説明

酸転写用組成物、酸転写用膜及びパターン形成方法

【課題】酸の拡散が被パターン化樹脂膜の全面に均一に十分な精度をもって行うことができ、その結果、被パターン化樹脂膜の全面に均一優れた寸法安定性が得られる酸転写用膜を得ることができる酸転写用組成物、これを用いてなる酸転写用膜、及びこの酸転写用膜を用いて既存のフォトリソプロセスによりパターン形成できるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)感放射線性酸発生剤、(B)含窒素基を有する重合体、及び、(C)ケトン系溶剤、を含有する組成物。(B)重合体は特定の(メタ)アクリルアミド構成単位を有することが好ましい。この組成物を用いてなる酸転写用膜。酸解離性基を有する樹脂を含有し且つ感放射線性酸発生剤を含有しない第1樹脂膜上に、前記酸転写用膜としての第2樹脂膜を形成する第2樹脂膜形成工程を備えるパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸転写用組成物、酸転写用膜及びパターン形成方法に関する。更に詳しくは、酸発生剤を含有しない膜にパターンを形成する技術において好適に用いることができる酸転写用組成物、これを用いてなる酸転写用膜、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工分野において、従来、酸解離性官能基を有する樹脂と酸発生剤とを含む感放射性樹脂組成物を用いたパターン形成方法が知られている。この方法は、露光により前記酸発生剤から酸が発生され、その酸により前記酸解離性官能基を有する樹脂から所定の官能基が解離されてアルカリ可溶性になる性質を利用するものである。
これに対して、下記特許文献1〜5に開示されるように、被パターン化樹脂膜内に酸発生剤が含まれなくともパターン形成できる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−85955号公報
【特許文献2】特開2001−272402号公報
【特許文献3】WO1990/015070
【特許文献4】特表2005−523232号公報
【特許文献5】特開2006−258806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸発生剤が含まれない被パターン化樹脂膜にパターンを形成する技術においては、酸を被パターン化樹脂膜の必要な部位へ選択的に拡散させつつ、被パターン化樹脂膜の全面に均一に拡散させることが要求される。しかしながら、従来、この酸の拡散を被パターン化樹脂膜の全面に均一且つ十分な精度の選択性をもって行うことができる酸転写膜が知られていない。
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、酸の拡散が被パターン化樹脂膜の全面に均一に十分な精度をもって行うことができ、その結果、被パターン化樹脂膜の全面に均一優れた寸法安定性が得られる酸転写樹脂を得ることができる酸転写用組成物、これを用いてなる酸転写用膜、及びこの酸転写用膜を用いて既存のフォトリソプロセスによりパターン形成できるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
[1](A)感放射線性酸発生剤、
(B)含窒素基を有する重合体、及び、
(C)ケトン系溶剤、を含有することを特徴とする酸転写用組成物。
[2]前記(B)重合体として下記式(1)に示す構成単位を有する重合体を含有する前記[1]に記載の酸転写用組成物。
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは互いに結合して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を有する3〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
[3]前記(B)重合体を100質量部とした場合に、前記(C)ケトン系溶剤を10〜10000質量部含有する前記[1]又は[2]に記載の酸転写用組成物。
[4]前記(B)重合体は、下記式(2)に示す構成単位を有する前記[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物。
【化2】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
[5]前記(A)感放射線性酸発生剤は、イミドスルホネート基を有する感放射線性酸発生剤である前記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物。
[6]更に、(E)増感剤を含有する前記[1]乃至[5]のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物。
[7]前記(E)増感剤が、下記式(20)に示す化合物である前記[6]に記載の酸転写用組成物。
【化3】

〔式(20)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
[8]前記[1]乃至[7]のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物を用いてなることを特徴とする酸転写用膜。
[9](I)酸解離性基を有する樹脂を含有し、且つ感放射線性酸発生剤を含有しない第1樹脂膜上に、
前記[1]乃至[7]のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物を用いてなる酸転写用膜としての第2樹脂膜を形成する第2樹脂膜形成工程と、
(II)マスクを介して前記第2樹脂膜に露光し、前記第2樹脂膜に酸を発生させる露光工程と、
(III)前記第2樹脂膜に発生した前記酸を前記第1樹脂膜に転写する酸転写工程と、
(IV)前記第2樹脂膜を除去する第2樹脂膜除去工程と、をこの順に備えることを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の酸転写用組成物によれば、パターンが形成されることとなる樹脂膜(即ち、被パターン化樹脂膜)に酸発生剤が含有されなくとも、既存のフォトリソプロセスを用いてパターン形成できる。
前記(B)重合体として式(1)に示す構成単位を有する場合は、前記式(1)の構成単位を有する重合体とケトン系溶剤との両方を含むために、他の酸転写用組成物に比べて被パターン化樹脂膜全面へのより均一な酸拡散を生じると共に、酸転写の選択性にも優れる。とりわけ、本酸転写用組成物を用いて得られた酸転写用膜内で発生された酸は、被パターン化樹脂膜全面への均一な酸拡散性を確保しつつ、転写先である被パターン化樹脂膜内での不要な横方向への拡散を抑制できる。その結果、得られるパターンに高い寸法安定性が得られ、目的とするラインアンドスペースをより忠実に再現でき、より良好なパターンを形成できる。
前記(B)重合体を100質量部とした場合に、前記(C)ケトン系溶剤を10〜10000質量部含有する場合には、被パターン化樹脂膜全面へのより均一な酸拡散性を得ることができる。
前記(B)重合体が、前記式(2)に示す構成単位を有する場合は、発生された酸の転写効率をより良くコントロールできる。
前記感放射性酸発生剤が、イミドスルホネート基を有する感放射線性酸発生剤である場合は、これを含まない場合に比べて、より優れた酸転写の選択性を発揮させることができ、とりわけ良好なパターンを形成できる。
更に、(E)増感剤を含有する場合は、露光に対する感度を向上させることができる。
(E)増感剤が式(20)に示す化合物である場合は、前記(A)感放射線性酸発生剤、(B)重合体及び(C)ケトン系溶剤との組合せにおいて、とりわけ優れた感度を得ることができる。
【0007】
本発明の酸転写用膜によれば、被パターン化樹脂膜に酸発生剤が含有されなくとも、既存のフォトリソプロセスを用いてパターン形成できる。特に、前記式(1)の構成単位を有する重合体とケトン系溶剤との両方を含むために、他の酸転写用膜に比べて被パターン化樹脂膜全面へのより均一な酸拡散を生じると共に、酸転写の選択性にも優れる。とりわけ、本酸転写用膜内で発生された酸は、被パターン化樹脂膜全面への均一な酸拡散性を確保しつつ、転写先である被パターン化樹脂膜内での不要な横方向への拡散が抑制され、得られるパターンに高い寸法安定性が得られる結果、目的とするラインアンドスペースをより忠実に再現したより良好なパターンを全面にわたって形成できる。
【0008】
本発明のパターン形成方法によれば、被パターン化樹脂膜(即ち、第1樹脂膜)に酸発生剤が含有されなくとも、既存のフォトリソプロセスを用いてパターン形成できる。特に、前記式(1)の構成単位を有する重合体とケトン系溶剤との両方を含むために、他の酸転写用膜に比べて被パターン化樹脂膜全面へのより均一な酸拡散を生じると共に、酸転写の選択性にも優れる。とりわけ、本方法で用いる酸転写用組成物を用いてなる酸転写用膜の内部で発生された酸は、被パターン化樹脂膜全面への均一な酸拡散性を確保しつつ、転写先である被パターン化樹脂膜内での不要な横方向への拡散が抑制され、得られるパターンに高い寸法安定性が得られる結果、目的とするラインアンドスペースをより忠実に再現したより良好なパターンを全面にわたって形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のパターン形成方法を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
[1]酸転写用組成物
本発明の酸転写用組成物は、(A)感放射線性酸発生剤、(B)含窒素基を有する重合体、及び(C)ケトン系溶剤、を含有することを特徴とする。
【0011】
本酸転写用組成物は、後述するように膜化することができる。更に、得られた膜は露光により所望の部位に選択的に酸を発生させることができ、これにより、酸を生じた部位と、酸を生じていない部位と、からなるパターンを形成できる。更に、本酸転写用組成物から形成された膜内に発生された酸は隣接させた層へ転写することができる。
即ち、酸転写用組成物は、酸転写用膜を調製するための組成物である。また、酸転写膜は他膜と積層して用いられる膜であって、露光によって酸転写用膜内に生じた酸を他膜に転写する膜である。
【0012】
〈1〉感放射性酸発生剤(A)
前記感放射性を発現させる放射線種は特に限定されず、例えば、紫外線、遠紫外線(KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー等を含む)、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等を適宜利用できる。
【0013】
このような酸発生剤(A)としては、例えば、(A1)イミドスルホネート基を有する化合物(イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤)、(A2)オキシムスルホネート基を有する化合物(オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤)、(A3)オニウム塩化合物(チオフェニウム塩化合物を含む)、(A4)ハロゲン含有化合物、(A5)ジアゾケトン化合物、(A6)スルホン化合物、(A7)スルホン酸化合物、(A8)スルホンイミド化合物、(A9)ジアゾメタン化合物等を用いることができる。この酸発生剤(A)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、下記イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤が好ましい。本組成物内でイミドスルホネート系感放射線性酸発生剤を用いた場合には、特に優れた酸転写の選択性を得ることができる。
【0014】
〈1−1〉イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤
前記(A1)イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤は、下記式(3)に示す化合物である。
【化4】

〔式(3)中、Rは炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数4〜20の脂環式基を表す。R及びRは、互いに結合して環構造をなすか、又は、各々独立して、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20の脂環式基を表す。〕
【0015】
前記式(3)におけるR及びRは、前記の通り、互いに結合して環構造をなすか、又は、各々独立して、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20の脂環式基であればよいが、なかでも、R及びRは、互いに結合して環構造をなすことが好ましい。
更に、R及びRは、互いに結合して炭素数6〜20の芳香環構造をなすことが好ましく、特に、R及びRは、互いに結合して炭素数10〜14の多環式芳香環構造をなすことが好ましく、とりわけ、下記式(4)に示す化合物、即ち、R及びRが、互いに結合してナフタレン環構造をなす化合物、であることが好ましい。
【化5】

〔式(4)中、Rは炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20の脂環式基を表す。〕
【0016】
一方、式(4)におけるR〔式(3)におけるRについても同様〕としては、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20の脂環式基等が挙げられる。
【0017】
前記炭素数1〜14のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分枝アルキル基であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、I-プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等が挙げられる。
更に、これらのアルキル基は1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。2つの以上の置換基を有する場合にあっては、各置換基は同じであってもよく異なっていてもよい。
なかでも、Rとしてメチル基を備えたイミドスルホネート系感放射性酸発生剤としては、下記式(5)に示す化合物が挙げられる。
【化6】

【0018】
前記炭素数6〜20のアリール基は、1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。このアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、トリル基、p−メトキシフェニル基、メシチル基、o−クメニル基、キシリル基等が挙げられる。
なかでも、Rとして、トリル基(特にp−トリル基)を備えたイミドスルホネート系感放射性酸発生剤としては、下記式(6)に示す化合物が挙げられる。
【化7】

【0019】
前記炭素数4〜20の脂環式基は、不飽和結合を含んでいてもよく含まなくてもよい。更に、置換基を有してもよく有さなくてもよい。置換基を有する場合の置換基としては、前記炭素数1〜14のアルキル基に関する置換基及びメチル基及びエチル基等が挙げられる。
更に、この脂環式基の脂環部は、単環であってもよく多環であってもよく、更に、多環にあっては縮合環であってもよく非縮合環であってもよい。また、この脂環部は、有橋式であってもよく非有橋式であってもよい。
この脂環式基としては、ノルボルナン骨格を有する脂環式基、ノルボルネン骨格を有する脂環式基、トリシクロデカン骨格を有する脂環式基、テトラシクロドデカン骨格を有する脂環式基、アダマンタン骨格を有する脂環式基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
これらのなかでも、ノルボルナン骨格を有する脂環式基が好ましく、更には、ノルボルナノン骨格を有する脂環式基がより好ましく、特にカンファー骨格を有する脂環式基が好ましい。
として、このカンファー骨格を有する脂環式基を備えたイミドスルホネート系感放射性酸発生剤としては、下記式(7)に示す化合物が挙げられる。
【化8】

【0020】
〈1−2〉オキシムスルホネート系感放射性酸発生剤
前記(A2)オキシムスルホネート系感放射性酸発生剤は、下記式(8)で表される基を少なくとも1つ有する化合物である。
【化9】

式(8)中、R及びRはそれぞれ独立に1価の有機基である。このR及びRは、炭素原子以外の原子を有することができる。炭素原子以外の原子としては、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)、セレン原子などが挙げられる。
【0021】
このオキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤は、前記式(8)に示す基を2つ以上有していてもよいが、前記式(8)に示す基を1つのみ有する化合物であることが好ましい。更に、前記式(8)に示す基の結合手と結合された1価の芳香族基を有すると共に、式(8)におけるRがシアノ基、アルキル基又はハロゲン化アルキル基である化合物がより好ましい。即ち、下記式(9)に示す化合物であることが好ましい。
【化10】

〔式(9)中、Rはシアノ基、アルキル基又はハロゲン化アルキル基である。Rは1価の芳香族基である。Rは1価の有機基である。〕
【0022】
前記式(9)におけるRは、シアノ基、アルキル基又はハロゲン化アルキル基である。このうちアルキル基は、置換基を有さないアルキル基であることが好ましく、直鎖アルキル基であってもよく、分枝アルキル基であってもよい。更に、その炭素数は特に限定されないが1〜14であることが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等が挙げられる。
前記式(9)におけるRとしては、前記各基のなかでもシアノ基が特に好ましい。
【0023】
また、前記式(9)におけるRとしての1価の芳香族基の炭素数は特に限定されないが6〜20が好ましい。更に、この1価の芳香族基を構成する芳香環は、ベンゼン環であってもよく、ナフタレン環であってもよく、より多くの縮合環を有する芳香環であってもよい。即ち、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基及びこれらの基が1つ又は2つ以上の置換基する1価の芳香族基が挙げられる。これらのなかでは1価の芳香族基を構成する芳香環がベンゼン環であることが好ましい。
【0024】
また、前記式(9)におけるRとしての1価の芳香族基は、1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。2つの以上の置換基を有する場合にあっては、各置換基は同じであってもよく異なっていてもよい。即ち、例えば、前記式(3)におけるRとしての1価の芳香族基には、メトキシフェニル基(p−、m−、o−)、トリル基(p−、m−、o−)、メシチル基(2,4,6−など)、クメニル基(p−、m−、o−)、キシリル基(2,4−、3,5−など)、ベンジル基等が挙げられる。
【0025】
前記置換基のなかでは、アルコキシ基が好ましく、更には、炭素数が1〜4のアルコキシ基がより好ましく、特にメトキシ基が好ましい。従って、前記式(3)におけるRとしての1価の芳香族基はメトキシフェニル基が好ましい。そして、前記式(3)におけるRとしての1価の芳香族基がアルコキシフェニル基である場合には、p−アルコキシフェニル基、m−アルコキシフェニル基、及びo−アルコキシフェニル基のいずれであってもよいが、これらのなかではp−アルコキシフェニル基が好ましく、とりわけp−メトキシフェニル基が好ましい。
【0026】
更に、前記式(9)におけるRとしての1価の有機基は、特に限定されないが、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又は、これらの基の少なくとも一つの水素原子が、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭化水素基以外の極性基に置換された有機基であることが好ましい。
【0027】
従って、オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤としては、前記式(9)におけるRがシアノ基であると共に、前記式(9)におけるRがp−メトキシフェニル基である下記式(10)に示す化合物が好ましい。
【化11】

〔式(10)中、Rは炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又は、これらの基の少なくとも一つの水素原子が、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭化水素基以外の極性基に置換された有機基である。〕
【0028】
前記式(10)におけるRとしての炭素数1〜14のアルキル基は、置換基{前記式(9)のRの説明で挙げた置換基をそのまま適用できる}を有してもよいが、置換基を有さないアルキル基であることが好ましい。更に、このアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分枝アルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基であることがより好ましい。また、前記炭素数は1〜14であればよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n−,i−)、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等が挙げられる。これらのなかでも、炭素数は3〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、更にはn−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が好ましく、特にn−オクチル基が好ましい。
前記式(10)におけるRとしてn−オクチル基を有するオキシムスルホネート系感放射性酸発生剤は、下記式(11)で示される。
【化12】

【0029】
前記式(10)におけるRとしての炭素数6〜20のアリール基は、1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前記式(9)のRの説明で挙げた置換基をそのまま適用できる。即ち、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基等が挙げられる。2つの以上の置換基を有する場合にあっては、各置換基は同じであってもよく異なっていてもよい。即ち、例えば、前記式(10)におけるRとしての炭素数6〜20のアリール基には、トリル基(p−、m−、o−)、キシリル基(2,4−、3,5−など)、メシチル基(2,4,6−など)、ベンジル基、クメニル基(p−、m−、o−)、メトキシフェニル基(p−、m−、o−)等が挙げられる。これらのなかでも、p−トリル基、p−メトキシフェニル基及びp−クメニル基が好ましく、特にp−トリル基が好ましい。
前記式(10)におけるRとしてp−トリル基を有するオキシムスルホネート系感放射性酸発生剤は、下記式(12)で示される。
【化13】

【0030】
前記式(10)におけるRとしての前記炭素数4〜20の脂環式基は、不飽和結合を含んでいてもよく含まなくてもよい。更に、置換基を有してもよく有さなくてもよい。置換基を有する場合の置換基としては、前記炭素数1〜14のアルキル基に関する置換基及びメチル基及びエチル基等が挙げられる。
更に、この脂環式基の脂環部は、単環であってもよく多環であってもよく、更に、多環にあっては縮合環であってもよく非縮合環であってもよい。また、この脂環部は、有橋式であってもよく非有橋式であってもよい。
【0031】
この脂環式基としては、ノルボルナン骨格を有する脂環式基、ノルボルネン骨格を有する脂環式基、トリシクロデカン骨格を有する脂環式基、テトラシクロドデカン骨格を有する脂環式基、アダマンタン骨格を有する脂環式基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
これらのなかでも、ノルボルナン骨格を有する脂環式基が好ましく、更には、ノルボルナノン骨格を有する脂環式基がより好ましく、特にカンファー骨格を有する脂環式基が好ましい。
式(10)におけるRとしてカンファー骨格を有する脂環式基を備えたオキシムスルホネート系感放射性酸発生剤としては、下記式(13)に示す化合物が挙げられる。
【化14】

【0032】
〈1−3〉オニウム塩化合物
前記(A3)オニウム塩化合物としては、チオフェニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ピリジニウム塩化合物などが挙げられる。
【0033】
前記チオフェニウム塩化合物としては、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート等の4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0034】
1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0035】
1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物などが挙げられる。
【0036】
前記ヨードニウム塩化合物としては、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物;
【0037】
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート等のジフェニルヨードニウム塩化合物などが挙げられる。
【0038】
前記スルホニウム塩化合物としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物;
【0039】
4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムピレンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート等の4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0040】
4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0041】
4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物などが挙げられる。
【0042】
〈1−4〉ハロゲン含有化合物
前記(A4)ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等が挙げられる。具体的には、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタンや、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等の(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体などが挙げられる。
【0043】
〈1−5〉ジアゾケトン化合物
前記(A5)ジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物などが挙げられる。具体的には、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化物、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル化物等が挙げられる。
【0044】
〈1−6〉スルホン化物
前記(A6)スルホン化物としては、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらの化合物のα−ジアゾ化合物などが挙げられる。具体的には、4−トリルフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等が挙げられる。
【0045】
〈1−7〉スルホン酸化合物
前記(A7)スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなどが挙げられる。具体的には、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジル−p−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0046】
〈1−8〉スルホンイミド化合物
前記(A8)スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.1.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファ−スルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられる。
【0047】
〈1−9〉ジアゾメタン化合物
前記(A9)ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル−1,1−ジメチルエチルスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0048】
本発明の酸転写用組成物に含まれる酸発生剤(A)の量は特に限定されないが、酸転写用膜としての酸転写性を十分に確保する観点から、通常、重合体(B)100質量部に対して、0.1〜500質量部が含有される。更に、この含有量は0.3〜300質量部が好ましく、1〜250質量部がより好ましい。
【0049】
〈2〉重合体(B)
重合体(B)は、含窒素基を有する重合体である。重合体(B)は、前記感放射線性酸発生剤(A)と共に酸転写用組成物に含まれることにより、この酸転写用組成物から得られる層(以下、「酸転写用層」ともいう、尚、この層は酸発生剤含有層ともいえる)内で発生された酸の不要な拡散を防止できる(この作用を、以下、「酸拡散防止作用」ともいう)。そして、酸拡散防止作用を有するために、酸転写用層内及び層下への意図しない酸拡散及び酸転写を防止して、得られるパターンの解像度を向上させることができる。更に、この解像度が向上されることで、パターンを正確且つ精密に形成できる。更には、基板上に形成するパターンの集積率を向上させることができ、基板の更なる小型化及び限られた面積での更なる高機能化が実現される。
また、前述のように酸転拡散防止作用をより効果的に得る観点から、重合体(B)は、酸解離性基を実質的に有さない重合体であることが好ましい。この酸解離性基については後述する。更に加えて、重合体(B)は、酸の作用によって架橋する架橋基を実質的に有さない重合体であることがより好ましい。
【0050】
重合体(B)は、含窒素基を有すればよく、その他の構成は特に限定されない。
前記「含窒素基」は、窒素原子を含む基を意味する。この含窒素基としては、−NRの構造を有する基(以下、単に「アミン基」という)、アシド基、イミド基、ウレア基、ウレタン基、ピリジン基等が挙げられる。
これらのなかでは、アミン基が好ましい。前記アミン基のR及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、前記アミン基のR及びRは互いに結合して、3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。
【0051】
即ち、前記アミン基のR及びRが炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基である場合の前記アミン基のR及びRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などの脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0052】
また、前記アミン基のR及びRが炭素数3〜10の環状の炭化水素基である場合の前記アミン基のR及びRとしては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基などの芳香族基が挙げられる。
【0053】
更に、前記アミン基のR及びRが互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環(不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい)を形成している場合、前記アミン基としては、アジリジノ基、アゼチノ基、ピロリジノ基、ピロール基、ピペリジノ基、ピリジノ基等が挙げられる。
【0054】
また、前記アミン基のR及びRが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環(不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい)を形成している場合、前記アミン基としては、モルホリノ基、チオモルホリノ基、セレノモルホリノ基、イソオキサゾリジノ基、イソオキサゾール基、イソチアゾリジノ基、イソチアゾール基、イミダゾリジノ基、ピペラジノ基、トリアジノ基等が挙げられる。
【0055】
前記アミノ基は、どのような形態で重合体(B)に含まれてもよい。即ち、例えば、重合体(B)の主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよい。これらのうちでは、重合体(B)の側鎖に有することが好ましい。即ち、重合体(B)は側鎖に含窒素基を有することが好ましい。更に、含窒素基は、下記式(1)に示す構成単位として重合体(B)に含まれることが好ましい。
【0056】
前記「(B)下記式(1)に示す構成単位を有する重合体」(以下、単に「重合体(B)」ともいう)は、これが含有されることで、酸発生剤(A)から酸が発生された際に、酸転写用膜内における不要な酸の拡散を防止することができる(即ち、酸拡散防止樹脂として機能する)。このため、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)も防止でき、得られるパターンの解像度を向上させることができる。
【化15】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは互いに結合して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を有する3〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【0057】
〈2−1〉構成単位(1)
前記式(1)に示す構成単位は、どのようにして重合体(B)内に含まれたものであってもよいが、通常、下記式(14)で表される単量体(Bm1)を用いてを重合することにより得ることができる。
【0058】
【化16】

〔式(14)式中、Rは水素原子又はメチル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは互いに結合して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を有する3〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【0059】
前記式(14)におけるR及び/又はRとなる炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などの脂肪族炭化水素基が挙げられる。
即ち、前記式(14)においてR及び/又はRが炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基となる単量体(Bm1)としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
また、前記式(14)におけるR及び/又はRとなる炭素数3〜10の環状の炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基などの芳香族基が挙げられる。
【0061】
更に、前記式(14)におけるRとRとが互いに結合して形成された、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を有する3〜10員環の単環式ヘテロ環を形成している単量体(Bm1)としては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0062】
単量体(Bm1)としては、前記各種単量体のなかでも、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリンが好ましい。これらの好ましい単量体を用いて得られた重合体(B)は、酸発生剤(A)から発生された酸の酸転写用膜内における不要な拡散をより効果的に防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止して得られるパターンの解像度を更に向上させることができる。
【0063】
重合体(B)中に占める前記式(1)で表される構成単位の割合は、特に限定されないが、重合体(B)の全構成単位を100モル%とした場合に1〜50モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることが特に好ましい。重合体(B)に占める前記式(1)で表される構成単位の割合が前記範囲内では、酸発生剤(A)から発生された酸の酸転写用膜内における不要な拡散をより効果的に防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止して得られるパターンの解像度を更に向上させることができる。
【0064】
〈2−2〉構成単位(2)
前記重合体(B)は、前記式(1)で示される構成単位以外に他の構成単位を含むことができる。他の構成単位としては、下記式(2)に示す構成単位が好ましい。
【化17】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【0065】
前記式(2)に示す構成単位は、どのようにして重合体(B)内に含まれたものであってもよいが、通常、下記式(15)で表される単量体(Bm2)を用いることにより、前記式(2)に示す構成単位を含む重合体(B)を得ることができる。
【0066】
【化18】

〔式(15)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【0067】
前記式(15)におけるRの1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;
【0068】
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の芳香族炭化水素基(特に炭素数6〜20の芳香族炭化水素基);
【0069】
ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシシクロペンチル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシアルキル基(特に炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基);
【0070】
シアノ基;シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、1−シアノプロピル基、2−シアノプロピル基、3−シアノプロピル基、1−シアノブチル基、2−シアノブチル基、3−シアノブチル基、4−シアノブチル基、3−シアノシクロペンチル基、4−シアノシクロヘキシル基等のシアノアルキル基;などの窒素原子含有有機基(特に炭素数2〜9の窒素原子含有有機基)
【0071】
シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状炭化水素基;ボルニル基、イソボルニル基などの橋かけ環式炭化水素基;などの脂環式基が挙げられる。
尚、前記式(15)におけるRは、後述する酸解離性基(X)であってもよいが、Rは酸解離性基でないことが好ましい。
【0072】
単量体(Bm2)としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの(メタ)アクリレート化合物のなかでは、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0073】
重合体(B)中に占める前記式(2)で表される構成単位の割合は、特に限定されないが、重合体(B)の全構成単位を100モル%とした場合に5〜99モル%であることが好ましく、10〜97モル%であることがより好ましく、15〜95モル%であることが特に好ましい。重合体(B)に占める前記式(2)で表される構成単位の割合が前記範囲内では、酸発生剤(A)から発生された酸の酸転写用膜内における不要な拡散を防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止して得られるパターンの解像度を向上させることができる。
【0074】
〈2−3〉他の構成単位
重合体(B)は、前記式(1)に示す構成単位、及び、前記式(2)に示す構成単位以外の他の構成単位を含むことができる。他の構成単位の種類は特に限定されず本発明の目的を阻害しない範囲であればよい。この他の構成単位を含む場合、その割合は、特に限定されないが、重合体(B)の全構成単位を100モル%とした場合に30モル%以下であることが好ましく、1〜10モル%であることがより好ましい。この範囲内では本発明の目的を阻害することがない。
【0075】
また、前記式(1)に示す構成単位、及び、前記式(2)に示す構成単位、の両方が含まれる場合であって、且つ、他の構成単位が含有される場合、前記式(1)に示す構成単位、及び、前記式(2)に示す構成単位、の各々の含有割合は、前記式(1)に示す構成単位と前記式(2)に示す構成単位との合計を100モル%とした場合に、前記式(1)に示す構成単位は1〜50モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることが特に好ましい。この範囲では、酸発生剤(A)から発生された酸の酸転写用膜内における不要な拡散をより効果的に防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止して得られるパターンの解像度を更に向上させることができる。
【0076】
また、前記重合体(B)の分子量については特に限定はなく、適宜選定することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量分子量(以下、「Mw」という。)は、通常、1,000〜500,000であり、好ましくは2,000〜400,000であり、更に好ましくは3,000〜300,000である。
更に、重合体(B)の前記Mwと、GPCで測定したポリスチレン換算数分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)についても特に限定はなく、適宜選定できるが、通常、1〜10であり、好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜3である。
【0077】
〈3〉ケトン系溶剤(C)
前記「ケトン系溶剤(C)」は、前記酸発生剤(A)及び前記重合体(B)の両方に対して溶剤として機能し、下記式(16)に示す構造を有する成分である。
【化19】

〔式(16)中、R及びRは互いに結合した炭素数5〜9の2価の環状炭化水素基であるか、又は、R及びRは各々独立した炭素数1〜6の1価の炭化水素基である。〕
溶剤(C)としてケトン系溶剤を用いた場合には、他の溶剤を用いる場合に比べて本組成物中から溶剤をより容易に除去できる。特にプレベークを行うことでとりわけ簡単且つ十分に溶剤を除去できる。このため、得られる酸転写用膜内の残留溶剤量が低減され、酸発生剤(A)及び重合体(B)がより機能し易い膜内環境を形成でき、露光により発生された酸の不必要な拡散が抑制されると共により均一な酸拡散性が得られる。この結果、優れた面内寸法均一性(面内での寸法忠実性)を得ることができる。
【0078】
前記ケトン系溶剤(C)のうち、R及びRが互いに結合した炭素数5〜9の2価の環状炭化水素基である環状ケトン化合物としては、シクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン及びイソホロン等が挙げられる。これらの環状ケトン化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
一方、前記ケトン系溶剤(C)のうち、R及びRが各々独立した炭素数1〜6の炭化水素基であるケトン化合物(非環状ケトン化合物)としては、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、3
−メチル−2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等が挙げられる。これらのケトン化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、前記環状ケトン化合物及び前記ケトン化合物(非環状ケトン化合物)は各々単独で用いてもよく併用してもよい。
【0079】
これらの観点から前記ケトン系溶剤(C)のなかでは、環状ケトン化合物が好ましく、更には、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンが好ましく、なかでもとりわけシクロヘキサノンが好ましい。これらの好ましいケトン系溶剤は、前記ケトン系溶剤のなかでも、他の必要特性を備えると共に、高い蒸気圧を有し、プレベーク後の残留溶剤量を特に効果的に低減させることができる。
【0080】
更に、ケトン系溶剤(C)の含有量は特に限定されないが、前記重合体(B)を100質量部とした場合に、通常、10〜10000質量部であり、20〜8000質量部が好ましく、30〜6000質量部がより好ましく、40〜4000質量部が更に好ましい。
更に、酸転写用組成物全体の粘度は特に限定されず、酸転写用組成物を塗布する方法等により適宜の粘度とすればよいが、例えば、温度25℃おける粘度を1〜100mPa・sとすることができる。この粘度は2〜80mPa・sが好ましく、3〜50mPa・sがより好ましい。
【0081】
本組成物には、前記ケトン系溶剤以外に、前記ケトン系溶剤と共に他の溶剤(C’)を併用することができる。他の溶剤(C’)は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記他の溶剤(C’)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0082】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、tert−ブチル−メチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−ブチルプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル、シクロペンチルプロピルエーテル、シクロペンチル−2−プロピルエーテル、シクロヘキシルプロピルエーテル、シクロヘキシル−2−プロピルエーテル、シクロペンチルブチルエーテル、シクロペンチル−tert−ブチルエーテル、シクロヘキシルブチルエーテル、シクロヘキシル−tert−ブチルエーテル等のアルキルエーテル類;
【0083】
1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−プロパノール、ネオペンチルアルコール、tert−アミルアルコール、イソアミルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルキルアルコール類;
デカン、ドデカン、ウンデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;
その他、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等を挙げることができる。
【0084】
前記他の溶剤(C’)のなかでは、γ−ブチロラクトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0085】
〈4〉界面活性剤(D)
本酸転写用組成物には、酸発生剤(A)、重合体(B)及びケトン系溶剤(C)及び他の溶剤(C’)以外にも他の成分を含有できる。他の成分としては、界面活性剤(D)が挙げられる。界面活性剤(D)としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0086】
具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等の他、NBX−7、NBX−8、NBX−15(商品名、ネオス社製)、SH8400 FLUID(商品名、Toray Dow Corning Silicone Co.製)、KP341(商品名、信越化学工業株式会社製)、ポリフローNo.75,同No.95(商品名、共栄社化学株式会社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(商品名、トーケムプロダクツ株式会社製)、メガファックスF171、F172、F173、F471、R−07、R−08(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、FC431(商品名、住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC−101、SC−102、SC−103、SC−104、SC−105、SC−106(商品名、旭硝子株式会社製)等を挙げることができる。尚、これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
この界面活性剤(D)を用いる場合、その量は特に限定されないが、通常、前記重合体(B)の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部であり、好ましくは0.02〜0.1質量部である。
【0087】
〈5〉増感剤(E)
本酸転写用組成物には、酸発生剤(A)、重合体(B)、ケトン系溶剤(C)、他の溶剤(C’)及び界面活性剤(D)以外にも他の成分を含有できる。他の成分としては、増感剤(E)が挙げられる。
増感剤(E)の種類は特に限定されず、例えば、チオキサントン(チオキサンテン−9−オン)又はその誘導体、アントラセン又はその誘導体等を用いることができる。これらの増感剤(E)は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの増感剤(E)のなかでも、チオキサントン又はその誘導体が好ましく、特に下記式(20)で表されるチオキサントン又はその誘導体が好ましい。下記式(20)に示す増感剤(E)が重合体(B)と併用されることで、特に優れた光増感性が得られる。
【化20】

〔式(20)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
【0088】
前記式(20)の「R」と「R」及び「n」と「m」は各々同じであってもよく、異なっていてもよい。前記式(20)のR及びRのアルキル基は、直鎖のアルキル基であってもよく、分枝のアルキル基であってもよく、環状のアルキル基であってもよい。また、このアルキル基の炭素数は特に限定されないが、直鎖又は分枝のアルキル基である場合の炭素数は1〜14であることが好ましく、環状のアルキル基である場合の炭素数は4〜20であることが好ましい。
【0089】
前記炭素数1〜14の直鎖又は分枝のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−及びi−)、ブチル基(n−、i−及びt−)、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖又は分子のアルキル基が挙げられる。また、前記炭素数は4〜20の環状アルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、式(20)中のハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0090】
前記式(20)で表される増感剤(E)の具体例としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン{下記式(20−1)}、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン{下記式(20−2)、式(20−2)中のEtはエチル基を示す}、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、1−クロロ−4−イソプロピルチオキサントン{下記式(20−3)}、2−シクロヘキシルチオキサントン{下記式(20−4)}等が挙げられる。これらの中でも2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−イソプロピルチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントンが好ましい。
【0091】
【化21】

【0092】
増感剤(E)の含有量は特に限定されないが、酸転写用膜(第2膜)としての酸転写性を十分に確保する観点から、通常、酸発生剤(A)100質量部に対して、1〜500質量部が含有される。更に、増感剤(E)と酸発生剤(A)との組合せによるより優れた酸転写性を確保する観点から、この含有量は10〜300質量部であることが好ましく、20〜200質量部であることがより好ましく、30〜150質量部であることが特に好ましい。
【0093】
〈6〉その他の成分
本酸転写用組成物には、酸発生剤(A)、重合体(B)、ケトン系溶剤(C)、他の溶剤(C’)、界面活性剤(D)及び増感剤(E)以外にも他の成分を含有できる。即ち、例えば、酸転写樹用組成物には、架橋剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、着色剤、可塑剤、消泡剤等を適宜配合することができる。
【0094】
[2]酸転写用膜
本発明の酸転写用膜は、前記本発明の酸転写用組成物を用いてなることを特徴とする。
即ち、本発明の酸転写用膜は、少なくとも酸発生剤(A)と重合体(B)とケトン系溶剤(C)とを含む組成物から得られる膜である。これらの酸発生剤(A)及び重合体(B)については、前記各々記載をそのまま適用できる。
本酸転写用膜は、酸転写用組成物を用いて形成されてなればよく、どのような方法により膜化されたものであってもよい。即ち、例えば、前記ケトン系溶剤(C)を含有する酸転写用組成物を塗布した後、ケトン系溶剤(C)の一部又は全部除去することで酸転写用膜を得ることができる。
ケトン系溶剤(C)の除去方法は特に限定されず、例えば、加熱除去、減圧除去、自然放散除去等が挙げられ、これらは併用することもできる。
【0095】
[3]パターン形成方法
本発明のパターン形成方法は、図1に例示するように、
(I)酸解離性基を有する樹脂を含有し、且つ感放射線性酸発生剤を含有しない第1樹脂膜10上に、本発明の酸転写用組成物を用いてなる酸転写用膜としての第2樹脂膜20を形成する第2樹脂膜形成工程と、
(II)マスク30を介して前記第2樹脂膜20に露光し、前記第2樹脂膜20に酸を発生させる露光工程と、
(III)前記第2樹脂膜20に発生した前記酸を前記第1樹脂膜10に転写する酸転写工程と、
(IV)前記第2樹脂膜20を除去する第2樹脂膜除去工程と、をこの順に備えることを特徴とする。
【0096】
[3−1]第2樹脂膜(酸転写用膜)形成工程(I)
第2樹脂膜形成工程(I)は、第1樹脂膜(被パターン化樹脂膜)上に第2樹脂膜(酸転写用膜)を形成する工程である。
〈1〉第1樹脂膜(被パターン化樹脂膜)
前記「第1樹脂膜」は、酸解離性基を有する樹脂(以下、単に「酸解離性基含有樹脂」ともいう)を含有し、且つ感放射線性酸発生剤を含有しない樹脂膜である。そして、通常、第1樹脂膜は、アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性であり、酸解離性基含有樹脂から酸解離性基が解離することでアルカリ可溶性となる。ここでいう「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性」とは、酸解離性基含有樹脂のみを用いた被膜を後述する実施例におけるアルカリ現像条件下で現像した場合に、当該被膜の初期膜厚の50%以上が残存する性質を意味する。一方、「アルカリ可溶性」とは前記条件において50%を越えて溶解される性質を意味する。
【0097】
更に、第1樹脂膜は、パターン化される前の樹脂膜(即ち、被パターン化樹脂膜)と、パターン化された後のパターン樹脂膜(即ち、パターン)と、を含む意味である。即ち、第1樹脂膜は、(I)〜(VI)の各工程を経ることで、酸が転写された部分と、酸が転写されていない部分と、からなる「パターン」となる。更に、必要に応じて現像工程(V)を行うことで、前記酸が転写された部分が除去されることによって、酸が転写されてない部分と、除去された部分(例えば、層下に基板を備える場合には基板の表面が露出された部分)と、からなる「パターン」を形成できる。
【0098】
前記「酸解離性基」は、酸の存在下で解離する基であり、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基中の水素原子を置換する基を意味する。この酸解離性基としては、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基や、アルコキシ置換メチル基、アルキルスルファニル置換メチル基、下記式(17)で表される基(以下、「酸解離性基(17)」という。)等を挙げることができる。
【0099】
【化22】

〔式(17)において、各Rは相互に独立に炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数3〜20の非有橋式若しくは有橋式の1価の脂環式基を示すか、或いは何れか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に、炭素数3〜20の非有橋式若しくは有橋式の2価の脂環式基を形成し、残りのRが炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数3〜20の非有橋式若しくは有橋式の1価の脂環式基を示し、これらの各基は置換されていてもよい。〕
【0100】
前記アルコキシ置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基等を挙げることができる。
【0101】
また、前記アルキルスルファニル置換メチル基としては、例えば、メチルスルファニルメチル基、エチルスルファニルメチル基、メトキシエチルスルファニルメチル基、n−プロピルスルファニルメチル基、n−ブチルスルファニルメチル基、n−ペンチルスルファニルメチル基、n−ヘキシルスルファニルメチル基、ベンジルスルファニルメチル基等を挙げることができる。
【0102】
式(17)において、Rの炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、I-プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等を挙げることができる。
【0103】
前記アルキル基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルコキシル基(例えば、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)等の1個以上或いは1種以上を挙げることができる。
【0104】
また、式(17)のRの炭素数3〜20の非有橋式若しくは有橋式の1価の脂環式基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、テトラシクロ[4.2.0.12,5.17,10]ドデシル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
【0105】
式(17)のRの前記1価の脂環式基及び何れか2つのRが相互に結合して形成した前記2価の脂環式基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等)、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシメチル基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルコキシル基(例えば、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数2〜14の直鎖状若しくは分岐状のシアノアルキル基(例えば、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等)、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)等の1個以上或いは1種以上を挙げることができる。
【0106】
酸解離性基(17)の具体例としては、t−ブチル基、下記式(17−1)〜(17−20)(但し、各mは0〜2の整数である。)で表される基等を挙げることができる。
【0107】
【化23】

【0108】
【化24】

【0109】
【化25】

【0110】
【化26】

【0111】
また、酸解離性基は、酸解離性基含有樹脂内においてどのように含まれていてもよいが、下記式(18)で表される構成単位(以下、単に「酸解離性基含有単位」ともいう)の一部として含まれることが好ましい。
【化27】

〔式(18)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Xは酸解離性基を示す。〕
【0112】
酸解離性基含有単位は、どのように酸解離性基含有樹脂内に含まれたものであってもよいが、例えば、酸解離性基を有する単量体を用いて、酸解離性基含有樹脂を重合することにより得ることができる。即ち、酸解離性基を有する単量体としては、例えば、t−ブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−ブチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−フェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、2−t−ブトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、2−ベンジルオキシカルボニルエチル(メタ)アクリレート、2−メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−オキソブチル(メタ)アクリレート、2−ベンジルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
酸解離性基含有単位の割合は特に限定されないが、酸解離性基含有樹脂の全構成単位を100モル%とした場合に、5〜95モル%であることが好ましく、10〜90モル%であることがより好ましく、15〜80モル%であることが特に好ましい。酸解離性基含有樹脂に占める酸解離性基含有単位の割合が前記範囲内では十分な露光マージン(露光余裕度)を確保できる。
【0114】
また、酸解離性基含有樹脂は、通常、他の構成単位を有する。他の構成単位としては、フェノール性水酸基等の酸性基を有する構成単位が挙げられる。酸解離性基含有樹脂が酸性基を有する構成単位を含むことにより、第1樹脂膜の現像液に対する溶解性を調整できる。フェノール性水酸基を有する構成単位を与える単量体としては、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。これらのフェノール性水酸基含有化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0115】
前記酸解離性基含有樹脂が、フェノール性水酸基含有化合物に由来する構成単位を有する場合、その割合は特に限定されないが、酸解離性基含有樹脂の全構成単位を100モル%とした場合に1〜50モル%であることが好ましく、3〜45モル%であることがより好ましく、5〜40モル%であることが特に好ましい。酸解離性基含有樹脂に占めるフェノール性水酸基含有化合物に由来する構成単位の割合が前記範囲内では、前記現像工程(V)を行う場合の現像液に対する溶解性(アルカリ溶解性)を調整することができる。
【0116】
また、第1樹脂膜を構成する酸解離性基含有樹脂の量は特に限定されないが、第1樹脂膜全体を100質量%とした場合に、酸解離性基含有樹脂は、10〜99.9質量%であることが好ましく、30〜99.9質量%であることがより好ましく、50〜99.9質量%であることが更に好ましい。第1樹脂膜に占める酸解離性基含有樹脂の割合が前記範囲内では、前記現像工程(V)を行う場合の現像液に対する溶解(アルカリ溶解)コントラストをつけることができる(現像液に対する溶解差をつけることができる)
【0117】
酸解離性基含有樹脂が重合性不飽和単量体の重合により或いは該重合を経て製造される場合、当該樹脂は、重合性不飽結合を2つ以上有する多官能性単量体に由来する構成単位及び/又はアセタール性架橋基によって分岐構造を導入することができる。このような分岐構造を導入することにより、酸解離性基含有樹脂の耐熱性を向上させることができる。
この場合、酸解離性基含有樹脂中の分岐構造の導入率は、該分岐構造やそれが導入される樹脂の種類により適宜選定することができるが、全構成単位に対して10モル%以下であることが好ましい。
【0118】
酸解離性基含有樹脂の分子量については特に限定はなく、適宜選定することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量分子量(以下、「Mw」という。)は、通常、1,000〜500,000、好ましくは2,000〜400,000、更に好ましくは3,000〜300,000である。
酸解離性基含有樹脂のMwとGPCで測定したポリスチレン換算数分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)についても特に限定はなく、適宜選定することができるが、通常、1〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜5である。
【0119】
酸解離性基含有樹脂の製造方法については特に限定はないが、例えば、予め製造したアルカリ可溶性樹脂中の酸性基に1種以上の酸解離性基を導入する方法;酸解離性基を有する1種以上の重合性不飽和単量体を、場合により他の重合性不飽和単量体と共に、重合する方法;酸解離性基を有する1種以上の重縮合性成分を、場合により他の重縮合性成分と共に、重縮合する方法等によって製造することができる。
アルカリ可溶性樹脂を製造する際の重合性不飽和単量体の重合及び酸解離性基を有する1種以上の重合性不飽和単量体の重合は、使用される重合性不飽和単量体や反応媒質の種類等に応じて、ラジカル重合開始剤、アニオン重合触媒、配位アニオン重合触媒、カチオン重合触媒等の重合開始剤或いは重合触媒を適宜に選定し、塊状重合、溶液重合、沈澱重合、乳化重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合等の適宜の重合形態で実施することができる。
また、酸解離性基を有する1種以上の重縮合性成分の重縮合は、好ましくは酸性触媒の存在下、水媒質中又は水と親水性溶媒との混合媒質中で実施することができる。
【0120】
この第1樹脂膜はどのように形成してもよいが、通常、液状の第1樹脂膜形成用組成物を、基板などの表面に塗布し、乾燥させることにより形成される。前記第1樹脂膜形成用組成物は、前記酸解離性基含有樹脂に加えて、溶剤を含有することで組成物全体を液状とすることができる。
この溶剤としては、前記ケトン系溶剤(C)及び他の溶剤(C’)をそのまま適用できる。溶剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、第1樹脂膜形成用組成物と酸転写用組成物との各々含有される溶剤は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0121】
第1樹脂膜形成用組成物に溶剤が含有される場合、前記酸解離性基含有樹脂を100質量部とした場合に、通常、10〜10000質量部含有され、20〜8000質量部が好ましく、30〜6000質量部がより好ましく、40〜4000質量部が更に好ましい。
更に、第1樹脂膜形成用組成物全体の粘度は特に限定されず、第1樹脂膜脂膜形成用組成物を塗布する方法等により適宜の粘度とすればよいが、例えば、温度25℃おける粘度を1〜100mPa・sとすることができる。この粘度は2〜80mPa・sが好ましく、3〜50mPa・sがより好ましい。
【0122】
また、第1樹脂膜形成用組成物には、前記溶剤以外にも他の成分を含有できる。他の成分としては、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、前記界面活性剤(D)をそのまま適用できる。界面活性剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、第1樹脂膜形成用組成物と酸転写用組成物との各々に含有される界面活性剤は同じであってもよく異なっていてもよい。
第1樹脂膜形成用組成物に界面活性剤が含有される場合、その量は特に限定されないが、通常、前記酸解離性基含有樹脂の全量100質量部に対して0.01〜1質量部であり、好ましくは0.02〜0.8質量部である。
更に、その他、第1樹脂膜形成用組成物には、架橋剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、着色剤、可塑剤、消泡剤等を適宜配合することができる。
【0123】
前記第1樹脂膜は、どのような部材の表面に形成されてもよいが、通常、各種基板の表面に形成される。前記基板の材質(少なくとも表面の材質)としては、例えば、シリコン、各種金属(アルミニウム等)、各種金属(アルミニウム等)スパッタ膜、アルミナ、ガラスエポキシ、紙フェノール、ガラス等が挙げられる。更に、基板の厚さは、通常、1000〜10000nmである。
更に、形成された第1樹脂膜の厚さは特に限定されないが、通常、1〜1000nmであり、5〜500nmとすることが好ましく、10〜100nmとすることが更に好ましい。
【0124】
また、第1樹脂膜形成用組成物の塗布手段は、特に限定されないが、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段が挙げられる。
更に、第1樹脂膜形成用組成物を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)することによって塗膜中の溶剤を揮発させることで第1樹脂膜を形成してもよい。このプレベークの加熱条件は、第1樹脂膜形成用組成物の配合組成によって適宜選択されるが、加熱温度は、通常、30〜150℃程度、好ましくは50〜130℃である。更に、加熱時間は、通常、30〜300秒間、好ましくは60〜180秒間である。
【0125】
〈2〉第2樹脂膜(酸転写用膜)
前記「第2樹脂膜(酸転写用膜)」は、第1樹脂膜10上に形成される樹脂膜であって、本発明の酸転写用組成物を用いてなる酸転写用膜である。この第2樹脂膜は、前述の通り、本酸転写用組成物を用いてなるため、露光により第2樹脂膜内で酸発生剤(A)に酸を発生させることができる。これにより、発生された酸は第1樹脂膜内に選択的に拡散されつつ、その全面に均一に拡散されることとなる。加えて、重合体(B)の作用により第2樹脂膜内における不要な酸の拡散は防止され、第1樹脂膜に対する意図しない酸転写を防止できる。
【0126】
そして、後述する転写工程を行うことで、第2樹脂膜内の酸は、必要に応じて第1樹脂膜へ転写することができる。第1樹脂膜へ転写された酸は、第1樹脂膜に含まれる酸解離性基含有樹脂から酸解離性基を解離させ(保護基を脱離し)、第1樹脂膜の当該部分(第1樹脂膜の酸転写部分)をアルカリ可溶性とすることができる。その結果、第1樹脂膜には、アルカリ可溶性部位とアルカリ非可溶性部位とが存在したパターンが形成される。更に、その後、必要に応じて第1樹脂膜をアルカリ現像液等を用いて現像することで、アルカリ可溶性部位が除去され、アルカリ非可溶性部位のみからなるパターンを形成することもできる。
【0127】
この第2樹脂膜を形成する方法は特に限定されず、前記酸転写用組成物の塗布手段は、特に限定されないが、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段が挙げられる。
更に、酸転写用組成物を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)することによって塗膜中の溶剤を揮発させることで第2樹脂膜(酸転写用膜)を形成してもよい。このプレベークの加熱条件は、酸転写用組成物の配合組成によって適宜選択されるが、加熱温度は、通常、30〜150℃程度、好ましくは50〜130℃である。更に、加熱時間は、通常、30〜300秒間、好ましくは60〜180秒間である。
また、第1樹脂膜上に形成された第2樹脂膜の厚みは特に限定されないが、通常、1〜10000nmとすることが好ましく、5〜800nmとすることがより好ましく、10〜500nmとすることが更に好ましい。
【0128】
[3−2]露光工程(II)
露光工程(II)は、マスクを介して前記第2樹脂膜に露光し、前記第2樹脂膜に酸を発生させる工程である。これにより図1に例示するように、第2樹脂膜20の露光された部位が酸発生部位21となる。
露光に使用される放射線の種類は特に限定されず、前記第2樹脂膜に含まれる酸発生剤の種類に応じて、紫外線、遠紫外線(KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー等を含む)、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。更に、露光量等も前記第2樹脂膜に含まれる酸発生剤の種類に応じて適宜選択される。
【0129】
[3−3]酸転写工程(III)
酸転写工程(III)は、前記第2樹脂膜に発生した前記酸を前記第1樹脂膜に転写する工程である。これにより図1に例示するように、前記酸発生部位21に対応した第1樹脂膜10の一部が酸転写部位11となる。
この酸を転写する方法は特に限定されないが、具体的には、(1)加熱により転写する方法、(2)常温において放置することによって転写する方法、(3)浸透圧を利用して転写する方法などが挙げられる。これらの方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらの中でも(1)加熱により転写する方法が転写効率に優れるため好ましい。
加熱により転写を行う場合の加熱条件は、特に限定されないが、加熱温度は、50〜200℃が好ましく、70〜150℃が更に好ましい。更に、加熱時間は、30〜300秒間が好ましく、60〜180秒間が更に好ましい。
また、加熱により転写を行う場合は、前記加熱条件により1回の加熱で完了してもよいが、結果的に前記加熱条件と同様の結果となるように、2回以上の加熱を行うこともできる。
【0130】
尚、前記(2)常温において放置することによって転写する方法とは、加熱を行わず、通常、温度20〜30℃の常温の環境に放置することで、第2樹脂膜内に発生された酸を自然に第1樹脂膜へと拡散させて転写する方法である。
更に、前記(3)浸透圧を利用して転写する方法とは、酸の濃度差を利用することによって、第2樹脂膜と第1樹脂膜との間に酸成分の浸透圧差を生じさせることで、自然拡散よりも高い拡散速度で第2樹脂膜内の酸を第1樹脂膜へと拡散させる転写方法である。
【0131】
[3−4]第2樹脂膜(酸転写用膜)除去工程(IV)
第2樹脂膜除去工程(IV)は、前記第2樹脂膜を除去する工程である。即ち、第2樹脂膜を除去すると共に、その層下に酸が転写された第1樹脂膜を露出させる工程である。
前記除去はどのような方法で行ってもよいが、通常、第2樹脂膜を有機溶剤により溶解させて行う。この有機溶剤は、第2樹脂膜は溶解させるものの、酸が転写された第1樹脂膜は溶解させないものである。
【0132】
このような有機溶剤は、第2樹脂膜及び第1樹脂膜の各樹脂組成によって適宜選択することが好ましく、第1樹脂膜が溶解されず且つ第2樹脂膜が溶解される有機溶剤であれば限定されない。具体的には、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン及びピリジン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0133】
本発明のパターン形成方法では、前記第2樹脂膜工程(I)〜前記第2樹脂膜除去工程(IV)の一連の工程をこの順で行うことで、酸が転写された部分と、酸が転写されていない部分と、からなるパターンとなる。そして、必要に応じて、更に、現像工程(V)を行うことができる。現像工程(V)を行った場合には、前記(IV)までの工程で得られた酸が転写された部分(図1内の11)が、第1樹脂膜(図1内の10)から除去され、第1樹脂膜の残部と第1樹脂膜が除去された部分とからなるパターンが形成される。
【0134】
[3−5]現像工程(V)
現像工程(V)は、前記第2樹脂膜除去工程の後に、前記第1樹脂膜をアルカリ性現像液を用いて現像する工程である。即ち、図1に例示するように、第1樹脂膜10内に形成された酸転写部位11を除去してパターンを得る工程である。
【0135】
前記アルカリ性現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶媒に溶解した溶液が挙げられる。
アルカリ性現像液に含まれるアルカリ性化合物の濃度は特に限定されないが、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%が更に好ましい。
【0136】
また、前記アルカリ性現像液を構成する溶媒は特に限定されないが、水及び/又は有機溶媒が挙げられる。このうち有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、前記アルカリ性現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0137】
本発明のパターン形成方法では、この現像工程(V)以外の工程を備えなくてもよいが、他の工程を備えることもできる。他の工程としては、現像工程の後に第1樹脂膜(第1樹脂膜のうちの酸が転写された部位が除去された後、残存された部位)を水洗する水洗工程等が挙げられる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら制約されるものではない。尚、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0139】
[1]第1樹脂膜形成用組成物の調製
酸解離性基含有樹脂を形成する単量体として、酸解離性基を有する単量体にビス−(4−メトキシフェニル)−ベンジルアクリレート、フェノール性水酸基を有する単量体にp−イソプロペニルフェノール、その他の単量体にp−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート及びフェノキシポリエチレングリコールアクリレートを用いた。
【0140】
そして、各単量体のビス−(4−メトキシフェニル)−ベンジルアクリレート20g(全単量体100モル%に対して9モル%)、p−イソプロペニルフェノール30g(全単量体100モル%に対して37モル%)、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド20g(全単量体100モル%に対して19モル%)、ヒドロキシエチルアクリレート20g(全単量体100モル%に対して28モル%)、及びフェノキシポリエチレングリコールアクリレート10g(全単量体100モル%に対して7モル%)と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)120gと、を混合して攪拌し、均一な溶液に調製した。その後、得られた溶液を30分間窒素ガスによりバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4g添加し、窒素ガスによるバブリングを継続しながら、反応温度を70℃に維持して3時間重合を行った。次いで、更にAIBN1gを添加して3時間反応した後、100℃で1時間反応させて、重合を終了した。その後、得られた反応溶液と多量のヘキサンと混合し、反応溶液内の生成物を凝固させた。次いで、凝固された生成物をテトラヒドロフランに再溶解した後、再度ヘキサンにより凝固させる操作を数回繰り返して未反応モノマーを除去し、減圧下50℃で乾燥して酸解離性基含有樹脂を得た。
得られた酸解離性基含有樹脂の収率は95%であり、Mwは15,000であり、Mw/Mnは2.5であった。
【0141】
その後、得られた酸解離性基含有樹脂(100質量部)、界面活性剤としてNBX−15〔ネオス社製〕(0.05質量部)、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(2000質量部)を混合し、攪拌により均一な溶液とした後、この溶液を孔径0.5μmのカプセルフィルターでろ過して第1樹脂膜形成用組成物を得た。
【0142】
尚、前記合成における測定及び評価は下記の要領で行った。更に、後述する各合成においても同様である。
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、4000HXL1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。
【0143】
[2]酸転写用組成物の調製(実施例1〜11及び比較例1〜7)
(1)重合体(B)
<重合体B1>
本合成例1は、前記式(1)で表される構成単位を導入するための単量体(Bm1)として下記式(19)で表されるN,N−ジメチルアクリルアミドを用い、前記式(2)で表される構成単位を導入するための単量体(Bm2)としてメチルメタクリレートを用いた例である。
【化28】

【0144】
500mLビーカー中にN,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Bm1、株式会社興人製)5g(単量体Bm1と単量体Bm2との合計を100モル%とした場合に5モル%)、メチルメタクリレート(単量体Bm2、三菱マテリアル株式会社製)95g(単量体Bm1と単量体Bm2との合計を100モル%とした場合に95モル%)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)3.0gを仕込み、重合開始剤が溶解するまで攪拌し均一な溶液を得た。別途、窒素置換したドライアイス/メタノール還流器の付いたフラスコ中に、シクロヘキサノン(溶媒)150gを仕込み、ゆるやかに攪拌を開始し80℃まで昇温した。その後、80℃にて、前記溶液を2時間かけて少量ずつ連続滴下した。滴下後、更に80℃にて3時間重合を行い、その後、100℃に昇温して1時間攪拌を行って重合を終了した。その後、得られた反応溶液を多量のシクロヘキサン中に滴下して生成物を凝固させた。次いで、得られた凝固物を水洗後、凝固物と同質量のテトラヒドロフランに再溶解し、多量のシクロヘキサンに滴下して再度凝固させた。この再溶解及び凝固を行うサイクルを計3回行った後、得られた凝固物を40℃で48時間真空乾燥して重合体B1を得た。
得られた重合体B1の収率は90%であり、Mwは9,000であり、Mw/Mnは2.5であった。重合体B1は前記式(1)に示す構成単位を有する樹脂である。
【0145】
<重合体B2>
本合成例2は、前記合成例1におけるN,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Bm1、株式会社興人製)を10g(単量体Bm1と単量体Bm2との合計を100モル%とした場合に10モル%)、メチルメタクリレート(単量体Bm2、三菱マテリアル株式会社製)90g(単量体Bm1と単量体Bm2との合計を100モル%とした場合に90モル%)、として前記合成例1と同様に行って重合体B2を得た。
得られた重合体B2のMwは10,000であった。重合体B2は前記式(1)に示す構成単位を有する樹脂である。
【0146】
<重合体B3>
本合成例3は、前記合成例1におけるN,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Bm1、株式会社興人製)を20g(単量体Bm1と単量体Bm2との合計を100モル%とした場合に20モル%)、メチルメタクリレート(単量体Bm2、三菱マテリアル株式会社製)80g(単量体Bm1と単量体Bm2との合計を100モル%とした場合に80モル%)、として前記合成例1と同様に行って重合体B3を得た。
得られた重合体B3のMwは9,000であった。重合体B3は前記式(1)に示す構成単位を有する樹脂である。
【0147】
重合体B1〜重合体B3における各単量体の配合の関係は、以下の通りである。
【表1】

【0148】
(2)他成分との混合
酸発生剤(A)として、下記酸発生剤A1〜A3を用いた。
酸発生剤A1〔下記式(5)〕;みどり化学株式会社製、品名「NAI−100」
【化29】

酸発生剤A2〔下記式(6)〕;みどり化学株式会社製、品名「NAI−101」
【化30】

酸発生剤A3〔下記式(7)〕;みどり化学株式会社製、品名「NAI−106」
【化31】

【0149】
また、重合体(B)として、前記重合体B1〜3を用いた。
更に、溶剤(C)として下記ケトン系溶剤C1を用い、他の溶剤(C’)として下記溶剤C2及び溶剤C3を用いた。
溶剤C1;シクロヘキサノン
溶剤C2;γ−ブチロラクトン
溶剤C3;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
また、添加剤〔界面活性剤(D)〕として、JSR株式会社製の商品名「ダイナフロー」を用いた。
また、増感剤(E)として、下記式(20−1)に示す2−イソプロピルチオキサントン(Lambson Ltd製、品名「SPEEDCURE ITX」を用いた。
【化32】

【0150】
これらの4成分又は5成分を表2に示す配合となるように、酸発生剤A1〜A3(100〜200質量部)、重合体B1〜B3(100質量部)、溶媒(1600〜1800質量部)、界面活性剤(0.05質量部)、増感剤(43質量部)を混合し、攪拌により均一な溶液とした。この溶液を孔径0.5μmのカプセルフィルターでろ過して18種類の各酸転写用組成物(実験例1〜11及び比較例1〜7)を得た。
【0151】
【表2】

【0152】
[3]パターンの形成
(1)第1樹脂膜形成工程
4インチシリコン基板の表面にスピンコーターを用いて、前記[1]で得られた第1樹脂膜形成用組成物を塗布した。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱して、厚さ200nmの第1樹脂膜を形成した。
【0153】
(2)酸転写膜形成工程(I)
前記(1)で得られた第1樹脂膜の表面にスピンコーターを用いて、前記[2]で得られた実験例1〜10及び比較例1〜7のいずれかの酸転写膜形成用組成物を塗布した。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱して、厚さ150nmの酸転写膜を形成した。
【0154】
(3)露光工程(II)
パターンマスクを介して、前記(2)で得られた酸転写膜の表面に、超高圧水銀灯(OSRAM社製、形式「HBO」、出力1,000W)を用いて100〜1000mJ/cmの紫外光を照射した。露光量は、照度計〔株式会社オーク製作所製、形式「UV−M10」(照度計)に、形式「プローブUV−35」(受光器)をつないだ装置〕により確認した。
【0155】
(4)酸転写工程(III)
前記(3)までに得られた積層体をホットプレート上にて、110℃で1分間加熱処理を行った。
【0156】
(5)酸転写膜除去工程(IV)
前記(4)までに得られた積層体をアセトニトリルに30秒間浸漬して、酸転写用膜のみを除去した。
【0157】
(6)現像工程(V)
前記(5)までに得られた積層体を、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に室温で1分間浸漬して現像を行った。その後、流水洗浄し、窒素ブローを行ってパターンを得た。
尚、以下、このパターンが形成された基板を「パターニング基板」という。
【0158】
[4]溶解性評価
各実施例1〜11及び比較例1〜7(表2に示す組成比で混合・攪拌した溶液、但しろ過する前の溶液である)の各組成物を観察して溶解性評価を行った。溶解性とは、前記混合及び撹拌を行った後、1時間以上静置した後(ろ過前)の組成物の透明性で評価される。この評価では、溶け残りない組成物を「○」、溶け残りが見られ、組成物が透明でない場合を「×」として評価した。この結果を表3に示した。
【0159】
[5]感度評価
前記パターニング基板を光学顕微鏡で観察し、感度評価を行った。ここで、感度とはライン/スペース=50/50μmのパターンが残渣なく解像する最小露光量を指し、その露光量を「最適露光量」とした。その結果を表3に示した。
【0160】
[6]寸法評価
前記最適露光量で処理したパターニング基板を走査型電子顕微鏡で観察し、ライン/スペース=50/50μmのパターンの寸法を測定した。ここで、寸法評価とは、測定寸法のマスク寸法からのズレで評価され、0〜5μmを「○」、5μm以上を「×」として評価した。その結果を表3に示した。
【0161】
[7]面内寸法均一性評価
前記最適露光量で処理したパターニング基板を走査型電子顕微鏡で基板全面を観察し、200箇所あるライン/スペース=50/50μmのパターンの寸法を測定した。測定寸法のマスク寸法からのズレを測定し、そのズレが0〜5μm(つまり、前記寸法評価で「○」のパターン)の数と、そのズレが5μm以上(つまり、前記寸法評価で「×」のパターン)の数をカウントし、基板全面に形成されたパターン全体中、そのズレが0〜5μmのパターンの割合(%)を測定した。また、この面内寸法均一性は、そのズレが0〜5μmのパターンの割合が70%以上の場合を「○」とし、70%未満の場合を「×」として評価し、その結果を表3に示した。
【表3】

【符号の説明】
【0162】
(I);第2樹脂膜(酸転写用膜)形成工程、
(II);露光工程、
(III);転写工程、
(IV);第2樹脂膜(酸転写膜)除去工程、
(V);現像工程、
10;第1樹脂膜(被パターン化樹脂膜)、11;酸転写部位、
20;第2樹脂膜(酸転写用膜)、21;酸発生部位、30;マスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感放射線性酸発生剤、
(B)含窒素基を有する重合体、及び、
(C)ケトン系溶剤、を含有することを特徴とする酸転写用組成物。
【請求項2】
前記(B)重合体として下記式(1)に示す構成単位を有する重合体を含有する請求項1に記載の酸転写用組成物。
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは互いに結合して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を有する3〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【請求項3】
前記(B)重合体を100質量部とした場合に、前記(C)ケトン系溶剤を10〜10000質量部含有する請求項1又は2に記載の酸転写用組成物。
【請求項4】
前記(B)重合体は、下記式(2)に示す構成単位を有する請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物。
【化2】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【請求項5】
前記(A)感放射線性酸発生剤は、イミドスルホネート基を有する感放射線性酸発生剤である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物。
【請求項6】
更に、(E)増感剤を含有する請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物。
【請求項7】
前記(E)増感剤が、下記式(20)に示す化合物である請求項6に記載の酸転写用組成物。
【化3】

〔式(20)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物を用いてなることを特徴とする酸転写用膜。
【請求項9】
(I)酸解離性基を有する樹脂を含有し、且つ感放射線性酸発生剤を含有しない第1樹脂膜上に、
請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の酸転写用組成物を用いてなる酸転写用膜としての第2樹脂膜を形成する第2樹脂膜形成工程と、
(II)マスクを介して前記第2樹脂膜に露光し、前記第2樹脂膜に酸を発生させる露光工程と、
(III)前記第2樹脂膜に発生した前記酸を前記第1樹脂膜に転写する酸転写工程と、
(IV)前記第2樹脂膜を除去する第2樹脂膜除去工程と、をこの順に備えることを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−191409(P2010−191409A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278940(P2009−278940)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】