説明

金属容器の溶接方法、金属容器、蓄電素子及び蓄電モジュール

【課題】 金属容器を精度良く溶接する。
【解決手段】 開口11を有する容器本体10と開口11を塞ぐ蓋部20とを有し、容器本体10と蓋部20との当接部分が側面に境界線25として露出している、例えば非電解質二次電池の電池容器として実施される金属容器の溶接方法であって、当接部分にレーザ光40を照射することにより溶接する工程を備え、レーザ光40の有効直径は、蓋部10の側壁の厚みTの2倍未満である、金属容器の溶接方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二次電池その他の電池等の蓄電素子の外装である金属容器の溶接方法及びそれが適用される金属容器並びにそれを用いた蓄電素子、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、一次電池の置きかえ用途はもとより、携帯電話、IT機器などの電子機器の電源として広く普及している。とりわけ、リチウムイオン電池に代表される非水電解質二次電池は、高エネルギー密度であることから、電気自動車などの産業用大型電気機器への応用も進められている。
【0003】
図12(a)は、従来の技術による、非水電解質二次電池の、外観上の模式的な構成を示す分解斜視図である。
【0004】
図12(a)に示すように、非水電解質二次電池100は、アルミニウム製の板状の蓋部120と、開口111を有する開口箱状の容器本体110から構成される、外形六面体の電池容器を外装として備えている。蓋部120の表面には、容器本体110内部に収納される発電要素(図示省略)と電気的、機械的に結合され、外部負荷と着脱自在に接続する電極端子を有する、正極側及び負極側の電極部130a及び130bがそれぞれ設けられている。
【0005】
次に、図12(b)は、従来の非水電解質二次電池100の電池容器の、短辺に平行な直線による断面図である。ただし図中において電極部130a及び130bの構成は、簡単のため省略して示した。
【0006】
図12(b)に示すように、蓋部120は、その外周に位置する側端部121の内側に形成され、側端部121を含めた他の部分よりも厚みが大きい凸部122を有している。凸部122の外周のなす平面形状は容器本体110の開口111の形状に対応しており、したがって、蓋部120と容器本体110とは、開口111に凸部122が嵌り込むことによって結合され、電池容器を構成する(例えば特許文献1、図6を参照)。
【0007】
又、非水電解質二次電池100の組立ては、蓋部120の裏面から導電性の接続部材(図示省略)を介することにより、電極部130a、103b、蓋部120及び発電要素を一体的に組み合わせる。次いで、開口111に発電要素を挿入するようにして蓋部120で容器本体110を密閉し、接合箇所をレーザ溶接する。容器本体の表面には予め貫通孔(図示省略)が開口されており、電解液は、発電要素の収納後に密閉された容器に貫通孔を介して注入される。その後、貫通孔は金属製の封止栓により封止され、電池容器の密閉状態が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−26707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術による非水電解質二次電池の構成は以上のようなものであるが、上記従来の技術においては、以下のような問題があった。
【0010】
すなわち、電池容器を密封状態にするためには、蓋部120と容器本体110とを組み合わせた状態を母材としてレーザ溶接を行う必要がある。ここで図13(a)は、図12(b)に示す、蓋部120と容器本体110との接合箇所を含む領域R0の要部断面図である。
【0011】
図13(a)に示すように、溶接前の状態においては、容器本体110の表側の側面112と、蓋部120の側端部121とは、電池容器の側面を形成しており、又、蓋部120の凸部122及び裏面123並びに容器本体110の裏側の側面113は発電要素の収納空間を形成している。
【0012】
この状態で、蓋部120と容器本体110との当接部分が露出してなる境界線125を対象とし、この延伸方向に沿ってレーザ溶接を行うと、図13(b)に示すように、電池容器側面及び蓋部120の表面124を含む、境界線125近傍の部分は膨張し、側面から外側にはみ出す瘤状の溶接ダレ140を形成する。
【0013】
溶接ダレ140は完成後の非水電解質二次電池100の外形に歪みを生じさせ、これは、電池単体の強度の低下や、更には、複数の電池をモジュールとして構成する際に、各電池を設計通りにレイアウトすることの妨げや、モジュール全体を筐体に収納することが出来ない、等の不具合の原因となってしまう。
【0014】
このように、従来の技術による電池容器の溶接においては、完成後の精度が悪いという課題があった。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、精度に優れた金属容器の溶接方法及びそれを好適な金属容器、並びにそれを用いた蓄電素子及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、開口を有する容器本体と前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、前記容器本体と前記蓋部との当接部分が側面に露出している金属容器の溶接方法であって、
前記当接部分にレーザ光を照射することにより前記当接部分を溶接する工程を備え、
前記レーザ光の有効直径は、前記蓋部の側壁の厚みの2倍未満である、金属容器の溶接方法である。
【0017】
又、本発明の第2の側面は、前記レーザ光の光軸を、前記容器本体と前記蓋部との当接部分を含むように位置合わせする、本発明の第1の側面の金属容器の溶接方法である。
【0018】
又、本発明の第3の側面は、前記レーザ光の有効直径は、前記蓋部の側壁の厚み未満である、本発明の第1又は第2の側面の金属容器の溶接方法である。
【0019】
又、本発明の第4の側面は、前記レーザ光の有効直径は、前記光軸に沿った向きにおける前記当接部分の幅の2倍以下である、本発明の第1から第3のいずれかの側面の金属容器の溶接方法である。
【0020】
又、本発明の第5の側面は、前記レーザ光を、前記容器本体と前記蓋部との当接面に平行な入射角で前記当接部分に照射する、本発明の第1から第4のいずれかの側面の金属容器の溶接方法である。
【0021】
又、本発明の第6の側面は、前記レーザ光を、前記容器本体と前記蓋部との当接面に対して仰角となる入射角で前記当接部分に照射する、本発明の第1から第4のいずれかの側面の金属容器の溶接方法である。
【0022】
又、本発明の第7の側面は、前記レーザ光を、前記容器本体と前記蓋部との当接面に対して俯角となる入射角で前記当接部分に照射する、本発明の第1から第4のいずれかの側面の金属容器の溶接方法である。
【0023】
又、本発明の第8の側面は、
前記金属容器は、
前記蓋部の縁部が前記容器本体との前記当接部分を形成しており、
前記蓋部の前記縁部は、前記蓋部の表面から前記側面に向かって傾斜した平面又は曲面を有するものである、本発明の第1から第7のいずれかの側面の金属容器の溶接方法である。
【0024】
又、本発明の第9の側面は、
前記金属容器は、
前記蓋部が裏面から突出した凸部又は裏面から後退した凹部を有し、
前記凸部又は前記凹部が前記金属容器の前記開口に嵌合しているものである、
本発明の第1から第8のいずれかの側面の金属容器の溶接方法である。
【0025】
又、本発明の第10の側面は、
前記金属容器は、
前記蓋部の前記凸部の厚みが他の部分の厚みより大きいものであり、
前記蓋部の前記縁部の厚みが、前記凸部より更に内側の部分の厚み以上である、
本発明の第9の側面の金属容器の溶接方法である。
【0026】
又、本発明の第11の側面は、
開口を有する容器本体と、
前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、
前記容器本体と前記蓋部との当接部分が側面に露出している金属容器であって、
前記蓋部は、
その縁部が前記容器本体との前記当接部分を形成しており、
前記縁部より内側の部分で前記金属容器の前記開口に嵌合しており、
前記容器本体の前記開口に嵌合している部分の厚みは、他の部分の厚みより大きいものであって、
前記縁部の厚みは、前記前記容器本体の前記開口に嵌合している部分より更に内側の部分の厚み以上である、
金属容器である。
【0027】
又、本発明の第12の側面は、
開口を有する容器本体と前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、前記容器本体と前記蓋部との当接部分が側面に露出している金属容器であって、
前記当接部分を含む領域は溶接されており、
前記溶接の影響により溶融した部分の幅又は奥行きの寸法は、前記蓋部の、前記側面に露出している厚み以下である、金属容器である。
【0028】
又、本発明の第13の側面は、
本発明の第1から第10のいずれかの側面の金属容器の溶接方法により溶接された金属容器、又は本発明の第11もしくは第12の側面の金属容器と、
前記金属容器内に収納される発電要素とを備え、
前記金属容器の表面に設けられた、前記発電要素と電気的に接続された電極部を有する、蓄電素子である。
【0029】
又、本発明の第14の側面は、
本発明の第13の側面の蓄電素子を複数配列してなる蓄電モジュールであって、
それぞれの前記蓄電素子は、前記当接部分同士が対向するように配列されている、蓄電モジュールである。
【0030】
又、本発明の第15の側面は、
配列された複数の前記蓄電素子の外側に設けられ、それぞれの前記蓄電素子を拘束するエンドプレートを備えた、本発明の第14の側面の蓄電モジュールである。
【発明の効果】
【0031】
以上のような本発明によれば、金属容器を精度良く溶接することが可能になるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池の構成を示す斜視図(b)本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池の電池容器の構成を示す模式的断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態に係る電池容器の蓋部の構成を示す裏面図(b)図2(a)のA−A直線による断面図
【図3】本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法を説明するための要部断面図
【図4】本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法を実施するための構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法の他の例を説明するための要部断面図
【図6】本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法の他の例を説明するための要部断面図
【図7】(a)本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法の他の例を説明するための斜視図(b)本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法の他の例を説明するための要部平面図
【図8】本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法の他の例を説明するための要部断面図
【図9】本発明の実施の形態に係る金属容器の溶接方法の他の例を説明するための要部断面図
【図10】(a)本発明の実施の形態に係る金属容器の構成を示す要部断面図(b)本発明の実施の形態に係る金属容器の他の構成例を示す要部断面図(c)本発明の実施の形態に係る金属容器の他の構成例を示す要部断面図(d)本発明の実施の形態に係る金属容器の他の構成例を示す要部断面図
【図11】本発明の実施の形態に係る電池モジュールの構成を示す斜視図
【図12】(a)従来の技術に係る非水電解質二次電池の構成を示す斜視図(b)従来の技術に係る非水電解質二次電池の電池容器の構成を示す模式的断面図
【図13】(a)従来の技術に係る金属容器の構成を説明するための要部断面図(b)従来の技術に係る金属容器の溶接方法を説明するための要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池1の、外観上の模式的な構成を示す分解斜視図である。
【0035】
図1(a)に示すように、非水電解質二次電池1は従来例と同様、アルミニウム製の板状の蓋部20と、開口11を有する開口箱状の容器本体10から構成される外形六面体の電池容器とを、外装として備えている。蓋部20の表面に、容器本体10内部に収納される発電要素(図示省略)と電気的、機械的に結合され、外部負荷と着脱自在に接続する電極端子を有する、正極側及び負極側の電極部30a及び30bがそれぞれ設けられている点も、従来例と同様である。
【0036】
又、図1(b)の、電池容器の側面に平行な直線による断面図に示すように、蓋部20は、容器本体10の開口11に嵌合するように、側端部21の内側に形成され、側端部21を含めた他の部分よりも厚みが大きい凸部22を有している。
【0037】
次に、図2(a)は、本実施の形態の非水電解質二次電池1の電池容器の蓋部20の構成を模式的に示す裏面図である。図2(a)に示すように、蓋部20は側端部21の内側に、蓋部20の外形と相似形の凸部22が形成されており、凸部22で囲まれた内側の領域は裏面23を形成している。又、図2(b)の、図2(a)のA−A直線による断面図に示すように、蓋部20の厚みは、凸部22において最も大きく、次いで側端部21、裏面23の順に小さくなっている。
【0038】
図3は、非水電解質二次電池1の電池容器の、蓋部20と容器本体10とを組み合わせた状態を示す、図1(b)の領域R1に相当する要部断面図である。
【0039】
図3に示すように、容器本体10の壁部は、外側に露出する外壁12、発電要素の収納空間を形成する内壁13、及び開口11と平行な端面14から構成される。又、蓋部20の側端部21は、表面24、表面24から周辺21bにて容器本体10側に向かって屈曲した側面21c、及び表面24と平行な裏面21aから構成される。
【0040】
蓋部20と容器本体10とは、凸部22の外壁22aが内壁13と当接し、かつ、側端部21の裏面21aが端面14と当接することにより嵌合している。そして、これら当接部分のうち、端面14と裏面21aとの当接面は、電池容器の側壁において蓋部20と容器本体10との境界線25として露出している。
【0041】
なお、上記の構成において、容器本体10は本発明の容器本体に、蓋部20は本発明の蓋部に、開口11は本発明の開口に、側端部21は本発明の蓋部の厚みに、又、端面14と裏面21aとの当接面は本発明の当接部分に相当する。又、容器本体10と蓋部20を組み合わせてなる電池容器は、本発明の金属容器に相当する。
【0042】
本実施の形態に係る金属容器の溶接方法は、以上のように構成された非水電解質二次電池1の電池容器を対象としてレーザ溶接を行うものである。すなわち、境界線25に照準を定め、境界線25を含む裏面21aと内壁13の当接面に対して平行な光軸41を有するレーザ光40を電池容器の側壁に照射する。
【0043】
さらに、レーザ光40の有効直径Dを、蓋部20の側端部21の厚みT未満に絞っている。図3に示す例では、有効直径Dは厚みTの約80%とした。レーザ光40が対象を溶接するのに有効な熱量を与える範囲は、図中点線で示すように、レーザ光40の到達位置を起点として、レーザ光40の有効半径を半径とし、半球状の(図中には半円として示される)作用領域42である。すなわち、レーザ光の溶接による影響は作用領域42の内部に生ずる。
【0044】
溶接後の電池容器においては、その表面において容器本体10の外壁12及び蓋部20の側面21cに渡る部位、又、その断面においては、蓋部20の裏面21a及び容器本体10の端面14の面方向に沿った電池容器の奥行きに渡る部位のそれぞれについて、レーザ光により実際に溶融したことが認められる部分が含まれることとなる。
【0045】
作用領域42は裏面21aと内壁13との当接面を含みつつ、側端部21の周辺21bからは離れている。図10(b)に示した従来例においては、レーザ光の照射領域は蓋部と容器本体との境界線のみならず、蓋部の周辺を含めた広い領域であり、溶接ダレの主要な原因となっていた。
【0046】
これに対し、本発明は、溶接ダレの原因が、周辺21bを含めた蓋部20の上端が過熱されることに着目し、蓋部21においては側端部21の厚みTを他の部位よりも大きくとるとともに、レーザ光の直径及び照射位置を調節して、周辺21bを含めた蓋部20の上端にレーザ光が照射されないようにしている。これにより、溶接ダレの発生を抑制し、溶接完了後の電池容器の外形に歪みが生ずることを防ぐことを可能としている。
【0047】
なお、単に外形の歪みを修正するだけなら、発生後の溶接ダレを切除することも考えられるが、この場合は、その分母材としての電池容器を削ってしまうことになり、容器の強度が低下する。そこで従来は溶接ダレが発見されても放置されていた。これに対し、本発明は、金属容器の強度を確保しながら精度の高い溶接を実現すべく、溶接ダレそのものを抑えるようにしたことを特徴とするものである。
【0048】
次に、図4は、本発明の溶接方法を実施するための構成の一例を模式的に示す図である。図4に示すように、レーザ溶接機43は、可撓性のファイバーケーブル44の先端に設けられたノズル部45の操作によってレーザ光40の照射位置を自在に変化させることができる。レーザ光40の光軸41を、母材としての電池容器の容器本体10及び蓋部21の境界線25に位置合わせし、境界線25に沿って走査することにより溶接を行う。
【0049】
レーザ光40と境界線25との位置合わせは相対的なものであるから、溶接に際しては、ノズル部45及び電池容器のいずれか一方又は両方を移動させればよい。なお、図4においては、説明のため、レーザ溶接機43側と電池容器側とでは縮尺を変更して示した。
【0050】
レーザ溶接機43としては、通常、出力600〜4000W、ノズル部43のレーザファイバ径としては100〜600μmのものが用いられる。この場合、レーザ光40の、電池容器表面における有効スポット径は0.1〜2mmとなり、したがって蓋部20の厚みTはこれらのスポット径以上とすることが望ましい。ただし、これらレーザ溶接において慣用されるレーザ光の出力、スポット径その他機器の定格は例示であって、本発明は、金属容器の蓋部の厚みとレーザ光の有効直径との関係によって効果を奏するものであり、これらの条件の上限、下限より大きな値を用いることができる。
【0051】
一例として、出力2600WのCWレーザ光を用い、境界線25に対してフォーカス±0mm、溶接速度35mm/秒で走査した場合は、図3に示す例と同様、溶接ダレの発生はみられず、電池容器の歪みが公差内に収まることが確認された。一方、同一規格のレーザ光を用い、かつ境界線25より上方に焦点を合わせた場合は、図11(b)に示すような、公差を逸脱する溶接ダレ140が確認された。
【0052】
なお、上記の説明においては、レーザ光40は、その光軸41が、蓋部20の凸部22の外壁22aと容器本体10の端面14との当接面に平行となるように調整されているものとしたが、光軸41は当接面と交差するように調整してもよい。
【0053】
図5に示す例は、レーザ光40を、当接面を延長してなる基準線46に対して仰角をなす入射角θで照射し、光軸41を境界線25に一致させたものである。容器本体10の内部に迷光や溶接に伴うスパッタその他の異物の侵入が直接入射することを防ぐことができる。なお、この場合において、レーザ光40の光軸41の位置を、境界線25より下方にとることが望ましい。蓋部20の上端が過剰に熱せられることを防ぐとともに、位置決めのマージンを大きくとることができる。
【0054】
又、図6に示すように、レーザ光40を、基準線44に対して俯角をなす入射角φで照射し、光軸41を境界線25に一致させるようにしてもよい。特にこの場合は、レーザ光の作用領域を周辺21bの対角方向に沿って、電池容器の内部へ遠ざかるようにシフトさせることにより、蓋部20の上端が過剰に熱せられることをさらに防止することが可能となる。更にこの場合は、容器本体10の内部への迷光等の影響を避けるために、凸部22の厚みを大きくとることが望ましい。
【0055】
又、上記の説明においては、図7(a)の斜視図に示すように、レーザ光40は、光軸41が、蓋部20の表面24に平行な面内において、境界線25に対し直交するように照射するものとして説明を行ったが、光軸41は、図7(a)の領域R2の要部平面図である図7(b)に示すように、上記平行面内にて回転し、境界線25に対し斜行させるようにしてもよい。図中には一例として、基準線46に対して入射角ψ0だけ回転させた例を示した。
【0056】
このように、平面におけるレーザ光40の入射角を変化させることにより、レーザ光40の単位面積当りのエネルギー密度を抑えて、容器本体10及び蓋部20の急激な温度上昇を防ぎ、より確実に溶接ダレの発生を抑制することが可能となる。なお、この効果は図5、6に示す例でも同様に得られるが、本構成例の場合は、図7(b)に示すように、平面上の入射角の範囲ψが垂直方向の場合より広範囲であり、調整の幅が大きいという利点を有する。
【0057】
更に、図5、6に示す例と組み合わせて境界線25への入射角を立体的に調整すれば、それぞれの構成例の効果を重畳的に奏することができ、より好適である。
【0058】
又、上記の説明においては、レーザ光40の有効直径を、蓋部20の側端部21の厚みT未満に絞るものとしたが、本実施の形態に例示される本発明の要旨は、蓋部21の周辺21bを含めた上端にレーザ光が直接照射されることを防ぐことにより、電池容器側面の溶接ダレの発生を抑制することである。したがって、周辺21bにレーザ光40が直接照射されない限り、有効直径はより大きくとるようにしてもよい。
【0059】
具体的には、図8に示すように、光軸41の位置は固定したまま、有効半径が側端部21の厚みT未満となる範囲、つまり有効直径Dに換算して厚みTの2倍未満の範囲内であれば、レーザ光40の有効直径は任意の大きさに調節することができる。慣用されるレーザ光40の、電池容器表面における有効スポット径が0.1〜2mmであることに鑑みれば、側端部21の厚みはこれらのスポット径の1/2まで薄くすることもできる。
【0060】
ただし、図3に示したように、レーザ光40の作用領域42の大きさは、レーザ光40の有効半径に依存し、容器本体10の端面14と蓋部21の裏面21aとの当接面の幅を超える大きさとなることは、母材に、溶接に必要な量以上のエネルギーを与えることを意味する。そこで、図8に示すように、レーザ光の有効直径Dを当接面の幅Wの2倍以下に定めることがより望ましい。この場合、本発明の効果を奏しつつ、適切な大きさの出力で、かつ確実に電池容器を溶接することが可能になる。
【0061】
更に、上記の説明においては、電池容器を構成する蓋部20は、その側端部21が、表面24から周辺21bにて容器本体10側に向かって屈曲した側面21cを有するものとしたが、図9に示すように、表面24から側面21cの間に傾斜面21dを形成した構成としてもよい。傾斜面21dは、図3の蓋部21の辺の部分が省かれたのと同一の状態となる。これにより、レーザ光40の照射範囲が広すぎた場合や、出力が強過ぎた場合であっても、側端部21の膨張分26の大きさを抑制することが可能となる。
【0062】
すなわち、この構成例においては、蓋部21はレーザ溶接によって歪みを生ずるが、その歪みを所期の公差の範囲内に収めることができ、結果として精度の高い溶接が実現されている。なお、傾斜面21dは平面であるとしたが、曲面として形成されていてもよい。要するに、蓋部の側端部の体積が減じられる形状であればよい。
【0063】
又、上記の説明においては、電池容器を構成する蓋部20は、図2(b)や図10(a)に示すように、凸部22、側端部21、及び裏面23の厚みがこの順序で徐々に小さくなる構成としたが、図11、図12の各図に示す従来例と同様に、側端部22と裏面23の厚みが同一であってもよい。
【0064】
又、蓋部と容器本体とが嵌合する構成でなくともよい。具体的には、図10(b)に示す蓋部50のように、側端部51の端面のみで容器本体10の壁部の端面に当接する構成や、図10(c)に示す、板状の蓋部60のように、その裏面で容器本体10の壁部の端面に当接する構成としてもよい。更には、図10(d)に示す容器本体70のように、壁部の端面に段差71が形成されており、この段差71と蓋部50の側端部51とが嵌合する構成としてもよい。なお、図10(d)の場合において、蓋部50の、側端部51を除いた、より厚みが薄くなっている裏面を含めた部分は、本発明の凹部に相当する。
【0065】
要するに、本発明の金属容器は、開口を有する容器本体と当該開口を塞ぐ蓋部とから構成されており、当接箇所が側面から露出している態様を有していればよく、蓋部と容器本体との結合の態様によって限定されるものではない。
【0066】
又、上記の説明においては、当接箇所が露出する側面は、例えば図1、3、7等に示すように、電池容器の正面又は側面であるとしたが、本発明の側面は、電池容器の上面又は底面側に形成されるようにしてもよい。すなわち、本発明の、蓋部と容器本体との当接箇所としての側面は、当該当接箇所が溶接対象として露出している面であれば、金属容器の表面上の任意の箇所としてよい。
【0067】
又、電池本体はアルミニウム製であるとしたが、アルミニウム合金、ステンレスその他任意の金属又は金属化合物を材料とするものであってもよい。又、形状は外形六面体としたが、円筒形状であってもよい。要するに、本発明の金属容器は、形状、材質その他の具体的な構成によって限定されるものではない。
【0068】
又、上記の説明において、非水電解質二次電池1の、蓋部20及び容器本体10から構成される電池容器は、本発明の金属容器に相当するものであるが、本発明は、非水電解質二次電池1、ニッケル水素電池その他各種の二次電池、一次電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電素子の外装の他に、燃料や薬品といった液体又は粉体を収蔵する容器に適用してもよい。すなわち、本発明は、任意の金属容器に対して適用することができ、当該金属容器の用途等によって限定されるものではない。
【0069】
又、非水電解質二次電池1のように、本発明の金属容器の溶接方法により作成された金属容器又は本発明の金属容器を電池容器として用いた二次電池その他の、上述した各種蓄電素子も本発明に含まれる。電池容器が精度よく組立てられていることで強度が確保され、又、外部負荷の筐体に確実に収納可能となる。
【0070】
更に、本発明は、蓄電素子単体ではなく、それを単セルとして用いた蓄電モジュールとして実施してもよい。
【0071】
図11は、本発明の蓄電モジュールの一例として、非水電解質二次電池1を単セルとして構成した電源モジュール80の構成を模式的に示す斜視図である。図11に示すように、電源モジュール80は、非水電解質二次電池1を単セルとしてマトリックス状に配列して、それぞれの単セルの、蓋部と容器本体との境界線25a又は25bを含む主面同士又は側面同士が対向して配列される構成を有し、各単セルを直列接続することにより大出力を得るようにした電源である。
【0072】
それぞれ配列された非水電解質二次電池1全体の周囲にはエンドプレート80が設けられており、電源モジュール80の外形を保持している。エンドプレート80は、非水電解質二次電池1の正面側及び側面側をそれぞれ被覆する、ステンレス等の金属製の横板81a及び81bから構成される。横板81a及び81bをボルト81cにより締結することで、エンドプレート80は配列された非水電解質二次電池1を拘束する。又、電源モジュール80は筐体82内に収納して用いられる。
【0073】
このような電源モジュール80において、単セルである非水電解質二次電池1に対して本発明を適用することにより、個々の単セルの電池のサイズ、寸法の精度が高まるため、単セルを配列した状態でのモジュール全体の精度が高まる。そのため、筐体80に電源モジュール80を収納することができなくなる可能性を低減でき、電源モジュールの歩留まりを高めることが可能となる。
【0074】
又、エンドプレート80により複数の非水電解質二次電池1を拘束した状態においては、配列された各非水電解質二次電池1は、境界線25aや25bを含む正面や側面同士が押圧されることとなるが、本発明が適用されることにより、各面がフラットに形成されることで、拘束による押圧は面として加えられることとなり、セルの容器本体や蓋部の、接合線25aや25bを含む溶接部分の一箇所に拘束圧力が集中することを防ぐことができる。
【0075】
すなわち、本発明を用いた蓄電素子であれば、モジュール化してエンドプレートによりセルとしての蓄電素子全体を拘束した場合の拘束圧が、溶接ダレ部に集中することによる各単セルへの物理的・機械的な影響を防ぐこともできる。なお、図11には本発明の蓄電モジュールはエンドプレート80を備えた構成として示したが、エンドプレートを省略した構成として実現してもよい。
【0076】
要するに、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内であれば、以上説明したものを含め、上記実施の形態に種々の変更を加えたものとして実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のような本発明は、金属容器を精度良く溶接することが可能になる効果を有し、例えば二次電池その他の蓄電素子の電池容器において有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 非水電解質二次電池
10 容器本体
11 開口
12 外壁
13 内壁
14 端面
20 蓋部
21 側端部
21a 裏面
21b 周辺
21c 側面
21d 傾斜面
22 凸部
22a 外壁
23 裏面
24 表面
25 境界線
26 膨張分
40 レーザ光
41 光軸
42 作用領域
43 レーザ溶接機
44 ファイバーケーブル
45 ノズル部
46 基準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する容器本体と前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、前記容器本体と前記蓋部との当接部分が側面に露出している金属容器の溶接方法であって、
前記当接部分にレーザ光を照射することにより前記当接部分を溶接する工程を備え、
前記レーザ光の有効直径は、前記蓋部の側壁の厚みの2倍未満である、金属容器の溶接方法。
【請求項2】
前記レーザ光の光軸を、前記容器本体と前記蓋部との当接部分を含むように位置合わせする、請求項1に記載の金属容器の溶接方法。
【請求項3】
前記レーザ光の有効直径は、前記蓋部の側壁の厚み未満である、請求項1又は2に記載の金属容器の溶接方法。
【請求項4】
前記レーザ光の有効直径は、前記光軸に沿った向きにおける前記当接部分の幅の2倍以下である、請求項1から3のいずれかに記載の金属容器の溶接方法。
【請求項5】
前記レーザ光を、前記容器本体と前記蓋部との当接面に平行な入射角で前記当接部分に照射する、請求項1から4のいずれかに記載の金属容器の溶接方法。
【請求項6】
前記レーザ光を、前記容器本体と前記蓋部との当接面に対して仰角となる入射角で前記当接部分に照射する、請求項1から4のいずれかに記載の金属容器の溶接方法。
【請求項7】
前記レーザ光を、前記容器本体と前記蓋部との当接面に対して俯角となる入射角で前記当接部分に照射する、請求項1から4のいずれかに記載の金属容器の溶接方法。
【請求項8】
前記金属容器は、
前記蓋部の縁部が前記容器本体との前記当接部分を形成しており、
前記蓋部の前記縁部は、前記蓋部の表面から前記側面に向かって傾斜した平面又は曲面を有するものである、請求項1から7のいずれかに記載の金属容器の溶接方法。
【請求項9】
前記金属容器は、
前記蓋部が裏面から突出した凸部又は裏面から後退した凹部を有し、
前記凸部又は前記凹部が前記金属容器の前記開口に嵌合しているものである、
請求項1から8のいずれかに記載の金属容器の溶接方法。
【請求項10】
前記金属容器は、
前記蓋部の前記凸部の厚みが他の部分の厚みより大きいものであり、
前記蓋部の前記縁部の厚みが、前記凸部より更に内側の部分の厚み以上である、
請求項9に記載の金属容器の溶接方法。
【請求項11】
開口を有する容器本体と、
前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、
前記容器本体と前記蓋部との当接部分が側面に露出している金属容器であって、
前記蓋部は、
その縁部が前記容器本体との前記当接部分を形成しており、
前記縁部より内側の部分で前記金属容器の前記開口に嵌合しており、
前記容器本体の前記開口に嵌合している部分の厚みは、他の部分の厚みより大きいものであって、
前記縁部の厚みは、前記前記容器本体の前記開口に嵌合している部分より更に内側の部分の厚み以上である、
金属容器。
【請求項12】
開口を有する容器本体と前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、前記容器本体と前記蓋部との当接部分が側面に露出している金属容器であって、
前記当接部分を含む領域は溶接されており、
前記溶接の影響により溶融した部分の幅又は奥行きの寸法は、前記蓋部の、前記側面に露出している厚み以下である、金属容器。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載の金属容器の溶接方法により溶接された金属容器、又は請求項11もしくは12に記載の金属容器と、
前記金属容器内に収納される発電要素とを備え、
前記金属容器の表面に設けられた、前記発電要素と電気的に接続された電極部を有する、蓄電素子。
【請求項14】
請求項13に記載の蓄電素子を複数配列してなる蓄電モジュールであって、
それぞれの前記蓄電素子は、前記当接部分同士が対向するように配列されている、蓄電モジュール。
【請求項15】
配列された複数の前記蓄電素子の外側に設けられ、それぞれの前記蓄電素子を拘束するエンドプレートを備えた、請求項14に記載の蓄電モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−91085(P2013−91085A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235374(P2011−235374)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】