブランケットを設置する前にブランケットシリンダにもインクが満たされて良い。
【0048】
一旦グラビアオフセット印刷装置23が前述のように設定されたら、加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用のインク組成物29は前述のようにガラス基板19上にプリントされる。
【0049】
溝27中の加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物が移行ブランケット31の表面に移行するように、移行ブランケット31は通常使用されているポリマー25上を回転する。移行ブランケット31は、たとえば0.25mmのくぼみ有する一方で、毎秒0.1mの速度で通常使用されているポリマー25の表面上を回転する。
【0050】
一旦加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物が移行ブランケット31表面に移行したら、移行ブランケット31はガラス基板19に向かって移動する。加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物29がガラス基板19の表面に移行するように、移行ブランケット31はガラス基板19上を回転する。移行ブランケット31はガラス基板19上を、たとえば毎秒0.1mの速度で0.1mmの移行ブランケットのくぼみを回転する。
【0051】
特定の印刷プロセス及びそこで使用されるインク組成物は、結果としてほぼすべての加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物をポリマー表面内の溝からガラス基板へ移行し、高解像度で高品質部位が得られる高精度印刷プロセスを保証する。
【0052】
一旦加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物がガラス基板上にプリントされると、ガラス基板は加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物を加熱分解するために加熱される。加熱分解の結果、トリプロピレングリコール(TPG)、(1-メチルエトキシ)エタノール(IPE)及びニトロセルロースポリマーが分解及び/又は蒸発し、ガラス基板上に堆積された透明インジウムスズ酸化物のみが残る。
【0053】
ガラス基板は最初に大気中で28分間、20℃から200℃まで昇温させながら加熱し、続いて大気中300℃で60分間加熱する。ここでガラス基板は窒素中7%水素による減圧環境下で、300℃で60分間加熱され、続いて同じ減圧環境下で28分間、300℃から28℃まで降温させる。
【0054】
図3は前述の方法で作製された透明電極35を有する基板33を概略的に図示する。
【0055】
235μm、120μm及び88μmの幅を有するまっすぐな透明電極の線はすべてまっすぐな端部を有しており、このことは印刷技術が高精度で高品質部位そして高解像度であることを示している。観察される透明電極中のピンホールの数は非常に少ない。透明電極はまた、高い透明度、低い光ヘイズ及び高い導電性を示す。
【0056】
本発明に従った透明電極を有する透明基板はパッシブモノクロームLCD素子に組み込まれる。組み込まれた素子が生成する画像は高画質で観察される。
【0057】
図4は本発明に従った透明電極を有する基板のミクロンスケールの断面像である。図4から、ホールのサイズは非常に小さく、よって光散乱を防ぐことができ、その帰結として高い透明度を得ることができる。これは本発明によって作製される電極の特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】既知のLCD素子の断面図を示す。
【図2】本発明に従った、基板上に透明電極を形成する方法を概略的に図示している。
【図3】本発明に従った、基板上に透明電極を有する基板を概略的に図示している。
【図4】本発明に従った、透明電極を有する基板のミクロンスケールでの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に透明電極を形成する方法であって:
パターニングされた加熱分解可能なインク組成物をグラビアオフセット印刷法によって基板上に堆積する工程;及び、
前記加熱分解可能なインク組成物を加熱する工程;
を有し、前記加熱分解可能なインク組成物は、可視光の波長未満の粒径を有する導電性金属酸化物、ニトロセルロース結合剤、アルコール溶媒及び250℃より高い沸点を有する有機共溶媒を有すること、を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記の加熱分解可能なインク組成物を加熱する工程は前記加熱分解可能なインク組成物を加熱分解する工程を有すること、を特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記導電性金属酸化物は0.1μm未満の平均粒径を有すること、を特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記導電性金属酸化物は3nmから80nmの範囲の平均粒径を有すること、を特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記導電性金属酸化物はインジウムドープした酸化スズであること、を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記溶媒はアルキルアルコール、モノアルキルエチレングリコール及びモノアルキルプロピレングリコールのうちの少なくとも1つを有すること、を特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記溶媒は(1−メチルエトキシ)エタノールを有すること、を特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記有機共溶媒はアセテート、アルキルアルコール、エステル、エチレングリコールのモノアルキル又はジアルキルエーテル及び、プロピレングリコールのモノアルキル又はジアルキルエーテルのうちの少なくとも1つを有すること、を特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記有機共溶媒はトリプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールのうちの少なくとも1つを有すること、を特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか1つに記載の方法であって、さらに前記パターニングされた加熱分解可能なインク組成物を堆積する工程の前に前記加熱分解可能なインク組成物を均一化する工程をさらに有する方法。
【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記のパターニングされた加熱分解可能なインク組成物を堆積する工程は:
通常使用されている材料表面内のパターニングされた溝を前記加熱分解可能なインク組成物で満たす工程;
ブランケットを前記通常使用されている材料表面に接触させることで、前記加熱分解可能なインク組成物を前記パターニングされた溝から前記ブランケット表面に移行する工程;及び、
前記ブランケットを前記基板表面に接触させることで、前記加熱分解可能なインク組成物を前記ブランケット表面から前記基板表面に移行する工程;
を有すること、を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記の加熱分解可能なインク組成物を加熱する工程は酸素存在下においてわずか400℃の温度で前記加熱分解可能なインク組成物を加熱する工程を有すること、を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12のうちのいずれか1つに記載の方法であって、前記の加熱分解可能なインク組成物を加熱する工程は:
前記加熱分解可能なインク組成物を200℃から400℃の温度範囲で少なくとも50分間大気中で加熱する工程;及び、
前記加熱分解可能なインク組成物を200℃から400℃の温度範囲で少なくとも50分間窒素及び水素の減圧環境下で加熱する工程;
を有すること、を特徴とする方法。
【請求項14】
基板上に透明電極を形成するのに使用される加熱分解可能なグラビアオフセット印刷用インク組成物であって:
可視光の波長未満の粒径を有する導電性金属酸化物;
ニトロセルロース結合剤;
アルコール溶媒;及び、
250℃より高い沸点を有する有機共溶媒;
を有する組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物であって、前記導電性金属酸化物は0.1μm未満の平均粒径を有すること、を特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の組成物であって、前記導電性金属酸化物は3nmから80nmの範囲の平均粒径を有すること、を特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項14から16のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記導電性金属酸化物はインジウムドープの酸化スズであること、を特徴とする組成物。
【請求項18】
請求項14から17のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記ニトロセルロース結合剤は10.9から11.3質量%の窒素を含むこと、を特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項14から18のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記溶媒はアルキルアルコール、モノアルキルエチレングリコール及びモノアルキルプロピレングリコールのうちの少なくとも1つを有すること、を特徴とする組成物。
【請求項20】
請求項14から19のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記溶媒は(1−メチルエトキシ)エタノールを有すること、を特徴とする組成物。
【請求項21】
請求項14から20のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記有機共溶媒はアセテート、アルキルアルコール、エステル、エチレングリコールのモノアルキル又はジアルキルエーテル及び、プロピレングリコールのモノアルキル又はジアルキルエーテルのうちの少なくとも1つを有すること、を特徴とする組成物。
【請求項22】
請求項14から21のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記有機共溶媒はトリプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールのうちの少なくとも1つを有すること、を特徴とする組成物。
【請求項23】
請求項14から22のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記導電性金属酸化物は前記組成物の15から25質量%であること、を特徴とする組成物。
【請求項24】
請求項14から23のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記ニトロセルロース結合剤は前記組成物の15から25質量%であること、を特徴とする組成物。
【請求項25】
請求項14から24のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記溶媒は前記組成物の45から60質量%であること、を特徴とする組成物。
【請求項26】
請求項14から25のうちのいずれか1つに記載の組成物であって、前記有機共溶媒は前記組成物の5から15質量%であること、を特徴とする組成物。
【請求項27】
グラビアオフセット印刷法により、パターニングされた請求項14から26のうちのいずれか1つに記載の組成物を基板上に堆積する工程;及び、
前記透明電極を形成するため、前記組成物を加熱する工程;
によって形成される透明電極を有する基板。
【請求項28】
請求項27に記載の基板であって、前記組成物を加熱する工程は前記組成物を加熱分解する工程を有すること、を特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524199(P2007−524199A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548490(P2006−548490)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050024
【国際公開番号】WO2005/069068
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】