説明

遮熱断熱積層体

【課題】建築物外装面の表面に対し、装飾性の高い仕上面を形成することができるとともに、建築物の温度上昇を抑制し、省エネルギーにも資する技術を提供する。
【解決手段】建築物外装面を構成する遮熱断熱積層体において、外装面の屋内側から屋外側へ向かって、基材層(A)、結合材及び中空粒子を含有する下塗材により形成される断熱性下塗層(B)、有機質結合材及び粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含有する装飾性塗材により形成される装飾材層(C)を設け、前記装飾材層(C)における有色粒子として、赤外線反射性粉体により基体粒子が被覆された粒子及び/または赤外線反射性粉体の集合体からなる粒子を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な遮熱断熱積層体に関する。本発明積層体は、外壁、屋根、屋上等の建築物外装面に適用できる。本発明では、自然石調等の装飾仕上げを得ることができる。
【背景技術】
【0002】
建築物の外装面では、景観上の観点から美観性が求められる。また建築物においては、外壁、屋根、屋上等の外装面の断熱性を高めることにより、省エネルギー化を図ろうとする動きがある。
このような背景のもと、種々の技術が提案されている。例えば特開2002−186896号公報等では、建築物の外装壁面における塗膜構造として、断熱塗膜層と石材調塗膜層との少なくとも2層を設けることが記載されている。この特許文献に記載の技術によれば、建築物外装面に断熱性を付与しつつ、石材調の装飾仕上げを得ることができ、美観性の点でも好ましいものである。
【0003】
【特許文献1】特開平2002−186896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、都市部においては、コンクリート建造物や冷房等から排出される人工放射熱などにより、都市独特の気候が作り出されている。特に夏期において都市部における屋外の温度上昇は著しく、ヒートアイランド現象と呼ばれる問題を引き起こしている。これに対し、建築物内部においては、冷房の使用によって屋内温度を下げることが頻繁に行われるが、冷房の多用は消費電力エネルギーを増加させるだけでなく、室外機からの排気によって屋外の温度上昇を助長している。
【0005】
前述の特許文献等に記載の技術では、このような問題点に十分に対処することは困難である。
さらに、上記特許文献のような塗膜構造では、断熱塗膜層の断熱性能を高めると、石材調塗膜層で発生した熱が下層の方向に伝導・拡散することができなくなり、上層の温度上昇を招いてしまう。すなわち、下層の断熱性能の向上は、石材調塗膜層に対する熱的負荷を増大させてしまうものとなる。このような熱的負荷の増大は、塗膜の膨れ、剥れ、浮き等を引き起こす原因となる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、建築物外装面の表面に対し、装飾性の高い仕上面を形成することができるとともに、建築物の温度上昇を抑制し、省エネルギーにも資する技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため本発明者らは鋭意検討を行った結果、断熱性下塗層の上に、有機質結合材及び特定の有色粒子を含む装飾性塗材を積層することに想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.建築物外装面を構成する遮熱断熱積層体であって、
外装面の屋内側から屋外側へ向かって、基材層(A)、結合材及び中空粒子を含有する下塗材により形成される断熱性下塗層(B)、有機質結合材及び粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含有する装飾性塗材により形成される装飾材層(C)を有し、
前記装飾材層(C)における有色粒子として、赤外線反射性粉体により基体粒子が被覆された粒子及び/または赤外線反射性粉体の集合体からなる粒子を含むことを特徴とする遮熱断熱積層体。
2.前記装飾材層(C)は、目地により区切られた非連続な層であり、当該目地では、前記断熱性下塗層(B)が露出している1.記載の遮熱断熱積層体。
3.建築物外装面を構成する遮熱断熱積層体であって、
外装面の屋内側から屋外側へ向かって、基材層(A)、結合材及び中空粒子を含有する下塗材により形成される断熱性下塗層(B)、結合材及び赤外線反射性粉体を含有する中塗材により形成される中塗層(B’)、有機質結合材及び粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含有する装飾性塗材により形成される装飾材層(C)を有し、
前記装飾材層(C)における有色粒子として、赤外線反射性粉体により基体粒子が被覆された粒子及び/または赤外線反射性粉体の集合体からなる粒子を含むことを特徴とする遮熱断熱積層体。
4.前記装飾材層(C)は、目地により区切られた非連続な層であり、当該目地では、前記中塗層(B’)が露出している3.記載の遮熱断熱積層体。
5.前記下塗材における結合材として、白色度70以上の無機質結合材を含む1.〜4.のいずれかに記載の遮熱断熱積層体。
6.前記下塗材が、結合材、中空粒子、及び赤外線反射性粉体を含有するものである1.〜4.のいずれかに記載の遮熱断熱積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装飾性の高い仕上面を形成することができる。例えば御影石等の自然石調の装飾仕上げを得ることができる。本発明は、石材やタイル等に代わる仕上技術としても有用である。
さらに、本発明では、建築物外装面に遮熱断熱性を付与し、建築物の温度上昇を抑制することができる。本発明は、省エネルギーに貢献する技術として活用できる。しかも、本発明では、その形成塗膜における膨れ、剥れ、浮き等の発生を防止することができ、長期にわたって安定した塗膜性能を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
[基材層]
本発明における基材層(A)としては、建築物外装面を構成するものである限り特に限定されないが、例えば、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属ボード、磁器タイル、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、石膏ボード、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、煉瓦、合板等、あるいはこれらの複合体等があげられる。このような基材層は、何らかの表面処理層(例えば、シーラー層、パテ層、サーフェーサー層等)を有するものであってもよい。
【0012】
[断熱性下塗層]
断熱性下塗層(B)は、結合材及び中空粒子を含有する下塗材により形成されるものである。
結合材としては、有機質結合材及び/または無機質結合材が使用できる。このうち有機質結合材としては、例えば、合成樹脂エマルション、水溶性樹脂、溶剤型樹脂、無溶剤型樹脂、粉末樹脂等を使用することができる。具体的に、樹脂の種類としては、例えばクロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アスファルト、ゴムアスファルト等が挙げられる。このうち、アクリル樹脂エマルションが好適に用いられる。アクリル樹脂エマルションとしては、特に、ニトリル基含有アクリル樹脂エマルション、アミド基含有アクリル樹脂エマルション、陽イオン性アクリル樹脂エマルション等が好適である。
【0013】
無機質結合材としては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等のコロイダル金属酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等の水溶性ケイ酸アルカリ金属塩、ポルトランドセメント、アルミナセメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント等の各種セメント等が挙げられる。このうち、セメントが好適に用いられる。
無機質結合材としては、白色度が70以上(好ましくは80以上、より好ましくは90以上)のものが好適である。このような白色度の高いものを用いることにより、温度上昇抑制効果等を高めることができる。なお、ここに言う白色度とは、分光光度計を用いて測定されるL値である。
【0014】
本発明の下塗材における結合材としては、有機質結合材のみを用いるか、あるいは無機質結合材と有機質結合材を併用することが望ましい。このうち、無機質結合材と有機質結合材を併用する場合、無機質結合材と有機質結合剤の固形分重量比率は、98/2〜50/50(好ましくは95/5〜80/20)とすることが望ましい。また、無機質結合材としてはセメントを使用し、有機質結合材としてはアクリル樹脂エマルションを使用することが望ましい。アクリル樹脂エマルションとしては、ニトリル基含有アクリル樹脂エマルション、陽イオン性アクリル樹脂エマルション等が望ましく、特にニトリル基含有陽イオン性アクリル樹脂エマルションが好適である。このような結合材を用いることにより、付着性、強度等の性能を高めることができ、ひいては長期にわたり安定した温度上昇抑制効果等を得ることができる。
【0015】
中空粒子は、下塗層(B)に断熱性を付与する成分である。中空粒子としては、例えば、中空セラミック粒子、中空樹脂粒子等が挙げられる。中空セラミック粒子を構成するセラミック成分としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、フライアッシュ、アルミナ、シラス、黒曜石等が挙げられる。中空樹脂粒子を構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合樹脂等が挙げられる。中空粒子は、これらの成分を公知の方法で発泡させることにより得られる。
【0016】
中空粒子の平均粒子径は通常0.1〜200μm(好ましくは1〜150μm)程度である。また、中空粒子の密度は通常0.01〜1g/cm(好ましくは0.01〜0.8g/cm)程度である。
中空粒子の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常0.5〜200重量部、好ましくは1〜100重量部である。
【0017】
本発明の下塗材は、上記成分を公知の方法によって均一に混合することで製造することができるが、必要に応じ通常塗材に使用可能なその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0018】
[装飾材層]
本発明における装飾材層(C)は、有機質結合材及び粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含有する装飾性塗材により形成されるものである。
【0019】
有機質結合材は、有色粒子を固定化する役割等を担うものである。具体的に有機質結合材としては、合成樹脂エマルション、水溶性樹脂、溶剤型樹脂、無溶剤型樹脂、粉末樹脂等が挙げられる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、またその形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、合成樹脂エマルション及び/または水溶性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。
【0020】
本発明では、装飾性塗材における有色粒子として、赤外線反射性粉体により基体粒子が被覆された粒子及び/または赤外線反射性粉体の集合体からなる粒子を含む。本発明では、このような特定の有色粒子を必須成分として含むことにより、装飾性の高い仕上面が形成できるとともに、建築物の温度上昇を十分に抑制することが可能となる。
【0021】
上記有色粒子のうち、まず、赤外線反射性粉体により基体粒子が被覆された粒子(以下「粒子(i)」ともいう)について説明する。
【0022】
粒子(i)における基体粒子としては、例えば大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石等の粉砕物、珪砂、雲母、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラス粒、樹脂粒、金属粒、植物粉砕物等が挙げられる。多孔質粒子や発泡粒子も使用できる。
【0023】
粒子(i)では、上述の基体粒子の表面を、赤外線反射性粉体で被覆する。このような粒子(i)は、結合材と赤外線反射性粉体を含む着色剤で、基体粒子を被覆することにより得ることができる。結合材としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等の水溶性ケイ酸アルカリ金属塩、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂類、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。
【0024】
赤外線反射性粉体としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、マンガン−鉄−コバルト複合酸化物、ペリレン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、弁柄、朱、チタニウムレッド、カドミウムレッド、イソインドリノン、イソインドリン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。粒子(i)の色相は、これら赤外線反射性粉体の種類や量を適宜選択・調製することにより設定できる。
着色剤における赤外線反射性粉体の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常0.1〜100重量部である。
【0025】
粒子(i)は、基体粒子と着色剤を混合した後、当該混合物を乾燥する方法等によって製造することができる。基体粒子に着色剤を混合する方法としては、例えば、基体粒子に、直接着色剤を一括混合する方法や、基体粒子に対し着色剤をスプレーする方法等が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、真空乾燥、直接加熱乾燥、高周波加熱乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿乾燥等を採用することができる。
【0026】
本発明では、上記粒子(i)の他に、赤外線反射性粉体の集合体からなる粒子(以下「粒子(ii)」ともいう)も使用できる。このような粒子(ii)としては、赤外線反射性粉体と結合材との混合物により得られるフィルムを所定の粒子径に破砕したもの、あるいは赤外線反射性粉体と結合材との混合物を所定の粒子径に成形したもの、等が使用できる。
【0027】
装飾性塗材における有色粒子の粒子径は、0.01〜5mm(好ましくは0.03〜3mm)に設定する。有色粒子の粒子径が小さすぎる場合は、塗膜が単色になりやすく、装飾性が不十分となる。逆に粒子径が大きすぎる場合は、凹凸が目立ちすぎる仕上りとなりやすい。
【0028】
装飾性塗材における有色粒子の混合比率は、有機質結合材の固形分100重量部に対し、通常100〜2000重量部(好ましくは200〜1500重量部)である。
上記粒子(i)と粒子(ii)は、その総量が有色粒子中に50重量%以上(好ましくは80重量%以上)となるように配合することが望ましい。このような比率であれば、温度上昇抑制効果等を十分に得ることができる。
【0029】
本発明の装飾性塗材では、上記成分に加え、透明粒子及び/または中空粒子を含むことができる。このような成分を含むことにより、本発明の効果をいっそう高めることができる。
このうち透明粒子の配合は、装飾材層(C)の色相が濃色(具体的にはL値が50以下)である場合に有効である。これは、有色骨材の配合量を相対的に減量しても所望の色相が得られやすくなるためである。透明粒子としては、光透過率が20%以上であるものが好適である。なお、ここに言う光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、透明粒子の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。但し試料としては、粒子径が0.5〜1.0mmのものを選別して用いる。
【0030】
このような透明粒子の具体例としては、例えばガラスビーズ、ガラス粉砕物、シリカ、寒水石、長石、珪石、樹脂ビーズ等が挙げられる。
透明粒子の粒子径は、通常0.1〜5.0mmである。
透明粒子の混合比率は、有機質結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜500重量部である。
【0031】
中空粒子としては、下塗材で挙げたものと同様のものが使用できる。
中空粒子の混合比率は、有機質結合材の固形分100重量部に対し、通常5〜300重量部である。
【0032】
透明粒子及び/または中空粒子としては、その形状が真球状であるものが好適である。このような真球状の粒子を使用することにより、蓄熱源となる汚染物質等の付着を抑制することが可能となり、温度上昇抑制の点でも有利である。
【0033】
本発明の装飾性塗材は、上記成分を公知の方法によって均一に混合することで製造することができるが、必要に応じ通常塗材に使用可能なその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等が挙げられる。また、本発明の効果が損われない範囲内であれば、本発明の規定から外れる有色粒子等を混合することもできる。
【0034】
[遮熱断熱積層体の形成方法]
本発明の遮熱断熱積層体は、外装面の屋内側から屋外側へ向かって、基材層(A)、断熱性下塗層(B)、装飾材層(C)を有するものである。このような遮熱断熱積層体は、基材層(A)に対して前記下塗材を塗付して断熱性下塗層(B)を形成した後、前記装飾性塗材を塗付して装飾材層(C)を形成することにより得ることができる。各材料の施工、乾燥養生等は、通常常温で行う。
【0035】
断熱性下塗層(B)は、基材層(A)の上に前記下塗材を塗付することにより形成できる。塗装においては、スプレー、ローラー、刷毛、鏝等の塗装器具を使用することができる。断熱性下塗層(B)の厚みは、所望の断熱性能等に応じて適宜設定すればよいが、通常は0.5〜20mm程度である。
【0036】
本発明では、断熱性下塗層(B)と装飾材層(C)の間に、中塗層(B’)を設けることもできる。このような中塗層(B’)は、結合材及び赤外線反射性粉体を含有する中塗材により形成できる。このような層を設けることは、本発明の効果発現の点で好ましいものである。中塗層(B’)の厚みは、通常0.01〜1mm程度である。
また、断熱性下塗層(B)を形成する下塗材として、赤外線反射性粉体を配合したものを用いることで、同様の効果を得ることもできる。この場合、赤外線反射性粉体は、下塗材の結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜400重量部(好ましくは2〜200重量部)程度配合すればよい。
【0037】
装飾材層(C)は、断熱性下塗層(B)または中塗層(B’)の上に、装飾性塗材を塗付することによって形成すればよい。塗装においては、スプレー、ローラー、刷毛、鏝等の塗装器具を使用することができる。装飾材層(C)の厚みは、装飾性塗材の種類にもよるが、通常は0.05〜10mm程度である。
【0038】
本発明では、装飾材層(C)に目地模様を設けることもできる。このような目地模様を設ける方法としては、赤外線反射性粉体を含む断熱性下塗層(B)または中塗層(B’)の上に、目地材を貼り付けた後、装飾性塗材を塗付し、その後に目地材を除去する方法等を採用することができる。本発明では、このような目地模様によって美観性を高めつつ、外装面全体の温度上昇を十分に抑制することができる。
【0039】
目地模様としては、種々の模様を適宜設定することができる。具体的には、例えば、タイル調模様、レンガ調模様、幾何学的模様、水玉模様、縞模様、格子模様、渦巻き模様、紋章柄の他、動植物、器物、文字等をデザイン化した図形模様等が可能である。これらの模様を表出するためには、棒状の目地材を複数組合わせて用いてもよいし、平面状の型紙を所望の模様形状に応じて打ち抜いたものを用いてもよい。
目地材を構成する材料としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、SBR等のゴム、ポリエステル、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン等の樹脂発泡体等が挙げられる。
目地の幅は、通常5mm以上、好ましくは10〜500mmである。本発明では、目地幅が比較的広い場合に有利な効果を得ることができる。
【0040】
装飾材層(C)の表面には、耐候性、防汚性等を高める目的で、別途クリヤー塗料等を塗付することもできる。クリヤー塗料としては、有機質結合材及びアルコキシシラン化合物を含むもの等が好適である。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0042】
(装飾性塗材1の製造)
容器内に有機質結合材1を200重量部仕込み、これに骨材1を700重量部、造膜助剤を12重量部、増粘剤を4重量部、消泡剤を6重量部混合し、常法にて均一に攪拌することにより装飾性塗材1を製造した。
【0043】
(装飾性塗材2の製造)
容器内に有機質結合材1を200重量部仕込み、これに骨材1を700重量部、中空粒子1を50重量部、造膜助剤を12重量部、増粘剤を4重量部、消泡剤を6重量部混合し、常法にて均一に攪拌することにより装飾性塗材2を製造した。
【0044】
(装飾性塗材3の製造)
容器内に有機質結合材1を200重量部仕込み、これに骨材2を700重量部、造膜助剤を12重量部、増粘剤を4重量部、消泡剤を6重量部混合し、常法にて均一に攪拌することにより装飾性塗材3を製造した。
【0045】
なお、装飾性塗材の製造においては下記の原料を使用した。
・有機質結合材1:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度30℃)
・骨材1:アクリルシリコン樹脂200重量部に対し、マンガン−ビスマス複合酸化物を20重量部混合した着色剤1によって、珪砂を被覆して得られる黒色骨材。粒子径0.2〜1mm。
・骨材2:アクリルシリコン樹脂200重量部に対し、カーボンブラックを20重量部混合した着色剤2によって、珪砂を被覆して得られる黒色骨材。粒子径0.2〜1mm。
・中空粒子1:平均粒子径40μmの真球状ガラスバルーン、密度0.45g/cm
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
・増粘剤:ウレタン系増粘剤
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
【0046】
○実施例1
アルミニウム板の片面に、ポルトランドセメント(L値93)、フライアッシュバルーン(平均粒子径90μm、密度0.78g/cm)、ニトリル基含有陽イオン性アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)、及び水を混練(固形分重量比100:35:22:30)して得られる下塗材1を鏝塗りし、16時間養生後、上記の装飾性塗材1をスプレー塗装し、14日間養生した。
これにより、乾燥厚み3mmの下塗層と、乾燥厚み2〜3mmの装飾材層が積層された試験体を得た。なお、試験板の作製・養生はすべて標準状態(気温23℃・相対湿度50%)で行った。
【0047】
(試験1)
上述の方法で得られた試験板について、60cmの距離を設けて赤外線ランプ(出力250W)を20分間照射したときの裏面温度を測定した。
【0048】
(試験2)
上述の方法で得られた試験板について、60cmの距離を設けて赤外線ランプ(出力250W)を8時間照射した後、23℃の水に16時間浸漬するサイクルを、合計10サイクル行った後、その外観変化を目視にて観察した。評価は、異常(膨れ、剥れ、浮き等)が認められないものを「○」、一部に異常が認められたものを「△」、明らかに異常が認められたものを「×」として行った。
【0049】
試験結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
○実施例2
装飾性塗材1に替えて、装飾性塗材2を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表1に示す。
【0052】
○比較例1
装飾性塗材1に替えて、装飾性塗材3を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表1に示す。
【0053】
○実施例3
アルミニウム板の片面に下塗材1を鏝塗りした。24時間養生後、アクリル樹脂エマルション200重量部(固形分50重量%)、平均粒子径12μmの炭酸カルシウム520重量部、平均粒子径250μmの酸化珪素80重量部を主成分とし、さらにペリレンレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、フタロシアニンブルーの混合物を20重量部混合して得られる中塗材1を鏝塗りし、16時間養生した。
次に、目地幅30mmの目地材を格子状に貼り付けた後、上記の装飾性塗材1をスプレー塗装し、目地材を除去後、7日間養生した。
これにより、乾燥厚み3mmの下塗層と、乾燥厚み0.3mmの中塗層と、乾燥厚み2〜3mmの装飾材層が積層され、格子状の目地模様を有する試験体を得た。なお、試験板の作製・養生はすべて標準状態で行った。
以上の方法で得られた試験板につき、上述の試験1及び試験2を実施した。試験結果を表2に示す。
【0054】
○実施例4
装飾性塗材1に替えて装飾性塗材2を使用した以外は、実施例3と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表2に示す。
【0055】
○実施例5
アルミニウム板の片面に下塗材1を鏝塗りした。24時間養生後、目地幅30mmの目地材を格子状に貼り付けた後、上記の装飾性塗材1をスプレー塗装し、目地材を除去後、7日間養生した。
これにより、乾燥厚み3mmの下塗層と、乾燥厚み2〜3mmの装飾材層を有し、格子状の目地模様が積層された試験体を得た。なお、試験板の作製・養生はすべて標準状態で行った。
以上の方法で得られた試験板につき、上述の試験1及び試験2を実施した。試験結果を表2に示す。
【0056】
○参考例1
中塗材1に替えて下記の中塗材2を使用した以外は、実施例3と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表2に示す。
・中塗材2:アクリル樹脂エマルション200重量部(固形分50重量%)、平均粒子径12μmの炭酸カルシウム520重量部、平均粒子径250μmの酸化珪素80重量部を主成分とし、さらにカーボンブラックを20重量部混合して得られる中塗材。
【0057】
○参考例2
装飾性塗材1に替えて装飾性塗材3を使用した以外は、実施例3と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表2に示す。
【0058】
○参考例3
中塗材1に替えて中塗材2を使用し、装飾性塗材1に替えて装飾性塗材3を使用した以外は、実施例3と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表2に示す。
【0059】
○参考例4
下塗材1に替えて、下記の下塗材2を使用した以外は、実施例5と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表2に示す。
・下塗材2:ポルトランドセメント(L値62)、フライアッシュバルーン(平均粒子径90μm、密度0.78g/cm)、ニトリル基含有陽イオン性アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)、及び水を混練(重量比100:35:22:30)して得られる下塗材。
【0060】
【表2】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物外装面を構成する遮熱断熱積層体であって、
外装面の屋内側から屋外側へ向かって、基材層(A)、結合材及び中空粒子を含有する下塗材により形成される断熱性下塗層(B)、有機質結合材及び粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含有する装飾性塗材により形成される装飾材層(C)を有し、
前記装飾材層(C)における有色粒子として、赤外線反射性粉体により基体粒子が被覆された粒子及び/または赤外線反射性粉体の集合体からなる粒子を含むことを特徴とする遮熱断熱積層体。
【請求項2】
前記装飾材層(C)は、目地により区切られた非連続な層であり、当該目地では、前記断熱性下塗層(B)が露出している請求項1記載の遮熱断熱積層体。
【請求項3】
建築物外装面を構成する遮熱断熱積層体であって、
外装面の屋内側から屋外側へ向かって、基材層(A)、結合材及び中空粒子を含有する下塗材により形成される断熱性下塗層(B)、結合材及び赤外線反射性粉体を含有する中塗材により形成される中塗層(B’)、有機質結合材及び粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含有する装飾性塗材により形成される装飾材層(C)を有し、
前記装飾材層(C)における有色粒子として、赤外線反射性粉体により基体粒子が被覆された粒子及び/または赤外線反射性粉体の集合体からなる粒子を含むことを特徴とする遮熱断熱積層体。
【請求項4】
前記装飾材層(C)は、目地により区切られた非連続な層であり、当該目地では、前記中塗層(B’)が露出している請求項3記載の遮熱断熱積層体。
【請求項5】
前記下塗材における結合材として、白色度70以上の無機質結合材を含む請求項1〜4のいずれかに記載の遮熱断熱積層体。
【請求項6】
前記下塗材が、結合材、中空粒子、及び赤外線反射性粉体を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の遮熱断熱積層体。


【公開番号】特開2009−90527(P2009−90527A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262788(P2007−262788)
【出願日】平成19年10月6日(2007.10.6)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】