説明

金属充填方法および金属充填装置

本発明は、ワークを溶融金属中に挿入してワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法であって、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行い、ワークを溶融金属から取り出す際、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上85°未満の傾斜をつけて行うことを特徴とする金属充填方法である。ワークを溶融金属中に挿入する際、または、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワークが割れてしまうという不具合を防止し、更に、ワークを溶融金属から取り出した後に、金属がワーク表面に残ってしまうという不具合を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ワークを溶融金属中に挿入してワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法および金属充填装置である。
【背景技術】
例えば、シリコンICチップ等の製造工程で、半導体基板(シリコン基板等)に、ビアホールを形成する場合、基板に該基板を貫通(または非貫通)する孔を形成し、この孔に、溶融金属を充填し、これを冷却、固化させることで電極(導体)を形成する方法が広く採用されている。
また、本出願人は、高アスペクト比の微細孔への溶融金属の充填を効率良く行うための方法として、例えば、後述の特許文献1の技術を既に出願している。この方法は、減圧環境下で、ワークを溶融金属中に挿入してワークを溶融金属に浸し、加圧(圧力を、溶融金属へのワーク挿入時よりも高くする。例えば、大気圧)して、ワークに形成されている微細孔に金属を充填し、その後、ワークを溶融金属から取り出す金属充填方法である(例えば、特開2002−158191号公報参照。)。
しかしながら、上記従来技術においては、ワークを溶融金属中に挿入する際、および、ワークを溶融金属から取り出す際、共に、ワーク表面の溶融金属液面に対する角度を平行状態のままで行っていた。
これにより、板厚の薄いワークの場合には、ワークを溶融金属中に挿入する際やワークを溶融金属から取り出す際に、ワークが溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという問題が生じていた。
また、従来技術では、ワークを溶融金属から取り出した後に、ワーク表面に残る金属残渣の除去も問題となっていた。
本発明は、上記課題を解決するものであり、ワークを溶融金属中に挿入する際、または、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワークが割れてしまうという不具合を防止し、更に、ワークを溶融金属から取り出した後に、金属がワーク表面に残ってしまうという不具合を防止することを目的とする。
【発明の開示】
上記目的を達成するため、本発明は、板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法であって、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うことを特徴とする金属充填方法である。
この方法によれば、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属中に挿入する際に、溶融金属から受ける押圧力(ワークが溶融金属を押すことで、その反力としてワークに作用する押圧力)によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。
また、本発明は、板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法であって、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上85°未満の傾斜をつけて行うことを特徴とする金属充填方法である。
この方法によれば、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属から取り出す際に、溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。更に、ワークを溶融金属から取り出した後に、金属がワーク表面に残ってしまうという不具合を防止できる。
また、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク表面を溶融金属液面に対して、85°未満の傾斜をつけて行うので、ワークに形成されている微細孔に充填されている金属が流れ出てしまう不具合を防止できる。
また、本発明は、板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法であって、ワーク下面を溶融金属液面に対して傾斜をつけた状態で、ワークを溶融金属中に挿入し始め、挿入動作が進むにつれて、徐々に、ワーク下面の溶融金属液面に対する角度を平行状態に近づけ、その後、ワーク上面を溶融金属液面に対して、徐々に傾斜をつけながら、ワークを溶融金属から取り出していくことを特徴とする金属充填方法である。
この方法によれば、溶融金属を貯留する槽(溶融金属槽)における溶融金属の貯留量が少なくても、ワークを溶融金属に浸すことができ、金属を溶融するヒータによる温度制御が容易になる。また、チャンバの小型化も図れるため、チャンバ内の圧力(気圧)の制御が容易になる等の利点もある。
また、本発明は、ワークを溶融金属から取り出した後に、ワークを振動させて、ワーク表面に付着している金属を取り払っても良い。
この構成によれば、ワークを振動させることにより表面に付着している金属を落とす効果がある上に、ワークに形成されている微細孔に金属が充填された際に金属中に残った気泡が振動させることによって金属中から抜けるという利点がある。
また、本発明は、板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うようになっていることを特徴とする金属充填装置である。
この構成によれば、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属中に挿入する際に、溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。
また、本発明は、板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上85°未満の傾斜をつけて行うようになっていることを特徴とする金属充填装置である。
この構成によれば、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属から取り出す際に、溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。また、ワークを溶融金属から取り出した後に、金属がワーク表面に残ってしまうという不具合を防止できる。
また、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク表面を溶融金属液面に対して、85°未満の傾斜をつけて行うので、ワークに形成されている微細孔に充填されている金属が流れ出てしまう不具合を防止できる。
更に、本発明は、板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うようになっており、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上85°未満の傾斜をつけて行うようになっていることを特徴とする金属充填装置である。
この構成によれば、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属中に挿入する際に、溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。
また、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属から取り出す際に、溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。また、ワークを溶融金属から取り出した後に、金属がワーク表面に残ってしまうという不具合を防止できる。
また、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク表面を溶融金属液面に対して、85°未満の傾斜をつけて行うので、ワークに形成されている微細孔に充填されている金属が流れ出てしまう不具合を防止できる。
更に、本発明は、板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、ワーク下面を溶融金属液面に対して傾斜をつけた状態で、ワークを溶融金属中に挿入し始め、挿入動作が進むにつれて、徐々に、ワーク下面の溶融金属液面に対する角度を平行状態に近づけ、その後、ワーク上面を溶融金属液面に対して、徐々に傾斜をつけながら、ワークを溶融金属から取り出していくようになっていることを特徴とする金属充填装置である。
この構成によれば、溶融金属を貯留する槽(溶融金属槽)における溶融金属の貯留量が少なくても、ワークを溶融金属に浸すことができ、金属を溶融するヒータによる温度制御が容易になる。また、チャンバの小型化も図れるため、チャンバ内の圧力(気圧)の制御が容易になる等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態による金属充填装置を示す全体図である。
図2A及び2Bは、本発明の実施の形態による治具の詳細を示す図である。
図3A及び3Bは、本発明の実施の形態による治具における台座を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態によるワークの具体例を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態によるワークの具体例を示す図である。
図6は、本発明の実施の形態による金属充填方法の工程図である。
図7は、本発明の実施の形態による金属充填方法の工程図である。
図8は、本発明の実施の形態による金属充填方法の工程図である。
図9は、本発明の実施の形態による金属充填方法の工程図である。
図10は、本発明の実施の形態による金属充填方法の工程図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照にして説明する。
図1は、本発明の実施の形態の金属充填装置1を示している。
図1におけるように、本発明の実施の形態による金属充填装置1では、チャンバ12内に、溶融金属槽13が置かれ、溶融金属槽13内に溶融金属14が入れられている。溶融金属槽13の周囲には、溶融金属14の溶融状態を維持するためのヒータ15が設けられている。溶融金属13上部には、ワーク2を支持するための治具3が設けられている。また、チャンバ12には、治具3を昇降するための昇降装置(図示略)と、チャンバ12内を減圧するための減圧装置(図示略)も設けられている。
図2A〜3Bは、本発明の実施の形態の金属充填装置1で用いられる、基板2を支持するワーク(基板)支持機構としての治具3を示している。
尚、本発明の実施の形態では、基板支持機構として治具3を用いているが、基板支持機構としての治具3は一例にすぎず、基板2を支持可能である様々な機構を採用することができる。
図2Aは、治具3の詳細を示す正面図であり、図2Bは、治具3の詳細を示す側面図であり、図3Aは、治具3における台座4を示す平面図であり、図3Bは、治具3における台座4を示す側面断面図である。
図2A、2Bにおけるように、図示しない動力源からの駆動力により、第1の傘歯歯車5が回転し、その回転力が、第1の傘歯歯車5と噛み合う第2の傘歯歯車6に伝達される。これにより、第2の傘歯歯車6と一体の駆動棒7が回転し、この回転により、駆動棒7の両端に一体として設けられているアーム支持体8が回転する。これにより、台座4の両端部を支持するアーム(台座支持体)18が移動する。このため、台座4が傾斜した状態となる。ここで、アーム18はチェーン状であるが、ベルト状のアーム18を用いても良い。
尚、治具3は、昇降装置(図示略)によって、上下動可能に支持されている。
また、治具3は、昇降装置によって昇降される昇降部材31に対して、着脱自在であり、昇降部材31から離脱すると、チャンバ12から外へ取り出せる。なお、治具3を昇降部材31に取り付けると、該治具3の第1の傘歯歯車5の回転軸5aに、昇降装置側の駆動力伝達機構を介して、チャンバ12外の動力源からの回転力が伝達できるようになる。
図3A、3Bにおけるように、台座3は、平面から見て、長方形状であり、上方に延びる起立部9と、起立部9の下方から内側へ延びる下方支持ガイド部10とを備えており、平面から見て、中央部は、幅広の隙間11が形成されている。
図4、5は、本発明の実施の形態で使用される基板2の具体例を示している。
図4において、基板2は、基板2の上面20に開口する複数の微細孔16を有する。
これに対し、図5において、基板2(説明の便宜上、符号2Aを付す場合がある)は、該基板2Aの上面20から下面24に貫通されている複数の微細孔16(貫通孔)を有し、下面24側に、微細孔16の開口部を封止する封止材22が設けられている。この基板2Aの場合は、封止材22が取り付けられている状態のものを本発明に係るワークとして扱う。
尚、ここで、基板2の厚さは、70〜150μm、微細孔径は、20〜60μm程度であるが、基板の厚さや微細孔径は、これに限定されず、種々のサイズのものを適用できる。
図6〜10を参照にして、本発明の実施の形態による金属充填方法の工程を説明する。
図7におけるように、微細孔16が形成されているワーク(基板)2を治具3に設置、即ち、台座4上に置く。そして、台座4に基板2が設置されたまま、治具4をチャンバ12内に挿入し、昇降装置の昇降部材31に取り付ける。これにより、基板2がチャンバ12内に挿入される。また、基板2は上面20が上、下面24が下となるように台座4に設置し、固定手段で固定する。なお、チャンバ12内に基板2を挿入する方法としては、予め、昇降装置に支持させておいた治具3の台座4上に基板2を設置することでも可能である。
基板2をチャンバ12内に挿入した後、減圧装置(図示せず)により、チャンバ12内を減圧する。
また、動力源からの駆動力により、第1の傘歯歯車5を回転させ、第2の傘歯歯車6、駆動棒7、アーム支持体8を経由して、2つのアーム18を移動させる。これにより、アーム18に支持されている台座4が傾斜して、台座4により支持されている基板2が傾斜した状態となる。
次に、図8におけるように、治具3を下方へ移動させことにより、治具3に設置された状態の基板2を、予めヒータ15により金属が溶融されている溶融金属液面19に対して傾斜した状態で、溶融金属14内に挿入していく。
尚、上記において、基板2を溶融金属槽13の上方にて、傾斜させた後、この傾斜角度を保ったまま、溶融金属14中に挿入していくことも可能であるが、これに限定されず、昇降装置によって基板2を下方へ移動しつつ、基板2を傾斜させていき、基板2が溶融金属液面19に接する際に、基板2が溶融金属液面19に対して傾斜しているものであっても良い。
但し、挿入作業では、基板2の溶融金属14液面に対する傾斜角度(以下、単に傾斜角度とも言う)が0.5°以上、より好ましくは、5°よりも大きくなるようにする。
これにより、基板2が、溶融金属14から受ける押圧力によって、割れるといった不都合を防止できる。このときの傾斜角度が5°より大きければ、基板が溶融金属から受ける押圧力を、より効果的に緩和でき、割れの問題を確実に防止できる。
尚、台座4およびアーム18は、溶融金属14内に挿入した時の剛性維持、姿勢維持の点で、溶融金属14より融点が高く、かつ、溶融金属14よりも比重の大きいものを選択する必要がある。
次に、図9におけるように、基板2を溶融金属14内に挿入した後、動力源からの駆動力を先程と逆に作用させることにより、第1の傘歯歯車5を逆回転させ、第2の傘歯歯車6、駆動棒7、アーム支持体8を経由して、2つのアーム18を先程と逆に移動させ、これにより、台座4により支持されている基板2を平行状態とする。
但し、ここで水平状態とは、厳密な水平である必要はなく、基板2の上面または下面が、溶融金属14の液面に沿うようにすることも含まれる。治具3の下降による溶融金属14に基板2を挿入しつつ、基板2の傾斜角度を水平状態となるように変化させていくことも可能であり、この場合には、溶融金属槽13内の溶融金属14の貯留量が、基板2を水平状態のまま、溶融金属14中に挿入して液没させる場合と同じ(あるいはほぼ同じ)であっても、基板2全体の溶融金属14中への液没を実現できる利点がある。
その後、図示しない加圧手段により、チャンバ12内を大気圧に戻すと、差圧により、基板2の微細孔に溶融金属14が充填される(差圧充填)。
なお、この時、差圧充填を実現するには、溶融金属14中に基板2を挿入する前の圧力よりも、液没後の圧力を高くすれば良いのであり、液没後に作用させる圧力は必ずしも大気圧でなくとも良い。
次に、図10におけるように、動力源からの駆動力により、第1の傘歯歯車5を回転させ、第2の傘歯歯車6、駆動棒7、アーム支持体8を経由して、2つのアーム18を移動させ、アーム18に支持されている台座4が傾斜して、台座4により支持されている基板2が、溶融金属14内で傾斜した状態となる。このように、基板2が傾斜した状態で、治具3を引き上げることにより、基板2を引き上げる。
ここでは、基板2を傾斜した状態で、引き上げているが、基板表面20を溶融金属液面19に対して、徐々に傾斜を大きくしながら、基板2を溶融金属14から引き上げていっても良い。
なお、基板2は上面20が上側となるようにして引き上げる。
基板2を溶融金属14から引き出す作業においては、基板2の傾斜角度が、0.5°以上85°未満の範囲より好ましくは、5°〜75°の範囲になるようにする。
この傾斜角度であれば、微細孔16からの溶融金属14の流出を防止でき、かつ、基板上面20上の溶融金属14を落下させることができる。また、引き上げ作業中の傾斜角度が0.5°未満であると、基板2上の溶融金属14の残渣が多くなるため、引き上げ作業中に、一時的に傾斜角度を大きくしたり、振動を与える(後述)等の、溶融金属14除去処理を行う必要が出てくる。傾斜角度が85°を超えると微細孔16内に充填されている溶融金属14が微細孔16から流出しやすくなるため、引き上げ作業中、引き上げ作業後、溶融金属14の冷却固化までに、傾斜角度が85°を超えないように基板2の姿勢を保つ必要がある。
また、金属が冷却固化する前に、基板2を、振動機構としての超音波発生機構による超音波等を利用して振動させることにより、基板表面20に残った金属を振り落とすことも可能である。
尚、振動機構としては、超音波発生機構以外の各種の非接触型の振動機構も採用可能である。
尚、振動機構としての超音波発生機構を使用した場合には、例えば、周波数40kHz、振幅3μmの超音波により振動させる。
金属が冷却した後に、基板2をチャンバ12から取り出して、終了する。
以下に本発明の具体的な実施例を示す。
以下に、実施例1を示す。
厚さ150μmのSiウエハ(ワーク(基板)2としてのシリコン基板)にDeep−RIEで、孔径40μm、アスペクト比(孔長/孔径)3のブラインドビアホール(微細孔。非貫通孔)16を形成した。ここでは、基板2として、Siウエハを使用したが、材質としては、ガラス、セラミック、樹脂、及び、金属の何れでも良い。更に、孔形成方法も任意である。その後、基板表面に酸化膜を形成(SiO膜)を形成した後に、基板2を治具3にセットした。その後、基板2をチャンバ12内に挿入し、チャンバ12内の圧力を約5Paに減圧した。
減圧後、アーム18を移動することにより、基板2を傾けて、Au−Sn20wt%の溶融金属14内に、溶融金属液面19に対して15°傾斜した状態で、挿入した。ここで用いたアーム18及び台座4の材質はSUS製とした。アーム18を溶融金属14内に完全に挿入後、基板2を溶融金属液面19に対して平行になるようにした。挿入後、チャンバ12内を大気圧に戻し、約10分後、基板2を15°傾斜させた後に、基板2を溶融金属14から引き上げた。金属を冷却した後、基板2をチャンバ12から取り出して、基板2を観察したところ、基板表面20に金属の残渣はなく、また、基板2に割れ等の不具合も認められなかった。
以下に、実施例2を示す。
実施例1と同様の方法により、基板2をチャンバ12内へセットし、その後、基板2を溶融金属液面19に対して15°の角度をつけて、基板2を溶融金属14内に挿入し、途中で、基板2が溶融金属14から出ないように、徐々に、基板2の傾きを溶融金属液面19に対して平行に近づけながら、基板2を溶融金属14に挿入した。その後、実施例1と同様に、基板2の微細孔16に溶融金属14を充填した後、基板2を溶融金属液面19に対して2°傾けた状態で、基板2を溶融金属液面19から引き出し始めた後、徐々に、基板2の傾斜を大きくして、基板2を溶融金属液面19に対して60°傾けた状態になるまで傾斜させつつ、基板2を溶融金属14から引き出した。その後、基板2を観察したところ、基板表面20金属の残渣はなく、また、基板2の割れ等も認められなかった。
以下に、比較例1を示す。
実施例1において、基板2を溶融金属14へ挿入する際、基板2を溶融金属液面19に対して平行状態で行ったところ、基板2を溶融金属14から引き出した際の観察で、基板2に割れが認められた。
以下に、比較例2を示す。
実施例1において、基板2を溶融金属14から取り出す際、溶融金属液面19に対して平行状態で行い、取り出した後に、基板2を15°傾けたが、基板表面20に金属の塊が、ところどころ残っていることが確認された。
以下に、比較例3を示す。
実施例1において、基板2を溶融金属14から引き出す際、基板2を90°傾けた状態で行ったところ、基板表面20に金属の残渣がなく、基板2の割れも確認されなかったが、微細孔16から金属が流れ出してしまっていた。
なお、前述した実施の形態では、ワーク(基板)を支持するワーク支持機構が、ワークを傾動させて、溶融金属液面に対するワーク上面あるいはワーク下面の傾斜角度を調整するワーク傾動機構を兼ねる構成を例示したが、本発明では、これに限定されず、例えば、チャンバ内に、ワーク支持機構とは別体の傾動機構が設けられている構成も採用可能である。
本発明に係る金属充填装置は、動力源の駆動力によって、ワークの傾斜角度を変更できる機能を有するワーク支持機構(例えば、前述の実施形態に例示のワーク支持機構)に、動力源の駆動を制御する制御装置を設けて、溶融金属中へのワーク挿入時のワークの傾斜角度、及び、溶融金属中からのワーク引き上げ時のワークの傾斜角度の一方または両方を、前記制御装置の制御によって、所望の角度(挿入動作は、傾斜角度0.5°以上、引き上げ動作は傾斜角度0.5〜85°)で行うようにする構成も採用できる。
また、本発明に適用されるワークとしては、前述の基板に限定されず、種々のものを採用できる。
【産業上の利用可能性】
以上、述べたように、本発明では、ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属中に挿入する際に、溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。
また、本発明では、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うので、ワークを溶融金属から取り出す際に、溶融金属から受ける押圧力によって、ワークが割れてしまうという不具合を防止できる。更に、ワークを溶融金属から取り出した後に、金属がワーク表面に残ってしまうという不具合を防止できる。
また、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク表面を溶融金属液面に対して、85°未満の傾斜をつけて行うので、ワークに形成されている微細孔に充填されている金属が流れ出てしまう不具合を防止できる。
更に、本発明では、ワーク下面を溶融金属液面に対して傾斜をつけた状態で、ワークを溶融金属中に挿入し始め、挿入動作が進むにつれて、徐々に、ワーク下面の溶融金属液面に対する角度を平行状態に近づけ、その後、ワーク上面を溶融金属液面に対して、徐々に傾斜をつけながら、ワークを溶融金属から取り出していくようになっているので、溶融金属を貯留する槽(溶融金属槽)における溶融金属の貯留量が少なくても、ワークを溶融金属に浸すことができ、金属を溶融するヒータによる温度制御が容易になる。また、チャンバの小型化も図れるため、チャンバ内の圧力(気圧)の制御が容易になる等の利点もある。
【図1】



【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法であって、
ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うことを特徴とする金属充填方法。
【請求項2】
板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法であって、
ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上85°未満の傾斜をつけて行うことを特徴とする金属充填方法。
【請求項3】
板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填方法であって、
ワーク下面を溶融金属液面に対して傾斜をつけた状態で、ワークを溶融金属中に挿入し始め、挿入動作が進むにつれて、徐々に、ワーク下面の溶融金属液面に対する角度を平行状態に近づけ、その後、ワーク上面を溶融金属液面に対して、徐々に傾斜をつけながら、ワークを溶融金属から取り出していくことを特徴とする金属充填方法。
【請求項4】
ワークを溶融金属から取り出した後に、ワークを振動させて、ワーク表面に付着している金属を取り払うことを特徴とする請求の範囲第1〜3項の何れかに記載の金属充填方法。
【請求項5】
ワークを溶融金属から取り出した後に、ワークを振動させて、微細孔中の金属内部に存在する気泡を取り除くことを特徴とする請求の範囲第1〜3項の何れかに記載の金属充填方法。
【請求項6】
板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、
ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うようになっていることを特徴とする金属充填装置。
【請求項7】
板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、
ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上85°未満の傾斜をつけて行うようになっていることを特徴とする金属充填装置。
【請求項8】
板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、
ワークを溶融金属中に挿入する際に、ワーク下面を溶融金属液面に対して、0.5°以上の傾斜をつけて行うようになっており、ワークを溶融金属から取り出す際に、ワーク上面を溶融金属液面に対して、0.5°以上85°未満の傾斜をつけて行うようになっていることを特徴とする金属充填装置。
【請求項9】
板状のワークを溶融金属に浸し、その後、ワークを溶融金属から取り出すことで、ワークに形成されている微細孔に金属を充填する金属充填装置であって、
ワーク下面を溶融金属液面に対して傾斜をつけた状態で、ワークを溶融金属中に挿入し始め、挿入動作が進むにつれて、徐々に、ワーク下面の溶融金属液面に対する角度を平行状態に近づけ、その後、ワーク上面を溶融金属液面に対して、徐々に傾斜をつけながら、ワークを溶融金属から取り出していくようになっていることを特徴とする金属充填装置。

【国際公開番号】WO2005/007931
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511826(P2005−511826)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009984
【国際出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】