説明

遅延回路、及び試験装置

【課題】所望の遅延量、所望の遅延分解能、及び所望の可変遅延範囲を生成する遅延回路を提供する。
【解決手段】入力信号を所望の時間遅延させた遅延信号を出力する遅延回路であって、入力信号に応じて発光し、遅延信号を出力する発光素子と、第1発光素子の発光閾電流より小さいバイアス電流を、第1発光素子に予め供給するバイアス電流源と、所望の遅延時間に基づいて、バイアス電流を制御するバイアス電流制御部と、入力信号に応じて、発光素子を発光させるための変調電流を発光素子に供給する変調電流源と、遅延回路における遅延分解能に基づいて、変調電流を制御する変調電流制御部とを備える。変調電流制御部は、遅延回路における可変遅延範囲に更に基づいて、変調電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を所望の時間遅延させる遅延回路、及び電子デバイスを試験する試験装置に関する。特に本発明は、発光素子を用いた遅延回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス等の電子デバイスを試験する試験装置は、試験信号を所望の時間だけ遅延させる遅延回路を備えている。当該遅延回路は、遅延時間を所望の時間に変化できる可変遅延回路であって、リニアライズメモリ等に格納した情報に基づいて、遅延時間を制御していた。
【0003】
当該遅延回路は、複数の遅延素子を有し、遅延設定値とリニアライズメモリ等に格納した情報とに基づいて、任意の遅延素子に入力信号を通過させ、所望の遅延時間を生成していた。当該遅延素子は、バッファ等の電気回路素子により構成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年の電子デバイスの高精度化、高速化に伴い、電子デバイスを試験する試験装置及び遅延回路においても、より高精度化、高速化が要求される。しかし、従来の電気回路素子による遅延回路、及び試験装置は、高精度化、高速化に対してほぼ限界に達し、新たな手段による遅延回路等が望まれていた。また、高精度の遅延回路を構成する場合、直線性の極めて良い可変遅延の実現が困難となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる遅延回路、及び試験装置を提供することを目的とする。この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、入力信号を所望の時間遅延させた遅延信号を出力する遅延回路であって、入力信号に応じて発光し、発光信号を遅延信号として出力する第1発光素子と、第1発光素子が発光を開始する発光閾電流より小さいバイアス電流を、第1発光素子に予め供給する第1バイアス電流源とを備えることを特徴とする遅延回路を提供する。
【0007】
また、遅延回路は、所望の時間に基づいて、バイアス電流源におけるバイアス電流を制御するバイアス電流制御部を更に備えてよい。また、遅延回路は、入力信号に応じて、第1発光素子を発光させるための変調電流を第1発光素子に供給する変調電流源と、遅延回路における遅延分解能に基づいて、変調電流源における変調電流を制御する変調電流制御部とを更に備えてよい。
【0008】
変調電流制御部は、遅延回路における可変遅延範囲に更に基づいて、変調電流源における変調電流を制御してよい。また、バイアス電流制御部は、第1発光素子の温度に更に基づいて、バイアス電流源におけるバイアス電流を制御してよい。また、遅延回路は、第1発光素子を加熱又は冷却する温度制御部を更に備えてよい。温度制御部は、遅延回路における可変遅延範囲に基づいて、第1発光素子を加熱又は冷却してよい。
【0009】
また、遅延回路は、第1発光素子が出力した発光信号を電気信号に変換し、電気信号を遅延信号として出力する光電変換部を更に備えてよい。また、遅延回路は、入力信号に応じて発光し、発光信号を遅延信号として出力し、第1発光素子とバンド間遷移時間時定数の異なる第2発光素子と、第2発光素子が発光を開始する発光閾電流より小さいバイアス電流を、第2発光素子に予め供給する第2バイアス電流源と、所望の時間に基づいて、第1発光素子又は第2発光素子のいずれかに入力信号を供給する選択部とを更に備えてよい。また、第1発光素子及び第2発光素子はレーザダイオードであって、第1発光素子のベース材料と、第2発光素子のベース材料とは異なる材料であってよい。
【0010】
本発明の第2の形態においては、電子デバイスを試験する試験装置であって、電子デバイスを試験するための試験信号を生成するパターン発生部と、試験信号を整形した信号を電子デバイスに供給する波形整形部と、所望のタイミングを発生するタイミング発生部と、試験信号に基づいて、電子デバイスが出力する出力信号を、タイミング発生部が発生したタイミングでサンプリングするサンプリング部と、サンプリング部におけるサンプリング結果に基づいて、電子デバイスの良否を判定する判定部とを備え、タイミング発生部は、基準クロックを発生する基準クロック発生部と、基準クロックを所望の時間遅延させた遅延信号を、所望のタイミングとして出力する遅延回路とを有し、遅延回路は、基準クロックに応じて発光し、発光信号を遅延信号として出力する第1発光素子と、発光素子が発光を開始する発光閾電流より小さいバイアス電流を、発光素子に予め供給するバイアス電流制御部とを有することを特徴とする試験装置を提供する。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る遅延回路によれば、所望の遅延を容易に生成することができる。また、所望の遅延分解能及び所望の可変遅延範囲を有する遅延を容易に生成することができる。また、本発明に係る試験装置によれば、容易に電子デバイスの試験を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明に係る試験装置100の構成の一例を示す。試験装置100は、電子デバイス10を試験する。試験装置100は、パターン発生部20、波形整形部22、遅延回路30、信号入出力部24、及び判定部26を備える。パターン発生部20は、電子デバイス10を試験するための試験信号を生成し、波形整形部22又は遅延回路30に供給する。
【0015】
遅延回路30は、入力信号を所望の時間遅延させる。本例において、遅延回路30は、パターン発生部20から受け取った試験信号を所望の時間遅延させ、波形整形部22に供給する。遅延回路30は可変遅延回路であって、電子デバイス10を試験するべき試験パターンに基づいて、試験信号を遅延させてよい。
【0016】
波形整形部22は、受け取った試験信号を整形し、整形した試験信号を信号入出力部24を介して電子デバイス10に供給する。信号入出力部24は、電子デバイス10に試験信号を供給し、電子デバイス10が試験信号に基づいて出力する出力信号を受け取る。信号入出力部24は、受け取った出力信号を判定部26に供給する。
【0017】
判定部26は、試験信号に基づいて電子デバイス10が出力する出力信号に基づいて、電子デバイス10の良否を判定する。判定部26は、例えば電子デバイス10が試験信号に基づいて出力するべき期待値信号と、電子デバイス10が出力した出力信号とを比較して電子デバイス10の良否を判定してよい。この場合、パターン発生部20は、発生した試験信号に基づいて当該期待値信号を生成し、判定部26に供給してよい。
【0018】
また、遅延回路30は、所望のタイミングを生成し、当該タイミングを判定部26に供給してよい。つまり、遅延回路30はタイミング発生器であってよい。例えば、遅延回路30は基準クロックを受け取り、受け取った基準クロックに基づいて所望のタイミングを生成してよい。判定部26は、当該タイミングに基づいて、電子デバイス10の出力信号をサンプリングし、当該サンプリング結果に基づいて電子デバイス10の良否を判定してよい。
【0019】
図2は、遅延回路30の構成の一例を示す。遅延回路30は、入力信号を所望の時間遅延させた遅延信号を出力する。本例において、遅延回路30は、試験信号を入力信号として受け取り、試験信号を所望の時間遅延させた遅延信号を、試験信号として信号入出力部24に供給する。また、他の例においては、遅延回路30は、基準クロックを入力信号として受け取り、基準クロックを所望の時間遅延させた遅延信号を、所望のタイミングとして判定部26に供給してよい。遅延回路30は、発光素子32、バイアス電流源34、変調電流源36、バイアス電流制御部38、変調電流制御部42、温度制御部46、光電変換部48、及びトランジスタ(52、54)を備える。
【0020】
発光素子32は、入力信号に応じて発光し、発光信号を遅延信号として出力する。バイアス電流源34は、発光素子32が発光を開始する発光閾電流より小さい順方向のバイアス電流を、発光素子32に供給する。そして、発光素子32には、バイアス電流源34によるバイアス電流が流れる。当該バイアス電流の電流量は、プログラマブルに制御可能である。発光素子32は、例えばレーザダイオードであってよい。
【0021】
バイアス電流制御部38は、入力信号を遅延させるべき所望の時間を示す、遅延量設定データに基づいて、バイアス電流源34におけるバイアス電流を制御する。例えば、バイアス電流制御部38は、ユーザによって指示された遅延設定値に基づく遅延量設定データを受け取ってよい。また、バイアス電流制御部38は、当該遅延量設定データと、当該遅延量設定データが示す遅延量を生成するための当該バイアス電流の電流値を示すデータとを対応付けて格納するバイアスデータメモリと、バイアスデータメモリに格納したディジタルデータをアナログデータに変換するディジタルアナログコンバータとを有してよい。この場合、バイアス電流制御部38は、バイアスデータメモリが格納したデータに基づいて、バイアス電流を制御する。
【0022】
発光素子32は、入力信号に応じて発光するが、遅延回路30が入力信号を受け取ってから、発光素子32が発光する間には、発光素子32による発光遅延が生じる。発光素子32における発光遅延時間は、図5において後述するように発光素子32に流れるバイアス電流に基づいて定まる。バイアス電流制御部38が、当該バイアス電流を制御することにより、所望の時間遅延させた遅延信号を生成することができる。
【0023】
また、バイアス電流制御部38は、発光素子32の温度を示す温度データに更に基づいて、バイアス電流源34におけるバイアス電流を制御する。図6において後述するように、発光素子32における発光遅延時間は、発光素子32の温度に依存する。発光素子32の温度に基づいて、バイアス電流源34におけるバイアス電流を制御することにより、発光素子32の温度変化による遅延時間の誤差を低減することができる。バイアス電流制御部38は、遅延量設定データに対応するバイアスデータメモリのデータが示す電流値に、発光素子32の温度に基づく係数を乗算した電流値に、バイアス電流源34におけるバイアス電流を制御する。当該バイアスデータメモリは、発光素子32の温度に対応する係数を更に格納してよい。
【0024】
変調電流源36は、入力信号に応じて、発光素子32を発光させるための順方向の変調電流を発光素子32に供給する。変調電流源36は、トランジスタ52を介して発光素子32と電気的に接続される。トランジスタ52は、ベースに入力信号を受け取り、入力信号に応じた変調電流を発光素子32に流す。つまり、変調電流源36は、入力信号を増幅した変調電流を発光素子32に供給する。
【0025】
変調電流制御部42は、遅延回路30における遅延分解能を示す分解能データに基づいて、変調電流源36における変調電流を制御する。つまり、変調電流制御部42は、遅延回路30において要求される遅延分解能に応じて変調電流を制御する。図5において後述するように、発光素子32に流れる変調電流を制御することにより、発光素子32における発光遅延時間の分解能を制御することができる。変調電流制御部42は、変調電流の電流値を遅延回路30における遅延分解能に対応付けて格納する変調データメモリと、変調データメモリに格納したディジタルデータをアナログデータに変換するディジタルアナログコンバータとを有してよい。
【0026】
また、変調電流制御部42は、遅延回路30における可変遅延範囲を示すダイナミックレンジデータに基づいて、変調電流源36における変調電流を制御してよい。図5において後述するように、発光素子32に流れる変調電流を制御することにより、発光素子32における発光遅延時間の可変範囲を制御することができる。前述した変調データメモリは、変調電流の電流値を遅延回路30における可変遅延範囲に対応付けて格納してよい。
【0027】
温度制御部46は、発光素子32を加熱又は冷却する。例えば、温度制御部46は、発光素子32を一定の温度に保つように発光素子32を加熱又は冷却してよい。発光素子32の温度を制御することにより、発光素子32の温度変化による遅延時間の誤差を低減することができる。
【0028】
また、温度制御部46は、遅延回路30における可変遅延範囲に基づいて、発光素子32を加熱又は冷却してよい。発光素子32の温度を制御することにより、発光素子32の発光閾電流を制御することができる。このため、図6において後述するように、発光素子32の温度を制御することにより、発光素子32における発光遅延時間の可変範囲を制御することができる。温度制御部46は、発光素子32の温度と、遅延回路30における可変遅延範囲とを対応付けて格納する温度データメモリと、温度データメモリに格納したディジタルデータをアナログデータに変換するディジタルアナログコンバータとを有してよい。
【0029】
トランジスタ54は、ベース端子にベース電圧Vbが与えられる。可変遅延回路30の入力信号がディジタル信号である場合、ベース電圧Vbは、当該ディジタル信号のH論理レベルとL論理レベルとの中間のレベルを示す電圧値であることが好ましい。当該入力信号は、トランジスタ52のベース端子に入力される。また、トランジスタ52及びトランジスタ54のベース端子に与えられる信号は、当該入力信号に基づく差動信号であってもよい。トランジスタ52への入力信号がH論理を示す場合、トランジスタ54はカットオフ状態となり、トランジスタ52に変調電流が流れ、発光素子32にはバイアス電流と変調電流との和の電流が流れる。また、入力信号がL論理を示す場合、トランジスタ52はカットオフ状態となり、トランジスタ54に変調電流が流れ、発光素子32にはバイアス電流が流れる。以上のように、発光素子32に流れる電流をスイッチング制御することにより、発光素子32に流れる電流を精度よく制御することができる。
【0030】
光電変換部48は、発光素子32が出力した発光信号を電気信号に変換し、当該電気信号を遅延信号として出力する。光電変換部48は、例えばフォトダイオードを有する回路であってよい。
【0031】
以上説明した遅延回路30によれば、発光素子32の発光遅延時間を利用することにより、所望の時間の遅延を生成することができる。また、発光素子32に供給するバイアス電流、変調電流、及び発光素子32の温度を制御することにより、所望の分解能、及び所望の可変遅延範囲を有する遅延を精度よく生成することができる。
【0032】
図3は、発光素子32の発光遅延時間の原理を説明する図である。本例では、発光素子32がレーザダイオードである場合について説明する。図3において、発光素子32の発光閾電流密度をJthとして説明する。図3上段のグラフに示すように、発光素子32に発光閾電流密度Jthより小さい、電流密度Jbの電流が流れている場合、発光素子32の注入キャリア密度は図3中段のグラフに示すように発光閾キャリア密度nthより小さいnbとなる。
【0033】
この状態で、発光素子32に電流密度Jpの変調電流が供給された場合、発光素子32の注入キャリア密度は時定数τnで増加する。変調電流が供給されてから時間t経過し、注入キャリア密度は発光閾キャリア密度nthに達した場合に、発光素子32はレーザ発振を開始し、図3下段に示すように光子密度の増加が開始する。当該時間tdが、発光素子32の発光遅延時間となる。
【0034】
ここで、発光遅延時間tは下式で与えられる。
【数1】

ただし、Jは注入キャリア密度、Ipは変調電流、Ibはバイアス電流、Ithは発光閾電流を指す。上式から明らかなように、変調電流、バイアス電流、及び発光閾電流を制御することにより、発光素子32の発光遅延時間を制御できる。
【0035】
図4は、発光素子32の変調電流及び発光閾電流と、発光遅延時間との関係の一例を示す。図4において、横軸は変調電流を示し、縦軸は発光遅延時間を示す。図4に示すように、変調電流が増大した場合に、発光素子32の発光遅延時間は減少し、発光閾電流Ithが増大した場合、発光素子32の発光遅延時間は増大する。
【0036】
図5は、発光素子32のバイアス電流及び変調電流と、発光遅延時間との関係を示す。図5において、横軸はバイアス電流を示し、縦軸は発光遅延時間を示す。図4に示すように、変調電流Ipを固定し、バイアス電流を増大した場合、発光素子32の発光遅延時間は直線的に減少する。
【0037】
図2に関連して説明した遅延回路30においては、バイアス電流を制御し発光素子32の発光遅延時間を制御する。発光遅延時間はバイアス電流に対して直線的に変化するため、バイアス電流を制御することにより、遅延回路30における遅延時間を精度よく制御することができる。
【0038】
また、図2に関連して説明した遅延回路30においては、変調電流を制御し発光素子32における遅延分解能及び可変遅延範囲を制御する。図5に示すように、変調電流を増加させた場合、発光素子32における可変遅延範囲は増大する。また、バイアス電流を予め定められた階調数で変化させ、所望の遅延量を生成する場合、変調電流を増大させるとバイアス電流の1階調毎の遅延変化量が増加する。すなわち、変調電流を制御することにより、遅延回路30の遅延分解能を制御することができる。
【0039】
図6は、発光素子32のバイアス電流及び発光閾電流と、発光遅延時間との関係を示す。図6において横軸はバイアス電流を示し、縦軸は発光遅延時間を示す。図6に示すように、バイアス電流を同一の範囲で変化させる場合、発光閾電流Ithを増加させると発光素子32における発光遅延時間の可変範囲は、増加方向にシフトする。すなわち、発光素子32の発光閾電流Ithを制御することにより、発光素子32における発光遅延時間の可変範囲を制御することができる。図2に関連して説明した遅延回路30は、発光素子32の温度を制御することにより発光素子32の発光閾電流を制御し、遅延回路30の可変遅延範囲を制御する。
【0040】
図7は、遅延回路30の構成の他の例を示す。遅延回路30は、複数の発光素子32、複数のバイアス電流源34、複数の変調電流源36、バイアス電流制御部38、変調電流制御部42、温度制御部46、複数の光電変換部48、複数のトランジスタ(52、54)、及び選択部56を備える。図7において、図2と同一の符号を附したものは、図2に関連して説明したものと同一又は同様の機能及び構成を有する。本例において、遅延回路30は、第1発光素子32a、第2発光素子32b、第1バイアス電流源34a、第2バイアス電流源34b、第1光電変換部48a、第2光電変換部48b、第1トランジスタ52a、第2トランジスタ52b、第3トランジスタ54a、及び第4トランジスタ54bを備える。
【0041】
第1発光素子32a及び第2発光素子32bは、図2に関連して説明した発光素子32と同一又は同様の機能及び構成を有する。第2発光素子32bは、第1発光素子32aとは異なるバンド間遷移時間時定数τnを有する。
【0042】
第1バイアス電流源34a及び第2バイアス電流源34bは、図2に関連して説明したバイアス電流源34と同一又は同様の機能及び構成を有する。第1バイアス電流源34a及び第2バイアス電流源34bは、それぞれ対応する発光素子32に、対応する発光素子32の発光閾電流より小さいバイアス電流を発光素子32に予め供給する。
【0043】
第1変調電流源36a及び第2変調電流源36bは、図2に関連して説明した変調電流源36と同一又は同様の機能及び構成を有する。第1変調電流源36a及び第2変調電流源36bは、それぞれ対応する発光素子32に、入力信号に応じて変調電流を供給する。第1光電変換部48a及び第2光電変換部48bは、図2に関連して説明した光電変換部48と同一又は同様の機能及び構成を有する。
【0044】
選択部56は、遅延回路30における所望の遅延時間に基づいて、第1発光素子32a又は第2発光素子32bのいずれかに入力信号を供給するかを選択する。本例において、選択部56は、第1発光素子32a又は第2発光素子32bのいずれかに入力信号に基づく変調電流を供給するかを選択する。選択部56は、選択した発光素子32に対応するトランジスタ52のベース端子58に、入力信号を供給する。第1発光素子32a及び第2発光素子32bは、異なるバンド間遷移時間時定数τnを有する。このため、図9において後述するように第1発光素子32aにおける遅延分解能及び可変遅延範囲と、第2発光素子32bにおける遅延分解能及び可変遅延範囲とは、それぞれ異なる。
【0045】
選択部56は、遅延回路30における遅延時間の遅延分解能及び/又は可変遅延範囲に基づいて、いずれの発光素子32に入力信号を供給するかを選択する。選択部56は、発光素子32毎の遅延分解能及び遅延範囲を示す特性テーブルを格納する特性テーブルメモリを有してよい。選択部56は、当該特性テーブルに基づいて、いずれの発光素子32に入力信号を供給するかを選択する。本例における遅延回路30によれば、所望の分解能の遅延を容易に生成することができる。また、広い可変遅延範囲の遅延を容易に生成することができる。
【0046】
図8は、特性テーブルの一例を示す。特性テーブルメモリは、図8に示すような特性テーブルを格納する。特性テーブルは、複数の発光素子32のそれぞれの遅延分解能及び適正遅延範囲を、それぞれの発光素子32毎に示す。
【0047】
図9は、発光素子32のバイアス電流及びバンド間遷移時間時定数τnと、発光遅延時間との関係を示す。図9において、横軸はバイアス電流を示し、縦軸は発光遅延時間を示す。図7に関連して説明した遅延回路30においては、バンド間遷移時間時定数τnの異なる発光素子32のいずれかを選択することにより、所望の遅延分解能及び所望の可変遅延範囲を有する遅延を生成する。図9に示すように、バンド間遷移時間時定数τnが大きい場合、発光素子32における可変遅延範囲は増大する。また、バイアス電流を予め定められた階調数で変化させ、所望の遅延量を生成する場合、バンド間遷移時間時定数が大きいとバイアス電流の1階調毎の遅延変化量が増加する。すなわち、バンド間遷移時間時定数τnの異なる発光素子32のいずれかを選択することにより、遅延回路30の遅延分解能及び可変遅延範囲を制御することができる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0049】
また、本実施の形態においては、試験装置に含まれる遅延回路を一実施形態として説明したが、本発明が試験装置に限定されないことは明らかである。例えば、タイミング発生器、通信装置、コンピュータ、時計等の様々なアプリケーションに応用可能であることは明らかである。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る試験装置100の構成の一例を示す図である。
【図2】遅延回路30の構成の一例を示す図である。
【図3】発光素子32の発光遅延時間の原理を説明する図である。
【図4】発光素子32の変調電流及び発光閾電流と、発光遅延時間との関係の一例を示す図である。
【図5】発光素子32のバイアス電流及び変調電流と、発光遅延時間との関係を示す図である。
【図6】発光素子32のバイアス電流及び発光閾電流と、発光遅延時間との関係を示す図である。
【図7】遅延回路30の構成の他の例を示す図である。
【図8】特性テーブルの一例を示す図である。
【図9】発光素子32のバイアス電流及びバンド間遷移時間時定数τnと、発光遅延時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
10・・・電子デバイス、20・・・パターン発生部、22・・・波形整形部、24・・・信号入出力部、26・・・判定部、30・・・遅延回路、32・・・発光素子、34・・・バイアス電流源、36・・・変調電流源、38・・・バイアス電流制御部、42・・・変調電流制御部、46・・・温度制御部、48・・・光電変換回路、52・・・トランジスタ、54・・・トランジスタ、56・・・選択部、58・・・ベース端子、100・・・試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を所望の時間遅延させた遅延信号を出力する遅延回路であって、
前記入力信号に応じて発光し、発光信号を前記遅延信号として出力する第1発光素子と、
前記第1発光素子が発光を開始する発光閾電流より小さいバイアス電流を、前記第1発光素子に予め供給する第1バイアス電流源と
を備えることを特徴とする遅延回路。
【請求項2】
前記所望の時間に基づいて、前記バイアス電流源における前記バイアス電流を制御するバイアス電流制御部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項3】
前記入力信号に応じて、前記第1発光素子を発光させるための変調電流を前記第1発光素子に供給する変調電流源と、
前記遅延回路における遅延分解能に基づいて、前記変調電流源における前記変調電流を制御する変調電流制御部と
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項4】
前記変調電流制御部は、前記遅延回路における可変遅延範囲に更に基づいて、前記変調電流源における前記変調電流を制御することを特徴とする請求項3に記載の遅延回路。
【請求項5】
前記第1発光素子が出力した前記発光信号を電気信号に変換し、前記電気信号を前記遅延信号として出力する光電変換部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項6】
電子デバイスを試験する試験装置であって、
前記電子デバイスを試験するための試験信号を生成するパターン発生部と、
前記試験信号を整形した信号を前記電子デバイスに供給する波形整形部と、
所望のタイミングを発生するタイミング発生部と、
前記試験信号に基づいて、前記電子デバイスが出力する出力信号を、前記タイミング発生部が発生した前記タイミングでサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部におけるサンプリング結果に基づいて、前記電子デバイスの良否を判定する判定部と
を備え、
前記タイミング発生部は、
基準クロックを発生する基準クロック発生部と、
前記基準クロックを所望の時間遅延させた遅延信号を、前記所望のタイミングとして出力する遅延回路と
を有し、
前記遅延回路は、
前記基準クロックに応じて発光し、発光信号を前記遅延信号として出力する第1発光素子と、
前記発光素子が発光を開始する発光閾電流より小さいバイアス電流を、前記発光素子に予め供給するバイアス電流制御部と
を有することを特徴とする試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−14009(P2007−14009A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227117(P2006−227117)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【分割の表示】特願2002−2349(P2002−2349)の分割
【原出願日】平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】