説明

通信システム

【課題】リング型時分割多重伝送システムにおいて加入者宅側装置の構成を簡易にすることができる技術を提供する。
【解決手段】加入者宅側装置2.k(kは1〜4)では、遅延部84が、基地局側装置1から送出されたパルス列(光パルス信号)に対して(k−1)ビット分に対応する時間だけパルス列を遅延させる。各加入者宅側装置では、光相互作用発生部75によって、光データ信号(上りデータ)と遅延部84からの光パルス信号との間に光相互作用が生じる。これによって、加入者宅側装置2.1〜2.4では、光データ信号D1〜D4がそれぞれ生成される。光伝送路20に送出された光データ信号D1〜D4は光伝送路20上でビット多重化される。これにより、復号部80が受ける光データ信号D0は、光データ信号D1〜D4がビット多重化により時分割多重化された光信号と等価なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信システムに関し、特にリング型ネットワークを利用した光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報技術の発展に伴い、家庭においても大容量で高品質なインターネット環境に対する要求が高まっている。このような要求に対応するため、光ファイバを介して加入者宅をインターネット網に接続するFTTH(Fiber To The Home)サービスが急速に普及している。
【0003】
FTTHの構成は、基地局と各加入者宅とをそれぞれ専用の光ファイバで接続するシングルスター網と、一端が複数に分岐された光ファイバを用いて、基地局と複数の加入者宅とを1対n(n:複数)で接続するダブルスター網とに分類される。FTTHサービスを提供するにあたり、光ファイバの敷設量が少なくて済むダブルスター網の方がコスト的に有利である。
【0004】
後者に関するものとして、1本の光ファイバを複数のユーザーで共有するPON(Passive Optical Network)がある。PONとは光ファイバの途中に光カプラを設けて伝送路を2〜32本に分岐させるスター型ネットワークのことである。
【0005】
基地局側装置(OLT:Optical Line Terminal)とn台のONU(Optical Network Unit;以下では「加入者宅側装置」とも呼ぶ)とが光ファイバを介して接続されたPON型の光ネットワークでは、たとえばギガビットのFTTHサービスを実現する技術(GE−PON)が用いられている。GE−PONでは、OLTがONUに対してデータフレームの送出タイミングを指定する。ONUは指定されたタイミングでデータフレームを送出する。これにより複数のONUから送信される信号が時分割多重(パケット多重)されて、OLTに送られる。なお上記の動作はIEEE802.3ahに規定されたものである。
【0006】
GE−PONでの伝送レートは、電子回路の信号処理が可能な程度の大きさである。しかしながら、より大きな伝送レートに対応するためには、光信号での処理が求められる。このような要求に対応可能な技術の例として、たとえば特表2000−513158号公報(特許文献1)は、中央局が光パルスを送出し、各ノードに設けられた送信器がその光パルスを変調して中央局に戻す光TDMA(時分割多重)光ネットワークを開示する。
【特許文献1】特表2000−513158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
伝送レートが高くなるほど、各加入者宅側装置からのデータ信号を時分割多重する際に、データ信号に割当てられるタイムスロットが短くなる。各加入者宅側装置がデータを時分割多重して送信するための光パルス信号を生成する場合には、各加入者宅に信号処理を高速に行なうことが可能な信号処理回路が必要となる。よってシステム全体のコストが上昇する。
【0008】
また、たとえば気温の変動により、各加入者宅側装置と基地局との間の伝送路の長さが変化することが起こり得る。この場合、各加入者宅側装置から基地局へのデータの送信に要する時間が変動する。よって、理想的な状態では各加入者宅側装置からのデータ信号が伝送路上で時分割多重されていても、伝送路の長さが変化した場合には2つのデータ信号が時間軸上で重なることが起こり得る。このような問題に対応するための信号処理を各加入者宅側装置に行なわせる場合には、加入者宅側装置における信号処理がより複雑になる。しかしながらこのような問題点については、特表2000−513158号公報に開示されていない。
【0009】
さらに、基地局側装置および加入者宅側装置を結ぶネットワークの接続形態(トポロジ)としては、スター型ネットワークだけでなく、リング型ネットワークも考えられる。特表2000−513158号公報にはスター型ネットワークが明示されているもののリング型ネットワークは具体的に示されていない。
【0010】
本発明の目的は、リング型時分割多重伝送システムにおいて加入者宅側装置の構成を簡易にすることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は要約すれば、通信システムであって、光伝送路と、第1の通信装置と、複数の第2の通信装置とを備える。第1の通信装置は、所定の時間間隔で区切ったタイムスロットに、宛先の異なる複数のデータを順次割当てて時分割多重した第1の光信号と、複数のデータのうちの少なくとも1つの宛先に対応するデータと同期した第2の光信号とを光伝送路へ送出する。複数の第2の通信装置の各々は、光伝送路を介して第1および第2の光信号を受けて、第2の光信号を用いて、複数のデータのうち自己宛てのデータを抽出するとともに、第1の通信装置に光伝送路を介してデータを送信する。第1の通信装置および複数の第2の通信装置は、光伝送路を介して環状に接続される。複数の第2の通信装置の各々は、第2の光信号に基づいて、第1の光信号において自己を宛先とするデータが割当てられたタイムスロットと同期する同期信号を生成する同期手段と、第1の光信号と同期信号とを用いて、自己宛てのデータを抽出する抽出手段と、第1の通信装置に送信されるべきデータを示す光信号を同期信号に同期させて、光伝送路に送出される第3の光信号を生成する信号生成手段とを含む。
【0012】
好ましくは、複数の第2の通信装置の各々は、信号生成手段からの第3の光信号と、他の第2の通信装置から送出された第3の光信号との時間間隔に基づいて同期手段を制御して、同期手段から同期信号が送出されるタイミングを制御するタイミング制御手段をさらに含む。
【0013】
より好ましくは、少なくとも1つの宛先は、単一の宛先である。
好ましくは、少なくとも1つの宛先は、複数のデータのそれぞれに対応する複数の宛先である。第2の光信号は、時間軸上において互いに重ならないように第1の通信装置から送出された、互いに波長が異なる複数の光信号を含む。同期手段は、波長の違いに基づいて、複数の光信号の中から同期信号を抽出して出力する。第1の通信装置は、第2の光信号を送出する送出手段と、第1の通信装置から第2の光信号として送出された複数の光信号の各々が、第1の通信装置に到着する到着タイミングを測定するタイミング測定手段と、タイミング測定手段が測定した到着タイミングに基づいて、複数の光信号の到着タイミングが互いに異なるように、送出手段に対して複数の光信号の各々の出力タイミングを制御するタイミング制御手段とを含む。
【0014】
より好ましくは、第1の通信装置は、光伝送路を介して、複数の第2の通信装置の各々が送出した第3の光信号と、第2の光信号とを受けて、第2の光信号と第3の光信号とを分離する分離手段と、分離された第3の光信号を復号する復号手段をさらに含む。
【0015】
より好ましくは、抽出手段は、同期信号と第1の光信号との間に光相互作用を生じさせることにより、自己宛のデータに対応する光信号を生成する第1の光相互作用発生手段を含む。信号生成手段は、第1の通信装置に送信されるべきデータを示す光信号と同期信号との間に光相互作用を生じさせることにより、第3の光信号を生成する第2の光相互作用発生手段を含む。
【0016】
より好ましくは、同期手段は、同期信号として出力されるべき信号を遅延させ、かつ、その遅延量を変更可能な遅延手段を含む。複数の第2の通信装置の各々は、抽出手段により抽出された光信号の強度に基づいて、遅延量を制御する遅延制御手段をさらに含む。
【0017】
さらに好ましくは、通信システムは、光伝送路に設けられ、第1から第3の光信号の少なくとも1つの波長分散補償を行なう分散補償手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リング型時分割多重伝送システムにおいて、加入者宅側装置の構成を簡易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に従う通信システム100の全体構成図である。図1を参照して、通信システム100は、基地局側装置(図中「OLT」と示す)1と、加入者宅側装置(図中「ONU」と示す)2.1〜2.4と、光伝送路20を含む。基地局側装置1および加入者宅側装置2.1〜2.4は、光伝送路20を介して環状に接続される。
【0021】
基地局側装置1は、加入者宅側装置2.1〜2.4宛てのデータをビット多重化によって時分割多重し、その時分割多重されたデータを含む光信号を光伝送路20に送出する。加入者宅側装置2.1〜2.4の各々は、光伝送路20を介して基地局側装置1からの光信号を受信するとともに、その信号に含まれる時分割多重データから自己宛てのデータを抽出する。
【0022】
一方、加入者宅側装置2.1〜2.4の各々は、基地局側装置1での処理に用いられるデータを含む光信号を光伝送路20に対して送出する。各加入者宅側装置2.1〜2.4が光信号を送出するタイミングは互いに異なる。これにより、基地局側装置1が加入者宅側装置2.1〜2.4から受けたデータ(光信号)は、ビット多重化によって時分割多重されたデータと等価となる。
【0023】
なお、時分割多重方式には、ビット多重型とパケット多重型とが考えられる。ビット多重型の多重方式は、親局から複数の子局への光データ信号をビット毎に順番に並べて伝送する方式である。一方、パケット多重型の多重方式は、各子局への光データ信号を複数のビット(たとえば1000ビット)でまとめてパケットを構成し、パケット単位に並べて伝送する方式である。本実施の形態では、ビット多重型の時分割多重方式が用いられる。
【0024】
以下では、基地局側装置1から加入者宅側装置2.1〜2.4に送られるデータを「下りデータ」と称し、加入者宅側装置2.1〜2.4の各々から基地局側装置1に送られるデータを「上りデータ」と称する。本実施の形態では、下りデータおよび上りデータが同じ向きに伝送される。図1には、下りデータおよび上りデータの伝送方向を矢印によって示してある。ただし、矢印の向きが図1に示した向きと逆でもよい。
【0025】
なお、本実施の形態に従う通信システムでは、光伝送路20に設置される加入者宅側装置の数は4に限定されず、任意の整数n(ただし1以上)とすることができる。以下に説明する通信システムにおいても同様である。
【0026】
図2は、図1に示した基地局側装置1の構成図である。以下では、加入者宅側装置の数をn(n;自然数)とする。図2を参照して、基地局側装置1は、送信部1.1と、受信部1.2と、パルス発生部12と、光合波器24と、光結合部33とを含む。
【0027】
送信部1.1は、図示しないインターネット網やWAN(Wide Area Network:広域通信網)などから、加入者宅側装置2.1,2.2,・・・,2.nへそれぞれ送信するための下りデータ1,2,・・・,nを受ける。送信部1.1は、下りデータ1〜nをビット多重によって時分割多重した光データ信号を生成して出力する。
【0028】
送信部1.1は、符号化部30と、光源10と、光変調部32とを含む。符号化部30は、外部から下りデータ1〜nを受けて、所定の時間間隔で区切ったタイムスロットに下りデータ1〜nを所定のデータ量ずつ順次割当てることによりビット多重化を行ない、下りデータ1〜nを1次元の「0」と「1」とからなる2値のデータ列に符号化する。そして、符号化部30は、符号化したデータ列を光変調部32へ出力する。
【0029】
光源10は、たとえばレーザ発振器で構成され、所定の光強度をもつ波長λのレーザ光を発生する。光源10は、その発生したレーザ光を光変調部32へ出力する。
【0030】
光変調部32は、符号化部30から受けたデータ列に基づいて、光源10から出力されるレーザ光を光強度変調して光データ信号を生成する。たとえば光変調部32は、データ列の「0」および「1」にそれぞれ対応して光強度がゼロおよび最大(すなわち、「オフ」または「オン」)となるように変調する。このようにして光変調部32は、下りデータ1〜nをビット多重化により時分割多重した光データ信号を生成する。光変調部32は、生成した光データ信号を光結合部33へ出力する。
【0031】
パルス発生部12は、波長λを有する光パルス信号を生成し、その生成した光パルス信号を光結合部33へ出力する。波長λを有する光パルス信号の周期は、光変調部32で生成される光データ信号における下りデータ1の周期、すなわち、下りデータ1,2,・・・,nの割当てが一巡するまでに要する時間に等しい。
【0032】
光結合部33は、光変調部32から受けた光データ信号と、パルス発生部12から受けた光パルス信号とを結合する。光合波器24は、光結合部33から受ける光データ信号(波長λの光)と、光パルス信号(波長λ)とを合波した光信号を光伝送路20に送出する。
【0033】
受信部1.2は、フィルタ26と、復号部80とを含む。各加入者宅側装置から送られた光信号は、光伝送路20を経由してフィルタ26に入力される。フィルタ26には、パルス発生部12により生成され、かつ光伝送路20を伝送した光パルス信号(波長λの光)と、加入者宅側装置2.1〜2.nの各々から送出された光データ信号(波長λ)とが入力される。フィルタ26は、光パルス信号と光データ信号との波長の違いに基づいて、入力される光信号の中から光データ信号を抽出する。
【0034】
復号部80は、フィルタ26から出力される光データ信号(波長λ)を電気信号に変換して、「0」または「1」の2値のデータ列を生成する。そして、復号部80は、生成したデータ列を所定のタイムスロット毎に分離し、上りデータ1,2,・・・,nに復号して出力する。
【0035】
図3は、図1に示した加入者宅側装置の構成図である。なお、加入者宅側装置2.1〜2.nの構成はいずれも同じである。したがって、図3では代表的に加入者宅側装置2.1の構成について説明する。
【0036】
図3を参照して、加入者宅側装置2.1は、光分岐/光結合部22と、分散補償光ファイバ15と、光合波/光分波器16と、光相互作用発生部18,75と、光分岐部60と、復号部86と、符号化部74と、遅延部84とを含む。
【0037】
光分岐/光結合部22は、光伝送路20を伝播する光データ信号および光パルス信号(これらは基地局側装置1より送信されたものである)を光伝送路20から分岐して、加入者宅側装置2.1に導く。さらに、光分岐/光結合部22は、加入者宅側装置2.1の内部で生成された上りデータである光データ信号を光伝送路20に導く。
【0038】
分散補償光ファイバ15は、光分岐/光結合部22から出力された光データ信号および光パルス信号の波長分散による歪みを補償するためのものである。なお「波長分散」とは、光ファイバなど光を伝達する媒質の中で波長によって光の速度が少しずつ異なることを意味する。
【0039】
たとえば光にデジタル信号で変調をかけた場合には、ビットレートと同程度のスペクトル広がりが生じる。光データ信号および光パルス信号の伝送距離が長くなると、光データ信号あるいは光パルス信号の波長分散による波形歪みが大きくなることが考えられる。波長分散が大きい場合には光データ信号あるいは光パルス信号の波形の歪み(具体的には時間軸上のパルス幅が広がること)も大きくなるので、たとえば光データ信号の符号誤り等の問題が生じる。
【0040】
分散補償光ファイバ15によって光データ信号および光パルス信号の波長分散が補償される。これによって、光データ信号あるいは光パルス信号に波形の歪みが生じていた場合、その歪みを修正することができる。よって上述した符号誤り等の問題を防ぐことができる。
【0041】
光合波/光分波器16は、光伝送路20から受ける光信号を、波長λの光データ信号と、波長λの光パルス信号とに分離する。光合波/光分波器16は、光データ信号(波長λ)を光相互作用発生部18へ出力し、光パルス信号(波長λ)を遅延部84に出力する。
【0042】
遅延部84は、波長λを有する光パルス信号を所定の時間だけ遅延させる。この遅延時間は、光パルス信号の最大強度となるタイミングが、光データ信号において下りデータ1が割当てられたタイムスロットと同期するように予め定められる。遅延部84は、遅延させた光パルス信号(同期信号)を光分岐部60に出力する。光分岐部60は、遅延部84からの光パルス信号を光相互作用発生部18,75に分岐する。
【0043】
加入者宅側装置2.1〜2.nは、光パルス信号(波長λ)が最大強度となるタイミングが、光データ信号においてそれぞれ下りデータ1〜nが割当てられたタイムスロットと同期するように、光パルス信号を遅延させる。したがって各加入者宅側装置に含まれる遅延部84の遅延量は、タイムスロットの時間間隔ずつ異なっている。
【0044】
光相互作用発生部18は、光データ信号と光パルス信号との間で光学非線形効果による相互作用を生じさせる。この構成および動作については後述する。
【0045】
上述のように、光パルス信号が最大強度となるタイミングは、下りデータ1が割当てられるタイムスロットと同期するので、相互作用は、下りデータ1が割当てられたタイムスロットの期間だけ生じることになる。したがって、光相互作用発生部18は、光データ信号のうち下りデータ1の光強度に応じた相互作用光だけを復号部86へ出力する。
【0046】
すなわち、光相互作用発生部18は、光パルス信号を用いて、光データ信号の中からデータ1で変調された光信号を抽出する。以下では、光データ信号から抽出された光信号をDEMUX信号(分離信号)とも称す。
【0047】
復号部86は、光相互作用発生部18から受けたDEMUX信号の光強度に応じて、データ列を生成し、下りデータ1として出力する。
【0048】
符号化部74は、外部から上りデータ1を受けて、1次元の「0」と「1」とからなる2値のデータ列に符号化する。そして、符号化部74は、符号化したデータ列に応じた光データ信号を生成して光相互作用発生部75へ出力する。
【0049】
光相互作用発生部75は、光相互作用発生部18と同様の機能を有し、符号化部74からの光データ信号と、遅延部84からの光パルス信号との間で光学非線形効果による相互作用を生じさせて、相互作用光(波長λ)を出力する。このときの相互作用光が加入者宅側装置2.1からの光データ信号(上りデータ)となる。別の言い方をすれば、光相互作用発生部75は符号化部74から受ける光データ信号のうち光パルス信号と時間的に重なる部分のみ抽出して光合波/光分波器16へ出力する。したがって、上りデータは、遅延部84からの光パルス信号と同期した信号となる。
【0050】
光相互作用発生部75の構成は光相互作用発生部18の構成と同様でも良いし、異なっていてもよい。以下では光相互作用発生部75は光相互作用発生部18と同様の構成を有するものとする。
【0051】
光相互作用発生部75から出力される波長λの光信号(上りデータである光データ信号)は、光合波/光分波器16、分散補償光ファイバ15、光分岐/光結合部22を経由して光伝送路20に送出される。
【0052】
加入者宅側装置2.2,2.3,・・・2.nの構成については、上述の説明において、「下りデータ1」を下りデータ2,3,・・・nに、「上りデータ1」を上りデータ2,3,・・・nにそれぞれ置き換えたものに等しい。
【0053】
加入者宅側装置2.1〜2.nからそれぞれ送出された複数の光データ信号は、光伝送路20において時分割多重(ビット多重化)された状態となり、基地局側装置1に到達する。したがって図2に示す復号部80が受ける光データ信号は、ビット多重化により時分割多重された光データ信号と等価なデータとなる。
【0054】
次に、本実施の形態に係る通信システム100の動作をより詳しく説明する。なお、以下の説明においては、加入者宅側装置の数nを4とする。なお、理解を容易にするために図4および図5では、基地局側装置および加入者宅側装置の構成を概略的に記載してある。そこで、以下の説明では、必要に応じて図2、図4等を参照するものとする。
【0055】
(1)基地局側装置からの下り方向伝送について
図4は、基地局側装置による下りデータの伝送を説明するための図である。図4を参照して、基地局側装置1は、F(bit/s)のデータを、加入者宅側装置と同数のチャネル(4チャネル)に光時分割多重したデータ列(光データ信号)を光伝送路20に送出する。光データ信号の生成は、図2に示した送信部1.1により実現される。
【0056】
さらに基地局側装置1は、このデータ列の第1番目のチャネルに同期させたパルス列(波長λの光パルス信号)を光伝送路20に送出する。光パルス信号の生成は、図2に示したパルス発生部12により実現される。
【0057】
一方、各加入者宅側装置2.1〜2.4は、基地局側装置1から送信された光データ信号および光パルス信号を光伝送路20および光分岐/光結合部22を介して受信する。ここで加入者宅側装置2.k(kは1〜4)では、光パルス信号が最大強度となるタイミングが、光データ信号において下りデータkが割当てられたタイムスロットと同期するように、光パルス信号を遅延させる。具体的には、加入者宅側装置2.kでは、図3に示した遅延部84が、パルス列(光パルス信号)に対して(k−1)ビット分に対応する時間だけパルス列を遅延させる。したがって、加入者宅側装置2.2,2.3,2.4では、それぞれデータ列の1ビット分、2ビット分、3ビット分に対応する時間だけパルス列を遅延させる。
【0058】
光相互作用発生部18は、光データ信号と光パルス信号との間に光相互作用を発生させる。これにより加入者宅側装置2.kでは自己宛のデータ(第kチャネルのデータ)が抽出される。この抽出されたデータがDEMUX信号に対応する。
【0059】
(2)加入者宅側装置からの上りデータの送出について
図5は、加入者宅側装置による上りデータの送出を説明するための図である。図5を参照して、基地局側装置1からは、パルス発生部12により生成された光パルス信号(波長λ)が光伝送路20に送出される。光パルス信号は、基地局側装置1から送出される光データ信号とともに、光伝送路20に送出される。ただし、説明を分かりやすくするため、図5では基地局側装置1から送出される光データ信号を示していない。
【0060】
上記(1)と同様に、加入者宅側装置2.k(kは1〜4)では、遅延部84が、パルス列(光パルス信号)に対して(k−1)ビット分に対応する時間だけパルス列を遅延させる。各加入者宅側装置では、光相互作用発生部75によって、光データ信号(上りデータ)と遅延部84からの光パルス信号との間に光相互作用が生じる。これによって、加入者宅側装置2.1〜2.4では、光データ信号D1〜D4がそれぞれ生成される。なお、本実施の形態では、光データ信号D1〜D4の波長はいずれもλである。
【0061】
各加入者宅側装置で生成された光データ信号は、各加入者宅側装置に設けられた光合波/光分波器16、分散補償光ファイバ15、および光分岐/光結合部22を経由して光伝送路20に送出される。
【0062】
加入者宅側装置2.k(kは1〜4)における遅延部84の遅延量を(k−1)ビット分に対応する時間に設定することによって、光伝送路20に送出された光データ信号D1〜D4は光伝送路20上で時分割多重(ビット多重化)される。これにより、復号部80が受ける光データ信号D0は、光データ信号D1〜D4がビット多重化により時分割多重化された光信号と等価なものとなる。
【0063】
基地局側装置1から送出された光パルス信号は、光伝送路20上を経由して基地局側装置1に戻る。フィルタ26により、光データ信号D0および光パルス信号のうち、光データ信号D0のみが抽出されて復号部80に入力される。復号部80は、光データ信号D0を上りデータ1,2,・・・,nに復号して出力する。
【0064】
(光相互作用発生部について)
図6は、図3に示す光相互作用発生部18の概略構成図である。図6を参照して、光相互作用発生部18は、光結合部34と、光増幅器36と、高非線形ファイバ38と、光フィルタ40とを含む。
【0065】
光結合部34は、波長λの光データ信号と波長λの光パルス信号とを結合して光増幅器36へ出力する。光増幅器36は、光学非線形効果が生じるように光結合部34から受けた光データ信号および光パルス信号を増幅して高非線形ファイバ38へ出力する。
【0066】
高非線形ファイバ38は、非線形係数が高い媒質からなる。高非線形ファイバ38は、所定の光強度をもつ波長λの光データ信号と波長λの光パルス信号との4光波混合により、波長(λ−Δλ)および波長(λ+Δλ)の新たな2つの相互作用光を発生する。
【0067】
光フィルタ40は、高非線形ファイバ38から出力される光データ信号、光パルス信号および2つの相互作用光を受けて、光データ信号および光パルス信号を阻止(吸収や拡散等)し、かつ、2つの相互作用光のうちいずれか一方を通過させる。そして、光フィルタ40は、通過させた相互作用光をDEMUX信号として出力する。
【0068】
図7は、光相互作用発生部18における4光波混合を説明する図である。図7(a)は、光相互作用発生部18に入力する光信号の周波数スペクトルを示す。図7(b)は、高非線形ファイバ38から出力される光信号の周波数スペクトルを示す。図7(c)は、光フィルタ40から出力される光信号の周波数スペクトルを示す。
【0069】
図7(a)を参照して、光増幅器36によって所定の光強度まで増幅された光データ信号(波長λ)および光パルス信号(波長λ)は光相互作用発生部18に入力する。
【0070】
図7(b)を参照して、光データ信号および光パルス信号が高非線形ファイバ38を伝搬すると4光波混合が生じ、光データ信号と光パルス信号との波長差Δλだけ離れた波長をもつ2つの相互作用光が生じる。
【0071】
図7(c)を参照して、光フィルタ40は、光データ信号、光パルス信号および2つの相互作用光のうち1つの相互作用光だけを通過させ、その光をDEMUX信号として出力する。たとえば、光データ信号の波長λは1550[nm]であり、光パルス信号の波長λは1555[nm]である。
【0072】
図8は、加入者宅側装置2.1および2.2におけるデータの抽出を説明する図である。
【0073】
図8(a)は、光合波/光分波器16から出力される光データ信号の時間波形を示す。図8(a)を参照して、光データ信号は、「0」と「1」とからなる2値のデータ列に対応した光強度をもつ。そして、1つのタイムスロットの時間間隔をtとすると、すべての下りデータの割当てが一巡するのに要する時間Tは、T=t×4となる。
【0074】
図8(b)は、光合波/光分波器16から出力される光パルス信号の時間波形を示す。図8(b)を参照して、基地局側装置1から送出される光パルス信号は、すべての下りデータの割当てが一巡する時間Tごとに光強度ピークをもつ。
【0075】
図8(c)は、加入者宅側装置2.1における光相互作用発生部18へ与えられる光パルス信号の時間波形を示す。図8(c)を参照して、加入者宅側装置2.1における遅延部84は、光強度のピークが、下りデータ1が割当てられたタイムスロットと同期するように、光パルス信号を遅延時間Td1だけ遅延させる。下りデータ1が割当てられたタイムスロットの周期は、光パルス信号の周期と一致する。これによりタイムスロット毎に遅延時間Td1を調整することが不要となる。
【0076】
なお、Td1は0であってもよい。その理由は、基地局側装置1から、光パルス信号の光強度のピークが下りデータ1が割当てられたタイムスロットと同期するように、光パルス信号および光データ信号が送られるためである。
【0077】
図8(d)は、加入者宅側装置2.1における光相互作用発生部18から出力されるDEMUX信号を示す。図8(d)を参照して、加入者宅側装置2.1における光相互作用発生部18は、光パルス信号の光強度ピークが存在する期間において、下りデータ1に応じたDEMUX信号を出力する。
【0078】
図8(e)は、加入者宅側装置2.2における光相互作用発生部18へ与えられる光パルス信号の時間波形を示す。図8(e)を参照して、加入者宅側装置2.2における遅延部84は、光強度のピークが、下りデータ2が割当てられたタイムスロットと同期するように、光パルス信号を遅延時間Td2だけ遅延させる。このとき、遅延時間Td2は、加入者宅側装置2.1における遅延部84の遅延時間Td1に比較して、タイムスロットの時間間隔t(すなわち1ビットのデータに対応する時間間隔)だけ長くなる。
【0079】
図8(f)は、加入者宅側装置2.2における光相互作用発生部18から出力されるDEMUX信号を示す。図8(f)を参照して、図8(d)と同様に、加入者宅側装置2.2における光相互作用発生部18は、光パルス信号の光強度ピークが存在する期間において、下りデータ2に応じたDEMUX信号を出力する。
【0080】
(変形例1)
光相互作用発生部は、上述した高非線形ファイバに代えて、半導体光増幅器を含んで構成されてもよい。
【0081】
図9は、実施の形態1の変形例1に従う光相互作用発生部19Aの概略構成図である。図9を参照して、光相互作用発生部19Aは、図6に示す光相互作用発生部18において、光増幅器36および高非線形ファイバ38を半導体光増幅器42に代えたものである。なお、光結合部34および光フィルタ40は、光相互作用発生部18と同様の構成および機能を有するので、これらについての詳細な説明は以後繰返さない。
【0082】
半導体光増幅器42は、半導体光増幅素子(SOA:Semiconductor Optical Amplifiers)を含む光増幅器であり、光強度を増加させると同時に光学非線形効果による相互作用を生じさせる。半導体光増幅素子に用いられる半導体の種類は、たとえば、InP、InGaAsおよびInGaAsPなどである。
【0083】
変形例1によれば、光相互作用発生部19Aには高非線形ファイバが含まれていないので図6に示す光相互作用発生部18に比較して、より小型化を実現できる。
【0084】
(変形例2)
図10は、実施の形態1の変形例2に従う光相互作用発生部19Bの概略構成図である。図10を参照して、光相互作用発生部19Bは、非線形ループミラーとも称されるものである。光相互作用発生部19Bは、光分岐部66,68と、高非線形ファイバ38とを含む。
【0085】
光分岐部68は、4つのポートを有する。4つのポートのうち2つは高非線形ファイバ72の両端と接続される。残りの2つのポートは、光データ信号を受ける入力ポートと、DEMUX信号を出力する出力ポートとして機能する。
【0086】
光分岐部66は、光分岐部68と高非線形ファイバ38との間に介挿され、光パルス信号を受けて高非線形ファイバ72へ送出する。
【0087】
高非線形ファイバ72は、非線形係数が高い媒質からなり、波長λの光データ信号と波長λの光パルス信号との間の光学非線形効果により、光データ信号の位相を変化させる。
【0088】
以下、光相互作用発生部19Bの動作について説明する。光分岐部68は、受けた光データ信号を2分割して、時計回りおよび反時計回りにそれぞれ伝搬する2つの光データ信号を出力する。光パルス信号が入力されなければ、各々の光データ信号は、高非線形ファイバ72を伝搬した後、光分岐部68へ帰還する。すると2つの光データ信号は、光分岐部68で互いに干渉して打消し合う。そのため光分岐部68からはいずれの光信号も出力されない。
【0089】
一方、光分岐部66を介して光パルス信号が高非線形ファイバ72へ入力されると、高非線形ファイバ72を伝搬する過程で光学非線形効果により、光データ信号の回転位相が変化する。そのため、各々の光データ信号は、光分岐部68での干渉が不十分となり打消し合わない。よって、光分岐部68から、光データ信号と光パルス信号の光相互作用に応じたDEMUX信号が出力される。すなわち、光データ信号におけるタイムスロットと光パルス信号の光強度ピークとを同期させて、光相互作用発生部19Aへ入力することで、光データ信号の中から特定のデータを抽出できる。
【0090】
変形例2によれば、光強度の低い光信号であっても光相互作用を生じさせることができるので、光信号を過度に増幅させる必要はない。そのため、低出力の光増幅器を用いても十分に光相互作用を生じさせることができる。よって、より経済的な構成の光相互作用発生部を実現できる。
【0091】
(変形例3)
図11は、実施の形態1の変形例3に従う光相互作用発生部19Cの概略構成図である。図11を参照して、光相互作用発生部19Cは、電界吸収型半導体光変調器(Electro-absorption modulator;以下「EA変調器」と称する)の相互吸収変調(Cross-absorption modulation;XAM)効果を利用する光相互作用発生部である。光相互作用発生部19Cは、光カプラ701と、EA変調器706と、フィルタ707とを含む。
【0092】
波長λの光データ信号(信号光)と、波長λの光パルス信号(光タイミングパルス列)とは、光カプラ701によって合波された後にEA変調器706の一方の出入力端面に供給される。EA変調器の相互吸収変調効果によって、EA変調器706の一方の出入力端面からは信号光によって変調された波長λの光タイミングパルス列、および、光タイミングパルス列の影響を受けた波長λ1の信号光が出力される。フィルタ707により波長λの光を抽出することによって、データに応じた短パルスの信号光が出力される。
【0093】
(変形例4)
変形例4は、変形例3について、波長λの信号光の遮断性能を高めて、信号品質の向上を図るものである。
【0094】
図12は、実施の形態1の変形例4に従う光相互作用発生部19Dの概略構成図である。図12を参照して、光相互作用発生部19Dは、方向性結合器702と、EA変調器706と、フィルタ707と、アイソレータ708とを含む。
【0095】
光データ信号(信号光)は、方向性結合器702を介してEA変調器706の一方の出入力端面に供給される。一方、光パルス信号(光クロックパルス列)は、EA変調器706の他方の出入力端面に供給される。これにより、EA変調器706の上記一方の出入力端面からは、信号光によって変調された光クロックパルス列が出力される。この光クロックパルス列は、方向性結合器702およびフィルタ707を通過して出力される。
【0096】
なお、EA変調器706の上記他方の出入力端面からは光クロックパルス列によって強度変調された信号光が出力されることになるが、かかる信号光はアイソレータ708により遮断される。かかる信号光が出力されると、この信号光が光クロックパルス列と干渉して、パルス列の品質を損なうからである。
【0097】
ここで、EA変調器とは、本来は、印加電界に応じて光吸収係数が変化する特性を利用して、入力光に強度変調を施すデバイスである。しかし、EA変調器の光吸収係数は、入力光の強度にも依存する。すなわち、入力光の強度が大きいほど、EA変調器の光吸収量は小さくなる。そして、入力光の強度が所定値より大きい場合、光吸収量の低下は飽和する。図12のEA変調器706は、この性質を利用して、信号光の再生を行っている。
【0098】
図13は、図12のEA変調器706の動作原理を説明するための概念図である。図16に示すように、EA変調器706には、一方の出入力端面801から光クロックパルス列が入力され、かつ、他方の出入力端面802から信号光が入力される。
【0099】
出入力端面802から信号光の‘1’(すなわち、光強度の大きい部分)が入力されたとき、EA変調器706内の光吸収量は最低レベルに飽和する。このため、信号光の‘1’に対応する光クロックパルスC1,C2,C4,C5は、あまり吸収されることなく、出入力端面802から出力される。
【0100】
一方、出入力端面802から信号光の‘0’(すなわち、光強度の小さい部分)が入力されたとき、EA変調器706内の光吸収量は大きくなる。したがって、‘0’が入力されたときは、光クロックパルスに対して非常に大きい光吸収が生じる。このため、信号光の‘0’に対応する光クロックパルスC3は、強度が非常に小さい光に変換されて、出入力端面802から出力される。
【0101】
このようにして、図12の構成によれば、信号光に応じた強度変調を受け、光相互作用発生部として動作することが可能になる。
【0102】
なお、光パルス信号の波長帯と、各加入者宅側装置からの光データ信号(上りデータ)の波長帯とは重なり合わない程度に離れていることが好ましい。これにより、基地局側装置では、フィルタ26により光データ信号(上りデータ)を容易に抽出することが可能になる。
【0103】
図14は、光パルス信号の波長と、光データ信号(上りデータ)の波長との関係の一例を説明する図である。図14を参照して、光パルス信号の波長(λ)と、光データ信号(上りデータ)の波長(λ)とは、光データ信号(下りデータ)の波長λを挟むように設定される。なお、光パルス信号の波長と光データ信号(上りデータ)の波長とのいずれが長波長帯側にあるかは特に限定されない。このように2つの信号の波長帯を設定することによって、基地局側装置1では、光データ信号(上りデータ)を容易に抽出することができる。
【0104】
このように実施の形態1の通信システム100によれば、基地局側装置1から送られる光パルス信号を、各加入者宅側装置(遅延部84)が、加入者宅側装置ごとに定められた遅延量だけ遅延させる。各加入者宅側装置は、この遅延された光パルス信号と基地局側装置1から送られた時分割多重データ(ビット多重化されたデータ)とに基づいて、基地局側から送られた時分割多重データの中から自己宛のデータを抽出することができる。また、各加入者宅側装置は、この遅延された光パルス信号に基づいて、上りデータを送出することにより、そのデータが他の加入者宅側装置からの上りデータと時間的に衝突することを回避することができる。これにより基地局側装置1は、加入者宅側装置から、時分割多重された(ビット多重化された)データを受けることができる。
【0105】
また、各加入者宅側装置は、基地局側装置から送られた光パルス信号を自己に応じた遅延量だけ遅延させ、この遅延された光パルス信号に上りデータを同期させて上りデータを送信する。これにより各加入者宅側装置の構成を簡素化することができる。
【0106】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る通信システム100Aでは、加入者宅側装置の各々は、自身が送出する光データ信号の送出タイミングを調整する。実施の形態2に係る通信システム100Aは、図1に示す通信システム100において、加入者宅側装置2.1〜2.4を加入者宅側装置2.1A〜2.4Aにそれぞれ置き換えた構成と同様である。
【0107】
図15は、通信システム100Aが備える加入者宅側装置2.1A〜2.nAの各々の構成図である。なお加入者宅側装置2.1A〜2.nAの構成はいずれも同じである。したがって、図15では代表的に加入者宅側装置2.1Aの構成について説明する。
【0108】
図15および図3を参照して、加入者宅側装置2.1Aは、タイミング制御部23をさらに含む点で、加入者宅側装置2.1と相違する。加入者宅側装置2.1Aの他の構成については、加入者宅側装置2.1の対応する部分の構成と同様である。
【0109】
タイミング制御部23は、光伝送路20上に設けられる。タイミング制御部23は、光相互作用発生部75から出力された光データ信号と、他の加入者宅側装置から送られた光データ信号との時間間隔が、たとえば所定の間隔以下になったことを検出すると、遅延部84における光パルス信号の遅延量を制御する。これにより、光相互作用発生部75からの光データ信号の送出タイミングが変更される。よって、その光データ信号が、たとえば他の加入者宅側装置から送られた光データ信号と時間的に衝突するのを回避できる。
【0110】
図16は、加入者宅側装置による上りデータの送出を説明するための図である。なお、実施の形態2における上りデータの送出については、基本的には図5に示した上りデータの送出と同様である。図16を参照して、加入者宅側装置2.2におけるタイミング制御部23は、光データ信号D2に含まれるある1ビットと、その1ビットに対して時間軸上で隣り合う光データ信号D1中の1ビットとの時間間隔を検出する。これら2つのビットの時間間隔が、たとえば所定の間隔より短くなった場合、タイミング制御部23は、加入者宅側装置2.2における遅延部84に対して、光パルス信号の遅延量を制御する。
【0111】
加入者宅側装置2.3,2.4の各々においても同様に、タイミング制御部23は時間軸上で隣り合う2つのビットの時間間隔を検出し、その検出した間隔に基づいて遅延部84における光パルス信号の遅延量を制御する。
【0112】
図17は、タイミング制御部23の一構成例を示す図である。図17を参照して、タイミング制御部23は、光分岐部231と、光電変換部232と、フィルタ233と、検波器234とを含む。
【0113】
光分岐部231は、光伝送路20上を伝送される光データ信号を2分岐する。2分岐された一方の光データ信号は、そのまま光伝送路20を伝送し、他方の光データ信号は、光電変換部232に入力される。光電変換部232は、光分岐部231からの光データ信号を電気信号に変換する。
【0114】
フィルタ233は、たとえば狭帯域フィルタである。検波器234はフィルタ233を通過した電気信号を検波する。検波器234からの出力は遅延部84に与えられて、遅延部84における遅延量が制御される。なお、遅延部84における遅延量を制御する方法については種々の公知の方法を用いることができるので、ここでは特に説明しない。
【0115】
図18は、図17に示したタイミング制御部23の動作を説明する概念図である。図18を参照して、本実施の形態に係る通信システムにおける伝送速度は40GHz/秒であるとする。したがって、各加入者宅側装置から送出される、ビットを表す光信号は25(ps)の間隔で並ぶ。図18および図17を参照して、フィルタ233の通過帯域における中心周波数を40GHzとする。この場合、光信号は25(ps)の間隔で並ぶことになる。この状態では検波器234の出力が大となる。一方、複数の光信号のいずれかの送出タイミングが変動した場合、2つの光信号の間隔が25(ps)より長くなったり、短くなったりする。この場合には検波器の出力が小さくなる。なお、2つの光信号の間隔が25(ps)より大幅に長くなったり、短くなったりした場合に検波器の出力が大きくなり、2つの光信号の間隔が25(ps)に近づくにつれて検波器の出力が小さくなってもよい。
【0116】
遅延部84は、たとえば検波器234の出力に応じて連続的に遅延量を変更してもよいし、検波器の出力レベルに応じて段階的に遅延量を変更してもよい。
【0117】
理想的な状態では、各加入者宅側装置における遅延部84の遅延量が互いに異なっているため、各加入者宅側装置から光伝送路上に送出された光データ信号が時間軸上で重なることがない。しかしながら、たとえば気温の変動により加入者宅側装置間の光伝送路の長さが変化することが起こりうる。この場合には、ある加入者宅側装置から送出される光データ信号が、別の加入者宅側装置から次に送出される光データ信号と衝突することが可能性として考えられる。
【0118】
実施の形態2では、各加入者宅側装置に設けられたタイミング制御部23が遅延部84における光パルス信号の遅延量を制御する。これにより各加入者宅側装置から送出される光データ信号が光伝送路20上において(あるいは基地局側装置1において)衝突するのを防ぐことができる。したがって、実施の形態2によれば、実施の形態1による効果に加えて、各加入者宅側装置から送出される光データ信号が光伝送路20上において(あるいは基地局側装置において)衝突するのを、確実に回避できるという効果を得ることができる。
【0119】
なお、実施の形態2では、基地局側装置からの下り方向伝送については、図4に示した下り方向伝送と同様である。
【0120】
また、上記説明では、遅延部は下りデータと上りデータとで共通に用いられるものとしたが、遅延部を下りデータの受信用(遅延量は固定)と、上り方向データの送信用(遅延量は可変)とに分け、タイミング制御部23が後者の遅延量のみを制御してもよい。
【0121】
[実施の形態3]
図19は、本発明の実施の形態3に従う通信システム100Bの全体構成図である。図19および図1を参照して、通信システム100Bは、通信システム100において基地局側装置1を基地局側装置1Bに、加入者宅側装置2.1〜2.4を加入者宅側装置2.1B〜2.4Bにそれぞれ置き換えたものである。
【0122】
実施の形態2では、加入者宅側装置の各々は、光データ信号の送出タイミングを自身で調整する。これに対して、実施の形態3では、基地局側装置1Bが加入者宅側装置からの光データの送出タイミングを調整する。
【0123】
図20は、図19に示した基地局側装置1Bの構成図である。図20および図2を参照して、基地局側装置1Bは、パルス発生部12に代えてパルス発生部12Bを含む点、フィルタ26に代えて光分波器26Bを含む点において基地局側装置1と異なる。さらに、基地局側装置1Bは、タイミング制御部14をさらに含む点において基地局側装置1と異なる。基地局側装置1Bの他の部分の構成は、基地局側装置1の対応する部分の構成と同様であるので、以後の説明は繰返さない。
【0124】
パルス発生部12Bは、互いに波長が異なる複数の光パルス信号を発生させる。実施の形態3では、パルス発生部12Bは、波長λ〜λをそれぞれ有するn個の光パルス信号を生成し、その生成したn個の光パルス信号を光結合部33へ出力する。
【0125】
パルス発生部12Bは、波長λの光パルス信号を送出する時刻と、波長λ(kは2〜nのいずれか)の光パルス信号を送出する時刻とを異ならせる。具体的には、各光パルス信号の送出時刻は、時間的に互いに重ならないように(時間的に衝突しないように)定められる。
【0126】
受信部1.2は、光分波器26Bと、タイミング測定部28と、復号部80とを含む。
各加入者宅側装置から送られた光信号は、光伝送路20を経由して光分波器26Bに入力される。光分波器26Bには、パルス発生部12により生成され、かつ光伝送路20を伝送した複数の光パルス信号(波長λ〜λの光)と、加入者宅側装置2.1〜2.nの各々から送出された光データ信号(波長λ)とが入力される。光分波器26Bは、光パルス信号と光データ信号との波長の違いに基づいて、複数の光パルス信号と光データ信号とを分離する。
【0127】
タイミング測定部28は、複数の光パルス信号(波長λ,λ,・・・,λ)がタイミング測定部28に到着したタイミングを測定する。タイミング測定部28は、たとえば複数のパルス間の位相差を比較することにより、各パルスの到着タイミングを測定する。「到着タイミング」とは、たとえば複数のパルス信号がタイミング測定部28に到着した順番であってもよいし、複数の光パルス信号間の時間間隔でもよい。
【0128】
タイミング制御部14は、タイミング測定部28が測定した複数の光パルス信号の到着タイミングに基づいてパルス発生部12Bを制御することによって、複数の光パルス信号の出力タイミングを調整する。詳細には、タイミング制御部14は、タイミング測定部28に到着した複数の光パルス信号が時間的に重ならないように、複数の光パルス信号がパルス発生部12Bから出力されるタイミングを制御する。
【0129】
図21は、図20に示すパルス発生部12Bの構成例を示す図である。図21を参照して、パルス発生部12Bは、信号発生部51と、光源52.1,52.2,・・・,52.nと、遅延部53.1,・・・,53.n−1と、光変調部54.1,54.2,・・・,54.nと、光結合部55とを含む。
【0130】
信号発生部51は、図20の光変調部32で生成される光データ信号における下りデータ1の周波数と等しい周波数(たとえば数GHz)の信号を発生させる。光源52.1,52.2,・・・,52.nの各々は、たとえばレーザ発振器で構成され、所定の光強度を有するレーザ光を発生させる。光源52.1,52.2,・・・,52.nからのレーザ光の波長はそれぞれλ,λ,・・・,λである。
【0131】
遅延部53.1,・・・,53.n−1は信号発生部51からの信号を遅延させる。遅延部53.1,・・・,53.n−1における遅延量はタイミング制御部14により制御される。
【0132】
光変調部54.1は、信号発生部51からの信号に基づいて、光源52.1から出力されるレーザ光を光強度変調して、波長λの光パルス信号を生成する。光変調部54.2は、遅延部53.1からの信号に基づいて、光源52.2から出力されるレーザ光を光強度変調して、波長λの光パルス信号を生成する。同様に光変調部54.nは、遅延部53.n−1からの信号に基づいて、光源52.nから出力されるレーザ光を光強度変調して、波長λの光パルス信号を生成する。
【0133】
ここで遅延部53.1,・・・,53.n−1における遅延量は、互いに異なるように設定される。これにより光変調部54.1,54.2,・・・,54.nからの光パルス信号の送出タイミングも互いに異なる。光変調部54.1,54.2,・・・,54.nからの光パルス信号は光結合部55で結合されて、図20に示す光結合部33に出力される。
【0134】
図22は、図19に示した加入者宅側装置の構成図である。なお、加入者宅側装置2.1B〜2.nBの構成はいずれも同じである。したがって、図22では代表的に加入者宅側装置2.1Bの構成について説明する。
【0135】
図22および図3を参照して、加入者宅側装置2.1Bは、フィルタ62をさらに含む点において、加入者宅側装置2.1と異なる。光合波/光分波器16は、光伝送路20から受ける光信号を、波長λの光データ信号と、波長λ〜λの光パルス信号とに分離する。光合波/光分波器16は、光データ信号(波長λ)を光相互作用発生部18へ出力し、光パルス信号(波長λ〜λ)をフィルタ62に出力する。
【0136】
フィルタ62は光合波/光分波器16から受けた光パルス信号の中から、自己に割当てられた波長の光パルス信号を選択的に透過させる。加入者宅側装置2.k(kは1〜nのいずれか)における「自己に割当てられた信号」とは、波長λの光パルス信号である。フィルタ62を透過した光パルス信号は、遅延部84に入力される。
【0137】
遅延部84は、フィルタ62から出力される光パルス信号の最大強度となるタイミングが、光データ信号において下りデータ1が割当てられたタイムスロットと同期するように、上記タイミングを調整するために設けられる。なお、このようなタイミングの調整が不要であれば、遅延部84を設けなくともよい。
【0138】
次に加入者宅側装置からの上りデータの送出について説明する。図23は、加入者宅側装置による上りデータの送出を説明するための図である。図23を参照して、基地局側装置1では、パルス発生部12が波長λ〜λをそれぞれ有する光パルス信号S1〜S4を生成する。光パルス信号S1〜S4は光伝送路20に送出される。
【0139】
加入者宅側装置2.1Bでは、図22に示したフィルタ62によって、入力された光パルス信号の中から光パルス信号S1が抽出される。光相互作用発生部75は、上りデータ1を符号化して生成した光データ信号と、光パルス信号S1とを光相互作用させて光データ信号D1(波長λ)を生成する。
【0140】
加入者宅側装置2.2B〜2.4Bの各々では、加入者宅側装置2.1と同様の動作が行なわれる。加入者宅側装置2.2Bでは、フィルタ62(図22参照;以下同じ)によって光パルス信号S1〜S4から光パルス信号S2が抽出される。光相互作用発生部75は、上りデータ2と、抽出された光パルス信号S2との間に光相互作用を発生させることにより、光データ信号D2(波長λ)を生成する。
【0141】
加入者宅側装置2.3では、フィルタ62によって光パルス信号S1〜S4から光パルス信号S3が抽出される。光相互作用発生部75は、上りデータ3と、抽出された光パルス信号S3との間に光相互作用を発生させることにより、光データ信号D3(波長λ)を生成する。
【0142】
加入者宅側装置2.4では、フィルタ62によって光パルス信号S1〜S4から光パルス信号S4が抽出される。光相互作用発生部75は、上りデータ4と、抽出された光パルス信号S4との間に光相互作用を発生させることにより、光データ信号D4(波長λ)を生成する。
【0143】
各加入者宅側装置で生成された光データ信号は、各加入者宅側装置に設けられた光分岐/光結合部22を経由して光伝送路20に送出される。光パルス信号S1〜S4が基地局側装置1Bから送出されるタイミングは、光パルス信号S1〜S4が基地局側装置1Bに戻ったときに、光パルス信号S1〜S4が時間的に並ぶ(たとえば光パルス信号S1,S2,S3,S4の順で到着する)ように定められる。光データ信号D1〜D4は光パルス信号S1〜S4にそれぞれ同期した光データ信号であるので、復号部80が受ける光データ信号D0は、光データ信号D1〜D4がビット多重化により時分割多重化された光信号と等価なものとなる。
【0144】
続いて、基地局側装置から送出される複数の光パルス信号のタイミングの調整について説明する。図24は、複数の光パルス信号の送出タイミングの調整を説明する図である。図24を参照して、基地局側装置1B(パルス発生部12B)からは波長λ〜λをそれぞれ有する光パルス信号S1〜S4が光伝送路20に送出される。光パルス信号S1〜S4は、光伝送路20、光分岐/光結合部22、および光分波器26Bを通り、タイミング測定部28に入力される。タイミング測定部28は光パルス信号S1〜S4がタイミング測定部28に到着するタイミング(たとえば到着時刻)を測定する。
【0145】
タイミング制御部14は、タイミング測定部28の測定結果に基づいて、光パルス信号S1〜S4の各々のパルスがたとえばS1,S2,S3,S4の順に時間的に並び、かつ、光パルス信号S1〜S4が時間的に重なり合わないように光パルス信号S1〜S4の送出タイミングを制御する。なお、パルス発生部12Bからの光パルス信号S1〜S4の送出および、タイミング制御部14による送出タイミングの制御は、たとえば所定の周期で繰返して実行される。
【0146】
実施の形態3では、基地局側装置1に到着する複数の光パルス信号が時間的に重なり合わないように、タイミング制御部14がパルス発生部12Bに対して複数の光パルス信号の送出タイミングを制御する。これにより各加入者宅側装置から送出される光データ信号が基地局側装置1B(光伝送路20上でもよい)において衝突するのを防ぐことができる。したがって、実施の形態3によれば、実施の形態1による効果に加えて、各加入者宅側装置から送出される光データ信号が光伝送路20上において(あるいは基地局側装置において)衝突するのを、確実に回避できるという効果を得ることができる。
【0147】
なお、図25に示すように、フィルタ62を光相互作用発生部18の後段に配置することによって、光データ信号と光パルス信号との間に光相互作用を生じさせて、その相互作用により生じた光の中から所望の波長を有する光のみをフィルタ62により抽出してもよい。同様に、光相互作用発生部75の後段にフィルタ64を配置することにより、上りデータを示す光信号と、光パルス信号との間に光相互作用を生じさせて、その相互作用により生じた光の中から所望の波長を有する光のみをフィルタ64により抽出してもよい。
【0148】
また、実施の形態3では、基地局側装置からの下り方向伝送については、図4に示した下り方向伝送と基本的に同様である。ただし、実施の形態1では「パルス列」は、どの加入者宅側装置でも波長λの光信号であるが、実施の形態3では、図4に示した「パルス列」は、加入者宅側装置2.1B〜2.4Bにおいて、それぞれ、波長λの光信号、波長λの光信号、波長λの光信号、波長λの光信号である。この点において実施の形態3と実施の形態1とは異なる。
【0149】
[実施の形態4]
実施の形態4では、加入者宅側装置はDEMUX信号の強度が最大となるように制御を行なう。この点で実施の形態4に従う加入者宅側装置の構成は、図22に示した構成と異なる。なお実施の形態4に係る加入者宅側装置は、図1に示した通信システム100(100A)、図19に示した通信システム100Bに適用可能である。ただし、以下では、図19に示した通信システム100Bを例に実施の形態4に係る加入者宅側装置の構成を説明する。
【0150】
図26は、実施の形態4に従う通信システムに含まれる加入者宅側装置2.1BAにおいて、DEMUX信号の制御に関連する部分の構成を示した図である。図26および図22を参照して、加入者宅側装置2.1BAは、遅延部84に代えて遅延部84Aを含む点で加入者宅側装置2.1Bと異なる。さらに、加入者宅側装置2.1BAは、光分配部91と、強度モニタ部92と、遅延制御部93とをさらに含む点で加入者宅側装置2.1Bと異なる。加入者宅側装置2.1BAの他の部分の構成は加入者宅側装置2.1Bの対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0151】
光相互作用発生部18は、波長λの光データ信号と波長λの光パルス信号とに光相互作用を発生させてDEMUX信号を出力する。光分配部91は、光相互作用発生部18からのDEMUX信号を2分配する。2分配されたDEMUX信号の一方および他方は復号部86および強度モニタ部92にそれぞれ入力される。
【0152】
強度モニタ部92は、DEMUX信号の強度をモニタして、遅延制御部93にモニタ結果を出力する。遅延制御部93は強度モニタ部92のモニタ結果(DEMUX信号の強度)に応じて、遅延部84Aを制御する。これにより遅延部84Aでの波長λの光パルス信号の遅延時間が変化する。遅延制御部93は強度モニタ部92が示すDEMUX信号の強度が最大となるように光パルス信号の遅延時間を制御する。
【0153】
理想的な状態では、光パルス信号の強度が最大となるタイミングは光データ信号において、下りデータが割当てられるタイムスロットと同期しているので、DEMUX信号の強度は常に最大となる。しかしながら、たとえば温度による伝送路の長さの変動などの各種の要因によって、光パルス信号の強度が最大となるタイミングと下りデータが割当てられるタイムスロットとの間にずれが生じることが起こり得る。
【0154】
実施の形態4によれば、実施の形態1による効果に加えて、復号部86がDEMUX信号の光強度に応じてデータ列を復号する際に、基地局側装置で生成したデータ列の再現精度をより高めることが可能になる。
【0155】
[実施の形態5]
図27は、本発明の実施の形態5に従う通信システム100Cの全体構成図である。図27を参照して、通信システム100Cは、光伝送路20の途中に設けられた分散補償光ファイバ15をさらに含む点で通信システム100と異なる。なお、通信システム100Cの他の部分の構成は、通信システム100の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0156】
分散補償光ファイバ15は、光伝送路20において生じる可能性がある光データ信号の波長分散あるいは光パルス信号の波長分散を補償するために光伝送路20に設置される。なお上記の「光データ信号」とは、基地局側装置1からの光データ信号、および加入者宅側装置2.1〜2.4の各々からの光データ信号の両方を含む。
【0157】
光データ信号および光パルス信号が分散補償光ファイバ15を通ることによって、光伝送路20の途中において、光データ信号および光パルス信号の波長分散を補償することができる。具体的には光信号の広がりを元に戻すことができる。
【0158】
これにより基地局側装置1から送出された光データ信号および光パルス信号の波形の歪みを光伝送路20の途中で修正できる。よって、加入者宅側装置における光データ信号の符号誤り等の問題を防ぐことができる。
【0159】
さらに、加入者宅側装置から送出された光データ信号の波形の歪みも光伝送路20の途中で修正できる。基地局側装置1は加入者宅側装置2.1〜2.4から送出され、かつ光伝送路20において時分割多重されたデータ(光データ信号)を受信する。したがって、基地局側装置1においても、この時分割多重されたデータにおける符号誤り等の問題を防ぐことができる。
【0160】
なお、光伝送路20における分散補償光ファイバ15の設置場所、および分散補償光ファイバ15の数については限定されるものではない。
【0161】
(実施の形態5の第1の変形例)
光伝送路20の途中において、光データ信号および光パルス信号の波長分散を補償するための方法は、分散補償光ファイバ15を用いた方法に限定されるものではない。図28は、本発明の実施の形態5の第1の変形例を示す図である。図28および図27を参照して、通信システム100Dは、分散補償光ファイバ15に代えて、位相共役素子78を含む点において通信システム100Cと異なる。位相共役素子78は、たとえばLiNbO(ニオブ酸リチウム)結晶を含んで構成された光学素子である。後述するように、位相共役素子78において、位相共役光が生成されることにより、光データ信号および光パルス信号の波長分散を補償することが可能になる。
【0162】
(実施の形態5の第2の変形例)
この変形例に従う通信システムの全体構成は図1に示した通信システム100と同様である。ただし、波長分散を補償するための手段は加入者宅側装置に設けられる点で、この変形例に従う加入者宅側装置の構成は図3に示した加入者宅側装置2.1の構成と異なるが、他の部分は加入者宅側装置2.1の構成と同様である。したがって、以下では、この変形例に従う加入者宅側装置において、図3に示した構成と異なる部分についてのみ説明する。
【0163】
図29は、本発明の実施の形態5の第2の変形例に従う加入者宅側装置2.1Cにおいて、波長分散補償に関する部分の構成を示した図である。
【0164】
図29(a)は、加入者宅側装置において波長分散補償を実現するための第1の構成例を示す図である。図29(a)を参照して、位相共役素子78は、光分岐/光結合部22の前段に設けられる。位相共役素子78は、基地局側装置からの光パルス信号および光データ信号の各々の位相共役光を生成する。位相共役素子78からの位相共役光は光分岐/光結合部22によって、光伝送路20の一部である光伝送路20.1と光合波/光分波器16に分岐される。なお、光分岐/光結合部22と光合波/光分波器16との間の光伝送路は、図4に示したように分散補償光ファイバにより構成されてもよいし、通常の光ファイバにより構成されてもよい。
【0165】
図29(b)は、加入者宅側装置において波長分散補償を実現するための第2の構成例を示す図である。図29(b)を参照して、位相共役素子78は、光伝送路20の一部である光伝送路20.1に設けられる。位相共役素子78は、基地局側装置1からの光パルス信号および加入者宅側装置2.1Cから送信された光データ信号の位相共役光を生成する。
【0166】
このように、位相共役素子78は加入者宅側装置の内部に位置するが、光伝送路20の途中に設けられている。したがって、図27,27に示した通信システムの構成と同様に、各加入者宅側装置では、基地局側装置1からの光データ信号および光パルス信号の各々につき、波長分散が補償された状態で受信できる。また、ある加入者宅側装置では、他の加入者宅側装置から送出された光データ信号を波長分散が補償された状態で受信できる。同様に、基地局側装置においても、各加入者宅側装置から送出された光データ信号を、波長分散が補償された状態で受信することができる。
【0167】
次に、図30を参照しながら、位相共役素子78の作用を説明する。図30を参照して、位相共役素子78には、光伝送路20(光ファイバ)を介して光短パルスが入力される。この光短パルスは、光スペクトルが広がっており、わずかに異なる波長成分が含まれている。便宜上、その波長成分を白抜きの楕円(波長成分A)と、ハッチングを施した楕円(波長成分B)とで示す。
【0168】
光ファイバは波長分散を有するので、光の波長が異なれば、その伝播速度も異なる。したがって、異なる波長成分では位相共役素子78への到着時間が異なるため、パルスが広がる。位相共役素子78は、位相共役光を生成して入力された光と時間的に逆になる光パルスを生成する。したがって、波長成分A,Bが時間的に逆となる光となる。この光が光ファイバを伝送することにより、たとえば加入者宅側装置において、元の光短パルスに戻る(波長成分Aと波長成分Bとの到着時間が揃う)。
【0169】
以上のように実施の形態5によれば、実施の形態1による効果に加えて、加入者宅側装置における光データ信号の符号誤り等の問題および、基地局側装置における光データ信号の符号誤り等の問題が生じる可能性をより低くすることが可能になるという効果が得られる。
【0170】
なお、本実施の形態では、光変調部32は光強度変調によって光データ信号を生成するが、これに限定されるものではなく、たとえば位相変調によって光データ信号を生成してもよい。
【0171】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の実施の形態1に従う通信システム100の全体構成図である。
【図2】図1に示した基地局側装置1の構成図である。
【図3】図1に示した加入者宅側装置の構成図である。
【図4】基地局側装置による下りデータの伝送を説明するための図である。
【図5】加入者宅側装置による上りデータの送出を説明するための図である。
【図6】図3に示す光相互作用発生部18の概略構成図である。
【図7】光相互作用発生部18における4光波混合を説明する図である。
【図8】加入者宅側装置2.1および2.2におけるデータの抽出を説明する図である。
【図9】実施の形態1の変形例1に従う光相互作用発生部19Aの概略構成図である。
【図10】実施の形態1の変形例2に従う光相互作用発生部19Bの概略構成図である。
【図11】実施の形態1の変形例3に従う光相互作用発生部19Cの概略構成図である。
【図12】実施の形態1の変形例4に従う光相互作用発生部19Dの概略構成図である。
【図13】図12のEA変調器706の動作原理を説明するための概念図である。
【図14】光パルス信号の波長と、光データ信号(上りデータ)の波長との関係の一例を説明する図である。
【図15】通信システム100Aが備える加入者宅側装置2.1A〜2.nAの各々の構成図である。
【図16】加入者宅側装置による上りデータの送出を説明するための図である。
【図17】タイミング制御部23の一構成例を示す図である。
【図18】図17に示したタイミング制御部23の動作を説明する概念図である。
【図19】本発明の実施の形態3に従う通信システム100Bの全体構成図である。
【図20】図19に示した基地局側装置1Bの構成図である。
【図21】図20に示すパルス発生部12Bの構成例を示す図である。
【図22】図19に示した加入者宅側装置の構成図である。
【図23】加入者宅側装置による上りデータの送出を説明するための図である。
【図24】複数の光パルス信号の送出タイミングの調整を説明する図である。
【図25】図19に示した加入者宅側装置の構成の変形例を説明するための図である。
【図26】実施の形態4に従う通信システムに含まれる加入者宅側装置2.1BAにおいて、DEMUX信号の制御に関連する部分の構成を示した図である。
【図27】本発明の実施の形態5に従う通信システム100Cの全体構成図である。
【図28】本発明の実施の形態5の第1の変形例を示す図である。
【図29】本発明の実施の形態5の第2の変形例に従う加入者宅側装置2.1Cにおいて、波長分散補償に関する部分の構成を示した図である。
【図30】位相共役素子78による作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0173】
1,1A,1B 基地局側装置、1.1 送信部、1.2 受信部、2.1〜2.n,2.1A〜2.nA,2.1B〜2.4B,2.1BA,2.1C 加入者宅側装置、10 光源、12,12B パルス発生部、14,23 タイミング制御部、15 分散補償光ファイバ、16 光合波/光分波器、18,19A〜19D,75 光相互作用発生部、20 光伝送路、22 光分岐/光結合部、24 光合波器、26,62,64,233,707 フィルタ、26B 光分波器、28 タイミング測定部、30,74 符号化部、32 光変調部、33,34,55 光結合部、36 光増幅器、38,72 高非線形ファイバ、40 光フィルタ、42 半導体光増幅器、51 信号発生部、52.1〜52.n 光源、53.1〜53.n,84,84A 遅延部、54.1〜54.n 光変調部、60,66,68 光分岐部、78 位相共役素子、80,86 復号部、91 光分配部、92 強度モニタ部、93 遅延制御部、100,100A〜100D 通信システム、231 光分岐部、232 光電変換部、234 検波器、701 光カプラ、702 方向性結合器、706 変調器、708 アイソレータ、801,802 出入力端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路と、
所定の時間間隔で区切ったタイムスロットに、宛先の異なる複数のデータを順次割当てて時分割多重した第1の光信号と、前記複数のデータのうちの少なくとも1つの宛先に対応するデータと同期した第2の光信号とを前記光伝送路へ送出する第1の通信装置と、
各々が、前記光伝送路を介して前記第1および第2の光信号を受けて、前記第2の光信号を用いて、前記複数のデータのうち自己宛てのデータを抽出するとともに、前記第1の通信装置に前記光伝送路を介してデータを送信する複数の第2の通信装置とを備え、
前記第1の通信装置および前記複数の第2の通信装置は、前記光伝送路を介して環状に接続され、
前記複数の第2の通信装置の各々は、
前記第2の光信号に基づいて、前記第1の光信号において自己を宛先とするデータが割当てられたタイムスロットと同期する同期信号を生成する同期手段と、
前記第1の光信号と前記同期信号とを用いて、前記自己宛てのデータを抽出する抽出手段と、
前記第1の通信装置に送信されるべきデータを示す光信号を前記同期信号に同期させて、前記光伝送路に送出される第3の光信号を生成する信号生成手段とを含む、通信システム。
【請求項2】
前記複数の第2の通信装置の各々は、
前記信号生成手段からの前記第3の光信号と、他の前記第2の通信装置から送出された前記第3の光信号との時間間隔に基づいて前記同期手段を制御して、前記同期手段から前記同期信号が送出されるタイミングを制御するタイミング制御手段をさらに含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの宛先は、単一の宛先である、請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの宛先は、前記複数のデータのそれぞれに対応する複数の宛先であって、
前記第2の光信号は、時間軸上において互いに重ならないように前記第1の通信装置から送出された、互いに波長が異なる複数の光信号を含み、
前記同期手段は、波長の違いに基づいて、前記複数の光信号の中から前記同期信号を抽出して出力し、
前記第1の通信装置は、
前記第2の光信号を送出する送出手段と、
前記第1の通信装置から前記第2の光信号として送出された前記複数の光信号の各々が、前記第1の通信装置に到着する到着タイミングを測定するタイミング測定手段と、
前記タイミング測定手段が測定した前記到着タイミングに基づいて、前記複数の光信号の前記到着タイミングが互いに異なるように、前記送出手段に対して前記複数の光信号の各々の出力タイミングを制御するタイミング制御手段とを含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第1の通信装置は、
前記光伝送路を介して、前記複数の第2の通信装置の各々が送出した前記第3の光信号と、前記第2の光信号とを受けて、前記第2の光信号と前記第3の光信号とを分離する分離手段と、
分離された前記第3の光信号を復号する復号手段をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記抽出手段は、
前記同期信号と前記第1の光信号との間に光相互作用を生じさせることにより、前記自己宛のデータに対応する光信号を生成する第1の光相互作用発生手段を含み、
前記信号生成手段は、
前記第1の通信装置に送信されるべきデータを示す光信号と前記同期信号との間に光相互作用を生じさせることにより、前記第3の光信号を生成する第2の光相互作用発生手段を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記同期手段は、
前記同期信号として出力されるべき信号を遅延させ、かつ、その遅延量を変更可能な遅延手段を含み、
前記複数の第2の通信装置の各々は、
前記抽出手段により抽出された光信号の強度に基づいて、前記遅延量を制御する遅延制御手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記光伝送路に設けられ、前記第1から第3の光信号の少なくとも1つの波長分散補償を行なう分散補償手段をさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−213047(P2009−213047A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56364(P2008−56364)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】