説明

金属素材の変態量のオンライン測定装置

本発明は高温の金属素材を冷却する冷却熱処理工程で発生する金属素材の変態量をオンラインで測定する装置を提供する。
本発明による金属素材の変態量のオンライン測定装置は、両端が上記金属素材に向かって上記金属素材と離隔して設けられ、その表面部に開口部が形成されたU状のヨーク部材と、上記ヨーク部材の両端にそれぞれ提供された第1及び第2磁性体と、上記第1及び第2磁性体により上記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成される磁気経路の磁束のうち上記開口部から漏れる磁束の強さを検出する磁束検出センサと、及び予め設定された漏れ磁束の強さと金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された漏れ磁束の強さによる上記金属素材の変態量を測定する分析部とを含んで構成される。本発明によると冷却熱処理工程内の高温、高湿などの極端の環境でも金属素材の変態量をオンラインで正確に測定できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属素材の変態量のオンライン測定装置に関するもので、より詳しくは、鉄鋼工程における熱延ランアウトテーブル(ROT:Run Out Table)または厚板加速冷却帯(ACC:Accelerated Cooling Chamber)のような金属素材の冷却熱処理過程で発生する金属素材の変態量をオンラインで測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、熱間圧延された金属素材を急速冷却させると、高温安定相のオーステナイトから低温安定相のフェライト、ベイナイト、マルテンサイト(以下、代表として‘フェライト’と通称する)などに相変態(phase transformation)が起きる。これにより引張強度などの機械的な特性が向上し、かつ溶接の際に高入熱が可能であるため溶接の手間が節約されるなどの長所がある。従って、通常の鉄鋼工程では薄板の製造時に金属素材を仕上げ圧延した後、ランアウトテーブル(ROT)を通過させ、また厚板の製造時には熱間圧延後の金属素材を加速冷却帯に通過させることにより、金属素材から所望の機械的な特性が得られるようにする。
【0003】
鉄鋼工程の熱間圧延工程は、図1に図示された通り、スラブ11を加熱炉12で圧延に適した温度に再加熱して抽出した後、粗圧延機(Roughing Mill)13及び仕上げ圧延機(Finishing Mill)14を経てストリップ(strip)形態の金属素材15に圧延した後、目標とする機械的な性質を得るためランアウトテーブル(ROT)16上で冷却設備17を利用して金属素材15を空冷及び水冷過程を通して目標の温度に適切にダウンさせダウンコイラー(Down Coiler)18で巻取する。
【0004】
熱延ランアウトテーブル16における冷却設備17は、図2に図示された通り、ランアウトテーブル16を基準に上部と下部に複数のヘッダを有する複数のバンク20,21がそれぞれ配置される。熱延金属素材15がランアウトテーブル16に進入すると制御部22の動作に応じて上下部のバンク20,21から冷却水を注水して金属素材15を冷却し、この際に適用している冷却パターンは通常、前端部のバンクからダウンコイラー18側に順番に注水を始めて所望の巻取温度に応じてバンク20,21の開放量を調整することにより、金属素材を冷却する。このような鉄鋼工程における冷却熱処理過程は厚板の製造時に使われる加速冷却帯でも類似に適用される。
【0005】
図3は、一般の加速冷却帯の内部の概略的な構造図である。図3を参照すると、圧延された金属素材33がローラ31の駆動により加速冷却帯30の入側に引き込まれると、これを感知して加速冷却帯30内の上下部に設けられた冷却水ノズル32を通して設定された量の冷却水34を素材33の上下面に撒いて素材33を冷却させる。図面には図示されていないが、加速冷却帯30の冷却装置ではエアーコンプレッサーを通して高圧の圧縮空気が供給されると同時に水が供給される。供給された圧縮空気と水は冷却水ノズル32の一地点で相互接することにより高圧高速の流出速度に合わせて水が噴射されて微細な水粒子が高圧の圧縮空気により飛散するミスト(mist)が生成される。このように生成されたミストはその噴出速度により素材33の表面に高速でスプレーされ、熱処理された素材33を急速に冷却することとなる。このような冷却過程を通して、短時間に十分な冷却が行われるため熱処理された素材33から所望の物性を有した金属組織の相が得られる。
【0006】
このように、鉄鋼工程の冷却熱処理工程(例えば、熱延の場合ランアウトテーブル、厚板の場合加速冷却帯)で熱延材及び厚板材などは相変態を経て最終的に求められる機械的な特性を有することとなる。即ち、高温の金属素材がランアウトテーブルまたは加速冷却帯を経る間、冷却過程を通して低温の金属素材で排出されるが、この際に上記冷却過程により金属素材は常磁性のオーステナイト状態から強磁性のフェライト状態に変態する。このような相変態(phase transformation)を通して該当金属素材の機械的性質が定められる。
【0007】
このような冷却熱処理工程(ランアウトテーブルまたは加速冷却帯)の出側から所望の強磁性のフェライト状態を得るためには、何よりも冷却過程、特に冷却水量の調節が重要である。
【0008】
それはランアウトテーブルまたは加速冷却帯における冷却過程で冷却水の量が多いと過変態が発生し、冷却水の量が少ないと未変態が発生して加速冷却帯の出側から所望の状態を確保することが難しいためである。従って、素材の相変態をオンラインで測定することは素材の変態量に応じて冷却水の量を調節するためのもので、冷却熱処理工程の出側から所望の状態の素材を確保するために重要であり、さらに素材の材質の品質を確保するためには冷却熱処理過程で実際の変態率を測定して冷却制御を行う作業が必須として求められる。
【0009】
しかし、現在の鉄鋼工程の冷却熱処理工程の場合、内部冷却装置から高圧の水がラミナー(laminar)流動形態で撒水されて蒸気化し、高温の状態で高速移動(例えば、700〜1200mpm)する熱延素材の板振動があるなどの極端の計測環境にあるため、如何なる計測機も運用できずにおり、実際のランアウトテーブルまたは加速冷却帯上では直接的な温度及び変態などの測定が難しい実情である。従って、従来には冷却熱処理工程を通過した素材に対して冷却終了後の素材の温度を測定して変態率を予測するのみであった。しかし、冷却熱処理工程における冷却装置の究極的な制御は温度ではなく相変態量でなければならないため冷却熱処理工程における相変態量の測定は必須として求められている。
【0010】
従来の変態量の測定技術には、温度測定法、X−線回折法、渦電流測定法などがある。
【0011】
温度測定法は直接的に相変態を検出しない間接的な方法であって、獲得できる情報が概略的であるという短所がある。また、応答性が遅く精密度の確保が困難であり、水冷環境で放射温度計を用いた測定が困難であるという短所がある。
【0012】
X−線回折法は金属素材の表層部から50μm以内の変態情報のみ確認できる。従って、鋼鉄材の変態特性は200μm以上の深さから情報を取り出す必要があるという点を踏まえると不適切な方法である。
【0013】
また、鉄鋼工程の場合冷却熱処理工程のランアウトテーブルと加速冷却帯などにおける劣悪な水及び空気の混合冷却体の噴射雰囲気を考えると根本的に使用が不可能であり、尚、使用される装置が高価の大型装置で維持及び補修が困難であるという短所がある。さらに、強いX−線が照射されるため放射線防護及び遮蔽装置が必ず必要であるという短所がある。
【0014】
渦電流測定法は、実験室の環境での精密測定は可能であるが、被検査体の素材と渦電流センサとの間の距離であるリフトオフ(lift−off)に非常に敏感であるため、各種の振動が存在する現場の環境では信頼性のある信号を得るには限界がある。
【0015】
他に、特許文献1には相互異なる周波数帯域に励磁され形相された磁束を検出して誘起起電力信号を出力し、上記有機基電力信号を相互異なる周波数帯域フィルタでフィルタリングした信号を分析して変態量を測定する技術が開示され、特許文献2には結晶構造を分析する方法であるx線回折分析法を利用して各相の分率を決定して変態率を求める技術が開示され、特許文献3にはリフトオフ値を利用して透磁率を求め、この透磁率により変態量を演算する技術が開示され、特許文献4には単位時間などの測定電圧信号の最大値のみを求めて変態率を測定する技術が開示されている。また、特許文献5などに金属素材を強制的に磁化させ、磁化した金属素材の磁気変化を測定して変態量を測定する装置が開示されている。しかし、このような技術は装置の構成が複雑で、ランアウトテーブルまたは加速冷却帯のような極端の環境での適用が難しく、特に高温の状態で高速で進行する素材に対する正確な変態量の測定が困難であった。
【0016】
従って、当技術分野では相変態を経て最終製品として生産される金属素材の品質向上のための一環として製品の機械的な性質を決める冷却熱処理工程(ランアウトテーブル、加速冷却帯など)を通過中の金属素材の変態量を正確に測定するための装置の必要性が大きく台頭している実情である。
【0017】
【特許文献1】韓国実用新案登録出願第1995-20346号
【特許文献2】韓国特許出願第1996−41353号
【特許文献3】韓国特許出願第1996-51639号
【特許文献4】韓国特許出願第1996-67984号
【特許文献5】日本特開平5-126798号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記の従来の問題点を考えて圧延後の高温の金属素材を冷却する冷却熱処理工程で発生する金属素材の変態量をオンラインで測定する装置を提供することにその目的がある。
【0019】
また、本発明は冷却熱処理工程で金属素材が高速(例えば、700〜1200mpm)で移動する場合、適用性に優れて構造が簡単な変態量のオンライン測定装置を提供することに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成すべく、本発明の第1実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置は、両端が上記金属素材に向かって上記金属素材と離隔して設けられ、その表面部に開口部が形成されたU状のヨーク部材と、上記ヨーク部材の両端にそれぞれ提供された第1及び第2磁性体と、上記第1及び第2磁性体により上記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成される磁気経路の磁束のうち上記開口部から漏れる磁束の強さを検出する磁束検出センサと、予め設定された漏れ磁束の強さと金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された漏れ磁束の強さによる上記金属素材の変態量を測定する分析部とを含む。この際、上記開口部は上記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの10〜30%の深さだけ形成されることが好ましい。
【0021】
また、上記目的を達成するための本発明の第2実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置は、両端が金属素材に向かって上記金属素材と離隔して設けられ、その表面に一定の深さにスリットが形成されたU状のヨーク部材と、上記ヨーク部材の両端にそれぞれ提供された第1及び第2磁性体と、上記スリットの内部に設けられ、上記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束のうち上記スリットの内部を漏れ貫通する磁束の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサと、予め設定された磁束の強さと金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる上記金属素材の変態量を計算する分析部とを含む。
【0022】
この際、上記第1及び第2磁性体と上記金属素材との間に磁気経路をそれぞれ形成させる第1及び第2金属部材をさらに含み、上記漏れ磁束検出センサは上記第1磁性体、第1金属部材、金属素材、第2金属部材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路の磁束のうち上記スリットの内部を貫通する磁束の強さを検出することが好ましい。
【0023】
上記第1及び第2金属部材はワイヤブラッシュ(wire brush)であることが好ましい。また上記第1及び第2金属部材は上記ヨーク部材の両端に対応するハウジングの外部にそれぞれ付着することも出来る。
【0024】
上記スリットは、上記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの20〜80%の深さだけ形成されることが好ましい。
【0025】
上記ハウジングの内部空間に一定大きさの直径を有するチューブが配置して上記チューブの内部に冷却媒体を流して上記ハウジング内部の冷却物質を冷却させる手段をさらに含むことも出来る。この際、上記チューブは上記スリットを含んで上記ヨーク部材の一部または全部を囲うよう配置されることが出来る。
【0026】
ここで、上記の本発明の第1及び第2実施形態による変態量のオンライン測定装置は、冷却物質を含む内部空間を有するハウジングをさらに含むことができ、上記ハウジングの内部空間に上記ヨーク部材、第1、2磁性体及び磁束検出センサが設けられることが出来る。この際、上記冷却物質は冷却油、冷却水または冷却気体のうち選ばれる一つであることが出来る。また上記ハウジングは上記冷却物質が外部から流入される流入管及び外部へ排出される排出管を含むことが出来る。
【0027】
また、上記目的を達成するための本発明の第3実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置は、外周面が金属素材に接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材と、上記円筒部材の内部空間の内部面に両端が向かい、その表面に開口部が形成されたU状のヨーク部材と、一面は上記ヨーク部材の両端にそれぞれ付着し反対面は上記円筒部材の内部面にそれぞれ付着した第1及び第2磁性体と、上記第1及び第2磁性体により上記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材を通して形成される磁気経路上の磁束のうち上記開口部から漏れる磁束の強さを検出する磁束検出センサと、予め設定された漏れ磁束の強さと金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された漏れ磁束の強さによる金属素材の変態量を測定する分析部とを含む。
【0028】
上記開口部は上記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの10〜30%の深さだけ形成されることが好ましい。
【0029】
本発明の第3実施形態において、変態量のオンライン測定装置は、上記円筒部材の内部空間に上記金属素材の幅方向に上記ヨーク部材が複数個さらに配置されることができ、上記各ヨーク部材に上記第1、2磁性体及び少なくとも一つの磁束検出センサが付着され、上記分析部で上記各磁束検出センサから検出された少なくとも一つの磁束の強さによる上記金属素材の変態量を計算できる。
【0030】
また、上記目的を達成するための本発明の第4実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置は、外周面が金属素材に接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材と、上記円筒部材の内部空間の内部面に両端が向かい、その表面部に一定の深さにスリットが形成されたU状のヨーク部材と、一面は上記ヨーク部材の両端にそれぞれ付着し反対面は上記円筒部材の内部面にそれぞれ付着した第1及び第2磁性体と、上記スリットの内部に設けられ、上記第1及び第2磁性体により上記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束のうち上記スリットの内部を漏れ貫通する磁束の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサと、予め設定された磁束の強さ及び金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる上記金属素材の変態量を計算する分析部とを含む。
【0031】
本発明の第4実施形態において、変態量のオンライン測定装置は、上記第1及び第2磁性体と上記円筒部材の内部面の間で磁気経路をそれぞれ形成させる第1及び第2強磁性部材をさらに含むことができ、上記漏れ磁束検出センサは上記第1及び第2磁性体により上記第1磁性体、第1強磁性部材、金属素材、第2強磁性部材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束のうち上記スリットの内部を貫通する磁束の強さを検出できる。この際、上記第1、2強磁性部材は上記ヨーク部材及び第1、2磁性体と一体型で具現されることが出来る。
【0032】
本発明の第4実施形態において、変態量のオンライン測定装置は、上記円筒部材の内部空間に上記金属素材の幅方向に上記ヨーク部材が複数個さらに配置されることができ、上記各ヨーク部材に上記第1、2磁性体及び少なくとも一つの磁束検出センサが付着され、上記分析部で上記各磁束検出センサから検出された少なくとも一つの磁束の強さによる上記金属素材の変態量を計算できる。
【0033】
上記スリットは、上記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの20〜80%の深さだけ形成されることが好ましい。
【0034】
また、上記目的を達成するための本発明の第5実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置は、外周面が金属素材に接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材と、上記円筒部材の内部面にU状の両端が付着し、上記金属素材と磁気経路を形成するためのU状のヨーク部材と、上記ヨーク部材の一部分に挿入され上記ヨーク部材を通して磁気経路を形成するための磁束を発生させる第1、2磁性体と、上記ヨーク部材の他の部分に挿入され上記第1及び第2磁性体により発生して上記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサと、予め設定された磁束の強さ及び金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる上記金属素材の変態量を計算する分析部とを含む。
【0035】
本発明の実施形態において、上記円筒部材は非磁性物質で製作されることが好ましく、上記円筒部材の内部空間には冷却物質が含まれることが好ましい。この際、上記冷却物質は冷却油、冷却水または冷却気体のうち選ばれる一つであることが出来る。
【0036】
さらに、本発明の全ての実施形態において、上記第1、2磁性体はサマリウム系またはニオビウム系の永久磁石であることが好ましく、上記磁束検出センサはホール素子を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、冷却熱処理工程で冷却中の金属素材の変態量をオンラインで正確に測定でき、変態量測定時に素材が振動してもオンラインで測定が可能である。
【0038】
変態量の測定時にリフトオフを十分確保できるため素材が振動してもオンラインで測定が可能である。また、ランアウトテーブルまたは加速冷却帯内の高温、高湿の劣悪な環境に影響されず変態量を正確に測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照に詳しく説明する。
【0040】
図4は、本発明による冷却熱処理工程における冷却過程で相変態と磁気的な特性の変化図である。上記で説明した通り、冷却熱処理工程(ランアウトテーブルまたは加速冷却帯)に熱延金属素材が進入すると冷却装置が設定された量の冷却水を上記金属素材の上下面に撒いて金属素材を冷却させる。このように、金属素材はオーステナイト状態で圧延された後、高速で冷却熱処理工程に移送され冷却工程を通過することによりフェライト状態で排出される。
【0041】
図4を参照すると、圧延された直後の金属素材の温度は約750乃至800℃((a)位置)で、この際には面心立方体のオーステナイト状態(γ相)で透磁率はμは1である。上記素材が冷却熱処理工程に進入して冷却が始まると、金属素材の温度は徐々に下降しA3変態線の温度以下に下がるとオーステナイト状態のγ相は徐々に減りフェライト状態のα相が徐々に増加する。この場合、キュリー温度以上であるためフェライト相は常磁性状態(α相)で透磁率(μ)は1である。
【0042】
即ち、冷却によってA3変態線以下になるとオーステナイト状態からフェライト状態に徐々に変わり、素材の温度がキュリー温度以上であると全ての相が常磁性体であるが、キュリー温度以下になるとフェライト相は強磁性体となる。その後、素材15の冷却が進行し続けられ素材15の温度がキュリー以下に下がるとオーステナイト状態からフェライト状態に変態したフェライト相は強磁性の性質を有することとなり、透磁率μは1より大きくなり略70付近となる。本発明はこのような金属素材の変態過程で金属素材の磁性が大きく変化(即ち、透磁率μが1から70の範囲)する原理を利用して上記金属素材の変態量を測定しようとする。
【0043】
上記で説明した通り、冷却過程が進行するほど変態量は増加し、これは常磁性のオーステナイト状態から強磁性のフェライト状態に変化するということを意味する。尚、格子構造は面心立方体から体心立方体の構造に変化して金属相の変化が発生する。ここで、フェライト変態量は下記の式(1)を利用して計算することが出来る。
【0044】
変態量(率)(%)={(α相の体積)/(金属全体の体積)}×100 (1)
図5は、本発明の第1実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。図5を参照すると、本発明の第1実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置100は、所定の冷却物質を含む内部空間を有するハウジング111、ハウジング111の内部空間に提供され、両端が素材110に向かって素材110と一定の距離だけ離隔して設けられ、表面に開口部113が形成されたヨーク部材112、ヨーク部材112の両端にそれぞれ提供された第1、2磁性体115,116、第1磁性体115、素材110、第2磁性体116及びヨーク部材112を通して形成される磁気回路上の磁束118のうち開口部113から漏れる漏れ磁束119を検出する漏れ磁束検出センサ114、上記検出された漏れ磁束の信号を分析して素材110の変態量を測定する分析部117を含んで構成される。
【0045】
この際、ハウジング111の一面には外部から冷却物質123を流入するための流入管121及び冷却物質123を外部へ排出するための排出管122を含むことができ、流入管121を通して外部から流入された冷却物質123はヨーク部材112、磁性体115,116、漏れ磁束検出センサ114を冷却させた後、排出管122を通して外部へ排出されることが出来る。ここで、冷却物質123は冷却水、冷却気体または冷却油であることが出来る。
【0046】
磁性体115,116は、好ましくは通常の永久磁石であることができ、さらに好ましくは高エネルギー積を保有することができ高温で安定して磁性体の機能を保持できる永久磁石であることが出来る。磁性体115,116の一例としてキュリー温度が高く最大エネルギー積の大きいサマリウム系或いはニオビウム系の永久磁石であることが出来る。
【0047】
このような磁性体115,116により素材110とヨーク部材112との間には磁束経路118が形成される。磁性体115,116は図5に図示された通り、ハウジング111内で素材110と所定の間隔(lift−off)だけ離隔して設けられる。これでオンライン状態での測定が可能である。ここで、本発明の第1実施形態で磁性体115,116がハウジング111の内部に含まれているが、本発明の他の実施形態では磁性体115,116がハウジング111の外部に突出して配置されることも出来る。
【0048】
漏れ磁束検出センサ114は、好ましくはホール素子(Hall element)を含む。このようなホール素子は磁気場と電流の相互作用によるホール効果として固体内で磁気場と電流方向に直角に発生する電圧を利用する素子であって、出力が磁気場と電流の積に比例するなどの性質があるため、磁気場の測定、磁気センサ、その他の電流計、磁気ヘッド、マイクロ波電力計などに使われることが出来る。
【0049】
ヨーク部材112は磁束経路が良好に形成できるようにするため、実質的にU状を有するフェライトであることが好ましい。しかし、図5には好ましい一実施形態としてU状のヨーク部材112を図示しているが、磁束経路が形成され得る構造及び状態であれば良い。
【0050】
ヨーク部材112の一表面には一定の大きさの開口部113が形成される。開口部113はヨーク部材112を通して形成された磁束を人為的に外部に漏れるようにするため形成されたものである。図面にはヨーク部材112の中央の上端に開口部113が形成されたものと図示されているが、これは本発明の一例であり開口部113はヨーク部材112の表面であれば何処にも形成されることが出来る。
【0051】
また、開口部113はその形成された形態には関係なく、ヨーク部材112を通して形成された磁気回路上の磁束が漏れるような程度の形及び大きさ(深さ)を有すれば良い。開口部113が小さすぎると、漏れる磁束の大きさが小さいため漏れ磁束を検出するのに信頼性が落ち、逆に大きく形成すると作業の効率性が落ちる。従って、開口部113はヨーク部材112の表面から内部に形成するが、上記ヨーク部材の幅に比べて10〜30%の深さに形成されることが好ましい。
【0052】
図5を参照して、本発明の第1実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置100をさらに具体的に説明する。冷却熱処理工程で素材110の冷却過程が進行することにより、素材110の状態は常磁性のオーステナイト状態(γ相)から強磁性のフェライト状態(α相)に変化する。この際、素材110が強磁性体に徐々に変わることにより、素材110から所定の間隔離隔して設けられた第1、2磁性体115,116、素材110及びヨーク部材112の間には磁気経路が形成され磁束118が発生することとなる。このような磁束118は素材110が常磁性のオーステナイト状態から強磁性のフェライト状態に変態することによってその強さが徐々に増加する。これは電気回路上の抵抗値の変化が電流値を変化させる原理と同様に上記磁気回路上で素材の変態に応じて磁気リラクタンス(Reluctance)値が変わると磁束の値が変化する原理による。
【0053】
この際、ヨーク部材112の表面に形成された開口部113では第1、2磁性体115,116、素材110及びヨーク部材112を通して形成された磁束118のうち一部が漏れる。言い換えると、磁束118はヨーク部材112の内部及び表面に沿って流れるが、図面のように開口部113が形成された場合には、その開口部113の外側に磁束が漏れる。上記のように開口部113から漏れた漏れ磁束を漏れ磁束検出センサ114で検出する。
【0054】
このように、素材110の状態が常磁性のオーステナイト状態(γ相)から強磁性のフェライト状態(α相)に漸次変態されることによって、第1磁性体115、素材110、第2磁性体116及びヨーク部材112を通して形成される磁気回路上の磁束118の強さが増加し、これによって開口部113から漏れる漏れ磁束119の大きさも増加する。従って、漏れ磁束検出センサ114で検出される漏れ磁束119の検出信号は素材110の変態が進行するほど、その大きさは増加する。
【0055】
分析部117では上記検出された漏れ磁束の強さと素材の変態量との相関関係を分析して素材110の変態量を検出する。ここで、分析部117はマイクロプロセッサまたはソフトウェアで具現されることができ、当技術分野において通常の知識を有している者であれば所定のプログラムを利用して具現できる。さらに、分析部117は漏れ磁束検出センサ114から検出信号を有線を通してだけでなく、無線でも受信可能である。このような本発明の変態量のオンライン測定装置はランアウトテーブルまたは加速冷却帯内に複数の箇所に設けられ各位置から素材の変態量をオンラインで測定できる。
【0056】
図6は、本発明の第2実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。
【0057】
図6を参照すると、本発明の第2実施形態による変態量のオンライン測定装置200は、冷却物質223を含む内部空間を有するハウジング211、ハウジング211の内部空間に提供され、両端が素材210に向かい素材210と一定の距離だけ離隔して設けられ、表面に一定の深さでスリット213が形成されたヨーク部材212、ヨーク部材212の両端にそれぞれ提供された第1、2磁性体216,217、スリット213の内部に設けられ、第1磁性体216、第1金属部材218、素材210、第2金属部材219、第2磁性体217及びヨーク部材212で形成された磁気回路上の磁束220のうちスリット213の内部を貫通する磁束を検出する少なくとも一つの磁束検出センサ215及び上記少なくとも一つの磁束検出信号を分析して素材210の変態量を測定する分析部224を含んで構成される。
【0058】
この際、本発明の変態量のオンライン測定装置200は、図面に図示された通り、第1、2磁性体216,217と素材210との間に磁気回路をそれぞれ形成させる第1、2金属部材218,219をさらに含むことが出来る。第1、2金属部材218,219は第1、2磁性体216,217と素材210との間に設けられ、第1、2磁性体216,217と素材210との間に磁束経路を効果的に形成することが出来る。
【0059】
この場合、第1磁性体216、第1金属部材218、素材210、第2金属部材219、第2磁性体217及びヨーク部材212を通して磁気経路が形成され、上記磁気経路上には磁束220が発生する。第1、2金属部材218,219は、第1、2磁性体216,217と素材210との間に磁束経路を効果的に形成できる手段であれば良いが、本発明の良好な一実施形態では複数の鋼線ワイヤが集合したブラッシュまたは断面が円形のローラ(未図示)であることが好ましい。
【0060】
このような第1、2ワイヤブラッシュまたは第1、2ローラは強磁性体系列の鋼線を使用し、ヨーク部材112の荷重を支えることの出来る強性と弾性を有することが好ましい。また、第1、2ワイヤブラッシュまたはローラは第1、2磁性体216,217にそれぞれ付着すると同時に素材210に接触し、上記移動する素材210の板変形による屈曲部を吸収できるよう製作されることが好ましい。
【0061】
図面にはスリット213がヨーク部材212の中央の上端に形成されたものと図示されているが、これは本発明の一例であり、スリット213はヨーク部材212の表面であればどこにも形成されることが出来る。
【0062】
図7は、図6に図示された金属素材の変態量のオンライン測定装置のスリットの詳細図である。図7を参照すると、本発明の第2実施形態による測定装置200のヨーク部材212に一定の深さDでスリット213が形成される。スリット213はヨーク部材212の幅Lに比べて20〜80%の深さDで形成されることが好ましい。それは20%以下に形成されると磁束が貫通する面積が少ないためホールセンサから検出される磁束の信頼性が落ち、80%以上に形成されるとヨーク部材の製作の困難さ及び強度の低下により作業の効率性が低下するためである。
【0063】
スリット213の内部には一つの基板214が挿入され、基板214上には少なくとも一つの磁束検出センサ215が形成される。上記の通り、磁束検出センサ215はその一例として、好ましくはホール効果を利用して磁束の強さを検出するホールセンサであることが出来る。基板214はスリット213の内部断面と平行に挿入される。図面には図示されていないが、基板214には上記少なくとも一つの磁束検出センサ215と接続した電気的な回路が形成され、上記少なくとも一つの磁束検出センサ215から検出された磁束の強さ信号が分析部224に伝送されるよう設定される。
【0064】
素材210の冷却過程で素材210が常磁性体から強磁性体に漸次相変態することによって、第1磁性体216、素材210、第2磁性体217及びヨーク部材212を通して磁気経路が形成され、上記磁気経路上には磁束220が発生し、磁束220の強さは冷却が進行するほど、即ち常磁性体から強磁性体に相変態されるほど大きくなる。
【0065】
この際、上記磁気回路上に発生した磁束220は、ヨーク部材212の内面に沿って流れるが、図面のように深いスリット213が形成される場合には、そのスリット213に磁束221が貫通して通過することとなる。上記のようにスリット213から漏れて通過する磁束221を少なくとも一つの磁束検出センサ215で検出する。分析部224ではこのような検出された磁束の強さと変態量との相関関係を分析して素材210の変態量を検出することとなる。磁束検出センサ215が2つ以上の場合には分析部224から検出された磁束の大きさの平均値を計算し上記磁束の平均値と変態量の相関関係を分析して素材210の変態量を測定することとなる。
【0066】
図8は、本発明の第3実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。図8を参照すると、本発明の第3実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置300は、冷却熱処理工程で移動中の素材310に外周面が接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材311、円筒部材311の内部空間に提供され両端が円筒部材311の内部面に向かい、素材310と一定の距離だけ離隔して設けられ、表面に開口部313が形成されたヨーク部材312、ヨーク部材312の両端にそれぞれ提供された第1、2磁性体315,316、第1磁性体315、素材310、第2磁性体316及びヨーク部材312を通して形成される磁気経路上の磁束318のうち開口部313から漏れる漏れ磁束319を検出する漏れ磁束検出センサ314、上記検出された漏れ磁束の信号を分析して素材310の変態量を測定する分析部317を含んで構成される。
【0067】
図9は、本発明の第4実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。図9を参照すると、本発明の第4実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置400は、冷却熱処理工程で移動中の素材410に外周面が接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材411、円筒部材411の内部空間の内部面に両端が向かい、その表面部に一定の深さでスリット413が形成されたヨーク部材412、一面はヨーク部材412の両端にそれぞれ付着し反対面は円筒部材411の内部面にそれぞれ付着した第1磁性体及び第2磁性体416,417、スリット413の内部に設けられ、第1及び第2磁性体416,417により発生して第1磁性体416、素材410、第2磁性体417及びヨーク部材412で形成された磁気経路上の磁束418のうちスリット413の内部を貫通する磁束の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサ415及び予め設定された磁束の強さ及び金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる素材410の変態量を計算する分析部419を含む。
【0068】
本発明の第3及び第4実施形態において、本発明の金属素材の変態量のオンライン測定装置300,400は圧延の後、高温の金属素材310,410に接触して素材310,410の変態量を測定するため、好ましくは上記測定装置の冷却のための装置が必要であり得る。このために図8及び図9に図示された通り、本発明で円筒部材311,411はその内部空間に冷却物質を含むことが出来る。上記冷却物質は円筒部材の内部構成要素であるヨーク部材312,412、第1、2磁性体315,316,416,417、磁束検出センサ314,415などを冷却させるためのもので、例えば、冷却水、冷却気体または冷却油などが使用できる。このような冷却物質は円筒部材311,411を密封し上記円筒部材の内部に所定の直径を有するチューブ(未図示)を挿入して設置し上記チューブを通して特定の冷却物質(冷却気体、冷却水、冷却油など)を流して排出させることにより、本発明の測定装置を冷却させることも出来る。
【0069】
この際、上記冷却用チューブは如何なる形態を有してもまたは如何なる位置に設置されても関係ない。しかし、上記チューブは温度に敏感な磁束検出センサ314,415が位置した開口部313またはスリット413を含んでヨーク部材312,412の一部または全部を囲うよう形成されることが好ましい。このように、本発明による素材のオンライン測定装置が高温の環境で作動する場合、上記の実施形態による冷却装置が備えられることが出来る。
【0070】
図10は、本発明の第3及び第4実施形態による変態量測定装置の円筒部材の概略的な配置図である。図10を参照すると、発明による変態量測定装置300,400の円筒部材311,411は、冷却熱処理工程で複数の移送ロール41〜43により移動される金属素材310,410の表面上に接触して金属素材310,410の移動に応じて金属素材310,410との摩擦によって自主的に回転する。円筒部材311,411の内部空間には、図8及び図9に図示された通り、素材310,410の変態量測定のための本発明の構成要素が配置されている。好ましくは、円筒部材311,411内には素材の変態量測定のための本発明の構成要素セットが複数個配置される。より好ましくは、セットは素材310,410の幅方向に複数個配置される。
【0071】
円筒部材311,411は非磁性物質で製作されることが好ましく、より好ましくはオーステナイト系列のステンレス系物質で製作される。これは、図4のように第1、2磁性体と金属素材との間に形成される磁気経路に磁気的な影響を与えたいことが好ましいためである。また、円筒部材311,411は素材310,410の幅方向の全体に対して変態量を測定するため上記幅方向に配置されることが好ましい。
【0072】
また、図8及び図9に図示された通り、円筒部材311,411の一端には適切な常用スリップリングを設けて複数の磁束検出センサ314,415の駆動に必要な電源線の引き込みと各磁束検出センサ314,415の測定信号線を外部に引き出せるよう具現できる。上記測定信号は円筒部材311,411の付近に設けられたターミナルボックスから必要な際に1次増幅とフィルタリングを経た後分析部317,419へ伝送するよう具現できる。
【0073】
また、分析部317,419はマイクロプロセッサまたはソフトウェアで具現でき、本発明が属するする技術分野において通常の知識を有している者であれば所定のプログラムを利用して具現できる。さらに、分析部317,419は磁束検出センサ314,415から検出信号を有線を通してだけでなく無線でも受信可能である。このような本発明の変態量のオンライン測定装置300,400は円筒部材311,411内の複数の箇所に設けられ各位置から素材の変態量をオンラインで測定できる。
【0074】
図8及び図9において、円筒部材311,411は素材310,410の移動に応じて回転し、円筒部材311,411の内部面に付着したヨーク部材312,412の両端が素材310,410に向かうと、第1、2磁性体315,416、316,417により発生した磁束118により磁束経路が形成され、開口部313から漏れる磁束の強さまたはスリット413を漏れ貫通する磁束の強さを検出し、検出された磁束の強さと変態量との相関関係を利用して金属素材310,410の変態量をオンラインで検出する。このように、図8及び図9に図示された本発明の第3、4実施形態における変態量の測定過程は、図5乃至図7に図示された本発明の第1、2実施形態と同一であるためこれに対する重複説明は省略する。
【0075】
図11の(a)〜(d)は本発明の第1〜4実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置のヨーク部材例示図である。図11の(a)〜(d)を参照すると、本発明によるヨーク部材312の両端は長方形または扇形の形状に具現されることが出来る。しかし、図11の(a)〜(d)は本発明によるヨーク部材312に対する例示図に過ぎず、ヨーク部材312の形状はヨーク部材312を通して形成される磁気経路上の磁束を利用して金属素材の変態量をより正確に測定できる程度に磁束経路を形成できれば十分である。
【0076】
図面の例示的な形態において第1、2磁性体316,317は、円筒部材311の内部面に付着するため第1、2磁性体316,317が円筒部材311の内部面に堅固かつ良好に付着するよう円筒部材311の内部面の曲率半径を考えてその形状を具現する。また、図面には図示されていないが第1、2磁性体316,317と円筒部材311の内部面との間に第1、2強磁性部材が配置される場合にも第1、2強磁性部材の形状を円筒部材311の内部面の曲率半径を考えて具現することが好ましい。特に、本発明の一実施形態でヨーク部材312及び第1、2磁性体316,317は、好ましくは一体型で具現され、より好ましくは上記一体型で具現されたヨーク部材312及びヨーク部材312に付着した第1、2磁性体316,317はその側面が扇形に具現され、上記扇形の弧は円筒部材311の内部面と同一な曲率半径で円筒部材311の内部面に付着する。
【0077】
また、本発明の他の実施形態で、ヨーク部材312、ヨーク部材312に付着した第1、2磁性体316,317及び第1、2磁性体316,317に付着した第1、2強磁性部材(未図示)は、好ましくは一体型で具現され、より好ましくは上記一体型で具現されたヨーク部材312、第1、2磁性体316,317及び第1、2強磁性部材(未図示)はその側面が扇形に具現され、上記扇形の弧は円筒部材311の内部面と同一な曲率半径で円筒部材311の内部面に付着する。
【0078】
さらに、ヨーク部材312の表面に形成される開口部(またはスリット)313は必要に応じて様々な形態に具現されることができ、その形成される位置もヨーク部材312の表面のどこでも可能である。
【0079】
図12は、本発明の第5実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。図12を参照すると、本発明の第5実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置500は、外周面が金属素材510に接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材511、円筒部材511の内部面にU状の両端が付着し、金属素材510と磁気経路を形成するためのU状のヨーク部材512、ヨーク部材512の一部分に挿入されヨーク部材512を通して磁気経路を形成するための磁束を発生させる第1、2磁性体516,517、ヨーク部材512の他の部分に挿入され第1及び第2磁性体516,517により発生して第1磁性体516、ヨーク部材512、第2磁性体517及び金属素材510で形成された磁気経路上の磁束518の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサ515及び予め設定された磁束の強さ及び金属素材の変態量との相関関係を利用して上記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる金属素材510の変態量を計算する分析部519を含んで構成される。
【0080】
図12に例示された本発明の第5実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置500は、図8及び図9に図示された本発明の第3、4実施形態による金属素材の変態量測定装置300,400と比べたとき、第1、2磁性体315,316及び磁束検出センサ314の配置において多少差はあるが、金属素材510の変態量測定原理は同一であるため重複説明は省略する。即ち、図12に図示された変態量のオンライン測定装置500は、基本的に第1、2磁性体516,517から磁束518を発生させ、このような磁束518はヨーク部材512及び金属素材510を通して磁気経路を形成し、この際の磁束の強さを磁束検出センサ515から検出し金属素材510の変態率による磁束の強さを分析部519で測定する。
【0081】
このように、本発明の様々な実施形態ではヨーク部材と金属素材との間に磁気経路を効率的に発生させるよう磁性体を配置することと、上記磁気経路上の磁束の強さを効果的に検出することが何よりも重要である。このような効率的な磁気経路の発生及び効果的な磁束の強さ検出のために本発明の実施形態はより多様に具現できる。
【0082】
図13は、図12の金属素材の変態量のオンライン測定装置のヨーク部材の例示図である。図13に図示された通り、本発明の第5実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置500のU状のヨーク部材512は、好ましくは両端の側面が扇形に具現され、上記扇形の弧は円筒部材511の内部面と同一な曲率半径で円筒部材511の内部面に付着する。これは円筒部材511が回転する間に一定時間以上磁気経路を通した閉回路が行われるようにし、円筒部材511の内部面に堅固に付着するようにしたものである。
【0083】
以上で説明した詳細な説明及び図面の内容は、本発明による素材の変態量のオンライン測定装置に対する技術思想を説明したもので、これは発明の最も良好な実施形態を例示的に説明するものであり、本発明を限定するものではない。特に、本発明の一実施形態として磁性体を永久磁石として適用できると記載しているが、例えば磁性体の性質を有する電磁石なども適用可能である。これと類似に上記開口部は漏れ磁束を発生させる構造であれば良く、またスリットはホールセンサを挿入でき上記ホールセンサに磁束が貫通できる構造であれば如何なる構造にも形成できる。
【0084】
また、本技術分野の通常の知識を有する者であれば誰でも本発明の技術的思想の範囲を外れない範囲内で様々な変形及び模倣が可能ということは明らかである。従って、本発明の権利範囲は上記の詳細な説明または図面により決定されず添付の特許請求の範囲により決定される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によると、冷却熱処理工程で冷却中の金属素材の変態量をオンラインで正確に測定でき、変態量の測定時に素材が振動してもオンラインで測定が可能である。
【0086】
また、本発明によると、変態量の測定時にリフトオフを十分確保できるため、素材が振動してもオンラインで測定が可能である。また、ランアウトテーブルまたは加速冷却帯内の高温、高湿の劣悪な環境に影響されず変態量を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】一般の熱延設備における工程図を図示した図である。
【図2】一般の熱延工程のランアウトテーブル(ROT)の概略的な構成図である。
【図3】一般の加速冷却帯の概略的な構成図である。
【図4】本発明による冷却熱処理工程における冷却過程で相変態と磁気的な特性の変化図である。
【図5】本発明の第1実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。
【図7】図6に図示された金属素材の変態量のオンライン測定装置のスリットの詳細図である。
【図8】本発明の第3実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。
【図9】本発明の第4実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。
【図10】図8及び図9に開示された変態量測定装置の円筒部材の配置例示図である。
【図11】(a)〜(d)は本発明の第1〜4実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置のヨーク部材の例示図である。
【図12】本発明の第5実施形態による金属素材の変態量のオンライン測定装置の概略構成図である。
【図13】図12の金属素材の変態量のオンライン測定装置のヨーク部材の例示図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動中の高温の金属素材を冷却する冷却熱処理工程で前記金属素材の変態量をオンラインで測定する装置であって、
両端が前記金属素材に向かって前記金属素材と離隔して設けられ、その表面部に開口部が形成されたU状のヨーク部材と、
前記ヨーク部材の両端にそれぞれ提供された第1及び第2磁性体と、
前記第1及び第2磁性体により前記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成される磁気経路の磁束のうち前記開口部から漏れる磁束の強さを検出する磁束検出センサと、
予め設定された漏れ磁束の強さと金属素材の変態量との相関関係を利用して前記検出された漏れ磁束の強さによる前記金属素材の変態量を測定する分析部と、を含むことを特徴とする金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項2】
前記開口部は、
前記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの10〜30%の深さだけ形成されたことを特徴とする請求項1に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項3】
移動中の高温の金属素材を冷却する冷却熱処理工程で前記金属素材の変態量をオンラインで測定する装置であって、
両端が金属素材に向かって前記金属素材と離隔して設けられ、その表面に一定の深さにスリットが形成されたU状のヨーク部材と、
前記ヨーク部材の両端にそれぞれ提供された第1及び第2磁性体と、
前記スリットの内部に設けられ、前記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束のうち前記スリットの内部を漏れ貫通する磁束の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサと、
予め設定された磁束の強さと金属素材の変態量との相関関係を利用して前記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる前記金属素材の変態量を計算する分析部と、を含むことを特徴とする金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項4】
前記第1及び第2磁性体と前記金属素材との間に磁気経路をそれぞれ形成させる第1及び第2金属部材をさらに含み、
前記漏れ磁束検出センサは前記第1磁性体、第1金属部材、金属素材、第2金属部材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路の磁束のうち前記スリットの内部を貫通する磁束の強さを検出することを特徴とする請求項3に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項5】
前記第1及び第2金属部材は、
ワイヤブラッシュ(wire brush)であることを特徴とする請求項4に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項6】
前記第1及び第2金属部材は、
前記ヨーク部材の両端に対応するハウジングの外部にそれぞれ付着することを特徴とする請求項4に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項7】
前記スリットは、
前記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの20〜80%の深さだけ形成されることを特徴とする請求項3に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項8】
前記ハウジングの内部空間に一定大きさの直径を有するチューブを配置し、前記チューブの内部に冷却媒体を流して前記ハウジング内部の冷却物質を冷却させる手段をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項9】
前記チューブは、
前記スリットを含んで前記ヨーク部材の一部または全部を囲うよう配置されることを特徴とする請求項8に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項10】
冷却物質を含む内部空間を有するハウジングをさらに含み、
前記ハウジングの内部空間に前記ヨーク部材、第1、2磁性体及び磁束検出センサが設けられることを特徴とする請求項1または3に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項11】
前記冷却物質は、冷却油、冷却水または冷却気体のうち選ばれる一つであることを特徴とする請求項10に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項12】
前記ハウジングは、
前記冷却物質が外部から流入される流入管及び外部へ排出される排出管を含むことを特徴とする請求項10に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項13】
移動中の高温の金属素材を冷却する冷却熱処理工程で前記金属素材の変態量をオンラインで測定する装置であって、
外周面が金属素材に接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材と、
前記円筒部材の内部空間の内部面に両端が向かい、その表面部に開口部が形成されたU状のヨーク部材と、
一面は前記ヨーク部材の両端にそれぞれ付着し反対面は前記円筒部材の内部面にそれぞれ付着した第1及び第2磁性体と、
前記第1及び第2磁性体により前記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材を通して形成される磁気経路上の磁束のうち前記開口部から漏れる磁束の強さを検出する磁束検出センサと、
予め設定された漏れ磁束の強さと金属素材の変態量との相関関係を利用して前記検出された漏れ磁束の強さによる前記金属素材の変態量を測定する分析部と、を含むことを特徴とする金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項14】
前記開口部は、
前記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの10〜30%の深さだけ形成されたことを特徴とする請求項13に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項15】
前記円筒部材の内部空間に前記金属素材の幅方向に前記ヨーク部材が複数個さらに配置され、前記各ヨーク部材に前記第1、2磁性体及び少なくとも一つの磁束検出センサが付着され、前記分析部で前記各磁束検出センサから検出された少なくとも一つの磁束の強さによる前記金属素材の変態量を計算することを特徴とする請求項13に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項16】
移動中の高温の金属素材を冷却する冷却熱処理工程で前記金属素材の変態量をオンラインで測定する装置であって、
外周面が金属素材に接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材と、
前記円筒部材の内部空間の内部面に両端が向かい、その表面部に一定の深さにスリットが形成されたU状のヨーク部材と、
一面は前記ヨーク部材の両端にそれぞれ付着し反対面は前記円筒部材の内部面にそれぞれ付着した第1及び第2磁性体と、
前記スリットの内部に設けられ、前記第1及び第2磁性体により前記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束のうち前記スリットの内部を漏れ貫通する磁束の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサと、
予め設定された磁束の強さ及び金属素材の変態量との相関関係を利用して前記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる前記金属素材の変態量を計算する分析部と、を含むことを特徴とする金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項17】
前記第1及び第2磁性体と前記円筒部材の内部面の間で磁気経路をそれぞれ形成させる第1及び第2強磁性部材をさらに含み、
前記漏れ磁束検出センサは前記第1及び第2磁性体により前記第1磁性体、第1強磁性部材、金属素材、第2強磁性部材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束のうち前記スリットの内部を貫通する磁束の強さを検出することを特徴とする請求項16に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項18】
前記第1、2強磁性部材は、
前記ヨーク部材及び第1、2磁性体と一体型で具現されたことを特徴とする請求項17に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項19】
前記円筒部材の内部空間に前記金属素材の幅方向に前記ヨーク部材が複数個さらに配置され、前記各ヨーク部材に前記第1、2磁性体及び少なくとも一つの磁束検出センサが付着され、前記分析部で前記各磁束検出センサから検出された少なくとも一つの磁束の強さによる前記金属素材の変態量を計算することを特徴とする請求項16に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項20】
前記スリットは、
前記ヨーク部材の表面から深さ方向に全体深さの20〜80%の深さだけ形成されることを特徴とする請求項16に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項21】
両端に前記第1及び第2磁性体がそれぞれ付着したヨーク部材はその側面が扇形に形成され、前記扇形の弧は前記円筒部材の内部面と同一な曲率半径で前記円筒部材の内部面に付着したことを特徴とする請求項13または16に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項22】
移動中の高温の金属素材を冷却する冷却熱処理工程で前記金属素材の変態量をオンラインで測定する装置であって、
外周面が金属素材に接触して回転可能で内部空間が備えられた円筒部材と、
前記円筒部材の内部面にU状の両端が付着し、前記金属素材と磁気経路を形成するためのU状のヨーク部材と、
前記ヨーク部材の一部分に挿入され前記ヨーク部材を通して磁気経路を形成するための磁束を発生させる第1、2磁性体と、
前記ヨーク部材の他の部分に挿入され前記第1及び第2磁性体により発生して前記第1磁性体、金属素材、第2磁性体及びヨーク部材で形成された磁気経路上の磁束の強さを検出する少なくとも一つの磁束検出センサと、
予め設定された磁束の強さ及び金属素材の変態量との相関関係を利用して前記検出された少なくとも一つの磁束の強さによる前記金属素材の変態量を計算する分析部と、を含むことを特徴とする金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項23】
前記円筒部材は、
非磁性物質で製作されたことを特徴とする請求項13、16及び22の何れか1項に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項24】
前記円筒部材は、
その内部空間に冷却物質を含むことを特徴とする請求項13、16及び22の何れか1項に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項25】
前記冷却物質は、冷却油、冷却水または冷却気体のうち選ばれる一つであることを特徴とする請求項24に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項26】
前記U状のヨーク部材は、
その側面が扇形に具現され、前記扇形の弧は前記円筒部材の内部面と同一な曲率半径で前記円筒部材の内部面に付着したことを特徴とする請求項22に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項27】
前記第1、2磁性体はサマリウム系またはニオビウム系の永久磁石であることを特徴とする請求項1、3、13、16及び22の何れか1項に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。
【請求項28】
前記磁束検出センサはホール素子を含むことを特徴とする請求項1、3、13、16及び22の何れか1項に記載の金属素材の変態量のオンライン測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−515144(P2009−515144A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535435(P2008−535435)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001998
【国際公開番号】WO2007/043740
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508055342)
【Fターム(参考)】