説明

部材検査装置

【課題】複検査対象物の外観検査を所望の検査態様に応じて低コストで行うことが可能な部材検査装置を提供する。
【解決手段】部材検査装置1は、所定の画角をもって撮像することが可能な撮像手段4と、撮像手段4で撮像された画像を生成し、解析する画像処理手段5と、検査対象物Sの少なくとも一方向Xに対応する方向の画角を変化させるように、検査対象物Sからの光を反射させて、撮像手段4に入光させる反射手段3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の形状や模様観察等、外観検査を行う部材検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の外観検査を行う部材検査装置として、例えば、鋼板のロールの振動によって鋼板の表面に発生するチャタマーク(横縞)を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1)。具体的には、検査対象物となる鋼板の表面に平行光を照射可能な照明手段と、照明手段による照明の反射光を利用して鋼板の表面を撮像可能な複数の撮像手段とを備えたものが提案されている。そして、複数の撮像手段によって鋼板の幅方向全体を撮像しつつ、鋼板を圧延方向に走行させることで、鋼板表面の全体について撮像し、それらの画像からチャタマークの検出及び検出されたチャタマークの形状測定を行うことが開示されている。
【特許文献1】特開平6−137845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の部材検査装置によれば、上記のように検査対象物の大きさに応じて複数の撮像手段を設ける必要があり、コストが増大してしまう問題があった。コスト低減のために撮影距離を長く設定して撮影可能な範囲を拡大し、1台で必要な範囲を撮影可能にすることも考えられる。しかし、この場合には撮像手段の画素数が決まっていることから、撮像した検査対象物の分解能が低下し、表示精度が低下してしまう。このため、例えば、検査対象物の特定する一方向に対して特に詳細に検査を行うような検査対象物に応じた所望の検査態様に設定したいとしても、直交する幅方向の検査対象物の寸法に制限を受けて、所望の検査態様で実施することができなくなってしまう問題があった。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、検査対象物の外観検査を所望の検査態様に応じて低コストで行うことが可能な部材検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の部材検査装置は、所定の画角をもって撮像することが可能な撮像手段と、該撮像手段で撮像された画像を生成し、解析する画像処理手段と、検査対象物の少なくとも一方向に対応する方向の画角を変化させるように、前記検査対象物からの光を反射させて、前記撮像手段に入光させる反射手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、反射手段によって検査対象物からの光を反射し、その反射光を入光することで撮像手段により検査対象物の撮像を行うことができ、これを画像処理手段によって画像を生成することで検査対象物の外観検査を行うことができる。ここで、反射手段は、検査対象物の少なくとも一方向に対応する方向に撮像手段による画角を変化させるように反射させることができるので、撮像手段の撮像範囲及び精度を、当該一方向に対応する方向で所望の検査態様となるように設定することができる。このため、撮像手段の設置数を増やすことなくコストを抑えて、所望の検査態様で外観検査を行うことができる。
【0007】
また、上記の部材検査装置において、前記反射手段は、前記一方向に対応する方向の画角を小さくするように前記検査対象物からの光を反射させることがより好ましい。
【0008】
この構成によれば、検査対象物の一方向に対応する方向の画角を小さくすることができるので、一方向に解像度を向上させて検査対象物を詳細に検査することができる。
【0009】
また、上記の部材検査装置において、前記反射手段は、前記一方向に対応する方向の画角を大きくするように前記検査対象物からの光を反射させるものとしても良い。
【0010】
この構成によれば、検査対象物の一方向に対応する方向の画角を大きくすることができるので、一方向に撮像可能範囲を拡大させて検査対象物を効率的に検査することができるとともに、検査対象物に合わせて撮影距離を長くする必要がないので検査精度の向上も図ることができる。
【0011】
また、上記の部材検査装置において、前記画像処理手段は、前記反射手段によって変化した画角を逆補正して画像を生成させることがより好ましい。
【0012】
この構成によれば、画像処理手段が反射手段によって変化した画角を逆補正して画像を生成することができるので、上記のとおりコストを抑えて所望の検査態様しつつ、実像と同じ像で画像を介して目視検査を行うことができる。
【0013】
また、上記の部材検査装置において、前記検査対象物との相対速度を検出する速度検出手段を備え、前記画像処理手段は、前記速度検出手段による検出結果に応じて前記撮像手段で撮像された画像を生成することがより好ましい。
【0014】
この構成によれば、画像処理手段で、速度検出手段による検出結果に応じて画像を生成することで、検査対象物が相対的に移動するものであり、相対速度が変化してしまったとしても、相対速度の変化の影響を受けることなく、常に一定の検査態様で外観検査を行うことができる。
【0015】
また、上記の部材検査装置において、前記検査対象物から前記反射手段までの相対距離を測定可能な距離測定手段を備え、前記画像処理手段は、前記反射手段によって変化した画角、及び、前記距離測定手段による測定結果に基づいて、生成した画像に映し出された検査対象物の部分寸法を演算することがより好ましい。
【0016】
この構成によれば、画像処理手段が、反射手段によって変化した画角、及び、距離測定手段による測定結果に基づいて、生成した画像に映し出された検査対象物の部分寸法を演算することで、正確に当該部分寸法を測定することができる。
【0017】
また、上記の部材検査装置において、前記撮像手段と前記反射手段とを複数組備え、各前記撮像手段は、前記一方向に前記検査対象物の異なる位置を撮像可能に設定されていることがより好ましい。
【0018】
この構成によれば、撮像手段と反射手段とを複数組備えていることで、互いの組の検査態様を異なるものとして検査することができる。そして、各組が一方向に検査対象物の異なる位置を撮像可能であることで、検査対象物が一方向に相対移動する場合に、一の組の撮像手段と反射手段とで広範囲を検査するとともに、他の組の撮像手段と反射手段とで検査された範囲の内の一部について詳細に検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の部材検査装置では、反射手段を備えることで、検査対象物の外観検査を所望の検査態様に応じて低コストで行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図1は、本実施形態の部材検査装置1を示している。図1に示すように、本実施形態の部材検査装置1は、搬送ローラ10によって搬送方向Xに搬送される帯状対象物Sの表面S1の幅方向に生じる微小な反り形状を検出するためのものであり、帯状対象物Sの表面S1に照明光を照射する照明器2と、照明器2による照明が帯状対象物Sの表面S1で反射した光を反射させる反射手段である反射鏡3と、反射鏡3で反射した光を入光させて撮像を行なう撮像手段であるCCDカメラ4と、CCDカメラ4で撮像された画像を生成し、解析する画像処理手段5とを備える。
【0021】
照明器2及び反射鏡3は、搬送ローラ10上で搬送方向Xに沿って搬送される帯状対象物Sの上方に配置されている。より詳しくは、照明器2は、平面視して搬送方向Xと略平行な方向で平行光を発して帯状対象物Sの表面S1における所定の検査位置Mを含む範囲に照明することが可能に配置されている。また、反射鏡3は帯状対象物Sの表面S1における検査位置Mでの反射光を反射可能に配置されている。ここで、本実施形態の反射鏡3は、搬送方向Xに沿って円弧などの曲線で凹状に形成されているとともに、搬送方向Xと直交する幅方向Yに沿って直線状に形成された凹面鏡となっている。
【0022】
このため、CCDカメラ4は、幅方向Yに対応する方向には自らが有する所定の画角をもって、また、搬送方向Xに対応する方向には反射鏡3により画角を変化させて、所定時間毎に繰り返し撮像することが可能となっている。具体的には、本実施形態では、CCDカメラ4は、自らが有する画角で縦横比1:0.75、すなわち一方の長さDとすると、他方の長さを0.75Dとする範囲Bとして撮像することが可能となっている。そして、反射鏡3によって画角を変化させることで、帯状対象物Sの表面S1上の撮像範囲A3は、幅方向Yに沿って細長となる長さDで帯状対象物S全体を撮影することが可能となっている一方、搬送方向Xには、上記縦横比から長さ0.75Dで帯状対象物Sを撮像可能であるところ、反射鏡3により画角が小さくなるように反射されて長さ0.2Dで撮像可能となっている。
【0023】
また、画像処理手段5は、CCDカメラ4から入力される所定時間毎に撮像され出力される撮像信号に基づいてそれぞれ画像を生成し、記録手段6に記録していくことが可能である。さらに、画像処理手段5は、上記所定時間毎に生成された画像を合成することで、帯状対象物S全体の画像を生成し、当該画像も記録手段6に記録している。そして、画像処理手段5は、合成した画像を解析して帯状対象物Sの表面S1に生じた微小な反り形状を解析する。また、画像処理手段5には、帯状対象物Sの搬送方向Xへの搬送速度を検出する速度検出手段である速度計7が接続されている。速度計7は、例えば、例えば搬送ローラ10の回転数を検出することで搬送速度を検出している。なお、搬送を行う装置から搬送速度を取得する構成としても良い。そして、画像処理手段5では、速度計7から入力される搬送速度を考慮して、CCDカメラ4で所定時間毎に撮像された画像の合成を行っている。
以下に、本実施形態の部材検査装置1の作用及び画像処理手段5による処理の詳細について説明する。
【0024】
図1に示すように、帯状対象物Sが搬送ローラ10により搬送方向Xに搬送されながら、CCDカメラ4では、反射鏡3によって反射して入光した光をもって帯状対象物Sを撮像している。ここで、撮像した画像には、帯状対象物Sの側縁S2とともに、チャタリングによるうねりが生じている場合には微小な反り形状Cとして、幅方向Yに曲がった微小な反り形状が映し出されている。
【0025】
図2は、図示しないもモニタに映し出した画像の一部を表わしている。そして、画像処理手段5は、画像を例えば二値化処理するなどにより、帯状対象物Sの側縁S2及び表面S1上の微小な反り形状Cの有無を検出している。さらに、画像処理手段5は、側縁S2の位置を検出し、基準となる位置から帯状対象物Sの側縁S2がずれている場合には、そのずれ量を調整するための手段、または、ずれ量の影響を無くするための手段に対する調整量を検出することが出来る。また、速度計7から入力されている搬送速度に応じた合成処理を行うことにより連続的な形状変化について監視することが可能となる。
【0026】
ここで、CCDカメラ4で撮像されて生成される画像は、反射鏡3によって搬送方向Xに対応する方向の画角を小さくして撮像されたものであり、従って、実像における単位長さ当りの画素数が、幅方向Yに対応する方向に対して、搬送方向Xに対応する方向で多くなり分解能が高くなっている。図3は、反射鏡を用いず画角を変化させずに同じCCDカメラ4で撮像した場合の画像における微小な反り形状Cを表す模様F´を示している。図2及び図3に示すように、図2の本実施形態の部材検査装置1のCCDカメラ4で撮像した場合には、反射鏡を用いない図3の場合と比較して、模様Fのように微小な反り形状Cにおける幅方向Yへの湾曲変化を詳細に映し出すことができる。このため、より正確に微小な反り形状Cの形状測定を行うことができ、対象物に対して均一な表面処理が必要となる場合などにおいて非常に有効となる。
【0027】
以上のように、本実施形態の部材検査装置1によれば、上記反射鏡3を備えることで、搬送方向Xに対応する方向で、幅方向Yに対応する方向に対してより精度良く観察可能な検査態様に設定することができる。このため、上記のとおり、一台のCCDカメラ4で帯状対象物Sの幅方向Y全体を撮像可能な設定としつつ、搬送方向Xに所望の精度で外観検査を行うことができ、コストの低減と検査精度の向上とを同時に図ることができる。特に、本実施形態では、反射鏡3で反射させてCCDカメラ4の画角を変化させており、光を屈折させる手段を利用していないので、収差などの問題がなく、観察可能範囲全体で均一かつ精度良く検査を行うことが可能である。また、本実施形態では、画像処理手段5で、速度計7による検出結果に応じて画像を生成することで、帯状対象物Sの搬送速度が変化してしまったとしても、搬送速度の変化の影響を受けることなく、常に一定の精度で搬送方向X全体にわたって連続的に外観検査を行うことができる。このため、オンライン形状制御や品質管理用途に対して特に有効となる。さらに、本実施形態において、速度計7からの検出結果に基づいてCCDカメラ4のシャッタースピードを制御するものとしても良い。このようにすることで、搬送速度が早くなった場合にはシャッタースピードを速くする手段を用いることによれば、対応限界の向上を図ることもできる。
【0028】
なお、本実施形態では、反射鏡を凹面鏡として、CCDカメラ4の画角を搬送方向Xのみに変化させるものとしたが、これに限るものではなく、幅方向Yにも変化させるものとしても良い。図4は、この実施形態の第1の変形例を示している。図4に示すように、この変形例の部材検査装置20の反射鏡21は、上記同様に搬送方向Xに円弧などの曲線で凹状となっているとともに、幅方向Yに円弧などの曲線で凸状となっており、全体として鼓状に形成されている。このような部材検査装置20では、CCDカメラ4の画角を搬送方向Xに対応する方向に小さくすることができるとともに、幅方向Yに対応する方向に大きくすることができる。具体的には、図4に示す例では、撮影範囲A21で示すように、上記同様に搬送方向Xで0.7Dから0.2Dとなるように縮小するとともに、幅方向Yでは、Dから2Dとなるように拡大して帯状対象物Sを幅方向Yに全体を撮像可能としている。このようにして、帯状対象物Sの幅寸法が大きい場合でも、一台のCCDカメラ4で幅方向Y全体を撮像可能としつつ、搬送方向Xには精度良く撮像して画像を生成することができる。この様に反射鏡の形状を変化させることにより対象物の特定の方向について検出分解能を変化させることが可能となり、搬送方向Xや幅方向Yの方向性にとらわれることなく必要な方向について目的の検出分解能とすることができる。
【0029】
図5は、実施形態の第2の変形例を示している。図5に示すように、この実施形態の部材検査装置25では、照明器2、反射鏡3及びCCDカメラ4の組の他に、さらに他の組として、照明器26、反射鏡27及びCCDカメラ28を備えている。照明器26、反射鏡27及びCCDカメラ28の組は、照明器2、反射鏡3及びCCDカメラ4の組よりも搬送方向Xの後方側に配置されている。そして、画像処理手段5では、それぞれCCDカメラ4、28で撮像された画像を生成することが可能となっている。このような部材検査装置25では、複数組の照明器、反射鏡及びCCDカメラを備えていることで、互いの組の各構成の仕様を変えて、検査態様を異なるものとして検査をすることができる。具体的には、例えば、反射鏡3、27はいずれも対応するCCDカメラ4、28の画角を搬送方向Xと対応する方向に小さくするように変化させるが、搬送方向X前方側の反射鏡3の方がより画角を小さく変化させるように、すなわちより小さな曲率半径で凹面が形成されている。このようにすることで、搬送方向X後方側で予め大きな範囲で帯状対象物Sを撮像して不良箇所を効率良く認識するとともに、搬送方向X前方側では当該検査結果に基づいて不良箇所をより詳細に検査することが可能となる。
【0030】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図6及び図7に基づいて説明する。なお、この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
図6及び図7に示すように、この実施形態の部材検査装置30は、車両35に搭載されて車両35の前方の施設として路面Rに走行方向Pに沿って敷設された基準位置マーカEを検査対象物として検査し、車両35の走行を制御するためのものである。具体的には、部材検査装置30は、車両35の前部に搭載されて、走行方向Pの前方の路面Rからの光を反射させる反射手段である反射鏡31と、車両35の前部に搭載されて反射鏡31で反射された光を入光させて撮像を行う撮像手段であるCCDカメラ32と、車両35に搭載されCCDカメラ32で撮像された画像を生成し、解析する画像処理手段33とを備える。画像処理手段33は、車両35に搭載された制御手段36と接続されていて、制御手段36は、画像処理手段33による解析結果に基づいて幅方向の位置を調整しながら車両35を走行させる。また、本実施形態において、反射鏡31は、車両35の走行方向Pに円弧などの曲線で凸状に形成されているとともに、走行方向Pに直交する幅方向Qに直線状に形成された凸面鏡となっている。このため、CCDカメラ32は、幅方向Qに対応する方向には自らが有する所定の画角をもって、所定時間毎に繰り返し撮像可能であるともに、走行方向Pに対応する方向には反射鏡31により画角を大きくさせて広範囲となる撮影範囲A31で撮像することが可能となっている。
【0032】
次に、この実施形態の部材検査装置30の作用について説明する。図6及び図7に示すように、車両35が走行するのに伴って、部材検査装置30のCCDカメラ32は、反射鏡31によって反射して入光した光をもって路面Rを所定時間毎に撮像している。そして、画像処理手段33では、CCDカメラ32から出力される撮像信号から画像を生成し、画像に映し出される基準位置マーカEの位置を解析する。そして、解析された基準位置マーカEの位置に基づいて、車両35に搭載された制御手段36では、例えば検出される基準位置マーカEの位置が中央位置となるように幅方向Qの位置を調整しながら車両35を走行させる。ここで、CCDカメラ32は、反射鏡31により、幅方向Qには自身の画角をもって、また、走行方向Pには画角を大きくなるように変化させて撮像している。このため、画像処理手段33では、CCDカメラ32が有する解像度で基準位置マーカEの幅方向Qの位置を解析することができるとともに、走行方向Pには一度の撮像で前方に向かって広い範囲にわたって基準位置マーカEを解析することができる。このため、車両35の走行速度がより高速となっても、制御手段36による車両35の幅方向Qへの正確な位置調整を行うことが可能となる。ここで、従来、同様の精度の位置調整を行うためには、図7及び図8に示すように、複数のCCDカメラ41、42によって走行方向Pに異なる範囲B41、B42を撮像するようにする必要がある。一方、本実施形態の部材検査装置30では、CCDカメラ32を少なくとも1台設置すれば良く、コストを抑えることができる。
【0033】
なお、本実施形態でも撮像手段であるCCDカメラ32を1台に限定する必要はなく、第1の実施形態の第2の変形例のように、複数のCCDカメラ32について、対応する反射鏡31を異なるものとして、画角を変化させる作用を異なるものとしても良い。すなわち、一方のCCDカメラ32では、上記のように反射鏡31として凸面鏡を対応させて、他方のCCDカメラ32では第1の実施形態のように反射鏡31として凹面鏡を対応させても良い。このようにすることで、凸面鏡と対応したCCDカメラ32で走行方向Pに広い範囲で検査することともに、凹面鏡と対応したCCDカメラ32で幅方向Qに画角を小さくして詳細に基準位置マーカEの幅方向Qの位置を検出するようにすることもできる。
【0034】
また、本実施形態では、路面Rに設置された基準位置マーカEを検査対象物としたが、これに限るものではなく、例えば、検査対象物をセンターラインや縁石としても、部材検査装置30の検査結果に基づいて制御手段36により車両35の走行を同様に制御することができる。また、例えば、架線からパンタグラフで給電を行う方式の車両においては、架線を検査対象物としても良い。
【0035】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図9に基づいて説明する。なお、この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
図9に示すように、この実施形態の部材検査装置50は、大型の構造物58を検査対象物として、その位置、寸法等を検査するためのものである。具体的には、部材検査装置50は、所定の基面G上で構造物58から離間して設置されていて、構造物58からの光を反射させる反射手段である反射鏡51と、反射鏡51で反射光を入光させて撮像を行なう撮像手段であるCCDカメラ52と、CCDカメラ52で撮像された画像を生成し、解析する画像処理手段53と、反射鏡51から構造物58までの距離を測定する距離測定手段54とを備える。
【0037】
反射鏡51は、構造物58の高さ方向H及び幅方向Wにそれぞれ円弧などの曲線で凸状に形成された凸面鏡となっている。このため、CCDカメラ52は、高さ方向H及び幅方向Wのそれぞれに対応する方向に反射鏡51により画角を大きくさせて広範囲で撮像することが可能となっている。また、距離測定手段54は、例えば、光波を構造物58に発進させて反射波との位相差に基づいて距離計測を可能なものなどであり、CCDカメラ52の光軸が反射鏡51と交差する位置から構造物58までの水平距離を測定することが可能である。そして、画像処理手段53では、CCDカメラ52で撮像され自ら生成した画像から構造物58の部材寸法を演算することが可能である。より具体的には、CCDカメラ52の画角と反射鏡51による当該画角の変化率とから決定される実際の画角が高さ方向H及び幅方向Wのそれぞれに対応する方向毎に記憶されている。このため、構造物58における対象となる部材の画像上の寸法(画素数)を解析し、これに実際の画角と距離測定手段54よって測定された距離Lとを乗じることで、対象部分の実際の寸法を求めることができる。また、画像処理手段53では、反射鏡51で変化した画角を逆補正して画像を生成し、図示しないモニタに表示している。
【0038】
以上、本実施形態の部材検査装置50によれば、反射鏡51により高さ方向H及び幅方向Wに画角を大きくしてCCDカメラ52で撮像することができるので、一度に撮像可能な構造物58の寸法を大きく設定することができる。また、従来同様の測定を行うためには、図10に示すように、CCDカメラ52の有する画角そのままで撮像するので、構造物58からより離間させた位置で撮像する必要がある。すなわち、本実施形態の部材検査装置50では、同様の構造物58を検査するにしても、より構造物58からの離間距離を短くして行うことができ、検査精度を向上させることができる。また、本実施形態では、画像処理手段53は、上記のとおりCCDカメラ52で撮像されたものを反射鏡51で変化した画角を逆補正して画像を生成しているので、実像と同じ像で画像を介して目視検査を行うこともできる。また、上記のとおり、距離測定手段54による測定結果に基づいて構造物58の部分寸法を演算することができ、大型の構造物58を現地で組み立てた後でも精度良く寸法検査を行うことができる。このため、従来は、出荷前に各部材を仮組立して構造物58の製品検査を行う場合もあったが、現地において実際に組立てた際に検査を行うことができるようになり、工程の短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態の部材検査装置の全体図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の部材検査装置で検査対象とする長尺物などを検査した結果の概要を説明する説明図である。
【図3】従来の部材検査装置で検査対象とする長尺物などを検査した結果の概要を説明する説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の第1の変形例の部材検査装置の全体図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の第2の変形例の部材検査装置の全体図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の部材検査装置の側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の部材検査装置の平面図である。
【図8】従来の部材検査装置の側面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の部材検査装置の側面図である。
【図10】従来の部材検査装置の側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1、20、25、30、50 部材検査装置
3、21、27、31、51 反射鏡(反射手段)
4、28、32、52 CCDカメラ(撮像手段)
5、33、53 画像処理手段
7 速度計(速度測定手段)
54 距離測定手段
58 構造物(検査対象物)
E 基準位置マーカ(検査対象物)
H 高さ方向(一方向)
P 走行方向(一方向)
S 帯状対象物(検査対象物)
X 搬送方向(一方向)
W 幅方向(一方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画角をもって撮像することが可能な撮像手段と、
該撮像手段で撮像された画像を生成、解析する画像処理手段と、
検査対象物の少なくとも一方向に対応する方向の画角を変化させるように、前記検査対象物からの光を反射させて前記撮像手段に入光させる反射手段とを備えることを特徴とする部材検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部材検査装置において、
前記反射手段は、前記一方向に対応する方向の画角を小さくするように前記検査対象物からの光を反射させることを特徴とする部材検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の部材検査装置において、
前記反射手段は、前記一方向に対応する方向の画角を大きくするように前記検査対象物からの光を反射させることを特徴とする部材検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の部材検査装置において、
前記画像処理手段は、前記反射手段によって変化した画角を逆補正して画像を生成させることを特徴とする部材検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の部材検査装置において、
前記検査対象物との相対速度を検出する速度検出手段を備え、
前記画像処理手段は、前記速度検出手段による検出結果に応じて前記撮像手段で撮像された画像を生成することを特徴とする部材検査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部材検査装置において、
前記検査対象物から前記反射手段までの相対距離を測定可能な距離測定手段を備え、
前記画像処理手段は、前記反射手段によって変化した画角、及び、前記距離測定手段による測定結果に基づいて、生成した画像に映し出された検査対象物の部分寸法を演算することを特徴とする部材検査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の部材検査装置において、
前記撮像手段と前記反射手段とを複数組備え、各前記撮像手段は、前記一方向に前記検査対象物の異なる位置を撮像可能に設定されていることを特徴とする部材検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−133906(P2010−133906A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312728(P2008−312728)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】