説明

金属膜形成用組成物及びその製造方法

【課題】焼成後の金属膜の表面に析出する析出物の発生を抑制することが可能な金属膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】水溶性ポリマー及び金属化合物を含有する金属膜形成用組成物において、金属化合物以外の金属物質の含有量を、50ppm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜形成用組成物及びその製造方法に関する。より詳しくは、電子デバイスの製造分野で用いることができる、金属膜形成用組成物材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスにおいては、配線等を形成する場合等、基板等に金属膜が形成される。この金属膜の形成方法として、金属化合物含有樹脂組成物を塗布した後、この組成物を焼成することにより形成する方法がある(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平8−176177号公報
【特許文献2】特開2004−96106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、焼成後の金属膜の表面には、何らかの析出物が発生する場合がある。金属膜の表面に析出物が発生すると、金属配線パターンの寸法が狂い、形成されたデバイスの電気特性が低下する場合がある。
【0004】
以上の課題に鑑み、本発明では焼成後の金属膜の表面に析出する析出物の発生を抑制することが可能な金属酸化膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記析出物が、金属膜形成用組成物中の金属化合物以外に含有される金属物質によるものであることを突き止め、この金属物質の含有量を、所定量に調整することにより、析出物の発生を抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、水溶性ポリマー、金属化合物を含む金属膜形成用組成物であって、前記金属化合物以外の、金属物質の含有量が、50ppm以下であることを特徴とする金属膜形成用組成物を提供するものである。
また、本発明は、水溶性ポリマー、金属化合物を含む金属膜形成用組成物の製造方法であって、前記金属化合物以外の、金属物質を取り除く工程を有する金属膜形成用組成物の製造方法を提供するものである。
なお、本発明における「金属膜」とは、金属膜及び金属酸化膜も含まれる概念である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属膜形成用組成物に含有されている金属化合物以外の金属物質の含有量を50ppm以下とすることによって、形成される金属膜における析出物の発生を抑制することが可能となる。これによって、上記金属膜を用いて製造されたデバイスの電気特性の低下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る金属膜形成用組成物は、水溶性ポリマーと、金属化合物とを含み、金属化合物以外の金属物質の含有量が、50ppm以下であることを特徴とする。
このように、金属物質の含有量を50ppm以下にすることによって、形成される金属膜における析出物の発生を抑制することが可能となる。また、金属物質の含有量は、30ppm以下であることがより好ましい。
ここで、本発明でいう「金属物質」としては、上記金属元素及びケイ素元素が挙げられる。この金属元素としては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素が挙げられ、特にナトリウム元素、カルシウム元素を挙げることができる。
【0009】
特に、本発明の金属膜形成用組成物においては、金属元素の含有量を10ppm以下にすることが好ましく、5ppm以下にすることがより好ましい。この金属元素の中でも、特にナトリウム元素については、含有量を5ppm以下にすることが好ましく、1ppm以下することがより好ましい。上記の範囲の含有量にすることにより、形成される金属膜における析出物の発生を、より抑制することができる。
また、本発明の金属膜形成用組成物において、ケイ素元素の量を35ppm以下にすることが好ましく、20ppm以下にすることがより好ましい。このケイ素元素は後述する界面活性剤にも含まれる場合があるが、界面活性剤に含まれるケイ素元素も合わせて上記の量以下になるようにすることにより、形成される金属膜における析出物の発生を抑制することができる。
【0010】
以下、金属膜形成用組成物中の各成分について説明する。
【0011】
[水溶性ポリマー]
水溶性ポリマーとしては、金属膜を形成することが可能であり、室温で水に溶解し得る水溶性ポリマーであれば、特に限定されるものではない。
上記水溶性ポリマーは、イオン交換樹脂にて精製し、金属物質を取り除いておくことが好ましい。イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が挙げられる。このうち、陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
このような水溶性ポリマーとしては、アクリル系重合体、ビニル系重合体、セルロース系誘導体、アルキレングリコール系重合体、尿素系重合体、メラミン系重合体、エポキシ系重合体、アミド系重合体等が好ましく用いられる。
【0013】
アクリル系重合体としては、例えば、メタクリル酸メチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン等の単量体を構成成分とする重合体又は共重合体が挙げられる。
【0014】
ビニル系重合体としては、例えば、酢酸ビニルのような単量体を構成成分とする重合体又は共重合体が挙げられる。
セルロース系誘導体としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、セルロールアセテートヘキサヒドロフタレート、エチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0015】
アルキレングリコール系重合体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の付加重合体又は付加共重合体等が挙げられる。
【0016】
尿素系重合体としては、例えば、メチロール化尿素、ジメチロール化尿素、エチレン尿素等を構成成分とするものが挙げられる。
【0017】
さらに、エポキシ系重合体、アミド系重合体等の中で水溶性のものも用いることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記水溶性ポリマーの質量平均分子量は、1000から1000000であることが好ましい。
【0018】
上記水溶性ポリマーの中でも、セルロース系誘導体を用いることが好ましく、その中でもヒドロキシアルキルセルロースを用いることが特に好ましい。セルロース系誘導体は、熱分解性が良好であり、塗布後の金属膜形成用組成物を焼成する際の温度を低くすることができる。
さらに、ノンスピンコータ(例えばスリットノズルコータ)で金属膜形成用組成物を塗布する場合、水溶性ポリマー(特に上記セルロース系誘導体)は、2質量%水溶液の20℃における粘度が、1.5mP・sから6.0mP・sであることが好ましく、2.0mP・sから2.9mP・sであることがより好ましい。粘度が1.5mP・s以上のセルロース系誘導体を用いることによって、金属膜形成用組成物の塗布性、成膜性を向上させることができる。また粘度が6.0mP・s以下のセルロース系誘導体を用いることによって、金属膜形成用組成物の経時的な増粘を、より一層防止することができる。
特にノンスピンコータを塗布装置として用いる場合には、増粘が大きいと均一な膜厚を有する膜を形成することができなくなってしまう。
【0019】
[金属化合物]
金属化合物としては、金属膜を形成することが可能な化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、ビスマス、ロジウム、ルテニウム、バナジウム、クロム、スズ、鉛、ケイ素、白金、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、チタン、モリブデン、タングステン、インジウム、パラジウム、ジルコニウム等の金属を含む化合物が挙げられる。これらの金属化合物としては、例えば上記金属の錯体;ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、シクロヘキサプロピオン酸、シクロヘキサン酢酸、ノナン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、ロイシン酸、ヒドロキシピバリン酸、ピバリン酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピメリン酸、コルク酸、エチルブチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、ヒドロキシ安息香酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リシノール酸等の有機酸塩;、硝酸、硫酸、塩酸、炭酸、リン酸等無機酸塩;メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等アルコキシド;酸化物;窒化物;塩化物、臭化物、弗化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;水酸化物;炭化物;が挙げられる。
【0020】
本発明に係る金属膜形成用組成物においては、上記金属化合物の中でも、水溶性の化合物を用いることが好ましい。
上記金属化合物として好ましいものとしては、Bi(NO、Ti(OC(C14N)、ZrO(NO)等が挙げられる。
特に、Ti(OC(C14N)、Ti(C(OH)、ZrO(NO、ZrO(OCOCH又はその水和物を用いた場合には、酸化チタン膜、酸化ジルコニウム膜を形成することができる。これら酸化チタン膜、酸化ジルコニウム膜は、従来のスパッタ法やゾルゲル法により形成されることが一般的である。しかしながら、本発明の金属膜形成用組成物によれば、塗布し、焼成するのみで容易に膜を形成することができるうえ、保存安定性が良好であることから、スパッタ法やゾルゲル法を用いるより好ましい。
【0021】
[有機溶剤]
本発明に係る金属膜形成用組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。この有機溶剤としては、上記水溶性ポリマー及び金属化合物を溶解することが可能であればよく、特に限定されるものではないが、沸点が100℃以上の水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0022】
有機溶剤としては、例えばジオキサン(bp=101℃)、2,2−ジメチル−1−プロパノール(bp=114℃)、トリオキサン(bp=115℃)、プロパギルアルコール(bp=115℃)、1−ブタノール(bp=118℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(bp=120℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(bp=121℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(bp=125℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp=132℃)、N,N−ジメチルエタノールアミン(bp=135℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp=136℃)、N−エチルモルホリン(bp=138℃)、2−イソプロポキシエタノール(bp=139℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(bp=145℃)、乳酸メチル(bp=145℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(bp=145℃)、乳酸エチル(bp=156℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(bp=160℃)、3−メトキシ−1−ブタノール(bp=160℃)、N,N−ジエチルエタノールアミン(bp=162℃)、2−(メトキシメトキシ)エタノール(bp=168℃)、ジアセトンアルコール(bp=168℃)、2−ブトキシエタノール(bp=170℃)、フルフリルアルコール(bp=170℃)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(bp=174℃)、テトラヒドロフルフリルアルコール(bp=178℃)、ε−カプロラクタム(bp=180℃)、2−イソペンチルオキシエタノール(bp=181℃)、2,3−ブタンジオール(bp=181℃)、エチレングリコールモノアセテート(bp=182℃)、グリセリンモノアセテート(bp=182℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(bp=188℃)、プロピレングリコール(bp=188℃)、ジメチルスルホキシド(bp=189℃)、ジメチルスルホキシド(bp=189℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(bp=190℃)、1,2−ブタンジオール(bp=190.5℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp=194℃)、テトラエチレングリコール(bp=194℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp=197℃)、エチレングリコール(bp=198℃)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(bp=198℃)、2,4−ペンタンジオール(bp=198℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp=202℃)、N−メチルピロリドン(bp=202℃)、イソプレングリコール(bp=203℃)、1,3−ブタンジオール(bp=208℃)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(bp=211℃)、1,3−プロパンジオール(bp=214℃)、1,4−ブタンジオール(bp=229℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp=230℃)、ジプロピレングリコール(bp=232℃)、2−ブテン−1,4−ジオール(bp=235℃)、1,5−ペンタンジオール(bp=242℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(bp=243℃)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、ここに列挙した化合物に限定されるものではない。
【0023】
このうち、塗布性を良好なものとするために、沸点が110℃から200℃の有機溶剤を組み合わせて用いることが好ましい。なお、沸点が200℃以上の有機溶剤は、乾燥性が劣り、金属パターンを形成するまでに時間がかかるため、単独で用いるよりも、沸点が低い有機溶剤と組み合わせて用いることが好ましい。
特に、金属化合物として硝酸ビスマスを用いる場合、溶剤は、硝酸ビスマスの溶解性が高いグリコール系溶剤を含むことが好ましい。特に好ましいグリコール系溶剤としては、エチレングリコールが挙げられる。このグリコール系溶剤は、金属膜形成用組成物の全組成物に対して、1質量%から5質量%であることが好ましい。
【0024】
[界面活性剤]
本発明に係る金属膜形成用組成物は、好ましくは界面活性剤を更に含有してもよい。界面活性剤を含有することにより、塗布性を向上させることができる。
【0025】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0026】
陽イオン性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン系界面活性剤、アミドベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤、ヒドロキシスルホベタイン系界面活性剤、アミドスルホベタイン系界面活性剤、ホスホベタイン系界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤、アミノプロピオン酸系界面活性剤、アミノ酸系界面活性剤等が挙げられる。より具体的には、アルキルベタイン、アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルイミノジプロピオン酸等が挙げられる。
【0027】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アシル化アミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、脂肪酸石ケン、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。なお、ここで用いられる塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等の金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム塩等の有機アンモニウム塩等が好ましい。
【0028】
両性界面活性剤としては、上述の陽イオン性界面活性剤と同様に、アラニン系界面活性剤、イミダゾニウムベタイン系界面活性剤、アミドプロピルベタイン系界面活性剤、アミノジプロピオン酸塩界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシアルキレン等が挙げられる。
【0030】
このうち、有機ケイ素化合物を含有するケイ素系界面活性剤を用いることが特に好ましい。ケイ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業社製)のようなアルキルシロキサン基とエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基が結合した非イオン性ケイ素系界面活性剤、商品名X−70−090(信越化学工業社製)のようなアルキルシロキサン基とエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基にパーフルオロアルキルエステル基が結合した非イオン性含フッ素ケイ素系界面活性剤等を用いることが可能である。
【0031】
ただし、上記ケイ素系界面活性剤の金属膜形成用組成物における含有量は、5000ppm以下であることが好ましく、2000ppm以下であることがより好ましく、1500ppm以下であることがより一層好ましい。これにより、塗布性を向上させるとともに、形成される金属膜の表面における析出物の発生をより抑制することが可能となる。
【0032】
[金属膜形成用組成物の組成]
本発明に係る金属膜形成用組成物は、水溶性ポリマーと、金属化合物とを主成分として含有し、好ましくは界面活性剤を含有する。また、必要に応じてレベリング剤、発色剤、染料、顔料等の着色剤、充填剤、密着性付与剤、可塑剤等を添加してもよい。なお、それぞれの成分については特に制限はなく、公知の成分を用いることができる。
【0033】
金属化合物の含有量は、金属化合物に含まれる金属の量に換算して、金属膜形成用組成物の全組成に対して、0.01質量%から5質量%であることが好ましく、0.1質量%から2質量%であることがより好ましい。金属の含有量を0.01質量%以上とすることによって、金属膜を十分形成することができるようになる。また、含有量を5質量%以下とすることにより、金属膜形成用組成物の保存安定性を向上させることができるとともに、塗布性を向上させることができる。
【0034】
また、水溶性ポリマーの含有量は、金属膜形成用組成物の全組成に対して、1質量%から50質量%であることが好ましい。含有量を1質量%以上とすることによって、金属膜形成用組成物の塗布性を向上させることができる。また、含有量を20質量%以下とすることによって、膜の形成を容易にすることができる。
なお、この金属膜形成用組成部物を塗布する方法によって、好ましい樹脂成分の含有量が異なる。例えば、ノンスピン方式で塗布する場合には、樹脂成分の含有量は、金属膜形成用組成物の全組成に対して、1質量%から10質量%であることが好ましく、2質量%から6質量%であることがより好ましい。一方、スピン方式で塗布する場合には、樹脂成分の含有量は、金属膜形成用組成物の全組成に対して、10質量%から50質量%であることが好ましく、15質量%から25質量%であることがより好ましい。
【0035】
有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、金属膜形成用組成物の全組成に対して、70質量%から98質量%であることが好ましく、85質量%から95質量%であることがより好ましい。
また、上記金属膜形成用組成物は、粘度が1cPから20cPであることが好ましく、5cPから15cPであることがより好ましい。
【0036】
[金属膜形成用組成物の製造方法]
本発明の金属膜形成用組成物の製造方法は、金属化合物以外の金属物質を取り除く工程を有する。前記金属物質を取り除く工程は、前記水溶性ポリマーを、イオン交換樹脂、特に好ましくは陽イオン交換樹脂にて精製する方法が挙げられる。水溶性ポリマーの精製は、金属物質を所定量まで除去すればよい。
金属膜形成用組成物は、上記精製された水溶性ポリマーと、金属化合物と一緒に溶剤に溶解させることにより得られる。その際、界面活性剤やレベリング剤、発色剤、染料等の各種添加剤も併せて添加することができる。
【0037】
[金属膜を形成する方法]
以下、本実施の形態の金属膜形成用組成物を用いて金属膜を形成する手順について説明する。金属膜は、ガラス板等の基板に塗布した金属膜形成用組成物を、焼成することにより得られる。焼成温度は、金属膜が形成される温度であれば、特に限定されることはなく、通常400℃から700℃程度である。また、基板としてシリコンウェハを用いた場合には、塗布した金属膜形成用組成物をアッシングすることにより金属膜を形成することもできる。
【0038】
金属膜形成用組成物の塗布方法としてはスピンコータ、ノンスピンコータ、ロールコータ、カーテンフローコータ、スプレイコータ、ディップコータ、バーコータ、テーブルコータ塗装等により塗布することができ、いずれの方法でもよい。特に、ノンスピンコータを用いることが好ましい。
【0039】
このような方法により得られた金属膜は、電子デバイスの金属配線部分を形成する際に用いることができる。また、この金属膜は、好ましくは電子放出素子ディスプレィの電子放出部を製造するために用いられる。
【0040】
[実施例1]
ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−SSL、日本曹達社製)、硝酸ビスマス5水和物、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMEとする)及びエチレングリコール(以下EGとする)、ケイ素系界面活性剤(商品名:グラノール440、共栄社化学社製)を表1に示される組成にて混合することにより金属膜形成用組成物を得た。なお、この金属膜形成用組成物の粘度は、約10cPであった。
また、上記ヒドロキシプロピルセルロースは、プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し、イオン交換樹脂(商品名:アンバーライト IR124、オルガノ社製)200ccを入れた容量400ccのカラムにて精製した。
また、この金属膜形成用組成物においては、ナトリウム元素が400ppbであり、ケイ素元素が19ppmであった。
なお、このナトリウム元素の量は原子吸光分析(フレーム法、装置:Z−8200、日立製作所社製)で測定し、ケイ素元素の量はICP分析(装置JY238Ultrace、堀場製作所社製)を用いて測定した。
【0041】
[実施例2]
ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−SSL、日本曹達社製)、Ti(OC(C14N)(商品名:オルガチックス TC−400、松本製薬工業社製)、PGME及びプロパノール、ケイ素系界面活性剤(商品名:グラノール440、共栄社化学社製)を表1に示される組成にて混合することにより金属膜形成用組成物を得た。なお、この金属膜形成用組成物の粘度は、約10cPであった。なお、ヒドロキシプロピルセルロースは、実施例1と同様に精製したものを用いた。
【0042】
[実施例3]
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL、日本曹達社製)、ZrO(NO・nHO(商品名:ジルコゾールZN、第一稀元素化学工業社製)、PGME及びHO、ケイ素系界面活性剤(商品名:グラノール440、共栄社化学社製)を表1に示される組成にて混合することにより金属膜形成用組成物を得た。なお、この金属膜形成用組成物の粘度は、約10cPであった。なお、ヒドロキシプロピルセルロースは、実施例1と同様に精製したものを用いた。
【0043】
【表1】

【0044】
[比較例1]
ヒドロキシプロピルセルロースを精製せずに用いた以外は実施例1と同様にして、表1に示される組成にて金属膜形成用組成物を製造した。
この金属膜形成用組成物においては、ナトリウム元素が30ppmであり、ケイ素元素が38ppmであった。
【0045】
実施例及び比較例の金属膜形成用組成物を、ノンスピンコータ(TR63、東京応化工業製)にて、1250×1100mmのガラス基板に1μmの厚さで塗布した後、500℃から600℃で15分間焼成することにより金属膜を得た。
また、上記金属膜形成用組成物を、シリコンウェハ、及びSiOウエハにスピンコートしたものについても同様にして、金属膜を形成し、評価した。
そして、得られた金属膜の表面を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率5万倍で確認した。その結果、実施例1から3の試料は、析出物の発生を確認することができなかったのに対し、比較例1の試料は析出物の発生が確認された。
これによって、本発明に係る金属膜形成用組成物が、焼成後の金属膜の表面における析出物の発生の抑制に有効であることが示された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマー、金属化合物を含む金属膜形成用組成物であって、
前記金属化合物以外の金属物質の含有量が、50ppm以下であることを特徴とする金属膜形成用組成物。
【請求項2】
前記金属物質は、金属元素又はケイ素元素の少なくともどちらか一種を含有する請求項1に記載の金属膜形成用組成物。
【請求項3】
前記ケイ素元素の含有量は、35ppm以下である請求項2に記載の金属膜形成用組成物。
【請求項4】
前記金属元素は、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素から選択される少なくとも一種である請求項2又は3に記載の金属膜形成用組成物。
【請求項5】
前記金属元素の含有量は、30ppm以下である請求項2から4のいずれかに記載の金属膜形成用組成物。
【請求項6】
前記金属元素は、ナトリウム元素である請求項5に記載の金属膜形成用組成物。
【請求項7】
ナトリウム元素の含有量は、5ppm以下である請求項6に記載の金属膜形成用組成物。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーは、イオン交換樹脂にて精製されたものである請求項1から7いずれかに記載の金属膜形成用組成物。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーは、ヒドロキシアルキルセルロースを含有する請求項1から8いずれかに記載の金属膜形成用組成物。
【請求項10】
ケイ素系界面活性剤を含有し、その含有量は、溶剤以外の全固形成分に対して5000ppm以下である請求項1から9いずれかに記載の金属膜形成用組成物。
【請求項11】
水溶性ポリマー、金属化合物を含む金属膜形成用組成物の製造方法であって、
前記金属化合物以外の金属物質を取り除く工程を有する金属膜形成用組成物の製造方法。
【請求項12】
前記金属物質を取り除く工程は、前記水溶性ポリマーを、イオン交換樹脂にて精製する工程を有する請求項11に記載の金属膜形成用組成物の製造方法。


【公開番号】特開2008−13696(P2008−13696A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187625(P2006−187625)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】