説明

金属および乳酸縮合物から構成される物質および電子部品

本発明は、銅、銀、および金の群から選択される金属と乳酸縮合物とを含む物質、ならびに金属、セラミック、または酸化物でできた表面を有する電子部品、ならびに電子部品上に金属表面を生成するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属および乳酸縮合物を含む物質、ならびに当該物質を含む被覆を有する電子部品に関する。
【0002】
本発明は、特に、酸化物表面上、特にセラミック表面上、または金属上、特にアルミニウム、銅、銀、金、またはニッケル上に金属被覆を生成すること、および金属下塗りの生成のための下塗り、ならびに物体を取り付けるためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
下塗りの生成のための公知の方法は、公知の薄膜法、例えば、スパッタリングまたは真空蒸着、公知の厚膜法、例えば、スクリーン印刷および電着(galvanischen Abscheidungen)である。この電着および薄膜法は、基本的には、装置および手順に起因して費用がかかる。厚膜技術は実際簡単であるが、高温を必要とし、それゆえ温度に敏感な基材、例えば、プラスチック類についての金属被覆方法としては排除される。
【0004】
J.J.Berzeliusによる化学に関する教科書(第3版、第6巻、ドレスデンおよびライプツィヒ、1837年)は、137/138頁に銀および銅の乳酸塩を記載している。
【0005】
銅、銀、および金は硬ろうである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、250℃、特に300℃という温度負荷に耐えない電気部品の表面上で温和に作用する銅、銀、および金を含む金属被覆を提供すること、または銅、銀、または金によって温和な条件下で物体を取り付けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、150℃〜300℃、特に200℃〜250℃で金属へと分解する下塗剤が提供される。
【0008】
当該目的は、独立請求項によって成し遂げられる。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によれば、銅、銀、または金の金属または金属化合物および乳酸誘導体に基づく下塗剤は、金属被覆の生成のための下塗剤として堆積され、150℃〜300℃の間での付与後、所望の金属被覆へと変換される。本発明によれば、このようにして10〜50μmの間、特に20〜30μmの層の厚さを有するとりわけ接着性の金属被覆が、とりわけ容易に実現されうる。耐熱性のプラスチック類、例えば、フッ素重合体またはポリイミドにさえ、本発明に係る金属被覆を与えることができる。さらには、厚膜技術を用いては別の金属上への金属の堆積が実現できないが本発明を用いると実現できる複数の応用例、例えばアルミニウム上への銀の付与、がある。
【0010】
当該下塗剤の基礎を形成する物質は、特に、銅、銀、または金の溶液またはコンパウンド(複合物)である。この場合、中でも、銅または銀に基づく物質は水溶性である。当該乳酸誘導体は縮合物である。1つの金属原子あたり4つの乳酸誘導体単位の比がとりわけ適切である。
【0011】
本発明に係る被覆剤、特に下塗剤の製造のために、金属または金属化合物が、粘性が高いまたはペースト様の塊が生成されるまで100℃より上で乳酸水溶液と煮沸される。これは、物質(とりわけガラス、セラミック、およびアルミニウム)の金属被覆に適している金属コンパウンド、特に銀コンパウンドのとりわけ簡単な製造である。
【0012】
本発明に係る被覆剤は、熱伝導性もしくは電気伝導性の接点の生成または導体片の生成のための焼結前の金属(特に銀)の表面間の接着剤として適している。
【0013】
放熱体は、本発明に従って被覆されたDCBのセラミック上に、焼結によって容易に付与される。
【0014】
シリコンウェーハの被覆は問題なく実施される。とりわけ光起電物質に対しては、シリコンウェーハ上のアルミニウム表面の、本発明に係る被覆は、銅または銀の小さいバンドとの接触を簡単にする。
【0015】
ガラスはんだ(Glasloten)の本発明に係る被覆は、ガラスおよび金属の連結を簡単にする。
【0016】
ガラス繊維の金属被覆は簡単になる。このようにして、伝導性のセルロース、糸、および布地の簡単な製造が可能になる。
【0017】
さらには、本発明に係る金属溶液は、とりわけアクリレートおよびシアン酸エステル用の硬化剤として適している。
【0018】
さらには、本発明に係る物質は、とりわけアクリレートおよびシアン酸エステル用の硬化剤として適している。本発明に係るCu、Ag、およびAuのコンパウンドは100℃より上でのみ分解し、それゆえ保存に対して安定な態様でポリマーベース物質と混合することができる。この硬化効果は、必要な場合にのみ、温度の上昇によって開始される。
【0019】
350℃より下での、特に300℃より下での乳酸誘導体の分解により本発明に従って可能とされた金属表面の簡単な生成は、新しい接合技術を切り開く。これまで400℃より上で硬ろうとして使用されていた銅、銀、または金に基づく金属は、本発明によれば、軟質はんだ条件下で使用することができる。従って、典型的な軟質はんだの代わりに、軟質はんだ加工にとってはこれまで異質であった金属、特に銅、銀、または金の高百分率をもつスズ合金も、軟質はんだの条件下で使用することができる。
【実施例】
【0020】
以下では、本発明は、実施例を参照して明らかにされる。
【0021】
銅粉末または酸化銅粉末を乳酸水溶液の中で煮沸すると、透明な緑色溶液が生成し、これはもはや水溶性でなくなるまで180℃で加熱される。この水不溶性の銅含有塊は、金属被覆の生成のために、電気部品のセラミック表面上に下塗りとして印刷される。この印刷物は乾燥され、銅による金属被覆が存在するまで200℃〜250℃の間で、とりわけ保護気体のもとで、アニールされる。
【0022】
銀粉末または酸化銀粉末を乳酸水溶液の中で煮沸する際、この混合物は、水不溶性の、黄色の粘性が高い溶液または流動性のあるペースト様の塊として200℃まで加熱される。銀含有量は、20〜25重量%に等しい。過剰の銀成分は、溶けないで残る。
【0023】
この銀被覆剤は、PTFE、ポリイミド、ガラス、酸化アルミニウムでできたセラミック基材、ならびにAl、Cu、Ag、Si、およびNiでできた表面を有する基材でできたプレート上に付与され、280℃での付与後、銀による金属被覆へと分解する。この金属被覆は、それぞれの支持体に非常にしっかりと接着する。その支持体がこれまでは軟質はんだではんだ付けできなかったとしても、この銀による金属被覆は、軟質はんだではんだ付け可能である。この銀による金属被覆上で、さらなる金属ペーストが付与された。それらを用いて、それまでは緩やかであった2つの部品の間に、機械的にしっかりとしたかつ熱伝導性および電気伝導性のコンパウンドが生成される。
【0024】
銀ラクチドは、硬化させるために、アクリレート、エポキシド、ラクチド、またはシアネートの、樹脂への重合のための硬化剤として加えられる。これらの混合物は、保存できるほどに安定である。硬化は120℃より上、とりわけ180℃より上の温度で起こる。
【0025】
金被覆剤は、金化合物を乳酸水溶液の中で煮沸することにより生成され、この際、当該混合物を300℃に加熱することによって溶液が最初に生成し、この溶液は水不溶性の、流動性のある塊へと変換する。金含有量は20〜30重量%に等しく、最大でも金:乳酸単位の化学量論比 1:4までである。
【0026】
この水不溶性の金被覆剤は、PTFE、ポリイミド、ガラス、酸化アルミニウムでできたセラミック基材、ならびにAl、Cu、Ag、およびNiでできた表面を有する基材でできたプレート上に付与され、200℃〜300℃の間での堆積後、金による金属被覆へと分解する。この金属被覆は、それぞれの支持体に非常にしっかりと接着する。この金による金属被覆上で、さらなる金属ペーストを付与した。それらを用いて、それまでは緩やかであった2つの部品の間に、機械的にしっかりとしたかつ熱伝導性および電気伝導性のコンパウンドが生成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、銀、および金の群から選択される金属と、乳酸縮合物とを含む物質。
【請求項2】
前記物質は溶液またはコンパウンドである、請求項1に記載の物質。
【請求項3】
前記物質は、ラクチドまたはジラクチドまたはポリラクチドである、請求項1または請求項2に記載の物質。
【請求項4】
前記物質は、1つの金属原子あたり4つの誘導体化された乳酸単位を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物質。
【請求項5】
金属、セラミック、または酸化物でできた表面を有する電子部品であって、その表面は請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物質で被覆されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項6】
前記電子部品は、300℃よりも高い温度で損傷を受ける、請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
電子部品上に金属表面を生成するための方法であって、金属粉末または前記金属の化合物の粉末としての前記金属は、水および乳酸とともに、水の沸点より上で、粘性が高いまたはペースト様の生成物へと変換され、この粘性が高いまたはペースト様の生成物は前記部品表面上に付与され、付与された層は金属層へと変換されることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記金属は銀、銅、金の群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属は、150℃〜300℃の間で前記基材表面上へと付与される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属接触のための下塗りとしての、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物質の使用。
【請求項11】
物体の連結のための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物質の使用。
【請求項12】
ポリマーの硬化剤としての、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物質の使用。

【公表番号】特表2012−500893(P2012−500893A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523346(P2011−523346)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005992
【国際公開番号】WO2010/020400
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(592153805)ヴェー・ツェー・ヘレウス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】W.C. Heraeus GmbH & Co. KG.
【Fターム(参考)】