説明

鉄筋の結合構造

【課題】 結合作業の効率を大幅に向上させると共に、特別な技量がなくても結合品質のバラツキが少なく、安全かつ低コストで鉄筋と鉄板等とを結合することができる。
【解決手段】 異形鉄筋2の一端部をプレス等で押圧圧縮して、ほぼ円型の平板状部14を有する板状部1を形成し、この板状部にドリル等によってボルト用の穴11を開口形成する。異形鉄筋2と鉄骨材である鉄板3等とは、この異形鉄筋に形成したボルト用の穴11とこの鉄板等に開口形成した穴31とにボルト4を差込んで、ナット5を締付けて結合する。したがって工事現場では、異形鉄筋2と鉄骨材である鉄板3等とは、ボルト4とナット5とで結合するだけで足りるため、特別な技量がなくても結合品質のバラツキが少なく、迅速、安全かつ低コストで結合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼管杭や柱用鉄骨部材と結合する異形鉄筋の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の配筋工事では、鉄筋を、丸パイプ鋼材、H形鋼材あるいは補強鋼材等の鉄骨部材等と結合する作業が少なからず発生する。図7〜図10にその具体例を示す。すなわち図7、図8は、鋼管杭503の杭頭部外周に、鉄筋コンクリート基礎506と連結するための鉄筋502を、溶接507で結合したものを示している。また図9、図10は、鉄筋コンクリート橋梁606の柱用鉄骨部材である円板状の定着プレート603の周辺に、機械継ぎ手608を溶接607で結合して、この機械継ぎ手に橋桁用の鉄筋602をねじ結合したものを示している。従来は、これらの例に示すように、鉄筋と鉄骨部材等とは、工事現場において溶接によって結合していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに上述したような工事現場での溶接結合には、次のような改良すべき問題があった。すなわち工事現場における溶接作業には、多大な時間が掛かる。、また溶接部分の錆や汚れ、雨や雪等の天候、あるいは溶接作業員の技量等によって、結合強度等の溶接品質にバラツキが生じ易い。しかも一旦コンクリートを打設すると、コンクリートで覆われた溶接部分の品質を確認することは困難となる。また溶接場所が高所である場合には、風雨等の天候によって作業の中断や遅れが生じ、あるいは作業の安全性が低下する場合もある。
【0004】
そこで本発明の目的は、結合作業の効率を大幅に向上させると共に、特別な技量がなくても結合品質のバラツキが少なく、安全かつ低コストで、鉄管等と結合することができる鉄筋の結合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、作業現場における溶接作業に替わる鉄筋の結合手段を各種検討した結果、鉄筋の一端に、例えば平板状の板状部を設け、この板状部にボルト用の穴を設ければ、鉄管等に設けた開口穴と、容易にボルト結合することが可能であることを見出した。そしてこのような鉄筋の結合構造は、極めて低コストで製作することができ、さらに特別な技量がなくても結合品質のバラツキが少なく、安全かつ迅速に鉄管等と結合することができることを見出した。すなわち本発明による鉄筋の結合構造の特徴は、鉄管または鉄板のいずれかと結合する異形鉄筋の結合構造であって、この異形鉄筋の一端部には、この一端部を押圧圧縮した板状部が形成してあり、この板状部には、ボルト用の穴が開口していることにある。
【0006】
また本発明による鉄筋の結合構造の他の特徴は、鉄管または鉄板のいずれかと結合する異形鉄筋の結合構造であって、異形鉄筋とこの異形鉄筋の一端部に結合される板状部材とを備え、この板状部材には、ボルト用の穴が開口していることにある。上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、溶接または圧接のいずれかによって結合するのが望ましい。また上記異形鉄筋の一端部には、雄ネジが形成してあり、上記板状部材には、この雄ネジと螺合する雌ネジが形成してあり、この板状部材とこの異形鉄筋の一端部とは、この雌ネジがこの雄ネジと螺合して結合されるようにしてもよい。
【0007】
また上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、連結部材を介して結合させることができる。すなわち上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、筒状の連結部材を介して結合するものであって、この連結部材の一端部は、その外周を押圧縮径してこの異形鉄筋の一端部の外周に圧着してある。また上記連結部材の他端部には、その内周に雌ネジが形成してあり、上記板状部材には、雄ネジが形成してある。そして上記連結部材の他端部と板状部材とは、上記雌ネジが上記雄ネジと螺合して結合されている。
【0008】
また上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、連結部材を介して、次のように結合させることもできる。すなわち上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、筒状の連結部材を介して結合するものであって、この異形鉄筋の一端部と板状部材とには、それぞれ雄ネジが形成してあり、この連結部材の両端部の内周には、この異形鉄筋の一端部と板状部材とに形成した雄ネジが螺合する雌ネジがそれぞれ形成してある。そして上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、それぞれの雄ネジが上記連結部材の両端部に形成した雌ネジと螺合して結合されている。
【0009】
ここで「鉄管」とは、例えば鉄筋コンクリート基礎を支える鋼管杭や、橋梁等の鉄筋コンクリート柱等に使用する中空管からなる鋼管部材を意味し、その断面形状や構造を問わない。また「鉄板」とは、鉄筋コンクリートの鉄骨部材の全部若しくは一部を構成する板状部材、または板状の要素を意味し、その形状や構造を問わない。「異形鉄筋」とは、外周上に竹節またはねじ状の節等を有する鉄筋を意味する。
【0010】
「一端部を押圧圧縮した板状部」とは、異形鉄筋の一端部を、鍛造、プレスあるいはハンマー等によって、板状に塑性変形させた部分を意味し、その面形状及び周囲形状を問わない。すなわち面形状には、平板形状に限らず曲面形状や折れ面形状も含み、周囲形状には、楕円や長円形状の他、多角形の形状等も含む。「ボルト用の穴」とは、上述したように、このボルト用の穴と、鉄管等に設けた穴とにボルトを通して、板状部とこの鉄管等とを結合するための開口穴を意味し、その穴の数や配置を問わない。
【0011】
「板状部材」とは、上述した「板状部」と同等であって、その面形状及び周囲形状を問わない。すなわち面形状には、平板形状に限らず曲面形状や折れ面形状も含み、周囲形状には、楕円や長円形状の他、多角形の形状等も含む。またここで「溶接」とは、接合部分を溶融して、両金属を原子結合するものを意味し、例えば、アーク溶接、ガス溶接及び突合せ抵抗溶接が該当する。また「圧接」とは、接合部分を溶融しない溶接を意味し、例えば摩擦圧接や熱間圧接が該当する。「筒状の連結部材」とは、所定の長さを有する中空管を意味する。
【0012】
「外周を押圧縮径して上記異形鉄筋の一端部の外周に圧着」とは、連結部材の一端部に異形鉄筋の一端部を挿入し、例えばダイス、プレスあるいはハンマーによって、この連結部材の一端部の外周に縮径力を加えて塑性変形させ、この異形鉄筋の外周に形成してある竹節等に、この連結部材の内周を噛み込ませて圧着することを意味する。
【発明の効果】
【0013】
このように発明を構成することによって、次の作用効果を奏することができる。すなわち異形鉄筋の一端部に、ボルト用の穴が開口する板状部を設けることによって、工事現場では、この板状部のボルト用の穴と鉄管等に設けた穴とを、ボルト結合するだけで足りるため、結合作業の効率を大幅に向上させると共に、特別な作業技量や溶接器などの工具等を必要とせず、また天候等の作業環境にも左右されることなく、容易かつ安全に異形鉄筋と鉄管等を結合することができ、また結合品質のバラツキ等を抑えることが可能となる。
【0014】
上記板状部を、異形鉄筋の一端部に押圧圧縮して形成すれば、この板状部を極めて低コストかつ迅速に形成することができる。また板状部と異形鉄筋とは、相互の結合部分を有しない一体構造であるため、高い強度、耐久性および信頼性等を確保できる。また異形鉄筋の一端部に、ボルト用の穴が開口している板状部材を結合するようにすれば、この板状部材と異形鉄筋とを別部品として製作できる。したがって既存の異形鉄筋をそのまま使用することができ、板状部材を、より容易に製作あるいは購入することができる。
【0015】
板状部材と異形鉄筋の一端部とを、溶接または圧接によって結合することによって、両者の結合を低コストで行なうことができる。また異形鉄筋の一端部に雄ねじを形成し、板状部材にこの雄ねじと螺合する雌ねじを形成し、両者をねじで結合するようにすれば、この板状部材を鉄管等にボルト結合した後で、この板状部材に異形鉄筋を結合することも可能になる。また板状部材と異形鉄筋の一端部とを、筒状の連結部材を介して結合することによって、結合部の強度、耐久性および信頼性を、より向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図6を参照しつつ、本発明による鉄筋の結合構造の構成と使用とを説明する。さて図1に示す結合構造は、外周に竹節21を設けた異形鉄筋2の一端部を、プレスで押圧圧縮して、ほぼ円型の平板状部14を有する板状部1を形成し、この板状部に、ドリル等によってボルト用の穴11を1個、開口形成したものである。図2は、上述した異形鉄筋2の板状部1と、鉄筋コンクリートの鉄骨部材の一部である鉄板3とを、相互に結合した場合を示している。すなわち異形鉄筋2と鉄板3とは、この異形鉄筋の一端に形成した板状部1に開口するボルト用の穴11と、この鉄板に開口する穴31とにボルト4を挿入し、ナット5を締付けて結合する。
【0017】
図3は、他の異形鉄筋の結合構造を示しており、異形鉄筋102の一端部に、別部品である板状部材101を溶接結合したものである。なお板状部材101は、異形鉄筋102と同等な円断面形状を有する丸棒の一端部を、プレスで押圧圧縮して平板状部114を形成し、この平板状部にドリルでボルト用の穴111を開口形成してある。そしてこの丸棒の他端部113を、異形鉄筋102の一端部に溶接結合してある。なお図1〜図2に示したものと同等な部品または部分については、参照を容易等にするため、図1〜図2に記載した符号に、一律100を加えた番号にしてある。
【0018】
図4は、さらに別の鉄筋の結合構造を示しており、異形鉄筋202の一端部には、雄ネジ222が形成してあり、板状部材201には、この雄ネジと螺合する215雌ネジが形成してある。そして板状部材201と異形鉄筋の202一端部とは、雌ネジ215が雄ネジ222と螺合して結合される。なお板状部材201は、異形鉄筋202の外形よりやや大きい直径の丸棒の一端部を、プレスで押圧圧縮して平板状部214を形成し、この平板状部にドリルでボルト用の穴211を開口形成してある。そしてこの丸棒の他端部213には、この丸棒の軸心に雌ねじ215を形成してある。なお図1〜図2に示したものと同等な部品または部分については、参照を容易等にするため、図1〜図2に記載した符号に、一律200を加えた番号にしてある。
【0019】
図5は、鉄筋の一端部と板状部材とを、連結部材を介して結合する結合構造を示している。連結部材309は、異形鉄筋302を挿入可能な円筒部材を所定の長さに切った素材から形成する。すなわち連結部材309の一端部391は、その外周を円弧形状のダイスで押圧縮径し、その内周を異形鉄筋302の一端部の外周に圧着して、この異形鉄筋の外周に形成されている竹節321に噛み込ませて結合する。一方連結部材309の他端部392は、その外周を円弧形状のダイスで押圧縮径し、縮径した内周に雌ねじ393が形成してある。また板状部材301は、異形鉄筋302と同等な円断面形状を有する丸棒の一端部を、プレスで押圧圧縮して平板状部314を形成し、この平板状部にドリルでボルト用の穴311を開口形成してある。一方丸棒の他端部313の外周には、連結部材309に形成した雌ねじ393と螺合する雄ねじ316が形成してある。そして連結部材309の他端部392と板状部材301とは、雌ネジ393が雄ネジ316と螺合して結合される
【0020】
なお板状部材301に形成する雄ねじ316の直径を、連結部材309の内周径より大きくすれば、この連結部材の他端部392の外周を縮径することなく、この雄ねじに螺合する雌ねじ393を形成することができる。また図1〜図2に示したものと同等な部品または部分については、参照を容易等にするため、図1〜図2に記載した符号に、一律300を加えた番号にしてある。
【0021】
さらに図6は、鉄筋の一端部と板状部材とを、連結部材を介して結合する他の結合構造を示している。連結部材409は、異形鉄筋402の外形より小さい内周径を有する円筒部材を、所定の長さに切った素材から形成する。すなわち連結部材409の一端部491および他端部492の内周には、それぞれ雌ネジ494、493が形成してある。また異形鉄筋402の一端部には、雌ネジ494と螺合する雄ねじ422が形成してある。
【0022】
板状部材401は、異形鉄筋402とほぼ同等な円断面形状を有する丸棒の一端部を、プレスで押圧圧縮して平板状部414を形成し、この平板状部にドリルでボルト用の穴411を開口形成してある。一方丸棒の他端部413の外周には、連結部材409に形成した雌ねじ493と螺合する雄ねじ416が形成してある。そして異形鉄筋402の一端部に形成した雄ネジ422を、連結部材409の一端部491に形成した雌ネジ494に螺合させ、板状部材401に形成した雄ねじ416を、この連結部材の他端部492に形成した雌ネジ493に螺合させて、この異形鉄筋と板状部材とを結合する。なお図1〜図2に示したものと同等な部品または部分については、参照を容易等にするため、図1〜図2に記載した符号に、一律400を加えた番号にしてある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明による鉄筋の結合構造は、結合作業の効率を大幅に向上させると共に、特別な技量がなくても結合品質のバラツキが少なく、安全かつ低コストで、異形鉄筋と鉄管等とを結合することができる。したがって建設工事や建設部材等に関する産業に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】異形鉄筋の一端部を板状部に形成した結合構造の外観図である。
【図2】異形鉄筋の一端部を板状部に形成した結合構造を用いて異形鉄筋を鉄板等に結合する構成の説明図である。
【図3】異形鉄筋の一端部に、板状部材を溶接結合した結合構造の外観図である。
【図4】異形鉄筋の一端部に、板状部材をねじ結合する結合構造の外観図である。
【図5】筒状の連結部材を介して異形鉄筋と板状部材とを結合する結合構造の外観図である。
【図6】筒状の連結部材を介して異形鉄筋と板状部材とを結合する他の結合構造の外
【図7】従来例による、鉄筋と鋼管杭との結合を示す概略斜視図である。
【図8】従来例による、鉄筋と鋼管杭との結合部分の一部拡大図である。
【図9】従来例による、鉄筋と鉄板との結合を示す概略斜視図である。
【図10】従来例による、鉄筋と鉄板との結合部分の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
1、101〜401 板状部または板状部材
11、111〜411 ボルト用の穴
14、114〜414 平板状部
21、121〜421 竹節
222、422 雄ねじ
3、503、603 鉄板または鉄管
31 ボルト用の穴
4 ボルト
5 ナット
309、409 連結部材
393、493、494 雌ねじ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄管または鉄板のいずれかと結合する異形鉄筋の結合構造であって、
上記異形鉄筋の一端部には、この一端部を押圧圧縮した板状部が形成してあり、
上記板状部には、ボルト用の穴が開口している
ことを特徴とする鉄筋の結合構造。
【請求項2】
鉄管または鉄板のいずれかと結合する異形鉄筋の結合構造であって、
異形鉄筋とこの異形鉄筋の一端部に結合される板状部材とを備え、
上記板状部材には、ボルト用の穴が開口している
ことを特徴とする鉄筋の結合構造。
【請求項3】
請求項2において、上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、溶接または圧接のいずれかによって結合されていることを特徴とする鉄筋の結合構造。
【請求項4】
請求項2において、上記異形鉄筋の一端部には、雄ネジが形成してあり、
上記板状部材には、上記雄ネジと螺合する雌ネジが形成してあり、
上記板状部材と上記異形鉄筋の一端部とは、上記雌ネジが上記雄ネジと螺合して結合されている
ことを特徴とする鉄筋の結合構造。
【請求項5】
請求項2において、上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、筒状の連結部材を介して結合するものであって、
上記連結部材の一端部は、その外周を押圧縮径して上記異形鉄筋の一端部の外周に圧着してあり、
上記連結部材の他端部には、その内周に雌ネジが形成してあり、
上記板状部材には、雄ネジが形成してあり、
上記連結部材の他端部と板状部材とは、上記雌ネジが上記雄ネジと螺合して結合されている
ことを特徴とする鉄筋の結合構造。
【請求項6】
請求項2において、上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、筒状の連結部材を介して結合するものであって、
上記異形鉄筋の一端部と板状部材とには、それぞれ雄ネジが形成してあり、
上記連結部材の両端部の内周には、上記異形鉄筋の一端部と板状部材とに形成した雄ネジが螺合する雌ネジがそれぞれ形成してあり、
上記異形鉄筋の一端部と板状部材とは、それぞれの雄ネジが上記連結部材の両端部に形成した雌ネジと螺合して結合されている
ことを特徴とする鉄筋の結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−2493(P2007−2493A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182869(P2005−182869)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(396016504)株式会社富士ボルト製作所 (21)
【Fターム(参考)】