説明

通信機器、通信システム

【課題】省電力化を図りつつ、所望のタイミングでデータを送信することのできる通信機器を提供する。
【解決手段】通信データを受信するデータ受信回路210と、通信データを処理する処理装置220と、処理装置220を起動する起動回路230と、を備え、起動回路230は、処理装置220の起動を要求する起動要求信号を受信すると処理装置220に起動要求通知信号を出力し、処理装置220は、起動要求通知信号を受け取るまではスリープ状態で待機しており、起動要求通知信号を受け取ると起動状態に遷移し、データ受信回路210は、起動回路230または処理装置220から起動するよう要求されるまではスリープ状態で待機しており、起動回路230または処理装置220から起動するよう要求されると起動状態に遷移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器およびその通信機器を有する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル・ホーム向けネットワークにおいて、通信機器は様々な位置に設置される。そのため、電池駆動であることが望ましい。しかし、電池交換が必要となるので、通信機器の電池を交換する度に、多くの時間とコストがかかる。そこで、電池駆動の通信機器の省電力化が図られてきた。
【0003】
上述のような省電力化に関し、『通信を無線によって行う2つの端末間で、送受信のタイミングを間欠的に互いに同期して行う場合、無駄な受信動作の時間をなくして消費電力を低減できる無線通信システムを提供する。』ことを目的とした技術として、『メイン端末は、通信データの先頭にグループを識別するためのグループIDを付加してサブ端末に送信する。サブ端末は、通信データを受信する際に、グループIDを読み取り、そのグループが自己のグループと一致するとき、間欠受信動作から連続受信動作に移行して、グループIDに続くデータを読み取る。』というものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、省電力化を図るため、間欠動作を行う。さらに、送受信のタイミングをその間欠動作に合わせることにより、無駄な受信動作の時間をなくして消費電力を低減している。
【0005】
【特許文献1】特開平11−243590号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、送受信タイミングを二つの通信機器間で合わせるために、二つの通信機器間の時刻を合わせる必要がある。
時刻同期を行うため、各通信機器は同期用のデータを送受信し、通信機器間の時刻の同期をとる。二つの通信機器間で同期がとれた状態において、間欠動作を行う。データ送信を行う通信機器は、その間欠動作のタイミングに合わせてデータを送信する。
したがって、通信機器はデータを送信するタイミングは間欠動作のタイミングに制約を受け、任意のタイミングでデータを送信することができないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、省電力化を図りつつ、所望のタイミングでデータを送信することのできる通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信機器は、通信データを受信するデータ受信回路と、前記通信データを処理する処理装置と、前記処理装置を起動する起動回路と、を備え、前記起動回路は、前記処理装置の起動を要求する起動要求信号を受信すると前記処理装置に起動要求通知信号を出力し、前記処理装置は、前記起動要求通知信号を受け取るまではスリープ状態で待機しており、前記起動要求通知信号を受け取ると起動状態に遷移し、前記データ受信回路は、前記起動回路または前記処理装置から起動するよう要求されるまではスリープ状態で待機しており、前記起動回路または前記処理装置から起動するよう要求されると起動状態に遷移するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る通信機器は、起動要求信号を受信するまではスリープ状態で待機しているので、省電力化を図ることができる。
また、他の通信機器が当該通信機器にデータを送信したいときは、起動要求信号を当該通信機器に送信することで、当該通信機器の処理装置とデータ受信回路を起動させ、データを受信可能な状態にすることができる。そのため、他の通信機器は、所望のタイミングでデータを送信することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信システムの構成図である。本実施の形態1に係る通信システムは、1ないし複数の親端末100と、1ないし複数の子端末200とを有する。
【0011】
親端末100は、データ送信回路110、親端末処理装置120、起動要求信号送信回路130を備える。
【0012】
データ送信回路110は、無線通信によりデータを送信する。また、必要なアンテナ等の無線信号送信手段を適宜備える。
親端末処理装置120は、データ送信回路110と起動要求信号送信回路130の動作を制御する。
起動要求信号送信回路130は、子端末200の子端末処理装置220を起動するよう要求する起動要求信号を送信する。また、必要なアンテナ等の無線信号送信手段を適宜備える。
【0013】
子端末200は、データ受信回路210、子端末処理装置220、起動回路230を備える。
【0014】
データ受信回路210は、通常時はスリープ状態にあり、子端末処理装置220の指示にしたがって起動状態に遷移する。起動後は、無線通信によりデータを受信する。また、必要なアンテナ等の無線信号受信手段を適宜備える。
起動回路230は、親端末100が送信した起動要求信号を受け取り、子端末処理装置220に対し、起動要求通知信号を出力する。
子端末処理装置220は、通常時はスリープ状態にあり、起動回路230から起動要求通知信号を受信すると起動状態に遷移する。起動後は、データ受信回路210の起動状態とスリープ状態を制御し、またデータ受信回路210が受信した通信データを処理する。
【0015】
親端末処理装置120と子端末処理装置220、およびその各機能部は、これらの機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPU(Central Processing Unit)のような演算装置とその動作を規定するソフトウェアで構成することもできる。
【0016】
以上、親端末100と子端末200の構成を説明した。
次に、以下の図2〜図6を用いて、各部の詳細構成を説明する。
【0017】
図2は、親端末処理装置120の機能ブロック図である。
親端末処理装置120は、起動要求部121、送信要求部122、待機処理部123を備える。
【0018】
起動要求部121は、起動要求信号送信回路130に起動要求送信指示信号を送り、起動要求信号の送信を要求する。
送信要求部122は、データ送信回路110にデータ送信要求信号を送り、データ送信を要求する。
待機処理部123は、親端末処理装置120を一定時間待機させる処理を行う。
【0019】
図3は、子端末処理装置220の機能ブロック図である。
子端末処理装置220は、データ受信回路起動処理部221、データ受信回路スリープ処理部222、起動状態遷移処理部223、スリープ状態遷移処理部224を備える。
【0020】
データ受信回路起動処理部221は、起動回路230が出力する起動要求通知信号を受け取ると、データ受信回路210へ起動状態遷移要求信号を出力し、データ受信回路210を起動状態に遷移させる。
データ受信回路スリープ処理部222は、スリープ状態遷移要求信号をデータ受信回路210に出力し、データ受信回路210をスリープ状態に遷移させる。
【0021】
起動状態遷移処理部223は、子端末処理装置220自身を起動状態に遷移させる。
スリープ状態遷移処理部224は、子端末処理装置220自身をスリープ状態に遷移させる。
【0022】
なお、子端末処理装置220が起動状態であるとは、例えば子端末処理装置220がマイコンで構成されている場合、クロックが高速で動作し、消費電力が大きい状態のことである。
また、子端末処理装置220がスリープ状態であるとは、例えば子端末処理装置220がマイコンで構成されている場合、クロックが停止していたり、クロックが低速で動作していたり、周辺回路が停止している状態であり、起動状態と比較して著しく消費電力が小さい状態のことである。
【0023】
図4は、データ受信回路210の機能ブロック図である。
データ受信回路210は、データ受信部211、起動状態遷移部212、スリープ状態遷移部213を備える。
【0024】
データ受信部211は、親端末100が送信する通信データを受信し、子端末処理装置220に出力する。
起動状態遷移部212は、子端末処理装置220が出力する起動状態遷移要求信号を受け取ると、データ受信回路210自身を起動状態に遷移させる。
スリープ状態遷移部213は、子端末処理装置220が出力するスリープ状態遷移要求信号を受信すると、データ受信回路210自身をスリープ状態に遷移させる。
【0025】
データ受信回路210が起動状態であるとは、データを受信することができる状態であり、一般に微弱な無線電波等を増幅する等のために電力を大きく消費している状態のことである。
また、データ受信回路210がスリープ状態であるとは、データを受信することができない状態であり、消費電力が小さい状態のことである。
【0026】
図5は、起動回路230の構成図である。
起動回路230は、共振回路231、整流回路232、充電回路233、判定回路234を備える。
【0027】
共振回路231は、受信した通信信号から特定の周波数成分を取り出す。
整流回路232は、受信した交流信号を直流信号に整流する。
充電回路233は、整流回路232が出力する直流信号を用いて電力を蓄積する。
判定回路234は、充電回路233が蓄積している電力が所定閾値を超えたかどうかを判定する。判定回路234は、例えばリセットIC(Integrated Circuit)を用いて構成することができる。その他、コンパレータ回路などを用いることもできる。
【0028】
図5では、LC回路を用いて共振回路231を構成した例を示したが、これに限るものではなく、水晶やセラミックなど他の素子を用いてもよい。
また、図5において、一つのダイオードを用いて整流回路232を構成した例を示したが、ブリッジ整流回路や全波整流回路など他の整流回路を用いてもよい。
また、図5において、コンデンサを用いて充電回路233を構成した例を示したが、その他の電力蓄積手段を用いてもよい。
【0029】
図6は、起動要求信号の波形と、起動回路230で起動要求信号を受信したときの各部における信号波形を示す図である。
図6に示すように、起動要求信号には、例えば無変調のキャリアを用いる。
充電回路233が起動要求信号の電力を蓄積し、溜まった電力がある閾値を超えると、判定回路234における信号波形が反転する。
起動回路230は、この信号波形の反転を起動要求通知信号とし、子端末処理装置220に出力する。
子端末処理装置220は、起動状態遷移処理部223の動作により、子端末処理装置223自身を起動する。
【0030】
以上、親端末100と子端末200の各部の詳細構成を説明した。
次に、本実施の形態1に係る通信システムの動作を説明する。
【0031】
図7は、親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンス図である。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0032】
(S701)
親端末処理装置120は、起動要求信号送信回路130に起動要求送信指示信号を送信する。
(S702)
起動要求信号送信回路130は、起動要求送信指示信号を受け取ると、子端末200に起動要求信号を送信する。
【0033】
(S703)
子端末200の起動回路230は、起動要求信号を受信すると、子端末処理装置220に起動要求通知信号を出力する。子端末処理装置220は、起動状態遷移処理部223の機能により、子端末処理装置220自身を起動する。
(S704)
子端末処理装置220が起動すると、データ受信回路起動処理部221は、データ受信回路210に起動状態遷移要求信号を出力する。データ受信回路210は、起動状態遷移部212の機能により、データ受信回路210自身を起動する。
【0034】
(S705)
親端末処理装置120は、起動要求送信指示信号を出力した後、待機処理部123の機能により、子端末200のデータ受信回路210が起動するに十分な時間待機する。
(S706)
親端末処理装置120は、ステップS705で十分な時間待機した後、データ送信要求信号をデータ送信回路110に出力する。
(S707)
データ送信回路110は、データを子端末200に送信する。
【0035】
(S708)
子端末200のデータ受信回路210は、データを受信し、子端末処理装置220に受信通知信号を出力する。子端末処理装置220は、受信したデータの処理を行う。
(S709)
子端末処理装置220は、データの受信が完了し、そのデータの処理を終了した後、スリープ状態遷移要求信号をデータ受信回路210に出力する。
データ受信回路210は、スリープ状態遷移部213の機能により、スリープ状態に遷移する。
子端末処理装置220は、スリープ状態遷移要求信号をデータ受信回路210に出力した後、スリープ状態遷移処理部224の機能によりスリープ状態に遷移する。
【0036】
以上、親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンスを説明した。
なお、データの受信の完了は、例えば、一つのデータの受信ごとに完了と判断してもよいし、決められたデータ数を受信したときを受信の完了と判断してもよい。
また、決められた時間を受信時間とし、受信時間が終了したときを受信の完了と判断してもよい。
また、親端末100が受信終了を示した内容を付与したデータを送信し、子端末200がそのデータを受信したときを受信の完了と判断してもよい。
【0037】
以上のように、本実施の形態1によれば、子端末200のデータ受信回路210および子端末処理装置220は、データの受信時のみ起動し、データ受信時以外はスリープするため、消費電力の高い受信時の消費電力を極力抑えることができる。
また、親端末100は、起動要求信号を送信し、子端末200のデータ受信回路210を起動させることができるので、データ送信のタイミングについての制限なく、所望のタイミングでデータを送信することができる。
【0038】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、子端末200が起動要求信号を受信したとき、その応答信号を親端末100に送信する構成と動作を説明する。
【0039】
図8は、本実施の形態2に係る無線システムの構成図である。
本実施の形態2に係る親端末100は、実施の形態1の図1で説明した構成に加え、新たにデータ受信回路140を備える。また、本実施の形態2に係る子端末200は、実施の形態1の図1で説明した構成に加え、新たにデータ送信回路240を備える。
その他の構成は、実施の形態1と概ね同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0040】
子端末200のデータ送信回路240は、親端末100にデータを送信する。また、必要なアンテナ等の無線信号送信手段を適宜備える。
親端末100のデータ受信回路140は、子端末200より通信データを受信すると、受信通知信号を親端末処理装置120に出力する。また、必要なアンテナ等の無線信号受信手段を適宜備える。
【0041】
図9は、本実施の形態2における親端末処理装置120の機能ブロック図である。
親端末処理装置120は、実施の形態1の図2で説明した構成に加え、新たにACK受信判定部124を備える。
ACK受信判定部124は、ACKを受信したかどうか判定し、ACKを受信していない場合は、起動要求部121を介して起動要求信号送信回路130に起動要求信号の送信を要求する。
【0042】
図10は、本実施の形態2における子端末処理装置220の機能ブロック図である。
子端末処理装置220は、実施の形態1の図3で説明した構成に加え、新たに送信要求部225を備える。
送信要求部225は、受信通知信号を受け取ると、データ送信回路240にデータ送信要求信号を送信する。
【0043】
以上、本実施の形態2に係る親端末100と子端末200の各部の構成を説明した。
次に、本実施の形態2に係る通信システムの動作を説明する。
【0044】
図11は、親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンス図である。以下、図11の各ステップについて説明する。
【0045】
(S1101)
親端末処理装置120は、起動要求信号送信回路130に起動要求送信指示信号を出力する。
(S1102)
起動要求信号送信回路130は、起動要求送信指示信号を受け取ると、子端末200に起動要求信号を送信する。
(S1103)
子端末200の起動回路230は、起動要求信号を受信すると、子端末処理装置220に起動要求通知信号を出力する。子端末処理装置220は、起動状態遷移処理部223の機能により、子端末処理装置220自身を起動する。
【0046】
(S1104)
子端末処理装置230が起動すると、送信要求部225は、ACK送信要求信号をデータ送信回路240に出力する。
(S1105)
データ送信回路240は、ACK送信要求信号を受け取ると、ACKを親端末100に送信する。
(S1106)
子端末処理装置220のデータ受信回路起動処理部221は、データ受信回路210に起動状態遷移要求信号を出力する。データ受信回路210は、起動状態遷移部212の機能により、データ受信回路210自身を起動する。
【0047】
(S1107)
親端末100のデータ受信回路140は、ACKを受信すると、受信通知信号を親端末処理装置120に出力する。
(S1108)
親端末処理装置120は、受信通知信号を受信すると、データ送信要求信号をデータ送信回路110に出力する。
(S1109)
データ送信回路110は、データを子端末200に送信する。
【0048】
(S1110)
子端末200のデータ受信回路210は、データを受信し、子端末処理装置220に受信通知信号を出力する。子端末処理装置220は、受信したデータの処理を行う。
(S1111)
子端末処理装置220は、データの受信が完了し、そのデータの処理を終了した後、スリープ状態遷移要求信号をデータ受信回路210に出力する。
データ受信回路210は、スリープ状態遷移部213の機能により、スリープ状態に遷移する。
子端末処理装置220は、スリープ状態遷移要求信号をデータ受信回路210に出力した後、スリープ状態遷移処理部224の機能によりスリープする。
【0049】
図12は、子端末200からACKが返ってこない場合のシーケンス図である。以下、図12の各ステップについて説明する。
【0050】
(S1201)
親端末処理装置120は、起動要求信号送信回路130に起動要求送信指示信号を出力する。
(S1202)
起動要求信号送信回路130は、起動要求送信指示信号を受け取ると、子端末200に起動要求信号を送信する。
【0051】
(S1203)
親端末処理装置120は、待機処理部123の機能により、一定時間待機する。
(S1204)
ここでは、何らかの理由で子端末200からACKを受信しなかったものとする。
(S1205)
親端末処理装置120が一定時間待機した後、ACK受信判定部124は、子端末200からACKを受信したか否かを判定する。ここではACKを受信しなかったので、親端末処理装置120は、起動要求信号送信回路130に起動要求信号を再出力する。
【0052】
以上、親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンスを説明した。
なお、子端末200のデータ送信回路240はACKを送信することを説明したが、ACK以外のデータを送信するように構成してもよい。
データ送信回路240がACK以外のデータを送信する場合でも、子端末200の消費電力を抑えることが可能である。また、子端末200から親端末100にデータを送信することが可能である。
【0053】
以上のように、本実施の形態2では、子端末200はACKを親端末100に送信するので、親端末100が信号の到達判断をできるようになる。
到達判断ができるため、親端末100はデータ送信ができるかわからないまま送信を行うことがなくなり、通信の信頼性を高めることが可能となる。
【0054】
実施の形態3.
図13は、本実施の形態3に係る無線システムの構成図である。
本実施の形態3に係る親端末100は、実施の形態2の図8で説明した構成に加え、新たに搬送波送信回路150を備える。また、本実施の形態3に係る子端末200は、実施の形態1の図1で説明した構成に加え、新たに負荷変調回路250を備える。
その他の構成は、実施の形態1〜2で説明したものと概ね同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0055】
搬送波送信回路150は、子端末200に無変調の搬送波を送信する。また、必要なアンテナ等の無線信号送信手段を適宜備える。
【0056】
負荷変調回路250は、アンテナ等の無線信号送受信手段を備える。また、送信要求信号を受信すると、アンテナへの出力インピーダンスを変更する。出力インピーダンスを変更することにより、搬送波を受信した際に、アンテナと負荷変調回路250との間にインピーダンス不整合が起こり、搬送波が変調される。この変調により、子端末200の送信データを送信する。
【0057】
以上、本実施の形態3に係る親端末100と子端末200の各部の構成を説明した。
次に、本実施の形態3に係る通信システムの動作を説明する。
【0058】
図14は、親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンス図である。以下、図14の各ステップについて説明する。
【0059】
(S1401)
親端末処理装置120は、起動要求信号送信回路130に起動要求送信指示信号を出力する。
(S1402)
起動要求信号送信回路130は、起動要求送信指示信号を受け取ると、子端末200に起動要求信号を送信する。
【0060】
(S1403)
親端末処理装置120は、搬送波送信回路150に送信要求信号を出力する。
(S1404)
搬送波送信回路150は、送信要求信号を受け取ると、子端末200に搬送波(例えば無変調のキャリア信号)を送信する。
【0061】
(S1405)
子端末200の起動回路230は、起動要求信号を受信すると、子端末処理装置220に起動要求通知信号を出力する。子端末処理装置220は、起動状態遷移処理部223の機能により、子端末処理装置220自身を起動する。
(S1406)
子端末処理装置230が起動すると、送信要求部225は、ACK送信要求信号を負荷変調回路250に出力する。
【0062】
(S1407)
負荷変調回路250は、親端末100が送信した搬送波をACK送信要求信号により変調する。この変調により、ACKが送信される。
(S1408)
子端末処理装置220のデータ受信回路起動処理部221は、データ受信回路210を起動する。
【0063】
(S1409)
親端末100のデータ受信回路110は、ACKを受信すると、受信通知信号を親端末処理装置120に出力する。
(S1410)
親端末処理装置120は、受信通知信号を受信すると、データ送信要求信号をデータ送信回路130に出力する。
【0064】
(S1411)
データ送信回路130は、データを子端末200に送信する。
(S1412)
子端末100のデータ受信回路210は、データを受信し、子端末処理装置220に受信通知信号を出力する。子端末処理装置220は、受信したデータの処理を行う。
(S1413)
子端末処理装置220は、データの受信が完了し、そのデータの処理を終了した後、スリープ状態遷移要求信号をデータ受信回路210に出力する。
データ受信回路210は、スリープ状態遷移部213の機能により、スリープ状態に遷移する。
子端末処理装置220は、スリープ状態遷移要求信号をデータ受信回路210に出力した後、スリープ状態遷移処理部224の機能によりスリープする。
【0065】
図15は、子端末200からACKが返ってこない場合のシーケンス図である。以下、図15の各ステップについて説明する。
【0066】
(S1501)
親端末処理装置120は、起動要求信号送信回路130に起動要求送信指示信号を出力する。
(S1502)
起動要求信号送信回路130は、起動要求送信指示信号を受信すると、子端末200に起動要求信号を送信する。
【0067】
(S1503)
親端末処理装置120は、搬送波送信回路150に送信要求信号を出力する。
(S1504)
搬送波送信回路150は、送信要求信号を受信すると、子端末200に搬送波を送信する。
【0068】
(S1505)
親端末処理装置120は、待機処理部123の機能により、一定時間待機する。
(S1506)
ここでは、何らかの理由で子端末200からACKを受信しなかったものとする。
(S1507)
親端末処理装置120が一定時間待機した後、ACK受信判定部124は、子端末200からACKを受信したか否かを判定する。ここではACKを受信しなかったので、親端末処理装置120は、起動要求信号送信回路130に起動要求信号を再出力する。
【0069】
以上、親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンスを説明した。
【0070】
なお、本実施の形態3では、起動要求信号送信回路130と搬送波送信回路150は異なる回路として説明したが、これらを一つの回路として、搬送波を起動要求信号の一部または搬送波そのものとして送信してもよい。
【0071】
また、本実施の形態3では、子端末200の負荷変調回路250はACKを送信することを説明したが、ACK以外のデータを送信するように構成してもよい。この場合、負荷変調回路250は、データ送信回路240と同様の役割を果たすことになる。
負荷変調回路250がACK以外のデータを送信する場合でも、子端末200の消費電力を抑えることができる。また、子端末200から親端末100にデータを送信することが可能である。
【0072】
以上のように、本実施の形態3では、子端末200の負荷変調回路150は、親端末100が送信した搬送波をACKに変調して送信するため、子端末200がACKを送信する際にかかる送信電力をなくすことが可能となる。
【0073】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4では、起動回路230の別構成例について説明する。
【0074】
図16は、本実施の形態4に係る子端末200の起動回路230の構成図である。
本実施の形態4において、起動回路230は、実施の形態1の図5で説明した構成に加え、カウンタ回路235、比較回路236、DIPSW(DIP SWitch)237を備える。
【0075】
カウンタ回路235は、充電回路233に溜まった電力が所定閾値を超えた回数を数える。
比較回路236は、カウンタ回路235のカウンタ値とDIPSW237の設定値とを比較し、同一であった場合、子端末処理装置220を起動させる。
【0076】
無線システム内に子端末200が複数存在する場合、各子端末に固有の値をDIPSW237で設定しておけば、起動要求信号を用いて特定の子端末200だけを起動させることができる。
【0077】
なお、各子端末に固有の値を設定する手段として、DIPSW237以外の手段を用いることもできる。例えば、通信により設定値を各子端末に送信する手法を用いてもよい。
【0078】
また、共振回路231は、子端末200毎に異なる共振周波数を有するように構成してもよい。このように共振周波数を設定することにより、親端末100は起動させたい子端末200の共振周波数に合わせて起動要求信号を送信し、その子端末200のみを起動させることができる。
【0079】
実施の形態5.
図17は、本発明の実施の形態5に係る通信システムの構成図である。
本実施の形態5に係る親端末100は、実施の形態1の図1で説明した構成に加え、新たにデータ受信回路140、起動回路160を備える。また、本実施の形態5に係る子端末200は、実施の形態1の図1で説明した構成に加え、新たにデータ送信回路240、起動要求信号送信回路260を備える。
【0080】
データ受信回路140、起動回路160は、それぞれデータ受信回路210、起動回路230と同様の構成・機能を備える。
データ送信回路240、起動要求信号送信回路260は、それぞれデータ送信回路110、起動要求信号送信回路130と同様の構成・機能を備える。
【0081】
図17のように、親端末100と子端末200が同等の構成を備えることにより、双方向の通信を実現することができる。
また、親端末100と子端末200双方の省電力化を図るとともに、親端末100と子端末200双方が、所望のタイミングでデータを送受信することができる。
【0082】
実施の形態6.
以上の実施の形態1〜5では、起動要求信号を1度しか送信していないが、起動要求信号を複数回送信してもよい。複数回送信することで、信号が相手に到達する確率が増えるため、通信の信頼性を向上することができる。
【0083】
また、以上の実施の形態1〜5では、各回路は1つのアンテナを備えているが、アンテナの数は回路の総数より少なくてもよい。例えば、親端末100は1つのアンテナを備え、子端末200は1つのアンテナを備えるように構成し、各回路がアンテナを共通利用してもよい。
【0084】
また、以上の実施の形態1〜5では、子端末処理装置220がデータ受信回路210を起動することを説明したが、起動回路230が直接データ受信回路210を起動するようにしてもよい。
【0085】
また、以上の実施の形態1〜5では、電磁波を用いる無線による通信の場合を想定したが、有線通信、赤外線、光など他の通信媒体を用いてもよい。
【0086】
また、以上の実施の形態1〜5で説明した構成は、適宜組み合わせることができる。
例えば、実施の形態4で説明した起動回路230の構成を、他の実施の形態の構成で用いることができる。
あるいは、実施の形態2で説明したデータ受信回路140とデータ送信回路240、実施の形態3で説明した搬送波送信回路150と負荷変調回路250を、他の実施の形態の構成で用いることもできる。
【0087】
実施の形態7.
図18は、本発明の実施の形態7に係る空調システムの構成図である。
本実施の形態7に係る空調システムは、空気調和機300、リモコン400を備える。
空気調和機300は、実施の形態1〜6のいずれかで説明した親端末100を備える。 リモコン400は、実施の形態1〜6のいずれかで説明した子端末200を備える。
【0088】
空気調和機300は、実施の形態1〜6で説明した動作により、リモコン400に起動要求信号やデータを送信する。
リモコン400は、その起動要求信号を受信してスリープ状態から起動状態に遷移し、空気調和機300からデータを受信する。
【0089】
以上のように、本実施の形態7によれば、空気調和機300とリモコン400は、実施の形態1〜6の構成を備える。
これにより、空気調和機300は、所望のタイミングでリモコン400にデータを送信することができる。また、リモコン400は、データを受信する時以外はスリープするため、消費電力の高い受信時の電力を極力抑えることが可能となる。
【0090】
また、本実施の形態7によれば、空気調和機300は、所望のタイミングでデータを送信することができるので、空気調和機300とリモコン400との間で時刻の同期をとることができる。また、空気調和機300とリモコン400との間で、種々の情報を共有することができる。
【0091】
実施の形態8.
センサ端末とそのセンサ端末を統括する制御端末から構成されるセンサシステム(図示せず)において、制御端末が実施の形態1〜6で説明した親端末100を備え、センサ端末が実施の形態1〜6で説明した子端末200を備えるように構成することもできる。
この構成によって、制御端末はセンサ端末にデータをいつでも送信することができる。また、センサ端末は、データ受信時以外はスリープするため、消費電力を低減することができる。
様々な場所に設置されるため電池駆動の端末が多いセンサ端末にとって、消費電力の低減は有益である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施の形態1に係る通信システムの構成図である。
【図2】親端末処理装置120の機能ブロック図である。
【図3】子端末処理装置220の機能ブロック図である。
【図4】データ受信回路210の機能ブロック図である。
【図5】起動回路230の構成図である。
【図6】起動要求信号の波形と、起動回路230で起動要求信号を受信したときの各部における信号波形を示す図である。
【図7】親端末100から子端末200へデータ送信する際のシーケンス図である。
【図8】実施の形態2に係る無線システムの構成図である。
【図9】実施の形態2における親端末処理装置120の機能ブロック図である。
【図10】実施の形態2における子端末処理装置220の機能ブロック図である。
【図11】親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンス図である。
【図12】子端末200からACKが返ってこない場合のシーケンス図である。
【図13】実施の形態3に係る無線システムの構成図である。
【図14】親端末100から子端末200へデータを送信する際のシーケンス図である。
【図15】子端末200からACKが返ってこない場合のシーケンス図である。
【図16】実施の形態4に係る子端末200の起動回路230の構成図である。
【図17】実施の形態5に係る通信システムの構成図である。
【図18】実施の形態7に係る空調システムの構成図である。
【符号の説明】
【0093】
100 親端末、110 データ送信回路、120 親端末処理装置、121 起動要求部、122 送信要求部、123 待機処理部、124 ACK受信判定部、130 起動要求信号送信回路、140 データ受信回路、150 搬送波送信回路、160 起動回路、200 子端末、210 データ受信回路、211 データ受信部、212 起動状態遷移部、213 スリープ状態遷移部、220 子端末処理装置、221 データ受信回路起動処理部、222 データ受信回路スリープ処理部、223 起動状態遷移処理部、224 スリープ状態遷移処理部、225 送信要求部、230 起動回路、231 共振回路、232 整流回路、233 充電回路、234 判定回路、240 データ送信回路、250 負荷変調回路、260 起動要求信号送信回路、300 空気調和機、400 リモコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信データを受信するデータ受信回路と、
前記通信データを処理する処理装置と、
前記処理装置を起動する起動回路と、
を備え、
前記起動回路は、
前記処理装置の起動を要求する起動要求信号を受信すると前記処理装置に起動要求通知信号を出力し、
前記処理装置は、
前記起動要求通知信号を受け取るまではスリープ状態で待機しており、
前記起動要求通知信号を受け取ると起動状態に遷移し、
前記データ受信回路は、
前記起動回路または前記処理装置から起動するよう要求されるまではスリープ状態で待機しており、
前記起動回路または前記処理装置から起動するよう要求されると起動状態に遷移する
ことを特徴とする通信機器。
【請求項2】
前記起動要求信号を受信した旨の応答信号を送信する手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の通信機器。
【請求項3】
通信データを送信するデータ送信回路を備え、
前記処理装置は、
前記起動要求信号に対するACKを送信するよう要求するACK送信要求信号を前記データ送信回路に出力し、
前記データ送信回路は、
前記ACK送信要求信号を受け取るとACKを送信する
ことを特徴とする請求項2記載の通信機器。
【請求項4】
搬送波を受信して変調する負荷変調回路を備え、
前記処理装置は、
前記起動要求信号に対するACKを送信するよう要求するACK送信要求信号を前記負荷変調回路に出力し、
前記負荷変調回路は、
前記ACK送信要求信号を受け取ると、
前記搬送波を変調してACKを生成し送信する
ことを特徴とする請求項2記載の通信機器。
【請求項5】
前記起動回路は、
特定の周波数のみを取り出す共振回路と、
交流を直流に変換する整流回路と、
前記整流回路が出力する電力を蓄積する充電回路と、
前記充電回路が蓄積している電力が第1閾値を超えたか否かを判定する判定回路と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の通信機器。
【請求項6】
前記起動要求信号が当該通信機器宛であるか否かを判定する手段を備え、
前記処理装置は、
前記起動要求信号が当該通信機器宛であるときは起動状態に遷移する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の通信機器。
【請求項7】
前記起動回路は、
前記充電回路が蓄積する電力が第2閾値を超えた回数を数えるカウンタ回路を備え、
その回数が当該通信機器の固有値と合致したとき、
前記起動要求信号が当該通信機器宛であると判断し、
前記処理装置に前記起動要求通知信号を出力する
ことを特徴とする請求項5記載の通信機器。
【請求項8】
前記固有値を設定する手段を備えたことを特徴とする請求項7記載の通信機器。
【請求項9】
前記共振回路は、
当該通信機器に固有の共振周波数を有し、
前記起動要求信号の周波数が前記共振回路の共振周波数と合致したとき、
前記起動要求信号が当該通信機器宛であると判断し、
前記処理装置に起動要求通知信号を出力する
ことを特徴とする請求項5記載の通信機器。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の通信機器と、
前記通信機器に前記起動要求信号を複数回送信する親機と、
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項11】
請求項3または請求項4記載の通信機器と、
前記通信機器に前記起動要求信号を送信する親機と、
を有し、
前記通信機器は、
前記起動要求信号を受信した旨の応答信号を前記親機に送信し、
前記親機は、
通信データを受信する第2データ受信回路と、
通信データを送信する第2データ送信回路と、
を備え、
前記通信機器が送信する前記応答信号を受信すると、
前記通信機器に通信データを送信する
ことを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−62609(P2010−62609A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223184(P2008−223184)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】