運転支援装置
【課題】下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図る。
【解決手段】搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定した場合、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作でモータの回生損失が発生するか否かを判定し、モータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内する。
【解決手段】搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定した場合、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作でモータの回生損失が発生するか否かを判定し、モータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交差点の青信号期間中の特定時刻に車両を交差点に到着させるように車両の加速度を算出し、等加速度走行速度で交差点へ向けて走行し、交差点を無停止で走行する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−205281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイブリッド車や電気自動車等、走行用の動力源としてモータを使用する車両においては、車両減速時に発生するエネルギーを回収してモータを駆動するバッテリを充電する回生制御が行われ、この回生制御により燃費特性が向上するようになっている。
【0005】
しかし、回生制御において、単位時間当たりに回収できるエネルギー量には限界があるため、減速度が強いとエネルギーの回収損失が発生する。特に、下り勾配の区間を走行する場合には、車両の運動エネルギーに、下り坂の高低差による車両の位置エネルギーが加わり、車両が停車するために必要とされるエネルギー量が大きくなるため、停車位置までの距離が一定となっている場合には、平坦な区間を走行する場合よりも強めの減速操作が必要となる。
【0006】
このように強めの減速操作が行われると、回生エネルギーを回収しきれず、モータの回生損失が発生し、エネルギー消費量が大きくなるといった問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みたもので、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、下り勾配判定手段により搭載車両の走行先に下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内する第1の案内手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。
【0010】
なお、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間は、下り勾配の途中に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間、下り勾配の先に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間のいずれかをいう。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、搭載車両の位置と停車位置までの区間の高低差に基づく搭載車両の位置エネルギーと搭載車両の車速に基づく運動エネルギーとを加算して、搭載車両が停車位置で停車するために必要な総エネルギーを算出する総エネルギー算出手段と、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定する制動距離特定手段と、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定する回生損失判定手段と、を備え、第1の案内手段は、回生損失判定手段によりモータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内することを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定し、モータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われる。すなわち、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生しないと判定された場合には、案内は行われないので、運転者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、回生損失判定手段によりモータの回生損失が発生すると判定された場合、エネルギー算出手段により算出された総エネルギーに基づいてモータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する減速操作開始位置特定手段を備え、第1の案内手段は、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行うことを特徴としている。
【0014】
このように、総エネルギーに基づいてモータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定し、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行うことができる。
【0015】
なお、請求項4に記載の発明のように、減速操作開始位置特定手段は、モータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるために必要な減速距離を算出し、停車位置より減速距離分手前の位置を減速操作開始位置として特定することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、路側に設置された無線送信機と通信する通信手段と、通信手段を介して無線送信機から走行先に存在する信号機の切替タイミング情報および無線送信機と信号機の手前の停車位置との距離を示す情報を取得する情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報を用いて搭載車両を信号機の手前で一時停止させる必要があるか否かを判定する停車判定手段と、搭載車両の位置から停車位置までの区間が下り勾配であるか否かを判定する下り区間判定手段と、を備え、下り勾配判定手段は、停車判定手段により搭載車両を信号機の手前で一時停止させる必要があると判定され、かつ、下り区間判定手段により搭載車両の位置から停車位置までの区間が下り勾配であると判定された場合、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定することを特徴としている。
【0017】
このようにして、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在するか否かを判定する上り勾配判定手段と、上り勾配判定手段により搭載車両の走行先に上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内する第2の案内手段と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内が行われる。したがって、例えば、上り勾配区間であるにもかかわらず、平坦区間を走行する際と同様のブレーキ操作が行われ、停車位置よりも手前で減速しすぎて再加速が必要となり、余分なエネルギーを消費してしまうといったことを防止することができる。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項7に記載の発明は、走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、前記下り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示する走行制御指示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
このような構成によれば、搭載車両の走行先に下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前で減速を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置を搭載した車両の概略構成を示す図である。
【図2】ナビゲーションECUの構成を示す図である。
【図3】路側の機器構成を示す図である。
【図4】光ビーコンから送信される情報について説明するための図である。
【図5】ナビゲーションECUのフローチャートである。
【図6】ナビゲーションECUのフローチャートである。
【図7】先行車両の前方交差点停止線地点での信号機の状態の推定について説明するための図である。
【図8】(a)は、運動エネルギーの算出について説明するための図であり、(b)は、位置エネルギーの算出について説明するための図である。
【図9】(a)は、平坦区間走行時の減速力について説明するための図であり、(b)は、下り勾配区間走行時の減速力について説明するための図である。
【図10】(a)は、平坦区間走行時の時間当たり減速エネルギーについて説明するための図であり、(b)は、下り勾配区間走行時の時間当たり減速エネルギーについて説明するための図である。
【図11】(a)は、減速力と総エネルギーの関係について説明するための図であり、(b)は、減速力を抑えた場合の減速距離の算出について説明するための図である。
【図12】(a)は、平坦区間走行時の時間当たり減速エネルギーについて説明するための図であり、(b)は、減速距離を延ばすことで時間当たり減速エネルギーが限界値Pmaxよりも小さくなる点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る運転支援装置を搭載した車両の概略構成を図1に概略的に示す。本実施形態における運転支援装置は、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両に搭載され、搭載車両の運転者に運転操作についての案内等を行う。ハイブリッド車両には、エンジン1、発電機2、モータ3、差動装置4、タイヤ5a、5b、インバータ6、DCリンク7、インバータ8、バッテリ9、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15、操作部16、光ビーコン送受信機17、表示部18、スピーカ19およびナビゲーションECU20が搭載されている。
【0024】
このハイブリッド車両は、エンジン1およびモータ3を走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行する。エンジン1を動力源とする場合は、エンジン1の回転力が、図示しないクラッチ機構および差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。また、モータ3を動力源とする場合は、バッテリ9の直流電力がDCリンク7およびインバータ8を介して交流電力に変換され、その交流電力によってモータ3が作動し、このモータ3の回転力が、差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。以下、エンジン1のみを動力源とする走行のモードをエンジン走行モード、モータ3のみを動力源とする走行のモードをモータ走行モード、エンジン1とモータ3を動力源とする走行のモードをハイブリッド走行モードという。ただし、以下、ハイブリッド走行モードとエンジン走行モードを含めてハイブリッド走行モードという。
【0025】
また、エンジン1の回転力は発電機2にも伝えられ、その回転力によって発電機2が交流電力を生成し、生成された交流電力はインバータ6、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。このようなバッテリ9への充電は、燃料を使用したエンジン1の作動による充電である。以下、この種の充電を、内燃充電という。
【0026】
また、図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ3に回転力として加わり、この回転力によってモータ3が交流電力を生成し、生成された交流電力がインバータ8、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。以下、この種の充電を、回生充電という。
【0027】
なお、回生充電により時間当たりに回収できるエネルギー量には限界があるため、減速度が大きいと回生充電によるエネルギー回収が十分に行われず、エネルギーの損失が発生する。したがって、回生充電によるエネルギー回収を有効に行うためには、ある程度緩やかな減速操作が必要とされる。
【0028】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20からの指令等に応じて、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8、バッテリ9の上述のような作動の実行・非実行等を制御する。HV制御部10は、例えばマイクロコンピュータを用いて実現してもよいし、下記のような機能を実現するための専用の回路構成を有するハードウェアであってもよい。
【0029】
より具体的には、HV制御部10は、アクセル開度、バッテリ9のバッテリ充電量、バッテリ9の温度等に基づいて、動力源の異なる複数の走行モード(モータ走行モード、ハイブリッド走行モード)の切り替えを繰り返し行う。
【0030】
GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13は、それぞれハイブリッド車両の位置、進行方向、走行速度を特定する周知のセンサである。
【0031】
地図DB記憶部14は、地図データを記憶する記憶媒体である。地図データは、複数の交差点のそれぞれに対応するノードデータ、および、交差点と交差点を結ぶ道路区間すなわちリンクのそれぞれに対応するリンクデータを有している。1つのノードデータは、当該ノードの識別番号、所在位置情報、種別情報を含む。また、1つのリンクデータは、当該リンクの識別番号(以下、リンクIDという)、位置情報、種別情報等を含んでいる。
【0032】
ここで、リンクの位置情報には、当該リンクが含む形状補完点の所在位置データ、および、当該リンクの両端のノードおよび形状補完点のうち隣り合う2つを繋ぐセグメントのデータを含んでいる。各セグメントのデータは、当該セグメントのセグメントID、当該セグメントの勾配、向き、長さ等の情報を有している。
【0033】
勾配センサ15は、車両のピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の方位変化量を検出するジャイロセンサによって構成されている。このジャイロセンサによって検出されるピッチ方向の方位変化量から道路の勾配を算出することが可能となっている。
【0034】
操作部16は、表示部18に設けられたディスプレイの周囲に配置されたメカニカルスイッチ、表示部18に設けられたディスプレイの前面に設けられたタッチスイッチ等を有し、乗員のスイッチ操作に応じた信号をナビゲーションECU20へ出力する。
【0035】
光ビーコン送受信機17は、VICS情報等を送信する光ビーコンとの間で無線通信を行うためのものである。
【0036】
表示部18は、液晶等のディスプレイを有し、このディスプレイにナビゲーションECU20より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。
【0037】
スピーカ19は、ナビゲーションECU20より入力される音声信号に応じた音声を出力するためのものである。
【0038】
図2に示す様に、ナビゲーションECU20は、RAM21、ROM22、データ書き込み可能な耐久記憶媒体23、および制御部24を有している。耐久記憶媒体とは、ナビゲーションECU20の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体をいう。耐久記憶媒体23としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM等の不揮発性記憶媒体、および、バックアップRAMがある。
【0039】
制御部24は、ROM22または耐久記憶媒体23から読み出したプログラムを実行し、その実行の際にはRAM21、ROM22、および耐久記憶媒体23から情報を読み出し、RAM21および耐久記憶媒体23に対して情報の書き込みを行い、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15等と信号の授受を行う。なお、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置を特定する現在位置特定処理等を実施する。
【0040】
また、図2に示すように、制御部24は、マップマッチング処理25、経路算出処理26、ナビゲーション処理27等の処理を、所定のプログラムを実行することで実現する。
【0041】
本ハイブリッド車両に搭載されているナビゲーションECU20には、光ビーコン送受信機17が接続されており、光ビーコン送受信機17を介して路上に設置された光ビーコンよりVICS情報等を受信することが可能となっている。
【0042】
図3に、路側の機器構成を示す。この図には、ハイブリッド車両30と、交差点Jに設置された信号機40と、この信号機40を制御する信号制御装置41と、この信号制御装置41に接続された光ビーコン制御装置50と、この光ビーコン制御装置50に接続された光ビーコン51が示されている。なお、光ビーコン51は、交差点Jより1つ手前の交差点から交差点Jへと向かう道路上に設置されている。また、図3には、光ビーコン制御装置50に1台の光ビーコン51が接続された構成が示されているが、実際には、各交差点に設置された多数の光ビーコン51が接続されている。
【0043】
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、VICS情報とともに、(1)信号機の切替タイミング、(2)光ビーコン51から前方交差点の停止線までの距離を表す情報を、光ビーコン51を介して通行車両に送信する。
(1)信号機の切替タイミングについて
信号制御装置41は、予め設定された切替タイミングで信号機40を制御する。信号機40は、信号制御装置41の制御により青信号、黄信号、赤信号、矢印信号等の各ランプを点灯させるようになっている。なお、本実施形態では、説明を簡略化するため、矢印信号を備えていない信号機を例に説明する。
【0044】
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、信号制御装置41より切替タイミングを特定するための切替タイミング情報を取得可能となっている。切替タイミング情報には、信号の切り替わり時刻を特定するための切替時刻特定情報(例えば、次回、赤信号から青信号に切り替わる時刻を示す情報)と、信号機の切替周期を示す切替周期情報が含まれる。なお、切替周期は、例えば、赤信号から青信号に変化したときから、黄信号、赤信号となった後、再度、青信号に変化するまでの期間のことをいう。
(2)光ビーコン51から前方交差点の信号機の停止位置を示す停止線までの距離について
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、図4に示すような、光ビーコン51から前方交差点の信号機の停止位置を示す停止線までの距離を記憶媒体に記憶している。
【0045】
ナビゲーションECU20は、上記した(1)、(2)の情報に基づいて搭載車両が走行先の信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するとともに、搭載車両の走行先の存在する信号機の手前で停車する際の搭載車両から停車位置までの区間の高低差を特定し、当該区間が下り勾配であると判定した場合、搭載車両が停車位置で停車するために必要なエネルギーを算出し、モータ3で回生損失が発生しないように規定された減速度で、停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定し、この減速操作開始位置より前で減速操作が行われるように、運転者に案内する処理を行う。
【0046】
図5、図6に、この処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本運転支援装置は動作状態となり、ナビゲーションECU20は、図5に示す処理を開始する。
【0047】
まず、光ビーコン51より送信される情報を受信したか否かを判定する(S100)。なお、光ビーコン51より送信される情報には、VICS情報と、上記した(1)、(2)の情報がある。
【0048】
ここで、光ビーコン送受信機17を介して光ビーコン51より送信される情報が受信されない場合、S100の判定を繰り返し実施する。
【0049】
そして、搭載車両が光ビーコン51の下のレーンを通過し、光ビーコン51より送信された情報を受信すると、S100の判定はYESとなり、光ビーコン51より送信された情報をRAM21に記憶させる(S102)。
【0050】
次に、光ビーコン51より送信された情報に、(1)、(2)の情報が含まれているか否かを判定する(S104)。
【0051】
ここで、光ビーコン51より送信された情報に、(1)、(2)の情報が含まれていない場合、S104の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、光ビーコン51より送信された情報に、(1)、(2)の情報が含まれている場合には、S104の判定はYESとなり、次に、(1)、(2)の情報を用いて搭載車両が前方交差点の停止線地点での信号機の状態を推定する(S106)。
【0052】
ここで、図7を参照して、先行車両の前方交差点停止線地点での信号機の状態の推定について説明する。図7において、横軸は時刻、縦軸は光ビーコン51から交差点停止線位置までの距離を表している。矢印Yは、搭載車両の位置と時刻の関係を示している。また、図7には、信号機の切替タイミングも示されている。なお、図7において、黄信号は省略してある。
【0053】
まず、光ビーコン51から前方交差点の停止線までの距離を搭載車両の車速で除算することにより搭載車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間を算出する。次に、この搭載車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間に現在時刻を加算して搭載車両が前方交差点の停止線に到達する時刻を算出する。次に、切替タイミング情報に含まれる切替時刻特定情報と切替周期情報から、搭載車両が前方交差点の停止線までの時刻における信号機の状態を推定する。
【0054】
ここで、推定した信号機の状態が黄信号または青信号の場合、S108の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、推定した信号機の状態が赤信号の場合には、S108の判定はYESとなり、次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して搭載車両の位置から停止線までの走行路番号を求める(S110)。具体的には、搭載車両の現在位置から停止線までの道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0055】
次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して現在の走行路番号の検出を行う(S112)。具体的には、搭載車両が位置する道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0056】
次に、搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する(S114)。具体的には、搭載車両の位置がS110にて特定した走行路番号以外の走行路になったか否かに基づいて搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する。
【0057】
ここで、搭載車両が走行路を逸脱した場合、S114の判定はYESとなり、S100へ戻る。搭載車両が走行路を逸脱していない場合には、S114の判定はNOとなり、次に、搭載車両が前方交差点の停止線位置から一定距離内に到達したか否かに基づいて搭載車両が前方交差点停止線位置に接近したか否かを判定する(S116)。
【0058】
ここで、搭載車両が前方交差点の停止線位置から一定距離内に到達していない場合、S116の判定はNOとなり、S112へ戻る。また、搭載車両が前方交差点の停止線位置から一定距離内に到達すると、S116の判定はYESとなり、次に、地図DB記憶部14より搭載車両の周辺の地図データを取得して搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの道路勾配を特定する(S118)。
【0059】
次に、S118にて特定した道路勾配と搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの距離に基づいて搭載車両の位置と前方交差点の停止線位置との高低差を算出する(S120)。なお、道路勾配をθ、搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの距離をdとすると、搭載車両の位置と前方交差点の停止線位置との高低差hは、h=d×sinθとして算出することができる。
【0060】
S122では、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が高いか否かに基づいて搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの区間が上り勾配であるか否かを判定する。
【0061】
また、S124では、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が低いか否かに基づいて搭載車両の位置とから前方交差点の停止線位置までの区間が下り勾配であるか否かを判定する。
【0062】
ここで、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が高い場合、S122の判定はYESとなり、図6のS144へ進み、上り時における減速操作アドバイスを提示する。上り勾配区間では、平坦区間と比較してブレーキ操作を開始してから車両が停車するまでの制動距離が短くなる。このため、平坦区間と同様のブレーキ操作では停車位置よりも手前で減速しすぎて再加速が必要となる場合がある。このように、再加速が行われると余分なエネルギーを消費してしまう。したがって、緩やかなブレーキ操作でよい旨のアドバイスを提示する。例えば、「上り坂なのでブレーキ操作を弱めにして下さい。」といったメッセージを表示部18に表示させるとともにスピーカ19から音声出力させ、図5のS100へ戻る。
【0063】
また、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が低い場合、S122の判定はNO、S124の判定はYESとなり、車速と高低差により減速に必要なエネルギーを算出する(S126)。具体的には、搭載車両の位置と停車位置までの区間の高低差に基づく搭載車両の位置エネルギーと搭載車両の車速に基づく運動エネルギーとを加算して、搭載車両が停車位置で停車するために必要な総エネルギーを算出する。図8(a)に示すように、平坦区間を走行する際の搭載車両の運動エネルギー:E0は、搭載車両の重量をm、搭載車両の車速をvとすると、E0=(1/2)×m×v2として算出することができる。また、下り勾配区間を走行する際の搭載車両の位置エネルギー:E2は、搭載車両の位置と停車位置との高低差をh、重力加速度をgとすると、E2=m×g×hとして算出することができる。したがって、図8(b)に示すように、下り勾配区間を走行する際における減速に必要な総エネルギー:E1は、E1=E0+E2=(1/2)×m×v2+m×g×hとして算出することができる。
【0064】
次に、平坦区間で一般的に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定する(S128)。本実施形態では、車速毎に、平坦区間で一般的に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を規定したマップを用いて、搭載車両の車速に対応する制動距離を特定する。なお、車速を変数とする関数を用いて平坦区間で一般的に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定するようにしてもよい。
【0065】
次に、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に一般的に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定する(S130)。ここで、S128にて特定した制動距離をLとすると、平坦区間における減速力F0は、図9(a)に示すように、F0=((1/2)×m×v2)/Lとして算出することができる。また、下り勾配区間における減速力F1は、図9(b)に示すように、F1=((1/2)×m×v2)+m×g×h)/Lとして算出することができる。
【0066】
ここで、ブレーキ操作を開始してからの時間をtとすると、平坦区間における時間当たりの減速エネルギーは、図10(a)に示すようになる。また、下り勾配区間における時間当たりの減速エネルギーは、図10(b)に示すようになる。すなわち、時間当たりの減速エネルギーは、時間tの経過に伴って、一定の割合で減少する。
【0067】
本実施形態では、ブレーキ操作の開始時における時間当たりの減速エネルギーの値が、時間当たりにモータ3が回収できるエネルギーの限界値Pmaxよりも大きいか否かに基づいて、平坦区間を走行する際に一般的に行われるブレーキ操作で、モータ3の回生損失が発生するか否かを判定する。
【0068】
ここで、モータ3の回生損失が発生しないと判定された場合、S130の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、モータ3の回生損失が発生すると判定された場合、S130の判定はYESとなり、次に、モータ3の回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停車させるために必要な減速距離を算出する(S132)。なお、下り勾配区間における減速力F1は、図11(a)に示すように、F1=((1/2)×m×v2)+m×g×h)/Lとして算出することができる。ここでは、減速力が小さくなるように、モータ3の回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停車させるために必要な減速距離を算出する。具体的には、図11(b)に示すように、減速力F1よりも小さな減速力F2となるようにして、減速距離を延ばす。なお、減速距離L1は、図11(a)におけるL×F1の面積と、図11(b)におけるL1×F2の面積が等しくなるように算出することができる。
【0069】
このように減速距離を延ばすことにより、図12(a)に示すように、時間当たりにモータ3が回収できるエネルギーの限界値Pmaxよりも大きかった時間当たりの減速エネルギーを、図12(b)に示すように、時間当たりにモータ3が回収できるエネルギーの限界値Pmaxよりも小さくすることができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、運転者によるブレーキ操作がモータ3の回生損失が発生しない限界値よりも多少緩くても搭載車両が停車位置に停車できるように減速距離を一定量長くなるようにしている。
【0071】
次に、モータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する(S133)。具体的には、停車位置より減速距離分手前の位置を減速操作開始位置として特定する。
【0072】
次に、減速アドバイス提供位置を特定する(S134)。運転者が減速操作開始位置で減速操作を開始するためには、減速操作開始位置より手前で減速アドバイスの提供を行う必要がある。本実施形態では、運転者がある程度余裕を持って減速操作を行うことができるよう、減速操作開始位置より一定距離(例えば、20メートル)手前の位置を減速アドバイス提供位置として特定する。
【0073】
次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して現在の走行路番号の検出を行う(S136)。具体的には、搭載車両が位置する道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0074】
次に、搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する(S138)。具体的には、搭載車両が位置する走行路番号が、S110にて求めた走行路番号と一致するか否かに基づいて搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する。
【0075】
ここで、搭載車両が走行路を逸脱していない場合、S138の判定はNOとなり、次に、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達したか否かに基づいて減速アドバイス提供位置を通過したか否かを判定する(S140)。
【0076】
ここで、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達していない場合、S140の判定はNOとなり、S136へ戻る。そして、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達すると、S140の判定はYESとなり、減速操作アドバイスを提示する(S142)。例えば、「下り坂なので緩やかなブレーキ操作を早めに開始して下さい。」といったように、緩やかなブレーキ操作の開始を促すメッセージを表示部18に表示させるとともに、緩やかなブレーキ操作の開始を促すメッセージをスピーカ19より音声出力させる。
【0077】
なお、搭載車両が減速アドバイス提供位置へ到達する前に走行路を逸脱した場合、S138の判定はNOとなり、減速操作アドバイスを提示することなく、S100へ戻る。したがって、減速操作アドバイスの提示は行われない。
【0078】
上記した構成によれば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。
【0079】
なお、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間は、下り勾配の途中に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間、下り勾配の先に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間のいずれかをいう。
【0080】
また、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定し、モータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われる。すなわち、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生しないと判定された場合には、案内は行われないので、運転者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0081】
また、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内が行われる。したがって、例えば、上り勾配区間であるにもかかわらず、平坦区間を走行する際と同様のブレーキ操作が行われ、停車位置よりも手前で減速しすぎて再加速が必要となり、余分なエネルギーを消費してしまうといったことを防止することができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0083】
例えば、上記実施形態では、搭載車両をハイブリッド車両として説明したが、例えば、搭載車両を電気自動車としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に減速操作の開始を促す案内を行う構成を示したが、例えば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定した場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前で減速を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部(HV制御部10およびブレーキを制御するブレーキECUの少なくとも一方)に指示するようにしてもよい。このような構成によれば、搭載車両の走行先に下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前で減速を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。なお、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定された場合、運転者へのブレーキ操作の案内と、走行制御部への指示の両方を行うようにしてもよい。
【0085】
また、反対に、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在すると判定した場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作より緩やかに減速するように、車両の加減速を制御する走行制御部(HV制御部10およびブレーキECUの少なくとも一方)に指示するようにしてもよい。このような構成により、例えば、案内に従わずに、ブレーキ操作が開始されなくても、緩やかに車両が減速し、余分なエネルギーを消費することなく車両を停車位置に停車させることが可能である。
【0086】
また、上記実施形態では、通信エリアが限られた光ビーコンにより無線送信機を構成したが、光ビーコンに限定されるものではなく、例えば、通信エリアが限られた狭域通信(DSRC)を行うことが可能な無線機により無線送信機を構成してもよい。この場合、運転支援装置側の構成としては、光ビーコン送受信機17に代えて狭域通信(DSRC)を行うことが可能な無線機を備えた構成とすればよい。
【0087】
また、上記実施形態では、道路勾配情報に基づいて道路勾配を特定したが、例えば、道路上の各地点の標高情報に基づいて道路勾配を特定するようにしてもよい。
【0088】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、S108、S124が下り勾配判定手段に相当し、S142が第1の案内手段に相当し、S126が総エネルギー算出手段に相当し、S128が制動距離特定手段に相当し、S130が回生損失判定手段に相当し、S132、S133が減速操作開始位置特定手段に相当し、S132が減速距離算出手段に相当し、光ビーコン送受信機17が通信手段に相当し、S100、S102が情報取得手段に相当し、S108が停車判定手段に相当し、S124が下り区間判定手段に相当し、S108、S122が上り勾配判定手段に相当し、S144が第2の案内手段に相当する。
【符号の説明】
【0089】
1 エンジン
2 発電機
3 モータ
11 GPS受信機
12 方位センサ
13 車速センサ
14 地図DB記憶部
15 勾配センサ
16 操作部
17 光ビーコン送受信機
18 表示部
19 スピーカ
20 ナビゲーションECU
30 搭載車両
40 信号機
41 信号制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交差点の青信号期間中の特定時刻に車両を交差点に到着させるように車両の加速度を算出し、等加速度走行速度で交差点へ向けて走行し、交差点を無停止で走行する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−205281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイブリッド車や電気自動車等、走行用の動力源としてモータを使用する車両においては、車両減速時に発生するエネルギーを回収してモータを駆動するバッテリを充電する回生制御が行われ、この回生制御により燃費特性が向上するようになっている。
【0005】
しかし、回生制御において、単位時間当たりに回収できるエネルギー量には限界があるため、減速度が強いとエネルギーの回収損失が発生する。特に、下り勾配の区間を走行する場合には、車両の運動エネルギーに、下り坂の高低差による車両の位置エネルギーが加わり、車両が停車するために必要とされるエネルギー量が大きくなるため、停車位置までの距離が一定となっている場合には、平坦な区間を走行する場合よりも強めの減速操作が必要となる。
【0006】
このように強めの減速操作が行われると、回生エネルギーを回収しきれず、モータの回生損失が発生し、エネルギー消費量が大きくなるといった問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みたもので、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、下り勾配判定手段により搭載車両の走行先に下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内する第1の案内手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。
【0010】
なお、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間は、下り勾配の途中に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間、下り勾配の先に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間のいずれかをいう。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、搭載車両の位置と停車位置までの区間の高低差に基づく搭載車両の位置エネルギーと搭載車両の車速に基づく運動エネルギーとを加算して、搭載車両が停車位置で停車するために必要な総エネルギーを算出する総エネルギー算出手段と、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定する制動距離特定手段と、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定する回生損失判定手段と、を備え、第1の案内手段は、回生損失判定手段によりモータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内することを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定し、モータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われる。すなわち、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生しないと判定された場合には、案内は行われないので、運転者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、回生損失判定手段によりモータの回生損失が発生すると判定された場合、エネルギー算出手段により算出された総エネルギーに基づいてモータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する減速操作開始位置特定手段を備え、第1の案内手段は、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行うことを特徴としている。
【0014】
このように、総エネルギーに基づいてモータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定し、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行うことができる。
【0015】
なお、請求項4に記載の発明のように、減速操作開始位置特定手段は、モータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるために必要な減速距離を算出し、停車位置より減速距離分手前の位置を減速操作開始位置として特定することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、路側に設置された無線送信機と通信する通信手段と、通信手段を介して無線送信機から走行先に存在する信号機の切替タイミング情報および無線送信機と信号機の手前の停車位置との距離を示す情報を取得する情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報を用いて搭載車両を信号機の手前で一時停止させる必要があるか否かを判定する停車判定手段と、搭載車両の位置から停車位置までの区間が下り勾配であるか否かを判定する下り区間判定手段と、を備え、下り勾配判定手段は、停車判定手段により搭載車両を信号機の手前で一時停止させる必要があると判定され、かつ、下り区間判定手段により搭載車両の位置から停車位置までの区間が下り勾配であると判定された場合、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定することを特徴としている。
【0017】
このようにして、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在するか否かを判定する上り勾配判定手段と、上り勾配判定手段により搭載車両の走行先に上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内する第2の案内手段と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内が行われる。したがって、例えば、上り勾配区間であるにもかかわらず、平坦区間を走行する際と同様のブレーキ操作が行われ、停車位置よりも手前で減速しすぎて再加速が必要となり、余分なエネルギーを消費してしまうといったことを防止することができる。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項7に記載の発明は、走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、前記下り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示する走行制御指示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
このような構成によれば、搭載車両の走行先に下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前で減速を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置を搭載した車両の概略構成を示す図である。
【図2】ナビゲーションECUの構成を示す図である。
【図3】路側の機器構成を示す図である。
【図4】光ビーコンから送信される情報について説明するための図である。
【図5】ナビゲーションECUのフローチャートである。
【図6】ナビゲーションECUのフローチャートである。
【図7】先行車両の前方交差点停止線地点での信号機の状態の推定について説明するための図である。
【図8】(a)は、運動エネルギーの算出について説明するための図であり、(b)は、位置エネルギーの算出について説明するための図である。
【図9】(a)は、平坦区間走行時の減速力について説明するための図であり、(b)は、下り勾配区間走行時の減速力について説明するための図である。
【図10】(a)は、平坦区間走行時の時間当たり減速エネルギーについて説明するための図であり、(b)は、下り勾配区間走行時の時間当たり減速エネルギーについて説明するための図である。
【図11】(a)は、減速力と総エネルギーの関係について説明するための図であり、(b)は、減速力を抑えた場合の減速距離の算出について説明するための図である。
【図12】(a)は、平坦区間走行時の時間当たり減速エネルギーについて説明するための図であり、(b)は、減速距離を延ばすことで時間当たり減速エネルギーが限界値Pmaxよりも小さくなる点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る運転支援装置を搭載した車両の概略構成を図1に概略的に示す。本実施形態における運転支援装置は、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両に搭載され、搭載車両の運転者に運転操作についての案内等を行う。ハイブリッド車両には、エンジン1、発電機2、モータ3、差動装置4、タイヤ5a、5b、インバータ6、DCリンク7、インバータ8、バッテリ9、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15、操作部16、光ビーコン送受信機17、表示部18、スピーカ19およびナビゲーションECU20が搭載されている。
【0024】
このハイブリッド車両は、エンジン1およびモータ3を走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行する。エンジン1を動力源とする場合は、エンジン1の回転力が、図示しないクラッチ機構および差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。また、モータ3を動力源とする場合は、バッテリ9の直流電力がDCリンク7およびインバータ8を介して交流電力に変換され、その交流電力によってモータ3が作動し、このモータ3の回転力が、差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。以下、エンジン1のみを動力源とする走行のモードをエンジン走行モード、モータ3のみを動力源とする走行のモードをモータ走行モード、エンジン1とモータ3を動力源とする走行のモードをハイブリッド走行モードという。ただし、以下、ハイブリッド走行モードとエンジン走行モードを含めてハイブリッド走行モードという。
【0025】
また、エンジン1の回転力は発電機2にも伝えられ、その回転力によって発電機2が交流電力を生成し、生成された交流電力はインバータ6、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。このようなバッテリ9への充電は、燃料を使用したエンジン1の作動による充電である。以下、この種の充電を、内燃充電という。
【0026】
また、図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ3に回転力として加わり、この回転力によってモータ3が交流電力を生成し、生成された交流電力がインバータ8、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。以下、この種の充電を、回生充電という。
【0027】
なお、回生充電により時間当たりに回収できるエネルギー量には限界があるため、減速度が大きいと回生充電によるエネルギー回収が十分に行われず、エネルギーの損失が発生する。したがって、回生充電によるエネルギー回収を有効に行うためには、ある程度緩やかな減速操作が必要とされる。
【0028】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20からの指令等に応じて、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8、バッテリ9の上述のような作動の実行・非実行等を制御する。HV制御部10は、例えばマイクロコンピュータを用いて実現してもよいし、下記のような機能を実現するための専用の回路構成を有するハードウェアであってもよい。
【0029】
より具体的には、HV制御部10は、アクセル開度、バッテリ9のバッテリ充電量、バッテリ9の温度等に基づいて、動力源の異なる複数の走行モード(モータ走行モード、ハイブリッド走行モード)の切り替えを繰り返し行う。
【0030】
GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13は、それぞれハイブリッド車両の位置、進行方向、走行速度を特定する周知のセンサである。
【0031】
地図DB記憶部14は、地図データを記憶する記憶媒体である。地図データは、複数の交差点のそれぞれに対応するノードデータ、および、交差点と交差点を結ぶ道路区間すなわちリンクのそれぞれに対応するリンクデータを有している。1つのノードデータは、当該ノードの識別番号、所在位置情報、種別情報を含む。また、1つのリンクデータは、当該リンクの識別番号(以下、リンクIDという)、位置情報、種別情報等を含んでいる。
【0032】
ここで、リンクの位置情報には、当該リンクが含む形状補完点の所在位置データ、および、当該リンクの両端のノードおよび形状補完点のうち隣り合う2つを繋ぐセグメントのデータを含んでいる。各セグメントのデータは、当該セグメントのセグメントID、当該セグメントの勾配、向き、長さ等の情報を有している。
【0033】
勾配センサ15は、車両のピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の方位変化量を検出するジャイロセンサによって構成されている。このジャイロセンサによって検出されるピッチ方向の方位変化量から道路の勾配を算出することが可能となっている。
【0034】
操作部16は、表示部18に設けられたディスプレイの周囲に配置されたメカニカルスイッチ、表示部18に設けられたディスプレイの前面に設けられたタッチスイッチ等を有し、乗員のスイッチ操作に応じた信号をナビゲーションECU20へ出力する。
【0035】
光ビーコン送受信機17は、VICS情報等を送信する光ビーコンとの間で無線通信を行うためのものである。
【0036】
表示部18は、液晶等のディスプレイを有し、このディスプレイにナビゲーションECU20より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。
【0037】
スピーカ19は、ナビゲーションECU20より入力される音声信号に応じた音声を出力するためのものである。
【0038】
図2に示す様に、ナビゲーションECU20は、RAM21、ROM22、データ書き込み可能な耐久記憶媒体23、および制御部24を有している。耐久記憶媒体とは、ナビゲーションECU20の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体をいう。耐久記憶媒体23としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM等の不揮発性記憶媒体、および、バックアップRAMがある。
【0039】
制御部24は、ROM22または耐久記憶媒体23から読み出したプログラムを実行し、その実行の際にはRAM21、ROM22、および耐久記憶媒体23から情報を読み出し、RAM21および耐久記憶媒体23に対して情報の書き込みを行い、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15等と信号の授受を行う。なお、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置を特定する現在位置特定処理等を実施する。
【0040】
また、図2に示すように、制御部24は、マップマッチング処理25、経路算出処理26、ナビゲーション処理27等の処理を、所定のプログラムを実行することで実現する。
【0041】
本ハイブリッド車両に搭載されているナビゲーションECU20には、光ビーコン送受信機17が接続されており、光ビーコン送受信機17を介して路上に設置された光ビーコンよりVICS情報等を受信することが可能となっている。
【0042】
図3に、路側の機器構成を示す。この図には、ハイブリッド車両30と、交差点Jに設置された信号機40と、この信号機40を制御する信号制御装置41と、この信号制御装置41に接続された光ビーコン制御装置50と、この光ビーコン制御装置50に接続された光ビーコン51が示されている。なお、光ビーコン51は、交差点Jより1つ手前の交差点から交差点Jへと向かう道路上に設置されている。また、図3には、光ビーコン制御装置50に1台の光ビーコン51が接続された構成が示されているが、実際には、各交差点に設置された多数の光ビーコン51が接続されている。
【0043】
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、VICS情報とともに、(1)信号機の切替タイミング、(2)光ビーコン51から前方交差点の停止線までの距離を表す情報を、光ビーコン51を介して通行車両に送信する。
(1)信号機の切替タイミングについて
信号制御装置41は、予め設定された切替タイミングで信号機40を制御する。信号機40は、信号制御装置41の制御により青信号、黄信号、赤信号、矢印信号等の各ランプを点灯させるようになっている。なお、本実施形態では、説明を簡略化するため、矢印信号を備えていない信号機を例に説明する。
【0044】
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、信号制御装置41より切替タイミングを特定するための切替タイミング情報を取得可能となっている。切替タイミング情報には、信号の切り替わり時刻を特定するための切替時刻特定情報(例えば、次回、赤信号から青信号に切り替わる時刻を示す情報)と、信号機の切替周期を示す切替周期情報が含まれる。なお、切替周期は、例えば、赤信号から青信号に変化したときから、黄信号、赤信号となった後、再度、青信号に変化するまでの期間のことをいう。
(2)光ビーコン51から前方交差点の信号機の停止位置を示す停止線までの距離について
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、図4に示すような、光ビーコン51から前方交差点の信号機の停止位置を示す停止線までの距離を記憶媒体に記憶している。
【0045】
ナビゲーションECU20は、上記した(1)、(2)の情報に基づいて搭載車両が走行先の信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するとともに、搭載車両の走行先の存在する信号機の手前で停車する際の搭載車両から停車位置までの区間の高低差を特定し、当該区間が下り勾配であると判定した場合、搭載車両が停車位置で停車するために必要なエネルギーを算出し、モータ3で回生損失が発生しないように規定された減速度で、停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定し、この減速操作開始位置より前で減速操作が行われるように、運転者に案内する処理を行う。
【0046】
図5、図6に、この処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本運転支援装置は動作状態となり、ナビゲーションECU20は、図5に示す処理を開始する。
【0047】
まず、光ビーコン51より送信される情報を受信したか否かを判定する(S100)。なお、光ビーコン51より送信される情報には、VICS情報と、上記した(1)、(2)の情報がある。
【0048】
ここで、光ビーコン送受信機17を介して光ビーコン51より送信される情報が受信されない場合、S100の判定を繰り返し実施する。
【0049】
そして、搭載車両が光ビーコン51の下のレーンを通過し、光ビーコン51より送信された情報を受信すると、S100の判定はYESとなり、光ビーコン51より送信された情報をRAM21に記憶させる(S102)。
【0050】
次に、光ビーコン51より送信された情報に、(1)、(2)の情報が含まれているか否かを判定する(S104)。
【0051】
ここで、光ビーコン51より送信された情報に、(1)、(2)の情報が含まれていない場合、S104の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、光ビーコン51より送信された情報に、(1)、(2)の情報が含まれている場合には、S104の判定はYESとなり、次に、(1)、(2)の情報を用いて搭載車両が前方交差点の停止線地点での信号機の状態を推定する(S106)。
【0052】
ここで、図7を参照して、先行車両の前方交差点停止線地点での信号機の状態の推定について説明する。図7において、横軸は時刻、縦軸は光ビーコン51から交差点停止線位置までの距離を表している。矢印Yは、搭載車両の位置と時刻の関係を示している。また、図7には、信号機の切替タイミングも示されている。なお、図7において、黄信号は省略してある。
【0053】
まず、光ビーコン51から前方交差点の停止線までの距離を搭載車両の車速で除算することにより搭載車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間を算出する。次に、この搭載車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間に現在時刻を加算して搭載車両が前方交差点の停止線に到達する時刻を算出する。次に、切替タイミング情報に含まれる切替時刻特定情報と切替周期情報から、搭載車両が前方交差点の停止線までの時刻における信号機の状態を推定する。
【0054】
ここで、推定した信号機の状態が黄信号または青信号の場合、S108の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、推定した信号機の状態が赤信号の場合には、S108の判定はYESとなり、次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して搭載車両の位置から停止線までの走行路番号を求める(S110)。具体的には、搭載車両の現在位置から停止線までの道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0055】
次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して現在の走行路番号の検出を行う(S112)。具体的には、搭載車両が位置する道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0056】
次に、搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する(S114)。具体的には、搭載車両の位置がS110にて特定した走行路番号以外の走行路になったか否かに基づいて搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する。
【0057】
ここで、搭載車両が走行路を逸脱した場合、S114の判定はYESとなり、S100へ戻る。搭載車両が走行路を逸脱していない場合には、S114の判定はNOとなり、次に、搭載車両が前方交差点の停止線位置から一定距離内に到達したか否かに基づいて搭載車両が前方交差点停止線位置に接近したか否かを判定する(S116)。
【0058】
ここで、搭載車両が前方交差点の停止線位置から一定距離内に到達していない場合、S116の判定はNOとなり、S112へ戻る。また、搭載車両が前方交差点の停止線位置から一定距離内に到達すると、S116の判定はYESとなり、次に、地図DB記憶部14より搭載車両の周辺の地図データを取得して搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの道路勾配を特定する(S118)。
【0059】
次に、S118にて特定した道路勾配と搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの距離に基づいて搭載車両の位置と前方交差点の停止線位置との高低差を算出する(S120)。なお、道路勾配をθ、搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの距離をdとすると、搭載車両の位置と前方交差点の停止線位置との高低差hは、h=d×sinθとして算出することができる。
【0060】
S122では、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が高いか否かに基づいて搭載車両の位置から前方交差点の停止線位置までの区間が上り勾配であるか否かを判定する。
【0061】
また、S124では、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が低いか否かに基づいて搭載車両の位置とから前方交差点の停止線位置までの区間が下り勾配であるか否かを判定する。
【0062】
ここで、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が高い場合、S122の判定はYESとなり、図6のS144へ進み、上り時における減速操作アドバイスを提示する。上り勾配区間では、平坦区間と比較してブレーキ操作を開始してから車両が停車するまでの制動距離が短くなる。このため、平坦区間と同様のブレーキ操作では停車位置よりも手前で減速しすぎて再加速が必要となる場合がある。このように、再加速が行われると余分なエネルギーを消費してしまう。したがって、緩やかなブレーキ操作でよい旨のアドバイスを提示する。例えば、「上り坂なのでブレーキ操作を弱めにして下さい。」といったメッセージを表示部18に表示させるとともにスピーカ19から音声出力させ、図5のS100へ戻る。
【0063】
また、搭載車両の位置よりも前方交差点の停止線位置の方が低い場合、S122の判定はNO、S124の判定はYESとなり、車速と高低差により減速に必要なエネルギーを算出する(S126)。具体的には、搭載車両の位置と停車位置までの区間の高低差に基づく搭載車両の位置エネルギーと搭載車両の車速に基づく運動エネルギーとを加算して、搭載車両が停車位置で停車するために必要な総エネルギーを算出する。図8(a)に示すように、平坦区間を走行する際の搭載車両の運動エネルギー:E0は、搭載車両の重量をm、搭載車両の車速をvとすると、E0=(1/2)×m×v2として算出することができる。また、下り勾配区間を走行する際の搭載車両の位置エネルギー:E2は、搭載車両の位置と停車位置との高低差をh、重力加速度をgとすると、E2=m×g×hとして算出することができる。したがって、図8(b)に示すように、下り勾配区間を走行する際における減速に必要な総エネルギー:E1は、E1=E0+E2=(1/2)×m×v2+m×g×hとして算出することができる。
【0064】
次に、平坦区間で一般的に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定する(S128)。本実施形態では、車速毎に、平坦区間で一般的に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を規定したマップを用いて、搭載車両の車速に対応する制動距離を特定する。なお、車速を変数とする関数を用いて平坦区間で一般的に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定するようにしてもよい。
【0065】
次に、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に一般的に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定する(S130)。ここで、S128にて特定した制動距離をLとすると、平坦区間における減速力F0は、図9(a)に示すように、F0=((1/2)×m×v2)/Lとして算出することができる。また、下り勾配区間における減速力F1は、図9(b)に示すように、F1=((1/2)×m×v2)+m×g×h)/Lとして算出することができる。
【0066】
ここで、ブレーキ操作を開始してからの時間をtとすると、平坦区間における時間当たりの減速エネルギーは、図10(a)に示すようになる。また、下り勾配区間における時間当たりの減速エネルギーは、図10(b)に示すようになる。すなわち、時間当たりの減速エネルギーは、時間tの経過に伴って、一定の割合で減少する。
【0067】
本実施形態では、ブレーキ操作の開始時における時間当たりの減速エネルギーの値が、時間当たりにモータ3が回収できるエネルギーの限界値Pmaxよりも大きいか否かに基づいて、平坦区間を走行する際に一般的に行われるブレーキ操作で、モータ3の回生損失が発生するか否かを判定する。
【0068】
ここで、モータ3の回生損失が発生しないと判定された場合、S130の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、モータ3の回生損失が発生すると判定された場合、S130の判定はYESとなり、次に、モータ3の回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停車させるために必要な減速距離を算出する(S132)。なお、下り勾配区間における減速力F1は、図11(a)に示すように、F1=((1/2)×m×v2)+m×g×h)/Lとして算出することができる。ここでは、減速力が小さくなるように、モータ3の回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停車させるために必要な減速距離を算出する。具体的には、図11(b)に示すように、減速力F1よりも小さな減速力F2となるようにして、減速距離を延ばす。なお、減速距離L1は、図11(a)におけるL×F1の面積と、図11(b)におけるL1×F2の面積が等しくなるように算出することができる。
【0069】
このように減速距離を延ばすことにより、図12(a)に示すように、時間当たりにモータ3が回収できるエネルギーの限界値Pmaxよりも大きかった時間当たりの減速エネルギーを、図12(b)に示すように、時間当たりにモータ3が回収できるエネルギーの限界値Pmaxよりも小さくすることができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、運転者によるブレーキ操作がモータ3の回生損失が発生しない限界値よりも多少緩くても搭載車両が停車位置に停車できるように減速距離を一定量長くなるようにしている。
【0071】
次に、モータの回生損失が発生しないように搭載車両を停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する(S133)。具体的には、停車位置より減速距離分手前の位置を減速操作開始位置として特定する。
【0072】
次に、減速アドバイス提供位置を特定する(S134)。運転者が減速操作開始位置で減速操作を開始するためには、減速操作開始位置より手前で減速アドバイスの提供を行う必要がある。本実施形態では、運転者がある程度余裕を持って減速操作を行うことができるよう、減速操作開始位置より一定距離(例えば、20メートル)手前の位置を減速アドバイス提供位置として特定する。
【0073】
次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して現在の走行路番号の検出を行う(S136)。具体的には、搭載車両が位置する道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0074】
次に、搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する(S138)。具体的には、搭載車両が位置する走行路番号が、S110にて求めた走行路番号と一致するか否かに基づいて搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する。
【0075】
ここで、搭載車両が走行路を逸脱していない場合、S138の判定はNOとなり、次に、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達したか否かに基づいて減速アドバイス提供位置を通過したか否かを判定する(S140)。
【0076】
ここで、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達していない場合、S140の判定はNOとなり、S136へ戻る。そして、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達すると、S140の判定はYESとなり、減速操作アドバイスを提示する(S142)。例えば、「下り坂なので緩やかなブレーキ操作を早めに開始して下さい。」といったように、緩やかなブレーキ操作の開始を促すメッセージを表示部18に表示させるとともに、緩やかなブレーキ操作の開始を促すメッセージをスピーカ19より音声出力させる。
【0077】
なお、搭載車両が減速アドバイス提供位置へ到達する前に走行路を逸脱した場合、S138の判定はNOとなり、減速操作アドバイスを提示することなく、S100へ戻る。したがって、減速操作アドバイスの提示は行われない。
【0078】
上記した構成によれば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。
【0079】
なお、搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間は、下り勾配の途中に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間、下り勾配の先に赤信号または一時停止線で停車する必要のある区間のいずれかをいう。
【0080】
また、搭載車両の位置から停車位置までの区間において、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生するか否かを総エネルギーおよび制動距離に基づいて判定し、モータの回生損失が発生すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内が行われる。すなわち、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、モータの回生損失が発生しないと判定された場合には、案内は行われないので、運転者に煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0081】
また、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内が行われる。したがって、例えば、上り勾配区間であるにもかかわらず、平坦区間を走行する際と同様のブレーキ操作が行われ、停車位置よりも手前で減速しすぎて再加速が必要となり、余分なエネルギーを消費してしまうといったことを防止することができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0083】
例えば、上記実施形態では、搭載車両をハイブリッド車両として説明したが、例えば、搭載車両を電気自動車としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に減速操作の開始を促す案内を行う構成を示したが、例えば、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定した場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前で減速を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部(HV制御部10およびブレーキを制御するブレーキECUの少なくとも一方)に指示するようにしてもよい。このような構成によれば、搭載車両の走行先に下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前で減速を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示が行われるので、強めの減速操作によりモータの回生損失が発生するといったことが防止され、下り勾配区間におけるモータの回生損失の低減を図ることができる。なお、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定された場合、運転者へのブレーキ操作の案内と、走行制御部への指示の両方を行うようにしてもよい。
【0085】
また、反対に、搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在すると判定した場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作より緩やかに減速するように、車両の加減速を制御する走行制御部(HV制御部10およびブレーキECUの少なくとも一方)に指示するようにしてもよい。このような構成により、例えば、案内に従わずに、ブレーキ操作が開始されなくても、緩やかに車両が減速し、余分なエネルギーを消費することなく車両を停車位置に停車させることが可能である。
【0086】
また、上記実施形態では、通信エリアが限られた光ビーコンにより無線送信機を構成したが、光ビーコンに限定されるものではなく、例えば、通信エリアが限られた狭域通信(DSRC)を行うことが可能な無線機により無線送信機を構成してもよい。この場合、運転支援装置側の構成としては、光ビーコン送受信機17に代えて狭域通信(DSRC)を行うことが可能な無線機を備えた構成とすればよい。
【0087】
また、上記実施形態では、道路勾配情報に基づいて道路勾配を特定したが、例えば、道路上の各地点の標高情報に基づいて道路勾配を特定するようにしてもよい。
【0088】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、S108、S124が下り勾配判定手段に相当し、S142が第1の案内手段に相当し、S126が総エネルギー算出手段に相当し、S128が制動距離特定手段に相当し、S130が回生損失判定手段に相当し、S132、S133が減速操作開始位置特定手段に相当し、S132が減速距離算出手段に相当し、光ビーコン送受信機17が通信手段に相当し、S100、S102が情報取得手段に相当し、S108が停車判定手段に相当し、S124が下り区間判定手段に相当し、S108、S122が上り勾配判定手段に相当し、S144が第2の案内手段に相当する。
【符号の説明】
【0089】
1 エンジン
2 発電機
3 モータ
11 GPS受信機
12 方位センサ
13 車速センサ
14 地図DB記憶部
15 勾配センサ
16 操作部
17 光ビーコン送受信機
18 表示部
19 スピーカ
20 ナビゲーションECU
30 搭載車両
40 信号機
41 信号制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、
搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、
前記下り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内する第1の案内手段と、を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記搭載車両の位置と前記停車位置までの区間の高低差に基づく前記搭載車両の位置エネルギーと前記搭載車両の車速に基づく運動エネルギーとを加算して、前記搭載車両が前記停車位置で停車するために必要な総エネルギーを算出する総エネルギー算出手段と、
平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定する制動距離特定手段と、
前記搭載車両の位置から前記停車位置までの区間において、前記平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、前記モータの回生損失が発生するか否かを前記総エネルギーおよび前記制動距離に基づいて判定する回生損失判定手段と、を備え、
前記第1の案内手段は、前記回生損失判定手段により前記モータの回生損失が発生すると判定された場合、前記平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記回生損失判定手段により前記モータの回生損失が発生すると判定された場合、前記エネルギー算出手段により算出された前記総エネルギーに基づいて前記モータの回生損失が発生しないように前記搭載車両を前記停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する減速操作開始位置特定手段を備え、
前記第1の案内手段は、前記搭載車両が前記減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記減速操作開始位置特定手段は、前記モータの回生損失が発生しないように前記搭載車両を前記停車位置に停止させるために必要な減速距離を算出する減速距離算出手段を備え、
前記停車位置より前記減速距離分手前の位置を前記減速操作開始位置として特定することを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
路側に設置された無線送信機と通信する通信手段と、
前記通信手段を介して前記無線送信機から走行先に存在する信号機のタイミング情報および前記無線送信機と前記信号機の手前の停車位置との距離を示す情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記情報を用いて前記搭載車両を前記信号機の手前で一時停止させる必要があるか否かを判定する停車判定手段と、
前記搭載車両の位置から前記停車位置までの区間が下り勾配であるか否かを判定する下り区間判定手段と、を備え、
前記下り勾配判定手段は、前記停車判定手段により前記搭載車両を前記信号機の手前で一時停止させる必要があると判定され、かつ、前記下り区間判定手段により前記搭載車両の位置から前記停車位置までの区間が下り勾配であると判定された場合、前記搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項6】
搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在するか否かを判定する上り勾配判定手段を備え、
前記上り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内する第2の案内手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項7】
走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、
搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、
前記下り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示する走行制御指示手段と、を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項1】
走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、
搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、
前記下り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内する第1の案内手段と、を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記搭載車両の位置と前記停車位置までの区間の高低差に基づく前記搭載車両の位置エネルギーと前記搭載車両の車速に基づく運動エネルギーとを加算して、前記搭載車両が前記停車位置で停車するために必要な総エネルギーを算出する総エネルギー算出手段と、
平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置から車両が停止するまでに要する制動距離を特定する制動距離特定手段と、
前記搭載車両の位置から前記停車位置までの区間において、前記平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作で、前記モータの回生損失が発生するか否かを前記総エネルギーおよび前記制動距離に基づいて判定する回生損失判定手段と、を備え、
前記第1の案内手段は、前記回生損失判定手段により前記モータの回生損失が発生すると判定された場合、前記平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように運転者に案内することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記回生損失判定手段により前記モータの回生損失が発生すると判定された場合、前記エネルギー算出手段により算出された前記総エネルギーに基づいて前記モータの回生損失が発生しないように前記搭載車両を前記停車位置に停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する減速操作開始位置特定手段を備え、
前記第1の案内手段は、前記搭載車両が前記減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記減速操作開始位置特定手段は、前記モータの回生損失が発生しないように前記搭載車両を前記停車位置に停止させるために必要な減速距離を算出する減速距離算出手段を備え、
前記停車位置より前記減速距離分手前の位置を前記減速操作開始位置として特定することを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
路側に設置された無線送信機と通信する通信手段と、
前記通信手段を介して前記無線送信機から走行先に存在する信号機のタイミング情報および前記無線送信機と前記信号機の手前の停車位置との距離を示す情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記情報を用いて前記搭載車両を前記信号機の手前で一時停止させる必要があるか否かを判定する停車判定手段と、
前記搭載車両の位置から前記停車位置までの区間が下り勾配であるか否かを判定する下り区間判定手段と、を備え、
前記下り勾配判定手段は、前記停車判定手段により前記搭載車両を前記信号機の手前で一時停止させる必要があると判定され、かつ、前記下り区間判定手段により前記搭載車両の位置から前記停車位置までの区間が下り勾配であると判定された場合、前記搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在すると判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項6】
搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする上り勾配区間が存在するか否かを判定する上り勾配判定手段を備え、
前記上り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記上り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作よりも緩やかなブレーキ操作を行うように運転者に案内する第2の案内手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項7】
走行用の動力源としてモータを使用する車両に搭載され、運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、
搭載車両の走行先に、当該搭載車両を停車位置に一時停止させるためのブレーキ操作を必要とする下り勾配区間が存在するか否かを判定する下り勾配判定手段と、
前記下り勾配判定手段により前記搭載車両の走行先に前記下り勾配区間が存在すると判定された場合、平坦区間を走行する際に行われるブレーキ操作の操作開始位置より手前でブレーキ操作を開始するように、車両の加減速を制御する走行制御部に指示する走行制御指示手段と、を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−146253(P2012−146253A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5972(P2011−5972)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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