説明

銀含有非イオン性ポリウレタン水性分散体

【課題】毒物学的見地から批判されず、迅速かつ持続的に抗菌剤を放出する被膜を生じる、従来技術の欠点を有さない組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアおよび少なくとも1種の銀含有成分を含んでなる水性分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀含有非イオン性ポリウレタン水性分散体に関する。更に本発明は、銀含有非イオン性ポリウレタン水性分散体の製造方法、および抗菌性(制菌性)被膜を製造するためのその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製および金属製の物品は、医療分野で頻繁に使用されている。そのような用具の例は、インプラント、カニューレまたはカテーテルである。これら製品の使用に関する問題は、これらの材料の表面に細菌が容易に定着することである。細菌が定着した物品(例えばインプラント、カニューレまたはカテーテル)を使用すると、しばしば、バイオフィルム形成を介して感染が起こる。そのような感染は、中心静脈カテーテルの分野およびカテーテルを使用する泌尿器分野において特に深刻である。
【0003】
これまで、細菌の表面定着、従って感染を防ぐため、多くの試みが行われてきた。しばしば、医療用インプラントまたはカテーテルの表面に抗生物質を含浸する試みが行われてきた。しかしながら、この場合、耐性菌の形成および淘汰を考慮しなければならない。
【0004】
インプラントまたはカテーテルを使用する際に感染を防ぐための別の試みは、例えばカテーテルの場合、金属または合金を使用することである。
【0005】
これに関して、銀の抗菌効果が特に重要である。銀および銀塩は、長年、抗菌活性物質であることが知られている。銀含有表面の抗菌効果は、銀イオンの放出による。銀の利点は、極めて低い濃度でさえも細菌に対する毒性が高いことにある。Hardesら、Biomaterials 28 (2007) 2869-2875は、35ppbまで低くした濃度における銀の抗菌活性を報告している。一方、銀は、著しく高い濃度でさえ、哺乳類細胞に対する毒性を有さない。更なる利点は、細菌が銀に対する耐性を生じる傾向が低いことである。
【0006】
メディカルデバイス(例えばカテーテル)に銀を適用する様々な試みは、文献に記載されている。1つの試みは、カテーテル表面に金属銀を使用することである。例えばUS 3,800,087は、表面を金属被覆する方法を開示している。DE 43 28 999によれば、同方法は、メディカルデバイス(例えばカテーテル)に使用することもできる。これら特許における欠点は、カテーテルに関する難題(例えば、尿のような体液中での保存、体内への挿入および体内からの取り出しの際の摩擦、またはカテーテルの繰り返される曲げ)を考えた場合に、銀の付着が不十分なことである。
【0007】
しかしながら、メディカルデバイス上の金属被膜は、カテーテル材料への不十分な付着という欠点だけでなく、カテーテルの内側への適用が少なくとも非常に複雑であるという事実も有する。
【0008】
良好に付着する金属層をプラスチックと銀被膜との間に適用することによる、カテーテルプラスチックへの銀被膜の付着に対する改良は、上記したDE 43 28 999 Aに記載されている。記載されている製品の場合、真空室での蒸着、スパッタリングまたはイオン注入によって、銀が適用される。これらの方法は非常に複雑かつ高価である。更なる欠点は、蒸着により適用される銀元素の量は比較的多いのに、極めて少量の活性銀イオンしか周囲流体に供給されないことである。また、これらの方法は、インプラントまたはカテーテルの外側を被覆するためにしか使用できない。しかしながら、細菌は、カテーテルの内側にも容易に付着し、バイオフィルムを形成し、患者に感染をもたらすことが知られている。
【0009】
数多くの特許出願が、医療用インプラントまたはカテーテルに適用される抗菌性被膜への銀塩の使用に関する。金属銀と比較すると、銀塩は、含浸被膜において、活性銀と一緒に、特定の状況下で有毒になり得るアニオン(例えば硝酸銀における硝酸イオン)も存在するという欠点を有する。更なる問題は、銀塩からの銀イオンの放出速度である。硝酸銀のようなある種の銀塩は、水に高溶解性であるので、表面被膜から周囲媒体への供給が場合により迅速すぎる。塩化銀のような別の銀塩は溶解性が低いので、銀イオンの流体への供給が緩慢すぎる場合がある。
【0010】
US 6,716,895 B1は、1つの成分として、とりわけ、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンおよびポリウレタンウレアから選択され得る親水性ポリマーを含んでなる抗菌性組成物に関する。抗菌被覆は、微量作用性塩によって、例えば銀塩を使用することによって達成される。組成物は、メディカルデバイスを被覆するために使用される。この被覆剤の欠点は、先に言及した銀塩の使用に加えて、被覆剤がポリマー成分の溶液から出発して調製されるので、この被覆剤を用いて供給されたメディカルデバイスの埋め込みに続いて人体に入る有毒な溶媒残渣をしばしば防ぐことができないことである。
【0011】
例えば、WO 2004/017738 A、WO 2001/043788 AおよびUS 2004/0116551 Aなどの更なる特許公報は、銀イオンを連続的に放出する銀含有被膜に達するために異なった銀塩の組み合わせを含むという概念を記載している。様々な銀塩を様々なポリマー(例えばポリウレタン)と混合し、被覆デバイスを使用する期間全体にわたって銀が絶えず放出されるように、異なった水溶性を有する銀塩の組み合わせを作る。これらの方法は、複数の銀塩および複数のポリマーを使用するので複雑である。
【0012】
銀イオンを用いる別の方法は、WO 2001/037670 AおよびUS 2003/0147960 Aに記載されている。WO 2001/037670 Aは、銀イオンがゼオライトに錯化されている抗菌性組成物を記載している。US 2003/0147960 Aは、銀イオンが親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの混合物に結合している被膜を記載している。
【0013】
銀塩を使用する上記方法は、先に言及した欠点を有し、更に実施が複雑であり、従って製造コストが高くなるので、製造方法および活性について改善された銀含有被膜に対する要求がなお存在する。
【0014】
プラスチックに抗菌性を付与するための1つの興味深い可能性は、ナノ結晶銀粒子を使用することである。この金属銀での被覆の利点は、ナノ結晶銀の体積に対して極めて大きい表面積にある。この表面積により、金属銀被膜と比較して、銀イオンの放出が増加する。
【0015】
Furnoら、Journal of Antimicrobial Chemotherapy 2004, 54, 第1019頁〜第1024頁は、超臨界二酸化炭素を使用してナノ結晶銀をシリコーン表面に含浸させる方法を記載している。複雑な含浸操作および超臨界二酸化炭素の必須の使用を考えれば、この方法は高価であり、利用しにくい。
【0016】
また、ナノ結晶銀をプラスチックに配合するための様々な既知の方法がある。例えば、WO 01/09229 A1、WO 2004/024205 A1、EP 0 711 113 A、およびMuenstedtら、Advanced Engineering Materials 2000, 2(6), 第380頁〜第386頁は、ナノ結晶銀の熱可塑性ポリウレタンへの配合を記載している。市販熱可塑性ポリウレタンのペレットを、コロイド状銀を含有する溶液に浸す。抗菌活性を高めるため、WO 2004/024205 A1およびDE 103 51 611 A1は、更に、添加剤として硫酸バリウムを使用する可能性を言及している。これらの方法では、ドープされたポリウレタンペレットから、対応する製品(例えばカテーテル)を押出によって製造している。これらの刊行物に記載されている方法は、浸漬後にポリウレタンペレット上に残る銀の量が一定ではない、および/またはあらかじめ決定できないという事実の故に不利である。従って、得られた製品の実際の銀含有量を後に、即ち最終製品の製造後に測定しなければならない。一方、得られる最終製品に供給される銀の実際の量を正確に設定する方法は、これら刊行物からは分からない。
【0017】
同様の方法は、EP 0 433 961 Aに記載されている。同特許でもまた、熱可塑性ポリウレタン(Pellethane)、銀粉末および硫酸バリウムの混合物を混合し、押出している。
【0018】
また、これらの方法の欠点は、プラスチック要素全体に分布する比較的多量の銀である。従って、この方法は高価であり、コロイド状銀のプラスチックマトリックス全体への配合の故に、特定のケースにおける十分な活性には、銀の放出が緩慢すぎる。硫酸バリウムの添加による銀放出の改善は、更なる高価な作業工程を意味する。
【0019】
人工血管を製造するための、有機溶媒中のナノ結晶銀を伴った熱可塑性ポリウレタンを含んでなる被覆溶液は、WO 2006/032497 Aに記載されている。ポリウレタンの構造は更には明記されていないが、熱可塑性プラスチックの請求項を見ると、尿素不含有ポリウレタンの使用が考えられる。抗菌効果は、試験要素表面に付着したStaphylococcus epidermidis細胞の増殖を、対照と比較することによって測定された。しかしながら、対照表面と比較して(所定の限界増殖から出発して)最大33.2時間までしか増殖遅延が見られなかったので、銀含有被膜について検出された抗菌作用は、低弱であると見なされ得る。従って、インプラントまたはカテーテルのような長期間使用する用途には、この被覆組成物は不適切である。
【0020】
更なる問題は、被覆溶液を調製するための溶媒の使用である。WO 2006/032497 A1は、不織構造体として生体適合性ポリマーを含んでなる、可撓性多孔質構造を有する抗菌性インプラントを記載している。使用されている成分の1つは、熱可塑性ポリウレタンのクロロホルム溶液である。クロロホルムは、毒性の高い溶媒であることが知られている。人体に埋め込まれる医療品を被覆する場合、人体に埋め込んだ後に、この有毒な溶媒残渣からの危険性が存在する。
【0021】
有機被覆溶液におけるコロイド状銀の更なる欠点は、銀ナノ粒子の安定性がしばしば低いことである。有機溶液中では、銀粒子の集合体が形成され得、それ故、再生可能な銀活性を確立することは不可能である。従って、コロイド状銀を添加した有機溶液は、バッチ間の一貫した銀活性を確実にするため、その調製後できるだけ早く完成被膜に加工すべきである。しかしながら、作業上の実態により、そのような手順は時として不可能である。
【0022】
よって、コロイド状に分布した銀が存在する水性ポリウレタン被覆剤は、抗菌性被覆剤として望ましい。
【0023】
US 2006/045899は、水性ポリウレタン系を用いた抗菌性組成物を記載している。該抗菌性組成物は異なった物質の混合物であり、このことがこれら生成物の製造を困難にしている。水性ポリウレタン系がカチオン的またはアニオン的に安定化された分散体であるという事実は別として、水性ポリウレタン系の性質ははっきりとは記載されていない。
【0024】
CN 1760294は同様に、0.2〜10μmの粒度を有する銀粉末を含有するアニオン性ポリウレタン分散体を記載している。この従来技術によれば、そのような粒度は、高い抗菌活性には不十分である。
【0025】
C.-W. Chouら、Polymer Degradation and Stability 91 (2006), 1017-1024は、極めて少量(0.00151〜0.0113重量%)のコロイド状銀が配合されている、スルホネート変性ポリエーテルポリウレタン分散体を記載している。この研究論文の狙いは、使用したポリウレタンの熱的特性および機械的特性を改良することであった。抗菌作用は調べられていないが、銀の量が極めて少量であることを考えると、抗菌作用はありそうもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】US 3,800,087
【特許文献2】DE 43 28 999 A
【特許文献3】US 6,716,895 B1
【特許文献4】WO 2004/017738 A
【特許文献5】WO 2001/043788 A
【特許文献6】US 2004/0116551 A
【特許文献7】WO 2001/037670 A
【特許文献8】US 2003/0147960 A
【特許文献9】WO 01/09229 A1
【特許文献10】WO 2004/024205 A1
【特許文献11】EP 0 711 113 A
【特許文献12】DE 103 51 611 A1
【特許文献13】EP 0 433 961 A
【特許文献14】WO 2006/032497 A
【特許文献15】US 2006/045899
【特許文献16】CN 1760294
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Hardesら、Biomaterials 28 (2007) 2869-2875
【非特許文献2】Furnoら、Journal of Antimicrobial Chemotherapy 2004, 54, 第1019頁〜第1024頁
【非特許文献3】Muenstedtら、Advanced Engineering Materials 2000, 2(6), 第380頁〜第386頁
【非特許文献4】C.-W. Chouら、Polymer Degradation and Stability 91 (2006), 1017-1024
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従来技術に鑑み、本発明の目的は、上記欠点を有さない組成物を提供することである。特に、組成物は、毒物学的見地から批判されず、迅速かつ持続的に抗菌剤を放出する被膜を生じる。予め定めた量で抗菌剤を含有するように、好ましくは組成物を設計すべきである。それによって、例えば、抗菌剤の量を変えることによって、異なった分野でも組成物を使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の態様は、少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアおよび少なくとも1種の銀含有成分を含んでなる水性分散体である。
【0030】
本発明の別の態様は、前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、少なくとも1種のポリエステルポリオール、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリカーボネートポリオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるマクロポリオール合成成分を含んでなる、前記水性分散体である。
【0031】
本発明の別の態様は、前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリカーボネートポリオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるマクロポリオール合成成分を含んでなる、前記水性分散体である。
【0032】
本発明の別の態様は、前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、少なくとも以下の合成成分:
a)少なくとも1種のマクロポリオール;
b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
c)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール;
d)少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテル;および
e)任意に少なくとも1種のポリオール
から合成される、前記水性分散体である。
【0033】
本発明の別の態様は、前記少なくとも1種の銀含有成分が、高多孔性銀粉末、担体物質に担持された銀またはコロイド状銀ゾルである、前記水性分散体である。
【0034】
本発明の別の態様は、前記水性分散体が、1〜1000nmの範囲に平均粒度を有するナノ結晶銀粒子を含んでなる、前記水性分散体である。
【0035】
本発明の別の態様は、固体状非イオン的安定化ポリウレタンウレアポリマーの量に基づき、AgおよびAgとして計算された銀の量が、0.1〜10重量%の範囲である、前記水性分散体である。
【0036】
本発明の更に別の態様は、少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体と少なくとも1種の銀含有成分とを混合することを含む、前記水性分散体の製造方法である。
【0037】
本発明の別の態様は、少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体と少なくとも1種の銀含有成分とを混合することを含む、前記製造方法であって、前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、
(I)まず、a)、b)、d)および任意にe)を導入し、場合により前記成分を水混和性であるがイソシアネート基に対して不活性である溶媒で希釈して、組成物を生成し、
(II)(I)から得た組成物を50〜120℃の範囲の温度まで加熱し、
(III)a)、b)、d)のいずれかおよび場合により(I)で添加しなかったe)を計量添加してプレポリマーを生成し、
(IV)前記プレポリマーを脂肪族ケトンで溶解し;および
(V)c)との反応によって前記プレポリマーを連鎖延長する
ことによって得られる、方法である。
【0038】
本発明の更に別の態様は、前記方法によって得られたポリウレタンウレア分散体である。
【0039】
本発明の更に別の態様は、前記ポリウレタンウレア分散体から調製された被覆剤である。
【0040】
本発明の更に別の態様は、前記被覆剤で被覆された表面である。
【0041】
本発明の更に別の態様は、前記被覆剤で被覆されたメディカルデバイスである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例で得られ、対数で表した、1ミリリットルあたりのコロニー形成単位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の目的は、少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアおよび少なくとも1種の銀含有成分を含んでなる水性分散体の提供によって達成される。
【0044】
本発明によれば、水に分散され、銀含有成分を含んでなるポリウレタンウレア分散体が非イオン的に安定化されているならば、該ポリウレタンウレアを含んでなる被膜が効果的に銀を放出することが見出された。この発見を裏付ける、本発明に従った対応実験および対応比較実験を後に記載する。
【0045】
本発明の目的のためのポリウレタンウレアは、
(a)以下の一般構造:
【化1】

で示されるウレタン基を含有する反復単位を少なくとも2つ、および
(b)
【化2】

で示されるウレア基を含有する反復単位を少なくとも1つ
有するポリマー化合物である。
【0046】
本発明の組成物は、実質上イオン変性されていないポリウレタンウレアに基づく。これは、本発明では、本発明に従って使用するためのポリウレタンウレアは、本質的に、イオン基、特に、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスフェート基およびホスホネート基を有さないことを意味する。
【0047】
用語「実質上イオン基を有さない」とは、本発明において、ポリウレタンウレアが、通常2.50重量%以下、特に2.00重量%以下、好ましくは1.50重量%以下、特に好ましくは1.00重量%以下、とりわけ0.50重量%以下の割合でイオン基を含有し、特にイオン基を含有しないことを意味する。従って、ポリウレタンウレアがイオン基を含有しないことが特に好ましい。
【0048】
本発明に従って組成物に供給されるポリウレタンウレアは、好ましくは実質上直鎖分子であり、あまり好ましくはないが分枝であってもよい。実質上直鎖分子とは、好ましくは1.7〜2.3、より好ましくは1.8〜2.2、特に1.9〜2.1の平均官能価を有する、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールおよびそれらの混合物からなる群から一般に選択されるマクロポリオール成分を合成成分として含んでなる、僅かな初期架橋度を有する系を意味する。
【0049】
より詳細に以下で説明するように、マクロポリオールおよび適切な場合にポリオールの混合物をポリウレタンウレアに使用するならば、官能価は、マクロポリオールおよび/またはポリオールの全体についての平均値である。
【0050】
本発明に好ましいポリウレタンウレアの数平均分子量は、好ましくは1000〜200,000、より好ましくは5000〜100,000である。本発明において数平均分子量は、30℃で、ジメチルアセトアミド中、標準としてのポリスチレンに対して測定される。
【0051】
ポリウレタンウレア
以下に、本発明のポリウレタンウレアベース組成物をより詳細に説明する。
本発明に従って供給されるポリウレタンウレアは、一般に、少なくとも1種のマクロポリオール成分、少なくとも1種のポリイソシアネート成分、少なくとも1種のポリオキシアルキレンエーテル、少なくとも1種のジアミンおよび/またはアミノアルコール、および必要に応じてポリオール成分の反応によって生成される。更なる合成成分が、本発明のポリウレタンウレア中に存在してもよい。
【0052】
(a)マクロポリオール成分
本発明に従って供給されるポリウレタンウレア組成物は、合成成分として、少なくとも1種のマクロポリオール成分に由来する単位を有する。
【0053】
このマクロポリオール成分は、一般に、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールおよびそれらの所望の混合物からなる群から選択される。
【0054】
本発明の1つの好ましい態様では、合成成分は、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオール、並びにポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールの混合物から形成される。
【0055】
本発明の更なる態様では、マクロポリオールの合成成分は、ポリエーテルポリオール、特にポリエーテルジオールから形成される。ポリエーテルポリオール、特にポリエーテルジオールは、銀の放出にとって特に好ましい。これらの発見を裏付ける本発明の対応実験を後に示す。
【0056】
以下、個々のマクロポリオール合成成分を、より詳細に説明する。本発明は、一般に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選択される1種の合成成分しか含有しないポリウレタンウレアを包含し、これら合成成分の混合物も包含する。更に、本発明に従って供給されるポリウレタンウレアは、これらの種の合成成分の1種以上の異なった成分を含有してもよい。
【0057】
本発明に従って供給されるポリウレタンウレアの上記官能価は、2種以上の異なったマクロポリオールおよびポリオールまたはポリアミン(後記c)およびe)で更に説明)がポリウレタンウレア中に存在する場合は、平均官能価であると理解される。
【0058】
ポリエーテルポリオール
対象であるヒドロキシル含有ポリエーテルは、例えばBFまたは塩基触媒の存在下で、環状エーテル(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシドまたはエピクロロヒドリン)を重合させることによって、或いはこれら環状化合物と反応性水素原子含有スターター成分(例えば、アルコールおよびアミンまたはアミノアルコール、例えば、水、エチレングリコール、プロピレン1,2−グリコールまたはプロピレン1,3−グリコール)とを適切な場合には混合物としてまたは逐次的に付加反応させることによって、調製されるヒドロキシル含有ポリエーテルである。
【0059】
好ましいヒドロキシル含有ポリエーテルは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはテトラヒドロフランまたはこれら環状エーテルの混合物に基づくポリエーテルである。特に好ましいヒドロキシル含有ポリエーテルは、重合テトラヒドロフランに基づくポリエーテルである。エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドに基づくポリエーテルのような他のヒドロキシル含有ポリエーテルを添加することもできるが、その場合、テトラヒドロフランに基づくポリエーテルは、好ましくは少なくとも50重量%存在する。
【0060】
ポリカーボネートポリオール
適当なヒドロキシル含有ポリカーボネートは、好ましくは400〜6000g/mol、より好ましくは500〜5000g/mol、特に600〜3000g/molの、ヒドロキシル価によって測定された分子量を有するポリカーボネートであり、それらは、例えば、カルボン酸誘導体(例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲン)とポリオール(好ましくはジオール)との反応によって得られる。そのようなジオールの好ましい例は、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジ−、トリ−またはテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、およびラクトン変性ジオールを包含する。
【0061】
ジオール成分は、好ましくは40〜100重量%のヘキサンジオール、好適には1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体、好ましくは末端OH基の他にエーテル基またはエステル基も有するものを含有し、その例は、1molのヘキサンジオールと少なくとも1mol、好ましくは1〜2molのカプロラクトンとの反応によって、或いはジ−またはトリへキシレングリコールを与えるヘキサンジオール同士のエーテル化によって、得られる生成物である。ポリエーテル−ポリカーボネートジオールも使用できる。ヒドロキシルポリカーボネートは、実質上直鎖であるほうがよい。しかしながら必要に応じて、ヒドロキシルポリカーボネートは、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの配合の結果として、やや分枝していてもよい。この目的に適した低分子量ポリオールの例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシドまたは1,3,4,6−ジアンヒドロヘキシトールを包含する。好ましいポリカーボネートは、ヘキサン−1,6−ジオールに基づくポリカーボネート、および例えばブタン−1,4−ジオールのような変性作用を有するコジオールに基づくポリカーボネート、またはε−カプロラクトンに基づくポリカーボネートである。更に好ましいポリカーボネートジオールは、ヘキサン−1,6−ジオールおよびブタン−1,4−ジオールの混合物に基づくポリカーボネートジオールである。
【0062】
ポリカーボネートは、構造上、好ましくは実質的に直鎖であり、僅かしか三次元架橋を有さない。その結果、上記した仕様を有するポリウレタンウレアが生成される。
【0063】
ポリエステルポリオール
適当なヒドロキシル含有ポリエステルは、例えば、多価アルコール(好ましくは二価アルコール)と多塩基性(好ましくは二塩基性)ポリカルボン酸との反応生成物である。遊離カルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールとのポリカルボン酸エステル、或いはそれらの混合物を使用して、ポリエステルを調製することもできる。
【0064】
ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式であってよく、適切な場合は、例えばハロゲン原子によって置換されていてもよく、および/または不飽和であってもよい。脂肪族および脂環式ジカルボン酸が好ましい。それらの例は、以下を包含する:コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テトラクロロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イタコン酸、セバシン酸、グルタル酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、2,2−ジメチルコハク酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸またはジメチルテレフタレート。これら酸の無水物も、それらが存在するならば同様に使用できる。それらの例は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸および無水テトラクロロフタル酸である。
【0065】
少量で使用されるポリカルボン酸として、適切な場合には、トリメリット酸を挙げることができる。
【0066】
使用される多価アルコールは、好ましくはジオールである。そのようなジオールの例は、エチレングリコール、プロピレン−1,2−グリコール、プロピレン−1,3−グリコール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオールまたはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートである。ラクトン、例えばε−カプロラクトンから生成されたポリエステルジオールを使用することもできる。適切な場合に同様に使用できるポリオールの例は、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートである。
【0067】
(b)ポリイソシアネート
本発明に従って供給されるポリウレタンウレアは、合成成分として少なくとも1種のポリイソシアネートに由来する単位を含んでなる。
【0068】
ポリイソシアネート(b)として、当業者に知られており、1以上、好ましくは2以上の平均NCO官能価を有する、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族および脂環式イソシアネートの全てを、それらがホスゲン法またはホスゲンフリー法のどちらによって調製されたかに関係なく、単独でまたは互いの所望の混合物として使用することができる。ポリイソシアネートは、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、ウレア、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシルウレアおよび/またはカルボジイミド構造を含有してもよい。ポリイソシアネートは、単独でまたは互いの所望の混合物として使用してよい。
【0069】
3〜30個、好ましくは4〜20個の炭素原子の(存在するNCO基を除く)炭素主鎖を有する、一連の脂肪族または脂環式の例からのイソシアネートを使用することが好ましい。
【0070】
成分(b)の特に好ましい化合物は、脂肪族的および/または脂環式的に結合したNCO基を有する上記した種類、例えば、ビス(イソシアナトアルキル)エーテル、ビス−およびトリス(イソシアナトアルキル)ベンゼン、−トルエン、および−キシレン、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート(例えば、一般に2,4,4および2,2,4異性体の混合物としてのトリメチル−HDI(TMDI))、ノナントリイソシアネート(例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート)、デカンジイソシアネート、デカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、ドデカントリイソシアネート、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)またはビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)
に従う。
【0071】
成分(b)の特に好ましい化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチル−HDI(TMDI)、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)および/または4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)或いはこれらイソシアネートの混合物である。更なる例は、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造および3つ以上のNCO基を含有する、上記ジイソシアネートの誘導体である。
【0072】
本発明に従って供給されるポリウレタンウレア中の成分(b)の量は、各々の場合にポリウレタンウレアの成分(a)に基づいて、好ましくは1.0〜3.5mol、より好ましくは1.0〜3.3mol、特に1.0〜3.0molである。
【0073】
(c)ジアミンまたはアミノアルコール
本発明に従って供給されるポリウレタンウレアは、合成成分として少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコールに由来し、いわゆる連鎖延長剤(c)として作用する単位を含んでなる。
【0074】
そのような連鎖延長剤は、例えば、ジアミンまたはポリアミンおよびヒドラジド、例えば、ヒドラジン、1,2−エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−および1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンおよび他の(C1〜C4)ジ−およびテトラアルキルジシクロヘキシルメタン、例えば4,4’−ジアミノ−3,5−ジエチル−3’,5’−ジイソプロピルジシクロヘキシルメタンである。
【0075】
適当なジアミンまたはアミノアルコールは、一般に、NCO基に対する異なった反応性を有する活性水素を含有する低分子量のジアミンまたはアミノアルコール、例えば、第一級アミノ基の他に第二級アミノ基も含有するか、或いはアミノ基(第一級または第二級)の他にOH基も含有する化合物である。そのような化合物の例は、第一級および第二級アミン、例えば、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン、およびアミノアルコール、例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン、特に好ましくはジエタノールアミンである。
【0076】
本発明に従って供給されるポリウレタンウレアの成分(c)は、ポリウレタンウレアの調製において、連鎖延長剤として使用され得る。
【0077】
本発明に従って供給されるポリウレタンウレア中の成分(c)の量は、各々の場合にポリウレタンウレアの成分(a)に基づいて、好ましくは0.1〜1.5mol、より好ましくは0.2〜1.3mol、特に0.3〜1.2molである。
【0078】
(d)ポリオキシアルキレンエーテル
本発明で供給されるポリウレタンウレアは、合成成分としてポリオキシアルキレンエーテルに由来する単位を含んでなる。
【0079】
ポリオキシアルキレンエーテルは、好ましくは、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのコポリマーである。これらのコポリマー単位は、ポリウレタンウレア内で末端基として存在し、ポリウレタンウレアを親水性にする効果を有する。
【0080】
成分(d)の定義を満たす適当な非イオン性親水化化合物は、例えば、少なくとも1つのヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリマーは、一般に、30〜100重量%の割合のエチレンオキシド由来の単位を含有する。
【0081】
非イオン性親水化化合物(d)は、例えば、適当なスターター分子のアルコキシル化により常套法で得られる種類の、一分子あたり平均して5〜70、好ましくは7〜55のエチレンオキシド単位を含有する単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである(例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, 第4版、第19巻、Verlag Chemie, ヴァインハイム、第31頁〜第38頁)。
【0082】
適当なスターター分子の例は、飽和モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール(各種異性体)、オクタノール(各種異性体)およびノナノール(各種異性体)、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール(各種異性体)またはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル))、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール)、芳香族アルコール(例えば、フェノール、クレゾール(各種異性体)またはメトキシフェノール(各種異性体))、芳香脂肪族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール)、第二級モノアミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン)、並びに複素環式第二級アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール)である。好ましいスターター分子は、飽和モノアルコールである。スターター分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用することが特に好ましい。
【0083】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、それらは、アルコキシル化反応において、任意の順でまたは混合物として使用できる。
【0084】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、純粋なポリエチレンオキシドポリエーテルであるか、またはアルキレンオキシド単位が少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%の範囲のエチレンオキシド単位で構成される混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位および60mol%以下のプロピレンオキシド単位を含む単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0085】
アルキレンオキシドとして、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを使用する場合、それらは、アルコキシル化反応において、任意の順でまたは混合物として使用できる。
【0086】
ポリオキシアルキレンエーテルの平均分子量は、好ましくは500g/mol〜5000g/mol、より好ましくは1000g/mol〜4000g/mol、特に1000g/mol〜3000g/molである。
【0087】
本発明に従って供給されるポリウレタンウレア中の成分(d)の量は、各々の場合にポリウレタンウレアの成分(a)に基づいて、好ましくは0.01〜0.5mol、より好ましくは0.02〜0.4mol、特に0.04〜0.3molである。
【0088】
(e)ポリオール
更なる態様では、本発明に従って供給されるポリウレタンウレアは、更に、合成成分として少なくとも1種のポリオールに由来する単位を含んでなる。これらのポリオール合成成分は、マクロポリオールと比較して比較的短鎖の合成成分であり、付加的ハードセグメントによって剛直をもたらすことができる。
【0089】
従って、ポリウレタンウレアを合成するために使用される低分子量ポリオール(e)は、一般に、ポリマー鎖を剛直および/または分岐する効果を有する。ポリオールの分子量は、好ましくは62〜500g/mol、より好ましくは62〜400g/mol、特に62〜200g/molである。
【0090】
適当なポリオールは、脂肪族、脂環式または芳香族の群を包含し得る。本発明では、例えば一分子あたり約20個までの炭素原子を含有する低分子量ポリオール、例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、およびトリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトール、並びにそれらのおよび必要に応じて他の低分子量ポリオールとの混合物を挙げることができる。例えば、α−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシカプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸β−ヒドロキシエチルエステルまたはテトラテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステルのようなエステルジオールを使用してもよい。
【0091】
本発明に従って供給されるポリウレタンウレア中の成分(e)の量は、各々の場合にポリウレタンウレアの成分(a)に基づいて、好ましくは0.05〜1.0mol、より好ましくは0.05〜0.5mol、特に0.1〜0.5molである。
【0092】
(f)更なるアミン−および/またはヒドロキシ−含有単位(合成成分)
イソシアネート含有成分(b)と、ヒドロキシ−またはアミン−官能性化合物(a)、(c)、(d)および使用する場合は(e)との反応は、典型的には、反応性ヒドロキシまたはアミン化合物に対してややNCO過剰で実施する。この場合、反応終了時、目標粘度の達成にもかかわらず、活性イソシアネート基が常に残留する。この基を、大きいポリマー鎖と反応しないように、ブロックしなければならない。この基とポリマー鎖との反応は、バッチの三次元架橋およびゲル化を招く。三次元架橋およびゲル化したポリウレタンウレアの加工はもはや不可能であるか、または可能であるとしても制限を受ける。バッチは、典型的には多量の水を含有する。何時間にもわたって、室温でバッチを放置または撹拌すると、水は、なお残留するイソシアネート基を反応により消費する。
【0093】
しかしながら、残留イソシアネート含有物を迅速にブロックすることが望ましいならば、本発明に従って供給されるポリウレタンウレアは、各々の場合に鎖末端に位置してキャップする、モノマー(f)を含有してもよい。
【0094】
これらの単位は、一方で、NCO基と反応する単官能性化合物、例えばモノアミン、特に第二級モノアミン、またはモノアルコールに由来する。本発明では、例えば、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジンおよびそれらの適当な置換誘導体を挙げることができる。
【0095】
単位(f)は、NCO過剰を解消するため、本発明に従って供給されるポリウレタンウレアに本質的に使用されるので、望ましい量は、本質的にNCO過剰量に依存し、一般的に明記できない。
【0096】
好ましくは、これらの単位は、合成中に使用されない。その場合、未反応イソシアネートは、好ましくは分散水により加水分解される。
【0097】
(g)本発明のポリウレタンウレア分散体の更なる成分
本発明のポリウレタンウレア分散体は、銀含有成分である抗菌剤(制菌剤)の使用により、既に十分に機能化されているが、特定の場合、ポリウレタンウレア分散体、従って得られる被膜を更に機能化することが有利であり得る。これらの更なる可能な機能化を、以下に記載する。
【0098】
また、本発明のポリウレタンウレア分散体は、意図した目的に典型的な更なる成分、例えば添加剤および充填材を含有してよい。そのような例は、活性薬物、薬剤および、活性薬物の放出を促進する添加剤(薬物溶出添加剤)である。
【0099】
本発明のポリウレタンウレア組成物に使用できる活性薬物および薬剤は、一般に、例えば、抗血栓剤、抗生物質、抗癌剤、成長ホルモン、抗ウィルス剤、抗血管形成剤、血管形成剤、抗有糸分裂剤、抗炎症剤、細胞周期調節因子、遺伝因子、ホルモン、およびそれらの同族体、誘導体、断片、薬物塩、並びにそれらの組み合わせである。
【0100】
従って、そのような薬剤および活性薬物の特定例は、抗血栓剤(非血栓形成剤)、および動脈の急性血栓症、狭窄症または晩発性再狭窄症を抑制するための他の製剤を包含する。その例は、ヘパリン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子、抗トロンボキサン−B剤;抗−B−トロンボグロブリン、プロスタグランジン−E、アスピリン、ジピリジモール、抗トロンボキサン−A剤、マウス・モノクローナル抗体7E3、トリアゾロピリミジン、シプロステン、ヒルジン、チクロピジン、ニコランジルなどである。成長因子も同様に、動脈狭窄部位での内膜下線維筋過形成を抑制するために薬剤として使用でき、或いは、狭窄部位では、他のあらゆる細胞増殖阻害剤を使用できる。
【0101】
薬剤または活性薬物は、血管痙攣を防ぐために、血管拡張剤、例えばパパベリンのような鎮痙剤からなってもよい。薬剤は、カルシウム拮抗薬のような血管作用剤自体、或いはα−およびβ−アドレナリン作動薬または拮抗薬であり得る。また、治療薬は、例えば、生体弁を冠動脈壁に結合するために使用される、医療グレードのシアノアクリレートのような生物接着剤、または線維素であり得る。
【0102】
治療薬は、更に、好ましくは薬剤のための制御放出賦形剤(例えば、腫瘍部位における抗新生物薬の継続した制御放出のために使用される)を伴った、5−フルオロウラシルのような抗新生物薬であってよい。
【0103】
治療薬は、好ましくは、体内の感染の局所病巣でメディカルデバイスの被膜から継続放出するための制御放出賦形剤と組み合わせた、抗生物質であってよい。同様に治療薬は、局所組織における炎症を抑制する目的または他の理由のため、ステロイドを含有できる。
【0104】
適当な薬剤の特定例は、以下を包含する:
(a)ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒルジン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ウロキナーゼおよびストレプトキナーゼを包含する細胞溶解物質、それらの同族体、類似体、断片、誘導体および薬物塩;
(b)抗生物質、例えば、ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、アミノグリコシド、キノロン、ポリミキシン、エリスロマイシン;テトラサイクリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、スルホンアミド、それらの同族体、類似体、誘導体、薬物塩およびそれらの混合物;
(c)パクリタキセル、ドセタキセル、シロリムスまたはエベロリムスのような免疫抑制剤、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファランおよびイホスファミドを包含するアルキル化剤;メトトレキサート、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシルおよびシタラビンを包含する代謝拮抗物質;ビンブラスチンを包含する植物性アルカロイド;ビンクリスチンおよびエトポシド;ドキソルビシン、ダウノマイシン、ブレオマイシンおよびマイトマイシンを包含する抗生物質;カルムスチンおよびロムスチンを包含するニトロソウレア;シスプラチンを包含する無機イオン;インターフェロンを包含する生体反応修飾物質;アンギオスタチンおよびエンドスタチン;アスパラギナーゼを包含する酵素;およびタモキシフェンおよびフルタミドを包含するホルモン、それらの同族体、類似体、断片、誘導体、薬物塩並びにそれらの混合物;
(d)抗ウィルス剤、例えば、アマンタジン、リマンタジン、リバビリン、イドクスウリジン、ビダラビン、トリフルリジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ジドブジン、ホスホノホルメート、インターフェロン、それらの同族体、類似体、断片、誘導体、薬物塩並びにそれらの混合物;
(e)抗炎症薬、例えば、イブプロフェン、デキサメタゾンまたはメチルプレドニゾロン。
【0105】
更なる典型的な添加剤および助剤、例えば、増粘剤、風合い助剤、顔料、染料、艶消剤、紫外線安定剤、フェノール系酸化防止剤、光安定剤、疎水化剤および/または流れ制御剤も同様に、本発明のポリウレタンウレア組成物に使用できる。
【0106】
(h)抗菌性銀
本発明のポリウレタンウレア分散体は、ポリウレタンウレアに加えて、少なくとも1種の銀含有成分を含んでなる。
【0107】
本発明の目的のための「銀含有成分」とは、元素またはイオン状態で銀を放出でき、従って抗菌(殺菌/制菌)効果をもたらすことができる成分を意味する。
【0108】
銀の殺菌効果は、銀イオンと細菌との相互作用に由来する。元素銀から最大数の銀イオンを生成できるため、表面積の大きい銀が有利である。従って、抗菌用途には、主として、高多孔性銀粉末、担体物質に担持された銀またはコロイド状銀ゾルを使用する。
【0109】
例えば、下記製品が市販されている:Ag-Ion(ゼオライト中銀、銀イオン、Wakefield(米国マサチューセッツ))、Ionpure(登録商標)(ガラス中Ag、Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ国ラムペルトハイム)、Alphasan(登録商標)(AgZrホスフェート、Milliken Chemical(ベルギー国ヘント))、Irgaguard(登録商標)(ゼオライト/ガラス中銀)、Hygate(登録商標)(銀粉末、Bio-Gate(ドイツ国ニュルンベルク))、NanoSilver(登録商標)BG(懸濁液中銀)、およびNanocid(登録商標)(TiO上銀、Pars Nano Nasb Co.(イラン国テヘラン))。
【0110】
銀粉末は好ましくは気相から得られ、この場合、銀溶融物をヘリウム中で気化する。得られたナノ粒子は直ちに凝集し、高多孔性易濾過性粉末として得られる。しかしながら、これら粉末の欠点は、凝集物がもはや個々の粒子に分散できないことである。
【0111】
コロイド状銀分散体は、有機媒体または水性媒体中で銀塩を還元することによって得られる。コロイド状銀分散体の製造方法は、銀粉末の製造方法より複雑であるが、未凝集ナノ粒子が得られる利点を与える。未凝集ナノ粒子をポリウレタンウレア組成物に配合することによって、澄明なフィルムを製造できる。
【0112】
本発明の銀含有ポリウレタンウレア組成物には、所望の銀粉末またはコロイド状銀分散体を使用できる。複数のそのような銀材料が市販されている。
【0113】
本発明の銀含有ポリウレタンウレア水性分散体を調製するために好ましく使用される銀ゾルを、分散助剤の予備添加に続いて、ホルムアルデヒド水溶液のような還元剤で還元することによってAgOから調製する。この目的のため、例えば、急速な撹拌によって硝酸銀溶液とNaOHとを迅速に混合することにより回分式で、またはDE 10 2006 017 696に従ったマイクロミキサーを用いて連続操作で、AgOゾルを調製する。その後、AgOナノ粒子を回分式で過剰のホルムアルデヒドによって還元し、最後に、遠心分離または膜分離によって、好ましくは膜分離によって精製する。この方式の製造方法は、ナノ粒子表面に結合する有機助剤の量を最少にできるので、特に有利である。生成物は、約10〜150nm、より好ましくは20〜100nmの平均粒度を有する水中銀ゾル分散体である。次いで、この銀ゾル分散体を本発明のポリウレタンウレアと混合できる。
【0114】
本発明の非イオン性ポリウレタンウレア分散体には、1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜250nmの平均粒度を有するナノ結晶銀粒子を使用できる。銀ナノ粒子は、有機溶媒または水、好ましくは水混和性有機溶媒または水、特に好ましくは水の中の分散体であり得る。本発明の非イオン性ポリウレタンウレア組成物は、一般に、銀分散体をポリウレタンウレアに添加し、次いで撹拌または振盪によって均一化を実施することにより調製される。
【0115】
均一な組成物であるという仮定の下に、ポリウレタンウレア水性分散体中および得られる被膜中の固体状ポリマーの量に基づき、AgおよびAgとして計算されたナノ結晶銀の量は、変えることができる。典型的な濃度は、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%の範囲である。
【0116】
抗菌性被膜を製造するための水性分散体として、本発明の銀含有非イオン性ポリウレタンウレア組成物を使用する利点は、代替法と比較して、ポリウレタン水性分散体とコロイド状銀水性分散体との混合が極めて容易なことにある。種々の用途に応じて、異なった銀濃度を容易かつ正確に設定できる。多くの従来法は、本発明の組成物の製造方法より、実質上複雑であり、銀の量に関して正確ではない。これは特に、加工前にポリウレタンペレットに抗菌剤を含浸させる方法について言える。
【0117】
1つの特に好ましい態様では、抗菌性銀は、高多孔性銀粉末、担体物質に担持された銀またはコロイド状銀ゾルの形態であり、均一な組成物であるという仮定の下に、水性分散体中およびそれから得られる被膜中の固体状ポリウレタンウレアポリマーに基づき、0.1〜10重量%の銀が存在する。
【0118】
更に特に好ましい態様では、抗菌性銀は、1〜1000nmの粒度を有する、水性媒体中または水混和性有機溶媒中のコロイド状銀ゾルの形態であり、添加量は、固体状ポリウレタンウレアポリマーに基づいて0.3〜5重量%である。
【0119】
更に特に好ましい態様では、抗菌性銀は、1〜500nmの平均粒度を有する、水性媒体中のコロイド状銀ゾルの形態であり、添加量は、均一な組成物であるという仮定の下に、水性分散体中およびそれから得られる被膜中の固体状ポリウレタンウレアポリマーに基づいて0.5〜3重量%である。
【0120】
ポリウレタンウレア分散体
1つの好ましい態様では、本発明の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体は、少なくとも以下の合成成分:
a)少なくとも1種のマクロポリオール;
b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
c)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール;および
d)少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテル;並びに
h)少なくとも1種の抗菌性銀含有成分
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなる。
【0121】
本発明の更なる態様では、本発明の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体は、少なくとも以下の合成成分:
a)少なくとも1種のマクロポリオール;
b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
c)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール;
d)少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテル;および
e)少なくとも1種の更なるポリオール;並びに
h)少なくとも1種の抗菌性銀含有成分
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなる。
【0122】
本発明の更なる態様では、本発明の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体は、少なくとも以下の合成成分:
a)少なくとも1種のマクロポリオール;
b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
c)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール;
d)少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテル;
e)少なくとも1種の更なるポリオール;および
f)少なくとも1種の、ポリマー鎖末端に位置するアミン−またはヒドロキシル含有モノマー;並びに
h)少なくとも1種の抗菌性銀含有成分
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなる。
【0123】
本発明によれば、以下の合成成分:
a)400〜6000g/molの平均分子量および1.7〜2.3のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のマクロポリオール、またはそのようなマクロポリオールの混合物;
b)マクロポリオール1molあたり1.0〜3.5molの量の、少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ポリイソシアネート或いはそのようなポリイソシアネートの混合物;
c)マクロポリオール1molあたり0.1〜1.5molの量の、いわゆる連鎖延長剤としての、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジアミン或いは少なくとも1種のアミノアルコールもしくはそのような化合物の混合物;
d)マクロポリオール1molあたり0.01〜0.5molの量の、500〜5000g/molの平均分子量を有する、少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテルまたはそのようなポリエーテルの混合物;
e)必要に応じて、マクロポリオール1molあたり0.05〜1molの量の、62〜500g/molの分子量を有する1種以上の短鎖脂肪族ポリオール;および
f)必要に応じて、ポリマー鎖末端に位置してキャップするアミン−またはヒドロキシル含有単位;並びに
h)少なくとも1種の抗菌性銀含有成分
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなるポリウレタンウレア分散体が特に好ましい。
【0124】
本発明によれば、以下の合成成分:
a)500〜5000g/molの平均分子量および1.8〜2.2のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のマクロポリオール、またはそのようなマクロポリオールの混合物;
b)マクロポリオール1molあたり1.0〜3.3molの量の、少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ポリイソシアネート或いはそのようなポリイソシアネートの混合物;
c)マクロポリオール1molあたり0.2〜1.3molの量の、いわゆる連鎖延長剤としての、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジアミン或いは少なくとも1種のアミノアルコールもしくはそのような化合物の混合物;
d)マクロポリオール1molあたり0.02〜0.4molの量の、1000〜4000g/molの平均分子量を有する、少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテルまたはそのようなポリエーテルの混合物;
e)必要に応じて、マクロポリオール1molあたり0.05〜0.5molの量の、62〜400g/molの分子量を有する1種以上の短鎖脂肪族ポリオール;および
f)必要に応じて、ポリマー鎖末端に位置してキャップするアミン−またはヒドロキシル含有単位;並びに
h)少なくとも1種の抗菌性銀含有成分
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなるポリウレタンウレア分散体が更に好ましい。
【0125】
本発明によれば、以下の合成成分:
a)600〜3000g/molの平均分子量および1.9〜2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のマクロポリオール、またはそのようなマクロポリオールの混合物;
b)マクロポリオール1molあたり1.0〜3.0molの量の、少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ポリイソシアネート或いはそのようなポリイソシアネートの混合物;
c)マクロポリオール1molあたり0.3〜1.2molの量の、いわゆる連鎖延長剤としての、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジアミン或いは少なくとも1種のアミノアルコールもしくはそのような化合物の混合物;
d)マクロポリオール1molあたり0.04〜0.3molの量の、1000〜3000g/molの平均分子量を有する、少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテルまたはそのようなポリエーテルの混合物(ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの混合物が特に好ましい。);および
e)必要に応じて、マクロポリオール1molあたり0.1〜0.5molの量の、62〜400g/molの分子量を有する1種以上の短鎖脂肪族ポリオール;並びに
h)少なくとも1種の抗菌性銀含有成分
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなるポリウレタンウレア分散体が更により好ましい。
【0126】
本発明のポリウレタンウレア分散体の使用
本発明の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体は、例えば、多くの異なった用途のための水性分散体として使用できる。本発明の主たる用途は、特に、被膜の製造に関する用途であり、一般的性質の物品への抗菌性付与が重要である。本発明の非イオン的安定化ポリウレタン分散体組成物を、例えば、メディカルデバイス上の被膜の製造における水性分散体として使用することが特に好ましい。
【0127】
用語「メディカルデバイス」は、本発明において広く理解される。(機器も含む)メディカルデバイスの適当な非限定例は、以下である:コンタクトレンズ;カニューレ;カテーテル、例えば、導尿カテーテルまたは尿管カテーテルのような泌尿器カテーテル;中心静脈カテーテル;静脈カテーテル或いは入口または出口カテーテル;拡張バルーン;血管形成および生検のためのカテーテル;ステント、塞栓症フィルターまたは大静脈フィルターを導入するために使用されるカテーテル;バルーンカテーテルまたは他の拡張メディカルデバイス;内視鏡;喉頭鏡;気管内チューブ、レスピレータおよび他の気管吸引デバイスのような気管デバイス;気管支肺胞洗浄カテーテル;冠動脈血管形成術で使用されるカテーテル;ガイドロッド、挿入ガイドなど;血管プラグ;ペースメーカー構成要素;人工内耳;栄養補給のための歯科インプラントチューブ、ドレナージ管;およびガイドワイヤー。
【0128】
また、本発明の被覆溶液は、保護被膜、例えば、手袋、ステントおよび他のインプラント;外部(体外)血液ライン(血液運搬パイプ);膜;例えば透析のための膜;血液フィルター;循環支援のためのデバイス;創傷処置のための処置材料;蓄尿袋および蓄便袋を製造するために使用され得る。医学上の有効成分、例えば、ステント、バルーン表面または避妊具のための医学上の有効成分を含んでなるインプラントも包含される。
【0129】
典型的には、メディカルデバイスは、カテーテル、内視鏡、喉頭鏡、気管内チューブ、食物摂取チューブ、ガイドロッド、ステントおよび他のインプラントからなる。
【0130】
被覆される表面基材として適した多くの材料、例えば、金属、布地、セラミックまたはプラスチックがあり、金属およびプラスチックの使用が、メディカルデバイスの製造には好ましい。
【0131】
金属の例は、医療用のステンレス鋼またはニッケル−チタン合金を包含する。
【0132】
カテーテルの場合、好ましくは、ポリアミド、スチレンおよび不飽和化合物(例えば、エチレン、ブチレンおよびイソプレン)のブロックコポリマー、ポリエチレン、またはポリエチレンおよびポリプロピレンのコポリマー、シリコーン、ポリ塩化ビニル(PVC)、および/またはポリウレタンのようなプラスチックから製造される。本発明のポリウレタンウレア組成物の接着性を改善するために、医療用物品の表面をあらかじめ、例えば接着促進剤での被覆によって処理してよい。
【0133】
従って、本発明は更に、上記ポリウレタンウレア分散体から出発して得られた被膜を提供する。
【0134】
本発明のポリウレタンウレアの調製
記載した合成成分(a)、(b)、(d)および必要に応じて(e)を次のように反応させる。まず、ウレア基不含有イソシアネート官能性プレポリマーを調製する。イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する物質量比は、0.8〜3.5、好ましくは0.9〜3.0、より好ましくは1.0〜2.5である。次いで、水への分散前、間または後に、残留イソシアネート基を、アミノ官能性連鎖延長または連鎖停止に付す。連鎖延長に使用される化合物のイソシアネート反応性基の、プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する当量比は、40〜150%、好ましくは50〜120%、より好ましくは60〜120%である。
【0135】
本発明のポリウレタンウレアは、好ましくは、分散体として、アセトン法のような既知の方法によって調製される。
【0136】
このアセトン法によるポリウレタンウレアの調製では、第一級または第二級アミノ基を含有してはならない合成成分(a)、(d)および使用するならば(e)、並びにポリイソシアネート成分(b)の一部または全てを典型的には導入して、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを調製し、必要に応じて、イソシアネート基に対して不活性である水混和性溶媒で希釈し、バッチを50〜120℃の範囲の温度まで加熱する。イソシアネート付加反応を促進するため、ポリウレタン化学で知られている触媒を使用でき、その例はジラウリン酸ジブチル錫である。触媒を用いずに合成することが好ましい。
【0137】
適当な溶媒は、典型的な脂肪族ケト官能性溶媒、例えば、アセトン、ブタノンである。溶媒は、調製の開始時だけでなく、必要に応じて開始後に少しずつ添加してもよい。アセトンおよびブタノンが好ましい。例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、或いはエーテル基またはエステル基含有溶媒のような他の溶媒も同様に使用でき、蒸留によって全てまたは部分的に除去してもよいし、或いは分散体中に完全に残留させてもよい。
【0138】
続いて、成分(a)、(b)、(d)および使用するならば反応初期に添加しなかった(e)を計量添加する。
【0139】
ポリウレタンプレポリマーの調製では、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する物質量比は、0.8〜3.5、好ましくは0.9〜3.0、より好ましくは1.0〜2.5である。
【0140】
プレポリマーを生成するための成分(a)、(b)、(d)および使用するならば(e)の反応は、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に実施される。このようにして、イソシアネート基を含有しないポリウレタンプレポリマーを、バルクまたは溶液として得る。
【0141】
その後、更なる処理工程では、まだ実施していないかまたは部分的にしか実施していないならば、得られたプレポリマーを、アセトンまたはブタノンのような脂肪族ケトンに溶解する。
【0142】
その後、NH−、NH−官能性および/またはOH−官能性成分を、残留イソシアネート基と反応させる。この連鎖延長/連鎖停止は、水への分散を実施する前、間または後に、溶媒中で実施してもよい。水への分散前に連鎖延長を実施することが好ましい。
【0143】
NH、NHおよび/またはOH基を含有する(c)の定義に従う化合物を連鎖延長に使用する場合、プレポリマーの連鎖延長は、好ましくは分散前に実施する。
【0144】
連鎖延長度、即ち、連鎖延長に使用する化合物のNCO反応性基の、プレポリマーの遊離NCO基に対する当量比は、40〜150%、好ましくは50〜120%、より好ましくは60〜120%である。
【0145】
アミン/ヒドロキシ−含有成分(c)は、本発明の方法において、必要に応じて水希釈系または溶媒希釈系として、独立してまたは混合物として使用できる。混合物の場合は、任意の添加順序が基本的に可能である。希釈剤として水または有機溶媒を使用するならば、希釈剤含有量は好ましくは70〜95重量%である。
【0146】
プレポリマーからのポリウレタン分散体の調製は、連鎖延長に続いて実施する。この目的のため、溶解および連鎖延長されたポリウレタンポリマーを、必要に応じて例えば激しい撹拌のような強い剪断を用いて分散水に添加するか、または逆に、分散水をプレポリマー溶液に添加して撹拌する。好ましくは、溶解させるプレポリマーに水を添加する。
【0147】
次いで、分散工程後に分散体中になお存在する溶媒を、典型的には蒸留によって除去する。実際の分散工程の最中に、この除去を実施することも可能である。
【0148】
ポリウレタン分散体の固形分は、20〜70重量%、好ましくは20〜65重量%である。被覆実験では、被膜の厚さを変えるために、これらの分散体を要望通りに水で希釈できる。
【0149】
本発明は更に、先に定義したような非イオン的安定化ポリウレタンウレアおよび/または先に定義したようなポリウレタンウレアと、先に定義したような銀含有成分とを混合することにより、本発明のポリウレタンウレア分散体を製造する方法を提供する。
【0150】
既に記載したように、本発明のポリウレタンウレア分散体は、様々な基材(例えば、金属、プラスチック、セラミック、紙、皮革または布地)を被覆するために使用できる。被膜は、様々な技術(例えば、噴霧、浸漬、ナイフ塗布、印刷または転写式塗布)によって考えられるあらゆる基材に適用され得る。これらのポリウレタンウレア組成物の好ましい用途は、例えば、既に記載したように、メディカルデバイスおよびインプラントの表面に対する用途である。
【0151】
下記実施例では、実施例および対応する比較実験によって、本発明のポリウレタンウレア分散体の利点を示す。
【0152】
有用な目的全てのため、先に記載した引用文献の全てを、それらの全内容を参照して組み込む。
【0153】
本発明を具体化する、ある特定の構造を示し、記載したが、本発明の基本的な概念の意図および範囲から逸脱することなく、その一部を多様に変更および再構築でき、それらが、示し、記載した特定の形態に制限されないことは、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0154】
本発明の実施例および比較例に記載されている樹脂のNCO含有量は、DIN EN ISO 11909に従って滴定により測定した。
固形分は、DIN EN ISO 3251に従って測定した。1gのポリウレタン分散体を、赤外線乾燥機を用いて、恒量に達するまで115℃で乾燥した(15〜20分間)。
ポリウレタン分散体の平均粒度は、Malvern Instruments製の高性能粒度測定器(HPPS 3.3)を用いて測定した。
特に記載のない限り、%で記載した量は重量%であり、得られる溶液全体に関する。
【0155】
使用した物質および略語:
・Desmophen(登録商標)C2200:ポリカーボネートポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(Bayer AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))
・Desmophen(登録商標)C1200:ポリカーボネートポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(Bayer AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))
・PolyTHF(登録商標)2000:ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン))
・Polyether LB 25:エチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づいた単官能性ポリエーテル、数平均分子量2250g/mol、OH価25mgKOH/g(Bayer AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))
【0156】
実施例1:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
277.2gのDesmophen(登録商標)C 2200、33.1gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、この初期導入物を5分間撹拌して均一化した。この混合物に、65℃で1分間のうちに、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)を、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートを添加した。混合物を110℃まで加熱した。3時間40分後、理論NCO値に達した。完成プレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を40℃で10分間のうちに計量添加した。続いて15分間撹拌した。その後、15分間のうちに、590gの水の添加によって分散を実施した。これに続き、真空蒸留によって溶媒を除去した。固形分41.5%、平均粒度164nmを有する貯蔵安定ポリウレタン分散体を得た。
【0157】
実施例2:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
277.2gのDesmophen(登録商標)C 1200、33.1gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、この初期導入物を5分間撹拌して均一化した。この混合物に、65℃で1分間のうちに、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)を、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートを添加した。混合物を110℃まで加熱した。2.5時間後、理論NCO値に達した。完成プレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を40℃で10分間のうちに計量添加した。続いて5分間撹拌した。その後、15分間のうちに、590gの水の添加によって分散を実施した。これに続き、真空蒸留によって溶媒を除去した。固形分40.4%、平均粒度146nmを有する貯蔵安定ポリウレタン分散体を得た。
【0158】
実施例3:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
277.2gのPolyTHF(登録商標)2000、33.1gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、この初期導入物を5分間撹拌して均一化した。この混合物に、65℃で1分間のうちに、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)を、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートを添加した。混合物を110℃まで加熱した。18時間後、理論NCO値に達した。完成プレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を40℃で10分間のうちに計量添加した。続いて5分間撹拌した。その後、15分間のうちに、590gの水の添加によって分散を実施した。これに続き、真空蒸留によって溶媒を除去した。固形分40.7%、平均粒度166nmを有する貯蔵安定ポリウレタン分散体を得た。
【0159】
実施例4:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
269.8gのPolyTHF(登録商標)2000、49.7gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、この初期導入物を5分間撹拌して均一化した。この混合物に、65℃で1分間のうちに、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)を、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートを添加した。混合物を100℃まで加熱した。17.5時間後、理論NCO値に達した。完成プレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を40℃で10分間のうちに計量添加した。続いて5分間撹拌した。その後、15分間のうちに、590gの水の添加によって分散を実施した。これに続き、真空蒸留によって溶媒を除去した。固形分41.6%、平均粒度107nmを有する貯蔵安定ポリウレタン分散体を得た。
【0160】
実施例5:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
282.1gのPolyTHF(登録商標)2000、22.0gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、この初期導入物を5分間撹拌して均一化した。この混合物に、65℃で1分間のうちに、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)を、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートを添加した。混合物を110℃まで加熱した。21.5時間後、理論NCO値に達した。完成プレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を40℃で10分間のうちに計量添加した。続いて5分間撹拌した。その後、15分間のうちに、590gの水の添加によって分散を実施した。これに続き、真空蒸留によって溶媒を除去した。固形分37.5%、平均粒度195nmを有する貯蔵安定ポリウレタン分散体を得た。
【0161】
実施例6:
0.054molの硝酸銀溶液を、0.054molの水酸化ナトリウム溶液と分散助剤Disperbyk 190(製造業者:BYK Chemie)(1g/リットル)との混合物(体積比1:1)と混合し、混合物を10分間撹拌した。茶色のAgOナノゾルが生成した。Agと還元剤とのモル比が1:10になるように、この反応混合物に、4.6molのホルムアルデヒド水溶液を撹拌しながら添加した。この混合物を60℃まで加熱し、その温度で30分間維持し、そして冷却した。粒子を遠心分離(30,000rpmで60分間)によって精製し、超音波の照射(1分間)によって完全脱イオン水に再分散させた。この操作を2回繰り返した。このようにして、5重量%の固形分(銀粒子および分散助剤)を有するコロイド安定なゾルを得た。収率は100%を僅かに下回った。遠心分離後、元素分析によれば、銀分散体は、銀含有量に基づいて3重量%のDisperbyk 190を含有していた。レーザー相関分光法による分析は、73nmの粒子有効径を示した。
【0162】
50mlの実施例1〜5のポリウレタン分散体を、15.1%のコロイド状銀水性分散体(これらの製造方法は先に記載してある。)と混合し、混合物を振盪によって均一化した。実施例1〜5のポリウレタン分散体に添加した銀分散体の量は、分散体がポリマー固形分に基づいて1重量%の銀を含有するような量である。
【0163】
【表1】

【0164】
実施例7:銀放出の化学的調査
銀の放出量を測定するための銀含有被膜を、スピンコーター(RC5 Gyrset(登録商標)5、Karl Suess(ドイツ国ガルヒング))を用いて、25×75mm寸法のスライドガラス上に製造した。この目的のため、接着性を改善するために3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理したスライドガラスをスピンコーターの試料板に固定し、約2.5〜3gの未希釈ポリウレタン水性分散体で均一に被覆した。1300rpmで20秒間試料板を回転することによって均一な被膜を得た。被膜を100℃で15分間、次いで50℃で24時間乾燥した。このようにして得たスライドガラスから、約4.5cmの区画を形成し、放出される銀の量を測定するために使用した。
【0165】
実施例6a〜6eの各々の銀含有ポリウレタン被膜を伴ったスライドガラス片を、タブレットチューブにおいて蒸留水2.5mlで覆い、インキュベーターにおいて37℃で一週間保管した。水を取り出し、フィルムから液体に移動した銀の量を、原子吸光分光法によって測定した。ガラス区画上の乾燥フィルムを、再び2.5mlの水で覆い、37℃で更に保管した。工程全体を5回繰り返し、数週間、銀放出量を測定した。
【0166】
【表2】

【0167】
この結果は、比較的長期間にわたって、被膜が銀を放出することを示している。
【0168】
実施例8:
2.5gの実施例6b〜6dの銀含有ポリウレタン分散体を、アルミニウム製容器(直径6.4cm、高さ1.3cm)に量り取った。水性分散体を乾燥するために、まず室温で2時間放置し、次いで、まだ湿っているポリマーを乾燥庫において50℃で25時間乾燥した。得られたポリウレタン成形物をアルミニウム製トレイから外し、直径5mmの小プラークを切り出した。150μmの厚さを有するこれらの銀含有ポリウレタンプラークを、Escherichia coliに対する抗菌活性について試験した。
【0169】
実施例6b〜6dの銀含有ポリウレタン分散体を含む、直径5mmのポリウレタンプラークを、Escherichia coli ATCC 25922の細菌懸濁液中での抗菌作用について調べた。
【0170】
コロンビア寒天(コロンビア血液寒天プレート、Becton Dickinson、#254071)を用い、37℃で一晩にわたってコロニー形成かつ増殖させた寒天プレートからコロニーを取り出し、このコロニーを0.9%濃度の塩化ナトリウム溶液に懸濁させることによって、Escherichia coli ATCC 25922の細菌培養物を調製した。この溶液を、5%のミューラーヒントン培地(Becton Dickinson、#257092)を加えたPBS(PBS pH 7.2、Gibco、#20012)に移し、0.0001のOD600を得た。この溶液は、1×10細菌/mlの細菌数に相当する。一連の希釈および希釈物の寒天プレートでの培養によって、細菌数を測定した。細胞数は、コロニー形成単位(CFU/ml)として報告した。
【0171】
実施例6b〜6dの銀含有ポリウレタン分散体を含む、直径5mmのポリウレタンプラークを、24ウェルマイクロタイタープレートの1つのウェルに各々入れた。1×10細菌/mlの細菌数を有するE. coli ATCC 25922懸濁液1mlを、ウェル内のプラック上にピペット注入し、プレートを37℃で24時間培養した。バッチ調製の直後、2時間後、4時間後、6時間後および24時間後、各ウェルから20μlの試料を取り出し、細菌数を測定した。24時間後、試料プラークを取り出し、新しい24ウェルマイクロタイタープレートに移した。再び、上記のように調製したE. coli ATCC 25922細菌懸濁液1mlをプラークに適用し、続いて37℃で培養し、バッチ調製の直後および24時間後、20μlの試料を取り出し、細菌数を測定した。これを、10日まで繰り返した。
【0172】
【表3a】

【0173】
【表3b】

【0174】
この結果は、1週間を超える抗菌性被膜であることを示している。添加したばかりの細菌懸濁液は、継続的に、非常に低い細菌数にまで殺菌される。
【0175】
実施例9:
抗菌活性を測定するための銀含有被膜を、スピンコーター(RC5 Gyrset(登録商標)5、Karl Suess(ドイツ国ガルヒング))を用いて、25×75mm寸法のスライドガラス上に製造した。この目的のため、接着性を改善するために3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理したスライドガラスをスピンコーターの試料板に固定し、約2.5〜3gの未希釈ポリウレタン水性分散体で均一に被覆した。1300rpmで20秒間試料板を回転することによって均一な被膜を得た。この被膜を100℃で15分間、次いで50℃で24時間乾燥した。抗菌活性を測定するため、得られた被覆スライドガラスを直接使用した。
【0176】
以下の手順に従って抗菌活性を試験した。
試験細菌E. coli ATCC 25922を、37℃で、コロンビア寒天(コロンビア血液寒天プレート、Becton Dickinson、#254071)上で一晩培養した。その後、コロニーを、5%のミューラーヒントン培地(Becton Dickinson、#257092)を加えたPBS(PBS pH 7.2、Gibco、#20012)に懸濁させ、約1×10細菌/mlの細胞数に設定した(「細菌懸濁液」)。試験材料を、30mlの細菌懸濁液で満たされたファルコンチューブに移し、37℃で一晩培養した。24時間後、増殖をモニタリングする目的のために、20μlの細胞懸濁液を取り出した。一連の希釈および希釈物の寒天プレートでの培養によって、細菌数を測定した。細胞数は、コロニー形成単位(CFU/ml)として報告した。
【0177】
【表4a】

【0178】
実施例6dの被膜を、15日間にわたって抗菌作用について試験した。この目的のため、細菌数を測定した後、既知の濃度の新しい細菌懸濁液を被膜に再び適用し、24時間後、細菌数を再び測定するという、上記手順を繰り返した。4〜6日目および9〜14日目には、この被膜をPBS緩衝液中で洗浄した。
【0179】
【表4b】

【0180】
実施例10−比較実験:
スルホネート含有分散体からの銀放出
Dispercoll(登録商標)U 53およびImpranil(登録商標)DLNを使用する。両方とも、脂肪族ジイソシアネートに基づき、スルホン酸基によって安定化されているポリエステル含有ポリウレタンウレアである。
【0181】
【表5】

【0182】
本発明の非イオン性分散体との比較:
・第1週目および第2週目は、本発明の非イオン性分散体に比べて、銀の放出が比較的少なかった。
・両方のスルホネート含有被膜が、4〜5週間の貯蔵後、硬く脆くなった。第5週目および第6週目での銀放出の急激な増加は、ポリマーマトリックスの分解によって説明できる。
【0183】
実施例11−比較実験:
更に、種々のポリウレタン表面へのE. coliの細菌付着を調べることで、非イオン性分散体(実施例2および4)から出発して得られる2種類の被膜が、銀を使用しない場合でさえ、E. coliに対する比較的低い親和性を有することを確かめることができる。この実験は、日本工業規格JIS Z 2801に基づいた方法で実施した。
【0184】
この目的のため、試験細菌E. coli ATCC 25922を、37℃で、コロンビア寒天上で一晩培養した。その後、多数のコロニーを、5%のミューラーヒントン培地を伴ったリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させ、約1×10細菌/mlの細胞数に設定した。試験材料表面が細胞懸濁液で均一に湿潤されるように、100μlずつのこれら各懸濁液を、20×20mm寸法のパラフィルム(Parafilm)を用いて、試験材料(この場合、ナノ結晶銀を含有していない被膜)に適用した。次いで、細菌懸濁液が適用された試験材料を、湿度室において37℃で6時間培養した。6時間後、増殖をモニタリングする目的のために、20μlの細胞懸濁液を取り出した。一連の希釈および希釈物の寒天プレートでの培養によって、細菌数を測定した。この測定では、生きている細胞だけを数えた。調査中の材料全てについて、約10〜10細菌/mlの細菌増殖が見られた。従って、ナノ結晶銀の添加なしでは、試験材料は細胞増殖を妨げない。
【0185】
続いて、パラフィルムを試験材料から外し、浮動性細胞を除去するために、試験材料を4mlのPBSで3回洗った。次いで、試験材料を15mlのPBSに移し、試験材料表面に付着している細菌を分離するため、超音波洗浄機で30秒間超音波処理した。ミリリットルあたりのコロニー形成単位を、対数で表す。
【0186】
この結果から、非イオン性分散体は、更なる補助手段を伴わなくても、スルホネート含有分散体(Impranil DLN)と比較して、E. coliに対する比較的低い親和性を示すことが推測できる。しかしながら、非イオン性分散体だけでは感染は防御されない。しかし、比較的低濃度の銀を伴えば、表面における比較的低濃度の細菌を完全かつ容易に破壊できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアおよび少なくとも1種の銀含有成分を含んでなる水性分散体。
【請求項2】
前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、少なくとも1種のポリエステルポリオール、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリカーボネートポリオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるマクロポリオール合成成分を含んでなる、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリカーボネートポリオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるマクロポリオール合成成分を含んでなる、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項4】
前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、少なくとも以下の合成成分:
a)少なくとも1種のマクロポリオール;
b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
c)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール;
d)少なくとも1種の単官能性ポリオキシアルキレンエーテル;および
e)任意に少なくとも1種のポリオール
から合成される、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項5】
前記少なくとも1種の銀含有成分が、高多孔性銀粉末、担体物質に担持された銀またはコロイド状銀ゾルである、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項6】
前記水性分散体が、1〜1000nmの範囲に平均粒度を有するナノ結晶銀粒子を含んでなる、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項7】
固体状非イオン的安定化ポリウレタンウレアポリマーの量に基づき、AgおよびAgとして計算された銀の量が、0.1〜10重量%の範囲である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項8】
少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体と少なくとも1種の銀含有成分とを混合することを含む、請求項1に記載の水性分散体の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレア分散体と少なくとも1種の銀含有成分とを混合することを含む、請求項4に記載の水性分散体の製造方法であって、前記少なくとも1種の非イオン的安定化ポリウレタンウレアが、
(I)まず、a)、b)、d)および任意にe)を導入し、場合により前記成分を水混和性であるがイソシアネート基に対して不活性である溶媒で希釈して、組成物を生成し、
(II)(I)から得た組成物を50〜120℃の範囲の温度まで加熱し、
(III)a)、b)、d)のいずれかおよび場合により(I)で添加しなかったe)を計量添加してプレポリマーを生成し、
(IV)前記プレポリマーを脂肪族ケトンで溶解し;および
(V)c)との反応によって前記プレポリマーを連鎖延長する
ことによって得られる、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法によって得られたポリウレタンウレア分散体。
【請求項11】
請求項10に記載のポリウレタンウレア分散体から調製された被覆剤。
【請求項12】
請求項11に記載の被覆剤で被覆された表面。
【請求項13】
請求項11に記載の被覆剤で被覆されたメディカルデバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249635(P2009−249635A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−93841(P2009−93841)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】