説明

連続式焼鈍炉

【課題】炉内の雰囲気ガスを炉外に導いて雰囲気ガス中に発生するホワイトパウダーを炉外で除去でき、加熱室の前段の前室内面へのホワイトパウダーの付着を防止することのできる金属ストリップの光輝焼鈍用の連続式焼鈍炉を提供する。
【解決手段】装入口12から搬出口14にかけて水冷ジャケット付きの前室15、加熱室16及び冷却室18を有し、装入口12から装入した金属ストリップを炉内の還元性の雰囲気ガスの下で連続的に光輝焼鈍処理する連続式焼鈍炉10において雰囲気ガスの一部を加熱室16の出側と前室15の入側とから炉内に供給し、炉内において加熱室16を入側へと向うガス流れと、前室15内を加熱室16側へと向うガス流れとを生ぜしめる。加熱室16の入側から炉内の雰囲気ガスを炉外に取り出して再び炉内に戻す循環配管30を設け且つ循環配管30に雰囲気ガス中のホワイトパウダーを除去するための水冷ジャケット付チャンバ32とサイクロン34及びフィルタ70を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステンレス鋼等の金属ストリップを還元性の雰囲気ガスの下で連続的に光輝焼鈍する連続式焼鈍炉に関し、特に炉内で発生するホワイトパウダーを除去する機能を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼等の金属ストリップを炉の装入口から炉内に装入し、そして内部搬送路に沿って配置された加熱室,冷却室を通過させることにより水素ガスと窒素ガスとを含んだ還元性雰囲気ガスの下で金属ストリップを焼鈍前の金属光沢を保ったまま焼鈍する光輝連続焼鈍では、雰囲気ガス中にホワイトパウダーと称される微小な粉塵が発生してこれが焼鈍処理に際し悪影響を及ぼすことが従来から問題視されている。
【0003】
金属ストリップが加熱帯を通過するときに、加熱によって金属ストリップからマンガンがガスとなって雰囲気ガス中に抜け出ることがあり、このようなマンガンガス或いは金属ストリップから発生したその他の成分、更には炉外から炉内に持ち込まれた油脂類その他成分がガスとなって雰囲気ガス中に入り込み、そしてそれが冷却により固化して微小な粒子となることで上記のホワイトパウダーが発生するものと考えられている。
【0004】
光輝焼鈍のための連続式焼鈍炉として、加熱室の前段(装入口側)に水冷ジャケット付きの前室を備えたものがあり、特にこの形式の焼鈍炉では、その前室にホワイトパウダーが多く付着堆積することが大きな問題となっていた。
【0005】
この形式の連続式焼鈍炉では、炉外から炉内に供給された還元性の雰囲気ガス(フレッシュガス)が、加熱室を出側から入側へと流れた後装入口から炉外に排出され、このとき加熱室内の高温の雰囲気ガスがそのまま装入口を通過すると、装入口に設けてあるシール装置が焼損してしまうことから、加熱室の前段に水冷ジャケット付きの前室を設け、加熱室から流れて来た高温のガスを、これよりも低温の前室内部で冷却した後、装入口のシール装置を通過させるようになしている。
【0006】
ところがこの前室は上記のように内部の温度が低いことから、加熱室より前室に流れて来た高温の雰囲気ガス中のホワイトパウダーが冷却による固化及び凝集によってこの前室の内面に付着及び成長して次第に堆積して行く。
【0007】
そしてあるときに天井部に堆積していたホワイトパウダーの塊が落下して、その下方を走行する金属ストリップの表面に斑点状に付着し、そしてその状態で金属ストリップが加熱室,冷却室を通過して熱処理されることで、金属ストリップに所謂焼むらを生ぜしめてしまい、このことが金属ストリップの焼鈍品質の低下或いは品質欠陥をもたらしてしまう。
【0008】
そこで従来にあっては、例えば月に1回程度炉の操業を停止して、内面に付着堆積したホワイトパウダーを除去し清掃することを行っているが、一旦炉の操業を停止すると、再び炉の操業を再開するまでに前後10日程を費やしてしまう。
そのために焼鈍炉の稼働率が低下し、生産性を悪化させるとともに処理コストを高めてしまう。
【0009】
ホワイトパウダーの問題は上記のように従来から指摘されているところのものであり、そこで従来この問題の解決を狙いとしたものが幾つか提案されている。
例えば下記特許文献1には「連続焼鈍炉におけるホワイトパウダー除去装置」についての発明が示され、そこにおいて加熱帯に続く徐冷帯の下部から、内部の雰囲気ガスを取り出してフィルタに通し、そこで雰囲気ガスに含まれているホワイトパウダーを除去した上で、フィルタを通過した雰囲気ガスを徐冷帯の上部へと戻すようになした点が開示されている。
【0010】
また下記特許文献2には「光輝連続ガス熱処理炉」についての発明が示され、そこにおいて冷却帯から雰囲気ガスを抜き出してフィルタを通過させることで粉塵を除去し、その後冷却器で冷却して雰囲気ガスを冷却帯へと戻すようになした点が開示されている。
【0011】
更に下記特許文献3には「光輝焼鈍炉におけるホワイトパウダーの削減方法」についての発明が示され、そこにおいて冷却帯の入側で炉内の雰囲気ガスを取り出して熱交換機で冷却し、直ちにフィルタを通過させることでガス中のホワイトパウダーを吸着除去し、その後冷却帯へと戻すようになした点が開示されている。
【0012】
しかしながらこのようなフィルタ通過によるホワイトパウダーの除去処理では、ホワイトパウダーによってフィルタに目詰まりが生じる問題があり、そのためにフィルタを定期的に交換しなければならず、そのためのメンテナンスが面倒な作業となり、メンテナンスコストも高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−247787号公報
【特許文献2】特開平8−109412号公報
【特許文献3】特開平10−72624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上のような事情を背景とし、炉内の雰囲気ガスを炉外に導いて雰囲気ガス中に発生するホワイトパウダーを炉外で除去でき、加熱室の前段の前室内面へのホワイトパウダーの付着を防止することのできる金属ストリップの光輝焼鈍用の連続式焼鈍炉を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
而して請求項1のものは、装入口から搬出口に到る内部搬送路に沿って配置された水冷ジャケット付きの前室、加熱室及び冷却室を有し、前記装入口から装入した金属ストリップを前記加熱室よりも低温度の前記前室を通過させた後該加熱室へと送って加熱し、続いて前記冷却室を通過させることによって水素ガスと窒素ガスとを含んだ炉内の還元性の雰囲気ガスの下で前記金属ストリップを連続的に光輝焼鈍処理する連続式焼鈍炉であって、還元性の雰囲気ガスの一部を前記加熱室の出側から炉内に供給し、該炉内において該加熱室を入側へと向うガス流れと、前記冷却室を前記搬出口の側へと向うガス流れとを生ぜしめるとともに、前記雰囲気ガスの他の一部を前記前室の入側から炉内に供給して、該前室内を前記加熱室側へと向うガス流れを生ぜしめるようになしてあり、更に前記加熱室の入側から炉内の雰囲気ガスを炉外に取り出した上、再び炉内に戻す雰囲気ガスの循環配管が設けてあって、該循環配管上に雰囲気ガス中のホワイトパウダーを除去するホワイトパウダー除去装置が設けてあることを特徴とする。
【0016】
請求項2のものは、請求項1において、前記ホワイトパウダー除去装置は、前記循環配管の上流側の、配管流路面積に比べて内部流路面積の大きな水冷ジャケット付チャンバと、下流側のサイクロンとを備えており、炉内から取り出した雰囲気ガスを該水冷ジャケット付チャンバ内で冷却して雰囲気ガス中のホワイトパウダーを凝集及び成長させるとともに、前記下流側のサイクロンで、気流搬送されて来たホワイトパウダーを遠心分離し捕集するものとなしてあることを特徴とする。
【0017】
請求項3のものは、請求項2において、前記循環配管における前記炉内からの雰囲気ガスの取出口と前記水冷ジャケット付チャンバとの間の部分には保温材が外装してあることを特徴とする。
【0018】
請求項4のものは、請求項2〜3の何れかにおいて、前記循環配管には前記サイクロンの下流側に、該サイクロンを通過した粒径の小さなホワイトパウダーを捕集し除去するフィルタが設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0019】
以上のように本発明は、還元性の雰囲気ガスの一部を加熱室の出側から炉内に供給し、炉内において加熱室を入側へと向うガス流れと冷却室を搬出口の側へと向うガス流れとを生ぜしめるとともに、雰囲気ガスの他の一部を前室の入側から炉内に供給して前室内を加熱室側へと向うガス流れを生ぜしめるようになし、そして加熱室の入側から炉内の雰囲気ガスを炉外に取り出した上、ホワイトパウダー除去装置によりホワイトパウダーを除去した上で循環配管を通じて炉内に戻すようになしたものである。
本発明では、前室内のガス流れを前室の入側から出側へと向う流れとすることで、加熱室内の高温の雰囲気ガスが前室内に流入し、前室の入側に向って流れるのを防止する。
【0020】
このことによって、加熱室内の高温の雰囲気ガスが前室内を出側から入側に向って流れることで、高温の雰囲気ガスが前室で冷却され、雰囲気ガス中のホワイトパウダーが前室の内面に付着堆積する問題を良好に解決することができる。
またそのことによって、前室内に付着堆積したホワイトパウダーの塊がその下方を走行する金属ストリップ上に落下して焼むらを生ぜしめる問題を解決することができる。
【0021】
本発明ではまた、加熱室の内部を、その出側から入側へと流れる高温の雰囲気ガスを加熱室の入側から炉外に取り出し、循環配管を流通させて炉内に戻すようになしてあり、そしてその循環配管上にホワイトパウダー除去装置を設けて、炉外に取り出した雰囲気ガス中のホワイトパウダーを除去するようになしていることから、循環配管を通じて炉内に戻される雰囲気ガスを清浄なガスとして炉内に戻すことができる。
【0022】
またこのように加熱室の入側で雰囲気ガスを外部に取り出すようにすることで、炉内において加熱室を出側から入側に向うガス流れと、前室内をその入側から出側へと向うガス流れを良好に生ぜしめることができる。
【0023】
本発明では、上記ホワイトパウダー除去装置を、循環配管の上流側の、配管流路面積に比べて内部流路面積の大きな水冷ジャケット付チャンバと、下流側のサイクロンとを備えて構成し、炉内から取り出した雰囲気ガスを、先ず水冷ジャケット付チャンバ内で冷却して、雰囲気ガス中のホワイトパウダーを凝集及び成長させ、更に下流側のサイクロンで、気流搬送されて来たホワイトパウダーを遠心分離し捕集するものとなしておくことができる(請求項2)。
【0024】
この請求項2のホワイトパウダー除去装置では、加熱室の入側から取り出された高温の雰囲気ガスが、先ず水冷ジャケット付チャンバ内に導入される。
この水冷ジャケット付チャンバは内部流路面積が配管の流路面積に比べて大きいため、配管を通じて水冷ジャケット付チャンバ内に導入された雰囲気ガスは、そこで急激に流れの勢いが減殺されてチャンバ内に拡散する。
【0025】
またこのチャンバは水冷により冷却状態にあるため、加熱室入側から取り出された高温の雰囲気ガスがそこに導かれることで、チャンバ内での冷却と流速の低下及び拡散とによって、雰囲気ガス中のホワイトパウダーが効果的にそこで凝集及び成長せしめられる。
【0026】
通常、この凝集及び成長したホワイトパウダーは水冷ジャケット付チャンバの内壁に付着堆積する。
そしてこのように凝集及び成長したホワイトパウダーが、内壁からの剥離及び自重落下を伴って下流側のサイクロンへと気流搬送される。
サイクロンに気流搬送されて来たホワイトパウダーは、そこで遠心分離されて捕集される。
捕集したホワイトパウダーは下方のタンク等に落とすなどして循環配管の系外に排出することができる。
【0027】
このサイクロンによるホワイトパウダーの遠心分離では、ホワイトパウダーが大きな粒ないし塊であるほど分離効率が高い。
そこで本発明では、先ず高温状態の雰囲気ガスを水冷ジャケット付チャンバ内に導入して、ホワイトパウダーを凝集及び成長させ、そして水冷ジャケット付チャンバから気流搬送されて来たホワイトパウダーを、サイクロンで遠心分離し捕集するようになしている。
これにより効率高く雰囲気ガス中のホワイトパウダーを分離し捕集することができる。
【0028】
尚、水冷ジャケット付チャンバを通過する際に、雰囲気ガス中に、水冷ジャケット付チャンバの内壁に付着しないままこれを通過する比較的粒の大きなもの(例えば1μm以上のもの)が含まれることもあり、このようなものも、下流側のサイクロンに到ったところで、サイクロンによりこれを捕集することができる。
【0029】
また水冷ジャケット付チャンバの内壁に凝集及び成長して付着堆積したホワイトパウダーは、必ずしもその全てを下流側のサイクロンで捕集しなければならないものではなく、水冷ジャケット付チャンバの内壁に堆積状態で残ったホワイトパウダーを、直接チャンバ内壁から適宜の手段によって除去するといったことも可能である。
【0030】
上記のサイクロンは、遠心分離によって雰囲気ガス中からホワイトパウダーを除去するものであり、フィルタを使ったホワイトパウダーの除去のようにフィルタが目詰まりを生じたり、その目詰まりによってフィルタを頻繁且つ定期的に交換したりするといった問題が無く、メンテナンス作業が特に面倒となったり、メンテナンスコストが高くなったりする問題を生じない。
【0031】
この場合において、配管における炉内からの雰囲気ガスの取出口と水冷ジャケット付チャンバとの間の部分には保温材を外装しておくのが良い(請求項3)。
このようにすることで、炉内から取り出した雰囲気ガスが途中の配管内での冷却により配管の内壁にホワイトパウダーが付着してしまうのを防止しつつ、水冷ジャケット付チャンバ内に雰囲気ガスを導入することができる。
【0032】
本発明ではまた、循環配管且つ上記のサイクロンの下流側に、サイクロンを通過した粒径の小さなホワイトパウダーを捕集し除去するフィルタを設けておくことができる(請求項4)。
【0033】
下流側にこのようなホワイトパウダー除去用のフィルタを設けておくことで、水冷ジャケット付チャンバ及びサイクロンにて取り除かれなかった微細なホワイトパウダーをフィルタにて除去することが可能となる。
【0034】
この場合、雰囲気ガス中に含まれているホワイトパウダーの多くが既に水冷ジャケット付チャンバ及びサイクロンにて除去されているため、フィルタへのホワイトパウダーの付着量は僅かであり、フィルタを交換するとしても頻繁な交換は必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態の連続式焼鈍炉の全体構成図である。
【図2】同実施形態の連続式焼鈍炉の要部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はステンレス鋼等の金属ストリップを光輝焼鈍する本実施形態の連続式焼鈍炉(以下単に焼鈍炉とする)で、処理対象としての金属ストリップを装入する装入口12と、搬出口14及びそれらの間において水冷ジャケット付きの前室15,加熱室16,冷却室18を、装入口12から搬出口14に向う内部搬送路に沿って備えている。
【0037】
この焼鈍炉10は、金属ストリップを前室15,加熱室16,冷却室18を通過させることによって、水素ガスと窒素ガスとから成る炉内の還元性の雰囲気ガスの下で連続的に光輝焼鈍処理する。
【0038】
上記前室15は加熱室16の前段の室であって、この前室15の内部は水冷によって加熱室16よりも内部温度が低温度である。
尚26は冷却室18の後段の後室である。
【0039】
28は、水素ガスと窒素ガスとから成る雰囲気ガス(フレッシュガス)を炉内に供給する供給配管で、雰囲気ガスはその一部が供給配管28を通じて加熱室16の出側(ここでは具体的には冷却室18の加熱室16側の部位)から炉内に供給される。
尚冷却室18への雰囲気ガスの供給を、冷却室18の複数個所に分散して供給するようになしても良い。
【0040】
炉内に供給された雰囲気ガス(フレッシュガス)は、炉内において図中右向き即ち加熱室16を入側へと向うガス流れと、図中左向き即ち冷却室18を搬出口14の側へと向うガス流れとを生ぜしめる。
【0041】
ここでは供給配管28を通じての冷却室18への雰囲気ガスの供給量Q=15mN/hとしたとき、後述の循環配管30から炉内に戻される雰囲気ガスの流量Q=50mN/hの下で、加熱室16内部を流量Q=30mN/hで図中右向きに流れるガス流れを生じる。
また冷却室18を流量Q=35mN/hで図中左向きに流れるガス流れを生じる。
尚、搬出口14から外部に排出される雰囲気ガスの流量Qもまた35mN/hである。
【0042】
この実施形態ではまた、雰囲気ガス(フレッシュガス)が供給配管28を通じて前室15の入側からも炉内に供給される。
前室15の入側において炉内に供給された雰囲気ガスは、その一部が前室15を図中左向き即ち加熱室16に向って流れ、また他の残りの一部が装入口12に向って図中右向きに流れる。
【0043】
例えば前室15の入側への雰囲気ガスの流量Q=30mN/hとしたとき、供給された雰囲気ガスの一部は流量Q=20mN/hで図中左向きに流れ、また流量Q=10mN/hで図中右向きに流れて炉外へと排出される。
尚、前室15への入側への供給路上には流量計66とバルブ68とが設けられており、バルブ68の開度を変化させることで、前室15の入側への雰囲気ガスの供給量を調節できるようになしてある。流量計66は、その際の流量を検出する。
【0044】
この実施形態では、加熱室16の入側から炉内の雰囲気ガスを炉外に取り出した上、加熱室16の出側、具体的にはここでは冷却室18の加熱室16側の部位に戻す、雰囲気ガスの循環配管30が設けられている。
尚この場合においても、冷却室18の複数個所に分散して雰囲気ガスを戻すようにしても良い。
そしてこの循環配管30上に、ホワイトパウダー除去装置が設けられている。
【0045】
この実施形態では、炉内の雰囲気ガスが例えばQ=50mN/hで炉外へと取り出され、外部循環した上で再び流量Q=50mN/hで炉内へと戻される。
そして供給配管28及び循環配管30を通じて炉内に供給され、また戻された雰囲気ガス65mN/hのうちQ=30mN/hが右向きのガス流れとなり、またQ=35mN/hが左向きのガス流れとなる。
この実施形態において、上記のホワイトパウダー除去装置は、循環配管30の上流側の一対の水冷ジャケット付チャンバ32と、下流側のサイクロン34及びサイクロン34の更に下流側のフィルタ70を含んで構成されている。
【0046】
図2に一対の水冷ジャケット付チャンバ32と、その周辺部の構成が具体的に示してある。
図において36は炉殻、38はその内側の断熱材、40はその内部を雰囲気ガスが流通し、また処理対象としての金属ストリップが通過する円筒状のマッフルで、このマッフル40と断熱材38との間に加熱空間42が形成されている。
加熱空間42には、図示を省略するバーナ等の加熱源が配設されており、マッフル40はこの加熱室を介して加熱される。
そしてマッフル40内部の金属ストリップが、マッフル40を介し間接的に加熱される。
【0047】
43は、マッフル40内を通過する金属ストリップを支持するローラで、44はそのローラ43をマッフル40内に挿入させる筒状の挿入スリーブである。
挿入スリーブ44は、内部がマッフル40の内部空間と連通した空間となっており、そして図1中最も右端即ち最も入側に位置するローラ43の位置において、挿入スリーブ44に上記の循環配管30の一端側、即ち循環配管30の取出管30A(図1)の一端側が接続されている。
【0048】
この取出管30Aは一対の分岐管46に分かれており、そして一方の分岐管46が、ローラ43の一端側の挿入スリーブ44に、また他方の分岐管46が、ローラ43の他端側の挿入スリーブ44にそれぞれ接続されている。
【0049】
各分岐管46には上記の水冷ジャケット付チャンバ32がそれぞれ設けられている。
尚、これら水冷ジャケット付チャンバ32と分岐管46の一端側の接続口、即ち循環配管30における炉内雰囲気ガスの取出口との間の部分には保温材48が外装されている。
【0050】
一対の水冷ジャケット付チャンバ32は、配管流路面積に比べてチャンバの内部流路面積が大きなものであり、その外壁に沿って水冷ジャケット50が設けられ、チャンバ内部がその水冷ジャケット50によって冷却されるようになっている。
【0051】
この水冷ジャケット付チャンバ32の内部には、配管即ち分岐管46の接続口近傍位置に、分岐管46からチャンバ内に流入した雰囲気ガスの流れをチャンバ内壁に沿った方向の流れとする方向切換板52が設けられている。
【0052】
この実施形態では、加熱室16の入側から循環配管30を通じて炉外に取り出された高温の雰囲気ガスは、先ずこれら一対の水冷ジャケット付チャンバ32内に導入される。
このとき炉外に取り出された高温の雰囲気ガスは、水冷ジャケット付チャンバ32に到るまでの間は分岐管46に外装された保温材48による保温作用で冷却抑制され、そして水冷ジャケット付チャンバ32に導入されたところで、そこで急速冷却される。
【0053】
またこのとき同時に、水冷ジャケット付チャンバ32内に流入した雰囲気ガスは、そこで急激に流れの勢いが弱められるとともにチャンバ内に拡散し、冷却を受けながら緩やかに図2中下向きに流れて行く。
そしてこれら流れの減速作用及び冷却作用によって、雰囲気ガス中に含まれていたホワイトパウダーが水冷ジャケット付チャンバ32の内壁に凝集及び成長し、更に内壁へと堆積して行く。
【0054】
これら水冷ジャケット付チャンバ32を通過した雰囲気ガスは、その後下流側のサイクロン34へと導入される。
水冷ジャケット付チャンバ32の内壁に付着堆積したホワイトパウダーは、その一部が内壁から気流の作用或いは重力作用によって剥れることで、気流に乗って下流側のサイクロン34へと搬送され、そこに導入される。
サイクロン34に導入されたホワイトパウダーは、サイクロン34による遠心分離によって雰囲気ガスと分離され、下方のタンク54に向けて配管56を通じ系外に排出される。
尚この配管56上にはバルブ58が設けられている。
【0055】
サイクロン34で遠心分離作用を受けた雰囲気ガスは、続いてサイクロン34の下流側において循環配管30に設けられたホワイトパウダー除去用のフィルタ70を通過し、そこでサイクロン34では取り除かれなかった即ちサイクロン34を通過した粒径の小さなホワイトパウダーが濾過により除去される。
そしてこのフィルタ70を通過した雰囲気ガスが、更に下流側のリファイニング装置60へと送られる。
このリファイニング装置60には脱酸装置及び除湿装置が内蔵されており、リファイニング装置60に導入された雰囲気ガスの酸素濃度が低下せしめられ、また除湿により露点が低下せしめられた上で、雰囲気ガスが続いて循環配管30の戻し管30Bを通じて再び炉内へと戻される。詳しくは加熱室16の出側(具体的には冷却室18)へと戻される。
【0056】
以上のように本実施形態では、前室15内のガス流れを前室15の入側から出側へと向う流れとすることで、加熱室16内の高温の雰囲気ガスが前室15内に流入し、前室15の入側に向って流れるのを防止する。
このことによって、加熱室16内の高温の雰囲気ガスが前室15内を出側から入側に向って流れることで、高温の雰囲気ガスが前室15で冷却され、雰囲気ガス中のホワイトパウダーが前室15の内面に付着堆積する問題を解決することができる。
そしてそのことによって、前室15内に付着堆積したホワイトパウダーの塊がその下方を走行する金属ストリップ上に落下して焼むらを生ぜしめる問題を解決することができる。
【0057】
本実施形態ではまた、加熱室16の内部を、その出側から入側へと流れる高温の雰囲気ガスを加熱室16の入側から炉外に取り出し、循環配管30を流通させて炉内に戻すようになしてあり、これにより炉内において加熱室16を出側から入側に向うガス流れと、前室15内をその入側から出側へと向うガス流れを良好に生ぜしめることができる。
【0058】
また本実施形態では、循環配管30の上流側の水冷ジャケット付チャンバ32と、下流側のサイクロン34及びリファイニング装置60の入側のフィルタ70とでホワイトパウダー除去装置を構成し、炉内から取り出した雰囲気ガスを、先ず水冷ジャケット付チャンバ内32で冷却して、雰囲気ガス中のホワイトパウダーを凝集及び成長させ、更に下流側のサイクロン34で、気流搬送されて来たホワイトパウダーを遠心分離し捕集し、更にサイクロン34を通過した微細なホワイトパウダーをフィルタ70で捕集するものとなしてあることから、効率高く雰囲気ガス中のホワイトパウダーを分離し捕集することができる。
【0059】
またサイクロン34は、遠心分離によって雰囲気ガス中からホワイトパウダーを除去するものであり、フィルタを使ったホワイトパウダーの除去のようにフィルタが目詰まりを生じたり、その目詰まりによってフィルタを頻繁且つ定期的に交換したりするといった問題が無く、メンテナンス作業が特に面倒となったり、メンテナンスコストが高くなったりする問題を生じない。
【0060】
本実施形態ではまた、循環配管30且つ上記のサイクロン34の下流側に、サイクロン34を通過したホワイトパウダーを捕集するフィルタ70及び脱酸装置と除湿装置とを内蔵したリファイニング装置60が設けてあることによって、炉外に取り出した雰囲気ガス中の酸素濃度を低下させ、露点を低下させた状態で炉内へと戻すことができる。
【0061】
また下流側にこのようなフィルタ70を設けておくことで、水冷ジャケット付チャンバ32及びサイクロン34にて除き切れなかった微細なホワイトパウダーをフィルタ70の濾過作用にて除去することが可能となる。
【0062】
この場合、雰囲気ガス中に含まれているホワイトパウダーの多くが既に水冷ジャケット付チャンバ32及びサイクロン34にて除去されているため、フィルタ70へのホワイトパウダーの付着量は僅かであり、フィルタ70を交換するとしても頻繁な交換は必要としない。
【0063】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示であり、本発明は上記とは異なった様々な構造で構成されている連続式焼鈍炉に対しても適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 連続式焼鈍炉
12 装入口
14 搬出口
15 前室
16 加熱室
18 冷却室
30 循環配管
32 水冷ジャケット付チャンバ
34 サイクロン
48 保温材
70 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装入口から搬出口に到る内部搬送路に沿って配置された水冷ジャケット付きの前室、加熱室及び冷却室を有し、前記装入口から装入した金属ストリップを前記加熱室よりも低温度の前記前室を通過させた後該加熱室へと送って加熱し、続いて前記冷却室を通過させることによって水素ガスと窒素ガスとを含んだ炉内の還元性の雰囲気ガスの下で前記金属ストリップを連続的に光輝焼鈍処理する連続式焼鈍炉であって、
還元性の雰囲気ガスの一部を前記加熱室の出側から炉内に供給し、該炉内において該加熱室を入側へと向うガス流れと、前記冷却室を前記搬出口の側へと向うガス流れとを生ぜしめるとともに、前記雰囲気ガスの他の一部を前記前室の入側から炉内に供給して、該前室内を前記加熱室側へと向うガス流れを生ぜしめるようになしてあり、
更に前記加熱室の入側から炉内の雰囲気ガスを炉外に取り出した上、再び炉内に戻す雰囲気ガスの循環配管が設けてあって、該循環配管上に雰囲気ガス中のホワイトパウダーを除去するホワイトパウダー除去装置が設けてあることを特徴とする連続式焼鈍炉。
【請求項2】
請求項1において、前記ホワイトパウダー除去装置は、前記循環配管の上流側の、配管流路面積に比べて内部流路面積の大きな水冷ジャケット付チャンバと、下流側のサイクロンとを備えており、炉内から取り出した雰囲気ガスを該水冷ジャケット付チャンバ内で冷却して雰囲気ガス中のホワイトパウダーを凝集及び成長させるとともに、前記下流側のサイクロンで、気流搬送されて来たホワイトパウダーを遠心分離し捕集するものとなしてあることを特徴とする連続式焼鈍炉。
【請求項3】
請求項2において、前記循環配管における前記炉内からの雰囲気ガスの取出口と前記水冷ジャケット付チャンバとの間の部分には保温材が外装してあることを特徴とする連続式焼鈍炉。
【請求項4】
請求項2〜3の何れかにおいて、前記循環配管には前記サイクロンの下流側に、該サイクロンを通過したホワイトパウダー除去用のフィルタが設けてあることを特徴とする連続式焼鈍炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−144433(P2011−144433A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7504(P2010−7504)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(591085123)日本金属工業株式会社 (24)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】