説明

金属ストリップを被覆する方法およびその方法を実行するための装置

本発明は、被酸化性金属または被酸化性金属合金または金属酸化物の層を、亜鉛または亜鉛合金で予め被覆された金属ストリップ上に真空中で蒸着すること、被覆された金属ストリップを巻回すること、亜鉛または亜鉛合金層のすべてまたは一部において、被酸化性金属または被酸化性金属合金の拡散によって形成された合金の層を上部に含むコーティングを有するストリップを得るために、巻回された金属ストリップに静的拡散処理を適用することを含む金属ストリップを被覆する方法に関する。本発明は、また、前記方法を実行するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップを被覆する方法に関し、より詳細には亜鉛系の層および被酸化性金属元素系の層で鋼ストリップを被覆することを対象とし、決してそれに限定されない。
【背景技術】
【0002】
鋼ストリップなどの金属面に、金属層、異なる金属のいくつかの連続層、または金属合金からなる金属コーティングを付着する様々な方法が知られている。これらの中で、溶融亜鉛めっき、電気めっき、および様々な真空蒸着方法(蒸着、マグネトロンスパッタリングなど)が挙げられる。
【0003】
特定の生成物は技術的理由またはさらに経済的理由のためにいくつかの層として付着される必要があり、所望の特性を備えた合金を得るために拡散熱処理を受ける必要がある。これは、例えば、純亜鉛コーティングまたは他の亜鉛合金のコーティングを有利に置換することができる亜鉛マグネシウムコーティングの場合である。
【0004】
拡散熱処理は、複雑、高価であることが分かっている。拡散熱処理は、熱処理の間に高温によって促進される酸化反応を防ぐために、大量の不活性ガスを使用することを伴っていてもよい。さらに、被酸化性元素の付着とその拡散処理との間でいかなる酸化の危険性を回避するために、外気にストリップを露出することなく2つの操作について一方の操作の直後に他方の操作を実行することが必要である。
【0005】
さらに、連続熱処理ラインは、拡散に必要な時間と不適合な速度で走行する。
【0006】
第1の解決法は、適度な温度で作動する連続処理装置を製造することにあり、装置を長くすると拡散を起こすのに必要な時間を可能とするが、この装置は、それゆえに、かさばり、高価であり、必ずしも既存の製造ラインにそれを設置するのに十分な空間があり得るとは限らない。このように、亜鉛コーティングが1.5μmの厚みでマグネシウムの層で被覆されるために、拡散を成し遂げるために300℃、50秒を必要とすることを試験は示し、それは、150mの長さが、ストリップが180m/minで走行するその温度で維持されることを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのような大きさの装置は容易に受け入れられず、したがって、工業的実施では、より短い連続処理装置を使用して、より高温を想定することが必要である。このように、亜鉛コーティングが1.5μmの厚みでマグネシウムの層で被覆されるために、拡散時間を約10秒に限定することが可能であり、それは、30mの長さが、金属ストリップが180m/minで走行する温度で維持されることを示す。しかしながら、350から360℃が到達されるとすぐに、コーティングは溶融し、共晶相を通り、コーティングの特性が損なわれる結果となるので、この種の動的拡散処理用の作動時間枠は非常に狭い。したがって、ストリップが160から180m/minで走行する高性能ラインで方法を操作することは非常にやりにくい。さらに、関係するエネルギーはより高く、自動車産業において広く使用されている焼き付け硬化種などの特定種の鋼の処理は、それらの特性がそのような熱処理によって損なわれるので不可能とされる。
【0008】
さらに、装置の大きさを小さくすることによってでさえ、実行される処理長は、連続処理装置がストリップ支持ローラまたはストリップデフレクターを設ける必要があり、それらは、形成された層の品質を低下しないように冷却、設計される必要があるので複雑、高価であり、特に、ストリップがローラに貼りつく場合に何かが起こり得る。
【0009】
したがって、本発明の目的は、亜鉛または亜鉛合金および被酸化性金属または被酸化性金属合金系のコーティングで被覆された金属ストリップを製造する方法を提供することによって、先行技術の方法の欠点を改善することであり、それは、エネルギーをほとんど消費せず、不活性ガスをほとんど消費しないまたは消費せず、実行することは容易であり、コンパクトで、様々な種類の金属基材が処理されることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明の第1の主題は、金属ストリップを被覆する方法によってなされ、被酸化性金属または被酸化性金属合金の層が、亜鉛または亜鉛合金で予め被覆された金属ストリップ上に真空蒸着され、被覆された金属ストリップは次いで巻かれ、巻回コイルは、亜鉛または亜鉛合金層のすべてまたは一部において、被酸化性金属または被酸化性金属合金の拡散によって形成された合金の層を上部に含むコーティングを有するストリップを得るように静的拡散処理を受ける。
【0011】
本発明による方法は、様々な任意の特徴を含んでいてもよく、それらは個々にまたは組み合わせてとられる:
コーティングは、亜鉛または亜鉛合金層にわたる被酸化性金属または被酸化性金属合金の拡散によって形成された合金の層のみを含む、
コーティングは、亜鉛または亜鉛合金からなる下部と、亜鉛または亜鉛合金層の一部に被酸化性金属または被酸化性金属合金の拡散によって形成された合金の層からなる上部とを含む、
金属ストリップは溶融亜鉛めっき方法によって亜鉛または亜鉛合金で予め被覆されている、
金属ストリップは電気めっき方法によって亜鉛または亜鉛合金で予め被覆されている、
金属ストリップは真空蒸着方法によって亜鉛または亜鉛合金で予め被覆されている、
金属ストリップは、厚みが0.5から15μm、好ましくは0.5から7.5μm、特に好ましくは0.5から5μmである亜鉛または亜鉛合金層で予め被覆されている、
亜鉛または亜鉛合金が被覆された金属ストリップは、真空蒸着によってマグネシウムまたはマグネシウム合金で被覆される、
マグネシウム層が0.2から5μmの厚みで、好ましくは0.2から2μmの厚みで真空蒸着によって蒸着される、
組成ZnMgが場合によりZn11Mg化合物を含む合金の層は、静的拡散アニールの間に形成される、
被酸化性金属または金属合金で被覆された金属ストリップ上のコーティングは、前記静的拡散処理を受ける前に表面上で酸化される、
金属ストリップのコイルは、200℃より低い温度で4から40時間加熱される、
金属ストリップは鋼ストリップであり、焼き付け硬化鋼からなっていてもよい。
【0012】
本発明の第2の主題は、本発明による方法を実行するための装置によってなされ、装置は:
前記金属ストリップを亜鉛めっきするための装置と、その後の、
真空蒸着コーティング装置と、
制御された雰囲気で作動する静的熱処理装置とを備える。
【0013】
本発明による装置は、次の変形も含んでいてもよく、個々にまたは組み合わせてとられる:
亜鉛めっき装置は溶融亜鉛めっき装置である、
亜鉛めっき装置は電気亜鉛めっき装置である、
亜鉛めっき装置は真空蒸着亜鉛めっき装置である。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は次の説明を読むことで明らかとなり、例としてのみ付与される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】重さが2トンである鋼コイルを処理するための実際の熱サイクルの例を示す。
【図2】コイルによって受けた熱サイクルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による方法は、より詳細には、亜鉛または亜鉛合金で被覆された鋼ストリップの処理に適用されるが、それのみではない。用語「亜鉛合金」は、少なくとも50%の亜鉛を含み、場合により、例えば、アルミニウム、鉄、シリコンなどを含む任意の化合物を示す。
【0017】
被覆されたストリップは、例えば、溶融亜鉛めっき、電気めっきまたは真空蒸着を問わず任意の亜鉛めっき方法によって得られてもよい。しかしながら、電気めっきによってまたは真空蒸着によって被覆されたストリップは、コーティング厚みが鋼コイルの全面にわたって一定であることが好ましい。
【0018】
コーティングの厚みは0.5から15μmであることが好ましい。これは、0.5μmより小さいと、ストリップの腐食保護が不十分であるという危険性があるからである。コーティングの厚みはストリップの最終用途に応じて15μm以下とすることができるが、コーティングの厚みは一般的に7.5μm未満であり、特に自動車産業で要求される耐食性のレベルを有するためには7.5μmを越えることは不要である。
【0019】
もちろん、本発明による方法は、任意の被覆された金属基材が、後の熱処理の間に取り返しがつかないほど特性が損なわれない傾向で使用されてもよい。このように、本発明による方法は、特に、固溶体に大量の炭素を含む焼き付け硬化鋼ストリップに適用されてもよく、炭素は、打抜き加工または他の適切な方法によって、ストリップが形成操作を受ける前に完全に析出されてはならない。本発明による熱処理は、その低温レベルにもかかわらず、これらの種に存在する固溶体中の炭素のほんの一部を析出するが、拡散後の表面加工硬化(スキンパス)処理が、これらの種の特性を回復し、先行技術の方法では可能ではないということである。このように、低温で静的アニールサイクルを実行することによって、熱処理をほとんどの冶金と適合させるようにすることは可能である。
【0020】
亜鉛または亜鉛合金が被覆された金属ストリップは、まず、真空蒸着方法によって被酸化性金属または被酸化性合金の層で被覆される。特に、マグネトロンスパッタリング、冷間プラズマ蒸着および真空蒸着方法が挙げられてもよく、本発明は決してそれらに限定されない。
【0021】
そのような方法を使用することによって、特に、被酸化性金属または金属合金の非常に薄い層を、好ましくは0.2から5μmの厚みで蒸着することが可能になる。さらに、そのようなコーティング方法は、ストリップを加熱することなく、したがって基材と亜鉛層との間でいかなる不適当な拡散をストリップに施すことなくこのさらなる層が蒸着されることを可能にする。
【0022】
被酸化性金属または金属合金の蒸着は金属コイルで始まって従来どおり実行され、金属コイルを蒸着室に通す前に巻き出される。ストリップは、この蒸着室を通り、ここで、コーティングが蒸着され、次いで、蒸着室を出て、再び従来どおり巻かれる。
【0023】
被酸化性金属は、特にマグネシウムからなっていてもよく、マグネシウムは、金属ストリップの表面コーティングにおいて亜鉛に添加される場合に金属ストリップの耐食性を非常に向上するという利点を有する。ほとんどの用途では、マグネシウムの厚みは、この耐食性の相当な改良のために2μmに限定されてもよい。
【0024】
したがって、この蒸着ステップ後、金属ストリップは、亜鉛または亜鉛合金層で被覆され、その上に被酸化性金属または合金の層がある。ストリップが巻かれ、次いで不活性にされることなく保存されるので、前記ストリップの最外面は急速に空気中の酸素との接触で酸化し、したがって酸化層を形成する。
【0025】
本発明者らは、このとき、巻き出されていない金属コイルに対して静的アニール操作を実行することを試み、それによって、被酸化性元素が亜鉛または亜鉛合金層の上部に完全かつ正確に拡散することが可能となった。非常に驚いたことに、酸化層は、当業者が予期したことに反して、少しもこの拡散を妨げなかった。
【0026】
さらに、まさにこの酸化層は、巻回コイルが拡散熱処理の間にともに貼りつくことを防ぐことに好都合であることが分かった。
【0027】
もちろん、最終保護層を蒸着することによって、コーティング操作と熱処理との間での移送および保存の間の酸化から金属ストリップを保護することはやはり可能である。しかしながら、実行された実験室の試験は、この保護が不要であることを示した。
【0028】
静的アニールは、酸化または非酸化雰囲気であり得る雰囲気で従来の箱アニール装置で実行される。
【0029】
特に、本発明者らは、空気などの酸化雰囲気でのアニール処理がストリップの表面色に特定の不均質が現われることを防ぐことを示した。
【0030】
被覆されていない金属コイルの冶金アニールの場合のように、温度昇降速度は、金属コイル内で受けられた温度不均質に応じて適応される必要がある。温度が上昇する間の時間、浸漬時間および冷却持続時間などの実行される熱サイクルの他の特性も、所望の最高温度レベルに応じて決まる。したがって、図1は、重さが2トンである鋼コイルを処理するための実際の熱サイクルの例を示す。この図は、静的熱処理装置用のバーナーの温度設定および制御を示す。温度上昇は14時間にわたってなされた後、170℃に到達し、その後、加熱は停止され、コイルは30時間の全処理時間後に55℃まで徐々に冷却されることが分かる。
【0031】
この種のアニールの持続時間は一般的に4から40時間に及ぶので、到達された最高温度は一般的に200℃未満になる。これによって、過剰に高い温度上昇に敏感であり、連続アニールを受けることができない多くの鋼種または金属種を処理することが可能となる。これは、連続アニール操作の間の高い走行速度のために、保持温度がはるかに高いからである。
【0032】
静的拡散サイクルが、様々な温度、および巻回間の様々なレベルの締め上げ(tightening)で実行された。これらの様々なレベルの締め上げは、通常範囲の巻回応力よりはるかに優るとともに、コイル上の熱処理の間に受けた正常範囲の圧力よりはるかに優って、巻回間に貼りつかないことを示した。
【0033】
これらの静的拡散熱処理による板は、完全または部分的拡散が場合に応じて、拡散された生成物およびコーティングの表面での意図された合金の形成を正確に示す。
【0034】
実施例1
電気めっきによって2.5μmの亜鉛の層で被覆された焼き付け硬化鋼ストリップの15トンのコイルが、次いで、蒸着によって1μmのマグネシウムの層で被覆された。ストリップは、次いで、特定の保護なしで外気で数日を費やして、最外面上に酸化マグネシウム層の形成がもたらされた。
【0035】
金属ストリップは、次いで、160℃で静的アニール処理が施されて、マグネシウムを亜鉛中に拡散させた。
【0036】
静的アニールの間に使用される不活性ガスは、窒素/水素混合物であり、低炭素鋼のアニールのために従来どおり使用されたものと同一であった。非酸化不活性ガスが使用されたので、金属コイルの酸化は熱処理の間に観察されなかった。
【0037】
図2は、コイルによって受けた熱サイクルを示す。この図は、炉内部のガスの温度変化、鋼コイルの様々な点の温度変化をも示し、特に最熱点および最冷点を含む。
【0038】
温度上昇がおよそ14時間にわたって実行されることが分かる。160℃の浸漬温度での保持が約2時間続き、その間にマグネシウム拡散が起こった。実際には、そのような浸漬保持は、単に炉をオフし、コイルをその中に放置することによって得られる。70℃の温度への冷却は8時間続いた。このように、全サイクル時間は約24時間であった。冷却を開始するために、コイルは炉から取り除かれ、冷却ベルの下に設置されて、これらの冷却条件が制御されることが可能となる。
【0039】
このように、マグネシウムはすべて、第1の層を形成する亜鉛の一部と合金にされ、亜鉛サブ層およびZn−Mg合金上部層を有するコーティングが得られた。コイルの最熱点とコイルの最冷点との温度差は、拡散速度の差が数パーセントに限定されることを表し、コーティング特性に対して著しい変化をもたらさない。必要であると分かれば、この拡散速度が完全に一定とされることが可能なように、冷却前の温度浸漬時間を適応することも可能である。
【0040】
実施例2
実施例1と同一の方法で、焼き付け硬化鋼ストリップの2つの15トンのコイルA、Bは、上記のように使用されたものと同一であり、これらは電気めっきによって2.5μmの亜鉛の層で被覆され、次いで、真空蒸着によって1μmのマグネシウムの層で被覆された。各ストリップは、次いで、特定の保護なしで外気に放置され、最外面上に酸化マグネシウム層の形成をもたらした。
【0041】
各金属ストリップは、次いで、同じ静的アニール装置内で、160℃で静的アニール処理が次々に施されて、マグネシウムを亜鉛中に拡散させた。コイルが受けた熱サイクルは、実施例1と同じであり、唯一の処理の相違は、コイルBのアニールのために選択された雰囲気の種類であった。
【0042】
コイルA
コイルAの静的アニールの間に使用されるガスは、実施例1において記載されたものと同一の不活性窒素/水素混合物であった。熱処理の間の金属コイルの酸化の点と同じ結果が観察されることができた。
【0043】
さらに、実施例1において、静的アニール処理後の金属ストリップの色は均一の薄い灰色であったのに対して、この場合には、より暗いハローがストリップの縁部に現われた。ストリップの軸に沿った色は、実施例1において観察されたものに比べて変化がなかった。電子顕微鏡観察は、明るいゾーンでは、ストリップの表面に存在するマグネシウム微結晶が非常に鋭く明確な六角形の幾何学的形状を有することを示した。対照的に、暗いゾーンでは、ストリップの表面に存在するマグネシウム微結晶は変形され、不規則な縁部を有していた。
【0044】
補完的な研究から、明るいゾーンと暗いゾーンとの間で化学的見地から大きな相違を少しも明らかにされなかった。
【0045】
したがって、このわずかな色の不均質は、極めて高い確実性で、暗いゾーンにおけるストリップ表面上のマグネシウム微結晶の変形によるものであり、これらの微結晶は光を様々に散乱し、視覚効果が観察される。
【0046】
研究のパラメータのすべて(鋼ストリップ、亜鉛およびマグネシウムコーティング、アニールの熱特性および雰囲気)が、実施例1のものとの関連で変更されなかったので、微結晶の変形の原因は、アニール装置自体によると分かる。特に、装置は、進行中の製造戦略(campaign)に応じて、例えば、圧延油燃焼に由来する残留炭素などの可変量の汚染種を含む可能性がある。さらに、色欠陥の形状は、縁部から始まる振動の形態で残り、アニール雰囲気に含まれたガス種の巻回間の拡散によって引き起こされる効果があると仮定する。したがって、アニール雰囲気における汚染剤の存在が、温度勾配効果と組み合わされて、ストリップを横断して、観察された現象を説明することができた。
【0047】
コイルB
コイルBの静的アニールの間に使用されるガスは空気であった。熱処理の間に金属コイルの酸化について観察された効果は、コイルAおよび実施例1の場合に観察されたものと同じであった。
【0048】
しかしながら、この場合、色欠陥は現われなかった。ストリップは実施例1において観察されたものと同一の均一な軽い灰色を有していた。さらに、電子顕微鏡観察は、コイルAの明るいゾーンと同様に、ストリップの表面に存在するマグネシウム微結晶が非常に鋭く明確な六角形の幾何学的図形を有することを示していた。
【0049】
コイルA、Bは同じアニール装置内で次々に処理されたので、後の実験での唯一独特の要素はアニール雰囲気であり、他のすべてのパラメータ(鋼ストリップ、亜鉛およびマグネシウムコーティング、アニールの熱特性)は変化がなかった。したがって、熱処理が空気中で実行されたということは、コイルA上で観察された色欠陥の外観の原因である熱化学的効果を無効にする効果を有していた(汚染物質の除去など)。
【0050】
このように、工業用装置での拡散熱処理の場合に、アニール雰囲気としての不活性ガスの代わりに空気などの酸化ガスを使用することによって、汚染物質(例えば、装置の以前の使用から発生する)の存在による熱化学的効果を無効にすることが可能となり、場合により、最終製品での色欠陥の外観の原因となることが示された。したがって、特に、不活性なしで本発明による方法を実行することが可能である。
【0051】
本発明は、複雑で高価なオンザラン拡散装置に投資する必要なしに、多層を蒸着することによって合金を含むコーティングを製造することを可能にする。したがって、コーティングラインで要求される空間は、ライン構成でアニールを実行するための装置用のものよりも約50%少ない。したがって、本発明は、製造量が少ない場合またはスタートアップ曲線が長く遅い場合に、既存の製造ラインに適用される新製品に特に適切である。
【0052】
本発明は、連続ラインに適用される必要があるより、より長い時間、より低温の静的熱処理を使用する。本発明は、拡散を実行するためにコンパクトな手段が使用されることを可能にする。本発明は、不活性ガスの消費を最小限または除去し、拡散サイクルの温度を低下させることによって1トン当たりのエネルギー消費(および電力設備)を最小限にし、それによって処理を広範囲の鋼製品および鋼種と適合させる。
【0053】
本発明は、箱アニール装置または同様の製造手段の使用が、最終製品を製造するために必要な合金化を実行することを可能にする。既存の箱アニール手段を使用することによって、(蒸着および熱処理を含む投資にかかる)投資コストを約30%低減し、このようにして、より短い耐用年数またはより低い累積体積の新製品に投資し、市場に出すことを決定することが可能である。
【0054】
方法を組み合わせることによって、革新的な多層コーティングを製造することが可能である。これらは、拡散熱処理と組み合わせて、被覆された製品に有利な表面特性を付与する合金を生み出すことができる。
【0055】
そのとき、新しい製造工場を建設するまたは既存の製造工場を補完することが必要である。2番目の場合は、既存装置を使用して既に蒸着された金属を合金と組み合わせる条件で、および装置が新しい製造を提供するための空間および容積の点から利用可能である条件でより適切である。
【0056】
本発明は、特に、亜鉛マグネシウムコーティングを得ることを目的とするが、これらのコーティングに限定されず、本発明は、被酸化性金属または被酸化性合金系の任意のコーティングを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップを被覆する方法であって、被酸化性金属または被酸化性金属合金の層が、亜鉛または亜鉛合金で予め被覆された金属ストリップ上に真空蒸着され、被覆された金属ストリップが次いで巻かれ、巻回コイルが、亜鉛または亜鉛合金層のすべてまたは一部において、被酸化性金属または被酸化性金属合金の拡散によって形成された合金の層を上部に含むコーティングを有するストリップを得るように静的拡散処理を受ける、方法。
【請求項2】
静的拡散処理が酸化雰囲気で巻回コイルに行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
静的拡散処理が非酸化雰囲気で巻回コイルに行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属ストリップが溶融亜鉛めっき方法によって亜鉛または亜鉛合金で予め被覆されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金属ストリップが電気めっき方法によって亜鉛または亜鉛合金で予め被覆されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
金属ストリップが真空蒸着方法によって亜鉛または亜鉛合金で予め被覆されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
金属ストリップが、厚みが0.5から15μmである亜鉛または亜鉛合金層で予め被覆される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
亜鉛または亜鉛合金が被覆された金属ストリップが、真空蒸着によってマグネシウムまたはマグネシウム金属で被覆される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マグネシウム層が0.2から5μmの厚みで真空蒸着によって蒸着される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
組成ZnMgが場合によりZn11Mg化合物を含む合金の層が、静的拡散アニールの間に形成される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
被酸化性金属または金属合金で被覆された前記金属ストリップ上のコーティングが、前記静的拡散処理を受ける前に表面上で酸化される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
200℃より低い温度で加熱することによって、4から40時間、金属ストリップの前記コイルに拡散熱処理が施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
金属ストリップが鋼ストリップである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
金属ストリップが焼き付け硬化鋼からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって被覆された金属ストリップを製造するための装置であって、
前記素地金属ストリップを亜鉛めっきするための装置と、その後の、
真空蒸着コーティング装置と、
制御された雰囲気で作動する静的熱処理装置とを含む、装置。
【請求項16】
前記亜鉛めっき装置が溶融亜鉛めっき装置である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記亜鉛めっき装置が電気亜鉛めっき装置である、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記亜鉛めっき装置が真空蒸着亜鉛めっき装置である、請求項15に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−515574(P2011−515574A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547218(P2010−547218)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000181
【国際公開番号】WO2009/118466
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510215651)
【Fターム(参考)】