説明

酸化亜鉛材料の育成方法およびそれを用いたデバイス

【課題】 溶液を用いて、転位、欠陥の少ない高品質のZnO単結晶薄膜/バルクを得ることは困難であった。
【解決手段】 特定のハロゲン化物を含むフラックス中に、Zn源としてハロゲン化亜鉛を混合した溶液を使用して、育成を行なうことにより、高品質のZnO単結晶薄膜/バルクが得られた。この場合、特定のハロゲン化物としては、アルカリ金属ハロゲン化物或いはアルカリ土類金属ハロゲン化物を用いることが好ましく、また、酸素源として、アルカリ金属酸化物或いはアルカリ金属の炭酸塩を使用することが望ましい。
また、酸素源としての酸化物或いは炭酸塩は、育成時間中に継続して酸素を供給できるよう、適度な速度の溶解度を実現するため、限られた表面積を有するタブレット状であることを特徴とする育成方法。タブレットは、単結晶状であっても良いし、溶融凝固させた多結晶体でも良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイドギャップを有する酸化亜鉛(ZnO)膜、バルク等のZnO材料に関し、特に、高品質ZnO膜の育成方法及び当該ZnO膜を含む製品、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸化亜鉛(ZnO)は、例えば、発光素子、受光素子、圧電素子、透明導電電極、能動素子等への幅広い用途を持つ材料として期待されている。更に、将来的には、GaN用基板、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ用の単結晶薄膜、或いは、LED用の基板等に応用することも考慮されている。また、ZnOはGaNと同様に、3eV以上のワイドバンドギャップを有しているため、青色から紫外光にいたる短波長の光を発光する発光素子用半導体としての用途、応用が特に注目を集めている。更に、これらの要望に応じて、今後、ZnO材料の特徴を生かした種々様々な製品も提案、開発されるものと思われる。このため、品質の優れた(低欠陥密度の)酸化亜鉛の製造方法を確立することは極めて重要である。
【0003】
従来、ZnO、特に、ZnOの単結晶を育成する方法が、特開2004−131301号公報(特許文献1)において提案されている。ここでは、大型の酸化亜鉛単結晶を得るために、酸化亜鉛とキャリアガスとを用いた化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成方法及びそのための育成炉が開示されている。
【0004】
また、特開2004−84001号公報(特許文献2)は、MBE(分子線エピタキシー法)及びMOCVD(有機金属気相成長法)による酸化亜鉛の育成方法のうち、有機金属気相成長法を用いて酸化亜鉛を育成する方法を開示している。具体的に説明すると、特許文献2は、酸化亜鉛結晶膜を簡便且つ低コストで育成するために、サファイア基板上に有機金属気相成長法を用いて、酸化亜鉛のバッファ層及び酸化亜鉛結晶膜を形成することを提案している。この場合、酸化亜鉛バッファ層は亜鉛と酸素を含む有機金属化合物ガスだけを用いた亜鉛リッチな条件で形成され、続いて、酸化亜鉛結晶膜は亜鉛と酸素を含む有機金属化合物ガスと酸素ガスの双方を使用し、完全に亜鉛が酸化される条件で、酸化亜鉛バッファ層上に育成されている。
【0005】
更に、特開2002−289918号公報(特許文献3)は、ワイドギャップの酸化亜鉛(ZnO)系p型半導体結晶を製造する方法及び発光デバイスを提案している。特許文献3は、半導体結晶にドナー・アクセプタ不純物を同時的にドーピングしてp型半導体結晶を製造する際、ドナー不純物を断続的に供給する手法を開示している。
【0006】
また、特開2000−199097号公報(特許文献4)には、酸化亜鉛と硝酸亜鉛イオンを含む水溶液と、当該水溶液の液面と接するように非水溶性の液体とを用いて、液相堆積法によりZnO膜を形成する方法が開示されている。ここでは、ZnO膜が電析により形成されている。
【特許文献1】特開2004−131301号公報
【特許文献2】特開2004−84001号公報
【特許文献3】特開2002−289918号公報
【特許文献4】特開2000−199097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したことからも明らかな通り、従来、ZnO材料、特に、ZnO単結晶の製造、育成には、化学気相輸送法、MBE法、MOCVD法等が主に使用されており、更に、特許文献4に示されているように、電析による液相堆積法も使用されている。しかしながら、MBE、MOCVD、化学気相輸送法によって形成されたZnOは転位、欠陥等が多く、結晶の品質の面で不十分であり、今後予想されるZnOの各種用途の高効率化には不適切である。
【0008】
一方、液相堆積法は他の薄膜製造方法に比較して反応温度が低く、反応が穏やかであるが、特許文献4のように、ZnOと硝酸亜鉛イオンを含む水溶液を用いたのでは、高品質のZnO材料を工業的な生産として得ることは困難である。
【0009】
本発明の目的は転位及び欠陥の密度が極めて低く、品質の高いZnO膜を工業的な生産としての観点から十分な速度を持って育成するZnO膜の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は液相エピタキシャル成長法(LPE)を用いて溶液から高品質のZnO材料を育成する育成方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は高品質のZnO膜を含む素子、装置等の製品、特に、半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、酸化亜鉛(ZnO)材料を液相成長により育成する育成方法において、ハロゲン化亜鉛をZn源として用意すると共に、予め定められたハロゲン化物を含むフラックスを用意し、前記ハロゲン化亜鉛と前記フラックスとを混合した溶液中で、前記ZnO材料を育成することを特徴とする育成方法が得られる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、前記溶液は酸素源として、所定の酸化物或いは炭酸塩を含んでいることを特徴とする育成方法が得られる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、前記フラックスに含まれる前記ハロゲン化物は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物であることを特徴とする育成方法が得られる。具体的に云えば、前記ハロゲン化物はLiF ,NaF,KF,RbF,CsF,MgF,CaF,SrF,BaF,ZnF,LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl,MgCl,CaCl,SrCl,BaCl,ZnCl,LiBr,NaBr,KBr,RbBr,CsBr,MgBr,CaBr,SrBr,BaBr,ZnBr、LiI,NaI,KI,RbI,CsI,MgI,CaI,SrI,BaI,及び、ZnIの少なくとも一つを含んでいることによって特徴付けられる。
この場合、列挙した単一のハロゲン化物をフラックスとして用いても良いし、或いは、列挙したハロゲン化物を2つ以上含む混合物をフラックスとして用いても良い。
【0015】
いずれにしても、上記フラックスとハロゲン化亜鉛とを含む混合溶液は共晶或いは亜共晶を形成していることが判明した。このような混合溶液を使用することにより、溶解温度を1000℃以下、好ましくは、800℃以下にすることができ、熱歪の少ないZnO材料、具体的には、ZnOの単結晶膜を、酸素含有雰囲気で、大気圧(101kPa)の圧力で育成、成膜することができた。
【0016】
更に、本発明の更に別の態様によれば、酸素源としての酸化物或いは炭酸塩は、アルカリ金属の酸化物或いは炭酸塩であることを特徴とする育成方法が得られる。この場合、前記アルカリ金属の酸化物はLiO,NaO,KOから選択されれば良く、また、前記アルカリ金属の炭酸塩はLiCO,NaCO,KCO,RbCOから選択されれば良い。
【0017】
更に、本発明の更に別の態様によれば、酸素源としてのアルカリ金属の酸化物或いは炭酸塩は、育成時間中に継続して酸素を供給できるよう、適度な速度の溶解度を実現するため、限られた表面積を有するタブレット状であることを特徴とする育成方法が得られる。なお、タブレットは、単結晶状であっても良いし、溶融凝固させた多結晶体でも良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1000℃以下の低温で且つ大気圧で、転位、欠陥密度の極めて低い高品質のZnO膜或いはバルク等の材料を育成することができる。本発明によるZnO薄膜/バルク結晶の成長方法では、薄膜/バルク結晶に対する不純物の析出係数kを1より小さくなるように制御できる。
また、大気状態で低圧力で、液相から薄膜/バルク結晶を成長させることができるため、本発明では、LED,太陽電池等のウェハー用材料を低コストで形成できる。更に、本発明の方法は取り扱いが簡単であり、且つ、使用される化学物質は安価で非毒性のものであると云う利点もある。また、ZnOは水に溶けないにも拘わらず、使用されたフラックスは水に非常に溶けやすいため、成長された薄膜/バルク結晶及び基板を簡単に清浄化できる。
【0019】
加えて、限られた表面積を有するタブレット状の酸素源を用いることで、育成時間中に継続して酸素を供給できるようになり、工業的な生産としての観点から十分な速度を持って育成するZnO膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明の酸化亜鉛材料の育成方法を実験する装置の概念図を図9に示す。ヒーターに囲まれた石英チャンバーがあり、その中にZnO基板結晶を配置し回転するものである。内部には所定の溶液を充填しておく。本発明は、優れた結晶性及び低不純物濃度のZnOバルク結晶或いは薄膜結晶を溶液から成長させることができるフラックスを用いて、ZnOを育成する方法にある。即ち、本発明では、溶質ZnO形成のためのフラックスとして特定のハロゲン化物を使用する。この場合における特定のハロゲン化物としては、アルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属ハロゲン化物が好ましいことが判明した。
【0021】
具体的には、フラックスを形成するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩化物は、LiF ,NaF,KF,RbF,CsF,MgF,CaF,SrF,BaF,ZnF,LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl,MgCl,CaCl,SrCl,BaCl,ZnCl,LiBr,NaBr,KBr,RbBr,CsBr,MgBr,CaBr,SrBr,BaBr,ZnBr、LiI,NaI,KI,RbI,CsI,MgI,CaI,SrI,BaI,及び、ZnIのうちから、少なくとも一つのハロゲン化物を選択すれば良い。
この場合、列挙したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属ハロゲン化物から単一のハロゲン化物を選択しても良いし、2つ以上を選択し、これらを混合して使用しても良い。2つ以上のハロゲン化物を混合した場合、これら混合されたハロゲン化物は共晶体(例えば、NsCl−CsCl)を形成することが望ましく、これにより、溶解温度を1000℃以下、より好ましくは、800℃以下にすることができ、これらの混合物の溶解温度はいずれも260℃以上であった。
【0022】
他方、溶質ZnO形成のためのZn源として、本発明では、ZnClもしくはZnBrもしくはZnBrを使用した。このように、Zn源として使用されるハロゲン化亜鉛は、上記したフラックスを形成するハロゲン化物と共晶体又は亜共晶体を形成することが判明した。
【0023】
更に、本発明に係る実施形態は、溶質ZnOの酸素源として、アルカリ金属酸化物或いはアルカリ金属炭酸塩を使用した。酸素源として利用できるアルカリ金属酸化物はLiO,NaO,KOからなる群から選択された一つ又は複数の酸化物であれば良く、また、アルカリ金属の炭酸塩はLiCO,NaCO,KCO,RbCOの群から選択された一つ又は複数の炭酸塩であれば良い。
【0024】
更に、本発明に係る実施形態は、酸素源としてのアルカリ金属の酸化物或いは炭酸塩は、育成時間中に継続して酸素を供給できるよう、適度な速度の溶解度を実現するため、限られた表面積を有するタブレット状であれば良い。なお、タブレットは、単結晶状であっても良いし、溶融凝固させた多結晶体でも良い。
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るZnOの育成、成膜方法として、ZnO基板表面にZnO薄膜を成膜する場合について説明する。ここでは、ヒータを備えた炉芯管と、当該炉芯管内に配置されたるつぼとを有する所謂縦型炉芯管構造の成膜装置が使用されるものとする。
ZnO薄膜を成膜する場合、ZnO基板は基板保持具に支持され、当該基板保持具は炉芯管内を昇降できる支持棒の下端に取り付けられる。ZnO基板を下端に支持した状態で、支持棒は炉芯管の上部から炉芯管内部のるつぼに導かれ、るつぼ内で化学反応が行なわれ、ZnO基板上にZnO薄膜或いはZnOバルクが育成、成膜される。
【0026】
この実施形態では、上に列挙した塩化物を含むフラックス、Zn源としてのハロゲン化亜鉛(ZnCl、ZnBr、ZnI2)、及び、O源としての酸化物(又は、炭酸塩)との混合溶液が収容されている。この例では、るつぼ内の混合溶液はヒータによる加熱により、1000℃以下、好ましくは、800℃以下に保たれているものとする。
【0027】
まず、Zn源としてZnCl、O源としてKO及びNaOを用いた場合について説明すると、この場合における化学反応はそれぞれ(1)及び(2)式であらわすことができる。
【0028】
ZnCl+KO → ZnO+2KCl (1)
ZnCl+NaO → ZnO+2NaCl (2)
また、O源としてNaCO或いはKCOを用いた場合の化学反応式はそれぞれ(3)及び(4)式によってあらわすことができる。
【0029】
ZnCl+NaCO → ZnO+2NaCl+CO (3)
ZnCl+KCO → ZnO+2KCl+CO (4)
式(1)〜(4)の右辺からも明らかなように、溶質ZnOと共に、NaCl或いはKClが副生成物として生成され、これらNaCl、KClは混合溶液の組成或いは融点を若干変化させる。また、式(3)及び(4)では炭酸ガスが大気中に放出されることが分る。
【0030】
ZnBr2の場合における化学反応はそれぞれ(5)及び(6)式であらわすことができる。
【0031】
ZnBr+KO → ZnO+2KBr (5)
ZnBr+NaO → ZnO+2NaBr (6)
また、酸素源としてNaCO或いはKCOを用いた場合の化学反応式はそれぞれ(7)及び(8)式によってあらわすことができる。
【0032】
ZnBr+NaCO → ZnO+2NaBr+CO (7)
ZnBr+KCO → ZnO+2KBr+CO (8)
式(5)〜(8)の右辺からも明らかなように、溶質ZnOと共に、NaBr或いはKBrが副生成物として生成され、これらNaBr、KBrは混合溶液の組成或いは融点を若干変化させる。また、式(7)及び(8)では炭酸ガスが大気中に放出されることが分る。
【0033】
ZnI2の場合における化学反応はそれぞれ(9)及び(10)式であらわすことができる。
【0034】
ZnI+KO → ZnO+2KI (9)
ZnI+NaO → ZnO+2NaI (10)
また、O源としてNaCO或いはKCOを用いた場合の化学反応式はそれぞれ(3)及び(4)式によってあらわすことができる。
【0035】
ZnI+NaCO → ZnO+2NaI+CO (11)
ZnI+KCO → ZnO+2KI+CO (12)
式(9)〜(12)の右辺からも明らかなように、溶質ZnOと共に、NaI或いはKIが副生成物として生成され、これらNaI、KIは混合溶液の組成或いは融点を若干変化させる。また、式(11)及び(12)では炭酸ガスが大気中に放出されることが分る。
【0036】
いずれにしても、上記した実施形態で用いられる混合溶液は、前述したアルカリ金属塩化物とハロゲン化亜鉛からなる低融点組成を有している。
【0037】
上では、フラックスに含まれる塩化物として、アルカリ金属ハロゲン化物だけを例示したが、本発明者等の実験によれば、アルカリ土類金属ハロゲン化物、具体的には、MgF,CaF,SrF,BaF,ZnF、MgCl,CaCl,SrCl,BaCl,ZnCl、MgBr,CaBr,SrBr,BaBr,ZnBr、MgI,CaI,SrI,BaI,ZnI、を用いても、同様な効果が得られることが分った。
【0038】
上記した実施形態によれば、ZnO基板上に、ZnO結晶を晶出することができた。この場合、バルク結晶は無種子溶液法による成長で育成され、他方、ZnO薄膜は液相エピタキシー成長によって育成された。
【0039】
本発明による方法は、製造条件、圧力等の設定が極めて簡単であり、且つ、不純物の材料中に対する侵入を1以下の偏析係数kまで低下させることができた。
【0040】
本発明の方法により、ZnO基板上にZnO薄膜を溶液からホモエピタキシャル成長させた場合、極めて結晶性の高いZnO薄膜が得られることが判明した。このことは、ZnO基板とZnO薄膜との間に、格子不整(lattice misfit)がなく、熱膨張係数にも差がないことによって達成された。
【0041】
以下、図面を参照して、無種子フラックス法を使用して結晶を成長させた場合における実験結果を説明する。図1はZnClとKOとの間における化学反応(式(1))の結果、得られたZnO単結晶を示すSEM写真(×4000)である。図1からも明らかな通り、板状の結晶が生成されている。
【0042】
図2はZnCl2とNa2CO3との式(3)で示された化学反応により得られたZnO単結晶を示すSEM写真(×15000)であり、結晶が柱状に成長されていることが分る。
【0043】
図3はZnClとKCOとの間の式(4)で示された化学反応により得られたZnO単結晶を示すSEM写真(×19000)であり、柱状に成長された結晶を観測できる。
【0044】
図4を参照すると、本発明によって得られたZnO結晶の粉末X線回折(XRD)による測定結果を示す図である。図4において、aはZnClとKOの反応(式(1))によって得られるZnO結晶の測定結果を示し、bは式3に示されたZnClとNaCOとの反応によって得られたZnO結晶の測定結果である。更に、cは式4に示されたZnClとKCOとの反応によって得られたZnO結晶の測定結果である。
【0045】
図5を参照すると、前述したZnO結晶のX線ロッキングカーブ(XRC)を測定した結果が示されている。図5(a)、(b)、及び、(c)はそれぞれNaCO、KCO、NaOを酸素源として使用した得られたZnOの最大ピークに対する半値幅(Full−Width−at−Half−Maximum)(FWHM)が示されている。図5からも明らかな通り、本発明によって得られたZnO結晶は優れた結晶性を有していることが分る。尚、図5の測定には、GE(440)の4結晶モノクロメータを使用した。

図6は限られた表面積を有するタブレット状の酸素源を用いることで、育成時間中に継続して酸素を供給でき、有意にZnOの大きさを向上させた例である。ZnClとLiClとK2COとの反応によって得られたZnO結晶
図7はZnBrとLiClとKCOとの間の化学反応により得られたZnO単結晶を示すSEM写真(×4500)であり、柱状および板状に成長した結晶を観測できる。
【0046】
図8はZnIとLiClとKCOとの間の化学反応により得られたZnO単結晶を示すSEM写真(×10000)であり、柱状に成長した結晶を観測できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明で得られた高品質のZnOは、各種機器、例えば、SAWフィルタ用の単結晶薄膜、バルク結晶の表面改質、或いは、ZnOのp−n接合形成にも適用でき、また、LED基板の製造にも適用可能である。更に、本発明の育成方法は紫外LED、RGB蛍光体と組み合わせることにより、高輝度の白色固体照明等の製品にも応用できる。更に、本発明はTFT(Thin Film Transistor)等の半導体装置並びにTFTを使用した有機EL、液晶表示装置等の表示装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明によって得られたZnO単結晶を示すSEM写真であり、ここでは、ZnClとKOとの間における化学反応の結果、得られたZnO単結晶の写真である。
【図2】本発明によって得られたZnO単結晶を示すSEM写真であり、ここでは、ZnClとNaCOとの間における化学反応の結果、得られたZnO単結晶の写真である。
【図3】本発明によって得られたZnO単結晶を示すSEM写真であり、ここでは、ZnClとKCOとの間における化学反応の結果、得られたZnO単結晶の写真である。
【図4】図1〜3に示されたZnO単結晶のX線回折による測定結果を示す図である。
【図5】(a)、(b)、及び、(c)はそれぞれ酸素源としてNaCO、K2CO3、NaOを用いた場合におけるX線ロッキングカーブの測定結果を示す図である。
【図6】図6は限られた表面積を有するタブレット状の酸素源を用いることで、育成時間中に継続して酸素を供給でき、有意にZnOの大きさを向上させた例である。ZnClとLiClとK2COとの反応によって得られたZnO結晶
【図7】図7はZnBrとLiClとKCOとの間の化学反応により得られたZnO単結晶を示すSEM写真(×4500)であり、柱状および板状に成長した結晶を観測できる。
【図8】図8はZnIとLiClとKCOとの間の化学反応により得られたZnO単結晶を示すSEM写真(×10000)であり、柱状に成長した結晶を観測できる。
【図9】装置の概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛(ZnO)材料を溶液を用いて育成する育成方法において、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2をZn源として用意すると共に、予め定められたハロゲン化物を含むフラックスを用意し、前記ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2と前記フラックスとを混合した溶液中で、前記ZnO材料を育成することを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項2】
請求項1において、前記溶液は酸素源として、所定の酸化物或いは炭酸塩を含んでいることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記フラックスに含まれる前記ハロゲン化物は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項4】
請求項3において、前記フラックスはLiF ,NaF,KF,RbF,CsF,MgF,CaF,SrF,BaF,ZnF,LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl,MgCl,CaCl,SrCl,BaCl,ZnCl,LiBr,NaBr,KBr,RbBr,CsBr,MgBr,CaBr,SrBr,BaBr,ZnBr、LiI,NaI,KI,RbI,CsI,MgI,CaI,SrI,BaI,及び、ZnIからなる群から選択された少なくとも一つのハロゲン化物を含んでいることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項5】
請求項4において、前記フラックスは、LiF ,NaF,KF,RbF,CsF,MgF,CaF,SrF,BaF,ZnF,LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl,MgCl,CaCl,SrCl,BaCl,ZnCl,LiBr,NaBr,KBr,RbBr,CsBr,MgBr,CaBr,SrBr,BaBr,ZnBr、LiI,NaI,KI,RbI,CsI,MgI,CaI,SrI,BaI,及び、ZnIから選択された単一の塩化物によって形成されていることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項6】
請求項4において、前記フラックスは、LiF ,NaF,KF,RbF,CsF,MgF,CaF,SrF,BaF,ZnF,LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl,MgCl,CaCl,SrCl,BaCl,ZnCl,LiBr,NaBr,KBr,RbBr,CsBr,MgBr,CaBr,SrBr,BaBr,ZnBr、LiI,NaI,KI,RbI,CsI,MgI,CaI,SrI,BaI,及び、ZnIから選択された塩化物を2つ以上含む混合物であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記フラックスとZnF、もしくはZnCl、もしくはZnBrとを含む混合溶液は共晶或いは亜共晶を形成していることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項8】
請求項7において、前記共晶或いは亜共晶の溶解温度は、1000℃以下、好ましくは、800℃以下であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項9】
請求項8において、酸素含有雰囲気で、大気圧(101kPa)の圧力で育成されることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項10】
請求項2において、前記酸素源としての酸化物或いは炭酸塩は、アルカリ金属の酸化物或いは炭酸塩であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項11】
請求項10において、前記アルカリ金属の酸化物はLiO,NaO,KOからなる群から選択された少なくとも一つの酸化物であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項12】
請求項10において、前記アルカリ金属の炭酸塩はLiCO,NaCO,KCO,RbCOからなる群から選択された少なくとも一つの炭酸塩であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項13】
請求項10から12において、酸素源としての酸化物或いは炭酸塩は、育成時間中に継続して酸素を供給できるよう、適度な速度の溶解度を実現するため、限られた表面積を有するタブレット状であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。タブレットは、単結晶状であっても良いし、溶融凝固させた多結晶体でも良い。
【請求項14】
請求項10から12において、酸素源としての酸化物或いは炭酸塩は、育成時間中に継続して酸素を供給できるよう、適度な速度の溶解度を実現するため、一週間の育成においては、3mmから20mm角程度、好ましくは5mmから15mm角程度、より好ましくは7mmから12mm角程度のタブレット状であることを特徴とする酸化亜鉛材料の育成方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載された育成方法によって得られたZnO単結晶薄膜/バルク。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載された育成方法によって得られたZnO単結晶薄膜/バルクを含む製品。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれかに記載された育成方法によって得られたZnO単結晶薄膜/バルクを含む半導体装置。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載された育成方法によって得られたZnO単結晶薄膜/バルクを含むTFT。
【請求項19】
請求項18に記載されたTFTを含む表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−69844(P2006−69844A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255323(P2004−255323)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】