説明

金属部材とプラスチック部材との接合構造、その製造方法及び電子装置の筐体

【課題】結合強度が高い金属部材とプラスチック部材との接合構造、その製造方法及び電子装置の筐体を提供する。
【解決手段】金属部材とプラスチック部材との接合構造において、金属部材と、インサート成型方法により金属部材と一体に成型されたプラスチック部材を含み、金属部材とプラスチック部材とは、接着剤層によって結合されている。金属部材とプラスチック部材との接合構造の製造方法において、前記金属部材を用意するステップと、前記金属部材の表面に接着剤を塗布し、固化させるステップと、金属部材をインサート材とし、固化された接着剤層上に溶融プラスチックを射出して複合成型するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材とプラスチック部材との接合構造、その製造方法、該金属部材とプラスチック部材との接合構造を有する電子装置の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス技術の進歩に伴って、電子製品は、日々小型化、コンパクト化、多機能化に進んでいる。マグネシウム合金は、軽量で、延展性に優れ、機械的強度が高く、成型加工が容易であるから、電子装置の筐体の材料に広く使用されている。
【0003】
ところが、マグネシウム合金の電磁シールド性により、合金製筐体に収容されたアンテナが正常に無線信号を受信することができなくなるゆえ、電子製品の移動通信や無線アクセスなどの機能が悪くなる。
【0004】
その問題を解決するために、従来の電子製品は、マグネシウム合金製の表示部のリアカバー、あるいは筐体の箇所にプラスチック製アンテナカバーを設置して、無線信号がそのプラスチック製アンテナカバーを通過し、筐体内のアンテナが正常に受信するようにする。
【0005】
従来のプラスチック製アンテナカバーと金属製筐体とは、一般的に係合構造或いはリベッターによって結合されている。しかし、そのような結合構造は、結合部位に隙間が容易に発生し、金属製部分とプラスチック製部分との間の結合状態が緩む現像も発生するので、製品の強度に悪い影響を与えることができる。
【0006】
また、今の電子製品は、軽く、薄く、短く、小さくなる方向へ発展しているので、電子装置の筐体の厚さがますます薄くなる。電子装置の筐体が一定の厚さになれば、たとえば1mm以下になると、係合構造或いはリベッターの結合強度が低くなり製品の品質が悪くなる問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、結合強度が高い金属部材とプラスチック部材との接合構造、その製造方法及び電子装置の筐体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
金属部材とプラスチック部材との接合構造において、金属部材と、インサート成型方法により金属部材と一体に成型されたプラスチック部材を含み、前記金属部材とプラスチック部材とは、粘着剤層によって結合されている。
【0009】
金属部材とプラスチック部材との接合構造の製造方法において、前記金属部材を用意するステップと、前記金属部材の表面に粘着剤を塗布し、固化させるステップと、金属部材をインサート材とし、固化された粘着剤層上に溶融プラスチックを射出して複合成型するステップと、を含む。
【0010】
電子装置の筐体において、金属製本体と、インサート成型方法により金属製本体と一体成型されたプラスチック製アンテナカバーを含み、金属部材とプラスチック製アンテナカバーとは、粘着剤層によって結合されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属部材とプラスチック部材との接合構造は、金属部材とプラスチック部材との間に粘着剤層を形成するので、脱落しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る金属部材とプラスチック部材との接合構造及び電子装置の筐体に対して詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施例に係る金属部材とプラスチック部材との接合構造は、金属製本体1と、インサート成型方法によって金属製本体1に一体に成型されたプラスチック製アンテナカバー2と、金属製本体1とアンテナカバー2との間に形成された粘着剤層3と、を含む電子装置の筐体10である。
【0014】
前記金属製本体1の材料として、合金材料を採用することができる。好ましくは、マグネシウム合金、アルミニウム合金、チタン合金等、あるいはこれらの複合材料を採用する。本実施例では、マグネシウム合金を採用した。前記金属製本体1の成形方法として、キャスティング(Casting)、プレス(Press)、鍛造などの金属加工方法を採用することができる。
【0015】
前記プラスチック製アンテナカバー2の材料として、熱収縮率が小さく、線膨張係数が前記金属本体1の材料と似ている材料を採用する。好ましくは、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレト(PBT)等のエンプラ(Engineering Plastic)を単独または混合して用いる。本実施例では、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を採用した。
【0016】
前記粘着剤層3の厚さが15〜30μmである。その材料として、エポキシ(epoxy)樹脂、ポリメルカプタン(polymercaptan)、ポリアミド(polyamide)、カーボンブラック(carbon black)、第四級アミン(quaternary amine)を単独または混合して用いる。前記金属製本体1と前記プラスチック製アンテナカバー2との間の結合力をさらに高めるために、複数の層から形成され、且つ毎層の化学組成が違う粘着剤を使用することができる。たとえば、前記金属製本体1に接近する層には、金属との接着力が強い接着剤を用い、前記プラスチック製アンテナカバー2に接近する層には、プラスチックとの接着力が強い接着剤を使用することである。
【0017】
前記電子装置の筐体10の製造方法は、つぎの4つのステップを含む。
【0018】
(1)前記金属製本体1を用意する。その製造方法として、キャスティング(Casting)、プレス(Press)、鍛造などの金属加工方法を用いることができる。好ましくは、プレス加工を採用する。
【0019】
(2)前記金属製本体1の表面に粘着剤を塗布する。その粘着剤として、熱硬化型粘着剤、あるいは光硬化型粘着剤を用いることができる。好ましくは、耐熱温度が180度以上である熱硬化型粘着剤を採用する。該熱硬化型粘着剤は、エポキシ樹脂、ポリメルカプタン、ポリアミド、カーボンブラック、第四級アミンなどから構成されるものである。該熱硬化型粘着剤は、加熱すると、粘着剤が化学変化により硬化し、また加熱しても軟化しないという特徴がある。
【0020】
(3)前記粘着剤を固化させる。その固化方法として、加熱、送風、あるいは特定の光線を照射することなどの方法を用いることができる。好ましくは、温度が150〜200度である環境で15〜30分間加熱して粘着剤を固化させるか、温度が180度である環境で20分間加熱して固化させる。
【0021】
(4)前記金属製本体1をインサート材として、先に用意した金型内に設置する。次に、金属製本体1の表面に固化された粘着剤層3が被覆されるように、金型内に溶融したプラスチックを射出する。次に、溶融された前記プラスチックを冷却させてプラスチック製アンテナカバー2を形成する。
【0022】
前記金属製本体1とプラスチック製アンテナカバー2との結合力を向上させるために、前記ステップ(2)を実施する前に、金属製本体1の表面に付着した錆、ほこりや油分などの汚れを除く工程を行うことができる。
【0023】
前記ステップ(2)に塗布した粘着剤層3を単層又は複数の層に形成することができる。前記粘着剤層3の品質を向上させるために、様々な添加剤、例えば固化剤、潤滑剤、安定剤などを添加することもできる。前記固化剤は、粘着剤の固化所要時間を短縮し、前記潤滑剤は、粘着剤の粘度を改善し、前記安定剤は、粘着剤層3の耐熱性、耐圧性や耐薬品性などを改善して使用寿命を延長することができる。
【0024】
前記金属製本体1表面に塗布した粘着剤は、金属に対して強い結合力を持つ。前記粘着剤が固化されると、粘着剤層3になる。その粘着剤層13と前記プラスチック製アンテナカバー2が同じく有機化合物であるため、両者の結合強度が高くなる。
【0025】
図2は、図1に示した電子装置の筐体10の断面を顕微鏡で50倍に拡大した写真である。図2では、左側の黒い区域が金属製本体11であり、右側の白い区域がプラスチック製アンテナカバー12である。金属製本体11とプラスチック製アンテナカバー12との結合区域には、粘着剤層133が形成されている。
【0026】
図2に示すように、インサート成型の過程において、前記粘着剤層133の表面には少量の気孔14が形成される。前記プラスチック製アンテナカバー12の一部分が前記気孔14に注入されるので結合界面の結合力を大きく高めることができる。
【0027】
本発明の金属部材とプラスチック部材との接合構造は、電子装置の筐体の製造に限られず、文具や工芸品など筐体の薄い製品にも用いられる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施の形態 に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正も又、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る金属部材とプラスチック部材との接合構造を示す図である。
【図2】図1に示した金属部材とプラスチック部材との接合構造の断面を顕微鏡で観察した拡大写真である。
【符号の説明】
【0030】
1 金属製本体
2 プラスチック製アンテナカバー
3 粘着剤層
10 電子装置の筐体
11 金属製本体
12 プラスチック製アンテナカバー
133 粘着剤層
14 気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材とプラスチック部材との接合構造において、
金属部材と、インサート成型方法により前記金属部材と一体に成型されたプラスチック部材と、を含み、
前記金属部材と前記プラスチック部材とは、粘着剤層によって結合されていることを特徴とする金属部材とプラスチック部材との接合構造。
【請求項2】
前記プラスチック部材の材料として、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレト(PBT)を単独または混合して用いることを特徴とする請求項1に記載の金属部材とプラスチック部材との接合構造。
【請求項3】
前記粘着剤層の材料として、エポキシ(epoxy)樹脂、ポリメルカプタン(polymercaptan)、ポリアミド(polyamide)、カーボンブラック(carbon black)、第四級アミン(quaternary amine)を単独または混合して用いることを特徴とする請求項1に記載の金属部材とプラスチック部材との接合構造。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚さが15〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属部材とプラスチック部材との接合構造。
【請求項5】
前記粘着剤層が、単層、二層又は複層構造であることを特徴とする請求項1に記載の金属部材とプラスチック部材との接合構造。
【請求項6】
金属部材とプラスチック部材との接合構造の製造方法において、
前記金属部材を用意するステップと、
前記金属部材の表面に粘着剤を塗布し、固化させるステップと、
前記金属部材をインサート材とし、固化された粘着剤層上に溶融プラスチックを射出して複合成型するステップと、を含むことを特徴とする金属部材とプラスチック部材との接合構造の製造方法。
【請求項7】
前記粘着剤が、耐熱温度が180摂氏度以上である熱硬化型粘着剤であり、エポキシ樹脂、ポリメルカプタン、ポリアミド、カーボンブラック、第四級アミンから構成されることを特徴とする請求項6に記載の金属部材とプラスチック部材との接合構造の製造方法。
【請求項8】
前記粘着剤に、一種あるいは多種の添加剤、例えば固化剤、潤滑剤、安定剤を添加することを特徴とする請求項7に記載の金属部材とプラスチック部材との接合構造の製造方法。
【請求項9】
前記粘着剤を固化させる温度が150〜200度であり、固化させる時間が15〜30分間であることを特徴とする請求項7に記載の金属部材とプラスチック部材との接合構造の製造方法。
【請求項10】
電子装置の筐体において、
金属製本体と、インサート成型方法により前記金属製本体と一体に成型されたプラスチック製アンテナカバーと、を含み、
前記金属部材とプラスチック製アンテナカバーとは、粘着剤層によって結合されていることを特徴とする電子装置の筐体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−273104(P2009−273104A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244987(P2008−244987)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(501346906)鴻準精密工業股▲フン▼有限公司 (82)
【Fターム(参考)】