説明

道路標識柱

【課題】ライトなどの光源がない場合であっても夜間の視認性に優れた道路標識柱並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマーからなる外筒部材12、外筒部材12の内部から下部外方に立設された固定用支柱部材14、固定用支柱部材14の外筒部材12の内部側端部に配設されたコイルバネ16及び外筒部材12の内部に充填されたポリウレタン発泡体18からなる道路標識柱10であって、外筒部材10の頂部は縮径した開口部22を有し、開口部に太陽電池41が装着されており、外筒部材12の頂部近傍の側面に太陽電池41を電源とするLED26が周方向に複数個装着されている道路標識柱10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形可能であり、上部にLEDを配設した夜間視認性の高い道路標識柱に関するものであり、特に歩道に設置することが好適な道路標識柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路標識柱は、上下車道の中央分離線や、車道と歩道の境界線標示用、公園や街路等の車止め仕切り等の標示用として使用されるものである。そのため、標識柱を大きな剛性を有する材料で形成すると、自動車が追突した場合,その衝撃で標識柱が破損したり、破片が飛散する等の危険性がある。また、自動車側も運転者が危害を受けるなどの危険性がある。さらに、標識柱に人がぶつかった場合にも、人に対して危害を与えてしまう可能性がある。
【0003】
係る問題を解決し、衝突により大きくたわむように構成した標識柱が公知である(特許文献1)。特許文献1に開示された標識柱は、金属パイプの上にコイルスプリングを接合した内層体と、該内層体の外側を被覆するエラストマーとから構成されているものである。該標識柱は、金属パイプの下部を地中に埋め込むことで、地面に設置されるものであり、上方部は柔軟でソフトな接触感を有しており、中間部はコイルスプリングとエラストマーとの複合体に特有の屈曲復元性を有する。よって、外力を受けるとすぐにたわむが、初期の形状を長期にわたり維持することができるように形成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−45450号公報(実用新案登録請求の範囲、第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に開示された道路標識柱は、夜間の視認性に問題を有するものである。道路標識柱は、夜間の視認性を高めるために円筒体の側面に再帰反射シートが帯状に巻回貼着されているが、特に歩道において、歩行者はライトを携行していない場合が殆どであり、自転車もライトを点灯していない場合が多いため、再帰反射シートは作用せず、衝突して転倒する場合があり、改善が求められる。車道に設置される道路標識柱にはポール部よりも直径の大きな基台部があり、該基台部に太陽電池を装着したものが公知であるが、歩道用の道路標識柱には係る基台部がなく、また歩行者の夜間の視認性向上のためにLEDは柱状部の上部に設けることが好ましく、太陽電池とこれを電源とするLEDは柱状部の上部に設けることが求められる。
【0006】
本発明は、上記公知技術の問題点に鑑みて、ライトなどの光源がない場合であっても夜間の視認性に優れた道路標識柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の道路標識柱は、熱可塑性エラストマーからなる外筒部材、前記外筒部材の内部から下部外方に立設された固定用支柱部材、前記固定用支柱部材の前記外筒部材の内部側端部に配設されたコイルバネ及び前記外筒部材の内部に充填されたポリウレタン発泡体からなる道路標識柱であって、
前記外筒部材の頂部は縮径した開口部を有し、前記開口部に太陽電池が装着されており、
前記外筒部材の頂部近傍の側面に前記太陽電池を電源とするLEDが周方向に複数個装着されていることを特徴とする。
【0008】
係る道路標識柱は上部にLEDが配設されているのでライトなどの光源がない場合であっても夜間の視認性に優れている。また全体が可とう性であるために人が衝突した場合においても安全性が高く、車両が衝突した場合においても車両の破損が低減される。
【0009】
外筒部材の頂部に太陽電池を含む電源部を設ける方法としては、外筒部材を押出成形などにより頂部まで円筒状に形成し、容器体に収容され、太陽電池を備えると共に防水処理がされた電源部を外筒部材と同じ外径を有するケースに収容してこのケースを外筒部材の頂部に装着固定する方法が考えられるが、ケースを別途作製して電源部を収容して固定する必要があって部品点数並びに製造における工数が多く、コスト的に好ましいものではない。また外筒部材の外径の異なる道路標識柱の製造において、外筒部材の形状に応じた形状を有するケースを製造しなければならないという問題も有する。本発明によれば、頂部に設ける開口部の大きさを電源部の収容に適した一定の大きさとすることによって、電源部を収容し、外筒部材の形状に応じた形状を有するケースを別途製造することなく、太陽電池とバッテリーなどの蓄電部を含む共通の電源部を装着することができる。
【0010】
上述の道路標識柱においては、前記ポリウレタン発泡体は、前記外筒部材の上部においてはポリウレタンフォームチップであり、前記固定用支柱部材とコイルバネの位置する下部においては軟質ないし半硬質のポリウレタンフォームであることが好ましい。
【0011】
係る構成によって、可とう性と軽量性を損なうことなく低コストにて道路標識柱を製造することができる。
【0012】
本発明の道路標識柱の製造方法は、熱可塑性エラストマーを射出成形して頂部に縮径した開口部を有する外筒部材を作製する外筒部材成形工程、前記外筒部材に対してコイルバネを装着した固定用支柱を配設する支柱部材配設工程、前記外筒部材の内部にポリウレタン発泡体を充填する発泡体充填工程、及び前記外筒部材の頂部近傍の側面にLEDを周方向に複数個装着すると共に前記開口部に前記LEDの電源となる太陽電池を備えた電源部を装着して点灯部を構成する点灯部形成工程を有することを特徴とする。
【0013】
係る構成の製造方法によれば、上部にLEDが配設されており、ライトなどの光源がない場合であっても夜間の視認性に優れた道路標識柱を製造することができる。また全体が可とう性であるために人が衝突した場合においても安全性が高く、車両が衝突した場合においても破損が低減された道路標識柱が得られる。また外径の異なる外筒部材を備えた道路標識柱の製造においても、開口部の形状を一定にすることにより同一の電源部を容易に装着することができる。
【0014】
上述の道路標識柱の製造方法においては、前記発泡体充填工程は、前記外筒部材の上部においてはポリウレタンフォームチップを充填し、前記ポリウレタンフォームチップ充填層の下方に前記コイルバネを装着した固定用支柱を配設し、発泡原液組成物を供給して発泡・硬化させて軟質ないし半硬質のポリウレタンフォームを充填する工程であることが好ましい。
【0015】
係る構成の製造方法によって、可とう性と軽量性を損なうことなく低コストにて道路標識柱を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の道路標識柱の好適な実施態様を例示した拡大正面図と縦断側面図
【図2】図1の道路標識柱の頂部を拡大した拡大正面図と縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の道路標識柱の外筒部材を構成する熱可塑性エラストマー(TPE)としては、公知の熱可塑性エラストマーは特に限定なく使用できる。具体的にはポリエステル系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ポリスチレン系TPE(TPS)、ポリアミド系TPE(TPAE)、アイオノマー系TPE、ジエン系TPE、ポリ塩化ビニル系TPE(TPVC)、ポリ塩化ビニル/ポリウレタンポリマーアロイ系TPE、熱可塑性樹脂とゴムとの混合物等が例示される。またこれらの熱可塑性エラストマーにゴムを混合ないし微粒子状で分散した熱可塑性エラストマーも使用可能である。これらのTPEは単独で使用可能であり、必要に応じて2種以上を混合使用してもよい。これらの熱可塑性エラストマーの中でも、ポリウレタン系TPEの使用が耐久性が優れていることから、特に好ましい。
【0018】
熱可塑性エラストマーは、硬度がJIS−A硬度(ASKER−A硬度計)にて95以下であることが好ましく、90以下であることがより好ましく、85以下であることがさらに好ましい。硬度が高すぎると繰返しの屈曲により破損する場合が生じる。熱可塑性エラストマーの硬度は、通常JIS−A硬度にて50以上である。
【0019】
外筒部材の内部に充填するポリウレタン発泡体は、外筒部材の上部においてはポリウレタンフォームチップであることが好ましく、固定用支柱部材とコイルバネの位置する下部においては軟質ないし半硬質のポリウレタンフォームであることが好ましい。ポリウレタンフォームチップとしては、軟質ポリウレタンフォームないし半硬質ポリウレタンフォームをチッパーなどの公知のチッピング装置を使用してチップ化したものを使用する。ポリウレタンフォームチップは、そのまま外筒部材内部に押し込むようにして充填してもよく、またバインダーを使用し、ポリウレタンフォームにバインダーを付着させて充填してもよい。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の道路標識柱の好適な実施態様を例示した正面図と縦断側面図であり、図2は図1に例示した道路標識柱の頂部を含む部分の拡大正面図と縦断側面図である。道路標識柱10は、略円筒状で頂部が凸状の曲面に形成された外筒部材12、外筒部材12の下部に配設された固定用支柱部材14、固定用支柱部材14の外筒部材12の内部側端部に配設されたコイルバネ16、並びに円筒状の外筒部材12の内部に充填されたポリウレタン発泡体18から構成されており、固定用支柱部材14の一部14bは外筒部材12の下端より外方に露出し、この部分が地中に固定される。生コンクリートの打設などにより地中に固定される固定用支柱部材の一部14bには回転や抜け防止のためにアンカーボルト32を装着することが好ましい。コイルバネ16は円筒状の固定用支柱部材14に溶接、嵌着、圧入、かしめなどの公知の方法により固定される。ポリウレタン発泡体は、上端部側はポリウレタンフォームチップ19が使用され、下端部側は、コイルバネ16と固定用支柱部材14を被覆して軟質ないし半硬質のポリウレタン発泡体が充填されている。コイルバネ16、固定用支柱部材14と外筒部材12は同軸に設定されることが好ましい。
【0021】
下端部側においてコイルバネ16と固定用支柱部材14を被覆して軟質ないし半硬質のポリウレタン発泡体が充填する構成によれば、半硬質のポリウレタン発泡体を形成する発泡原液組成物が発泡・硬化と共にコイルバネ16の空隙、固定用支柱部材14の内部に充填され、かつコイルバネ16と固定用支柱部材14に接着するために、求められる可とう性を有しつつ車両の衝突により変形しても剥離して強度が低下することがない。
【0022】
外筒部材12は、固定用支柱部材を立設する下端部は円筒状であるが、頂部は縮径され、開口部22が形成されており、頂部の近傍の側面には複数のLED26が装着されている。LED26の配設位置は、頂部近傍の側面であればよく、その位置は特に限定されない。開口部22には太陽電池を含む電源部24が装着されており、電源部24とLED26とを回路接続することにより点灯部が構成されている。電源部24は太陽電池41、バッテリーないしキャパシターからなる蓄電部と回路部材43及び太陽電池を固定し、蓄電部と回路部材43を収容する容器体45とを備えている。外筒部材12の頂部の縮径された開口部22の形状を一定にすれば、外径の異なる外筒部材12を使用した道路標識柱において同じ電源部を使用することができる。電源部24の太陽電池を含む表面部は、外筒部材12の頂部の形状と同じ湾曲形状に構成されていてもよく、さらに凸状となるように形成されていてもよく、また太陽電池部分が平坦に構成されていてもよい。LED26の個数は特に限定されないが、どの方向から見ても2個以上見えることが好ましい。
【0023】
道路標識柱10の外周には再帰反射テープ28が上部と下部に貼着されている。再帰反射テープ28貼着位置は、凹状に形成することが好ましい。図1、図2に例示の道路標識柱においては、上部の再帰反射テープ28は2段に構成されており、上側は細幅に構成されている。係る構成によれば夜間にライトが照射された場合に、さらに視認性が向上する。
【0024】
外筒部材12は、厚さが2〜6mmであることが好ましく、高さは一般には500〜2000mmであり、外径は一般には80〜150mmである。
【実施例2】
【0025】
図1に例示の道路標識柱の製造方法は、少なくとも以下の工程を有するものである。
(1)熱可塑性エラストマーを射出成形して頂部に縮径した開口部を有する外筒部材を作製する外筒部材成形工程。
(2)前記外筒部材に対してコイルバネを装着した固定用支柱を配設する支柱部材配設工程。
(3)前記外筒部材の内部にポリウレタン発泡体を充填する発泡体充填工程。
(4)前記外筒部材の頂部近傍の側面にLEDを周方向に複数個装着すると共に前記開口部に前記LEDの電源となる太陽電池を含む電源部を装着して点灯部を構成する点灯部形成工程。
【0026】
係る製造方法によれば、従来よりも簡単にLEDを含む点灯部を有する道路標識柱を製造することができる。上述のように、(3)発泡体充填工程は、外筒部材12の上部においてはポリウレタンフォームチップ19を充填し、ポリウレタンフォームチップ19充填層の下方にコイルバネ16を装着した固定用支柱14を配設し(支柱部材配設工程)、発泡原液組成物を供給して発泡・硬化させて軟質ないし半硬質のポリウレタンフォームを充填する2工程を有するものであってもよい。
【0027】
頂部においてポリウレタン発泡体充填部に電源部を嵌着する空隙は、ポリウレタン発泡体充填後に電源部に相当する部分を切削などにより除去して形成してもよく、電源部24に相当する型材を配設してからポリウレタン発泡体の充填を行ない、発泡体充填工程後に型材を除去することにより行ってもよい。外筒部のサイズが異なる道路標識柱を製造する場合であっても開口部の形状を同一にすることができ、共通の型材を使用して空隙を形成し、同じ電源部を装着することができる。
【0028】
点灯部の容器体を構成する材料は特に限定されず、金属、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどを使用することができる。電源部は水の侵入を防止するように接着剤やシール部材を使用して防水シールする。また外筒部材12の頂部の開口部22と電源部の間も水の侵入を防止するように防水シールする。
【符号の説明】
【0029】
10 道路標識柱
12 外筒部材
14 固定用支柱部材
16 コイルバネ
18 ポリウレタン発泡体
22 開口部
26 LED
41 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーからなる外筒部材、前記外筒部材の内部から下部外方に立設された固定用支柱部材、前記固定用支柱部材の前記外筒部材の内部側端部に配設されたコイルバネ及び前記外筒部材の内部に充填されたポリウレタン発泡体からなる道路標識柱であって、
前記外筒部材の頂部は縮径した開口部を有し、前記開口部に太陽電池が装着されており、
前記外筒部材の頂部近傍の側面に前記太陽電池を電源とするLEDが周方向に複数個装着されていることを特徴とする道路標識柱。
【請求項2】
前記ポリウレタン発泡体は、前記外筒部材の上部においてはポリウレタンフォームチップであり、前記固定用支柱部材とコイルバネの位置する下部においては軟質ないし半硬質のポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載の道路標識柱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−21397(P2012−21397A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237675(P2011−237675)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2006−341540(P2006−341540)の分割
【原出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】