説明

遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を使用する、カロチノイドまたはそれらの前駆体を製造するための方法、上記方法によって製造されたカロチノイドまたはそれらの前駆体、ならびにそれらの使用

本発明は、遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を使用して、カロチノイドまたはそれらの前駆体を製造するための方法に関する。上記方法は以下の工程を包含する:(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、上記改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞の場合によるホモカリオン転換、(iii)遺伝子改変された細胞の選択および複製、(iv)遺伝子改変された細胞の培養、(v)遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイドまたは上記遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイド前駆体の調製。本発明はまた、上記方法に従って製造されたカロチノイドまたはそれらの前駆体およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を使用してカロチノイドまたはそれらの前駆体を産生するための方法、上記方法によって製造されたカロチノイドまたはそれらの前駆体、ならびに、特に高純度カロチノイドとして、カロチノイド産生生物および少なくとも1種のカロチノイドを含む食材として、特に動物用飼料、動物用栄養補助飼料および栄養補助食品としてのそれらの使用および提供、ならびに化粧品、医薬品、皮膚用製剤、食材、または栄養補助食品を製造するための、上記方法によって取得可能なカロチノイドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Blakeslea trisporaはβ−カロチン(Ciegler, 1965, Adv Appl Microbiol. 7:1)およびリコピン(EP 1201762, EP 1184464, WO 03/038064)についての公知の生産生物である。
【0003】
Blakeslea trisporaの種々のDNA配列、特にゲラニルゲラニルピロリン酸からβ−カロチンへのカロチノイド生合成の遺伝子をコードするDNA配列がすでに公知である(WO 03/027293)。
【0004】
リコピンおよびβ−カロチンの産生のためのBlakesleaによって達成される高生産性は、特に、この生物をカロチノイドの発酵的製造のために適切にする。
【0005】
以前に天然に産生されたカロチンおよびそれらの前駆体のこの生産性をさらに増大させること、ならびに例えば、以前には、もしあったとしても、非常に低い程度までのみBlakesleaによって産生され、かつBlakesleaから単離されたキサントフィルなどのカロチノイドを産生することをさらに可能にすることもまた、関心対象のことである。
【0006】
カロチノイドは、飼料、食材、栄養補助食品、化粧品、および医薬品に添加される。カロチノイドは、とりわけ着色のための色素として使用される。このことを別として、カロチノイドの抗酸化作用およびこれらの物質の他の特性が利用される。カロチノイドは、純粋な炭化水素、カロチン、および酸素含有炭化水素、キサントフィルに分けられる。カンタキサンチンおよびアスタキサンチンなどのキサントフィルは、例えば、鶏卵および魚の着色において利用される(Brittonら、1998, Carotinoids, 第3巻, Biosynthesis and Metabolism)。カロチンであるβ−カロチンおよびリコピンはとりわけヒト栄養において利用される。例えば、β−カロチンは、飲料用の着色料として使用される。リコピンは疾患予防作用を有する(ArgwalおよびRao, 2000, CMAJ 163:739-744; RaoおよびArgwal 1999, Nutrition Research 19:305-323)。無色のカロチノイド前駆体フィトエンは、化粧品、医薬品、または皮膚用製剤中の抗酸化剤としての適用のためにとりわけ適している。
【0007】
上述の適用における添加物として利用される、大部分のカロチノイドおよびそれらの前駆体は化学合成によって調製される。上記化学合成は非常に複雑であり、高い製造コストを生じる。対照的に、発酵プロセスは比較的単純で、かつ高価でない開始材料に基づく。以前の発酵プロセスの生産性が増大し、または新規なカロチノイドが既知の生産生物に基づいて調製されることが可能であるならば、カロチノイドおよびそれらの前駆体を産生するための発酵プロセスは、経済的に魅力的でありかつ化学合成と競合することが可能であり得る。
【0008】
このことは、特にキサントフィルが産生される場合、遺伝子操作された、すなわち、特異的な遺伝子の、Blakesleaの改変を必要とする。なぜなら、これらの化合物は野生型Blakesleaによって天然には合成されないからである。
【0009】
例えば、Blakeslea trisporaの発酵によってフィトエンを製造するための以前の2つの方法が知られている:
(i)MNNGなどの化学薬剤を使用するランダム突然変異誘発は、フィトエンをリコピンに、従ってさらにβ−カロチンに転換できない突然変異体を生成し得る(MehtaおよびCerda-Olmedo, 1995, Appl. Microbiol. Biotechnol. 42:836-838)。
【0010】
(ii)例えばジフェニルアミンおよびシンナミルアルコールなどの酵素フィトエンデサチュラーゼのインヒビターの付加が、フィトエンのさらなる転換をブロックし得、後者が蓄積することを引き起こす(Cerda-Olmedo, 1989, E. Vandamme編 Biotechnology of vitamin, growth factor and pigment production. London: Eisevier Applied Science, 27〜42頁)。
【0011】
しかし、Blakeslea trisporaを使用してフィトエンを調製するために言及された方法は多数の不利な点を有する。
【0012】
上記のランダム突然変異誘発は、通常フィトエンのさらなる転換のためのカロチノイド生合成遺伝子だけでなく、他の重要な遺伝子にもまた影響を与える。この理由のために、突然変異体の増殖および合成の実行はしばしば損なわれる。それゆえに、例えば、リコピン過剰発現株またはβ−カロチン過剰発現株のランダム突然変異誘発によるフィトエン過剰発現株の生成は、もしあったとしても、非常な実験的な複雑さを伴ってのみ達成され得る。インヒビターの付加は生産コストを増大し、生成物の夾雑を引き起こし得る。さらに、細胞増殖がインヒビターによって損なわれ得、従って、カロチノイドまたはそれらの前駆体、特にフィトエンの産生を制限する。
【0013】
ランダム突然変異誘発およびインヒビターの付加の上述の不利な点は、遺伝子操作による改変によって回避され得る。
【0014】
しかし、これまでに、Blakeslea、特にBlakeslea trisporaの遺伝子操作による、すなわち、特異的な遺伝子の改変のための方法は知られていない。
【0015】
いくつかの場合において首尾よく利用されてきた遺伝子改変された真菌の産生のための方法は、アグロバクテリウム媒介形質転換である。従って、例えば、以下の生物がアグロバクテリウムによって形質転換されてきた:Saccharomyces cerevisiae(Bundockら、1995, EMBO Journal, 14:3206-3214)、Aspergillus awamori、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Colletotrichum gloeosporioides、Fusarium solani pisi、Neurospora crassa、Trichoderma reesei、Pleurotus ostreatus、Fusarium graminearum(van der Toorrenら、1997, EP 870835)、Agraricus bisporus、Fusarium venenatum(de Grootら、1998, Nature Biotechnol. 16:839-842)、Mycosphaerella graminicola(Zwiersら 2001, Curr. Genet. 39:388-393)、Glarea lozoyensis(Zhangら, 2003, Mol. Gen. Genomics 268:645-655)、Mucor miehei(Monfortら、2003, FEMS Microbiology Lett. 244:101-106)。
【0016】
特に関心対象のものは相同組換えであり、これは、導入されるDNAと細胞DNAとの間に可能な限り多くの配列相同性を含み、その結果、レシピエント生物のゲノム中で部位特異的な遺伝情報を導入または除去することが可能である。さもなくば、ドナーDNAは、部位特異的でない非正統的組換えまたは非相同的組換えによってレシピエント生物のゲノムに組み込まれる。
【0017】
アグロバクテリウム媒介形質転換および引き続く導入DNAの相同組換えは、以下の生物について以前に検出されてきた:Aspergillus awamori(Goukaら、1999, Nature Biotech 17:598-601)、Glarea lozoyensis(Zhangら、2003, Mol. Gen. Genomics 268:645-655)、Mycosphaerella graminicola((Zwiersら、2001, Curr. Genet. 39:388-393)。
【0018】
真菌を形質転換するための別の公知の方法は、エレクトロポレーションである。Hill, Nucl. Acids. Res. 17:8011は、エレクトロポレーションによる酵母の組み込み形質転換を示した。糸状菌の形質転換はChakabortyおよびKapoor(1990, Nucl. Acids. Res. 18:6737)によって記載されている。
【0019】
「微粒子銃」法、すなわち、DNA負荷した粒子を用いる細胞の衝撃によるDNAの導入は、例えば、Trichoderma harzianumおよびGliocladium virens(Loritoら 1993, Curr. Genet. 24:349-356)において記載されている。
【0020】
しかし、Blakesleaおよび特にBlakeslea trisporaの特異的遺伝子改変のためにこれらの方法を首尾よく利用することは以前には可能ではなかった。
【0021】
遺伝子改変したBlakesleaおよびBlakeslea trisporaを産生する際の特定の困難さは、それらの細胞が、有性細胞および栄養細胞のサイクルのすべての段階において多核性であるという事実である。例えば、Blakeslea trispora株NRRL2456およびNRRL2457の胞子は、胞子あたり平均4.5核を有することが見い出された(MethaおよびCerda-Olmedo, 1995, Appl. Microbiol. Biotechnol. 42:836-838)。このことの結果として、遺伝子改変は、通常、1個またはいくつかの核のみにおいて存在し、すなわち、細胞はヘテロカリオン性である。
【0022】
遺伝子改変されたBlakeslea、特にBlakeslea trisporaが製造のために使用されることが意図される場合、特に遺伝子欠失の場合に、安定かつ高度な合成性能を副生成物を伴わずに可能にするために、遺伝子改変が生産株のすべての核に存在することが重要である。この株は、上記遺伝子改変に関して、結果的にホモカリオン性でなくてはならない。
【0023】
ホモカリオン性細胞を生成する方法は、Phycomyces blakesleeanusについてのみ記載されてきた(Ronceroら、1984, Mutat. Res. 125:195)。そこに記載される方法に従って、1つの機能的な核のみを有する統計学的に確実な数の細胞を得るために、突然変異誘発物質MNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)を加えることによって、核が細胞中で除去される。次いで、細胞を、劣性の選択マーカーを有する単核細胞のみが菌糸体中で増殖する選択に供する。これらの選択細胞の子孫は多核性でありかつホモカリオン性である。Phycomyces blakesleanusについての劣性選択マーカーの一例はdarである、dar株は、dar株とは異なり毒性リボフラビンアナログ5−炭素−5−デアザリボフラビンを吸収する(Delbruckら、1979, Genetics 92:27)。劣性突然変異体は5−炭素−5−デアザリボフラビン(DARF)を加えることによって選択される。
【0024】
しかし、この方法は、Blakeslea、特にBlakeslea trisporaについては未知であり、そして特に、形質転換またはカロチノイドもしくはそれらの前駆体の産生に関して記載されていない。
【0025】
天然の供給源からの単離もまた実行される。フィトエンを得る既知の例は、トマト、ニンジン、またはパーム油などから、カロチノイド、ビタミンE、および他の成分の混合物(これはまたフィトエンも含む)を抽出することである。ここで1つの問題は、個々のカロチノイドの互いからの分離である。従って、例えば、フィトエンがこの方法によって純粋な形態で得られることはできない。特に、植物におけるカロチノイドの天然に存在する量は低い。
【0026】
対照的に、発酵プロセスは比較的単純であり、高価でない開始材料に基づく。以前の発酵プロセスの生産性が増大し、または新規なカロチノイドが既知の生産生物に基づいて調製されることが可能であるならば、カロチノイドを産生するための発酵プロセスは、経済的に魅力的でありかつ化学合成と競合することが可能であり得る。しかし、カロチノイドの発酵的産生の問題点は、少量の高純度カロチノイドのみを供給する、一連の作業プロセスである。さらにこれらは、適切な場合、大量の溶媒の使用を伴って、通常、多段階のプロセスを必要とする。従って、大量の廃棄物が生じるか、または多くの労力がリサイクルプロセスに投入されなくてはならない。
【0027】
種々の微生物によるカロチノイドの産生がそれ自体知られている。従って、例えば、WO 00/13654 A2は、Dunaliella sp.種の藻類からのフィトエンおよびフィトフルエンの混合物の抽出を開示する。この方法はまた、純粋形態のフィトエンを産生せず、後者は他の生成物から分離されなければならない。さらに、この藻類は遺伝子改変されておらず、それらの生合成は、付加されるインヒビターによって影響を受けるに違いない。
【0028】
WO 98/03480 A1はまた、β−カロチンの生産生物としてBlakeslea trisporaを開示する。ここで、β−カロチン結晶が抽出によってBlakeslea trisporaバイオマスから得られる。しかし、記載される方法は、数回の抽出工程および洗浄工程によって高純度の結晶を得るために、大量の異なる溶媒を必要とする。得られるβ−カロチンの量もまた、使用されるバイオマスの量に基づいて少ない。
【0029】
WO 01/83437 A1は、酵母からアスタキサンチンを抽出するための方法を開示し、これは、滅菌および細胞破壊のためのマイクロ波照射で培養ブロスを処理する工程を包含する。これに従って、マイクロ波照射による細胞破壊は、酵母を破壊することなく酵母からのアスタキサンチンを得るために必要とされる。続いて、アスタキサンチンは、メタノール、エタノール、またはアセトン、またはこれらの混合物によって抽出される。しかし、これは、大量の溶媒(懸濁物1部に対して5〜20部の溶媒)および長い時間(24時間)を必要とする。さらに、アスタキサンチンの純度が示されておらず、そして得られる量は少量である。しかし、出願人の実験および他の刊行物は、メタノールまたはエタノールによる抽出が不可能であることを確認している。
【0030】
WO 98/50574は、同様に、微生物バイオマスからのカロチノイド結晶の単離を開示し、そしてここでは、WO 01/83437 A1とは対照的に、バイオマスから脂質を除去するのみのために、すなわち、洗浄するために、メタノール、エタノール、アセトンを使用することが可能である。従って、カロチノイドを抽出するために使用される溶媒は酢酸エチル、ヘキサン、またはオイルである。続いて、大量のエタノールおよび水を用いる、複数の精製工程および洗浄工程が必要とされ、35%の収率でわずか93.3%の純度を生じる。
【0031】
WO 03/038064 A2は、突然変異させたBlakeslea trispora接合型(−)およびBlakeslea trispora接合型(+)の同時培養によるリコピンの発酵的産生を記載し、これは、カロチノイド生合成のインヒビターの添加なしでリコピンを産生する。発酵のために利用される突然変異体は、非選択的な化学的突然変異および引き続くスクリーニングによって生成される。培養ブロスは、細胞破壊および引き続く精製によって調製される。この精製は、種々の塩含量およびpHを有する異なる水性媒体、ならびに脂質を除去するために酢酸エチル、ヘキサン、および1−ブタノールなどの水と不混和性の有機溶媒を用いる。大量の酢酸エチルを使用する抽出が代替として記載されている。純度についての記載は見当たらない。酢酸エチルおよびヘキサンはリコピンの溶媒なので、一部のリコピンが洗い出され、従って、理論的に可能な収率を低下させることが想定され得る。
【0032】
WO 01/55100 A1はまた、溶媒による抽出を伴わずに、破壊されたバイオマスに複数の洗浄工程および精製工程を適用することによる、バイオマスからの、一般的なカロチノイド、および具体的にはβ−カロチンの単離を記載している。これは、破壊されたBlakeslea trisporaバイオマスを、水、苛性アルカリ溶液、酸、ブタノール、およびエタノールを用いて洗浄する工程を包含し、その結果、大量の異なる溶媒および水性媒体の使用が必要とされる。得られるβ−カロチンの純度は96〜98%である。しかし、収率に関する情報はない。
【0033】
WO 97/36996 A2は、一般的に、微生物から物質(とりわけカロチノイド)を単離するための方法を記載し、上記物質は、固体/液体抽出によってバイオマスから単離される。細胞破壊は、ここでは明白に必要ではないが、しかしバイオマスは最初に押し出しによって顆粒化および多孔性にされなければならない。カロチノイドのみを単離する可能性およびそれらの純度または収率についての情報は示されていない。押し出しからの残渣は、引き続いて食品添加物として使用できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
上記に記載したすべての方法において、完全抽出によって単離されるカロチノイドの量を増加するために、抽出のために大量の溶媒が使用されなくてはならず、そして/または大量の水性媒体が精製および洗浄のために使用されなくてはならない。このことは、高いコストおよびリサイクル手段の複雑化、および、適切な場合、廃棄物を生じる。
【0035】
さらに、そこに存在する栄養培地ブロスおよびバイオマスは、カロチノイドの抽出および単離の後に廃棄物として処理される。これらの表面上の不利な点を別として、上記に示された方法は、別の決定的な不利な点を有し、これはすなわち、カロチノイドがその後食材に添加されなくてはならないこと、すなわち、これらはそれ自体食材の一部ではないか、または不十分な量でのみ存在するという事実である。それゆえに、食材中のカロチノイド含量が実際の食材それ自体によってすでに賄われるならば、これは非常に利点となる。
【0036】
同様に、以前に天然に産生されたカロチンおよびそれらの前駆体の生産性をさらに増大させること、ならびに、もしあったとしても非常に低い程度でのみ、野生型の微生物によって以前に産生され、かつそこから単離された、例えばキサントフィル、特に好ましくはアスタキサンチンまたはゼアキサンチン、およびフィトエンまたはビキシンなどのカロチノイドが、さらに産生されることを可能にすることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明の目的は、カロチノイドまたはそれらの前駆体、特にキサントフィル、特に好ましくはアスタキサンチンまたはゼアキサンチン、およびフィトエンまたはビキシンを産生するBlakeslea株、特にBlakeslea trisporaの遺伝子改変された細胞を提供することである。さらに、本発明の方法は、対応する野生型と比較して、改変された細胞のカロチノイド生産性が増加されることを可能にすることを意図する。本発明の方法はまた、天然に存在する真菌から、以前には経済的に興味のある量で入手不可能であったカロチノイドまたはそれらの前駆体、特にキサントフィル(特に好ましくはアスタキサンチンまたはゼアキサンチン、およびフィトエンまたはビキシン)の産生における使用のために適切である新規な細胞またはそれからなる菌糸体が生成されることを可能にすることを意図する。この文脈において、本発明の方法は、Blakeslea株、特にBlakeslea trisporaを、遺伝子改変させること、およびホモカリオン性に遺伝子改変した生産株を産生させることを可能にすることを意図する。
【0038】
さらに、本発明は、以前には、もしあったとしても、非常に低い程度までのみ野生型微生物によって産生され、かつ野生型微生物から単離された、例えば、キサントフィル、特にアスタキサンチンまたはゼアキサンチン、およびフィトエンまたはビキシンなどのカロチノイドがさらに産生されることを可能にすることを意図する。
【0039】
Blakeslea株、特にBlakeslea trisporaの遺伝子改変された細胞からカロチノイドを産生するための方法を利用可能にすることもまた、本発明の目的であり、この方法は、より少ない量の溶媒の使用を可能にし、かつ本質的に廃棄物を生じず、さらに高純度かつより高収率を可能にする。
【0040】
このことに関連して、ファーメンター中に存在する非常に大きな割合の栄養(微生物中に存在するカロチノイドおよび他の栄養の双方)を利用することが意図される。
【0041】
従って、それ自体が添加物なしでカロチノイド必要量を賄うカロチノイド含有食材を製造するための方法を提供することもまた、本発明の目的である。特に、上記方法によって入手可能な食材の栄養含量は、以前に入手可能な食材のそれと少なくとも等しいことが意図される。この方法はまた、産生されたカロチノイドが効率的に利用されることを可能にすることを意図する。
【0042】
この目的は、Blakeslea属の遺伝子改変された生物を使用してカロチノイドまたはそれらの前駆体を産生するための方法によって達成され、この方法は以下の工程を含む:
(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、
(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、かつ上記遺伝子改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞の場合によるホモカリオン転換、
(iii)遺伝子改変された細胞の選択および複製、
(iv)遺伝子改変された細胞の培養、
(v)遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイドまたは前記遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイド前駆体の調製。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の方法は、カロチノイドまたはそれらの前駆体、特にキサントフィル、特に好ましくはアスタキサンチンまたはゼアキサンチン、およびフィトエンまたはビキシンを産生する、均一の核を有する細胞の菌糸体をこのやり方で入手するために、Blakesleaが特異的かつ安定な様式で遺伝子改変されることを可能にする。この細胞は、好ましくはBlakeslea trispora種の真菌の細胞である。本発明において産生されるカロチノイドまたはそれらの前駆体は本質的に夾雑物を含まず、そして培養培地中で高濃度の上記カロチノイドまたはそれらの前駆体を達成することが可能である。
【0044】
形質転換は、生物、特に真菌中への遺伝子情報の導入を意味する。これは、上記情報、特にDNAを導入する、当業者に公知の任意の可能な方法、例えば、DNA負荷粒子を用いる衝撃、プロトプラストを使用する形質転換、DNAのマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、コンピテント細胞の接合または形質転換、化学物質またはアグロバクテリウムを媒介する形質転換を含むべきである。遺伝子情報は、遺伝子の部分、1つの遺伝子または複数の遺伝子を意味する。遺伝子情報は、例えば、ベクターの補助を伴って、または遊離の核酸(例えば、DNA、RNA)として、および他の任意の様式で細胞に導入され得、そして組換えによって宿主ゲノムに組み込まれるか、または細胞中で遊離の形態で存在するかのいずれかである。本発明において特に好ましいのは相同組換えである。
【0045】
好ましい形質転換方法は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって媒介される形質転換である。この目的のために、導入されるドナーDNAは、最初に、(i)導入されるDNAに隣接するT−DNA末端を有し、(ii)選択マーカーを含み、そして(iii)適切な場合、ドナーDNAの遺伝子発現のためのプロモーターおよびターミネーターを有する、ベクターに挿入される。上記ベクターは、vir遺伝子を含むTiプラスミドを有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス株に導入される。vir遺伝子は、Blakesleaにおける遺伝子導入の原因である。この2ベクター系は、アグロバクテリウムからBlakesleaにDNAを導入するために使用される。この目的のために、アグロバクテリウムはアセトシリンゴンの存在下で最初にインキュベートされる。アセトシリンゴンはvir遺伝子を誘導する。次いで、Blakeslea trisporaの胞子が、アセトシリンゴン含有培地上でアグロバクテリウムツメファシエンスの誘導された細胞と一緒にインキュベートされ、その後、形質転換体、すなわち、遺伝子改変されたBlakeslea株の選択を可能にする培地に移される。
【0046】
ベクターという用語は、本願において、外来性DNAをそこに導入し、かつ、適切な場合、細胞中で上記外来性DNAを増殖させるために使用されるDNA分子をいうために使用される(Roempp Lexikon Chemie-CDROMバージョン2.0, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1999の「vector」もまた参照されたい)。本願において、「ベクター」という用語は、同じ目的に役立つプラスミド、コスミドなどもまた含むことを意図する。
【0047】
発現は、本願において、DNAまたはRNAから開始して遺伝子産物(本発明において好ましくは、カロチノイド、特にキサントフィル、特に好ましくはアスタキサンチンまたはゼアキサンチン、およびフィトエンまたはビキシンを産生するための酵素)に至る、遺伝子情報の導入を意味し、そして過剰発現という用語を含むこともまた意図する。過剰発現という用語は、形質転換されない細胞(野生型)中ですでに産生されている遺伝子産物が増加して産生されるような、または全体の細胞含量の大多数の部分を形成するような発現の増加を意味する。
【0048】
遺伝子改変は、レシピエント生物への遺伝子情報の導入であって、その結果、上記情報が安定な様式で発現され、かつ細胞分裂の間に伝播するものを意味する。この文脈において、ホモカリオン転換は、均一の核のみを含む細胞の産生であり、すなわち、核は同じ遺伝情報の内容を有する。
【0049】
このホモカリオン転換は、形質転換によって導入される遺伝子情報が劣性である場合、すなわち、それ自体を明示しない場合のみに必要とされる。しかし、形質転換が優性の遺伝子情報の存在を生じる場合、すなわち、上記情報がそれ自体を明示する場合、ホモカリオン転換が絶対的に必要なわけではない。
【0050】
ホモカリオン転換は、好ましくは、単核胞子を選択する工程を含む。少ない割合のBlakeslea trispora胞子が本来単核であり、その結果、これらの胞子は、適切な場合、特異的標識後、例えば、細胞核の染色後に選別され得る。これは、好ましくは、単核細胞の低い蛍光に基づいて、FACS(蛍光活性化細胞分取(Fluorescence Activated Cell Sorting))を使用して実行される。
【0051】
代替的には、ホモカリオン転換は、最初に核の数を減少させることによって実行され得る。この目的のために、突然変異誘発物質、特にN−メチル−N’−ニトロニトロソグアニジン(MNNG)が利用され得る。UV照射またはX線などの高エネルギー照射もまた、核の数を減少させるために使用できる。引き続く選択が、FACS法または劣性選択マーカーを使用して実行され得る。
【0052】
選択は、その核が同じ遺伝子情報を含む細胞、すなわち、耐性または生成物の産生もしくは産生の増加などの同じ特性を有する細胞の選択を意味する。選択のために、FACS法の他に、5−炭素−5−デアザリボフラビン(DARF)およびハイグロマイシン(hyg)または5’−フルオロロテート(5'-fluororotate)(FOA)およびウラシルを使用することが好ましい。
【0053】
形質転換(i)において利用されるベクターは上記ベクターに含まれる遺伝子情報が少なくとも1つの細胞のゲノムに組み込まれるように設計され得る。この点に関して、細胞中の遺伝子情報は、スイッチが切られ得る。これは、直接的に、すなわち、欠失によって実行され得る。しかし、形質転換(i)において利用されるベクターが、上記ベクター中に含まれる遺伝子情報が細胞中で発現されるような方法で設計されることもまた可能である。すなわち、対応する野生型において存在しないか、上記形質転換によって増加または過剰発現され、その産物が遺伝子のスイッチを切る遺伝子情報が導入される。しかし、導入された遺伝子情報はまた、例えば、インヒビターを生成することによって、間接的に、細胞中の遺伝子情報のスイッチを切り得る。
【0054】
利用されるベクターは、カロチノイドまたはそれらの前駆体、特にカロチンまたはキサントフィルまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報または上記遺伝子情報の一部を含む。利用されるベクターは、好ましくは、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、β−カロチン、アンドニキサンチン(andonixanthin)、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、ルテイン、フィトフルエン、ビキシン、またはフィトエンを産生するための遺伝子情報を含む。非常に特に好ましくは、このベクターは、ビキシン、フィトエン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、またはゼアキサンチンを産生するための情報を含む。
【0055】
このベクターは、Blakeslea属の生物の遺伝子改変のためのいかなる遺伝子情報をも含み得る。
【0056】
「遺伝子情報」とは、好ましくは、Blakeslea属の生物へのその導入がBlakeslea属の生物における遺伝子改変を生じる、すなわち、例えば、開始生物との比較において、酵素活性の増加または減少を引き起こす核酸を意味する。
【0057】
このベクターは、例えば、カロチノイドおよびそれらの前駆体、リン脂質、トリアシルグリセリド、ステロイド、ワックス、脂溶性ビタミン、プロビタミンならびにコファクターなどの親油性物質を産生するための遺伝子情報、または例えば、タンパク質、アミノ酸、ヌクレオチド、および水溶性ビタミン、プロビタミン、およびコファクターなどの親水性物質を産生するための遺伝子情報を含み得る。
【0058】
利用されるベクターは、好ましくは、カロチノイドまたはキサントフィルまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報を含む。
【0059】
このベクターは、好ましくは、カロチノイド生合成酵素が、カロチノイド生合成が起こる細胞内区画中に局在されることを引き起こす遺伝子情報を含む。
【0060】
アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノンおよび3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、ルテイン、β−カロチン、フィトエン、および/またはフィトフルエンを産生するための遺伝子情報が特に好ましい。フィトエン、ビキシン、リコピン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、および/またはアスタキサンチンを産生するための遺伝子情報が非常に特に好ましい。
【0061】
従って、本発明の好ましい変形は、カロチノイド生合成中間体の合成の速度の増加、およびカロチノイド生合成の最終生成物について結果的に増加した生産性を有する生物を産生および培養することを含む。カロチノイド生合成中間体の合成の速度は、特に、酵素:3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素(HMG−CoA還元酵素)、イソペンテニルピロホスフェートイソメラーゼ、およびゲラニルピロホスフェートシンターゼの活性を増加させることによって増加する。
【0062】
従って、本発明の特に好ましい変形は、野生型と比較して、HMG−CoA還元酵素活性の増加を有する生物を産生および培養することを含む。
【0063】
HMG−CoA還元酵素活性とは、HMG−CoA還元酵素(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素)の酵素活性を意味する。
【0064】
HMG−CoA還元酵素とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAをメバロン酸に転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0065】
従って、HMG−CoA還元酵素活性とは、特定の時間内にタンパク質HMG−CoA還元酵素によって、転換された3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAの量または産生されたメバロン酸の量を意味する。
【0066】
野生型と比較したHMG−CoA還元酵素活性の増加の場合には、このようにタンパク質HMG−CoA還元酵素は、野生型と比較して、特定の時間内に、転換された3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAの量または産生されたメバロン酸の量を増加する。
【0067】
HMG−CoA還元酵素活性のこの増加は、好ましくは、野生型のHMG−CoA還元酵素活性の、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、特に好ましくは少なくとも300%、さらにより好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも600%である。
【0068】
好ましい実施形態において、HMG−CoA還元酵素活性は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸の遺伝子発現を増加させることによって、野生型と比較して増加される。
【0069】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸の遺伝子発現は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸を含む核酸構築物を生物に導入することによって増加され、上記生物中のその発現は、野生型と比較して、調節が減少されやすい。
【0070】
野生型と比較した調節の減少とは、上記に規定された野生型との比較において、発現レベルまたはタンパク質レベルで、調節が減少していること、好ましくは調節が存在しないことを意味する。
【0071】
調節の減少は、好ましくは、核酸構築物中のコード配列に機能的に連結され、かつ、野生型プロモーターと比較して、生物における調節の減少の影響を受けやすいプロモーターによって達成され得る。
【0072】
例えば、Blakeslea trisporaのptef1プロモーターおよびAspergillus nidulansのpgpdAプロモーターは、調節の減少のみの影響を受けやすく、それゆえに特に好ましいプロモーターである。
【0073】
これらのプロモーターは、Blakeslea trisporaにおいてほぼ構成的発現を示し、その結果、転写調節はもはやカロチノイド生合成の中間体を介しては起こらない。
【0074】
さらに好ましい実施形態において、上記調節の減少は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸を使用することによって達成され得、上記生物におけるその発現は、上記生物に固有のオーソロガス核酸と比較して、調節の減少を受けやすい。
【0075】
HMG−CoA還元酵素の触媒領域のみ(末端切断型(t−)HMG−CoA還元酵素)をコードする核酸を使用することは特に好ましい。調節の原因である膜ドメインは存在しない。従って、使用される核酸は調節の減少を受けやすく、従って、HMG−CoA還元酵素の遺伝子発現の増加を生じる。
【0076】
特に好ましい実施形態において、配列番号75の配列を含む核酸がBlakeslea trisporaに導入される。
【0077】
HMG−CoA還元酵素、および従ってまた、触媒領域またはコード遺伝子まで減少したt−HMG−CoA還元酵素のさらなる例は、例えば、そのゲノム配列が、配列番号75を有する、データベースからの配列の相同性比較によって知られている種々の生物から、容易に見い出され得る。
【0078】
HMG−CoA還元酵素、および従ってまた、触媒領域またはコード遺伝子まで減少したt−HMG−CoA還元酵素のさらなる例は、それ自体公知の様式で、ハイブリダイゼーションおよびPCR技術によって、そのゲノム配列が知られていない種々の生物から、例えば配列番号75の配列から開始してさらに容易に見い出され得る。
【0079】
特に好ましい実施形態において、上記調節の減少は、上記生物におけるその発現が上記生物に固有であるオーソロガス核酸と比較して調節の減少を受けやすいHMG−CoA還元酵素をコードする核酸を使用すること、および野生型プロモーターと比較して、上記生物中で調節の減少を受けやすいプロモーターを使用することによって達成される。
【0080】
従って、本発明の好ましい変形は、フィトエンデサチュラーゼ遺伝子発現のスイッチを切る、従って、生物によって生成されるフィトエンが単離されることを可能にする形質転換を含む。それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、フィトエンデサチュラーゼ、特に、配列番号69を有するBlakeslea trispora carBの遺伝子のフラグメントをコードする配列を好ましくは含む。
【0081】
従って、本発明の好ましい変形は、形質転換によってスイッチが切られるリコピンシクラーゼ遺伝子発現を含み、従って、生物によって産生されるリコピンが単離されることを可能にする。それゆえに、上記形質転換において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、好ましくは、リコピンシクラーゼ遺伝子、特にBlakeslea trispora carRのフラグメントをコードする配列を含む。
【0082】
好ましい実施形態において、Blakeslea属の生物は、野生型との比較において遺伝子改変されたBlakeslea属の生物においてヒドロキシラーゼ活性および/またはケトラーゼ活性を引き起こすことによって、例えば、カンタキサンチン、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチン、ビキシンまたはフィトエンなどのキサントフィルを産生することが可能である。
【0083】
従って、本発明のさらに好ましい変形において、形質転換(i)において利用されるベクターは、発現後にケトラーゼ活性および/またはヒドロキシラーゼ活性を示し、その結果、生物がゼアキサンチンまたはアスタキサンチンを産生する遺伝子情報を含む。
【0084】
ケトラーゼ活性とは、ケトラーゼの酵素活性を意味する。
【0085】
ケトラーゼとは、カロチノイドの場合によって置換されたβ−イオノン環におけるケト基を導入する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0086】
ケトラーゼとは、特に、β−カロチンをカンタキサンチンに転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0087】
従って、ケトラーゼ活性とは、特定の時間内にタンパク質ケトラーゼによって転換されるβ−カロチンの量または産生されるカンタキサンチンの量を意味する。
【0088】
本発明に従って、「野生型」という用語は、Blakeslea属の対応する遺伝子改変されていない開始生物を意味する。
【0089】
「生物」という用語は、文脈に依存して、Blakeslea属の開始生物(野生型)、またはBlakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物、または両方を意味し得る。
【0090】
好ましくは、ケトラーゼ活性を引き起こす「野生型」およびヒドロキシラーゼ活性を引き起こす「野生型」は、各々の場合において参照生物を意味する。
【0091】
Blakeslea属のこの参照生物は、接合型に関してのみ異なるBlakeslea trispora ATCC 14271またはATCC 14272である。
【0092】
Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物、および野生型または参照生物におけるケトラーゼ活性は、好ましくは以下の条件下で決定される。
【0093】
Blakeslea属の生物におけるケトラーゼ活性は、Frazerら(J. Biol. Chem. 272(10): 6128-6135, 1997)の方法に従って決定される。抽出物中のケトラーゼ活性は、脂質(ダイズレシチン)および界面活性剤(コール酸ナトリウム)の存在下で基質β−カロチンおよびカンタキサンチンを使用して決定される。ケトラーゼアッセイの基質対生成物の比はHPLCによって決定される。
【0094】
この好ましい実施形態において、Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物は、遺伝子改変されていない野生型と比較して、ケトラーゼ活性を有し、従って、トランスジェニック的にケトラーゼを発現することが可能であることが好ましい。
【0095】
さらに好ましい実施形態において、Blakeslea属の生物におけるケトラーゼ活性は、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を引き起こすことによって引き起こされる。
【0096】
この好ましい実施形態において、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、ケトラーゼをコードする核酸をBlakeslea属の開始生物に導入することによって引き起こされることが好ましい。
【0097】
この目的のために、原理的に、任意のケトラーゼ遺伝子、すなわち、ケトラーゼをコードする任意の核酸を使用することが可能である。
【0098】
本明細書中で言及される任意の核酸とは、例えば、RNA、DNA、またはcDNAの配列であり得る。
【0099】
イントロンを含む、真核生物供給源からのゲノムケトラーゼ配列の場合において、Blakeslea属の宿主生物が対応するケトラーゼを発現できないか、または発現するように作製されることができない場合、対応するcDNAなどのすでにプロセシングされた核酸配列を使用することが好ましい。
【0100】
本発明の方法において使用できる、ケトラーゼをコードする核酸および対応するケトラーゼの例は、例えば、以下からの配列である:
Haematoccus pluvialis、特にHaematoccus pluvialis Flotow em. Wille由来(アクセッション番号:X86782;;核酸:配列番号11、タンパク質:配列番号12)、
Haematoccus pluvialis、NIES-144(アクセッション番号:D45881;核酸:配列番号13、タンパク質:配列番号14)、
Agrobacterium aurantiacum(アクセッション番号:D58420;核酸:配列番号15、タンパク質:配列番号16)、
Alicaligenes種(アクセッション番号:D58422;核酸:配列番号17、タンパク質:配列番号18)、
Paracoccus marcusii(アクセッション番号:Y15112;核酸:配列番号19、タンパク質:配列番号20)、
Synechocystis種PC6803株(アクセッション番号:NP442491;核酸:配列番号21、タンパク質:配列番号22)、
Bradyrhizobium種(アクセッション番号:AF218415;核酸:配列番号23、タンパク質:配列番号24)、
Nostoc種PCC7120株(アクセッション番号:AP003592, BAB74888;核酸:配列番号25、タンパク質:配列番号26)、
Nostoc punctiforme ATTC 29133、核酸:アクセッション番号NZ_AABC01000195、塩基対55,604〜55,392(配列番号27);タンパク質;アクセッション番号ZP_00111258(配列番号28)(推定タンパク質と注記される)、
Nostoc punctiforme ATTC 29133、核酸:アクセッション番号NZ_AABC01000196、塩基対140,571〜139,810(配列番号29)、タンパク質:(配列番号30)(注記なし)。
【0101】
本発明のプロセスにおいて使用できる、ケトラーゼおよびケトラーゼ遺伝子のさらなる天然の例は、例えば、そのゲノム配列が、以前に記載された配列の同一性を有し、ならびに特に配列番号12、26および/または33の配列の同一性を有する、データベースからのアミノ酸配列または対応する逆翻訳された核酸配列の同一性を比較することによって公知である種々の生物から容易に見い出され得る。
【0102】
ケトラーゼおよびケトラーゼ遺伝子のさらなる天然の例は、以前に記載された核酸配列、特に、そのゲノム配列が未知である種々の生物由来の配列番号12、26、および/または30の配列から開始して、それ自体公知である様式でハイブリダイゼーション技術を使用して、さらに容易に見い出され得る。
【0103】
ハイブリダイゼーションは、穏やかな(低ストリンジェンシー)条件下で、または好ましくは、ストリンジェントな(高ストリンジェンシー)条件下で実行され得る。
【0104】
これらの型のハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 9.31-9.57頁またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0105】
例えば、洗浄工程の間の条件は、低ストリンジェンシー条件(50℃で2×SSCを用いる)および高ストリンジェンシー条件(50℃、好ましくは65℃で0.2×SSCを用いる)(20×SSC:0.3Mクエン酸ナトリウム、3M塩化ナトリウム、pH7.0)によって限定される条件範囲から選択され得る。
【0106】
さらなる可能性は、洗浄工程の間に、室温、22℃での穏やかな条件を、65℃でのストリンジェントな条件まで、温度を上昇させることである。
【0107】
塩濃度と温度の両方のパラメーターが同時変化され得、そして2つのパラメーターのうちの1つを一定に保ち、他の一方のみを変化させることもまた可能である。ハイブリダイゼーションの間に、例えばホルムアミドまたはSDSなどの変性剤を利用することもまた可能である。50%ホルムアミドの存在下でのハイブリダイゼーションは、42℃で好ましく実行される。
【0108】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程のための条件のいくつかの例が以下に示される:
(1)例えば、以下を用いるハイブリダイゼーション条件
(i)65℃で4×SSC、または
(ii)45℃で6×SSC、または
(iii)68℃で6×SSC、100mg/ml変性魚精子DNA、または
(iv)68℃で6×SSC、0.5%SSC、100mg/ml変性フラグメント化サケ精子DNA、または
(v)42℃で6×SSC、0.5%SDS、100mg/ml変性フラグメント化サケ精子DNA、50%ホルムアミド、または
(vi)42℃で50%ホルムアミド、4×SSC、または
(vii)42℃で50%(容量/容量)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルポリピロリドン、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5、750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム、または
(viii)50℃で2×または4×SSC(穏やかな条件)、または
(ix)42℃で30〜40%ホルムアミド、2×または4×SSC(穏やかな条件)。
【0109】
(2)例えば、各々以下を用いる10分間の洗浄工程:
(i)50℃で0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDS、または
(ii)65℃で0.1×SSC、または
(iii)68℃で0.1×SSC、0.5%SDS、または
(iv)42℃で0.1×SSC、0.5%SDS、50%ホルムアミド、または
(v)42℃で0.2×SSC、0.1%SDS、または
(vi)65℃で2×SSC(穏やかな条件)。
【0110】
Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物の好ましい実施形態において、配列番号12のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によりこの配列に由来し、かつ、配列番号12の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、40%、50%、60%の同一性、好ましくは少なくとも70%、80%の同一性、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸が導入される。
【0111】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号12の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0112】
さらに、本発明の方法の好ましい実施形態は、配列番号26のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に由来し、かつ、配列番号26の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、40%、50%、60%の同一性、好ましくは少なくとも70%、80%の同一性、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸を導入する工程を包含する。
【0113】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号26の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0114】
さらに、本発明の方法の好ましい実施形態は、配列番号30のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に由来し、かつ、配列番号30の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、40%、50%の同一性、好ましくは少なくとも60%、70%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸を導入する工程を包含する。
【0115】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号30の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0116】
「置換」という用語は、本明細書中では、1つ以上のアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換を意味する。置き換えられたアミノ酸がもとのアミノ酸と同様の特性を有する「保存性置換」(例えば、AspによるGluの置換、AsnによるGlnの置換、IleによるValの置換、IleによるLeuの置換、ThrによるSerの置換)を実行することが好ましい。
【0117】
欠失は直接的結合によるアミノ酸の置き換えである。欠失のための好ましい位置は、ポリペプチドの末端および個々のタンパク質ドメイン間の結合部である。
【0118】
挿入は、1つ以上のアミノ酸による直接的結合の形式的な置き換えを伴う、ポリペプチド鎖へのアミノ酸の挿入である。
【0119】
2つのタンパク質間の同一性とは、各タンパク質の全体の長さにわたるアミノ酸の同一性を意味し、特に、以下のパラメーターを設定して、Clustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)を使用して、DNASTAR, inc. Madison, Wisconsin(USA)からのLasergeneソフトウエアを用いる比較によって計算される同一性を意味する:
複数アラインメントパラメーター:
ギャップペナルティー 10
ギャップ長ペナルティー 10
ペアワイズアラインメントパラメーター:
K−タプル 1
ギャップペナルティー 3
ウィンドウ 5
保存対角 5。
【0120】
従って、配列番号12または26または30の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性を有するタンパク質は、配列番号12または26または30の配列とのその配列の比較において、特に上記のパラメーターのセットを用いるプログラムのロガリズム(logarithm)を使用して、少なくとも20%の同一性、好ましくは30%、40%、50%の同一性、特に好ましくは60%、70%、80%の同一性、特に85%、90%、95%の同一性を有するタンパク質を意味する。
【0121】
適切な核酸配列は、例えば、遺伝コードに従ってポリペプチド配列を逆翻訳することによって得られうる。
【0122】
この目的のために適切に使用されるコドンは、Blakeslea特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に使用されるコドンである。コドン使用頻度は、Blakeslea属の生物の他の公知の遺伝子のコンピュータ分析によって容易に見い出され得る。
【0123】
特に好ましい実施形態において、配列番号11の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0124】
特に好ましい実施形態において、配列番号25の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0125】
特に好ましい実施形態において、配列番号29の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0126】
上述のすべてのケトラーゼ遺伝子は、それ自体公知の様式で、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成によって、例えば、二重ヘリックスの個々の重複する相補性核酸ビルディングブロックのフラグメント縮合によって、さらに調製され得る。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press NewYork, 896-897頁)によって公知の様式において可能である。合成オリゴヌクレオチドの付加ならびにDNAポリメラーゼのクレナウフラグメントおよびライゲーション反応の補助を伴ってギャップを埋めること、ならびに一般的なクローニング方法もまた、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0127】
それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、ケトラーゼ、特に配列番号72を有するNostoc punctiformeケトラーゼをコードする配列を好ましく含む。
【0128】
ヒドロキシラーゼ活性とは、ヒドロキシラーゼの酵素活性を意味する。
【0129】
ヒドロキシラーゼとは、場合によって置換された、カロチノイドのβ−イオノン環上のヒドロキシル基を導入する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0130】
特に、ヒドロキシラーゼとは、β−カロチンをゼアキサンチンにまたはカンタキサンチンをアスタキサンチンに転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0131】
従って、ヒドロキシラーゼ活性は、特定の時間内にヒドロキシラーゼタンパク質によって、転換されるβ−カロチンまたはカンタキサンチンの量、または産生されるゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの量を意味する。
【0132】
従って、ヒドロキシラーゼ活性が野生型と比較して増加される場合、特定の時間内にヒドロキシラーゼタンパク質によって転換されるβ−カロチンまたはカンタキサンチンの量、または産生されるゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの量は、野生型と比較して増加される。
【0133】
ヒドロキシラーゼ活性のこの増加は、好ましくは、野生型のヒドロキシラーゼ活性の少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、なおより好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも600%である。
【0134】
本発明の遺伝子改変した生物ならびに野生型および参照生物におけるヒドロキシラーゼ活性は、以下の条件下で好ましく決定される。
【0135】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvierら(Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328)の方法によってインビトロで決定される。フェレドキシン、フェレドキシン−NADPオキシドレダクターゼ、ケタラーゼ、NADPHおよびβ−カロチンが、モノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリドとともに、所定の量の生物抽出物に加えられる。
【0136】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvier, Keller, d'HarlingueおよびCamara(Xanthophyll biosynthesis: molecular and functional characterization of carotenoid hydroxylases from pepper fruits (Capsicum annuum L.; Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328)の以下の条件下で特に好ましく決定される。
【0137】
インビトロアッセイは、0.250mlの容量で実行される。混合物は以下を含む:50mMリン酸カリウム(pH7.6)、0.025mgのホウレンソウフェレドキシン、0.5単位のホウレンソウフェレドキシン−NADP+オキシドレダクターゼ、0.25mM NADPH、0.010mgのβ−カロチン(0.1mgのTween80中で乳化)、0.05mMのモノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリドの混合物(1:1)、1単位の触媒、200のモノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリド(1:1)、0.2mgのウシ血清アルブミンおよび種々の量の生物抽出物。反応混合物は30℃で2時間インキュベートする。反応生成物は、アセトンまたはクロロホルム/メタノール(1:1)などの有機溶媒で抽出し、HPLCによって測定する。
【0138】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvier, d'Harlingue およびCamara(Molecular Analysis of carotenoid cyclae inhibition; Arch. Biochem. Biophys. 346(1) (1997) 53-64)の以下の条件下で好ましく決定される。
【0139】
インビトロアッセイは、250μlの容量で実行される。混合物は以下を含む:50mMリン酸カリウム(pH7.6)、種々の量の生物抽出物、20nMリコピン、250μgのパプリカ有色体ストロマタンパク質、0.2mM NADP+、0.2mM NADPHおよび1mM ATP。NADP/NADPHおよびATPはインキュベーション媒体への添加の直前に1mgのTween80とともに10mlのエタノール中に溶解する。60分、30℃での反応時間後、反応はクロロホルム/メタノール(2:1)の添加により停止される。反応生成物はクロロホルム中で抽出され、HPLCによって分析される。
【0140】
放射活性基質を用いる代替的なアッセイは、FraserおよびSandmann(Biochem. Biophys. Res. Comm. 185(1) (1992) 9-15)において記載されている。
【0141】
ヒドロキシラーゼ活性は種々の方法において、例えば、発現およびタンパク質レベルにおける阻害性調節メカニズムのスイッチを切ること、または野生型と比較して、ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を増加させることによって、増加され得る。
【0142】
ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、種々の方法において、例えば、アクチベーターによってヒドロキシラーゼ遺伝子を誘導すること、または1つ以上のヒドロキシラーゼ遺伝子コピーを導入することによって、すなわち、Blakeslea属の生物にヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの核酸を導入することによって、野生型と比較して、同様に増加され得る。
【0143】
好ましい実施形態において、ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、Blakeslea属の生物にヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの核酸を導入することによって増加される。
【0144】
この目的のために、原理的には任意のヒドロキシラーゼ遺伝子、すなわち、ヒドロキシラーゼをコードする任意の核酸およびβ−シクラーゼをコードする任意の核酸を使用することが可能である。
【0145】
イントロンを含む真核生物供給源からのゲノムヒドロキシラーゼ配列の場合、宿主生物が対応するヒドロキシラーゼを発現できないか、または発現するように作製されることができないならば、対応するcDNAなどのすでにプロセシングされた核酸配列を使用することが好ましい。
【0146】
ヒドロキシラーゼ遺伝子の1つの例は、アクセッション番号AX038729を有するHaematococcus pluvialisヒドロキシラーゼをコードする核酸(WO 0061764;核酸:配列番号31、タンパク質:配列番号32)、Erwinia uredovora 20D3ヒドロキシラーゼ(ATCC 19321、アクセッション番号D90087;核酸:配列番号33、タンパク質:配列番号34)または配列番号76の配列によってコードされるThermus thermophilusヒドロキシラーゼ(DE 102 34 126.5)である。
【0147】
以下のアクセッション番号もまた、ヒドロキシラーゼである:
|emb|CAB55626.1、CAA70427.1、CAA70888.1、CAB55625.1、AF499108_1、AF315289_1、AF296158_1、AAC49443.1、NP_194300.1、NP_200070.1、AAG10430.1、CAC06712.1、AAM88619.1、CAC95130.1、AAL80006.1、AF162276_1、AAO53295.1、AAN85601.1、CRTZ_ERWHE、CRTZ_PANAN、BAB79605.1、CRTZ_ALCSP、CRTZ_AGRAU、CAB56060.1、ZP_00094836.1、AAC44852.1、BAC77670.1、NP_745389.1、NP_344225.1、NP_849490.1、ZP_00087019.1、NP_503072.1、NP_852012.1、NP_115929.1、ZP_00013255.1。
【0148】
従って、この好ましい実施形態において、少なくとも1つのさらなるヒドロキシラーゼ遺伝子が、野生型と比較して、Blakeslea属の本発明に従う好ましいトランスジェニック生物中に存在する。
【0149】
この好ましい実施形態において、遺伝子改変された生物は、例えば、ヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸、またはヒドロキシラーゼをコードする少なくとも2つの内因性核酸を有する。
【0150】
上記の好ましい実施形態において、ヒドロキシラーゼ遺伝子として、配列番号32、24のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするか、もしくは配列番号76の配列によってコードされるタンパク質、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に派生し、かつ配列番号32、34の配列、もしくは配列番号76を有する配列によってコードされる配列に対して、アミノ酸レベルで、少なくとも30%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性、より好ましくは少なくとも70%の同一性、なおより好ましくは少なくとも80%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、特に、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつヒドロキシラーゼの酵素的特性を有する配列を使用することが好ましい。
【0151】
ヒドロキシラーゼおよびヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例は、例えば、上記のように、そのゲノム配列が知られている種々の生物から、配列番号31、33、または76との、データベースからのアミノ酸配列または対応する逆翻訳された核酸配列の相同性比較によって、容易に見い出され得る。
【0152】
ヒドロキシラーゼおよびヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例は、それ自体公知の様式で、例えば、ハイブリダイゼーションおよびPCR技術によって、上記のように、そのゲノム配列が知られていない種々の生物から、配列番号31、33、または76の配列から開始してさらに容易に見い出され得る。
【0153】
さらに特に好ましい実施形態において、配列番号32、34の配列のヒドロキシラーゼのアミノ酸配列、または配列番号76の配列によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸は、ヒドロキシラーゼ活性を増加するために生物に導入される。
【0154】
適切な核酸配列は、例えば、遺伝コードに従ってポリペプチド配列の逆翻訳によって得られうる。
【0155】
この目的のために、生物特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に使用されるコドンを使用することが好ましい。この使用頻度は、問題の生物の他の公知の遺伝子のコンピュータ分析に基づいて容易に決定されうる。
【0156】
特に好ましい実施形態において、配列番号31、33、または76の配列を含む核酸が生物に導入される。
【0157】
上述のすべてのヒドロキシラーゼ遺伝子は、それ自体公知の様式で、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成によって、例えば、二重ヘリックスの個々の重複する相補性核酸ビルディングブロックのフラグメント縮合によって、さらに調製され得る。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press NewYork, 896-897頁)によって公知の様式において可能である。合成オリゴヌクレオチドの付加ならびにDNAポリメラーゼのクレナウフラグメントおよびライゲーション反応の補助を伴ってギャップを埋めること、ならびに一般的なクローニング方法もまた、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される。
【0158】
それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の更なる実施形態において、ヒドロキシラーゼ、特に配列番号70を有するHaematococcus pluvialisヒドロキシラーゼをコードする配列、または配列番号71を有するErwinia uredovaヒドロキシラーゼ、または配列番号76の配列によってコードされるThermus thermophilusヒドロキシラーゼをコードする配列を好ましく含む。
【0159】
フィトエンデサチュラーゼの遺伝子のスイッチを切る形質転換が好ましい。
【0160】
形質転換(i)において利用されるベクターは、好ましくはまた、発現を制御および支持する領域、特にプロモーターおよびターミネーターを含む。
【0161】
形質転換(i)において利用されるベクターは、好ましくはgpdプロモーターおよび/またはptef1プロモーターおよび/またはtrpCターミネーターを含み、これらのすべてがBlakesleaの形質転換において特に、成功することが判明した。発現および転写を制御するための当業者によく知られている「逆方向反復」(IR, Rompp Lexikon der Biotechnologie 1992, Thieme Verlag Stuttgart, 407頁「Inverse repetitive sequences」)の使用もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0162】
ベクター中で利用されるgpdプロモーターは、有利には、配列番号1の配列を有する。ベクター中で利用されるtrpCターミネーターは、有利には、配列番号2の配列を有する。ベクター中で利用されるptef1プロモーターは、有利には、配列番号35の配列を有する。
【0163】
本発明において、特にAspergillus nidulans由来のgpdプロモーターおよびtrpCターミネーターおよびBlakeslea trispora由来のptef1プロモーターを使用することが好ましい。
【0164】
形質転換(i)において利用されるベクターは、特に耐性遺伝子を含む。後者は、好ましくはハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、特に大腸菌由来のものである。この耐性遺伝子は、形質転換の検出および細胞の選択に特に適切であることが判明している。
【0165】
このようなhphのために利用される好ましいプロモーターはp−gpdAであり、これはAspergillus nidulansのグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのコード領域のプロモーターである。hphのために好ましく利用されるターミネーターはt−trpCであり、これは、Aspergillus nidulansアントラニル酸シンターゼ成分をコードするtrpC遺伝子のターミネーターである。
【0166】
pBinAHygベクターの誘導体は、特に適切なベクターであることが判明した。従って、形質転換のために利用されるこのベクターは、好ましくは配列番号3を含む。所望されるカロチノイドまたはその前駆体に依存して、上記のように、ヒドロキシラーゼ、ケトラーゼ、フィトエンデサチュラーゼなどをコードする配列がこのベクターに加えられる。従って、本発明の1つの実施形態において、このベクターは、上記フィトエンデサチュラーゼをコードする配列番号69の配列を含む。本発明のさらなる実施形態において、このベクターはまた、ケトラーゼをコードする配列番号72の配列を含む。本発明のさらなる実施形態において、このベクターはさらに、ヒドロキシラーゼをコードする配列番号70または71または76の配列を含む。上述の配列の対応する組み合わせもまた、本発明の範囲内にある。従って、1つの実施形態において、このベクターは、ケトラーゼをコードする配列番号72の配列と、ヒドロキシラーゼをコードする配列番号70または71または76の配列の両方を含み、従って、アスタキサンチンが産生されることを可能にする。
【0167】
特に、本発明の範囲内で、配列番号37〜51および62からなる群から選択されるベクターを使用することが可能である。
【0168】
遺伝子改変された生物は、カロチノイド、キサントフィル、またはそれらの前駆体、特にビキシン、フィトエン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、およびカンタキサンチンを産生するために使用できる。適当な遺伝子情報を導入することにより、野生型中には天然には存在しない新規なカロチノイドが、特異的に遺伝子改変された細胞によって、または形成した菌糸体によって生成され、それによっておよび引き続いて単離されることもまた可能である。
【0169】
選択後、遺伝子改変された細胞は、カロチノイドまたはそれらの前駆体を供給することができるように培養される。
【0170】
特異的に遺伝子改変された細胞またはそれによって形成した菌糸体を使用して、カロチノイドまたはそれらの前駆体を入手することが好ましい。
【0171】
生物の培養は、特別な要求物を有しない。有利には、特にBlakeslea trisporaを使用する場合、反対の接合型が一緒に培養される。なぜなら、これがより良好な増殖および産生を生じるからである。
【0172】
遺伝子改変が、見い出された接合型(Blakeslea trisporaについては、(+)または(−))の一方の細胞においてのみ実行される場合、対応する他方、改変されていない接合型が培養に加えられる。なぜなら、この方法において、第2の、改変されていない接合型によって放出される物質(例えば、トリスポリック酸)のおかげで、カロチノイドまたはそれらの前駆体の良好な産生を達成することが可能であるからである。しかし、有利には、遺伝子改変は、両方の接合型の細胞において実行され、次いでこれらは一緒に培養され、それによって特に良好な増殖およびカロチノイドまたはそれらの前駆体の最適な産生を達成する。トリスポリック酸の(人工的な)添加は可能でありかつ有用である。
【0173】
トリスポリック酸は、BlakesleaなどのMucorales真菌中の性ホルモンであり、これは接合胞子の形成およびβ−カロチンの産生を刺激する(van den Ende 1968, J. Bacteriol. 96:1298-1303, Austinら、1969, Nature 223:1178-1179, Reschke Tetrahedron Lett. 29:3435-3439, van den Ende 1970, J. Bacteriol. 101:423-428)。
【0174】
当業者によく知られている任意の培地を使用することが、それらが使用される生物を培養するため、およびそのカロチノイド産生のために適切である限り、可能である。特に、カロチノイド生合成インヒビターの使用は、「GMO」(遺伝子改変生物)が使用される場合、必要ではない。好ましく利用される培地は、1つ以上の炭素源、1つ以上の窒素源、ミネラル塩、およびチアミンなどの添加物を含む。WO 03/038064 A2、第4頁第30行〜第5頁第7行に開示されるような添加物を利用することが好ましい。特に好ましい炭素源はグルコースであり、特に好ましい窒素源はアスパラギン、植物または動物の抽出物(例えば、綿実油、ダイズ油、綿実粕または酵母抽出物)である。
【0175】
培養は、好気的条件下または嫌気的条件下のいずれかで実行され得る。DE 101 30 323に開示されるような、混合型の、最初に好気的、次いで嫌気的な培養もまた可能である。この場合において、温度および湿度は最適増殖のために各場合において設定される。培養の温度は、好ましくは約20℃と約34の間、特に約26℃と約28の間である。さらに、培養は、連続的にまたはバッチ式で実行され得る。
【0176】
培養は、好ましくは、約1%と約20%の間、好ましくは3%と15%の間、および特に好ましくは4%と11%の間の固形物含量まで実行される。特に重要なことは、培養ブロスが、引き続く処理の工程において処理可能なままにするためにポンプでくみ出し可能なままであるという事実である。固形物含量が低すぎる場合、複雑な濃縮または乾燥の工程が必要である。
【0177】
培養または発酵は通常の装置で実行され得る。これは、各場合において利用される微生物およびそれらの生成物のために適切なすべての装置、特に、Rompp Lexikon Biotechnologie(1992 Georg Thieme Verlag, Stuttgart)の123〜126頁のキーワード「バイオリアクター」の下で示されるものを含む。種々の内部フィッティング、種々の型のバルブカラムなどを備えた攪拌タンクリアクターを使用することが特に好ましい。
【0178】
本発明の方法によって提供されるカロチノイドまたはそれらの前駆体、特にビキシン、フィトエン、またはキサントフィル、特に好ましくはアスタキサンチンまたはゼアキサンチンは、飼料、食材、および栄養補助食品、化粧品、医薬品、または皮膚用製剤のための添加物を製造するために特に適切である。
【0179】
遺伝子改変された細胞によって産生されるカロチノイド、または遺伝子改変された細胞によって産生されるカロチノイド前駆体は、2つの変形、a)またはb)に従って、遺伝子改変された微生物の培養物から調製され、a)およびb)の組み合わせもまた好ましい。
【0180】
a:
I)バイオマスの取り出し、
IA)カロチノイドが可溶性でない溶媒、特に水を用いるバイオマスの場合による洗浄、
IB)バイオマスの滅菌および細胞破壊、
IC)場合による乾燥および/または均質分配、ならびに
II)破壊されたバイオマスからのカロチノイド溶解性溶媒によるカロチノイドの部分抽出および上記バイオマスからの上記溶媒の分離、
IIA)
1)カロチノイド含有バイオマスからの残渣溶媒の除去、
2)>2%かつ<50%のバイオマス固形含量での、バイオマスの場合による均質懸濁、
3)食材を製造するためのバイオマスまたは懸濁物の乾燥、
IIB)
1)使用した溶媒からのカロチノイドの結晶化および特に濾過によるカロチノイド結晶の単離、
あるいはb):
I)培養ブロスの固形物の均質懸濁、
および
IIA)培養ブロスの>2%の固形物含量については:
1)<50%の固形物含量を得るための培養ブロスの場合による濃縮、および
2)食材を製造するための培養ブロスの乾燥、
または
IIB)培養ブロスの<2%の固形物含量については:
1)>2%かつ<50%の固形物含量を得るための培養ブロスの濃縮、および
2)食材を製造するための懸濁物の乾燥、
または
IIC)培養ブロスの固形物含量とは無関係に、
1)バイオマスの取り出し、
2)カロチノイドが可溶性でない溶媒、特に水を用いるバイオマスの場合による洗浄、
3)滅菌および細胞破壊、
4)場合による乾燥および均質分配、
5)バイオマスからのカロチノイド溶解性溶媒を使用するカロチノイドの部分抽出、
5a)カロチノイド含有溶媒からのカロチノイド含有バイオマスの取り出し、
5b)バイオマスからの残渣溶媒の除去、および
5c)食材を製造するためのバイオマスの乾燥、
6)5a)において使用した溶媒からのカロチノイドの結晶化および特に濾過によるカロチノイド結晶の単離。
【0181】
2つの変形a)またはb)に従って実行された、遺伝子改変された微生物の培養物からの、遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイド、または遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイド前駆体の本発明に従う調製は、2つの生成物が同時に産生されることを可能にする。
【0182】
本発明に従って、特に、変形a)に従う調製における2つの生成物、すなわち、少なくとも1つのカロチノイド、およびカロチノイド含有食材の産生を合わせることによって、バイオマスからのカロチノイドの完全な抽出が必要ではなく、その結果、上記抽出の複雑さが減少する。完全な利用にもかかわらず、カロチノイドは部分的にのみ抽出される必要があり、生成物は失われない。これは、より少ない量の溶媒を必要とし、それらの再利用のためにより少ない手段を伴う。さらに、非常に多くの廃棄物が回避される。なぜなら、バイオマスは最後に廃棄物となることなく、しかし、高品質の食材をさらに与えるように処理される。結果として、これらの方法は、相乗作用の利用に起因してあまり高価ではなくなる。
【0183】
従って、変形b)に従う調製を用いる、本発明に従う方法によって入手可能な食材は、製造後にすでに大量のカロチノイドを含み、これは添加する必要がない。さらに、上記食材の栄養含量は、これがまた、少なくとも1種のカロチノイドに加えてBlakeslea trisporaを含むという事実に起因して増加している。栄養含量の増加は、好ましい代替方法IIAおよびIIBに従って特に大きい。なぜなら、これは、少なくとも1種のカロチノイドおよびBlakeslea trisporaは別として、発酵のすべての培地成分を含むからである。さらに、プロセスは、いかなるさらなる複雑な一連の作業および準備段階をも必要としない。むしろ、ホモジナイズされた、および、適切な場合、Blakeslea trisporaを含む脱水された培養ブロスは、食材を製造するために直接的に乾燥され得る。結果として、代替方法IIBにおける水性媒体を別として実質的に廃棄物が存在せず、しかしこれは、精製工場において問題なく精製され得る。さらに、3つすべての代替方法は、損失がないか、またはわずかな損失のみを伴って産生される全体量のカロチノイドを利用する。なぜなら、IIAおよびIIBに従うと、重大な損失を伴う分離工程または一連の作業工程を実行する必要がないからである。代替方法IIICにおいて、産生される全体量のカロチノイドは、同様に損失がないか、またはわずかな損失のみを伴って利用される。なぜなら、一部がバイオマス内で処理されて食材を与え、他の部分は純粋なカロチノイドを得るために抽出されるからである。IICに従う2つの生成物を産生する本発明に従う組み合わせ、すなわち、カロチノイド含有食材およびカロチノイドそれ自体は、再度、本質的に廃棄物が存在せず、バイオマスからのカロチノイドの完全な抽出が必要でなく、その結果、通常の複雑な抽出があまり複雑でないという利点を生じる。完全な利用にもかかわらず、価値のあるカロチノイドは、生成物の損失を受けることなく、部分的にのみ抽出される必要がある。
【0184】
これは少量の溶媒を必要とし、それらの再利用のためのより少ない手段を伴う。さらに、廃棄物は大部分回避される。なぜなら、バイオマスが最後に廃棄物にならないが、高品質の食材を与えるためにさらに処理されるからである。結果として、これらの方法は、相乗作用の利用に起因してあまり高価ではなくなる。
【0185】
本願において、「高純度」とは、少なくとも95%、好ましくは>95%、優先的には>96%、特に好ましくは97%、非常に特に好ましくは>98%、最も好ましくは>99%の少なくとも1種のカロチノイドの純度を意味する。
【0186】
本発明の方法によって産生され得る適切なカロチノイドは、すべての天然な、および人工であるカロチンおよびキサントフィルである。少なくとも1種のカロチノイドは、特に、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3-ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、ルテイン、フィトフルエン、ビキシン、およびフィトエンからなる群から選択される。本発明において、アスタキサンチンまたはゼアキサンチンが好ましい。カロチノイドは、本発明の方法によって、独立して、または上述のカロチノイドの2種以上の混合物として得られうる。具体的には、カロチノイドは、特に、本明細書中以下に記載される遺伝子改変生物(GMO)を使用して産生され得る。
【0187】
食材は、栄養のために使用される組成物と見なされる。これらはまた、栄養補助のための組成物を含む。動物飼料および動物用栄養補助飼料は、特に、食材と見なされる。
【0188】
培養後、バイオマスは調製の変形a)に従って培養ブロスから取り出され得る。この目的のために、当業者によく知られており、かつ通常利用可能である固体/液体分離の任意の方法が使用できる。これらは、特に重力、遠心力、圧力、または真空を利用することに基づく濾過および遠心分離などの機械的プロセスを含む。使用できるプロセスおよび装置には、さらに、とりわけ、以下が含まれる:クロスフロー濾過、またはメンブレン技術(例えば、浸透圧、逆浸透圧、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、濾滓濾過(cake filtration)のプロセスなど)(例えば、自動圧力フィルター(メンブレン、フレーム、またはチャンバー)フィルタープレス、(攪拌)圧力フィルター、吸引フィルター、(真空)ベルトフィルター、(真空)ドラムフィルター、ロータリーフィルター、キャンドルフィルターによる)、連続的にまたはバッチ式に操作される遠心分離またはフィルター遠心分離による遠心分離プロセス(例えば、反転フィルター遠心分離、スクレイパー遠心分離、プッシャー型遠心分離、ワーム/スクリーン遠心分離、スライド遠心分離、セパレーターまたはデカンター遠心分離)、浮揚、沈殿、シンク−フロート精製および清澄化などの重力を利用するプロセス。バイオマスは、好ましくは、デカンターによる遠心分離によって、またはメンブレン濾過ユニットによる濾過によって培養ブロスから取り出される。
【0189】
変形b)に従う調製の第2の工程は、培養ブロス中で均一に分布した固体の懸濁物を生成する。この目的のために、当業者によく知られており、かつ通常利用可能である任意の方法が使用できる。ここでは特に、(実験室スケールで)UltraTurrax(登録商標)などのディスペンサーが使用される。細胞破壊が実行され得るが必要ではない。
【0190】
培養ブロスは、必要な場合、>2%と<50%の間の適切な固形物含量を達成するために脱水され得る。この目的のために、当業者によく知られており、かつ通常利用可能である固体/液体分離の任意の方法が使用できる。これらは特に、重力、遠心力、圧力、または真空を利用することに基づく濾過および遠心分離などの機械的プロセスを含む。使用できるプロセスおよび装置には、さらに、とりわけ、以下が含まれる:クロスフロー濾過、またはメンブレン技術(例えば、浸透圧、逆浸透圧、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、濾滓濾過のプロセスなど)(例えば、自動圧力フィルター(メンブレン、フレーム、またはチャンバー)フィルタープレス、(攪拌)圧力フィルター、吸引フィルター、(真空)ベルトフィルター、(真空)ドラムフィルター、ロータリーフィルター、キャンドルフィルターによる)、連続的にまたはバッチ式に操作される遠心分離またはフィルター遠心分離による遠心分離プロセス(例えば、反転フィルター遠心分離、スクレイパー遠心分離、プッシャー型遠心分離、ワーム/スクリーン遠心分離、スライド遠心分子、セパレーターまたはデカンター遠心分離)、浮揚、沈殿、シンク−フロート精製および清澄化などの重力を利用するプロセス。バイオマスは、好ましくは、デカンターによる遠心分離によって、またはメンブレン濾過ユニットによる濾過によって培養ブロスから取り出される。培養ブロスは引き続き乾燥される。再度、本発明において当業者に公知のプロセスおよび装置を利用することが可能である。特に適切なものは、対流乾燥、接触乾燥、および放射乾燥などの熱乾燥のための器具であり、例えば、トレイ、チャンバー、チャネル、フラットウェブ、プレート、ロータリードラム、フリーフォールシャフト、シーブベルト、ストリーム、流動床、ペダル、球状ベッド、ホットプレート、薄膜、カン、ベルト、シーブドラム、スクリュー、タンブル、コンタクトディスク、赤外線ドライヤー、マイクロ波ドライヤー、およびフリーズドライヤー、スプレードライヤーまたは統合された流動床を備えたスプレードライヤーであり、これらは、適切な場合、蒸気、オイル、ガス、または電流によって加熱され、かつ適切な場合、減圧下で操作される。器具に依存して、操作のモードは、連続的かまたはバッチ式であり得る。さらに、またはそれと組み合わせて、上記にすでに示された固体/液体分離の機械的プロセスが使用できる。
【0191】
しかし、WO 97/36996 A2によって開示されるような押し出しによる顆粒化は必要でない。乾燥プロセスは、食材を安定かつ保存可能にする。
【0192】
培養ブロスは特にスプレー乾燥される。DE 101 04 494 A1, DE-A-12 11 911またはEP 0 410 236 A1に開示されるような乾燥プロセスのためのスプレー乾燥を使用することが好ましい。さらに、参照がRompp Lexikon Chemie CD-ROM バージョン2.0, Georg Thieme Verlag, 1999, "Spruhtrocknung" und Rompp Lexikon Biotechnologie, Georg Thieme Verlag, 1992, "Zerstaubungstrocknung"になされている。スプレー乾燥は、ドライヤーの熱い部分中での生成物の短い滞留時間という利点を有し、従って、特に穏やかな乾燥プロセスを達成する。
【0193】
約115℃〜180℃、好ましくは120℃〜130℃の入口温度、および約50℃〜80℃、好ましくは55℃〜70℃の出口温度がスプレー乾燥のために選択される。乾燥プロセスにおいて利用される好ましいガスは窒素である。
【0194】
適切な場合、より良好な流動性を達成するために、ケイ酸などの流動補助剤を加えることが可能である。不活性キャリア物質、すなわち、低分子量無機キャリア(例えば、NaCl、CaCO、Na2SO4、またはMgSO4)、有機キャリア(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、デキストリン)またはデンプン製品(ライムギ、オオムギ、エンバク粉、コムギセモリナふすま)の使用が考えられる。
【0195】
乾燥生成物は、乾燥重量に基づき、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満の残渣の湿度を有する。そのカロチノイド含量は、乾燥重量に基づき、0.05%と20%の間、特に1%と10%の間である。
【0196】
この方法で産生された食材は、直接使用できるか、または、DE 101 04 494 A1において開示されるものと同様にさらなる添加物によって処理され得るかのいずれかである。
【0197】
代替方法IICに従って、培養された後、乾燥される前のバイオマスは、最初に培養ブロスから取り出される。この目的のために、当業者によく知られており、かつ通常利用可能である任意の固体/液体分離方法が、脱水について上記にすでに述べたように利用され得る。バイオマスは、好ましくは、デカンターまたはメンブレン濾過による遠心分離によって、培養ブロスから取り出される。
【0198】
続いて、バイオマスは、カロチノイドが溶解しない溶媒、特に水を用いて場合によって洗浄され、それによって、特に水溶性成分が除去される。この工程は、適切な場合、カロチノイドが溶解しないさらなる溶媒(例えば、アルコール)を使用して補充され得るが、これは本発明の範囲内では必要でなく、廃棄物を避けるためには好ましくない。
【0199】
続いて、滅菌およびその後のまたは同時のバイオマス中の細胞の破壊が実行される。滅菌は微生物を殺傷し、かつ存在し得る酵素活性を停止する。これは、バイオマスまたはそこに存在する物質、特にカロチノイドの安定性および分解を回避することのために重要である。
【0200】
滅菌は、当業者によく知られている慣例的な方法を使用して実行され得る。これは、蒸気を使用する滅菌、特に、120℃より高い温度で、加圧下(≧1バール)、および≧約20分間である滅菌を含み、また、UV、マイクロ波、γ線またはβ線などの高エネルギー照射を用いる処理を含む。本発明の方法の構成の中にある滅菌は、好ましくは蒸気またはマイクロ波照射を使用して実行される。
【0201】
その後のまたは同時の細胞破壊は、細胞中に存在するカロチノイドを遊離させる。細胞破壊は同様に、当業者に公知の任意の慣例的な方法を使用して実行され得る。これらは、機械的な方法および非機械的な方法を含む。機械的な方法は、乾式粉砕、湿式粉砕、攪拌、ホモジナイズ(例えば、高圧ホモジナイザー中で)、および超音波またはマイクロ波の使用を含む。適切な非機械的な方法は、物理的方法、化学的方法、および生化学的方法である。これらは短時間の加熱、短時間の凍結、浸透圧ショック、乾燥、酸または塩基を用いる処理、および酵素的破壊を含む。しかし、有利には、滅菌のために使用されるプロセスが細胞破壊のために使用される。従って、同様に、蒸気またはマイクロ波照射を使用する細胞破壊を実行することが好ましい。
【0202】
滅菌および/または細胞破壊は、連続的にまたはバッチ式で実行され得る。
【0203】
滅菌および/または細胞破壊は、培養のために使用されたバイオリアクター中で、またはオートクレーブなどの他の装置中で実行され得る。手順が連続的である場合、WO 01/83437 A1に開示されるマイクロ波使用プロセスおよび対応する装置を使用することが可能である。
【0204】
抽出の前に、バイオマスは、適切な場合、乾燥および/またはホモジナイズされる。再度、当業者に公知の任意の慣例的なプロセスおよび装置を本発明において利用することが可能である。特に適切なものは、対流乾燥、接触乾燥、および放射乾燥などの熱乾燥のための器具であり、例えば、トレイ、チャンバー、チャネル、フラットウェブ、プレート、ロータリードラム、フリーフォールシャフト、シーブベルト、ストリーム、流動床、ペダル、球状ベッド、ホットプレート、薄膜、カン、ベルト、シーブドラム、スクリュー、タンブル、コンタクトディスク、赤外線ドライヤー、マイクロ波ドライヤー、およびフリーズドライヤー、スプレードライヤーまたは統合された流動床を備えたスプレードライヤーであり、これらは、適切な場合、蒸気、オイル、ガス、または電流によって加熱され、かつ適切な場合、減圧下で操作される。器具に依存して、操作のモードは、連続的かまたはバッチ式であり得る。さらに、またはそれと組み合わせて、上記にすでに示された固体/液体分離の機械的プロセスが使用できる。
【0205】
しかし、WO 97/36996 A2によって開示されるような押し出しによる顆粒化は必要でない。
【0206】
続いて、カロチノイドは、カロチノイド溶解溶媒および上記溶媒のバイオマスからの分離によって、破壊されたバイオマスから部分抽出される。次いで、溶媒とバイオマスの両方がカロチノイドを含み、上記カロチノイドの大部分は、好ましくは溶媒中に存在する。
【0207】
次いで、高純度カロチノイドが溶媒から単離されるのに対して、バイオマスは、高純度、カロチノイド含有食材を与えるためにさらに処理され、これもまた、先の細胞破壊に起因して、良好なカロチノイドの生物学的利用能を有する。
【0208】
従って、部分的抽出は、バイオマスからのカロチノイドの意図的に不完全な抽出を意味する(上記を参照されたい)。従って、本発明の範囲内にある上記抽出によってバイオマスから抽出された、バイオマス中のカロチノイドの総量の100%未満の量が好ましい。これは、抽出物の複雑さが、バイオマス中のカロチノイドの減少する量に逆比例して増加するので、大きな利点である。
【0209】
抽出のために使用される溶媒はカロチノイドを溶解するものであり、例えば、ヘキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、または超臨界二酸化炭素などである。本発明に従って使用される好ましい溶媒は、ジクロロメタンまたは超臨界二酸化炭素であり、超臨界二酸化炭素を使用する場合、そこに存在するカロチノイドをジクロロメタンに移すこと、または二酸化炭素を膨張させることにより直接的に目的の生成物を得ることが可能である。この点に関して、溶媒の量および混合時間は、望ましい量のカロチノイドがバイオマスから抽出されるように選択される。より詳細には、抽出工程が1回のみ実行され、これは技術的かつ経済的に理にかなっている(上記を参照されたい)。
【0210】
抽出は、任意の慣用的なプロセスおよび装置を使用して実行され得る。より詳細には、バイオマスが破壊されたが乾燥していない場合には、液体/液体抽出が実行され(カロチノイドは液体細胞成分中に、可溶型で存在し、そこから抽出される)、そしてバイオマスが乾燥している場合には、固体/液体抽出が実行される。特定の温度範囲内で、低温抽出および高温抽出を、連続的プロセス(例えば、ソックスレー抽出、パーフォレーション、および浸出)と不連続プロセス(これは例えば、振盪による抽出、塩基を用いる抽出、煮沸による抽出、および消化を含む)の両方で使用することが可能である。これはまた、向流プロセスにおいて実行され得る。
【0211】
液体/液体抽出のために、例えば、バブルカラム、振動カラム、回転内部フィッティングを有するカラム、ミキサーセトラーバッテリーまたは攪拌タンクなどを使用することが可能である。
【0212】
固体/液体抽出は、慣用的な装置によって実行され得る。攪拌タンクまたはミキサーセトラー装置を使用することが好ましい。
【0213】
代替的には、細胞は、発酵培地の事前の除去なしで破壊され得、続いてバイオマスからの得られるカロチノイド懸濁物の直接的分離を行うことができる(例えば、デカンターによって)。カロチノイド懸濁物は、引き続いて、ジクロロメタン中に溶解されてさらに処理されるか、または代替的には、種々の水性溶液を用いる洗浄によって精製される。
【0214】
高純度カロチノイドは、使用する溶媒から上記カロチノイドを結晶化すること、およびそのカロチノイド結晶を、特に濾過によって単離することによって、溶媒から単離される。残りの母液は、蒸留後、再度このプロセスに入り得、このようにして、少ない労力にもかかわらず生成物の損失を最小化する。
【0215】
結晶化は、従来通りに実行され得る。さらに、Rompp Lexikon Chemie CD-ROMバージョン2.0, Georg Thieme Verlag, 1999,「Kristallisation」に対する参照がなされ得る。
【0216】
結晶化は、好ましくは、カロチノイドが不溶性である溶媒を使用して溶媒を徐々に置き換えることによって実行される。従って、カロチノイドの溶解性は、上記カロチノイドが純粋な結晶の形態で沈殿するまで、連続して減少される。本発明において、「低級アルコール」または水を使用することが好ましい。低級アルコールとは、1〜4炭素原子を有する脂肪族アルコールを意味する。これらは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、およびsec−ブタノールを含む。メタノールを使用することが好ましい。
【0217】
この点に関して、カロチノイド溶液は加熱され得、温度は好ましくは<100℃、特に<60℃に保たれ、その結果、ジクロロメタンが蒸発する。減圧を使用することが考えられる。次いで、カロチノイド結晶が単離され、これは、通常の手段によって、特に濾過によって実行され得る。所望される場合、さらに場合による乾燥および/または精製の工程が続き得る。しかし、これらは、カロチノイド結晶がすでに高純度であるので、必要ではない。
【0218】
カロチノイドは、高純度結晶として得られ、そして少なくとも95%、好ましくは>95%、優先的には>96%、特に好ましくは>97%、非常に特に好ましくは>98%、最も好ましくは>99%の純度を有する。
【0219】
達成可能な収率は、培養ブロス中に存在する量(0.5〜15g/L、好ましくは1〜10g/L)に基づいて、45%と95%の間、好ましくは70%と95%の間である。
【0220】
同様にカロチノイドを含有するバイオマスをさらに処理して高品質食材を与えるために、最初に残渣の溶媒がカロチノイド含有バイオマスから除去される。これは、好ましくは、蒸気蒸留または蒸気を用いる「ストリッピング」(Rompp Lexikon Chemie CD-ROMバージョン2.0, Georg Thieme Verlag, 1999,「Strippen」を参照されたい)によって実行される。
【0221】
これに続いて、適切な場合、上記の取り出した培養ブロス中のバイオマスを均質に懸濁することが行われ得、この場合、技術的な困難さを伴うことなしに(すなわち、懸濁物がポンプ吸引可能でなくてはならない)、食材を製造するためのバイオマスまたは懸濁物の引き続く乾燥のためには、>100g/Lかつ<600g/Lの固形物含量が観察されるべきである。適切な乾燥プロセスは、すでに言及したプロセスおよび器具のすべてである。より詳細には、スプレー乾燥が、DE 101 04 494 A1において開示されるように実行され得る乾燥プロセスのために使用される。
【0222】
約100℃〜180℃、好ましくは120℃〜130℃の入口温度、および約50℃〜80℃、好ましくは55℃〜70℃の出口温度がスプレー乾燥のために選択される。乾燥プロセスにおいて利用される好ましいガスは窒素である。
【0223】
この方法において製造される食材は、直接的に使用できるか、またはDE 101 04 494 A1において開示されるのと同様にさらなる添加物によって処理され得るかのいずれかである。
【0224】
食材は、栄養のために使用される組成物と見なされる。これらはまた、栄養補助のための組成物を含む。動物飼料および動物用栄養補助飼料は、特に、食材と見なされる。さらに、Rompp Lexikon Chemie CD-ROM バージョン2.0, Georg Thieme Verlag, 1999, 「Nahrungsmittel」に対する参照がなされる。
【0225】
乾燥生成物は、乾燥重量に基づき、好ましくは5%未満の残渣の湿度を有する。そのカロチノイド含量は、乾燥重量に基づき、0.05%と20%の間、特に1%と10%の間である。所望のカロチノイド含量は、抽出の程度を介して制御され得る(上記を参照されたい)。
【0226】
従って、本発明に従う方法によって入手可能な食材は、製造後にすでに大量のカロチノイドを含み、これは添加する必要がない。さらに、上記食材の栄養含量は、これがまた、少なくとも1種のカロチノイドに加えてバイオマスを含むという事実に起因して増加している。栄養含量の増加は、好ましい代替方法に従って特に大きい。なぜなら、これは、少なくとも1種のカロチノイドおよびバイオマスは別として、発酵のすべての培地成分を含むからである。結果として、水性媒体を別として実質的に廃棄物が存在せず、しかしこれは、精製工場において問題なく精製され得る。さらに、損失がないか、またはわずかな損失のみを伴って産生される全体量のカロチノイドが利用される。なぜなら、全体量のカロチノイドを抽出するために、重大な損失を伴う分離工程または一連の作業工程を実行する必要がないからである。
【0227】
本発明の上記に記載された方法において使用される溶媒のすべては、可能な限り、および引き続き再利用されるか、またはプロセスに再び入る限り精製される。より詳細には、使用されるジクロロメタンは溶媒の置き換えの間にすでに精製され、その後に再度使用されるために準備される。低級アルコールまたはメタノールは、例えば、蒸留によって精製され、同様に再利用される。唯一の産生される廃棄物は水性媒体を伴う蒸留底であり、これは、リスクを伴わずに精製工場に向けられ得、ここでは最後に産生される実際の廃棄物は少量のスラッジのみである。従って、記載される方法は本質的に廃棄物を含まない。
【実施例】
【0228】
本発明は、実施例に基づいて以下により詳細に例証される。
【0229】
A)Blakeslea trisporaの培養
以下の培地を、カロチノイドを産生するためのBlakeslea trisporaの発酵のために使用した:
培地1:
グルコース 10.00g/l
綿実油 30.00g/l
ダイズ油 30.00g/l
デキストリン 60.00g/l
綿実粕 75.00g/l
Triton X100 1.20g/l
アスコルビン酸 6.00g/l
乳酸 2.00g/l
KHPO 0.50g/l
MnSOxHO 100mg/l
チアミン−HCl 2mg/l
イソニアジド(イソニコチン酸
ヒドラジド) 0.75g/l
pHを6.5に調整した。
【0230】
培地2:
グルコース 20g/l
アスパラギン 2.00g/l
KHPO 5.00g/l
MgSOx7HO 0.50g/l
CaCl 28mg/l
チアミン−HCl 1.00mg/l
クエン酸 2.00mg/l
Fe(NO×9HO 1.50mg/l
ZnSOx7HO 1.00mg/l
MnSOxHO 0.30mg/l
CuSOx5HO 0.05mg/l
NaMoOx2HO 0.05mg/l
【0231】
培地3:
グルコース 70.00g/l
アスパラギン 2.00g/l
酵母抽出物 1.00g/l
KHPO 1.50g/l
MgSOx7HO 0.50g/l
Span 20 1.00g/l
チアミン−HCl 5.0mg/l
pHを5.5に調整した。
【0232】
記載された200mlの培地に、各々の場合において、それぞれ10個の胞子(培地2について)および10個の胞子(培地1および3について)を含むBlakeslea trispora ATCC 14272接合型(−)の胞子懸濁物を接種した。培養を、各々の場合において、バッフルを備える1lエーレンマイヤーフラスコ中で実行した。各培地を用いて、6つの同一のフラスコを準備し、シェーカー上で28℃で140rpm、7日間インキュベートした。
【0233】
B)Blakeslea trisporaの遺伝子改変
材料および方法
分子遺伝学研究を、他に記載しない限り、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al., 1999, John Wiley & Sons)における方法によって実行した。
【0234】
株および増殖条件
Blakeslea trispora株ATCC 14271(接合型(+))およびATCC 14272(−)(野生型)(接合型(−))をアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手した。B. trisporaをMEP培地(麦芽エキス−ペプトン培地:30g/l 麦芽抽出物(Difco)、3g/lペプトン(Soytone,Difco)、20g/l寒天、pH5.5に設定、HOで1000mlに調整(28℃))中で増殖させた。
【0235】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス LBA4404をHoekemaら(1983, Nature 303:179-180)に従って、28℃で24時間、アグロバクテリア最少培地(AMM):10mM KHPO、10mM KHPO、10mM グルコース、MM塩(2.5mM NaCl、2mM MgSO、700μM CaCl、9μM FeSO、4mM (NHSO)中で増殖させた。
【0236】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスの形質転換
プラスミドpBinAHygをアグロバクテリア株LBA 4404にエレクトロポレーションした(Hoekemaら, 1983, Nature 303:179-180)(MozoおよびHooykaas, 1991, Plant Mol. Biol. 16:917-918)。以下の抗生物質を、アグロバクテリア増殖の間に選択のために使用した:リファンピシン50mg/l(A.ツメファシエンス染色体についての選択)、ストレプトマイシン30mg/l(ヘルパープラスミドについての選択)、およびカナマイシン100mg/l(バイナリーベクターについての選択)。
【0237】
Blakeslea trisporaの形質転換
AMMにおける増殖の24時間後、アグロバクテリアを、誘導培地(IM:MM塩、40mM MES(pH 5.6)、5mM グルコース、2mM ホスフェート、0.5% グリセロール、200μMアセトシリンゴン)中で0.15のOD600まで形質転換のために希釈して、再度約0.6のOD600まで、IMで一晩増殖させた。
【0238】
Blakeslea ATCC 14271またはATCC14272およびアグロバクテリウムの同時インキュベーションのために、100μlのアグロバクテリア懸濁物を、100μlのBlakeslea胞子懸濁物(10胞子/ml、0.9%NaCl中)と混合し、滅菌様式でIM−アガロースプレート(IM+18g/l寒天)上のナイロンメンブレン(Hybond N,Amersham)上に分注した。26℃で3日間のインキュベーション後、メンブレンをMEP−寒天プレート(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)に移した。形質転換したBlakeslea細胞を選択するために、培地は100mg/lの濃度でハイグロマイシンを含み、そしてアグロバクテリアに対して選択するために、100mg/lセフォタキシムを含んだ。インキュベーションを26℃で約7日間実行した。これに続いて、菌糸体を新鮮な選択プレートに移すことを行った。得られた胞子を0.9%NaClですすぎ、そしてCM17−1寒天(3g/l グルコース、200mg/l L−アスパラギン、50mg/l MgSOx7HO、150mg/l KHPO、25μg/l チアミン−HCl、100mg/l 酵母抽出物、100mg/l デオキシコール酸ナトリウム、100mg/L ハイグロマイシン、100mg/L セフォタキシム、pH 5.5、18g/l寒天)上にプレーティングした。個々の遺伝子改変された胞子を、それらを選択培地上に個々に配置することによって、BectonDickinson製のFACS装置(モデルVantage+Divaオプション)を使用して単離した。
【0239】
MNNGを用いる突然変異誘発
胞子あたりの核の数を減少させるために、胞子懸濁物をMNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)で処理した。このために、最初に、Tris−HCl緩衝液、pH 7.0中に1×10胞子/mlを含む胞子懸濁物を調製した。この胞子懸濁物を、100μg/mlの最終濃度のMNNGと混合した。MNNG中のインキュベーションの時間は、胞子の生存率が約5%であるような方法で選択した。MNNGとのインキュベーション後、胞子を、50mMリン酸緩衝液pH7.0中の1g/l Span20で3回洗浄し、プレーティングした。
【0240】
同核細胞の選択
同核Blakeslea trispora carB細胞を、Phycomyces blakesleeanusについての実験プロトコール(Ronceroら, 1984, Mutation Research, 125:195-204)と同様の様式で、5−炭素−5−デアザリボフラビン(1μg/ml)およびハイグロマイシン(100μg/ml)の存在下での増殖によって改変して、選択した。
【0241】
アグロバクテリウム媒介形質転換による遺伝子改変されたBlakeslea trisporaの調製
組換えプラスミドpBinAHygの調製
gpdA−hph−trpC−カセットを、プラスミドpANsCos1(図1、Osiewacz, 1994, Curr. Genet. 26:87-90, 配列番号4)からのBglII/HindIIIフラグメントとして単離し、そしてBamHI/HindIIIで切断したバイナリープラスミドpBin19(Bevan, 1984, Nucleic Acids Res. 12:8711-8721)にライゲーションした。この方法で得られたベクターはpBinAHygと呼ばれ(図2、配列番号3)、gpdプロモーター(配列番号1)の制御下に大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、ならびにAspergillus nidulans由来のtrpCターミネーター(配列番号2)およびアグロバクテリウムDNA導入のために必要である対応するボーダー配列を含んだ。本明細書中以下に記載される例示的な実施形態において言及されるベクターは、pBinAHyg誘導体である。
【0242】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスへのpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入
pBinAHygプラスミドのアグロバクテリアへの導入は以下の実施例によって記載されている。この誘導体は類似の様式で導入された。
【0243】
プラスミドpBinAHygを、アグロバクテリア株LBA 4404にエレクトロポレーションした(Hoekemaら、1983, Nature 303:179-180)(MozoおよびHooykaas, 1991, Plant Mol. Biol. 16:917-918)。以下の抗生物質を、アグロバクテリア増殖の間に選択のために使用した:リファンピシン50mg/l(A.ツメファシエンス染色体についての選択)、ストレプトマイシン30mg/l(ヘルパープラスミドについての選択)、およびカナマイシン100mg/l(バイナリーベクターについての選択)。
【0244】
Blakeslea trisporaへのpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入
AMMにおける増殖の24時間後、アグロバクテリアを、誘導培地(IM:MM塩、40mM MES(pH 5.6)、5mM グルコース、2mM ホスフェート、0.5% グリセロール、200μMアセトシリンゴン)中で0.15のOD660まで形質転換のために希釈し、再度約0.6のOD660まで、IMで一晩増殖させた。
【0245】
Blakeslea trispora(B.t.)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.t.)の同時インキュベーションのために、100μlのアグロバクテリア懸濁物を、100μlのBlakeslea胞子懸濁物(10胞子/ml、0.9%NaCl中)と混合し、滅菌様式でIM−アガロースプレート(IM+18g/l寒天)上のナイロンメンブレン(Hybond N,Amersham)上に分注した。26℃で3日間のインキュベーション後、メンブレンをMEP−寒天プレート(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)に移した。
【0246】
形質転換したBlakeslea細胞を選択するために、培地は100mg/lの濃度でハイグロマイシンを含み、そしてアグロバクテリアに対して選択するために、100mg/lセフォタキシムを含んだ。インキュベーションを26℃で約7日間実行した。これに続いて、菌糸体を新鮮な選択プレートに移すことを行った。得られた胞子を0.9%NaClですすぎ、そしてCM17−1寒天(3g/l グルコース、200mg/l L−アスパラギン、50mg/l MgSOx7HO、150mg/l KHPO、25μg/l チアミン−HCl、100mg/l 酵母抽出物、100mg/l デオキシコール酸ナトリウム、pH 5.5、100mg/l セフォタキシム、100mg/l ハイグロマイシン、18g/l寒天)上にプレーティングした。新鮮な選択プレートへの胞子の移動を3回反復した。このようにして、形質転換体Blakeslea trispora GMO 3005を単離した。代替的には、胞子を個々に100mg/L セフォタキシム、100mg/l ハイグロマイシンを含むCM−17寒天に適用することによって、BectonDickinson FacsVantage+Diva Optionによって、GMO(遺伝子改変生物)を選択した。この場合において、真菌の菌糸体は、胞子が遺伝子改変された場合のみに形成した。
【0247】
Blakeslea trisporaにおけるpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入に起因する遺伝子改変の検出
導入の検出が、Blakeslea trisporaにおけるpBinAHygについて、以下の実施例によって記載されている。
【0248】
誘導体の導入の検出は、同様の様式で実行された。
【0249】
200mlのMEP培地(30g/l 麦芽抽出物、3g/l ペプトン、pH 5.5)に、10〜10個の胞子のBlakeslea trispora GMO 3005形質転換体を接種し、ロータリーシェーカー上で200rpmおよび26℃で、7日間インキュベートした。成功した形質転換を検出するために、DNAを菌糸体から単離し(Peqlab Fungal DNA Miniキット)、PCR(プログラム:94℃で1分間、次いで、各々1分間94℃、1分間58℃、1分間72℃の30サイクル)において使用した。
【0250】
プライマーhph−フォワード(5’−CGATGTAGGAGGGCGTGGATA、配列番号5)およびプライマーhph−リバース(5’−GCTTCTGCGGGCGATTTGTGT、配列番号6)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)を検出するために使用した。予測されるhphフラグメントは800bp長であった。
【0251】
プライマーnptIII−フォワード(5’−TGAGAATATCACCGGAATTG、配列番号7)およびプライマーnptIII−リバース(5’−AGCTCGACATACTGTTCTTCC、配列番号8)を、カナマイシン耐性遺伝子nptIIIの増幅のために、従ってアグロバクテリアについてのコントロールとして使用した。予測されるnptIIIフラグメントは700bp長であった。
【0252】
プライマーMAT292(5’−GTGAATGGAAATCCCATCGCTGTC、配列番号9)およびプライマーMAT293(5’−AGTGGGTACTCTAAAGGCCATACC、配列番号10)を、グリセリンアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子gpd1のフラグメントの増殖のため、従って、Blakeslea trisporaについてのコントロールとして使用した。予測されるgpdlフラグメントは500bp長であった。
【0253】
図3は、標準ゲルに基づくBlakeslea trisporaDNAのPCRの結果を示す。ゲルのレーンには以下のようにロードした:
1)100bpサイズマーカー(100bp〜1kb)
2)B.t.GMO 3005 プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
3)B.t.GMO 3005 プライマーhph−フォワード/hph−リバース
4)B.t.GMO 3005 プライマーMAT292/MAT293(gpd)
5)pBinAHygプラスミドを有するA.t. プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
6)pBinAHygプラスミドを有するA.t. プライマー hph−フォワード/hph−リバース
7)B.t.14272WT プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
8)B.t.14272WT プライマーhph−フォワード/hph−リバース
9)B.t.14272WT プライマーMAT292/MAT293(gpd)。
【0254】
ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)および、陽性対照として、グリセリンアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gpd1)がBlakeslea trispora DNAにおいて検出された。対照的に、nptIIIは検出されなかった。
【0255】
従って、アグロバクテリウム媒介形質転換によるBlakeslea trisporaの遺伝子改変が検出された。
【0256】
ホモカリオン性Blakeslea trisporaGMOの単離:同核株の調製
pBinAHygベクターおよびpBinAHyg誘導体のBlakeslea trisporaへの首尾よい導入は、遺伝子改変された生物を産生する。しかし、Blakeslea trisporaのGMOにおいて、Blakesleaは栄養細胞および生殖細胞のサイクルのすべての段階において多核性細胞を有する。それゆえに、ベクター外来性DNAは、通常1つの核においてのみ挿入される。しかし、ベクター外来性DNAがすべての核に挿入されるBlakeslea株を得ることが本発明の目的であり、すなわち、その目的は同核組換え真菌菌糸体である。
【0257】
この種のホモカリオン性細胞を調製するために、組換え株の胞子懸濁物を、最初にMNNGで処理した。このために、Tris/HCl緩衝液、pH 7.0中に1×10胞子/mlを含む胞子懸濁物を調製した。胞子懸濁物を、100μg/mlの最終濃度でMNNGと混合した。MNNG中のインキュベーションの時間は、胞子の生存率が約5%であるような方法で選択した。MNNGとのインキュベーション後、胞子を、50mMリン酸緩衝液pH7.0中の1g/l Span20で3回洗浄し、プレーティングした。
【0258】
1)FACS(蛍光活性化細胞分取)の手段による同核組換え株の調製
Blakeslea trisporaの胞子または遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の少ない割合が本来単核である。pBinAHygまたはpBinAHyg誘導体の外来DNAを含む同核組換え株を産生するために、単核胞子をFACSを用いて分取し、100mg/lセフォタキシムおよび100mg/lハイグロマイシンを含むMEP(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)上にプレーティングした。ここで産生された菌糸体は同核であった。FASCのために、3日目の古いスメアの胞子を、寒天プレートあたり、10mlのTris−HCl 50mM+0.1% Span20で洗浄した。胞子濃度は0.5〜0.8×10胞子/mlであった。1mlのDMSOおよび10μlのSyto 11(DMSO中の色素ストック溶液、Molecular Probes No.S−7573)を9mlの胞子懸濁物に加えた。これに続いて、30℃で2時間の染色を行った。選択および適用を、BectonDickinson FacsVantage+Diva Optionを用いて実行した。最初に、個々の胞子を凝集物および夾雑物から分離するために、サイズ選択を実行した。次いで、これらの胞子を、それらの蛍光に従って(励起=488nm、発光=530nm)、適用し分取した。蛍光頻度の分布のガウス曲線の左の肩は、単核胞子を含んだ。
【0259】
次いで、胞子をMEP寒天プレート上にプレーティングし、新たな胞子を生成させた。
【0260】
これらの胞子を、Ronceroらによるプロトコールと類似の様式で、5−炭素−5−デアザリボフラビン、およびさらにハイグロマイシンを含む培地上にプレーティングした。
【0261】
このことは、遺伝子型hygおよびdarのホモカリオン性細胞が選択されることを可能にした。
【0262】
2)核の数を減少させることおよびFACSを用いる選択による同核株の調製
胞子あたりの核の数を減少させるために、選択の前に、胞子懸濁物をMNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)で処理し、従って、化学的突然変異誘発によって核の数の減少を達成した。
【0263】
このために、最初に、Tris−HCl緩衝液、pH 7.0中に1×10胞子/mlを含む胞子懸濁物を調製した。この胞子懸濁物を、100μg/mlの最終濃度のMNNGと混合した。MNNG中のインキュベーションの時間は、胞子の生存率が約5%であるような方法で選択した。MNNGとのインキュベーション後、胞子を、50mMリン酸緩衝液pH7.0中の1g/l Span20で3回洗浄し、分取し、そして1)に記載される方法によって選択した。
【0264】
代替として、Cerda-OlmedoおよびPatricia Reau in Mutation Res., 9(1970)369-384によって記載されるようなX線およびUV光線を使用することによって胞子中の核の数を減少させることもまた、可能であった。
【0265】
3)劣性選択マーカーのための選択による同核株の調製
同核菌糸体の選択のための適切な劣性選択マーカーは、例えば、劣性選択マーカーpyrGである。Blakeslea trisporaの野生型株はpyrGである。これらの株は、ピリミジンアナログ5−フルオロロテート(FOA)の存在下で増殖することができない。なぜなら、これらは、オロチジン5’−一リン酸デカルボキシラーゼを介してFOAを致死的な代謝産物に転換するからである。遺伝子改変されたpyrG−同核Blakesleaは、オロチジン5’−一リン酸デカルボキシラーゼの酵素活性を欠く。結果として、これらのpyrG株は、5−フルオロオロテートを利用することができない。それゆえに、これらの株は、FOAおよびウラシルの存在下で増殖する。pyrG突然変異および外来DNAインサートが単核胞子の核と合わさった場合、この胞子は同核組換え真菌菌糸体を形成しうる。
【0266】
最初に、プラスミドpBinAHygBTpyrG−SCO(配列番号36、図4)を、Blakeslea trisporaからのpyrGのフラグメント(配列番号65)をpBinAHygに挿入することによって生成した。上記プラスミドは、Blakeslea trisporaに形質転換され、そして相同組換えに起因して、そこでpyrG破壊を引き起こした。
【0267】
pyrG表現型を有する同核Blakeslea trispora GMOを以下のように選択した。pBinAHygBTpyrG−SCOのアグロバクテリウム媒介形質転換のために、100mg/L セフォタキシムおよび100mg/l ハイグロマイシンを含むMEP(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)上でのプレーティングを上記のように実行した。形質転換体の胞子を、寒天プレートあたり、10mlのTris−HCl 50mM+0.1% Span20で洗浄した。胞子濃度は0.5〜0.8×10胞子/mlであった。次いで、胞子を、100mg/l セフォタキシムおよび100mg/l ハイグロマイシンを含むFOA培地上にプレーティングした。FOA培地は、1リットルあたり、20gのグルコース、1gのFOA、50mgのウラシル、200mlのクエン酸緩衝液(0.5M、pH 4.5)およびSutter, 1975, PNAS, 72:127に従う40mlの痕跡塩(trace salt)溶液を含んでいた。同核pyrG突然変異体は、ウラシル含有FOA培地上での増殖を示したが、ウラシルを含まないFOA培地上にプレーティングされた場合、増殖を示さなかった。同様にして、同核GMOを、以下にキサントフィルの産生について記載されるBlakeslea trispora GMOから調製した。
【0268】
代替的には、5−炭素−5−デアザリボフラビンおよびさらにハイグロマイシンを含む培地上に、Ronceroらによるプロトコールに従って、胞子をプレーティングすることが可能である(Ronceroら、1984, Mutation Research, 125: 195-204)。これは、遺伝子型hygおよびdarのホモカリオン細胞が選択されることを可能にする。
【0269】
この原理に従って、表現型hygおよびdarを有するホモカリオン性Blakeslea trispora株が生成される。
【0270】
カロチノイドおよびカロチノイド前駆体を産生するためのBlakeslea trisporaの遺伝子改変生物を調製するための例示的な実施形態
以下に言及するプラスミドを、「重複伸長PCR」法、および引き続くpBinAHygプラスミドへの増幅産物の挿入によって生成した。重複伸長PCR法は、Innisら(編)PCR protocols: a guide to methods and applications, Academic Press, San Diegoにおいて記載されるように実行した。pBinAHyg誘導体の形質転換および同核遺伝子改変Blakeslea trispora株の調製を、上記のように実行した。
【0271】
ゼアキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、ゼアキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、従って、とりわけ、ヒドロキシラーゼ(crtZ)をコードする。
【0272】
− ptef1−HPcrtZ、Blakeslea trispora ptef1プロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144(アクセッション番号AF162276)からのHPcrtZヒドロキシラーゼ(配列番号70)の遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpTEF1−HPcrtZ、配列番号37、図5)。
【0273】
− p−carRA−HPcrtZ、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ、配列番号38、図6)。
【0274】
− p−carB−HPcrtZ、Blakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarB−HPcrtZ、配列番号39、図7)。
【0275】
− p−carRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IR、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む。逆方向反復構造がヒドロキシラーゼ遺伝子の下流に位置しており、この構造は、carAの3’末端およびcarAの下流の領域に由来する(IR、配列番号74、「逆方向反復1」carAの約350bp、次いで約200bp「ループ」そして次いで約350bp「逆方向反復2」)(Seq.pBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IR、配列番号40、図8)。
【0276】
− p−carRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IR、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む。ヒドロキシラーゼ遺伝子は、carAの3’末端およびcarAの下流の領域に由来する逆方向反復構造に融合されている(IR、配列番号74、「逆方向反復1」carAの約350bp、次いで約200bp「ループ」そして次いで約350bp「逆方向反復2」)。結果として、誘導された融合タンパク質は、Haematococcus pluvialisヒドロキシラーゼおよびBlakeslea trispora CarAのカルボキシ末端からなる(Seq.pBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IR、配列番号41、図9)。
【0277】
− p−tef1−EUcrtZ、ptef1プロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3(アクセッション番号D90087)からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子(配列番号71)を含む(Seq.pBinAHygBTpTEF1−EUcrtZ、配列番号42、図10)。
【0278】
− p−carRA−EUcrtZ、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ、配列番号43、図11)。
【0279】
− p−carB−EUcrtZ、Blakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarB−EUcrtZ、配列番号44、図12)。
【0280】
− p−gpdA−HPcrtZ−t−crtZ、gpdAプロモーターの制御下にHaematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子およびt−crtZターミネーター(すなわち、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのcrtZの下流の配列部分(配列番号73))を含む(Seq.pBinAHyg−gpdA−HPcrtZ−tcrtZ、配列番号45、図13)。
【0281】
− p−gpdA−BTcarR−HPcrtZ−BTcarA、Blakeslea trisporaからのリコピンシクラーゼcarRの遺伝子、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHpcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子、およびBlakeslea trisporaからのフィトエンシンターゼcarAの遺伝子の遺伝子融合を含み、かつAspergillus nidulans gpdAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHyg−carR_crtZ_carA、配列番号46、図14)。
【0282】
カンタキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、カンタキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、従って、とりわけ、ケトラーゼ活性(crtW)をコードする。
【0283】
− p−tef1−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102(ORF148、アクセッション番号NZ_AABC01000196)からのNPcrtWケトラーゼ(配列番号72)の遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora ptef1プロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpTEF1−NpucrtW、配列番号47、図15)。
【0284】
− p−carRA−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−NpucrtW、配列番号48、図16)。
【0285】
− p−carB−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarB−NpucrtW、配列番号49、図17)。
【0286】
アスタキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、アスタキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、すなわち、とりわけ、ヒドロキシラーゼ(crtZ)およびケトラーゼ(crtW)をコードする。
【0287】
− p−carRA−HPcrtZ−pcarRA−NPcrtW、Haematococcus pluvialis Flotow NIES−144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子およびNostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子(ORF148、アクセッション番号NZ−AABC01000196)を含み、両方とも各々の場合においてBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ−BTpcarRA−NpucrtW、配列番号50、図18)。
【0288】
− p−carRA−EUcrtZ−pcarRA−NPcrtW、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子(アクセッション番号D90087)、およびNostoc punctiforme PCC73102からのNPcrTWケトラーゼの遺伝子を含み、両方とも各々の場合においてBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ−BTpcarRA−NpucrtW、配列番号51、図19)。
【0289】
Blakeslea trisporaの遺伝子改変の例として利用され得る遺伝子およびプロモーターのクローニングおよび配列分析
種々のBlakeslea trisporaの遺伝子およびプロモーターのクローニングおよび配列決定が以下に例として記載される。
【0290】
ptef1のクローニングおよび配列決定分析
Blakeslea trispora p−tefを、Genbankにおいて以前に公開された、Blakeslea trispora翻訳伸長因子1−αの構造遺伝子(AF157235)の配列に基づいてクローニングした。その配列から開始して、エントリーAF157235プライマーを、上記構造遺伝子の上流のプロモーター領域を増幅および配列決定するために、逆方向PCRのために選択した。Blakeslea trispora ATCC14272のXho1切断されかつ環状化された200ngのゲノムDNAの逆方向ネスト化PCRにおいて、3000bpフラグメントを、以下の反応混合物中に得た:テンプレートDNA(Blakeslea trispora ATCC14272の1μgのゲノムDNA)、プライマーMAT344 5’−GGCGTACTTGAAGGAACCCTTACCG−3’(配列番号63)およびプライマーMAT 345 5’−ATTGATGCTCCCGGTCACCGTGATT−3’(配列番号64)、各0.25μM、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液10×、5UのHerculase(85℃で加える)、HOで100μlにする。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、60秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。3000bpフラグメント中のtef1遺伝子の推定の開始コドンの上流の配列部分は、ptef1プロモーターと見なされた。
【0291】
Blakeslea trispora由来のHMG−CoA還元酵素の遺伝子のクローニングおよび配列決定分析
最初に、Blakeslea trispora ATCC 14272、接合型(−)の遺伝子ライブラリーを調製するために、コスミドベクターpANsCos1を使用した。ベクターをXbaIを用いる切断によって線状化し、次いで脱リン酸化した。BamHIを用いるさらなる切断は挿入部位を生成し、そこにBlakeslea trisporaゲノムDNA(部分的にSau3AIで切断され、脱リン酸化されている)がライゲーションされた。続いて、この方法で生成されたコスミドはインビトロでパッケージングされ、大腸菌に移された。
【0292】
HMG−CoA還元酵素をコードするBlakeslea trispora遺伝子のフラグメントの既知の配列に基づいて(Eur. J. Biochem 220, 403-408 (1994))、315bp DNAプローブを以下のPCRによって調製した。反応混合物:1μgのBlakeslea trispora ATCC 14272ゲノムDNA、プライマーMAT314 5’−CCGATGGCGACGACGGAAGGTTGTT−3’(配列番号79)およびプライマーMAT315 5’−CATGTTCATGCCCATTGCATCACCT−3’(配列番号80)、各0.25μM、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、HOで100μlにする。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);58℃、30秒間、72℃、30秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0293】
このDNAプローブは、コスミド遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために使用した。そのコスミドが上記DNAプローブとハイブリダイズするクローンを同定した。このコスミドのインサートを配列決定した。DNA配列は、MHG-CoA還元酵素の遺伝子に割り当てられた部分を含んだ(HMG−CoA−Red.gb)。
【0294】
carBのクローニングおよび配列決定分析
(carB=Blakeslea trisporaフィトエンデサチュラーゼ遺伝子)
縮重プライマーMAT182 5’−GCNGARGGNATHTGGTA−3’(配列番号52)およびMAT192 5’−TCNGCNAGRAADATRTTRTG−3’(配列番号53)を、フィトエンデサチュラーゼのペプチド配列の比較、およびPhycomyces blakesleeanus、Cercospora nicotianae、Phaffia rhodozymaおよびNeurospora crassaの対応するDNA配列の比較から導いた。PCRを100μl反応混合物中で実行した。これらは、Blakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、1μM MAT182、1μM MAT192、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液 10×、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で加える)、HO(100μlに調整)を含んだ。
【0295】
PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);40℃、30秒間、72℃、30秒間、95℃、30秒間(35サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0296】
これは、358bpフラグメントを生じ、この導き出されたペプチド配列はフィトエンデサチュラーゼ配列と類似している。逆方向PCR(Innisら、PCR protocols: a guide to methods and applications. 1990.219〜227頁)の方法を、染色体ウォーキングの原理に従って、以下のように350bpフラグメントの上流および下流の遺伝子領域を増幅、クローニング、および配列決定のために使用した。
【0297】
(i)1.1kbpフラグメント、プライマーMAT219 5’−AAGTGACACCGGTTACACGCTTGTCTT−3’(配列番号54)およびMAT 220 5’−GCTTATCACCATCTGTTACCTCCTTGC−3’(配列番号55)を用いるPCRによって、EcoRI切断されかつ環状化されたBlakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、0.25μM MAT219、0.25μM MAT220、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、HO(100μlに調整)から得られた。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、60秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0298】
(ii)2.9kbpフラグメント、プライマーMAT219およびMAT220を用いるPCRによって、XbaI切断されかつ環状化されたBlakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、0.25μM MAT219、0.25μM MAT220、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、HO(100μlに調整)から得られた。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、3分間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0299】
図20は、クローニングされた配列部分を図解的に示す。配列決定を、クローニングされたフラグメントおよびPCR産物を使用して順方向および逆方向で実行した。図21は、クローニングされた配列部分の配列を示す。
【0300】
配列比較
carBのヌクレオチド配列および誘導タンパク質CarBのペプチド配列を、関連するタンパク質の既知の配列と比較した。配列を、GAPプログラムおよびBESTFITプログラムを使用して比較した。
【0301】
CarB−GAPに従う同一のアミノアシル残基
プログラム設定:
ギャップ重み: 8
長さ重み: 2
平均マッチ: 2.912
平均ミスマッチ: −2.003
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致するアミノ酸の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 72.491
Phaffia rhodozyma: 50.460
Neurospora crassa: 47.943
Cercospora nicotianae: 47.740
【0302】
CarB−BESTFITに従う同一のアミノアシル残基
プログラム設定:
ギャップ重み: 8
長さ重み: 2
平均マッチ: 2.912
平均ミスマッチ: −2.003
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致するアミノ酸の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 73.380
Phaffia rhodozyma: 53.175
Neurospora crassa: 51.896
Cercospora nicotianae: 50.791
【0303】
carB−GAPに従う同一の塩基
プログラム設定:
ギャップ重み: 50
長さ重み: 3
平均マッチ: 10.000
平均ミスマッチ: 0.000
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致する塩基の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 64.853
Cercospora nicotianae: 50.143
Phaffia rhodozyma: 43.179
Neurospora crassa: 42.130
【0304】
carB−BESTFITに従う同一の塩基
プログラム設定:
ギャップ重み: 50
長さ重み: 3
平均マッチ: 10.000
平均ミスマッチ: −9.000
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致する塩基の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 68.926
Phaffia rhodozyma: 62.403
Neurospora crassa: 60.230
Cercospora nicotianae: 56.884
【0305】
carB発現のためのクローニング
Blakeslea trispora carBをクローニングおよび発現するために、可能なタンパク質配列が、上記のBlakeslea trisporaからクローニングされた配列部分から6つのリーディングフレームにおいて導き出された。これらのタンパク質配列は、Phycomyces blakesleeanus、Phaffia rhodozyma、Neurospora crassa、Cercospora nicotianaeからのフィトエンデサチュラーゼの配列と比較された。配列比較に基づいて、3つのエキソンが、Blakeslea trisporaゲノムDNAのクローニングされた配列部分において同定され、これは、まとめると、その由来する遺伝子産物が、その全体の長さにわたって、Phycomyces blakesleeanusのCarBフィトエンデサチュラーゼ配列と72.7%同一であるアミノアシル残基を有するコード領域を生じる。3つの可能性のあるエキソンおよび2つの可能性のあるイントロンを含むこの配列部分は、それゆえに、遺伝子carBと呼ばれた。予測される遺伝子構造を確認するために、Blakeslea trispora carBのコード配列は、Blakeslea trispora cDNAをテンプレートとして、ならびにプライマーBol1425 5’−AGAGAGGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGC−3’(配列番号56)およびBol1426 5’−AGAGAGGGATCCATGTCTGATCAAAAGAAGCA−3’(配列番号57)を使用して、PCRによって生成された。得られたDNAフラグメントを配列決定した。エキソンおよびイントロンの位置は、ゲノムcarB DNAとcDNAを比較することによって確認された。図21は、carBのコード配列を図解的に示す。大腸菌中でのcarBの発現のために、最初に、carBにおけるNdeI切断部位を重複伸長PCR法によって除去し、NdeI切断部位を遺伝子の5’末端に導入し、BamHI切断部位を3’末端に導入した。得られたDNAフラグメントをベクターpJOE2702とライゲーションした。得られたプラスミドをpBT4と呼び、大腸菌XL1−BlueにpCAR−AEとともにクローニングした。発現を、ラムノースを用いて誘導した。酵素活性を、H
PLCを通してリコピン合成を検出することによって検出した。クローニング工程を以下に記載する。
【0306】
PCR1.1:
約0.5μgのBlakeslea trispora cDNA、0.25μM MAT350 5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’(配列番号58)、0.25 μM MAT244 5’−GTTCCAATTGGCCACATGAAGAGTAAGACAGGAAACAG−3’(配列番号59)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびHO(100μLに調整)。
【0307】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.40℃ 30秒間、4.72℃ 1分30秒間、5.95℃ 30秒間、6.50℃ 30秒間、7.72℃ 1分30秒間、8.95℃ 30秒間、9.72℃ 10分間。
【0308】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)5回、(6〜8.)25回、(9.)1回。
【0309】
PCR1.2:
約0.5μgのBlakeslea trispora cDNA、0.25 μM MAT243 5’−CCTGTCTTACTCTTCATGTGGCCAATTGGAACCAACAC−3’(配列番号60)、0.25 μM MAT353 5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’(配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびHO(100μLに調整)。
【0310】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.40℃ 30秒間、4.72℃ 1分30秒間、5.95℃ 30秒間、6.50℃ 30秒間、7.72℃ 1分30秒間、8.95℃ 30秒間、9.72℃ 10分間。
【0311】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)5回、(6〜8.)25回、(9.)1回。
【0312】
PCR1.1、1.2からのPCRフラグメントの精製
この目的のために、pJOE2702にクローニングするためのBlakeslea trispora carBのコード配列を調製するためにPCR2を実行した。
【0313】
約50ngのPCR1.1産物および約50ngのPCR1.2産物、ならびに、0.25μM MAT350 5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’(配列番号58)、0.25 μM MAT353 5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’(配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびHO(100μLに調整)。
【0314】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.59℃ 30秒間、4.72℃ 2分間、5.95℃ 30秒間、6.72℃ 10分間。
【0315】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)22回、(6.)1回。
【0316】
続いて、得られたフラグメント(約1.7kbp)を精製し、次にベクターpPCR−Script−Ampへのライゲーション、大腸菌XL1−Blueへのクローニング、インサートの配列決定、NdeIおよびBamHIを用いる切断、ならびにpJOE2702へのライゲーションを行った。得られたプラスミドはpBT4と呼ばれた。
【0317】
CarB(フィトエンデサチュラーゼ)の酵素活性の特徴付けおよび検出
carBから導かれた遺伝子産物をCarBと呼ぶ。CarBはペプチド配列分析に基づき、以下の特性を有する:
長さ:582アミノアシル残基
分子量:66470
等電点:6.7
触媒活性:フィトエンデサチュラーゼ
反応物:フィトエン
生成物:リコピン
EC番号:EC 1.14.99−
【0318】
酵素活性をインビボで検出した。大腸菌XL1−Blueへのプラスミド(pCAR−AE)の導入は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)株を生じる。この株はフィトエンを合成する。大腸菌XL1−BlueへのpBT4プラスミドのさらなる導入は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)(pBT4)株を生じる。酵素的に活性なフィトエンデサチュラーゼが、carBから開始して形成されるので、この株はリコピンを産生する。
【0319】
それゆえに、プラスミドpCAR−AEおよびpBT4は大腸菌に導入された。カロチノイドが、液体培地中で増殖した細胞から抽出され、特徴付けされた(上記を参照されたい)。
【0320】
HPLC分析は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)株がフィトエンを産生し、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)(pBT4)株がリコピンを産生することを明らかにした。結果として、CarBはフィトエンデサチュラーゼの酵素活性を有する。
【0321】
フィトエンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
フィトエンを産生するための遺伝子改変された生物の調製は、以下に例示として記載される。
【0322】
Blakeslea trisporaのcarB突然変異体を生成するためのベクターpBinAHygΔcarB
ベクターpBinAHygΔcarB(配列番号62、図22)を、Blakeslea trisporaにおいてcarBを欠失させるために構築した。pBinAHygΔcarBの前駆体はpBinAHyg(配列番号3、図2)であり、これは以下のように構築された。
【0323】
gpdA−hphカセットを、プラスミドpANsCos1(配列番号4、図1、Osiewacz, 1994, Curr. Genet. 26:87-90)からのBglII/HindIIIフラグメントとして単離し、そしてBamHI/HindIIIで切断したバイナリープラスミドpBin19(Bevan, 1984, Nucleic Acids Res. 12:8711-8721)にライゲーションした。この方法で得られたベクターはpBinAHygと呼ばれ、gpdプロモーターの制御下に大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)ならびにAspergillus nidulans由来のtrpCターミネーターおよびアグロバクテリウムDNA導入のために必要である適切なボーダー配列を含む。
【0324】
carBコード配列は、プライマーMAT350(配列番号58)およびMAT353(配列番号61)、ならびに以下のパラメーターを使用するPCRによって増幅された:
50ngのpBT4ならびに0.25μM MAT350 5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’、0.25 μM MAT353 5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびHO(100μLまで)。
【0325】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 30秒間、4.72℃ 2分間、5.95℃ 30秒間、6.72℃ 10分間。
【0326】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0327】
得られるフラグメント(約1.7kbp)を引き続いて精製し、次にHindIIIで切断を行い、364bpHindIIIフラグメントcarBの精製をさらに行い、次にHindIIIでpBinAhygの切断を行い、364bpHindIIIフラグメントcarBの、pBinAHygへのライゲーションを行い、このベクターの大腸菌への形質転換および構築物の単離を行い、上記のように、このベクターをpBinAHygΔcarBと呼んだ。代替的には、HindIIIを用いる部分切断を実行し、より大きなcarBHindIIIフラグメントをpBinAHygにクローニングして、pBinAHygΔcarBを産生した。
【0328】
Blakeslea trisporaのcarB突然変異体の生成
最初に、pBinAHygΔcarBプラスミドを、例えば、エレクトロポレーションによってアグロバクテリウム株LBA 4404に導入した(上記を参照されたい)。次に、プラスミドを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス LBA 4404から、Blakeslea trispora ATCC 14272およびBlakeslea trispora ATCC 14271に移した(上記を参照されたい)。Blakeslea trisporaへの首尾よい遺伝子導入の検出は、以下のプロトコールに従うポリメラーゼ連鎖反応を通して実行された:
Blakeslea trispora ATCC 14272 carBまたはATCC 14271 carBからの約0.5μgのDNAを0.25μMプライマーhphフォワード5’−CGATGTAGGAGGGCGTGGATA−3’(配列番号5)、0.25μMプライマーhphリバース5’−GCTTCTGCGGGCGATTTGTGT−3’(配列番号6)、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液、2.5UのHerculase DNAポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびHO(100μLまで)と反応させた。
【0329】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 1分間、4.72℃ 1分間、5.94℃ 1分間、6.72℃ 10分間。
【0330】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0331】
陰性対照として、アグロバクテリウムカナマイシン耐性遺伝子を増幅することが試みられた。この目的のために、以下のPCR条件が使用された:
Blakeslea trispora ATCC 14272 carBおよびATCC 14271 carBからの約0.5μgのDNAを0.25μMプライマーnptIIIフォワード5’−TGAGAATATCACCGGAATTG−3’(配列番号7)、0.25μMプライマーnptIIIリバース5’−AGCTCGACATACTGTTCTTCC−3’(配列番号8)、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液、2.5UのHerculase DNAポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびHO(100μLまで)と反応させた。
【0332】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 1分間、4.72℃ 1分間、5.94℃ 1分間、6.72℃ 10分間。
【0333】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0334】
C)Blakeslea trisporaによるカロチノイドおよびカロチノイド前駆体の産生
カロチノイドゼアキサンチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、およびフィトエンは、対応する遺伝子改変されたBlakeslea trispora(+)株および(−)株を発酵させ、産生したカロチノイドをHPLC分析によって検出し、およびそれを単離することによって産生された。
【0335】
カロチノイドを産生するための液体培地は、1リットルあたり:19gのトウモロコシ粉、44gのダイズ粉、0.55gのKHPO、0.002gのチアミン塩酸塩、10%のヒマワリ油を含んだ。pHはKOHで7.5に調整した。
【0336】
カロチノイドを産生するために、シェーカーフラスコに、Blakeslea trispora GMOの(+)株および(−)株の胞子懸濁物を接種した。シェーカーフラスコを26℃で250rpmで7日間インキュベートした。代替的には、トリスポリック酸を4日後に株の混合物に添加し、続いてさらに3日間インキュベートした。トリスポリック酸の最終濃度は300〜400μg/mlであった。
【0337】
抽出および分析
抽出:
1.10mlの培養懸濁物の取り出し
2.遠心分離、10分間、5000×g
3.上清の廃棄
4.1mlのテトラヒドロフラン(THF)中でボルテックスによってペレットを再懸濁
5.遠心分離、5分間、5000×g
6.THF相の取り出し
7.工程4.から6.の反復(2回)
8.THF相のプール
9.残渣の水相を除去するための、プールしたTHF相の遠心分離、20 000×g、5分間。
【0338】
分析
HPLCによるフィトエン測定
カラム:ZORBAX Eclipse XDB−C8、5μm、150*4.6mm
温度:40℃
流速:0.5ml/分
注入量:10μl
検出:UV 220nm
停止時間:12分
ポストラン時間:0分
最高圧力:350bar
溶離液A:50mM NaHPO、pH 2.5、過クロム酸を含む
溶離液B:アセトニトリル
グラジエント: 時間(分) A(%) B(%) 供給(ml/分)
0 50 50 0.5
12 50 50 0.5
【0339】
発酵ブロスの抽出物はマトリックスとして使用された。HPLCの前に、各サンプルは0.22μmフィルターを通して濾過された。サンプルは、冷所に保たれ、光から保護された。各々の場合、較正のために50〜1000mg/lがTHF中で秤量および溶解された。使用された標準はフィトエンであり、所定の条件下で7.7分の保持時間を有する。
【0340】
HPLCによるリコピン、β−カロチン、エキネノン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、およびアスタキサンチンの測定
カラム:Nucleosil 100−7 C18、250*4.0mm(Macherey & Nagel)
温度:25℃
流速:1.3ml/分
注入量:10μl
検出:450nm
停止時間:15分
ポストラン時間:2分
最高圧力:250bar
溶離液A:10%アセトン、90%H
溶離液B:アセトン
グラジエント: 時間(分) A(%) B(%) 供給(ml/分)
0 30 70 1.3
10 5 95 1.3
12 5 95 1.3
13 30 70 1.3
【0341】
発酵ブロスの抽出物はマトリックスとして使用された。HPLCの前に、各サンプルは0.22μmフィルターを通して濾過された。サンプルは、冷所に保たれ、光から保護された。各々の場合、較正のために10mgが100mlのTHF中で秤量および溶解された。以下の保持時間を有する以下のカロチノイドが標準として使用された:β−カロチン(12.5分)、リコピン(11.7分)、エキネノン(10.9分)、クリプトキサンチン(10.5分)、カンタキサンチン(8.7分)、ゼアキサンチン(7.6分)、およびアスタキサンチン(6.4分)(図23を参照されたい)。
【0342】
遺伝子改変されたBlakeslea trispora株によるゼアキサンチンの産生
Blakeslea trisporaの遺伝子改変された生物(GMO)によるゼアキサンチンの産生が以下に例として記載される。
【0343】
ベクターpBinAHygBTpTEF1−HPcrtZが、アグロバクテリウム媒介形質転換(上記を参照されたい)によってBlakeslea trisporaに導入された。ハイグロマイシン耐性クローンを単離し、ポテト−グルコース寒天プレート(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)に移した。
【0344】
このプレートから開始して、胞子懸濁物を、26℃での3日間のインキュベーション後に調製した。バッフルを備えず、そして50mlの増殖培地(47g/lトウモロコシ粉、23g/lのダイズ粉、0.5g/lのKHPO、2.0mg/lのチアミン塩酸塩、滅菌前にNaOHでpHを6.2〜6.7に調整)を含む250mlエーレンマイヤーフラスコに、1×10個の胞子を接種した。この前培養を、26℃、250rpmで48時間インキュベートした。主培養のために、バッフルを備えず、40mlの製造培地を含む250mlエーレンマイヤーフラスコに、4mlの前培養を接種し、26℃にて、150rpm、8日間インキュベートした。製造培地は、50g/lグルコース、2g/lカゼイン酸加水分解物、1g/l酵母抽出物、2g/l L−アスパラギン、1.5g/l KHPO、0.5g/l MgSO×7HO、5mg/l チアミン−HCl、10g/l Span20、1g/l Tween 80、20g/l リノール酸、80g/l コーンスチープリカーを含んだ。72時間後、ケロシンを最終濃度40g/lで加えた。培養物を収集後、残渣の培養容量約35mlを水で40mlに増加した。続いて、高圧ホモジナイザー(type Micron Lab 40、APV Gaulin)中で、3×1500バールで細胞を破壊した。
【0345】
破壊された細胞を含む懸濁物を、35mlのTHFと混合し、250rpmで振盪しながら室温で、暗所で60分間インキュベートした。次いで、2gのNaClを加え、混合物をさらに1回振盪しながらインキュベートした。次いで、抽出混合物を5000×gで10分間遠心分離した。着色したTHF相を取り出すと、細胞塊は完全に無色であった。
【0346】
THF相を、ロータリーエバポレーター中で30ミリバール、30℃で1mlまで濃縮し、次いで再度1mlのTHFに溶解した。20000×gで5分間の遠心分離後、上相のアリコートを取り出し、HPLCによって分析した(図24、図23)。
【0347】
D)カロチノイドおよび食材の一連の作業および単離
上記のA)において示された培養ブロスを、高純度カロチノイドおよび対応する食材を得るために以下のように作業を行った。
【0348】
培養ブロス1、2、3のカロチノイド含量は0.5〜1.5g/lの間であった。
【0349】
D1)変形a)IIAおよび変形b)IIAまたはIIBに従う実施例
同一の培地(全体で約1l)を有する培養物を、培養期間の最後に合わせて、ディスパーザー(Ultra.Turrax(登録商標))の補助を伴ってホモジナイズした。
【0350】
培地1および2における固形物の濃度は、それぞれ37g/lおよび11g/lであった。培養ブロスは遠心分離を用いて脱水した。培地の細胞濃度および固形物含量が高い場合、培養ブロスはまた、事前の固体−液体分離なしでさらに処理され得る(培地3:127gの固形物/l)。ディスパーザー(Ultra−Turrax(登録商標))を使用する、および懸濁物の定常的な攪拌を用いる以前の均質化の後で、細胞塊は、ペリスターポンプを介して、ドライヤーに適用された。実験室用スプレードライヤーのシリンダーへの注入は、2.0mmの直径を有する2成分ノズルを介して、2バールおよび4.5Nm/hの窒素を用いて実行した。入口温度は約125℃〜127℃であった。乾燥ガスは、22Nm/hの流速の窒素であった。出口温度は59℃〜61℃の間であった。3つの発酵ブロスの各々について、スプレードライヤーのサイクロン上で流動可能な生成物を沈殿させることが可能であった。チャンバー中のウォールフィルムは(もしある場合)、ベッセル壁から自動的に剥がれ落ち、問題なしと見なされる。
【0351】
8〜100gの粉末状の食材が得られ、これは、動物飼料として直接使用できた。これは、乾燥重量に基づいて約1〜10%のカロチノイドを含んでいた。残渣の湿度は5%未満であった。
【0352】
変形b)IICに従う実施例
D2)テトラヒドロフランを用いる抽出
40mlの培養ブロス1、2、3の細胞を、各々の場合において、3×1500バールで高圧ホモジナイザー(type Micron Lab 40、APV Gaulin)によって破壊した。各々の場合において、破壊された細胞を含む20mlの懸濁物を、20mlのテトラヒドロフランと混合し、200rpmで30分、ロータリーシェーカー中で30℃で振盪しながらインキュベートした。次いで、2gのNaClを加え、5000×gで5分間の遠心分離によって相を分離した。THF相を取り出した。引き続いて、水相を20mlのTHFでさらに1回抽出した。抽出物を合わせた。カロチノイド濃度をHPLCによって定量した。
【0353】
D3)ジクロロメタンを用いる抽出
バイオマスを、培養ブロス(200ml)から、10分間、実験室用遠心分離機において、5000×gの遠心分離によって取り出した。
【0354】
取り出した湿ったバイオマス(各々の場合、約10g〜100g)を、水溶性成分を除去するために10〜100mlの水と混合した。バイオマスを取り出し(実験室用遠心分離機)、次いで、オートクレーブ中で蒸気を用いて滅菌し(T=121、t=30分、1バール)、それによって細胞を破壊した。
【0355】
25〜250gのジクロロメタンを細胞細片に加え、振盪によってバイオマスからカロチノイドを抽出した。バイオマスは、実験室用遠心分離機において取り出した。
【0356】
ジクロロメタンからメタノールへの溶媒交換を実行し、このために、カロチノイド溶液を40℃〜60℃で、約4時間保持し、この時間にわたり、総量20〜200mlのメタノールと連続して混合した。この工程において、ジクロロメタンを溶媒として回収した。最初に、カロチノイド結晶が沈殿した。続いて、溶液をゆっくりと、6時間にわたって約10℃まで冷却し、カロチノイド結晶のサイズおよび数を増加させた。次いで、母液を濾過し、カロチノイド結晶を乾燥させた。母液の一部は溶媒交換のために再利用され得る。他の部分は蒸留およびメタノール精製され、この方法において溶媒交換で再利用される。
【0357】
0.0.08g〜0.24gのカロチノイド結晶を得、その純度は95%であった(HPLC、上記を参照されたい)。カロチノイド結晶の収率は、バイオマス中のカロチノイドの濃度に基づいて、80%であった。
【0358】
取り出された、ジクロロメタン−湿ったバイオマスを、蒸気蒸留の後にスプレー乾燥し(T=125℃、T=60℃)、これは動物栄養補助飼料として使用できる。
【0359】
この目的のために、細胞塊を、ディスパーザー(Ultra−Turrax)を使用し、および懸濁物の定常的な攪拌を伴う事前の均質化の後に、ペリスターポンプを介してドライヤーに適用した。
【0360】
実験室用スプレードライヤーのシリンダーへの注入は、2.0mmの直径を有する2成分ノズルを介して、2バールおよび4.5Nm/hの窒素を用いて実行した。入口温度は約125℃〜127℃であった。乾燥ガスは、22Nm/hの流速の窒素であった。出口温度は59℃〜61℃の間であった。3つの発酵ブロスの各々について、スプレードライヤーのサイクロン上で流動可能な生成物を沈殿させることが可能であった。チャンバー中のウォールフィルムは(もしある場合)、ベッセル壁から自動的に剥がれ落ち、問題なしと見なされた。
【0361】
約2.5〜25gの粉末状の食材が得られ、これは、動物飼料として直接使用できた。これは、乾燥重量に基づいて約0.5%〜1.5%のカロチノイドを含んでいた。残渣の湿度は5%未満であった。
【0362】
カロチノイドの全体の収率(精製されたカロチノイド食材を含む)は、培養ブロス中のカロチノイドの開始量に基づいて、約95%であった。
【図面の簡単な説明】
【0363】
【図1】図1は、ベクターpANsCos1を示す。
【図2】図2は、ベクターpBinAHygを示す。
【図3】図3は、標準ゲルに基づくBlakeslea trisporaDNAのPCRの結果を示す。
【図4】図4は、プラスミドpBinAHygBTpyrG−SCOを示す。
【図5】図5は、プラスミドpBinAHygBTpTEF1−HPcrtZを示す。
【図6】図6は、プラスミドpBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ を示す。
【図7】図7は、プラスミドpBinAHygBTpcarB−HPcrtZを示す。
【図8】図8は、プラスミドp−carRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IRを示す。
【図9】図9は、プラスミドp−carRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IRを示す。
【図10】図10は、プラスミドpBinAHygBTpTEF1−EUcrtZを示す。
【図11】図11は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−EUcrtZを示す。
【図12】図12は、プラスミドpBinAHygBTpcarB−EUcrtZを示す。
【図13】図13は、プラスミドp−BinAHyg−gpdA−HPcrtZを示す。
【図14】図14は、プラスミドpBinAHyg−carRcrtZcarAを示す。
【図15】図15は、プラスミドpBinAHyg−BTpTEF1−NpcrtWを示す。
【図16】図16は、プラスミドpBinAHyg_BTpcarRA_NPcrtWを示す。
【図17】図17は、プラスミドpBinAHyg−BTpcarB−NPcrtWを示す。
【図18】図18は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ−BTpcarRA−NpucrtWを示す。
【図19】図19は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ−BTpcarRA−NpucrtWを示す。
【図20】図20は、クローニングされた配列部分を図解的に示す。
【図21】図21は、carBのコード配列を図解的に示す。
【図22】図22は、ベクターpBinAHygΔcarBを示す。
【図23】図23は、HPLCによるリコピン、β−カロチン、エキネノン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、およびアスタキサンチンの測定結果を示す。
【図24】図24は、HPLCによる分析結果を示す。
【配列表】






































































































































































































































































































































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を使用してカロチノイドまたはそれらの前駆体を製造するための方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、
(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、かつ前記遺伝子改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞の場合によるホモカリオン転換、
(vi)遺伝子改変された細胞の選択および複製、
(vii)遺伝子改変された細胞の培養、
(viii)遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイドまたは前記遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイド前駆体の調製、
を包含する方法。
【請求項2】
細胞がBlakeslea trispora種の真菌由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベクターまたは遊離の核酸が形質転換(i)において使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
形質転換(i)において利用されるベクターが少なくとも1つの細胞のゲノムに組み込まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
形質転換(i)において利用されるベクターがプロモーターおよび/またはターミネーターを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
gpdプロモーター、pcarBプロモーター、pcarRAプロモーター、および/もしくはptef1プロモーター、ならびに/またはtrpCターミネーターを含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
耐性遺伝子を含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
形質転換(i)において利用されるベクターがハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、特に大腸菌由来のものを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
gpdプロモーターが配列番号1の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
trpCターミネーターが配列番号2の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
tef1プロモーターが配列番号35の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
gpdプロモーターおよびtrpCターミネーターがAspergillus nidulans由来である、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ベクターが配列番号3を含む、請求項3〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
形質転換(i)が、アグロバクテリア、接合、化学物質、エレクトロポレーション、DNA負荷粒子を用いる衝撃、プロトプラスト、またはマイクロインジェクションを使用して実行される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
突然変異誘発物質がホモカリオン転換(ii)において利用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
利用される突然変異誘発物質がN−メチル−N’−ニトロニトロソグアニジン(MNNG)、UV照射、またはX線である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
選択が単核細胞の標識化および/または選択によって実行される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
5−炭素−5−デアザリボフラビン(darf)およびハイグロマイシン(hyg)または5−フルオロロテート(FOA)およびウラシルおよびハイグロマイシンが選択において利用される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチノイドまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチンまたはキサントフィルを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
形質転換(i)において利用されるベクターが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、フィトフルエン、ビキシン、またはフィトエンを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの高純度カロチノイドならびにカロチノイド産生生物および少なくとも1種のカロチノイドを含む食材を供給するための方法であって、Blakeslea属のカロチノイド産生生物の培養後に、以下の工程:
I)バイオマスの取り出し、
IA)カロチノイドが可溶性でない溶媒、特に水を用いるバイオマスの場合による洗浄、
IB)バイオマスの滅菌および細胞破壊、
IC)場合による乾燥および/または均質分配、ならびに
II)破壊されたバイオマスからのカロチノイド溶解性溶媒によるカロチノイドの部分抽出および前記バイオマスからの前記溶媒の分離、
IIA)
1)カロチノイド含有バイオマスからの残渣溶媒の除去、
2)>10のバイオマス固形含量を有するバイオマスの場合による均質懸濁、
3)食材を製造するためのバイオマスまたは懸濁物の乾燥、
IIB)
1)使用した溶媒からのカロチノイドの結晶化および特に濾過によるカロチノイド結晶の単離、
を包含する方法。
【請求項23】
少なくとも1種のカロチノイドがカロチンおよびキサントフィルからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、ルテイン、フィトフルエン、ビキシン、またはフィトエンからなる群から選択される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ビキシン、またはフィトエンである、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
滅菌および細胞破壊が蒸気またはマイクロ波照射を使用して実行される、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
カロチノイドが、ジクロロメタンまたは超臨界二酸化炭素またはテトラヒドロフランを使用してバイオマスから抽出される、請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
超臨界二酸化炭素に溶解したカロチノイドが直接的に単離されるか、またはジクロロメタン中に溶解される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
カロチノイドが、1段階で、または適切な場合、多段階工程でバイオマスから抽出される、請求項22〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
溶媒が工程IA1)において蒸気蒸留を使用してバイオマスから除去される、請求項22〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
工程IIA3)における乾燥がスプレー乾燥または接触乾燥を使用して実行される、請求項22〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
工程IIB1)における結晶化が、カロチノイドが不溶性である溶媒を使用して溶媒を徐々に置き換えることによって実行される、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
使用される溶媒が、水または低級アルコール、特にメタノールで置き換えられる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物が、配列番号37〜51および62からなる群からの配列を有するベクターを用いる形質転換によって産生され得る、請求項13に記載の方法。
【請求項35】
Blakeslea属の生物および少なくとも1種のカロチノイドを含む食材を製造するための方法であって、Blakeslea属のカロチノイド産生生物の培養後に、以下の工程:
I)培養ブロスの固形物の均質懸濁、
および、
IIA)培養ブロスの>2%のバイオマス固形物含量については:
1)<50%の固形物含量を得るための培養ブロスの場合による濃縮、および
2)食材を製造するための培養ブロスの乾燥、
または、
IIB)培養ブロスの<2%の固形物含量については:
1)>2%かつ<50%の固形物含量を得るための培養ブロスの濃縮、および
2)食材を製造するための懸濁物の乾燥、
または、
IIC)培養ブロスの固形物含量とは無関係に、
1)バイオマスの取り出し、
2)カロチノイドが可溶性でない溶媒、特に水を用いるバイオマスの場合による洗浄、
3)滅菌および細胞破壊、
4)場合による乾燥および均質分配、
5)バイオマスからのカロチノイド溶解性溶媒を使用するカロチノイドの部分抽出、
5a)カロチノイド含有溶媒からのカロチノイド含有バイオマスの取り出し、
5b)バイオマスからの残渣溶媒の除去、および
5c)食材を製造するためのバイオマスの乾燥、
6)5a)において使用した溶媒からのカロチノイドの結晶化および特に濾過によるカロチノイド結晶の単離、
を包含する方法。
【請求項36】
少なくとも1種のカロチノイドがカロチンおよびキサントフィルからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、ルテイン、ビキシン、およびフィトエンからなる群から選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ビキシン、またはフィトエンである、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
工程II3)における滅菌および細胞破壊が蒸気またはマイクロ波照射を使用して実行される、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
カロチノイドが工程IIC5)においてジクロロメタンまたは超臨界二酸化炭素を使用してバイオマスから抽出される、請求項35〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
超臨界二酸化炭素に溶解したカロチノイドが直接的に単離されるか、またはジクロロメタン中に溶解される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
カロチノイドが、1段階で、または適切な場合、多段階工程でバイオマスから抽出される、請求項35〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
溶媒が工程IIC5b)において蒸気蒸留を使用してバイオマスから除去される、請求項35〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
工程IIA1)、IIB2)、およびIIC5c)のいずれかにおける乾燥がスプレー乾燥または接触乾燥を使用して実行される、請求項35〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
工程IIC6)における結晶化が、カロチノイドが不溶性である溶媒を用いて溶媒を徐々に置き換えることによって実行される、請求項35〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
使用される溶媒が、水または低級アルコール、特にメタノールで置き換えられる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物が、配列番号37〜51および62からなる群からの配列を有するベクターを用いる形質転換によって産生され得る、請求項35〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法によって製造され得る、食材、特に動物用飼料。
【請求項49】
請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法によって製造され得る、栄養補助食品、特に動物用栄養補助飼料。
【請求項50】
食材および動物用飼料が発酵から得られうる、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
栄養補助食品および動物用栄養補助飼料が発酵から得られうる、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
食材、栄養補助食品、動物用飼料、および動物用栄養補助飼料からなる群の少なくとも2種の製品が発酵から得られうる、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
化粧品、医薬品、皮膚用製剤、食材、栄養補助食品、動物用飼料、または動物用栄養補助飼料を製造するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって取得可能なカロチノイドの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を使用してカロチノイドまたはそれらの前駆体を製造するための方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、
(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、かつ前記遺伝子改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞のホモカリオン転換
iii)遺伝子改変された細胞の選択および複製、
iv)遺伝子改変された細胞の培養、
)遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイドまたは前記遺伝子改変された細胞によって産生されたカロチノイド前駆体の調製、
を包含する方法。
【請求項2】
細胞がBlakeslea trispora種の真菌由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベクターまたは遊離の核酸が形質転換(i)において使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
形質転換(i)において利用されるベクターが少なくとも1つの細胞のゲノムに組み込まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
形質転換(i)において利用されるベクターがプロモーターおよび/またはターミネーターを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
gpdプロモーター、pcarBプロモーター、pcarRAプロモーター、および/もしくはptef1プロモーター、ならびに/またはtrpCターミネーターを含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
耐性遺伝子を含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
形質転換(i)において利用されるベクターがハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、特に大腸菌由来のものを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
gpdプロモーターが配列番号1の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
trpCターミネーターが配列番号2の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
tef1プロモーターが配列番号35の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
gpdプロモーターおよびtrpCターミネーターがAspergillus nidulans由来である、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ベクターが配列番号3を含む、請求項3〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
形質転換(i)が、アグロバクテリア、接合、化学物質、エレクトロポレーション、DNA負荷粒子を用いる衝撃、プロトプラスト、またはマイクロインジェクションを使用して実行される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
突然変異誘発物質がホモカリオン転換(ii)において利用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
利用される突然変異誘発物質がN−メチル−N’−ニトロニトロソグアニジン(MNNG)、UV照射、またはX線である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
選択が単核細胞の標識化および/または選択によって実行される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
5−炭素−5−デアザリボフラビン(darf)およびハイグロマイシン(hyg)または5−フルオロロテート(FOA)およびウラシルおよびハイグロマイシンが選択において利用される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチノイドまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチンまたはキサントフィルを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
形質転換(i)において利用されるベクターが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、フィトフルエン、ビキシン、またはフィトエンを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの高純度カロチノイドならびにカロチノイド産生生物および少なくとも1種のカロチノイドを含む食材を供給するための方法であって、請求項1〜21のいずれか1項に記載のBlakeslea属の遺伝子改変されたカロチノイド産生生物の培養後に、以下の工程:
I)バイオマスの取り出し、
IA)カロチノイドが可溶性でない溶媒、特に水を用いるバイオマスの場合による洗浄、
IB)バイオマスの滅菌および細胞破壊、
IC)場合による乾燥および/または均質分配、ならびに
II)破壊されたバイオマスからのカロチノイド溶解性溶媒によるカロチノイドの部分抽出および前記バイオマスからの前記溶媒の分離、
IIA)
1)カロチノイド含有バイオマスからの残渣溶媒の除去、
2)>2%かつ<50%のバイオマス固形含量を有するバイオマスの場合による均質懸濁、
3)食材を製造するためのバイオマスまたは懸濁物の乾燥、
IIB)
1)使用した溶媒からのカロチノイドの結晶化および特に濾過によるカロチノイド結晶の単離、
を包含する方法。
【請求項23】
少なくとも1種のカロチノイドがカロチンおよびキサントフィルからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、ルテイン、フィトフルエン、ビキシン、またはフィトエンからなる群から選択される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ビキシン、またはフィトエンである、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
滅菌および細胞破壊が蒸気またはマイクロ波照射を使用して実行される、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
カロチノイドが、ジクロロメタンまたは超臨界二酸化炭素またはテトラヒドロフランを使用してバイオマスから抽出される、請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
超臨界二酸化炭素に溶解したカロチノイドが直接的に単離されるか、またはジクロロメタン中に溶解される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
カロチノイドが、1段階で、または適切な場合、多段階工程でバイオマスから抽出される、請求項22〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
溶媒が工程IA1)において蒸気蒸留を使用してバイオマスから除去される、請求項22〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
工程IIA3)における乾燥がスプレー乾燥または接触乾燥を使用して実行される、請求項22〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
工程IIB1)における結晶化が、カロチノイドが不溶性である溶媒を使用して溶媒を徐々に置き換えることによって実行される、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
使用される溶媒が、水または低級アルコール、特にメタノールで置き換えられる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物が、配列番号37〜51および62からなる群からの配列を有するベクターを用いる形質転換によって産生され得る、請求項13に記載の方法。
【請求項35】
Blakeslea属の生物および少なくとも1種のカロチノイドを含む食材を製造するための方法であって、請求項1〜21のいずれか1項に記載のBlakeslea属の遺伝子改変されたカロチノイド産生生物の培養後に、以下の工程:
I)培養ブロスの固形物の均質懸濁、
および、
IIA)培養ブロスの>2%のバイオマス固形物含量については:
1)<50%の固形物含量を得るための培養ブロスの場合による濃縮、および
2)食材を製造するための培養ブロスの乾燥、
または、
IIB)培養ブロスの<2%の固形物含量については:
1)>2%かつ<50%の固形物含量を得るための培養ブロスの濃縮、および
2)食材を製造するための懸濁物の乾燥、
または、
IIC)培養ブロスの固形物含量とは無関係に、
1)バイオマスの取り出し、
2)カロチノイドが可溶性でない溶媒、特に水を用いるバイオマスの場合による洗浄、
3)滅菌および細胞破壊、
4)場合による乾燥および均質分配、
5)バイオマスからのカロチノイド溶解性溶媒を使用するカロチノイドの部分抽出、
5a)カロチノイド含有溶媒からのカロチノイド含有バイオマスの取り出し、
5b)バイオマスからの残渣溶媒の除去、および
5c)食材を製造するためのバイオマスの乾燥、
6)5a)において使用した溶媒からのカロチノイドの結晶化および特に濾過によるカロチノイド結晶の単離、
を包含する方法。
【請求項36】
少なくとも1種のカロチノイドがカロチンおよびキサントフィルからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、ルテイン、ビキシン、およびフィトエンからなる群から選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1種のカロチノイドが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ビキシン、またはフィトエンである、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
工程II3)における滅菌および細胞破壊が蒸気またはマイクロ波照射を使用して実行される、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
カロチノイドが工程IIC5)においてジクロロメタンまたは超臨界二酸化炭素を使用してバイオマスから抽出される、請求項35〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
超臨界二酸化炭素に溶解したカロチノイドが直接的に単離されるか、またはジクロロメタン中に溶解される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
カロチノイドが、1段階で、または適切な場合、多段階工程でバイオマスから抽出される、請求項35〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
溶媒が工程IIC5b)において蒸気蒸留を使用してバイオマスから除去される、請求項35〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
工程IIA1)、IIB2)、およびIIC5c)のいずれかにおける乾燥がスプレー乾燥または接触乾燥を使用して実行される、請求項35〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
工程IIC6)における結晶化が、カロチノイドが不溶性である溶媒を用いて溶媒を徐々に置き換えることによって実行される、請求項35〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
使用される溶媒が、水または低級アルコール、特にメタノールで置き換えられる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物が、配列番号37〜51および62からなる群からの配列を有するベクターを用いる形質転換によって産生され得る、請求項35〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法によって製造され得る、食材、特に動物用飼料。
【請求項49】
請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法によって製造され得る、栄養補助食品、特に動物用栄養補助飼料。
【請求項50】
食材および動物用飼料が発酵から得られうる、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
栄養補助食品および動物用栄養補助飼料が発酵から得られうる、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
食材、栄養補助食品、動物用飼料、および動物用栄養補助飼料からなる群の少なくとも2種の製品が発酵から得られうる、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
化粧品、医薬品、皮膚用製剤、食材、栄養補助食品、動物用飼料、または動物用栄養補助飼料を製造するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって取得可能なカロチノイドの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公表番号】特表2006−515516(P2006−515516A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518516(P2005−518516)
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000099
【国際公開番号】WO2004/063359
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】