説明

連結式車両用電子防止機構

【課題】連結車両におけるジャックナイフ現象などの兆候を検出し様々な防止処置が取れるシステムを提供する。
【解決手段】連結式車両用電子防止システムは、第1のヨーイング軸周りの牽引部分のヨーイング回転速度を検出するように構成された牽引部センサ108と、第2のヨーイング軸周りの被牽引部分のヨーイング回転速度を検出するように構成された被牽引部センサ106と、牽引部センサ108および被牽引部センサ106に接続された処理装置110とを備え、処理装置110が、牽引部センサ108および被牽引部センサ106から受信したデータに少なくとも部分的に基づいて、いつ修正制御を開始するかを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結式車両用電子防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
連結式車両は、枢動連結機構によって、単体車両より小回りの転回を行うことができる。しかし、連結式車両はまた、ジャックナイフ現象など、いくつかの危険な状態になり得る。ジャックナイフ現象とは、一方の部分が、他方の部分とはほぼ反対方向に向く程度にまで枢支点周りに回転して連結車両が不慮に折れ曲がった状態を意味する。ジャックナイフ現象は、氷結道路や濡れた道路など道路の悪条件、および、急転回やオーバーステアおよびアンダーステアなどのある種の運転操作によって引き起こされ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
荷重感知ブレーキ圧調製器、アンチロックブレーキ、枢支点周りに回り得る最大角度を制限する装置など、ジャックナイフ現象の可能性を最低限に抑えようとして多数の装置が開発されてきた。これら装置は、ジャックナイフ現象の防止に様々なレベルの効果を有する。たとえば、荷重感知ブレーキ圧調製器は、連結式車両の後部にどれだけの重量があるかに基づいて後部ブレーキに掛けるブレーキ圧の大きさを減少させる。しかし、様々な装置が採用されるにも拘らず、ジャックナイフ現象および他の同様な危険な状態が、連結式車両にとって依然として潜在的な事故原因である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
現在のシステムの上述の問題点が、本発明の実施形態の対象にされており、また、以下の明細を読み考察することによって理解されよう。以下の実施形態の概要は、例として作成されたのであり、限定するために作成されたのではない。それは、単に、本発明の態様の一部を読者が理解するのを助けるために提供される。
【0005】
一実施形態では、連結式車両用電子防止システムが提供される。電子防止システムは、第1のヨーイング軸周りの牽引部分のヨーイング回転速度を検出するように構成された牽引部センサと、第2のヨーイング軸周りの被牽引部分のヨーイング回転速度を検出するように構成された被牽引部センサと、牽引部センサおよび被牽引部センサに接続された処理装置とを備え、処理装置が、牽引部センサおよび被牽引部センサから受信したデータに少なくとも部分的に基づいて、いつ修正制御を開始するかを決定するように構成されている。
【0006】
添付図面の内容を鑑みて考察すると、本発明をより容易に理解することができ、本発明のさらなる利点および用途をより容易に明らかにすることができる。
様々な図面で同じ参照番号および符号は、同じ要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付図面が参照され、それには、本発明を実施することができる特定の例示的実施形態が例示として示される。これらの実施形態では、当業者が本発明を実施することができる十分に詳細な記述がなされているが、また、他の実施形態を用いることもでき、本発明の範囲から逸脱することなく論理的、機械的、および電気的変更を加えることができることを理解されたい。示されている例示的方法は、ステップを追加しまたは減らすことができ、あるいは、より大きな処理体系の流れの中で実施されることもあることが理解されるべきである。さらに、図中に表されている方法については、数字や記述は、個々のステップが実施され得る順序を限定するものと理解されるべきではない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味に取られるべきではない。
【0008】
本発明の実施形態は、連結式車両におけるジャックナイフ現象などの有害事象に対して、有害事象の兆候を検出するようになされた電子システムを介して、新たな防止策を提供する。ジャックナイフ現象を防止する従来の手段は、ジャックナイフ現象を生じ得る条件(たとえばブレーキロックや空のトレーラ)を抑えることに焦点を置いているが、本発明の実施形態では、ジャックナイフ現象の兆候を検出し、その時点でジャックナイフ現象を防止する様々な修正処置を取ることができる。したがって、本発明の実施形態は、ジャックナイフ現象に対する新たな防止策を可能にする。
【0009】
本発明で使用される用語「連結式車両」は、常設または準常設に拘らず、枢動連結機構を有する車両を指し、枢動連結機構は車両がより小回りに転回するのを可能にすることに留意されたい。連結式車両には、それに限定されないが、連節バス、貨物トレーラまたはトレーラトラック、およびヒッチなどの枢支点を介して荷物を牽引する車両(たとえばボートを牽引する車両)が含まれる。さらに、本明細書に使用される用語「牽引部分」は、移動の方向を制御する連結式車両の部分を指し、用語「被牽引部分」は牽引部分に従う連結式車両の部分(またはたとえばタンデムトレーラでは複数の部分)を指す。たとえば、トレーラトラックでは、運転台が牽引部分であり、トレーラが被牽引部分である。枢支点は、牽引部分と被牽引部分をそれぞれのヨーイング軸周りにそれぞれ独立に回転させることによって、より小回りの転回を可能にする。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による電子防止システム100の上位ブロック図である。システム100は2つ以上のセンサに接続された処理装置110を備える。処理装置110は、その2つ以上のセンサから受け取ったデータに基づいて危険な状態を検出するようになされている。一実施形態では、センサは、少なくともヨーイングおよび/または横方向の加速度を感知する慣性センサである。危険な状態が検出された場合、処理装置110は、取るべき適切な修正動作を計算する。修正動作には、それに限定はされないが、個々の車輪のブレーキ操作、スロットル制御、枢動制御またはステアリング制御が含まれる。注目すべきは、本説明ではジャックナイフ現象が取り上げられているが、本発明の実施形態は、ジャックナイフ現象の防止に限定されていないことが理解されるべきことである。特に、本発明の実施形態は、スリップ、横転など様々な潜在的に危険な事象の発生可能性を検出しそれを低減させるのに使用することができる。
【0011】
ジャックナイフ現象を検出し防止するためにシステム100の作動に使用される様々な処理タスク、計算、ならびに信号および他のデータの生成を行うための命令は、ソフトウェア、ファームウェア、または他のコンピュータ可読命令群中で実行することができる。これらの命令は、通常、コンピュータ可読命令またはデータ構造の記憶に使用される適切なコンピュータ可読媒体に記憶される。そのようなコンピュータ可読媒体は、汎用もしくは特殊目的のコンピュータもしくはプロセッサ、またはプログラム可能論理デバイスによってアクセスすることができればいかなる市販の媒体でもよい。
【0012】
適切なコンピュータ可読媒体には、たとえば、EPROM、EEPROM、またはフラッシュメモリ素子などの半導体記憶素子を含む不揮発性記憶装置や、内臓ハードディスクまたは取外し可能ディスク(たとえばフロッピーディスク)などの磁気ディスクや、光磁気ディスクや、CD、DVD、または他の光記憶ディスクや、不揮発性ROM、RAM、およびその他の同様な媒体が含まれ得る。前述のいずれもが、特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)によって補完され、またはそれに組み込まれる。情報が、回路網または別の通信接続機構(有線、無線、または有線と無線の組合せのいずれか)を通してコンピュータに伝達または提供されたとき、コンピュータは、当然、その接続機構をコンピュータ可読媒体と見做す。したがって、そのような接続機構はいずれも、当然、コンピュータ可読媒体と呼ばれる。上記のものの組合せもまた、コンピュータ可読媒体の範囲に含まれる。
【0013】
2つ以上のセンサが、バス122を介して処理装置110に接続される。この実施形態では、バス122は、Controller Area Network (CAN)バスインターフェースを用いて実装される。ただし、他の実施形態では、他のバスインターフェースを使用することができることを理解されたい。さらに、センサは、ツイストペア線、光ワイヤ、無線信号などの様々な媒体を介して処理装置110に接続することができる。
【0014】
処理装置110に接続された2個以上のセンサには、少なくとも牽引部センサ108および被牽引部センサ106が含まれる。牽引部センサ108は、連結式車両の牽引部分に配置されている。被牽引部センサ106は、連結式車両の被牽引部分に配置されている。別法として、他の実施形態では、牽引部センサ108および被牽引部センサ106の1つを、枢動軸周りの回転を測定する枢支点位置のセンサによって置き換えることができる。たとえば、そのような一実施形態では、被牽引部センサ106は被牽引部分に配置され、牽引部センサ108は枢動点に配置されたセンサによって置き換えられる。被牽引部センサの動きおよび枢動点位置での回転についての情報が、牽引部分の運動を計算するのに使用される。
【0015】
この実施形態では、牽引部センサ108および被牽引部センサ106はそれぞれ、ヨーイング軸(垂直軸とも呼ばれる)回りの回転を検出する少なくとも1つの回転センサを備える。詳細には、牽引部センサ108および被牽引部センサ106は、車両の牽引部分および被牽引部分それぞれのヨーイング回転速度を検出する。さらに、この実施形態では、牽引部センサ108および被牽引部センサ106のそれぞれは、横方向軸に沿った横方向移動を検出する少なくとも1つの直線運動センサを備える。ただし、牽引部センサ108および被牽引部センサ106は、1つの回転センサおよび1つの直線運動センサに限定されないことを理解されたい。たとえば、一部の実施形態では、牽引部センサ108および被牽引部センサ106のそれぞれは、ヨーイング、ピッチング、およびローリング速度を検出する3個の回転センサ、ならびに、対応する垂直、横方向、および長手方向直交軸に沿った直線運動を検出する3個の直線運動センサを備える。これらの追加センサは、ジャイロスコープおよび加速度計のような慣性センサとして実装することができ、あるいは、これら情報は、複数の全地球測位システム(GPS)受信機のような複数の相対センサから得ることができる。これらの追加センサの組合せによって、適切な修正制御を決定するのに用いられる道路の横傾斜、姿勢、および勾配などの道路状態に関するデータを得ることができる。
【0016】
牽引部センサ108および被牽引部センサ106に加えて、一部の実施形態はまた、それらに制限はされないが、ステアリングコラムセンサ112、推力センサ113、および/またはブレーキセンサ114などの操縦センサを備える。操縦センサは、車両の運転者によって行われている操縦の意図についてのデータを処理装置110に発信する。たとえば、ブレーキセンサ114は、運転者によって加えられたブレーキ操作力に関するデータを発信し、ステアリングコラムセンサ112は、運転者によって行われている転回操縦に関するデータを発信する。同様に、推力センサ113は、アクセルペダルなどに加えられた圧力などの推力制御に関するデータを発信する。したがって、処理装置110は、運転者によって行われた操作(たとえば、ステアリング、推力、ブレーキなど)に基づいて、運転者が望んでいる運動を特定することができる。
【0017】
一部の実施形態はまた、環境センサ120も含む。環境センサ120は、連結式車両の地域の環境および道路の状態に関するデータを処理装置110に発信する。環境センサ120には、全地球方位システム、道路地図データベース、積み荷重量センサ、および/または天候データを得るためのセンサなどが含まれ得る。これにより、環境センサ120は、処理装置110が、修正制御が必要な場合に適切な制御を行うための計算に、現在および将来の道路状態(たとえば、カーブ、濡れた舗装、風など)を取り込むことができるようにする。さらに、一部の実施形態は、1つまたは複数の車輪速度センサ121(たとえば、各車輪に1個の車輪速度センサ)を備える。車輪速度センサ121は車輪の回転を測定する。処理装置110は、この情報を車輪の様々な状態を決めるのに使用する。たとえば、この情報は、車輪がスリップしていないか、ブレーキが車輪速度を適切に減速しているかを判断し、また、連結式車両の速度を求めるのに使用され得る。システム100の動作が、図2Aおよび2Bに関して、より詳細に記載されている。
【0018】
図2Aは、電子防止システム100など、本発明の一実施形態による電子防止システムを採用した連結式車両201の側面図である。図2Bは、連結式車両201の上面図である。この実施形態では、連結式車両201は、牽引部分202が運転台であり、被牽引部204がトレーラであるトレーラトラックである。ただし、他の実施形態では、タンデムトレーラ、ボートや他のトレーラを牽引するトラック/SUVなどの他のタイプの連結式車両を用いることができることを理解されたい。被牽引部分204と牽引部分202は、枢支点234を介して互いに連結されている。牽引部分202および被牽引部分204のそれぞれは、垂直軸226aおよび226bそれぞれの周りに独立に回転(すなわちヨーイング回転)することができる。垂直軸226aおよび226bは、図2Bの紙面に出入りする向きである。同様に、横方向軸225aおよび225bは、図2Aの紙面に出入りする向きである。
【0019】
図2Aおよび2Bの電子防止システムの要素の位置は例示的であり、当分野の技術者が要素の適切な位置を決定することができることもまた理解されたい。たとえば、被牽引部センサ206は、この例では被牽引部分204の質量中心に配置されているが、被牽引部分204中のその位置は、他の実施形態では変えることができる。一例示的代替位置は、被牽引部分204の中心を通る中心線に沿った任意の位置である。特に、一部の実施形態では、被牽引部センサ206を様々な位置に実装するのに、レバーアーム補正を用いることができる。
【0020】
牽引部センサ208は牽引部分202中に配置され、被牽引部センサ206は被牽引部分204中に配置される。牽引部センサ208および被牽引部センサ206それぞれは、ヨーイング軸226aおよび226bそれぞれの周りの回転速度を検出する少なくとも1つの回転センサを備える。さらに、この実施形態では、牽引部センサ208および被牽引部センサ206それぞれは、横方向軸225aおよび225bそれぞれに沿う直線運動を検出する少なくとも1つの直線運動センサを備える。牽引部センサ208および被牽引部センサ206は、バス222を介して処理装置210へデータを発信する。さらに、一部の実施形態では、車輪速度センサ221などの追加センサが、車輪224の回転に関するデータをバス222を介して処理装置210へ発信する。詳細には、車輪速度センサ221は、各車輪の動き(たとえば制動、スリップなど)に関する個々のデータを発信し、それにより、たとえば、行われている修正制御の効果を評価することができる。
【0021】
さらに、推力センサ213、ブレーキセンサ214、およびステアリングコラムセンサ212のうちの1つまたは複数が、車両201の運転者の意図に関するデータをバス222を介して処理装置210へ発信する。詳細には、この実施形態では、推力センサ213が、運転者によってアクセルペダル219に加えられた圧力に関するデータを発信する。同様に、ブレーキセンサ214は、ブレーキ218に加えられた圧力に関するデータを発信し、ステアリングコラムセンサ212は、運転者がステアリングコラム216を用いて開始した操作に関するデータを発信する。推力センサ213、ブレーキセンサ214、およびステアリングコラムセンサ212は、例として挙げられ、限定的に挙げられたものではないことに留意されたい。詳しくは、他の実施形態では、他の操縦センサを使用することができる。処理装置210は、連結式車両201の運転者によって意図されている動きを決めるために、操縦センサによって送信されたデータを使用する。
【0022】
牽引部センサ208、被牽引部センサ206、車輪速度センサ221、および操縦センサ(たとえばステアリングコラムセンサ212)によって発信されたデータに基づいて、処理装置210は、運転者が意図した通りに連結式車両201が動いているか否かを判断する。たとえば、運転者が10度の転回を行うようにステアリングコラムを回した場合、処理装置210は、受信したデータを使用して、意図された動き(操縦センサのデータに基づく)と実際の動き(牽引部センサ208および被牽引部センサ206に基づく)を比較する。処理装置210は、実際の動きと意図された動きとの差が、潜在的に危険な状態を示すのか否かを判断する。潜在的に危険な状態を示す場合、処理装置210は、潜在的に危険な状態が実現する可能性を抑制する修正制御を計算し決定し、または適用する。たとえば、その差が、ジャックナイフ現象状態、車輪のスリップ、横転などの始まりを示す場合、処理装置210は、危険な状態を回避する修正制御を開始する。あるいは、処理装置210は、修正制御を開始するのに加えて、またはその代わりに運転者に警告(たとえば視覚、聴覚または物理的合図)を発することができる。たとえば、一実施形態では、修正処置が取られているとき、ステアリングコラム216が振動する。
【0023】
いつ、いかなる修正制御を開始すべきかにやはり影響する他のデータには、それらに限定されないが、被牽引部分204および牽引部分202の重量、道路状態(たとえば横傾斜、姿勢、勾配、濡れ、乾燥など)、連結式車両201の直進速度、および車輪224の寸法が含まれる。したがって、一部の実施形態では、1つまたは複数の環境センサ220が使用される。環境センサ220は、道路状態、天候状態、被牽引部分204中の貨物の重量などに関するデータを発信する。上記の通り、環境センサ220には、それらに限定はされないが、全地球方位センサ、道路地図データベース、積み荷重量センサ、および/または天候データを得るためのセンサなどが含まれ得る。
【0024】
例示的修正制御には、それらに限定はされないが、個々の車輪224に選択的にブレーキを掛けること、連結式車両201の速度を減少させること、ステアリングコラム216を調節すること、枢支点234位置で枢動を制動することなどが含まれる。適切な検出および修正処置は、経験および解析的考察を介して決定され、対象の連結式車両、道路状態、天候状態などに基づいて変化する。
【0025】
前述のように、本発明の実施形態は、ジャックナイフ現象状態などの危険な状態の発生を検出し、運転者にその状態を警告しかつ/またはその状態を防止する修正制御を開始することができる。さらに、いつ、いかなる修正制御を開始すべきかを、連結式車両201の使用法または他の条件に基づいてプログラムすることができる。たとえば、連結式車両201が核物質を運搬している場合、処理装置210は、連結式車両201が家畜など危険性のより少ない物資を運搬している場合よりも、修正制御を早く開始し運転者に多くの制限を設ける(たとえば速度制限を強化する)ようにプログラムすることができる。したがって、本発明の実施形態による電子防止システムを介して、新たな安全性が連結式車両に提供される。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態により、連結式車両に電子防止機構を形成する方法300を示すフローチャートである。302で、データが、処理装置(たとえば図2の処理装置210)によって、連結式車両の牽引部分に配置された牽引部センサ(たとえば図2の連結式車両201の牽引部分202の牽引部センサ208)から受信される。牽引部センサは、垂直軸(たとえば垂直軸226a)周りの牽引部分のヨーイング回転速度を検出する少なくとも1つの回転センサ、および横方向軸(たとえば横方向軸225a)に沿う牽引部分の横方向運動を検出する少なくとも1つの直線加速度計を備える。
【0027】
304で、データが、処理装置によって、連結式車両の被牽引部分に配置された被牽引部センサ(たとえば図2の連結式車両201の被牽引部分204の被牽引部センサ206)から受信される。被牽引部センサは、垂直軸(たとえば垂直軸226b)周りの被牽引部分のヨーイング回転速度を検出する少なくとも1つの回転センサ、および横方向軸(たとえば横方向軸225b)に沿う被牽引部分の横方向運動を検出する少なくとも1つの直線加速度計を備える。
【0028】
306で、データが、1つまたは複数の操縦センサ(たとえばステアリングコラムセンサ212)から受信される。1つまたは複数の操縦センサは、上記のように、車両の運転者の意図に関するデータを発信する。牽引部センサ、被牽引部センサ、および1つまたは複数の操縦センサからのデータは、この実施形態では同期して受信される。しかし、別の実施形態では、データは非同期的に受信される。308で、データが、1つまたは複数の環境センサ(たとえば環境センサ220)から任意選択的に受信される。上記の通り、環境センサは、連結式車両の地域の環境および道路の状態に関するデータを発信する。310で、データが、上記の通り車両の車輪の運動に関するデータを発信する1つまたは複数の車輪速度センサ(たとえば車輪速度センサ221)から任意選択的に受信される。
【0029】
312で、処理装置(たとえば処理装置210)が、受信したデータを解析して、修正制御を開始する必要があるか、またどの修正制御を開始すべきかを判断する。この実施形態では、処理装置は、受信したデータの関数として、いつ、どの修正制御を開始すべきかを決定する。たとえば、処理装置210は、牽引部ヨーイング速度、被牽引部ヨーイング速度、牽引部横方向加速度、被牽引部横方向加速度、道路状態、貨物のタイプ、天候状態などに基づいて修正制御を決定するために複合的なマトリクスを使用する。修正制御を決定する別の方法が、図4および5に関して以下に説明される。314で、修正制御が開始される。修正制御の開始には、一部の実施形態では、視覚、聴覚、または物理的合図を介して運転者に警告することが含まれる。さらに、この実施形態では、修正制御は処理装置によって自動的に開始される。しかし、他の実施形態では、修正制御は、運転者が警告された後に開始することができる。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態による、開始すべき修正制御を決定する方法400を示すフローチャートである。402で、実際の牽引部ヨーイング速度と意図された牽引部ヨーイング速度との差が第1の閾値と比較される。この比較により、牽引部ヨーイング速度が運転者の意図に一致しているか否かを、ある程度の相違を許容しながら判断する。404で、実際の被牽引部ヨーイング速度と意図された被牽引部ヨーイング速度との差が第2の閾値と比較される。この比較により、被牽引部のヨーイング速度が運転者の意図に一致しているか否かを、ある程度の相違を許容しながらやはり判断する。
【0031】
406で、牽引部ヨーイング速度と被牽引部ヨーイング速度との差が第3の閾値と比較される。この比較により、牽引部および被牽引部の動きの差が危険な状態に近付いているか否かを判断する。408で、修正制御が必要か否かが、それら比較の結果に基づいて判断され、また、どの修正制御が用いられるべきかが、計算された3つの差(すなわち、意図された牽引部ヨーイング速度対実際の牽引部ヨーイング速度、意図された被牽引部ヨーイング速度対実際の被牽引部ヨーイング速度、および実際の牽引部ヨーイング速度対実際の被牽引部ヨーイング速度)に基づいて割り出される。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態による、開始すべき修正制御を決定する方法500を示すフローチャートである。502で、牽引部分の状態が求められる。牽引部分の状態は、牽引部ヨーイング速度、牽引部横方向加速度、および意図された牽引部の動きの関数である。504で、被牽引部分の状態が求められる。被牽引部分の状態は、被牽引部ヨーイング速度、被牽引部横方向加速度、および意図された被牽引部の動きの関数である。さらに、一部の実施形態では、牽引部分の状態はまた、車輪速度センサ(たとえば車輪速度センサ221)からのデータの関数でもある。506で、牽引部分と被牽引部分との運動の差の状態が求められる。差の状態は、牽引部ヨーイング速度、被牽引部ヨーイング速度、牽引部横方向加速度、および被牽引部横方向加速度の関数として計算される。さらに、一部の実施形態では、被牽引部分の状態はまた、車輪速度センサからのデータの関数でもある。508で、いつ、いかなる修正制御が開始されるべきが、計算された牽引部の状態、被牽引部の状態、差の状態に基づいて決定される。修正制御には、それらに限定はされないが、個々の車輪のブレーキ操作、ステアリングの制限、枢動制御、または運転者への通知が含まれる。
【0033】
本明細書では特定の実施形態が例示され説明されてきたが、同じ目的を達成するように適合されているいかなる機構も、ここに示された特定の実施形態と置き換えることができることは当業者には理解されよう。この出願は、本発明のいかなる改造形態または変形形態をも包含するものである。したがって、この発明は、明らかに、特許請求の範囲およびその均等物のみによって限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態による電子防止システムのブロック図である。
【図2A】本発明の一実施形態による電子防止システムを採用した連結式車両の側面図である。
【図2B】本発明の一実施形態による電子防止システムを採用した連結式車両の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態による、連結式車両に電子防止機構を形成する方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による、開始すべき修正制御を決定する方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の別の実施形態による、開始すべき修正制御を決定する方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヨーイング軸周りの牽引部分のヨーイング回転速度を検出するように構成された牽引部センサ(108)と、
第2のヨーイング軸周りの被牽引部分のヨーイング回転速度を検出するように構成された被牽引部センサ(106)と、
前記牽引部センサ(108)および前記被牽引部センサ(106)に接続された処理装置(110)と
を備える連結式車両用電子防止システム(100)であって、
前記処理装置(110)が、前記牽引部センサ(108)および前記被牽引部センサ(106)から受信したデータに少なくとも部分的に基づいて、いつ修正制御を開始するかを決定するように構成されている、電子防止システム(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の電子防止システム(100)であって、
前記連結式車両の運転者によって行われた操作を検出するように構成された1つまたは複数の操縦センサ(112、113、114)をさらに備え、前記処理装置(110)が、前記牽引部センサ(108)、前記被牽引部センサ(106)、および前記1つまたは複数の操縦センサ(112、113、114)から受信したデータに少なくとも部分的に基づいて、いつ修正制御を開始するかを決定するように構成されている、電子防止システム(100)。
【請求項3】
請求項2に記載の電子防止システム(100)であって、
前記処理装置(110)が、前記1つまたは複数の操縦センサ(112、113、114)からのデータに基づいて運転者の意図を判断し、前記牽引部センサ(108)および前記被牽引部センサ(106)からのデータに基づいて前記牽引部分および前記被牽引部分の実際の動きを求め、前記運転者の意図と前記牽引部分および前記被牽引部分の前記実際の動きとの比較に基づいて、いつ修正制御を開始すべきかを決定する、電子防止システム(100)。
【請求項4】
請求項1に記載の電子防止システム(100)であって、
前記処理装置(110)に接続され、前記連結式車両の周囲の環境状態に関するデータを収集するように構成された環境センサ(120)をさらに備え、前記処理装置(110)が、いつ修正制御を開始すべきか判断するために前記環境センサ(120)からのデータを使用する、電子防止システム(100)。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−273504(P2008−273504A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−40834(P2008−40834)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】