説明

金属相互接続線を形成するための方法

【課題】金属相互接続線の形成方法を提供する。
【解決手段】基板にトレンチを画定するエッチング・ステップと、金属の電着によって前記トレンチを充填するステップとを含み、金属の結晶粒で充填された前記トレンチの上に金属侵入層を形成するステップを含み、さらに、トレンチに沿った結晶粒方位の第1の方向と、トレンチに垂直な方向での結晶粒方位の第2の方向とを決定するステップと、前記金属の結晶格子内でのイオン・チャネリングの第3の方向を決定するステップと、前記金属侵入層内でのイオン注入ビームの向きDiの少なくとも1つの方向を決定するステップと、イオン注入ビームの向きDiの1つに応じて、侵入層にイオン・ビームによってイオン注入するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、集積回路で使用される金属相互接続の分野である。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属材料の選択は、電気的相互接続の選択の際に重要な特性の1つである金属の抵抗率に関連付けられる。実際、抵抗率は、信号伝播時間、電圧降下、およびジュール効果による発熱という少なくとも3つのパラメータに作用する。したがって、使用される材料を選択する際、導体抵抗率が低いことが、1つの不可欠なパラメータである。
【0003】
銅は、銀とともに、最小の電気抵抗率を示す固体金属の1つである。これは、エレクトロマイグレーション現象に対する耐性とともに、銅が非常に高い密度集積で現在使用されている理由の1つである。
【0004】
それにも関わらず、銅の相互接続は2種類の問題に直面しており、それらの問題とは、銅をエッチングするのが難しいこと、および銅が多くの材料に対して高い拡散能力を示すことである。この拡散は、隣接するトラックの短絡、したがって回路全体の誤動作をもたらすことがある。
【0005】
これら2つの欠点を克服するために、本明細書で以下に説明し、図1に示すダマシン法が開発されている。
【0006】
この方法は、とりわけ、以下の一連のステップに依拠する。すなわち、中間絶縁誘電体の層を堆積するステップと、とりわけ反応性イオン・エッチング(一般にRIEと略記される)によって、誘電体層に、線およびバイアからなる相互接続パターンをエッチングするステップと、銅の移動を防止するために使用される障壁層を誘電体内に堆積するステップと、線およびバイアに銅を充填するステップと、機械的/化学的研磨によって余剰の銅をなくすステップとである。
【0007】
銅堆積物は電着によって生成され、これは、トレンチの効果的な充填を可能にすることにより、堆積品質に関して高性能な方法である。この方法は、例えば、とりわけ硫化銅(CuSO)および添加剤を含む浴からの銅のガルバニック析出(galvanic copper deposition)に基づかせることができる。
【0008】
この方法の様々なステップが、図1に示される。
【0009】
より具体的に述べると、ステップ1aに対応して第1のレベルの相互接続N上にカプセル化誘電体10を堆積した後、誘電体製の基板Sの内部に、相互接続を形成するための所定の位置でエッチングすることによってトレンチTiが形成される(ステップ1b)。拡散障壁11、次いで導電層12が、トレンチの表面上に堆積されて(ステップ1c)、電気化学法によってトレンチに銅Cuを充填できるようにする(ステップ1d)。焼成ステップの後、表面上の余剰の銅が、電気化学研磨処理(一般に、CMPと呼ばれる)において除去される(ステップ1e)。
【0010】
CMP法は、化学的エッチングと自由研磨混合物を用いた機械的研磨とを使用して化学的作用と機械的作用とを組み合わせる、表面を平滑化および平坦化する一方法である。機械的ラップ仕上げだけでは、表面上にかなりの傷が生じ、ウェット・エッチングだけでは、良好な平坦化が得られない。化学反応は等方性であるので、全ての方向において区別なく材料を腐食する。CMP法は、2つの効果を同時に組み合わせる。
【0011】
しかし、小さな寸法、典型的には数百ナノメートル(約200nm)未満の環境では、銅の性質が変化する。すなわち、W.Steinhoegl、G.Schindler、およびM.Engelhardtによる論文「Unraveling the mysteries behind size effects in metallization systems」Semiconductor International,January 2005に記載されているように、線幅が減少するとき、銅の抵抗率が増加する。
【0012】
これに関して、図2は、ダマシン法を使用して得られる、トレンチの幅に対応する線幅に応じた銅線の抵抗率の傾向を例示する。
【0013】
いくつかの要因を考慮しなければならない。まず、線内での空洞の形成を回避するために、銅の電気化学的成長中に添加剤を使用する必要がある。これらの添加剤は、堆積時に不純物の形態で銅の中に取り込まれることがあり、それにより銅の性質を変えることがある。しかし、抵抗率のこの傾向の背景にある主な要因は、線の幾何形状、とりわけ線寸法に関連している。材料の粒径は、閉じ込め、すなわち媒体の最小寸法によって制限されることが分かっている。この現象は、とりわけ、Q−T.Jiang、M.Nowell;B.Foran、A.Frank、R.H.Haveman、V.Parihan、R.A.Augur、およびJ.D.Luttmerによる論文「Analysis of copper grains in damascene trenches after rapid thermal processing or furnace anneals」 Journal of Electronic Materials 31(1):10−15,January 2002に記載されている。
【0014】
したがって、細い線では、粒径は、固体の銅における電子の平均自由行程の大きさ程度(すなわち、300Kで38nm)になる。このとき、電子は、電流の通過により、結晶粒界を越えて拡散する傾向を有する。
【0015】
さらに、Changsunp Ryu、Kee−Won Kwon、Alvib L.S.Loke、Haebum Lee、Takeshi Nogami、Valery M.Dubin、Rahim A.Kavari、Gary W.Ray、およびS.Simon Wongによる論文(IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,46(6)(1999),1113−1120)に記載されているように、小さな線サイズ(典型的には、幅が100nm未満)の場合、小さな粒径は、相互接続の寿命を縮めるエレクトロマイグレーションに関連する現象を悪化させる一因となり、結晶粒界が原子の拡散経路となり得る。
【0016】
銅のミクロ組織は、その集積のために使用される技術的方法に関連し、典型的にはダマシン法に従い、電気化学堆積後の粒径は小さい。結晶粒成長焼成が適用され、この焼成中、余剰の銅は依然として存在している。
【0017】
結晶粒成長メカニズムは、図3に示される方式に従って行われる。ステップ3aは、電気化学堆積直後のフェーズに関し、結晶粒は小さい。
【0018】
ステップ3bに示されるように、線内での結晶粒の成長に加えて、余剰厚さからトレンチ内への結晶粒の侵入が観察され、ステップ3cに示されるように、トレンチに完全に侵入するまでこのメカニズムを進行させることができる。
【0019】
このメカニズムの程度は、焼成温度および寸法に応じて決まることが示されている(Carreau V.、Maitrejean S.、Brechet Y.、Verdier M.、Boucu D.、Passemard G.著「Cu grain growth in interconnects trenches−Experimental characterization of the overburden effect」Microelectronic Engineering,Volume 85,Issue 10,October 2008,pages 2133−2136)。
【0020】
したがって、150℃で6時間にわたって焼成された銅線に関してトレンチ幅の関数として侵入深さを示す図4の曲線で示されるように、150℃での焼成に関して、限界侵入深さは、線の幅に応じて決定される。この限界深さは、線幅が減少するときに減少する。
【0021】
しかしまた、この成長メカニズムが、より大きな粒径を線内で得ることができるようにすることも示されている。
【0022】
大きな結晶粒を得るために熱焼成の代わりとなる解決策は、イオン注入である。この方法は、結晶粒界の移動の駆動力として、結晶欠陥の密度を使用する。
【0023】
より大きな欠陥密度を有する銅結晶粒は、欠陥がより少ない結晶粒を損ねながら消耗される。体積を一定とすると、結晶粒の数は、それらの平均サイズが増加すると減少する。
【0024】
イオン・ビームの衝突を受けて、結晶欠陥が、材料の結晶方位に応じて材料内に現れる。次いで、R.Spolenak、L.Sauter、C.Eberlによる論文「Reversible orientation−biased grain growth in thin metal films induced by a focused ion beam」Scripta Materiala,53,1291−1296,2005に記載されているように、2つの結晶粒集団、すなわち、入射イオンをチャネリングするように配向された結晶粒と、他の結晶粒とを見分けなければならない。
【0025】
図5に示されるように、イオンをチャネリングする結晶粒は、入射イオンをチャネリングしない結晶粒を犠牲にして成長する。イオン注入フラックスFiの作用を受けて、イオンをチャネリングする結晶粒(Gciと表される)は、結晶粒Gciの周囲にある、イオンをチャネリングしない結晶粒を犠牲にして成長することができる。
【0026】
この技法の実現可能性は、薄膜内へのGaイオンおよびArイオンのイオン注入によって実証されている(それぞれ、R.Spolenak、L.Sauter、C.Eberl「Reversible orientation−biased grain growth in thin metal films induced by a focused ion beam」Scripta Materiala,53 1291−1296,2005、およびS.Olliges、P.Gruber、A.Bardill、D.Ehrler、H.D.Cartanjen、R.Spolenak「Converting polycrystals into single crystal−selective grain growth by high−energy ion bombardment」Acta Materiala,54,5393−5300,2006)。粒径に対するイオン注入の効果は、約500nmの深さまで検出することができる。
【0027】
一般に、銅層の成長は、多結晶である。結晶粒界という概念は、多結晶構造内での2つの結晶ドメイン間の境界面によって定義される。
【0028】
結晶粒のサイズは、基板の表面、成長条件、およびトレンチの寸法によって決まる。
【0029】
B.Kaouache、S.Labat、O.Thomas、S.Maitrejean、V.Carreauによる論文「Texture and strain in narrow copper damascene interconnect lines:An X−ray diffraction analysis」Microelectronic Engineering,Volume 85,Issue 10,October 2008,pages 2175−2178に記載されているように、ダマシン・タイプの構造での結晶方位測定の結果により、余剰厚さの侵入から派生する結晶粒が、接続線内での成長から派生するものとは異なる方位を有することが示されている。
【0030】
線内での成長から派生する結晶粒は、基板に垂直な方向<111>、および線の方向での方向<110>に配向される。
【0031】
侵入から派生する結晶粒は、基板に垂直な方向<001>を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の主題は、トレンチの上にある金属の余剰厚さのレベルで、好適となるように結晶方向を最適化することによって、トレンチの区域内での結晶粒界の数を減少することによってエレクトロマイグレーションに対する耐性を最適化することができるようにする方法である。
【課題を解決するための手段】
【0033】
より具体的には、本発明の主題は、基板の表面上に金属相互接続線を形成するための方法であって、
−前記基板にトレンチを画定するためのエッチング・ステップと、
−ある結晶格子を有する金属の電着によって前記トレンチを充填するためのステップと
を含み、さらに、前記相互接続線を画定するために、金属の結晶粒で充填された前記トレンチの上にいわゆる金属侵入層を形成するステップを含む方法であって、さらに、
−トレンチに沿った結晶粒方位の第1の方向と、トレンチに垂直な方向での結晶粒方位の第2の方向とを決定するステップと、
−前記金属の結晶格子内でのイオン・チャネリングの第3の方向を決定するステップと、
−前記第1の方向に関する第1のベクトルと前記第3の方向に関する第3のベクトルとの内積、および前記第2の方向に関する第2のベクトルと前記第3の方向に関する第3のベクトルとの内積を求めることによって、前記金属侵入層内でのイオン注入ビームの向きの少なくとも1つの方向を決定するステップと、
−前に定義されたイオン注入ビームの向きの1つに応じて、いわゆる侵入層にイオン・ビームによってイオン注入するステップと
を含むことを特徴とする方法である。
【0034】
本発明の1つの変形形態によれば、侵入層の厚さが、トレンチの高さに少なくとも等しい初期厚さを有する。
【0035】
本発明の1つの変形形態によれば、トレンチ内の結晶粒方位の第1および第2の方向を決定するステップが、さらに、
−電気化学堆積後、トレンチ内部の金属堆積物を解放するために、余剰厚さ層を除去するステップと、
−トレンチ内部の金属堆積物から得られるミクロ組織を安定させることができるようにする温度で焼成処理するステップと、
−トレンチ内の結晶粒方位の前記第1の方向を識別することができるようにするX線回折分析を行うステップと
を含む。
【0036】
本発明の1つの変形形態によれば、金属が銅であり、線が約200nm未満の幅を有し、銅の面心立方格子の中で、第1の方向が、結晶学的集合<110>によって定義され、第2の方向が、結晶学的集合<111>によって定義され、チャネリング方向が、結晶学的集合<110>によって定義され、イオン注入ビームの向きの方向が、方向<111>と35°程度の角度を成す。
【0037】
本発明の1つの変形形態によれば、金属が銅であり、イオン注入が、Gaタイプのイオンによって行われる。
【0038】
本発明の1つの変形形態によれば、イオン注入が、約300kV以下の加速電圧で発生されるイオン・ビーム出力によって行われる。
【0039】
本発明の1つの変形形態によれば、この方法は、さらに、イオン注入ステップの後に焼成ステップを含む。
【0040】
本発明の1つの変形形態によれば、この方法は、さらに、イオン注入処理の前に、いわゆる侵入層の厚さを、線幅に応じて厚さを減少させることによって最適化できるようにする第1の研磨を行うためのステップを含む。
【0041】
本発明の1つの変形形態によれば、この方法は、さらに、前記トレンチ内部でのいかなる金属拡散も回避するために、前記トレンチの表面に金属層を堆積するステップを含む。
【0042】
有利には、金属層は、タンタルまたは窒化タンタル・タイプの金属から作製される。
【0043】
限定しない例として与える以下の説明を読むことで、また添付の図面から、本発明がより良く理解され、他の利益が明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】銅相互接続線を形成できるようにする従来技術によるダマシン・タイプの方法の様々なステップを示す図である。
【図2】相互接続線の幅に応じた、ダマシン・タイプの方法によって得られる相互接続線の抵抗率の傾向を示す図である。
【図3】従来技術によるイオン注入ステップを含む方法における、線および余剰な銅を組み込む構造での結晶粒成長メカニズムを示す図である。
【図4】従来技術からの方法における、150℃で6時間にわたって焼成された銅線に関して、トレンチ幅に応じた侵入深さを示す図である。
【図5】薄膜のイオンをチャネリングする結晶粒の伝播のプロセスを示す図である。
【図6】70kVのエネルギーでの銅内へのCuイオンの注入によって生成される欠陥のSRIMシミュレーションの結果を示す図である。
【図7a】銅の面心立方格子を示す図である。
【図7b】銅線と、イオン注入ビームの向きの好ましい方向との概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明によれば、注入された種からいわゆる線間誘電体を保護する役割もする基板の表面上への余剰な金属のイオン注入によって支援される結晶粒成長を実施することが提案される。図6に銅内の銅イオンの例で示されるように、注入された種は、所与の材料内で、種の性質に応じて深さを制限される。
【0046】
この図は、70kVのエネルギーでの銅内への銅イオンの注入によって生成される欠陥の数を、貫入深さに応じて示す。これらの結果は、J.F.Ziegler(J.P.BiersackおよびL.Haggmark(Nucl.Instr.and Meth.,vol.174,257,1980)、J.F.Ziegler「The Stopping and Range of Ions in Matter」volumes 2−6,Pergamon Press,1977−1985)によって開発された、様々な材料内でのコアのエネルギー損失を計算してシミュレートするためのプログラム、すなわち「SRIM」プログラムから導出される。
【0047】
したがって、線内の結晶粒の自然な方位に応じて余剰厚さの結晶粒を配向することによって、侵入現象の大幅な改良が可能になり、また、侵入を制限する摩擦現象がそれによって減少される。
【0048】
本明細書では以下、本発明を、銅内に形成される相互接続線に照らして説明するが、アルミニウムまたは銀タイプの別の金属との関連で適用することもできる。
【0049】
銅は、面心立方格子として結晶化し、方向<110>に対応する好ましいイオン・チャネリング方向Dを示す。
【0050】
さらに、前述したように、線に沿った結晶粒方位の好ましい方向Dも、方向<110>によって定義される。
【0051】
したがって、イオン注入の方向は、DまたはDとDの内積によって、すなわち<110>と<111>の内積によって定義される。
【0052】
本発明によれば、予め決められた好ましい方向<110>と入射イオン・ビームの方向を一致させるように、シリコン基板を向き変更すべき角度を決定することが提案される。
【0053】
これを行うために、1組の好ましい方向<110>が決定され、この方向に関して、基板への垂線に対する角度が決定される。前に与えた方位では、線は、図7に示されるように、注入の方向に対して35°の角度に向けなければならない。
【0054】
より具体的に、これら3つの方向を有する立方格子の図を図7aに示す。好適であり、<111>と<110>の内積の基準に適合するイオン注入の3つの方向(Di、Di、およびDi)が識別される。
【0055】
図7bは、識別された3つの結晶方向、すなわち線のコアの方向<110>と、それに垂直な方向<111>と、前の2つの方向に垂直な方向<211>とを有する銅相互接続線Lcuの概略図を示し、方向Diもそこに示されている。
【0056】
これらの方向Di、Di、およびDiは、線の平面への垂線と35°の角度を成し、最適なイオン注入方向に対応する。
【0057】
実際には、イオン注入は、銅層が線の上に位置されるときに行われる。この層は、前述したダマシン法による銅の電気化学堆積により生成される。
【0058】
この層の初期厚さは、少なくともトレンチの深さに等しい。
【0059】
次に、本明細書で以下、最適な抵抗率の相互接続線を形成することができるようにする本発明による例示的な方法の様々なステップを説明する。
【0060】
ステップ1:トレンチ内の結晶粒の好ましい方向Dを決定する
線内で好ましい結晶粒方位のみが決定される。これに関して、余剰厚さは、焼成を行わずに、堆積直後に除去される。得られる構造は、図1eに示したものと同様である。
【0061】
次いで、焼成が適用される。焼成温度は、金属の融点を4で割った温度と、金属の融点との間にある。特定の焼成温度で好ましい方位を決定するために、できるだけ安定したミクロ組織を得なければならない。焼成期間は長く、少なくとも1時間である。
【0062】
この処理の後、線内の結晶粒方位が決定される。この分析は、X線回折によって行うことができる。
【0063】
次いで、(標準の注入方向に対して)基板を向き変更すべき角度が決定され、前述した方法に従って注入方向を好ましい結晶学的方向<110>と揃えるように銅線が基板上に位置する。
【0064】
ステップ2:注入すべき種、エネルギー、および照射量の選択を決定する
注入すべき種が選択される。この選択は、線を形成する材料よりも大きい原子数を有する原子から自由に行うことができる。
【0065】
注入処理は、線の上の層内で行われ、この層は、第2の段階で除去されることになる。
【0066】
注入エネルギーは、入射イオンが銅の上層を越えて進むのを回避するように選択される。典型的には、加速電圧は、300kV以下である。
【0067】
種、エネルギー、および向き変更が決まると、この方法は、「SRIM」プログラムでシミュレートされる。次いで、存在する欠陥の密度が、ターゲット材料内で総計で生成される100×1023空隙/cm程度となるように、照射量が計算される。
【0068】
イオン注入データの一例を以下に与える。厚さ100nmの銅膜の方位は、28×1015at/cmの照射量で30keVでのガリウムイオンGaのイオン注入によって変更される。
【0069】
これらの条件では、銅の電気化学堆積の後、余剰厚さの侵入層の大きさを約150nmになるまで減少させるために、第1の機械的・化学的研磨が使用される。
【0070】
ステップ3:技術的実施
注入方法が選択された後、この方法によって最も多くのイオンが達する深さを確かめるために、「SRIM」プログラムを使用してシミュレーションが行われる。この深さは、注入が行われる銅の上層の厚さを決定するために使用することができる。この層の厚さは、注入された種の最大濃度が得られる深さよりも150nm(±100nm)深くなるように決定される。
【0071】
電気化学法による銅堆積の後、電気的・化学的研磨が適用され、これは、銅の上層の厚さを、定められた厚さになるまで減少させる。
【0072】
次いで、注入が、予め決められた条件で実施される。
【0073】
焼成が適用される。焼成温度は、銅の最も好ましい結晶粒方位が決定されたのと同じ温度である。
【0074】
焼成が完了すると、余剰の銅が、機械的・化学的研磨によって除去される。
【符号の説明】
【0075】
10 カプセル化誘電体
11 拡散障壁
12 導電層
トレンチに沿った結晶粒方位の第1の方向
トレンチに垂直な方向での結晶粒方位の第2の方向
金属の結晶格子内でのイオン・チャネリングの第3の方向
Di、Di、Di イオン注入の方向
Fi イオン注入フラックス
Gci イオンをチャネリングする結晶粒
cu 銅相互接続線
相互接続
S 基板
Ti トレンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に金属相互接続線を形成するための方法であって、
前記基板にトレンチを画定するためのエッチング・ステップと、
ある結晶格子を有する金属の電着によって前記トレンチを充填するためのステップと
を含み、さらに、前記相互接続線を画定するために、金属の結晶粒で充填された前記トレンチの上にいわゆる金属侵入層を形成するステップを含む方法であって、さらに、
トレンチに沿った結晶粒方位の第1の方向(D)と、トレンチに垂直な方向での結晶粒方位の第2の方向(D)とを決定するステップと、
前記金属の結晶格子内でのイオン・チャネリングの第3の方向(D)を決定するステップと、
前記第1の方向(D、<110>)に関する第1のベクトルと前記第3の方向(D、<110>)に関する第3のベクトルとの内積、および前記第2の方向(D、<111>)に関する第2のベクトルと前記第3の方向(D、<110>)に関する第3のベクトルとの内積を求めることによって、前記金属侵入層内でのイオン注入ビームの向き(Di、Di、Di)の少なくとも1つの方向を決定するステップと、
前に定義された前記イオン注入ビームの向き(Di、Di、Di)の1つに応じて、いわゆる侵入層にイオン・ビームによってイオン注入するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記侵入層の厚さが、トレンチの高さに少なくとも等しい初期厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項3】
トレンチ内の結晶粒方位の第1の方向を決定するステップが、さらに、
電気化学堆積後、トレンチ内部の金属堆積物を解放するために、余剰厚さ層を除去するステップと、
トレンチ内部の金属堆積物から得られるミクロ組織を安定させることができるようにする温度で焼成処理するステップと、
前記トレンチ内の前記結晶粒方位の前記第1の方向を識別できるようにするX線回折分析を行うステップと
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項4】
前記金属が銅であり、銅の面心立方格子の中で、前記第1の方向が、結晶学的集合<110>によって定義され、前記第2の方向が、結晶学的集合<111>によって定義され、前記チャネリング方向が、結晶学的集合<110>によって定義され、イオン注入ビームの向きの方向の集合が、方向<111>と35°程度の角度を成すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項5】
前記金属が銅であり、前記イオン注入が、Gaタイプのイオンによって行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項6】
前記イオン注入が、約300kV以下の加速電圧で発生されるイオン・ビーム出力によって行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項7】
前記イオン注入ステップの後に焼成ステップを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項8】
さらに、前記イオン注入処理の前に、いわゆる侵入層の厚さを、線幅に応じて厚さを減少させることによって最適化できるようにする第1の研磨を行うためのステップを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項9】
さらに、前記トレンチ内部での金属拡散を回避するために、前記トレンチの表面に金属層を堆積するステップを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属相互接続線を形成するための方法。
【請求項10】
前記金属層が、タンタルまたは窒化タンタル・タイプの金属から作製されることを特徴とする請求項9に記載の金属相互接続線を形成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公開番号】特開2010−212686(P2010−212686A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−47978(P2010−47978)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(507081267)コミシリア ア レネルジ アトミック (34)
【Fターム(参考)】