説明

金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法および住宅部材の製造方法

【課題】金属製被着体の接合面の形状に関わらず金属製被着体と熱可塑性樹脂とを密着させて接合させることができ、接合に要する時間を短縮でき、接合面の形状や位置合わせの制約を受けることもなく、さらに熱可塑性樹脂の成形および金属製被着体との接合のための一連の工程を簡略化できる金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法および住宅部材の製造方法を提供する。
【解決手段】金属製被着体1における熱可塑性樹脂4との接合面2に粘着層3を形成する工程と、熱溶融した熱可塑性樹脂4を粘着層3に接触させ、次いで固化させる工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法および住宅部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅に設置される建材や設備等を構成する住宅部材として、金属製被着体と熱可塑性樹脂とを接合したものが用いられている。住宅部材の製造において金属製被着体と熱可塑性樹脂とを接合する際には、例えば、予め所望の形状に成形した熱可塑性樹脂の成形品を用いて、この熱可塑性樹脂の成形品と金属製被着体とを接着する方法等が用いられている。
【0003】
しかしながら、金属製被着体と熱可塑性樹脂の成形品とを接着する方法では、金属製被着体および熱可塑性樹脂の成形品の接合面の形状や位置合わせに精度が要求される。さらに、熱可塑性樹脂の成形工程、および金属製被着体と熱可塑性樹脂の成形品との接合工程等を含む多段階の工程が必要になる。
【0004】
従来、金属製被着体と樹脂との接合方法として、特許文献1および特許文献2に記載の技術が提案されている。特許文献1では、透明フィルムのベース層と、金属製被着体としての金属薄膜層と、接着層とが積層された表皮材の接着層側に、予め成形されたポリオレフィン樹脂の成形品を配置し、さらに表皮材を加熱して軟化させた後、表皮材の接着層側を減圧雰囲気として表皮材の接着層とポリオレフィン樹脂の成形品の表面とを接触させることで、表皮材とポリオレフィン樹脂の成形品とを接合している。
【0005】
しかしながら、この技術では予め所望の形状に成形したポリオレフィン樹脂の成形品を用いているので、表皮材およびポリオレフィン樹脂の成形品の接合面の形状や位置合わせの精度を得るためには、表皮材を加熱して軟化し、そして真空ラミネーション装置等を用いた減圧下での特殊な条件を適用することが必要とされる。
【0006】
特許文献2では、金属製被着体としての鉄製基材にナイロン等の樹脂粉体を流動浸漬法により塗装してコーティング層を形成し、乾燥させて金型内に配置した後、熱可塑性樹脂を射出成形して、粉体塗装によるコーティング層と熱可塑性樹脂とを熱接着させている。
【0007】
しかしながら、この技術では流動浸漬法による粉体塗装等を要するため工程が複雑になり、また汎用性に欠ける。
【0008】
このような背景にあって、住宅部材における金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合においても接合強度や工程の簡略化等の面から更なる検討がなされており、例えば、金属製被着体とポリプロピレン樹脂とを接合するために金属製被着体の接合面に塩素化ポリプロピレンを用いたプライマー層を形成し、次いで射出成形等により、熱溶融した熱可塑性樹脂をプライマー層に接触、固化させることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−224459号公報
【特許文献2】特開平6−234163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この技術では、金属製被着体の接合面にプライマーを塗布した後、溶剤の乾燥と塗膜の安定化のための養生に例えば数時間という長時間を要する。また、射出成形のように溶融樹脂の流れが大きい場合、金属製被着体の接合面に形成したプライマー層が押し流されて接合強度が低下する場合がある。さらに、プライマーの塗布時に用いる有機溶剤が作業場所や設備面での制約となる場合もある。
【0011】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、金属製被着体の接合面の形状に関わらず金属製被着体と熱可塑性樹脂とを密着させて接合させることができ、接合に要する時間を短縮でき、接合面の形状や位置合わせの制約を受けることもなく、さらに熱可塑性樹脂の成形および金属製被着体との接合のための一連の工程を簡略化できる金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法および住宅部材の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0013】
第1に、本発明の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法は、金属製被着体における熱可塑性樹脂との接合面に粘着層を形成する工程と、熱溶融した熱可塑性樹脂を粘着層に接触させ、次いで固化させる工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
第2に、上記第1の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法において、射出成形、トランスファ成形、または圧縮成形による成形時に、熱溶融した熱可塑性樹脂を金型内で粘着層に接触させることを特徴とする。
【0015】
第3に、上記第1または第2の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法において、粘着層は、基材の両面に粘着剤を有する両面粘着テープからなることを特徴とする。
【0016】
第4に、上記第3の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法において、両面粘着テープの基材が高分子発泡体であることを特徴とする。
【0017】
第5に、上記第1ないし第4のいずれかの金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法において、熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする。
【0018】
第6に、本発明の住宅部材の製造方法は、上記第1ないし第5のいずれかの方法により、住宅部材の構成材である金属製被着体と熱可塑性樹脂とを接合する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記第1の発明によれば、金属製被着体における熱可塑性樹脂との接合面に粘着層を形成しているので、金属製被着体と熱可塑性樹脂とが粘着層により密着し、これらを接合させることができる。そしてプライマー塗布処理の場合のように養生を必要としないため、接合に要する時間を大幅に短縮できる。さらに、熱可塑性樹脂を熱溶融することにより、金属製被着体の接合面の形状に関わらず金属製被着体の接合面に粘着層を介して熱可塑性樹脂を密着させることができるため、接合面の形状や位置合わせの制約を受けることもない。
【0020】
上記第2の発明によれば、射出成形、トランスファ成形、または圧縮成形による成形時に金属製被着体における熱可塑性樹脂との接合を同時に行うことができるので、上記第1の発明の効果に加え、熱可塑性樹脂を予め成形してから金属製被着体との接合を行う場合に比べて、熱可塑性樹脂の成形および金属製被着体との接合のための一連の工程を大幅に簡略化することができる。
【0021】
上記第3の発明によれば、粘着層を両面粘着テープから構成することで、上記第1および第2の発明の効果に加え、金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合強度を高めることができる。
【0022】
上記第4の発明によれば、両面粘着テープの基材を高分子発泡体とすることで、上記第3の発明の効果に加え、金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合面に剥離方向に負荷を受けても高分子発泡体により応力が分散される。従って、金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合強度を特に高めることができる。
【0023】
上記第5の発明によれば、熱可塑性樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いることで、上記第1ないし第4の発明の効果に加え、汎用性の高い樹脂を用いて接合強度の高い金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合体を得ることができる。
【0024】
上記第6の発明によれば、上記第1ないし第5の方法により金属製被着体と熱可塑性樹脂とを接合しているので、住宅部材に応じた金属製被着体の接合面の形状に関わらず金属製被着体と熱可塑性樹脂とが密着して接合した住宅部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法の実施形態を工程順に説明する断面図である。
【図2】本発明の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法の別の実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法の実施形態を工程順に説明する断面図である。
【0028】
本実施形態では先ず、図1(a)に示すように、金属製被着体1を用意する。金属製被着体1としては、板形状、角材形状、曲面形状等の剛性を有する一定形状のものであれば特に制限なく用いることができる。
【0029】
金属製被着体1の材質としては、アルミニウム、銅、鉄等の金属やそれらの合金等の各種の金属材を特に制限なく用いることができる。また、金属材の表面に薄い塗装処理が施されたものであってもよい。
【0030】
次に、金属製被着体1の熱可塑性樹脂4との接合面2に、図1(b)に示すように粘着層3を形成する。
【0031】
粘着層3は、粘着剤を有する層であり、例えば、粘着剤が薄い均一なシート状に形成されたシート状粘着剤、支持体としての基材の両面に薄く均一な厚さの粘着剤が形成された両面粘着テープ等を、粘着層3を形成するための材料として用いることができる。例えば、これらのシート状粘着剤や両面粘着テープが2枚の離型フィルムの間に保持された市販品を用いることができる。
【0032】
粘着層3に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0033】
金属製被着体1の接合面2に粘着層3を形成する際には、例えば、2枚の離型フィルムの間に保持された粘着層3の片面側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着層3の片面を金属製被着体1に密着させ、次いで残りの離型フィルムを剥離する。
【0034】
粘着層3を両面粘着テープから構成した場合、図1(c)に示すような金属製被着体1と熱可塑性樹脂4との接合による接合強度を高めることができる。両面粘着テープの基材としては、例えば、不織布、織布、あるいはアクリル樹脂発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の高分子発泡体等が挙げられる。特に、両面粘着テープの基材を高分子発泡体とすることで、接合面2に剥離方向への負荷を受けても高分子発泡体により応力が分散されるため、金属製被着体1と熱可塑性樹脂4との接合強度を特に高めることができる。
【0035】
なお、粘着層3を金属製被着体1の接合面2に配置する態様は、図1(b)、(c)のように連続した一枚の粘着層3を金属製被着体1の接合面2全面に配置する態様であってもよく、あるいは、接合強度が確保できるのであれば、複数枚の粘着層3を金属製被着体1の接合面2の表面に沿って横方向に離間して配置した態様であってもよい。
【0036】
次に、熱溶融した熱可塑性樹脂4を、金属製被着体1の接合面2に形成した粘着層3に接触させ、次いで固化させる。これにより、図1(c)に示すように、金属製被着体1と熱可塑性樹脂4とが接合される。
【0037】
例えば、射出成形、トランスファ成形、または圧縮成形による成形時に、熱溶融した熱可塑性樹脂4を金型内で粘着層3に接触させることができる。このようにすることで、成形時に金属製被着体1と熱可塑性樹脂4との接合を同時に行うことができるので、熱可塑性樹脂4を予め成形してから金属製被着体1との接合を行う場合に比べて、熱可塑性樹脂4の成形および金属製被着体1との接合のための一連の工程を大幅に簡略化することができる。
【0038】
熱溶融した熱可塑性樹脂4を、金属製被着体1の接合面2に形成した粘着層3に接触させる態様としては、上記の射出成形等による方法の他、例えば、熱可塑性樹脂4の成形品全体のうち、金属製被着体1との接合面2側の部分のみを熱溶融して接触させる態様が挙げられる。
【0039】
熱可塑性樹脂4としては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いることで、汎用性の高い樹脂を用いて接合強度の高い金属製被着体1と熱可塑性樹脂4との接合体を得ることができる。
【0040】
図2は、本発明の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法の別の実施形態を説明する断面図である。
【0041】
本実施形態では、金属製被着体1として、曲面を有する接合面2を有するものを用いて、この接合面2に粘着層3を形成し、次いで熱溶融した熱可塑性樹脂4を粘着層3に接触させ、固化させることにより金属製被着体1と熱可塑性樹脂4とを接合している。
【0042】
このように金属製被着体1が曲面形状等の3次元形状であっても、熱可塑性樹脂4を熱溶融することにより、金属製被着体1の接合面2の形状に関わらず金属製被着体1の接合面2に粘着層3を介して熱可塑性樹脂4を密着させて接合することができる。従って本発明の接合方法は、住宅に設置される建材や設備等を構成する住宅部材の製造に好適に適用でき、住宅部材に応じた金属製被着体1の形状に関わらず、その接合面2に粘着層3を介して熱可塑性樹脂4を密着させて接合することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
金属製被着体として薄い塗装処理が施されたアルミ板(エポキシプレコートアルミ板)を用い、2枚の離型フィルムの間に保持された粘着剤(コクヨS&T(株)製、ドットライナープロニーズ)の片面側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着剤面をアルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に密着させ、次いで残りの離型フィルムを剥離することにより、粘着剤からなる粘着層を形成した。
【0044】
ホットプレスの上熱板を40℃、下熱板を300℃に加熱し、下熱板にポリプロピレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製、PP−GF40−02)を置き、溶融させた。次いで溶融したポリプロピレン樹脂の上に、接合面を下方に向けたアルミ板を置き、圧縮成形を行った。
【0045】
このようにして得られたアルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体について、アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合強度を測定した。アルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体を幅10mm×長さ100〜150mmに切断し、試験片を作製した。ポリプロピレン樹脂の一部をカッターナイフ等を用いて接合面で剥離し、剥離したポリプロピレン樹脂を接合面に対して90度の方向に引っ張り、平均接合強度[N/cm]を測定した。なお、試験片の作製および接合強度の測定は、圧縮成形から24時間経過後に行った。
【0046】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合状態、および接合強度の測定結果を表1に示す。
<実施例2>
金属製被着体として薄い塗装処理が施されたアルミ板(エポキシプレコートアルミ板)を用い、2枚の離型フィルムの間に保持された両面粘着テープ(日東電工(株)製、5150、基材:PET不織布)の片面側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着剤面をアルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に密着させ、次いで残りの離型フィルムを剥離することにより、両面粘着テープからなる粘着層を形成した。
【0047】
その後、ポリプロピレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製、PP−GF40−02)を用いて実施例1と同様の条件にて圧縮成形を行い、アルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体を得た。
【0048】
得られたアルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体について、実施例1と同様にしてアルミ板とポリプロピレン樹脂との接合強度を測定した。
【0049】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合状態、および接合強度の測定結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例2において、両面粘着テープとして、Y−4932(住友スリーエム(株)製、基材:発泡アクリル樹脂)を用い、それ以外は実施例2と同様にして、アルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に両面粘着テープからなる粘着層を形成した。
【0050】
その後、ポリプロピレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製、PP−GF40−02)を用いて実施例1と同様の条件にて圧縮成形を行い、アルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体を得た。
【0051】
得られたアルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体について、実施例1と同様にしてアルミ板とポリプロピレン樹脂との接合強度を測定した。
【0052】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合状態、および接合強度の測定結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例3と同様にして、アルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に両面粘着テープからなる粘着層を形成した。
【0053】
射出成形用の金型内に、ポリプロピレン樹脂との接合面を内側にしてアルミ板を固定し、射出成形機を用いてポリプロピレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製、PP−GF40−02)を射出成形した。
【0054】
得られたアルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体について、実施例1と同様にしてアルミ板とポリプロピレン樹脂との接合強度を測定した。
【0055】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合状態、および接合強度の測定結果を表1に示す。
<比較例1>
アルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に粘着層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、アルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体を得た。
【0056】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合状態、および接合強度の測定結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例1において、アルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に粘着層を形成せずに、これに代えて、塩素化ポリプロピレン系プライマー(東洋化成工業(株)製、F−7)を接合面に塗布し、常温にて10時間養生を行いプライマー層を形成した。
【0057】
その後、ポリプロピレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製、PP−GF40−02)を用いて実施例1と同様の条件にて圧縮成形を行い、アルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体を得た。
【0058】
得られたアルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体について、実施例1と同様にしてアルミ板とポリプロピレン樹脂との接合強度を測定した。
【0059】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合状態、および接合強度の測定結果を表1に示す。
<比較例3>
比較例2と同様にしてアルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面にプライマー層を形成した後、射出成形用の金型内に、ポリプロピレン樹脂との接合面を内側にしてアルミ板を固定し、射出成形機を用いてポリプロピレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製、PP−GF40−02)を射出成形した。
【0060】
得られたアルミ板−ポリプロピレン樹脂接合体について、実施例1と同様にしてアルミ板とポリプロピレン樹脂との接合強度を測定した。
【0061】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合状態、および接合強度の測定結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1より、アルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に粘着層を形成せずに圧縮成形を行った比較例1では、ポリプロピレン樹脂がアルミ板から剥離し、アルミ板とポリプロピレン樹脂とを接合させることができなかった。
【0064】
また、粘着層に代えてプライマー層を形成した比較例2、3では、アルミ板とポリプロピレン樹脂とを接合させることはできたが、溶剤の乾燥と塗膜の安定化のために10時間程度の養生が必要であった。
【0065】
これに対し、アルミ板のポリプロピレン樹脂との接合面に粘着層を形成した実施例1〜4では、粘着層形成後の養生を行わなくても、アルミ板とポリプロピレン樹脂とが粘着層により密着し、これらを接合させることができた。
【0066】
粘着層に両面粘着テープを用いた実施例2では、粘着剤からなる粘着層を形成した実施例1に比べてさらに接合強度が向上した。
【0067】
特に、両面粘着テープの基材として高分子発泡体を用いた実施例3では、高分子発泡体により引き剥がしに掛かる応力が分散されるため、接合強度が大幅に向上した。
【0068】
アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合を射出成形により行った実施例4においても、接合強度は実施例3の圧縮成形の場合と同レベルであった。そして、これらの実施例2〜4は、プライマー層形成後に養生を行った比較例2、3と同等またはそれ以上の優れた接合強度が得られた。
【0069】
なお、アルミ板とポリプロピレン樹脂との接合を射出成形により行った比較例3では、接合面での溶融樹脂の流れに伴うプライマーの移動によるものと見られる非接合箇所が見られ、平均接合強度は比較例2の圧縮成形の場合に比べて低下した。
【符号の説明】
【0070】
1 金属製被着体
2 接合面
3 粘着層
4 熱可塑性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法であって、金属製被着体における熱可塑性樹脂との接合面に粘着層を形成する工程と、熱溶融した熱可塑性樹脂を粘着層に接触させ、次いで固化させる工程とを含むことを特徴とする金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法。
【請求項2】
射出成形、トランスファ成形、または圧縮成形による成形時に、熱溶融した熱可塑性樹脂を金型内で粘着層に接触させることを特徴とする請求項1に記載の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法。
【請求項3】
粘着層は、基材の両面に粘着剤を有する両面粘着テープからなることを特徴とする請求項1または2に記載の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法。
【請求項4】
両面粘着テープの基材が高分子発泡体であることを特徴とする請求項3に記載の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の金属製被着体と熱可塑性樹脂との接合方法。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか一項に記載の方法により、住宅部材の構成材である金属製被着体と熱可塑性樹脂とを接合する工程を含むことを特徴とする住宅部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−194762(P2010−194762A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39944(P2009−39944)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】