鉄道車両電動機駆動用インバータ装置
【課題】車両走行方向の均熱化を図りながら、取り扱いの容易で小型低コストを図った、鉄道車両永久磁石同期電動機駆動用インバータユニットを提供する。
【解決手段】冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニット4を鉄道車両車体1の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット4毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して駆動するように構成した鉄道車両駆動用インバータ装置において、前記各インバータユニット4の受熱ブロックは、垂直方向の上下面の片面または両面に対し、前記出力交流電力の相数に対応する個数分の前記半導体スイッチング素子を車両走行方向に取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けた。
【解決手段】冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニット4を鉄道車両車体1の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット4毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して駆動するように構成した鉄道車両駆動用インバータ装置において、前記各インバータユニット4の受熱ブロックは、垂直方向の上下面の片面または両面に対し、前記出力交流電力の相数に対応する個数分の前記半導体スイッチング素子を車両走行方向に取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用電動機を駆動するインバータ装置に係り、特に車両底面の走行風を利用して半導体スイッチング素子の均熱化冷却を図るようにしたインバータユニットを有する鉄道車両電動機駆動用インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両駆動システムでは主電動機として誘導電動機が主に用いられてきたが、誘導電動機では高効率化による省エネルギーの実現が困難であるため、近年、誘導電動機に代わって小型軽量にして高効率化が図れ、かつ、省エネルギーの実現が可能な永久磁石同期電動機(PMSM)が開発され、実用化の検討が進められている(例えば、特許文献1および2、非特許文献1参照)。
【0003】
この鉄道車両駆動システムは、半導体スイッチング素子としてIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ;Insulated Gate Bipolar Transistor)を採用した電動機駆動用インバータ装置によって直流電力を交流電力に変換して永久磁石同期電動機を駆動するものである。
【0004】
永久磁石同期電動機は、各電動機の永久磁石の回転角度方向に応じて最適な位相の電流を供給することによって、必要なトルク出力制御を達成されるため、従来の誘導電動機のように複数の電動機を1台のインバータで制御することができず、1台の電動機に1台のインバータを接続するいわゆる個別制御が必要になる。
【0005】
この個別制御方式は、インバータ故障時の冗長性を高くすることができるとか、乗り心地および加速性能の向上を両立させることができる等のメリットを有する反面、インバータユニットが大型化する傾向になり、ひいてはインバータユニットや電源側に設けられているフィルタリアクトル、フィルタコンデンサ等を含むインバータ装置の外形の大型化、高コスト化を招く原因になっていた。
【0006】
インバータユニットは、主たる構成要素であるIGBT素子がスイッチング動作により損失熱を発生するので、その熱量を効率良く外気へ逃がすために、ヒートパイプを有する冷却器を備えている。
【0007】
図10はインバータ装置を鉄道車両車体の床下に搭載した状態を示す第1の従来例の模式図であり、(a)は鉄道車両車体の側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図である。図10(a)、(b)において、1は鉄道車両車体、2は鉄道車両車体1を走行方向の前後2箇所で支持する台車(図示しない)に備えられた車輪、3は車両床下の左右の前方車輪と後方車輪との間に形成されたスペースに配置されたインバータ装置、4はインバータ装置3の主要なインバータユニットである。5はインバータ装置3に隣接して配置した他の機器である。
【0008】
図11は、インバータ装置3の拡大図である。
図11において、インバータ装置3は、車両1の床下にフレーム6を介して取付けられ、インバータユニット4および、図示していない制御電源や制御ユニット、保護装置、フィルタ等を収納している。インバータユニット4は、発熱部であるIGBT素子7と、このIGBT素子7を冷却する冷却装置8と、IGBT素子7にゲート信号を送るゲートアンプ9等の機器から構成されている。
【0009】
図12は、図11に記載のインバータユニット4のうち、特にIGBT素子7と、冷却装置8の配置関係の一例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)を上から見た平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た側面図である。
【0010】
図12に例示のインバータユニット4の場合は、小型化を図るために、2台のインバータユニットのIGBT素子7を冷却装置8を構成する金属製の受熱ブロックに取付ける構成を採用し、しかも、高信頼性、低騒音化、低コスト化の観点から、車両床下の走行風でヒートパイプ12を冷却する方式(走行風冷却ヒートパイプ冷却方式という)を採用している。
【0011】
冷却装置8は図示のように、IGBT素子7を取付ける金属製で厚みのある板状の受熱ブロック(冷却ブロックともいう)8-1と、この受熱ブロック8-1に設けられた冷却フィン11付きのヒートパイプ12とから構成されている。
【0012】
この受熱ブロック8-1は、走行方向と直交する面に車両の走行方向に沿って3個並べられており、しかも、各受熱ブロック8-1の表裏の取付け面に2台分のインバータユニットの同一相、例えばU1相とU2相、V1相とV2相、W1相とW2相のIGBT素子7を取付け、さらに、車両の走行方向と直交する方向に冷却フィン11付きのヒートパイプ12を張り出して取付けるようにしている。走行風は冷却フィン11の間を通り抜けることによって冷却フィン11、ヒートパイプ12の熱を奪い、受熱ブロック8-1に取付けられているIGBT素子7を冷却する。なお、ヒートパイプ12は、水平面に対して約7度の取付け角度を維持するように受熱ブロック8-1に取付けられている。
【0013】
この従来の例では、特に図12(c)で示すように、1個の受熱ブロック8-1あたり、U1相およびX1相のIGBT素子7を合計2個縦方向、すなわち車両床面からレールに向かう方向に取付け、さらに冷却フィン11付きのヒートパイプ12を2個取付けている。なお、記号UC、UEはU1相のIGBT素子7のコレクタ、エミッタの接続端子であり、XC、XEはX1相のIGBT素子7のコレクタ、エミッタの接続端子を表している。
【0014】
そして、これらのU1相およびX1相のIGBT素子7を電気的に接続する場合は、破線で示すように、U1相の2個のコレクタ接続端子UC同士を接続導体20で接続し、X1相の2個のエミッタ接続端子XE同士を接続導体30で接続し、さらに、U1相の2個のエミッタ接続端子UEと、X1相の2個のコレクタ接続端子XCの合計4個の接続端子を共通の接続導体40で接続するようになっている。接続導体20は直流電源の+側に、接続導体30は直流電源の−側に、接続導体40は後述する永久磁石同期電動機のU端子に接続されるようになっている。
【0015】
ところで、上述した図12に例示したインバータユニット4の場合、受熱ブロック8-1を車両の走行方向に直交するように3個配置しているため、風上側インバータユニット4の冷却フィン11により暖められた空気が風下側インバータユニット4の冷却フィン11の間を流れるため、風下側インバータユニット4の冷却性能を阻害し、インバータユニット4全体としての性能を制約することとなっていた。
【0016】
この課題を回避するために、走行風の風上側と風下側との均熱化を図る目的で、均熱ヒートパイプ、または、複数のヒートパイプを側面に取付けた冷却タンクを用いる方式が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0017】
これにより風上側と風下側のIGBT素子の均熱化が図られ、IGBT素子のジャンクション最高温度の低減または、最高温度を許容限界ぎりぎりに設計した場合には、冷却器の小型化が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−306780号公報
【特許文献2】特開2009−077539号公報
【特許文献3】特開2004−125381号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】東芝レビューVol.61 No.9 p.11-14「更なる低騒音、省エネルギーを実現する鉄道車両用パワーエレクトロニクス製品」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献3に開示された技術を永久磁石同期電動機用インバータユニットに適用しようとした場合、永久磁石同期電動機1台あたりインバータユニットが1台必要となる、いわゆる個別駆動となるため、図13に示す第2の従来例のように車両床下の側面と並行する幅の長い1枚の受熱板8-1を配置し、この受熱板8-1の一面にのみ複数個のIGBT素子7を平面的に取付ける構成となるため、車両床下の高さ制限およびIGBT素子7の外形上の制約等により、インバータユニット4の外形の大型化、特に横幅の長大化を招くことが懸念される。
【0021】
図13のように横幅が長大なインバータユニット4は、製造が困難であるばかりでなく、車両への取り付けなどの取り扱いが困難であり、また、車両床下に取付けた場合、図14で示すように限られた床下スペースの占有による他機器搭載への制約などの問題を発生させ、システム全体としてみた時に高コストなインバータユニットになる。
【0022】
この製造の困難性、取扱い上の困難性を解消する方策として、インバータユニットを車両走行方向に分割することが考えられるが、分割により個々のインバータユニットの横幅の大型化は抑制されるが、本来の目的である車両走行方向の均熱化を図ることができなくなる欠点があり、また、分割によっても床下スペースの占有の問題は解消されることはない。
【0023】
そこで、本発明は上述した課題を解決するために、車両走行方向の均熱化を図りながら、小型化で取扱いが容易な鉄道車両電動機駆動用インバータ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するように構成した鉄道車両駆動用インバータ装置において、前記各インバータユニットの受熱ブロックは、垂直方向の上下面の片面または両面に対し、前記出力交流電力の相数に対応する個数分の前記半導体スイッチング素子を車両走行方向に取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする。
【0025】
また、請求項4に係る発明は、冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するようにした鉄道車両駆動用インバータ装置において、前記鉄道車両車体の床下に垂直方向に設置されたインバータユニットの台数は3台であり、前記3台の各インバータユニット毎に三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームによる対が車両走行方向に4対構成されるように、各受熱ブロックの垂直方向の上側面および下側面に前記半導体スイッチング素子を取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、走行風冷却における均熱化を図りながらインバータユニットの小型化を図ることができ、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器の搭載への制約を小さくすることが可能な鉄道車両駆動用インバータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置の特に、インバータユニットの車両搭載図であり、図(a)は鉄道車両車体側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図。
【図2】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子と冷却装置との配置関係の一例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図3】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にヒートパイプと冷却タンクとの取付け状態を示す構成図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た側面図。
【図4】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置におけるヒートパイプと冷却タンクとの取付け状態が図3とは別に構成した例の取付け状態を示す構成図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図5】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットの主回路接続図。
【図6】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子とフィルタコンデンサとの接続構成図であり、(a)は配置図、(b)は電気回路図。
【図7】本発明の実施形態2による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にヒートパイプと冷却タンクとの取付け状態を示す構成図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図8】本発明の実施形態3による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子と冷却装置の配置関係の他の例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図9】本発明の実施形態3による鉄道車両駆動用インバータ装置のうち、特にインバータユニットの主回路接続を示す図。
【図10】第1の従来例の鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットの車両搭載図であり、(a)は側面図、(b)はb−b線矢視断面図。
【図11】図10に記載のインバータ装置の拡大断面図。
【図12】図11に記載のインバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子と冷却装置との配置関係の一例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図13】鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットの第2の従来技術を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面から見た図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図14】第2の従来例の鉄道車両駆動用インバータユニットの車両搭載図であり、(a)は側面図、(b)はb−b線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、各図を通じて同一部品には同一符号を付けることにより、重複する説明は適宜省略する。
【0029】
(実施形態1)
本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置について、図1乃至図6を参照して説明する。
図1は本実施形態1によるインバータ装置を車両床下に搭載した状態を示す模式図であり、図1(a)は鉄道車両車体を車両走行方向側面から見た図、図1(b)は図1(a)のb−b線矢視断面図である。
【0030】
図1において、1は鉄道車両車体、2は鉄道車両車体1を走行方向の前後位置で図示しない台車を介して支える車輪、3は車両床下の左右の前方車輪と後方車輪との間のスペースに配置されたインバータ装置、4はこのインバータ装置のインバータユニット、5はインバータ装置3に隣接して配置した他の機器である。
【0031】
次に、図2を参照して、本実施形態1の鉄道車両駆動用インバータユニット4におけるIGBT素子7と冷却装置8との配置関係について説明する。
図2において、本実施形態1の鉄道車両駆動用インバータユニット4は、車両走行方向の左右の床下にそれぞれ、2台の鉄道車両駆動用インバータユニット4-1、4-2を垂直方向に2段構成にして取付けている。説明の便宜上、車両床面に近い方を第1のインバータユニット4-1と称し、遠い方(レールに近いほう)を第2のインバータユニット4-2と称する。
【0032】
そして、第1のインバータユニット4-1および第2のインバータユニット4-2とも、発熱部であるIGBT素子7と、IGBT素子7を冷却する冷却装置8と、IGBT素子7にゲート信号を送るゲートアンプ(図示せず)等の機器とから構成されている。
【0033】
前記冷却装置8は、冷却タンク8-2を内蔵した受熱ブロック8-1と、この受熱ブロック8-1に取付けられた冷却フィン11付きのヒートパイプ12とから構成されている。
受熱ブロック8-1は、熱伝導性および機械的強度に優れた例えばアルミニュウム合金等の金属で製作され、奥行き(車両走行方向と直交する方向)の寸法(d)や厚み(車両の垂直方向)の寸法(h)に比べて幅(車両走行方向)の寸法(w)がh<d<wの関係にある厚板状のブロックに形成されている。そして、この受熱ブロック8-1には、厚み方向の上側面および下側面にそれぞれ四角いモジュール型のIGBT素子7が3個ずつ合計6個取付けられている。
【0034】
受熱ブロック8-1に取付けられた各IGBT素子7は、2レベル三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームを構成する。因みに、車両床面に近い方に位置する第1のインバータユニット4-1では、受熱ブロック8-1の上側面に図示左から正側アームであるU1相、V1相、W1相のIGBT素子7を一列に並べて取付け、下側面に図示左から負側アームであるX1相、Y1相、Z1相のIGBT素子7を一列に並べて取付けている。
【0035】
一方、受熱ブロック8-1のIGBT素子7の上下面に直交する外側側面(車両走行方向に平行する外側側面)には、水平面に対して約7度上向きに冷却フィン11付きのヒートパイプ12を取付けている。
【0036】
ヒートパイプ12は、第1のインバータユニット4-1および第2のインバータユニット4-2とも図2(b)の平面図で示すように、受熱ブロック8-1の上側面および下側面に取付けられた1対のIGBT素子7あたり4本の割合で合計12本取付けられている。冷却フィン11はこれら12本のヒートパイプ12に密着嵌合するように取付けられている。
車両床面から遠い方に位置する第2のインバータユニット4-2についても同様に構成されている。
【0037】
図3は、第1のインバータユニット4-1の受熱ブロック8-1の内部構成の一例を示す図であるが、図示しない第2のインバータユニット4-2の受熱ブロック8-1も同様に構成されている。
【0038】
図3において、受熱ブロック8-1の内部には、複数のヒートパイプ12が接続された冷却タンク8-2が埋め込まれ、この冷却タンク8-2内部には、純水などの冷却用冷媒10が封入されている。
【0039】
受熱ブロック8-1の上側面及び下側面には、図2で説明したようにモジュール型IGBT素子7が幅方向にそれぞれ3個ずつ、IGBT素子7の冷却面が取付けられる。IGBT素子7のスイッチング動作によって発生した損失熱は、受熱ブロック8-1により均等に冷却タンク8-2を加熱し、内部の冷媒がその熱によって蒸発する。この蒸発時の気化熱によりIGBT素子7は冷却される。冷媒の蒸気は、ヒートパイプ12の先端方向に向かって上昇気流によって移動し、車両走行風のあたる冷却フィン11により冷却されることにより液体に戻る。この液体は、ヒートパイプ12の取付け傾斜角(約7度)によりヒートパイプ12の底面を流下して冷却タンク内に戻る。この冷却動作は、従来技術で用いられているヒートパイプ式冷却、沸騰冷却と同じである。
【0040】
図4は、第1のインバータユニット4-1の受熱ブロック8-1の内部構成の別の例を示す図であるが、図示していない第2のインバータユニット4-2の受熱ブロックも同様に構成されている。
【0041】
図4において、受熱ブロック8-1内部に埋め込まれた冷却タンク8-2は、冷却フィン11取付け面と反対側の側面に近く設置され、ヒートパイプ12は、受熱ブロック8-1内部を貫通して走行風のあたる冷却フィン側面側まで張り出す構成とする。
【0042】
この図4の例では、冷却タンク8-2により走行方向に対する均熱化を図ることができ、ヒートパイプ12が受熱ブロック8-1内部を貫通して冷却タンク8-2内部に至るので、前述した図3の例に比べて、ヒートパイプ12と受熱ブロック8-1との接触表面積が増加し、冷却性能をいっそう向上させることが可能になる。
【0043】
図5は、本実施形態1による鉄道車両駆動用インバータの主回路接続図であり、図中、U1、V1、・・・Y2、Z2は図2のIGBT素子7の各相に対応するIGBT素子による正側アームまたは負側アームであり、IGBT素子によるアームU1・・・Z1により2レベル回路の第1のインバータユニット4-1を構成し、IGBT素子によるアームU2・・・Z2により第2のインバータユニット4-2を構成している。第1のインバータユニット4-1で第1の永久磁石同期電動機13-1に三相交流電力を供給してこれを駆動し、第2のインバータユニット4-2で第2の永久磁石同期電動機13-2に三相交流電力を供給してこれを駆動するように結線されている。図中、14、15は直流側に接続したフィルタリアクトルおよびフィルタコンデンサである。
【0044】
図6は、IGBT素子とフィルタコンデンサとの接続構成を示す図であり、(a)は配置図、(b)は電気回路図である。
図6において、受熱ブロック8-1の上面に取付けられたU1相のIGBT素子7および下面に取付けたX1相のIGBT素子7は、すでに説明した図2乃至図5に記載のU1相、X1相のIGBT素子7と同じものであり、2レベルのインバータ主回路を構成する。
【0045】
図6(a)において、フィルタコンデンサ15は、受熱ブロック8-1の冷却フィン11を取付けた側面と反対側面側に設置され、上面に取付けたU1相のIGBT素子7のコレクタ端子UCを接続導体16-1を介してフィルタコンデンサの+端子に接続し、一方、下面に取付けたX1相のIGBT素子7のエミッタ端子XEを接続導体16-2を介して前記フィルタコンデンサの−端子に接続し、そして、U1相のIGBT素子7のエミッタ端子UEとX1相のIGBT素子7のコレクタ端子XCとを接続導体16-3を介して共通接続している。この場合、接続導体16-1、16-3間、16-2、16-3間および16-1、16-2間にはそれぞれ絶縁フィルム等の厚みの薄い絶縁物を介在させ、十分な電気絶縁が行えるようにしている。これらにより、図6(b)の電気回路図において、フィルタコンデンサ15→上側(U1相)のIGBT素子7→下側(X1相)のIGBT素子7→フィルタコンデンサ15の経路の配線インダクタンスが最小化され、U1相IGBT素子7またはX1相IGBT素子7をスイッチングオフしたときに発生する電圧跳ね上がりを最小限に抑制することが可能となり、結果として電圧跳ね上がり抑制用スナバ回路の設置が不要になる。
【0046】
以上により構成された鉄道車両駆動用インバータ装置によれば、永久磁石同期電動機駆動時に走行風冷却による均熱化を図りながらインバータユニットの小型化を図ることができ、図1で示したように、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器5の搭載への制約を小さくすることが可能になる。
【0047】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について図7を参照して説明する。実施形態2における鉄道車両駆動用インバータユニット4の構成要素は実施形態1の場合と同一である。
【0048】
本実施形態2が実施形態1と異なる点は、受熱ブロックの内部構成である。すなわち、本実施形態2は図7に示すとおり、1本のヒートパイプ12の中間部をU字型に曲げてそのU字状中間部12Uが受熱ブロック8-1の冷却タンク8-2内部で車両走行方向に平行して並べて配置して直接冷媒10に触れるようにし、受熱ブロック8-1から露出した両端部に冷却フィン11を取付けて走行風にあたるように張り出す構成としたものである。
【0049】
この構成の場合、各ヒートパイプ12は互いに接触しないように、冷却タンク8-2の幅方向の端部から中央部に向かうにつれU字部状中間部12Uを徐々に経路を小さくする。このように、各ヒートパイプ12のU字状中間部12Uは、受熱ブロック8-1の冷却タンク8-2内部で車両走行方向に平行して並べて配置しているため、車両走行方向に対する均熱化を図ることができ、受熱ブロック8-1と冷媒との接触表面積が増加し、冷却性能をいっそう向上させることが可能になる。
【0050】
以上のように実施形態2に係る鉄道車両駆動用インバータ装置によれば、実施形態1と同様に走行風冷却における均熱化を図りながらインバータユニットの外形小型化を図ることができ、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器搭載への制約を小さくすることが可能になる。
【0051】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について図8、図9を参照して説明する。
鉄道車両においては、1両の電動機付車両には、4つの車軸があり、それぞれに電動機がギヤを介して取り付けられるのが一般的であるため、インバータユニットとして4台の電動機を駆動制御できるものが要求されることが多い。
【0052】
この要求に応えるため、本実施形態3では図8に示すように、鉄道車両駆動用インバータ装置は、車両床下の垂直方向に上段、中段および下段として3台のインバータユニットすなわち、第1インバータユニット4-1、第2インバータユニット4-2および第3インバータユニット4-3を設置している。
【0053】
このうち、上段の第1インバータユニット4-1は、受熱ブロック8-1の上側面に幅方向にU相のIGBT素子7をU1、U2、U3、U4のように4個取付け、これと対応する下側面の幅方向にX相のIGBT素子7をX1、X2、X3、X4のように4個取付け、1台の受熱ブロック8-1あたり合計8個のIGBT素子を取付けて、正側アーム、負側アームを4つずつ構成する。
【0054】
中段の第2インバータユニット4-2は、同様に受熱ブロック8-1の上側面にV相のIGBT素子7をV1、V2、V3、V4のように4個取付け、対応する下側面の幅方向にY相のIGBT素子7をY1、Y2、Y3、Y4のように4個取付け、1台の受熱ブロック8-1あたり合計8台のIGBT素子を取付けて、正側アーム、負側アームを4つずつ構成する。
【0055】
下段の第3インバータユニット4-3も同様に、受熱ブロック8-1の上側面に幅方向にW相のIGBT素子7をW1、W2、W3、W4のように4個取付け、対応する下側面の幅方向にZ相のIGBT素子7をZ1、Z2、Z3、Z4のように4個取付け、1台の受熱ブロック8-1あたり合計8台のIGBT素子を取付けて、正側アーム、負側アームを4つずつ構成する。
【0056】
そして、本実施形態3によるインバータ主回路は、実施形態1の図5の回路とは異なり、図9で示すように、3台のインバータユニット4-1、4-2および4-3のアームのうち、U1、X1、V1、Y1、W1、Z1からなる正側、負側のアームによってインバータ主回路17-1を構成し、U2、X2、V2、Y2、W2、Z2からなる正側、負側のアームよってインバータ主回路17-2を構成し、U3、X3、V3、Y3、W3、Z3からなる正側、負側のアームによってインバータ主回路17-3を構成し、U4、X4、V4、Y4、W4、Z4からなる正側、負側のアームよってインバータ主回路17-4を構成し、それぞれのインバータ主回路17-1、17-2、17-3および17-4によって4台の永久磁石同期電動機13-1、13-2、13-3および13-4を個別に駆動する。
【0057】
以上のように構成された本実施形態3による鉄道車両駆動用インバータ装置は、車両床下に垂直方向に3台設置されたインバータユニット4-1、4-2および4-3で4つのインバータ主回路17-1〜17-4を構成し、4台の永久磁石同期電動機13-1、13-2、13-3、13-4を駆動することができ、しかも、走行風冷却における均熱化を図りながらインバータユニットの小型化が図ることができ、実施形態1と同様に、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器搭載への制約を小さくすることが可能になる。
【符号の説明】
【0058】
1…鉄道車両車体、2…車輪、3…インバータ装置、4,4-1,4-2,4-3…インバータユニット、7…IGBT素子、8…冷却装置、8-1…受熱ブロック、8-2…冷却タンク、9…ゲートアンプ、10…冷媒、11…冷却フィン、12…ヒートパイプ、12U…ヒートパイプのU字状中間部、13,13-1,13-2,13-3,13-4…永久磁石同期電動機、14…フィルタリアクトル、15…フィルタコンデンサ、16,16-1,16-2,16-3…接続端子、17,17-1,17-2,17-3,17-4…インバータ主回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用電動機を駆動するインバータ装置に係り、特に車両底面の走行風を利用して半導体スイッチング素子の均熱化冷却を図るようにしたインバータユニットを有する鉄道車両電動機駆動用インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両駆動システムでは主電動機として誘導電動機が主に用いられてきたが、誘導電動機では高効率化による省エネルギーの実現が困難であるため、近年、誘導電動機に代わって小型軽量にして高効率化が図れ、かつ、省エネルギーの実現が可能な永久磁石同期電動機(PMSM)が開発され、実用化の検討が進められている(例えば、特許文献1および2、非特許文献1参照)。
【0003】
この鉄道車両駆動システムは、半導体スイッチング素子としてIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ;Insulated Gate Bipolar Transistor)を採用した電動機駆動用インバータ装置によって直流電力を交流電力に変換して永久磁石同期電動機を駆動するものである。
【0004】
永久磁石同期電動機は、各電動機の永久磁石の回転角度方向に応じて最適な位相の電流を供給することによって、必要なトルク出力制御を達成されるため、従来の誘導電動機のように複数の電動機を1台のインバータで制御することができず、1台の電動機に1台のインバータを接続するいわゆる個別制御が必要になる。
【0005】
この個別制御方式は、インバータ故障時の冗長性を高くすることができるとか、乗り心地および加速性能の向上を両立させることができる等のメリットを有する反面、インバータユニットが大型化する傾向になり、ひいてはインバータユニットや電源側に設けられているフィルタリアクトル、フィルタコンデンサ等を含むインバータ装置の外形の大型化、高コスト化を招く原因になっていた。
【0006】
インバータユニットは、主たる構成要素であるIGBT素子がスイッチング動作により損失熱を発生するので、その熱量を効率良く外気へ逃がすために、ヒートパイプを有する冷却器を備えている。
【0007】
図10はインバータ装置を鉄道車両車体の床下に搭載した状態を示す第1の従来例の模式図であり、(a)は鉄道車両車体の側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図である。図10(a)、(b)において、1は鉄道車両車体、2は鉄道車両車体1を走行方向の前後2箇所で支持する台車(図示しない)に備えられた車輪、3は車両床下の左右の前方車輪と後方車輪との間に形成されたスペースに配置されたインバータ装置、4はインバータ装置3の主要なインバータユニットである。5はインバータ装置3に隣接して配置した他の機器である。
【0008】
図11は、インバータ装置3の拡大図である。
図11において、インバータ装置3は、車両1の床下にフレーム6を介して取付けられ、インバータユニット4および、図示していない制御電源や制御ユニット、保護装置、フィルタ等を収納している。インバータユニット4は、発熱部であるIGBT素子7と、このIGBT素子7を冷却する冷却装置8と、IGBT素子7にゲート信号を送るゲートアンプ9等の機器から構成されている。
【0009】
図12は、図11に記載のインバータユニット4のうち、特にIGBT素子7と、冷却装置8の配置関係の一例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)を上から見た平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た側面図である。
【0010】
図12に例示のインバータユニット4の場合は、小型化を図るために、2台のインバータユニットのIGBT素子7を冷却装置8を構成する金属製の受熱ブロックに取付ける構成を採用し、しかも、高信頼性、低騒音化、低コスト化の観点から、車両床下の走行風でヒートパイプ12を冷却する方式(走行風冷却ヒートパイプ冷却方式という)を採用している。
【0011】
冷却装置8は図示のように、IGBT素子7を取付ける金属製で厚みのある板状の受熱ブロック(冷却ブロックともいう)8-1と、この受熱ブロック8-1に設けられた冷却フィン11付きのヒートパイプ12とから構成されている。
【0012】
この受熱ブロック8-1は、走行方向と直交する面に車両の走行方向に沿って3個並べられており、しかも、各受熱ブロック8-1の表裏の取付け面に2台分のインバータユニットの同一相、例えばU1相とU2相、V1相とV2相、W1相とW2相のIGBT素子7を取付け、さらに、車両の走行方向と直交する方向に冷却フィン11付きのヒートパイプ12を張り出して取付けるようにしている。走行風は冷却フィン11の間を通り抜けることによって冷却フィン11、ヒートパイプ12の熱を奪い、受熱ブロック8-1に取付けられているIGBT素子7を冷却する。なお、ヒートパイプ12は、水平面に対して約7度の取付け角度を維持するように受熱ブロック8-1に取付けられている。
【0013】
この従来の例では、特に図12(c)で示すように、1個の受熱ブロック8-1あたり、U1相およびX1相のIGBT素子7を合計2個縦方向、すなわち車両床面からレールに向かう方向に取付け、さらに冷却フィン11付きのヒートパイプ12を2個取付けている。なお、記号UC、UEはU1相のIGBT素子7のコレクタ、エミッタの接続端子であり、XC、XEはX1相のIGBT素子7のコレクタ、エミッタの接続端子を表している。
【0014】
そして、これらのU1相およびX1相のIGBT素子7を電気的に接続する場合は、破線で示すように、U1相の2個のコレクタ接続端子UC同士を接続導体20で接続し、X1相の2個のエミッタ接続端子XE同士を接続導体30で接続し、さらに、U1相の2個のエミッタ接続端子UEと、X1相の2個のコレクタ接続端子XCの合計4個の接続端子を共通の接続導体40で接続するようになっている。接続導体20は直流電源の+側に、接続導体30は直流電源の−側に、接続導体40は後述する永久磁石同期電動機のU端子に接続されるようになっている。
【0015】
ところで、上述した図12に例示したインバータユニット4の場合、受熱ブロック8-1を車両の走行方向に直交するように3個配置しているため、風上側インバータユニット4の冷却フィン11により暖められた空気が風下側インバータユニット4の冷却フィン11の間を流れるため、風下側インバータユニット4の冷却性能を阻害し、インバータユニット4全体としての性能を制約することとなっていた。
【0016】
この課題を回避するために、走行風の風上側と風下側との均熱化を図る目的で、均熱ヒートパイプ、または、複数のヒートパイプを側面に取付けた冷却タンクを用いる方式が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0017】
これにより風上側と風下側のIGBT素子の均熱化が図られ、IGBT素子のジャンクション最高温度の低減または、最高温度を許容限界ぎりぎりに設計した場合には、冷却器の小型化が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−306780号公報
【特許文献2】特開2009−077539号公報
【特許文献3】特開2004−125381号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】東芝レビューVol.61 No.9 p.11-14「更なる低騒音、省エネルギーを実現する鉄道車両用パワーエレクトロニクス製品」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献3に開示された技術を永久磁石同期電動機用インバータユニットに適用しようとした場合、永久磁石同期電動機1台あたりインバータユニットが1台必要となる、いわゆる個別駆動となるため、図13に示す第2の従来例のように車両床下の側面と並行する幅の長い1枚の受熱板8-1を配置し、この受熱板8-1の一面にのみ複数個のIGBT素子7を平面的に取付ける構成となるため、車両床下の高さ制限およびIGBT素子7の外形上の制約等により、インバータユニット4の外形の大型化、特に横幅の長大化を招くことが懸念される。
【0021】
図13のように横幅が長大なインバータユニット4は、製造が困難であるばかりでなく、車両への取り付けなどの取り扱いが困難であり、また、車両床下に取付けた場合、図14で示すように限られた床下スペースの占有による他機器搭載への制約などの問題を発生させ、システム全体としてみた時に高コストなインバータユニットになる。
【0022】
この製造の困難性、取扱い上の困難性を解消する方策として、インバータユニットを車両走行方向に分割することが考えられるが、分割により個々のインバータユニットの横幅の大型化は抑制されるが、本来の目的である車両走行方向の均熱化を図ることができなくなる欠点があり、また、分割によっても床下スペースの占有の問題は解消されることはない。
【0023】
そこで、本発明は上述した課題を解決するために、車両走行方向の均熱化を図りながら、小型化で取扱いが容易な鉄道車両電動機駆動用インバータ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するように構成した鉄道車両駆動用インバータ装置において、前記各インバータユニットの受熱ブロックは、垂直方向の上下面の片面または両面に対し、前記出力交流電力の相数に対応する個数分の前記半導体スイッチング素子を車両走行方向に取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする。
【0025】
また、請求項4に係る発明は、冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するようにした鉄道車両駆動用インバータ装置において、前記鉄道車両車体の床下に垂直方向に設置されたインバータユニットの台数は3台であり、前記3台の各インバータユニット毎に三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームによる対が車両走行方向に4対構成されるように、各受熱ブロックの垂直方向の上側面および下側面に前記半導体スイッチング素子を取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、走行風冷却における均熱化を図りながらインバータユニットの小型化を図ることができ、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器の搭載への制約を小さくすることが可能な鉄道車両駆動用インバータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置の特に、インバータユニットの車両搭載図であり、図(a)は鉄道車両車体側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図。
【図2】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子と冷却装置との配置関係の一例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図3】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にヒートパイプと冷却タンクとの取付け状態を示す構成図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た側面図。
【図4】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置におけるヒートパイプと冷却タンクとの取付け状態が図3とは別に構成した例の取付け状態を示す構成図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図5】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットの主回路接続図。
【図6】本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子とフィルタコンデンサとの接続構成図であり、(a)は配置図、(b)は電気回路図。
【図7】本発明の実施形態2による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にヒートパイプと冷却タンクとの取付け状態を示す構成図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)のb−b線矢視断面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図8】本発明の実施形態3による鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子と冷却装置の配置関係の他の例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図9】本発明の実施形態3による鉄道車両駆動用インバータ装置のうち、特にインバータユニットの主回路接続を示す図。
【図10】第1の従来例の鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットの車両搭載図であり、(a)は側面図、(b)はb−b線矢視断面図。
【図11】図10に記載のインバータ装置の拡大断面図。
【図12】図11に記載のインバータ装置のインバータユニットのうち、特にIGBT素子と冷却装置との配置関係の一例を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図13】鉄道車両駆動用インバータ装置のインバータユニットの第2の従来技術を示す図であり、(a)は鉄道車両車体の内側側面から見た図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)を車両の走行方向から見た図。
【図14】第2の従来例の鉄道車両駆動用インバータユニットの車両搭載図であり、(a)は側面図、(b)はb−b線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、各図を通じて同一部品には同一符号を付けることにより、重複する説明は適宜省略する。
【0029】
(実施形態1)
本発明の実施形態1による鉄道車両駆動用インバータ装置について、図1乃至図6を参照して説明する。
図1は本実施形態1によるインバータ装置を車両床下に搭載した状態を示す模式図であり、図1(a)は鉄道車両車体を車両走行方向側面から見た図、図1(b)は図1(a)のb−b線矢視断面図である。
【0030】
図1において、1は鉄道車両車体、2は鉄道車両車体1を走行方向の前後位置で図示しない台車を介して支える車輪、3は車両床下の左右の前方車輪と後方車輪との間のスペースに配置されたインバータ装置、4はこのインバータ装置のインバータユニット、5はインバータ装置3に隣接して配置した他の機器である。
【0031】
次に、図2を参照して、本実施形態1の鉄道車両駆動用インバータユニット4におけるIGBT素子7と冷却装置8との配置関係について説明する。
図2において、本実施形態1の鉄道車両駆動用インバータユニット4は、車両走行方向の左右の床下にそれぞれ、2台の鉄道車両駆動用インバータユニット4-1、4-2を垂直方向に2段構成にして取付けている。説明の便宜上、車両床面に近い方を第1のインバータユニット4-1と称し、遠い方(レールに近いほう)を第2のインバータユニット4-2と称する。
【0032】
そして、第1のインバータユニット4-1および第2のインバータユニット4-2とも、発熱部であるIGBT素子7と、IGBT素子7を冷却する冷却装置8と、IGBT素子7にゲート信号を送るゲートアンプ(図示せず)等の機器とから構成されている。
【0033】
前記冷却装置8は、冷却タンク8-2を内蔵した受熱ブロック8-1と、この受熱ブロック8-1に取付けられた冷却フィン11付きのヒートパイプ12とから構成されている。
受熱ブロック8-1は、熱伝導性および機械的強度に優れた例えばアルミニュウム合金等の金属で製作され、奥行き(車両走行方向と直交する方向)の寸法(d)や厚み(車両の垂直方向)の寸法(h)に比べて幅(車両走行方向)の寸法(w)がh<d<wの関係にある厚板状のブロックに形成されている。そして、この受熱ブロック8-1には、厚み方向の上側面および下側面にそれぞれ四角いモジュール型のIGBT素子7が3個ずつ合計6個取付けられている。
【0034】
受熱ブロック8-1に取付けられた各IGBT素子7は、2レベル三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームを構成する。因みに、車両床面に近い方に位置する第1のインバータユニット4-1では、受熱ブロック8-1の上側面に図示左から正側アームであるU1相、V1相、W1相のIGBT素子7を一列に並べて取付け、下側面に図示左から負側アームであるX1相、Y1相、Z1相のIGBT素子7を一列に並べて取付けている。
【0035】
一方、受熱ブロック8-1のIGBT素子7の上下面に直交する外側側面(車両走行方向に平行する外側側面)には、水平面に対して約7度上向きに冷却フィン11付きのヒートパイプ12を取付けている。
【0036】
ヒートパイプ12は、第1のインバータユニット4-1および第2のインバータユニット4-2とも図2(b)の平面図で示すように、受熱ブロック8-1の上側面および下側面に取付けられた1対のIGBT素子7あたり4本の割合で合計12本取付けられている。冷却フィン11はこれら12本のヒートパイプ12に密着嵌合するように取付けられている。
車両床面から遠い方に位置する第2のインバータユニット4-2についても同様に構成されている。
【0037】
図3は、第1のインバータユニット4-1の受熱ブロック8-1の内部構成の一例を示す図であるが、図示しない第2のインバータユニット4-2の受熱ブロック8-1も同様に構成されている。
【0038】
図3において、受熱ブロック8-1の内部には、複数のヒートパイプ12が接続された冷却タンク8-2が埋め込まれ、この冷却タンク8-2内部には、純水などの冷却用冷媒10が封入されている。
【0039】
受熱ブロック8-1の上側面及び下側面には、図2で説明したようにモジュール型IGBT素子7が幅方向にそれぞれ3個ずつ、IGBT素子7の冷却面が取付けられる。IGBT素子7のスイッチング動作によって発生した損失熱は、受熱ブロック8-1により均等に冷却タンク8-2を加熱し、内部の冷媒がその熱によって蒸発する。この蒸発時の気化熱によりIGBT素子7は冷却される。冷媒の蒸気は、ヒートパイプ12の先端方向に向かって上昇気流によって移動し、車両走行風のあたる冷却フィン11により冷却されることにより液体に戻る。この液体は、ヒートパイプ12の取付け傾斜角(約7度)によりヒートパイプ12の底面を流下して冷却タンク内に戻る。この冷却動作は、従来技術で用いられているヒートパイプ式冷却、沸騰冷却と同じである。
【0040】
図4は、第1のインバータユニット4-1の受熱ブロック8-1の内部構成の別の例を示す図であるが、図示していない第2のインバータユニット4-2の受熱ブロックも同様に構成されている。
【0041】
図4において、受熱ブロック8-1内部に埋め込まれた冷却タンク8-2は、冷却フィン11取付け面と反対側の側面に近く設置され、ヒートパイプ12は、受熱ブロック8-1内部を貫通して走行風のあたる冷却フィン側面側まで張り出す構成とする。
【0042】
この図4の例では、冷却タンク8-2により走行方向に対する均熱化を図ることができ、ヒートパイプ12が受熱ブロック8-1内部を貫通して冷却タンク8-2内部に至るので、前述した図3の例に比べて、ヒートパイプ12と受熱ブロック8-1との接触表面積が増加し、冷却性能をいっそう向上させることが可能になる。
【0043】
図5は、本実施形態1による鉄道車両駆動用インバータの主回路接続図であり、図中、U1、V1、・・・Y2、Z2は図2のIGBT素子7の各相に対応するIGBT素子による正側アームまたは負側アームであり、IGBT素子によるアームU1・・・Z1により2レベル回路の第1のインバータユニット4-1を構成し、IGBT素子によるアームU2・・・Z2により第2のインバータユニット4-2を構成している。第1のインバータユニット4-1で第1の永久磁石同期電動機13-1に三相交流電力を供給してこれを駆動し、第2のインバータユニット4-2で第2の永久磁石同期電動機13-2に三相交流電力を供給してこれを駆動するように結線されている。図中、14、15は直流側に接続したフィルタリアクトルおよびフィルタコンデンサである。
【0044】
図6は、IGBT素子とフィルタコンデンサとの接続構成を示す図であり、(a)は配置図、(b)は電気回路図である。
図6において、受熱ブロック8-1の上面に取付けられたU1相のIGBT素子7および下面に取付けたX1相のIGBT素子7は、すでに説明した図2乃至図5に記載のU1相、X1相のIGBT素子7と同じものであり、2レベルのインバータ主回路を構成する。
【0045】
図6(a)において、フィルタコンデンサ15は、受熱ブロック8-1の冷却フィン11を取付けた側面と反対側面側に設置され、上面に取付けたU1相のIGBT素子7のコレクタ端子UCを接続導体16-1を介してフィルタコンデンサの+端子に接続し、一方、下面に取付けたX1相のIGBT素子7のエミッタ端子XEを接続導体16-2を介して前記フィルタコンデンサの−端子に接続し、そして、U1相のIGBT素子7のエミッタ端子UEとX1相のIGBT素子7のコレクタ端子XCとを接続導体16-3を介して共通接続している。この場合、接続導体16-1、16-3間、16-2、16-3間および16-1、16-2間にはそれぞれ絶縁フィルム等の厚みの薄い絶縁物を介在させ、十分な電気絶縁が行えるようにしている。これらにより、図6(b)の電気回路図において、フィルタコンデンサ15→上側(U1相)のIGBT素子7→下側(X1相)のIGBT素子7→フィルタコンデンサ15の経路の配線インダクタンスが最小化され、U1相IGBT素子7またはX1相IGBT素子7をスイッチングオフしたときに発生する電圧跳ね上がりを最小限に抑制することが可能となり、結果として電圧跳ね上がり抑制用スナバ回路の設置が不要になる。
【0046】
以上により構成された鉄道車両駆動用インバータ装置によれば、永久磁石同期電動機駆動時に走行風冷却による均熱化を図りながらインバータユニットの小型化を図ることができ、図1で示したように、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器5の搭載への制約を小さくすることが可能になる。
【0047】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について図7を参照して説明する。実施形態2における鉄道車両駆動用インバータユニット4の構成要素は実施形態1の場合と同一である。
【0048】
本実施形態2が実施形態1と異なる点は、受熱ブロックの内部構成である。すなわち、本実施形態2は図7に示すとおり、1本のヒートパイプ12の中間部をU字型に曲げてそのU字状中間部12Uが受熱ブロック8-1の冷却タンク8-2内部で車両走行方向に平行して並べて配置して直接冷媒10に触れるようにし、受熱ブロック8-1から露出した両端部に冷却フィン11を取付けて走行風にあたるように張り出す構成としたものである。
【0049】
この構成の場合、各ヒートパイプ12は互いに接触しないように、冷却タンク8-2の幅方向の端部から中央部に向かうにつれU字部状中間部12Uを徐々に経路を小さくする。このように、各ヒートパイプ12のU字状中間部12Uは、受熱ブロック8-1の冷却タンク8-2内部で車両走行方向に平行して並べて配置しているため、車両走行方向に対する均熱化を図ることができ、受熱ブロック8-1と冷媒との接触表面積が増加し、冷却性能をいっそう向上させることが可能になる。
【0050】
以上のように実施形態2に係る鉄道車両駆動用インバータ装置によれば、実施形態1と同様に走行風冷却における均熱化を図りながらインバータユニットの外形小型化を図ることができ、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器搭載への制約を小さくすることが可能になる。
【0051】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について図8、図9を参照して説明する。
鉄道車両においては、1両の電動機付車両には、4つの車軸があり、それぞれに電動機がギヤを介して取り付けられるのが一般的であるため、インバータユニットとして4台の電動機を駆動制御できるものが要求されることが多い。
【0052】
この要求に応えるため、本実施形態3では図8に示すように、鉄道車両駆動用インバータ装置は、車両床下の垂直方向に上段、中段および下段として3台のインバータユニットすなわち、第1インバータユニット4-1、第2インバータユニット4-2および第3インバータユニット4-3を設置している。
【0053】
このうち、上段の第1インバータユニット4-1は、受熱ブロック8-1の上側面に幅方向にU相のIGBT素子7をU1、U2、U3、U4のように4個取付け、これと対応する下側面の幅方向にX相のIGBT素子7をX1、X2、X3、X4のように4個取付け、1台の受熱ブロック8-1あたり合計8個のIGBT素子を取付けて、正側アーム、負側アームを4つずつ構成する。
【0054】
中段の第2インバータユニット4-2は、同様に受熱ブロック8-1の上側面にV相のIGBT素子7をV1、V2、V3、V4のように4個取付け、対応する下側面の幅方向にY相のIGBT素子7をY1、Y2、Y3、Y4のように4個取付け、1台の受熱ブロック8-1あたり合計8台のIGBT素子を取付けて、正側アーム、負側アームを4つずつ構成する。
【0055】
下段の第3インバータユニット4-3も同様に、受熱ブロック8-1の上側面に幅方向にW相のIGBT素子7をW1、W2、W3、W4のように4個取付け、対応する下側面の幅方向にZ相のIGBT素子7をZ1、Z2、Z3、Z4のように4個取付け、1台の受熱ブロック8-1あたり合計8台のIGBT素子を取付けて、正側アーム、負側アームを4つずつ構成する。
【0056】
そして、本実施形態3によるインバータ主回路は、実施形態1の図5の回路とは異なり、図9で示すように、3台のインバータユニット4-1、4-2および4-3のアームのうち、U1、X1、V1、Y1、W1、Z1からなる正側、負側のアームによってインバータ主回路17-1を構成し、U2、X2、V2、Y2、W2、Z2からなる正側、負側のアームよってインバータ主回路17-2を構成し、U3、X3、V3、Y3、W3、Z3からなる正側、負側のアームによってインバータ主回路17-3を構成し、U4、X4、V4、Y4、W4、Z4からなる正側、負側のアームよってインバータ主回路17-4を構成し、それぞれのインバータ主回路17-1、17-2、17-3および17-4によって4台の永久磁石同期電動機13-1、13-2、13-3および13-4を個別に駆動する。
【0057】
以上のように構成された本実施形態3による鉄道車両駆動用インバータ装置は、車両床下に垂直方向に3台設置されたインバータユニット4-1、4-2および4-3で4つのインバータ主回路17-1〜17-4を構成し、4台の永久磁石同期電動機13-1、13-2、13-3、13-4を駆動することができ、しかも、走行風冷却における均熱化を図りながらインバータユニットの小型化が図ることができ、実施形態1と同様に、限られた車両床下スペースの占有体積を抑制することによる他機器搭載への制約を小さくすることが可能になる。
【符号の説明】
【0058】
1…鉄道車両車体、2…車輪、3…インバータ装置、4,4-1,4-2,4-3…インバータユニット、7…IGBT素子、8…冷却装置、8-1…受熱ブロック、8-2…冷却タンク、9…ゲートアンプ、10…冷媒、11…冷却フィン、12…ヒートパイプ、12U…ヒートパイプのU字状中間部、13,13-1,13-2,13-3,13-4…永久磁石同期電動機、14…フィルタリアクトル、15…フィルタコンデンサ、16,16-1,16-2,16-3…接続端子、17,17-1,17-2,17-3,17-4…インバータ主回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するように構成した鉄道車両駆動用インバータ装置において、
前記各インバータユニットの受熱ブロックは、垂直方向の上下面の片面または両面に対し、前記出力交流電力の相数に対応する個数分の前記半導体スイッチング素子を車両走行方向に取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項2】
前記各インバータユニット毎に1台の鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項3】
前記受熱ブロックの両面に取付けた半導体スイッチング素子を、2レベル回路のインバータの正側アームの半導体スイッチング素子と負側アームの半導体スイッチング素子との関係となるように両者のエミッタ端子コレクタ端子間を接続導体によって接続しことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項4】
冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するようにした鉄道車両駆動用インバータ装置において、
前記鉄道車両車体の床下に垂直方向に設置されたインバータユニットの台数は3台であり、前記3台の各インバータユニット毎に三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームによる対が車両走行方向に4対構成されるように、各受熱ブロックの垂直方向の上側面および下側面に前記半導体スイッチング素子を取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項5】
前記インバータユニット1台あたり三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームの対を4組作り、3台のインバータユニットで4つのインバータ主回路を構成し、各インバータ主回路で個々に鉄道車両駆動用交流電動機を駆動することを特徴とする請求項4記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項6】
前記インバータ主回路の正側アームの半導体スイッチング素子および負側アームの半導体スイッチング素子間を接続する接続導体を、厚みの薄い絶縁物を介して密着配置することにより低インダクタンス化を図ることを特徴とする請求項3または5記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項7】
前記鉄道車両駆動用交流電動機は、永久磁石同期電動機であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項8】
前記半導体スイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項1】
冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に、かつ互いが水平となるように複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するように構成した鉄道車両駆動用インバータ装置において、
前記各インバータユニットの受熱ブロックは、垂直方向の上下面の片面または両面に対し、前記出力交流電力の相数に対応する個数分の前記半導体スイッチング素子を車両走行方向に取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項2】
前記各インバータユニット毎に1台の鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項3】
前記受熱ブロックの両面に取付けた半導体スイッチング素子を、2レベル回路のインバータの正側アームの半導体スイッチング素子と負側アームの半導体スイッチング素子との関係となるように両者のエミッタ端子コレクタ端子間を接続導体によって接続しことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項4】
冷媒を封入した冷却タンクを埋め込んだ受熱ブロックに半導体スイッチング素子および冷却フィンを備えたヒートパイプを取付けてなるインバータユニットを鉄道車両車体の床下に垂直方向に複数台設置し、前記各インバータユニット毎に前記半導体スイッチング素子をゲート制御して直流電力を交流電力に変換して出力し鉄道車両駆動用交流電動機を駆動するようにした鉄道車両駆動用インバータ装置において、
前記鉄道車両車体の床下に垂直方向に設置されたインバータユニットの台数は3台であり、前記3台の各インバータユニット毎に三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームによる対が車両走行方向に4対構成されるように、各受熱ブロックの垂直方向の上側面および下側面に前記半導体スイッチング素子を取付けるとともに、車両走行方向に平行な側面に前記冷却フィンを備えたヒートパイプを複数本取付けたことを特徴とする鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項5】
前記インバータユニット1台あたり三相ブリッジ回路の正側アームおよび負側アームの対を4組作り、3台のインバータユニットで4つのインバータ主回路を構成し、各インバータ主回路で個々に鉄道車両駆動用交流電動機を駆動することを特徴とする請求項4記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項6】
前記インバータ主回路の正側アームの半導体スイッチング素子および負側アームの半導体スイッチング素子間を接続する接続導体を、厚みの薄い絶縁物を介して密着配置することにより低インダクタンス化を図ることを特徴とする請求項3または5記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項7】
前記鉄道車両駆動用交流電動機は、永久磁石同期電動機であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【請求項8】
前記半導体スイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鉄道車両駆動用インバータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−19305(P2011−19305A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161007(P2009−161007)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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