鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法および装置
【課題】端部に「ダレ」を有している鋼板においても、正確にかつ安定して突き合わせ開先位置を検出する。
【解決手段】2枚の鋼板の突き合わせ部を、突き合わせ線が前記撮像装置の撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像工程と、撮像工程で取得された撮像画像から得た部分画像を、予め設定した閾値Tを用いて2値化画像を出力する2値化工程と、2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´について、y軸方向の輝度差分値Vを、各iについて演算する工程イと、工程イで演算した輝度差分値Vをiについて積算して輝度差分射影値Wを演算する工程ロと、工程ロで演算した輝度差分射影値Wにおいてピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するピーク位置検出工程とを有する検出方法。
【解決手段】2枚の鋼板の突き合わせ部を、突き合わせ線が前記撮像装置の撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像工程と、撮像工程で取得された撮像画像から得た部分画像を、予め設定した閾値Tを用いて2値化画像を出力する2値化工程と、2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´について、y軸方向の輝度差分値Vを、各iについて演算する工程イと、工程イで演算した輝度差分値Vをiについて積算して輝度差分射影値Wを演算する工程ロと、工程ロで演算した輝度差分射影値Wにおいてピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するピーク位置検出工程とを有する検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザやアーク溶接などの溶接装置により、2つの鋼板の端面を接触させて溶接する突き合わせ溶接に係り、特に2枚の鋼板の突き合わせ開先の位置および、2枚の鋼板の端部の隙間であるところの開先ギャップを検出する検出方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、2つの鋼板の端面を接触させて行うレーザ溶接は、レーザ光を細いビームに絞って2つの鋼板の端部に照射して溶接を行う。その際、溶接する互いの鋼板の突き合わせ位置に対するレーザビームの照射点の位置ずれ量の許容限界が±0.5mm程度であり、レーザビーム照射点の位置ずれ量がこの値より大きくなると、溶接部の強度不足等の溶接不良を生ずる原因となる。このため、従来から被溶接鋼板(ワーク)の突き合わせ位置を、より高精度に検出する方法が各種提案されており、代表的なものとして以下のものがある。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、鋼板の突き合わせ部をCCDカメラによって撮影し、撮像画像を画像処理して明暗画像を得て、鋼板の突き合わせ位置(開先位置)や開先ギャップを検出する方法が開示されている。また、特許文献3には撮影した画像の溶接線と垂直方向の輝度分布の変化から突き合わせ位置を検出する方法が開示されている。
【0004】
また特許文献4には、突き合わせ鋼板の厚みの違いによりできる鋼板の段差の影から突き合わせ位置を検出する方法が開示されている。さらに特許文献5には、開先部にレーザ距離計を走査して照射し、開先部の断面形状を距離によって評価して開先位置を検出する方法が開示されている。
【0005】
上記の従来技術では以下で説明するような問題点を有している。特許文献1および特許文献2では、開先検出の方法において撮影した画像を2値化処理すると記載されている。しかし、実際の溶接鋼板は、シャーやプレスによって切断されることが多く、切断端部に形状の「ダレ」を有しているため、開先部の輝度値はなだらかに変化し、2値化の閾値によって計測値が大きく変動する欠点がある。
【0006】
また特許文献3には溶接線と垂直方向の画像の輝度分布の変化点から、鋼板の突き合わせ位置を検出する点が記載されている。しかし実際の鋼板は表面の疵や模様、あるいは切断時の切断端部のダレなどのため、輝度分布曲線は、必ずしも特許文献3の図3に示されたような明確な鋼板端部の輝度変化点を有することは少ない。
【0007】
特許文献4に開示されている鋼板の段差による影を利用する方法は、1mm〜10mm程度の比較的薄い鋼板を溶接する、冷延コイルのコイル継ぎ溶接においては、突き合わせ鋼板の段差が少なく、照明による影を作り出す事が難しいと言う欠点がある。
【0008】
特許文献5に開示されているレーザ距離系を用いる方法は計測用レーザの走査系を必要とするため、装置が複雑で高価になる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−235086号公報
【特許文献2】特開平6−114581号公報
【特許文献3】特開平11−179581号公報
【特許文献4】特開平10−305379号公報
【特許文献5】特開平8−112689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来技術の問題に鑑みて、本発明は、2つの鋼板の端面を接触させて溶接する突き合わせ溶接において、シャーやプレスによって切断され、端部に「ダレ」を有している鋼板においても、正確にかつ安定して突き合わせ開先位置を検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨とするところは以下の如くである。
【0012】
本発明の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法は、2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分を撮像装置により得た撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法であって、
(1)前記撮像装置を前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置して、突き合わせ線が前記撮像装置の撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像工程と、
(2)前記撮像工程で取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する2値化工程と、
(3)前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算する工程イと、
(4)前記工程イで演算した輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算する工程ロと、
(5)前記工程ロで演算した輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するピーク位置検出工程とを有することを特徴とする。
【0013】
また、上記の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
前記2値化工程は、予め設定した複数の閾値Tを用いて2値化処理して、閾値Tそれぞれの前記2値化輝度値U´T(i、j)を求め、
前記工程イは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
閾値Tそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる閾値Tにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる閾値Tにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出することを特徴とする。
【0014】
さらに、上記の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
まず、予め設定した複数の角度θそれぞれで前記部分画像を回転させて回転画像を求め、
前記2値化工程は、前記複数の角度θの回転画像を2値化処理して、複数の角度θそれぞれの前記2値化輝度値を求め、
前記工程イは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
前記複数の角度θそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる角度θにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる角度θにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出することを特徴とする。
【0015】
さらに、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置の検出値から突き合わせ開先ギャップを算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法は、前記2枚の鋼板は溶接するために突き合わせられた鋼板であることを特徴とする。
【0017】
本発明の鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置は、2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分の撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置であって、
前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置され、突き合わせ線が撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する画像処理部と、
前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算し、
かつ前記輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算し、
かつ前記輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するデータ処理部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法により、複雑な線状光線やレーザ光の走査系などを使用する事なく、CCDカメラなど撮影装置による画像撮影のみで、シャー切断やプレス切断した2枚の鋼板の突き合わせにおいて、各々の鋼板の切断端部位置の検出、開先ギャップ幅、や突き合わせ位置の検出を正確に実施する事ができる。本発明の検出方法を用いる事で、溶接線に対するビーム照射位置精度の要求が厳しいレーザ溶接装置において、目外れなどの溶接欠陥を防止する開先位置検出センサーを得る事が可能となり、安定した溶接を行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実現する鋼板突き合わせ開先位置の検出装置の模式図である。
【図2】鋼板突き合わせ開先位置の検出装置により撮影された画像である。
【図3】鋼板突き合わせ開先位置の検出装置により撮影された画像のS1線部分の輝度分布を示すグラフである。
【図4】鋼板突き合わせ開先位置の検出装置により撮影された画像を2値化した画像である。
【図5】図4の画像C部の拡大画像である。
【図6】図5の画像S1線部分の輝度分布を示すグラフである。
【図7】本発明の処理(イ)、(ロ)の演算を実行した結果を示す模式グラフである。
【図8】(a)CCDカメラ画像の2値化処理後の画像の模式図である。(b)図8(a)のx=iの断面の輝度分布を示すグラフである。(c)図8(a)の画像に処理(イ)、(ロ)の演算を行った結果を示すグラフである。
【図9】(a)図5の画像S1線部分の輝度分布を示すグラフである。(b)図9(a)のグラフに処理(イ)を行った結果を示すグラフである。
【図10】(a)CCDカメラの水平軸と鋼板突き合わせ開先線が平行からずれている場合の2値化画像の模式図である。(b)図10(a)の画像に処理(イ)、(ロ)の演算を行った結果を示すグラフである。
【図11】(a)CCDカメラの水平軸と鋼板突き合わせ開先線が平行からずれている場合の2値化画像の模式図である。(b)図11(a)の画像に処理(イ)、(ロ)の演算を行った結果を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例に用いたレーザ溶接装置の模式図である。
【図13】本発明の演算を示すフローチャート図である。
【図14】本発明の検出方法から算出した鋼板突き合わせ状態の計測結果を示すグラフである。
【図15】本発明の検出方法にから算出した鋼板突き合わせギャップ幅の計測結果を示すグラフである。
【図16】本発明の検出方法にから算出したレーザ溶接時の溶接目外れの計測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、鋼板の製造ラインにおいて、2枚の鋼板の後端部と先端部とを溶接するときを一例として取り上げて、図を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。この際各鋼板の端部はシャー等により切断されており、ほぼ平面状の端面を有するとする。図1は本発明を実現するための鋼板突き合わせ開先位置の検出装置1の構成の一例を示した模式図である。撮像装置としての撮像部10は、例えば撮像デバイスとしてCCDカメラ11、2枚の鋼板21、22の突き合わせ部を照明する照明装置12、並びに、鋼板表面にCCDカメラ11のピントを調整するためのステージ13または自動焦点調整機構つきのレンズ14からなる。撮像部10は撮像制御部15により制御されて鋼板面を撮影する。撮影された画像は、信号線16によって別場所に設置された画像処理部17によって画像処理され、その画像データに基づきデータ処理部19で下記の手順により2枚の溶接鋼板21、22の端部および突き合わせ開先位置を検出する。
【0021】
以下では、鋼板21の後端部と鋼板22の先端部とを突き合わせてできる鋼板の突き合わせ線が、CCDカメラ11の撮像面の水平軸方向(したがって撮像画像の水平軸方向)と平行となるようにCCDカメラ11が設置されているとして、本発明の突き合わせ開先位置検出方法を説明する。このとき、突き合せ線は鋼板21、22の製造ラインの通板方向とほぼ直角となっている。したがって、CCDカメラ11の撮像面の水平軸方向と通板方向とはほぼ直交する。以下では撮像画素の輝度値を、画像の黒色部が輝度値0、白色部が輝度値255として8ビット(256階調)で表したときを例として説明する。
【0022】
ここで、鋼板21、22の突き合わせ線は、必ずしもCCDカメラ11の水平軸と厳密に平行である必要はない。また、ほぼ垂直であってもよい。そして、鋼板21、22の突き合わせ線と水平軸とが傾斜するときには、後述する様に、鋼板21、22の突き合わせ線の撮像画像を回転させる事で、鋼板21、22の突き合わせ線とCCDカメラ11の水平あるいは垂直軸の方向をほぼ平行にする事が可能である。
【0023】
図1の撮像部10で撮像した鋼板突き合わせ部の画像の一例を図2に示す。図2の撮像画像の上部が鋼板21、図2の下部が鋼板22である。A部が両鋼板21、22の突き合わせ開先部である。撮像画像は水平方向(x方向とする)にN画素、垂直方向(y方向とする)にM画素の画素数を有する。
【0024】
図2の撮像画像に示した垂直方向の線S1(水平方向の画素座標x=i番目)に沿った画像の輝度値Uの分布のグラフを図3に示す。第1の鋼板21の開先の近傍A部では除々に輝度が低下し画像が暗くなっている(図2を参照のこと)。したがって、特許文献1および2に開示されているような、各画素の輝度値の2値化処理を施すと、閾値の設定によって鋼板端部の位置の検出値に大きな差が発生する。さらに、鋼板端部の傷などのわずかな光の反射の違いや、鋼板の突き合わせ部の照明状態などの影響から、撮像画像のどの部位の2値化画像を、鋼板端部の位置の検出に使用するかによって、開先部の位置の検出値が大きく変動し、溶接時に問題となる。
【0025】
例えば、図2に示した撮像画像を2値化処理し、画素の輝度値がある閾値T未満の部分の輝度を255(白色)、画素の輝度が閾値T以上の部分の輝度を0(黒色)で表現した例の画像を図4に示す。図4では、右側の照明強度が強くなっていたために、2値化閾値T未満で白(輝度255)に変換される開先ギャップB部の太さが、左から右に行くにしたがい細くなっている。このように、上記のような単純な2値化処理を用いた開先位置の高精度な検出は難しいことは明らかである。
【0026】
<2値化画像に基づく開先位置の検出の概要>
(処理の基本的構成)
以下、本実施の形態における撮像画像のデータ処理方法を具体的に説明する。本発明ではまず撮像画像(図2)を2値化する(図4)。以下の説明においては、2値化閾値T(0<T<255)未満の画素の輝度を白(輝度U´=255)、閾値T以上の画素の輝度を黒(輝度U´=0)に変換して輝度値を反転させる。なお、必ずしも2値化画像の輝度を反転させることは必要ではない。その場合、以下の説明について、演算結果の符号が反対になるだけで、検出結果にはなんら影響を与えるものではない。
【0027】
上記したように、2値化によって開先のギャップ部(図4のB部)はおおよそ直線状の形状をしめすが、照明状態の違いにより、画像の左から右に行くにしたがい開先ギャップB部の太さが変化する。さらに、図4の2値化画像のC部の拡大図を図5に示す。図5の画像のD部の様に、鋼板端部においてはダレと鋼板表面の粗度による反射強度のバラつきなどによって、白黒の2値化領域の境界がぼやけてしまい、どの部分を境界とするかの判定が困難である。図5の2値化画像の線S1(x=i番目の画素)に沿った輝度値U´の分布を図6に示す。図5のD部付近の境界のぼやけに対応して、輝度値U´が細かく変動している事が判る。
【0028】
本実施の形態では2値化画像に基づき、鋼板21、22の端部の開先位置を得るための基礎データを以下の処理(イ)〜(ハ)で導出する。2値化画像における(x、y)=(n、m)座標の画素の輝度値を2値化輝度値U´(n、m)とする。ここで、0≦n≦N−1、0≦m≦M−1、N、Mはx方向(水平方向)、y方向(垂直方向)の画素数に相当する整数である。
【0029】
(イ)鋼板21、22の突き合わせ開先と垂直の方向(図4の場合はY方向)に沿って輝度差分値V(n、j)を式(1)により計算する。
【0030】
【数1】
ここで、0≦j≦M−3である。
【0031】
(ロ)この輝度差分値V(n、j+1)をX方向に射影して、nについて積算し、輝度差分射影値W(j+1)を式(2)により計算する。
【0032】
【数2】
ここで、0≦j≦M−3である。
【0033】
なお、輝度差分射影値Wとして式(2)で得られる値をNで除算して規格化してもよい。
【0034】
(ハ)上記W(j+1)の結果は例えば模式的に書くと、鋼板21、22の突き合わせ線がほぼ直線であり、撮像画像の水平軸方向と若干の傾斜を有するときには、図7に示したようなプラス、マイナスに2つの鋭いピークを持つ曲線となる。この2つのピークをそれぞれ、鋼板21の端部位置E1(−符号のピーク)および鋼板22の端部位置E2(+符号のピーク)と決定する。
【0035】
(イ)の処理は、図4に示した2値化画像の垂直方向(y方向)の線分S1に沿って白領域(輝度U´=255)と黒領域(輝度U´=0)の境界(白から黒または黒から白)を判定する処理である。すなわち、白領域(U´=255)あるいは黒領域(U´=0)が連続して続く場合は、輝度差分値V(n、j+1)=0となる。一方、黒領域(U´=0)から白領域(U´=255)、あるいは白領域(U´=255)から黒領域(U´=0)への変化がある場合は、輝度差分値V(n、j+1)=255あるいは輝度差分値V(n、j+1)=−255となる。よって、輝度差分値V(n、j+1)の値が0以外の値となる画素位置y=j+1(0≦i≦M−3)が、図5の画像の白領域(輝度255)と黒領域(輝度0)の境界である。ただし、1画素分の位置の誤差がある。
【0036】
なお、(イ)の処理の式(1)の右辺における、y=jとj+2の2値化輝度値U´の差分値Vの計算を、y=jとj+1の2値化輝度値U´の差分値Vに換えてもよい。この算出方法の方が位置精度が高い。
【0037】
例えば、図8(a)に模式的に示す、単純化した2値化画像の例において、水平方向x=iの位置にある垂直線分S2に沿った2値化輝度値U´の分布は、図8(b)に示したように開先ギャップB部において、2値化輝度値U´=255を持ち、その他の鋼板表面部分(21、22の領域)はU´=0である。図8(a)の線分S2に処理(イ)の演算を行うと輝度差分値Vは式(3)となり、開先A部の境界位置y=E1、y=E2および、その1画素分外側の位置y=E1+1、y=E2−1の4箇所のみV≠0となり、それ以外の場所では輝度差分値V(j、y)=0となる。
【0038】
【数3】
【0039】
上記処理(イ)の結果の輝度差分値V(i、y)を0≦i≦N−1について、積算すると、図8(a)では、全てのxの位置で、上の式(3)の結果になるため輝度差分射影値Wは式(4)となり、y=E2−1、E2、E1、E1+1の4つの画素の水平位置でWが最小または最大値を得る。Wが最大または最小を得るyは、開先の境界E1またはE2と、その1画素分だけ水平方向の外側であり、本発明の処理(イ)、(ロ)により開先の境界が検出できる。
【0040】
【数4】
【0041】
一方、実際の画像においては、図7に示した例のように開先の境界が一直線になる事はないため、Wの最大、最小値がおのおの複数存在する事はなく、境界は一義的に決定される。
【0042】
実際の鋼板突き合わせ部の開先画像においては、照明輝度の違いや、鋼板表面の反射率の局所的な違いによって、実際の画像を2値化処理すると図4、図5の様に、鋼板端部の黒領域と白領域との境界がぼけた(斑な)画像となる。このとき線S1に沿って(イ)の処理を行うと、白領域と黒領域の境界が複数存在するので、例えば図9(b)の結果を得る。図9(b)の+値(+255)となるy方向位置は黒領域から白領域へ変化する境界位置を示し、逆に−値(−255)となるy方向位置は白領域から黒領域へ変化する境界位置を示している。白領域と黒領域の境界があいまいな図5に示した拡大2値画像のD部に相当する部分で、図9(b)のグラフの様に、輝度差分値VはV=−255とV=255の値の間で振動する。
【0043】
この様に画像のある1線分上S1のみを対象とした場合、輝度差分値VがV=−255またはV=255となるy方向の位置が複数あり、白黒の領域の境界を1カ所に決定する事ができないことがある。本発明では2値化画像の白領域と黒領域の境界位置(y座標)を、処理(イ)の演算の後に、水平方向に射影積算する事で決定する(処理(ロ))。すなわち処理(イ)によって、画像の垂直方向(y方向)に沿って白領域(輝度255)と黒領域(輝度0)の境界と判定される画素位置が複数出てくることがあるが、処理(イ)を行う位置を水平方向(x方向)にずらして輝度差分値Vを計算し、この輝度差分値Vを順次加算すると、白領域(輝度255)と黒領域(輝度0)の境界と判定されたy方向の画素位置の頻度がもっとも多かった画素位置ypでの輝度差分射影値W値が最小値(マイナスのピーク値)および最大値(プラスのピーク値)となるので、その画素位置ypを当該撮影画像全体で判定した2値化処理により得られた境界位置、すなわち鋼板21および鋼板22の突き合わせ開先位置と決定する。
【0044】
(端部の形状や照明の影響の除去方法)
図1に示したような、鋼板突き合わせ開先位置の検出装置1の構成配置において、鋼板21、22の突き合わせ部へ照射される照明光のうち、鋼板21、22の垂直端面に当たった光はCCDカメラ11の方向にはほとんど戻らないので、撮像画像における当該部分の輝度が小さくなる。鋼板21、22の上面や、中間部位である鋼板端部のダレが発生している部位に当たった光は照明光の正反射成分が多く、そのため鋼板表面の微小な粗度変化による反射光量の変動の影響を強く受け、撮像画像の輝度値分布を2値化処理した2値化画像において開先部の境界がぼやけた状態となることが多い。本発明では以下で詳細に説明するように2値化の閾値を逐次変更し、2値化画像の白領域と黒領域の境界がもっともシャープになる閾値を探索し、当該閾値での2値化輝度値、輝度差分値および輝度差分射影値の結果に基づいて鋼板21、22の端部、開先位置を判定する。
【0045】
すなわち、開先部の境界がぼけた状態の撮像画像についてある閾値T1で2値化処理を行い、あるx=iの水平方向(x方向)の画素位置において、処理(イ)で輝度差分値Vを算出すると、y方向の複数の画素位置y=jに輝度差分値Vのピークが現れる。開先部の境界がぼけた状態であるので、水平方向の位置iを変えて各々のx=iの位置で同じ垂直方向(y方向)の画素位置y=jに境界位置(V≠0となる位置)を持つ確率が小さい。このとき、その結果の輝度差分値Vを水平方向(x=iに関して)に積算(処理(ロ))して射影すると、得られる輝度差分射影値Wは幅広いなだらかなピークとなる(例えば図7を参照のこと)。
【0046】
一方、上記と同じ撮像画像について、上記の閾値T1と異なる閾値T2で2値化した結果、仮に開先部の境界がシャープに得られている場合は、白領域と黒領域とが斑に混在する境界の画素位置の範囲が狭くなる。すなわち、処理(イ)で得られる、各々の水平位置x=iにおける輝度差分値Vについて、同じ垂直方向の画素位置y=jに境界位置(V≠0となる位置)を持つ確率が高くなり、処理(ロ)の水平方向の射影積算の演算値である輝度差分射影値Wのピークは幅狭く急峻になる。
【0047】
本発明では予め設定した範囲で2値化の閾値Tを逐次変更して複数の閾値Tそれぞれを用いた各2値化画像に対し、処理(イ)および処理(ロ)の結果の輝度差分射影値Wのピークがもっとも高く得られた2値化条件での演算処理(イ)および(ロ)で演算結果である輝度差分射影値Wのピークのy方向の画素位置(y画素位置)を検出して、鋼板21、22の突き合わせ開先位置とする。
【0048】
ここで、2枚の鋼板21、22の切断部のダレや、鋼板表面の状態は必ずしも同じではなく、また2枚の鋼板21、22に対する照明の角度も厳密には一致しない。従って、各々の鋼板21、22の開先位置の判定に同じ2値化の閾値を設定する必要は無い。本発明では2値化の閾値Tを逐次変更して処理(イ)、(ロ)を実施した演算結果について、+符号のピーク、−符号のピークの各々について、個別にピークが最大となる結果を持って鋼板21、22の端部とした。つまり+符号のピークと、−符号のピークを得る2値化閾値は、必ずしも同じでは無い。
【0049】
(突き合わせ線と画像水平軸のずれを補正する方法)
実際の装置においては、CCDカメラの撮像面の水平軸(x軸)と、鋼板の端部である開先線の方向とが完全に平行になる事はほとんどなく、カメラ撮像面の水平軸に対し、開先線が非零値の傾きθ(deg.)を持つことが多い。したがって、撮像画像においても水平方向と開先線とが傾きθを持つ。図10(a)に、突き合わせた鋼板21、22を鋼板面の上側みた見た模式図を示した。ただし、2枚の鋼板21、22の切断端面は互いに平行であると仮定する。この場合、処理(イ)による輝度差分値Vについて、V≠0となるy=jの位置は水平方向のx=iの各々において異なり、処理(ロ)の演算の結果の輝度差分射影値Wは図10(b)に示すように幅Δのピーク(±Pp1)を持つ結果となる。
【0050】
そのために、撮像画像について、鋼板21、22の開先方向と撮像画像の水平方向とを所望の精度で一致させるために、以下に示す手順(A)〜(D)で撮像画像を画像に垂直な軸の周りに回転させて、鋼板21、22の開先方向と撮像画像の水平方向とが一致する最適回転角度θminを探索する。
【0051】
(A)撮像画像の水平カメラ撮像面の水平軸に対し、開先線が非零値の傾きθ(deg.)予め決めた範囲(θ1≦θ≦θ2)において一定の角度ピッチΔθで変化させた画像回転角度θiそれぞれで撮像画像を回転させる。
(B)回転させた画像それぞれついて2値化処理を行い2値化画像を得る。
(C)さらに処理(イ)および処理(ロ)を行って輝度差分射影値Wを算出する。CCDカメラ11の水平軸方向と、2枚の鋼板21、22の突き合わせ開先の向きが平行に近くなると(図11(a))、処理(イ)による輝度差分値Vについて、水平方向のx=i軸各々のおけるピーク位置となるy=jのずれが小さくなり、図11(b)の様に、水平方向のx=i軸各々についての境界判定位置を射影積算(処理(ロ))して得られた輝度差分射影値Wのピークの山または谷の広がり幅Δが狭くなり、ピーク値(Pp2)が大きくなる(|Pp2|>|Pp1|)。
(D)ピーク値が最大となる画像回転角度θiを最適回転角度θminとする。
【0052】
以上の手順で最適回転角度θminを求め、撮像画像その角度θminで回転させて得られた回転画像の輝度差分射影値Wに基づいて、鋼板端部の位置を決定する。なお、上記(A)〜(D)の手順に際して、画像回転角度をΔθずつ逐次換えて、撮像画像を回転させて回転画像を得てもよく、また、(φ1≦θ≦φ2)の区間の角度で一括して複数の角度で撮像画像を回転させて回転画像を得てもよい。
【0053】
前述の2値化閾値Tを逐次変更したのと同様に、鋼板21、鋼板22の開先位置の検出について、+符号のピーク値と−符号のピーク値を取る画像の回転角度θminが必ずしも一致するとは限らない。例えば、先行鋼板21の端面と後行鋼板22の端面とが互いに若干傾いていることがある。このとき鋼板21の開先位置と鋼板22の開先位置が得られる回転角θminが異なる。このように、鋼板21の端部線と鋼板22の端部線が完全に平行でない場合や、照明角度の影響から一方の鋼板端部線の角度が、カメラ視野の水平軸からずれている場合などがある。2つのθminの差が小さいときには、いずれか一方を用いて輝度差分射影値Wを求めてもい。また、差が大きい特には、各θminにより得られたそれぞれの開先位置を用いればよい。
【0054】
<第1の実施の態様>
鉄鋼業の鋼板の製造ラインの冷延コイル継ぎ溶接ラインに、本発明の突き合わせ開先位置の検出方法を適用するときの具体的な態様を以下で説明する。
【0055】
冷延コイル継ぎ溶接ラインおいて厚さ4.0mmおよび4.5mmの一般鋼板をシャー切断し(図示しない)、鋼板21、22をクランプ装置(図示しない)で挟んで固定し、鋼板21、22の端部を突き合わせた後、開先部にCO2レーザを照射してレーザ溶接を行うコイル継ぎレーザ溶接機に、CCDカメラ(水平方向画素数1392、垂直方向画素数1040)11と照明装置12とを含む構成の撮像部10を設置した。溶接設備全体の模式図を図12に示す。撮像部10は図1を用いて上記した構成を有している。なお、一例として鋼板21、22は水平面内で通板されている配置で説明する。
【0056】
図12において、溶接する端部をシャー切断された鋼板21と鋼板22の端面が横行キャリッジ(ライン幅方向移送機構)31の移動方向とほぼ平行となる様に、ラインの上流にあるシャー切断機の刃の向きを調整しておく。撮像部10は横行キャリッジ31に取り付けられ、内蔵するCCDカメラ11は鋼板21、22の突き合わせ部にレンズ14を対向させて、その光軸が鋼板面にほぼ直交になるように配置されている。CCDカメラ11の撮像面の水平軸は横行キャリッジ31の移動方向と平行に、すなわち鋼板21と鋼板22の端部開先の向きとおおむね平行となる様に調整されている。
【0057】
鋼板21と鋼板22との突き合わせ部のレーザ溶接時に、レーザビームを突き合わせ部に集光・照射するレーザ溶接トーチ30は、横行キャリッジ31に取り付けられており、鋼板21と鋼板22の開先に沿ってライン上を横行する。撮像部10は、レーザ溶接トーチ30に対して一定距離(例えば50cm)だけ先行して横行し、レーザ溶接の前に鋼板21と鋼板22の突き合わせ開先部を撮像する。撮影した画像データは信号線16を通じて、別に設置されたデータ処理用パーソナルコンピュータ(PC)で構成したデータ処理部(図示しない)19に送られる。鋼板21、22への照明装置12はLED光源をレンズで集光するスポット照明を用いた(図1を参照)。鋼板21、22の突き合わせ部の撮像箇所が均一に照明される様に、例えば照明装置12は撮像用のCCDカメラ11を挟んで対称の位置に2個配置し、照明範囲の中心がおおむねCCDカメラ視野の中心となる様に照明位置および角度を調整する。なお、CCDカメラ11の視野範囲は、例えば20cm×20cmとする。
【0058】
横行キャリッジ31の上部には、CCDカメラ11と照明装置12と上下移動ステージ13とからなる撮像部10、および焦点調整機構付の撮像レンズ14を制御して鋼板21、22の突き合わせ部のクリアな画像を得るための撮像制御部15を設置した。実際の鋼板溶接において、鋼板21および鋼板22の板厚等の製造情報が、溶接作業全体と統括して制御する上位制御コンピュータ(PC)(上位制御部)図示せず)からデータ処理部19に入力される。データ処理部19からは撮像制御部15に鋼板21、22の板厚や幅値等の撮像のための情報が入力される。なお、上位制御部から撮像制御部15に直接鋼板21、22の板厚や幅値等の撮像のための情報を入力するようにしてもよい。この撮像のための情報に基づいて撮像制御部15は、溶接する鋼板21、22の板厚に基づいて溶接する鋼板表面にピントが合う様に、上下移動ステージ13および焦点調整機構付撮像レンズ14に制御信号を出力する。なお、撮像制御部15を横行キャリッジ31の上部ではなく、溶接ラインの横に固定して設置してもよい。
【0059】
鋼板21の後に鋼板22が溶接ラインの予め設定した位置に到着した後、レーザ溶接する時には、上位制御PCから入力される撮像開始の信号によるか、または、オペレータがする開始スイッチのON入力により、横行キャリッジ31により撮像部10が鋼板21、22の幅方向に、例えば一定の間隔で1ステップずつ移動する。ここで横行キャリッジ31は上位制御PCにより鋼板幅方向の移動が制御される。また、撮像部10は横行キャリッジ31の上記の移動に同期して、上下移動ステージ13、焦点調整機構付撮像レンズ14およびCCDカメラ11を制御して、予め設定してある鋼板幅方向の位置間隔で、鋼板21、22の突き合わせ部の開先を撮像して、得られた撮像画像を撮像制御部15を介してデータ処理部19に出力する。なお、撮像画像を撮像部10からデータ処理部19に直接出力してもよい。突き合わせ部において撮像部10が撮像する鋼板幅方向の位置は、1点でも複数点であってもよい。突き合わせ溶接する鋼板21、22の端部の形状の乱れの大きさ(例えば直線状や曲線状)等に基づいて、適宜設定すればよい。
【0060】
データ処理部19には、撮像画像のデータの他、横行キャリッジ31により移動した撮像部10の位置情報および鋼板21、22の撮像されたエリアの位置情報が上位制御部から伝達される。そして、CCDカメラ11により得られた撮像画像に、当該撮像画像が鋼板21、22のどの幅方向の位置の画像であるか(すなわちカメラ視野=被撮像部分)の位置情報を紐付ける。
【0061】
なお、一枚の撮像画像に映る視野範囲の広さ(高さL×幅C)は、予めオペレータがCCDカメラ11で撮像して校正してもよく、また、撮像画像を得るときに、鋼板21、22の上面で開先の近傍に、基準となる目印(位置基準マーク)を複数個配置しておいてもよい。こうして、撮像画像における各画素の位置(画素座標)と、当該画素に対応した鋼板21、22の撮像部位の位置とを紐付けすることができる。
【0062】
上記の図2に示した画像は、このようにして撮影された撮像画像の1例である。データ処理部19に含まれる画像処理部17により、入力された撮像画像について以下で説明する画像処理を実行する。
【0063】
まず図2に示した撮像画像に対し、画像の中心位置(水平方向:x軸、垂直方向:y軸とする)の回りに、当該撮像画像を画面内で例えば±2°の範囲で0.1°のピッチで変化させた角度θi(i=1、2・・・)で回転させ複数の回転画像を得る。さらに回転後の撮像画像(回転画像と記す)について、水平方向画素数1392、垂直方向画素数1040のうち、処理エリアを800≦x、200≦y≦800の範囲に限定する前処理(切り出し処理)を行った。カメラ全視野を画像処理の対象とする場合、照明の均一性の要求が厳しくなるが、処理エリアを限定する事で照明状態の差による影響を低減する事ができ、照明の均一性への要求を緩和する事が可能となる。なお、回転の方向は時計まわり方向を+、反時計まわり方向を−とした。
【0064】
実施した演算処理の手順の具定的な一例を示す(図13フローチャート)。
【0065】
(1)CCDカメラ11の画像をθ=+2°回転させた後(図13の工程S11)、800≦x、200≦y≦800の範囲の部分画像を切り取り処理し、以降はその切り取った部分画像に演算を行った。
【0066】
上記部分画像について、各画素(n、m)の輝度値Uを2値化の閾値Tで2値化処理し、式(5)により2値化輝度値U´Tを演算する(図13の工程S12)。なお、閾値Tを、15≦T≦30で、値を1ずつ変更して各T値での2値化輝度値U´Tを求める。
【0067】
【数5】
【0068】
各T値の輝度値U´T(n、m)について、上記の処理(イ)で輝度差分値Vを演算し(図13の工程S13)、処理(ロ)を実行して輝度差分射影値Wを求めた(図13の工程S14)。この輝度差分射影値Wの最大値W01と対応するy画素の値E01、輝度差分射影値Wの最小値(―符号のピーク)w01と、対応するy画素の値e01の値を求めて記録する(図13の工程S15)。
【0069】
(2)続いて、CCDカメラ11の画像をθ=+1.9°回転させた後(図13の工程S11)、800≦x、200≦y≦800の範囲の画像を切り取り処理し、以降はその切り取った部分画像に演算を行った。
【0070】
上記切り取り画像について、2値化閾値Tを、15≦T≦30で、Tの値を1ずつ変更して2値化処理し、式(6)により2値化輝度値U´Tを演算する(図13の工程S12)。
【0071】
【数6】
【0072】
各T値の2値化輝度値U´T(n、m)について、処理(イ)、処理(ロ)を実行し(図13の工程S13、S14)、輝度差分射影値Wの最大値W02と、対応するy画素の値E02の組(W02、E02)演算値Wの最小値(―符号のピーク)w02と対応するy画素の値e02の組(w02、e02)を記録する(図13の工程S15)。
【0073】
以上の手順を画像回転角度θ=−2°まで、0.1°ずつ41回繰り返して実行し、各T値について、(W01、E01)から(W41、E41)、(w01、01)から(w41、e41)の82組のデータからなる、輝度差分射影値のピークに関するデータ(ピーク情報と記す)を得た(図13の工程S16)。
【0074】
(3)上記の様に得られたピーク情報についてW=W01、W02・・・W41の中で最大の値を得るWmaxに対応するy画素の値を、y=ymaxとして鋼板22の端部と決定する。さらにW=w01、w02・・・w41の中で最小の値(―符号のピーク値)を得るWmimに対応するy画素の値を、y=yminとして、鋼板21の部分画像に対応する鋼板部位における端部とした(図13の工程S17)。すなわち、ymaxおよびyminは、当該鋼板部位における開先位置の平均値であるとも言える。
【0075】
以上の様に、図2の撮影画像について、回転角度θについて41パターンと、2値化閾値Tの値に関して16パターンとの組み合わせ、すなわち41×16=656パターンそれぞれについて(イ)、(ロ)の処理を行い、輝度差分射影値の+符号のピーク(最大値)および−符号のピーク(最小値)それぞれの垂直方向の画素座標ymaxおよびyminを算出した。図2の撮影画像については、+符号の最大値を持つ画素座標は、画像回転角度θ=0.0°、2値化閾値T=22のとき、ymax=291との結果が得られた。また、−符号の最大値を持つ画素座標は、画像回転角度θ=−0.4°、2値化閾値T=19のとき、ymin=312と得られた。
【0076】
上記のように、部分画像の回転角θが0.0°と−0.4°の回転画像それぞれにおけるymaxおよびyminから、回転角θが0°の元の撮像画像におけるy画素座標を求めることができる。このためには、CCDカメラ11の撮像面の水平軸方向と、シャー切断機の刃の向きとを所望の精度で一致させておく。
【0077】
なお、上記の例のように、回転角度が小さいときには、ymaxおよびyminの値を、回転角θが0°の元の撮像画像におけるy画素座標と見做しても、誤差は溶接に殆ど影響しない。そこで、以上の演算結果から、鋼板22の端部は画素座標y=291、鋼板21の端部は画素座標y=312の位置であるとの結果を得、開先の中心はその中点ymid=(ymax+ymin)/2=301.5となった。さらに本発明では予め画素サイズと、実際の寸法との較正によって、1画素=10μmであったので、鋼板21と鋼板22の開先ギャップはΔy=(ymin−ymax)×0.01mm=0.21mmと算出した。
【0078】
なお、(1)〜(3)の処理では、撮像画像から一部を切り出して部分画像を得たが、撮像画像の全体にほぼ均一に照明する場合には、撮像画像全体を部分画像の代わりに用いてもよい。また、照明が鋼板の幅方向において若干不均一であっても、例えば鋼板等の疵検査装置で用いられているようなシェーディング補正を撮像画像について行って、その画像を用いてもよい。
【0079】
ところで、上記の上位制御部、撮像制御部15、データ処理部19は、それぞれ別のパーソナルコンピュータ(PC)で構成して、上記の動作およびデータ処理を実行するためのソフトウェアを作成してロードしてもよい。また、それぞれ専用機のハードウェアとして、DSPやMPUを用いて構成してもよい。また、上位制御部、撮像制御部15、データ処理部19を単一のPCで構成してもよい。その際、PCは、制御およびデータ処理のための入出力部(キーボード、マウス、インターフェースボード、コンピュータディスプレー等)、およびHDD等の記録装置を具備させておくとよい。
【0080】
<その他の実施の態様>
次に、上記した図12に示した溶接装置では、レーザ溶接トーチ30に先行して撮像部10が鋼板21と鋼板22との突合せ部の上方を鋼板21、22の幅方向に移動する。本実施の態様では撮像部10の移動に合わせて、一定周期sで鋼板突き合わせ部の画像を撮影し、撮影画像ごとに上記の第1の実施の態様に記載の処理を行い、鋼板21の端部yminと鋼板22の端部ymaxの位置および、突き合わせ開先位置ymid、開先ギャップ幅Δyを検出する。本実施の態様では上位制御部(図示しない)から、データ処理部19に、撮像部10の移動位置データL(mm)が伝送されている。移動位置データLとしては、例えばCCDカメラ11の視野中心座標であってもよい。
【0081】
また、予めレーザ溶接トーチ30でレーザビームを鋼板21、22に照射して得られた溶融ビードを、撮像部10で撮影して校正用の撮像画像を得て、当該撮像画像における溶融ビードの中心点の画素座標を求める。CCDカメラ視野におけるレーザビーム照射位置を記録しておく事で、カメラ視野におけるレーザビームの相対的位置の校正を行う。
【0082】
また、予め定規などの寸法基準を撮影する事で、カメラ視野(鋼板面上の実寸法)と撮像画像の寸法との校正を行っておく(カメラの水平画素、垂直画素について、実際の撮影画像に相当する長さを校正しておく)。
【0083】
これらの校正用データを用いて、例えば突き合わせ開先位置の鋼板幅方向位置による変化の測定例を示す図14のグラフの様に、溶接した鋼板21、22について、溶接開始点からの、鋼板21の端部(L0)、鋼板22の端部(L1)、突き合わせ開先位置(L2)、および溶接用レーザ照射位置(L3)をグラフに表現する事ができる。図14において溶接用レーザ照射位置(L3)は一定値であるので、レーザ照射位置(L3)と突き合わせ開先位置(L2)の差分δを、溶接時の目外れ量として図16の様に評価できる。さらに、突き合わせギャップ幅Δyを図15の様に評価できる。これらの結果をもとに、例えば目外れ量δや突き合わせギャップ幅について、許容できる限界値である管理閾値を予め設定しておけば、溶接の良否判定を行う事も可能である。
【0084】
また、本発明の方法で得た突き合わせ開先位置の情報に基づいて、溶接中に開先線と垂直方向のレーザ溶接トーチ30の位置を制御すれば目外れをゼロにする事が可能である。この場合、開先線と垂直方向の移動について、溶接トーチ30の移動にともなって鋼板突き合わせ開先位置の検出装置1も開先線と垂直方向に移動しない様に、溶接トーチと開先検出装置とは独立の移動機構を持つ必要がある。
【0085】
さらに、図14のグラフから得られる鋼板21あるいは鋼板22の端部の形状(L0)、(L1)から、鋼板切断シャーの刃の状態を管理し、例えば鋼板21、22の端部の切断線の形状が板幅方向の曲がりが発生するなど、切断形状の劣化が見られた時に切断シャーの刃の整備や交換を行うなど、切断シャーの保守管理や、鋼板21、22を固定するクランプ装置のガタや弛みなど機械装置の保守管理に利用する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、テーラードブランクや冷延コイル溶接などシャー切断やプレス切断された端部を有する鋼板を突き合わせて、レーザやアーク溶接などの溶接装置で溶接を行う溶接機において、鋼板の突き合わせ部を検出するセンサーの鋼板端部の検出方法に関する発明である。
【符号の説明】
【0087】
1 鋼板突き合わせ開先位置の検出装置
10 撮像部
11 CCDカメラ
12 照明装置
13 ステージ
14 レンズ
15 撮像制御部
16 信号線
17 画像処理部
19 データ処理部
21、22 鋼板
30 レーザ溶接トーチ
31 横行キャリッジ
B、B1、B2 鋼板突き合わせ部の開先ギャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザやアーク溶接などの溶接装置により、2つの鋼板の端面を接触させて溶接する突き合わせ溶接に係り、特に2枚の鋼板の突き合わせ開先の位置および、2枚の鋼板の端部の隙間であるところの開先ギャップを検出する検出方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、2つの鋼板の端面を接触させて行うレーザ溶接は、レーザ光を細いビームに絞って2つの鋼板の端部に照射して溶接を行う。その際、溶接する互いの鋼板の突き合わせ位置に対するレーザビームの照射点の位置ずれ量の許容限界が±0.5mm程度であり、レーザビーム照射点の位置ずれ量がこの値より大きくなると、溶接部の強度不足等の溶接不良を生ずる原因となる。このため、従来から被溶接鋼板(ワーク)の突き合わせ位置を、より高精度に検出する方法が各種提案されており、代表的なものとして以下のものがある。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、鋼板の突き合わせ部をCCDカメラによって撮影し、撮像画像を画像処理して明暗画像を得て、鋼板の突き合わせ位置(開先位置)や開先ギャップを検出する方法が開示されている。また、特許文献3には撮影した画像の溶接線と垂直方向の輝度分布の変化から突き合わせ位置を検出する方法が開示されている。
【0004】
また特許文献4には、突き合わせ鋼板の厚みの違いによりできる鋼板の段差の影から突き合わせ位置を検出する方法が開示されている。さらに特許文献5には、開先部にレーザ距離計を走査して照射し、開先部の断面形状を距離によって評価して開先位置を検出する方法が開示されている。
【0005】
上記の従来技術では以下で説明するような問題点を有している。特許文献1および特許文献2では、開先検出の方法において撮影した画像を2値化処理すると記載されている。しかし、実際の溶接鋼板は、シャーやプレスによって切断されることが多く、切断端部に形状の「ダレ」を有しているため、開先部の輝度値はなだらかに変化し、2値化の閾値によって計測値が大きく変動する欠点がある。
【0006】
また特許文献3には溶接線と垂直方向の画像の輝度分布の変化点から、鋼板の突き合わせ位置を検出する点が記載されている。しかし実際の鋼板は表面の疵や模様、あるいは切断時の切断端部のダレなどのため、輝度分布曲線は、必ずしも特許文献3の図3に示されたような明確な鋼板端部の輝度変化点を有することは少ない。
【0007】
特許文献4に開示されている鋼板の段差による影を利用する方法は、1mm〜10mm程度の比較的薄い鋼板を溶接する、冷延コイルのコイル継ぎ溶接においては、突き合わせ鋼板の段差が少なく、照明による影を作り出す事が難しいと言う欠点がある。
【0008】
特許文献5に開示されているレーザ距離系を用いる方法は計測用レーザの走査系を必要とするため、装置が複雑で高価になる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−235086号公報
【特許文献2】特開平6−114581号公報
【特許文献3】特開平11−179581号公報
【特許文献4】特開平10−305379号公報
【特許文献5】特開平8−112689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来技術の問題に鑑みて、本発明は、2つの鋼板の端面を接触させて溶接する突き合わせ溶接において、シャーやプレスによって切断され、端部に「ダレ」を有している鋼板においても、正確にかつ安定して突き合わせ開先位置を検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨とするところは以下の如くである。
【0012】
本発明の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法は、2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分を撮像装置により得た撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法であって、
(1)前記撮像装置を前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置して、突き合わせ線が前記撮像装置の撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像工程と、
(2)前記撮像工程で取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する2値化工程と、
(3)前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算する工程イと、
(4)前記工程イで演算した輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算する工程ロと、
(5)前記工程ロで演算した輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するピーク位置検出工程とを有することを特徴とする。
【0013】
また、上記の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
前記2値化工程は、予め設定した複数の閾値Tを用いて2値化処理して、閾値Tそれぞれの前記2値化輝度値U´T(i、j)を求め、
前記工程イは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
閾値Tそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる閾値Tにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる閾値Tにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出することを特徴とする。
【0014】
さらに、上記の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
まず、予め設定した複数の角度θそれぞれで前記部分画像を回転させて回転画像を求め、
前記2値化工程は、前記複数の角度θの回転画像を2値化処理して、複数の角度θそれぞれの前記2値化輝度値を求め、
前記工程イは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
前記複数の角度θそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる角度θにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる角度θにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出することを特徴とする。
【0015】
さらに、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置の検出値から突き合わせ開先ギャップを算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法は、前記2枚の鋼板は溶接するために突き合わせられた鋼板であることを特徴とする。
【0017】
本発明の鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置は、2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分の撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置であって、
前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置され、突き合わせ線が撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する画像処理部と、
前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算し、
かつ前記輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算し、
かつ前記輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するデータ処理部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法により、複雑な線状光線やレーザ光の走査系などを使用する事なく、CCDカメラなど撮影装置による画像撮影のみで、シャー切断やプレス切断した2枚の鋼板の突き合わせにおいて、各々の鋼板の切断端部位置の検出、開先ギャップ幅、や突き合わせ位置の検出を正確に実施する事ができる。本発明の検出方法を用いる事で、溶接線に対するビーム照射位置精度の要求が厳しいレーザ溶接装置において、目外れなどの溶接欠陥を防止する開先位置検出センサーを得る事が可能となり、安定した溶接を行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実現する鋼板突き合わせ開先位置の検出装置の模式図である。
【図2】鋼板突き合わせ開先位置の検出装置により撮影された画像である。
【図3】鋼板突き合わせ開先位置の検出装置により撮影された画像のS1線部分の輝度分布を示すグラフである。
【図4】鋼板突き合わせ開先位置の検出装置により撮影された画像を2値化した画像である。
【図5】図4の画像C部の拡大画像である。
【図6】図5の画像S1線部分の輝度分布を示すグラフである。
【図7】本発明の処理(イ)、(ロ)の演算を実行した結果を示す模式グラフである。
【図8】(a)CCDカメラ画像の2値化処理後の画像の模式図である。(b)図8(a)のx=iの断面の輝度分布を示すグラフである。(c)図8(a)の画像に処理(イ)、(ロ)の演算を行った結果を示すグラフである。
【図9】(a)図5の画像S1線部分の輝度分布を示すグラフである。(b)図9(a)のグラフに処理(イ)を行った結果を示すグラフである。
【図10】(a)CCDカメラの水平軸と鋼板突き合わせ開先線が平行からずれている場合の2値化画像の模式図である。(b)図10(a)の画像に処理(イ)、(ロ)の演算を行った結果を示すグラフである。
【図11】(a)CCDカメラの水平軸と鋼板突き合わせ開先線が平行からずれている場合の2値化画像の模式図である。(b)図11(a)の画像に処理(イ)、(ロ)の演算を行った結果を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例に用いたレーザ溶接装置の模式図である。
【図13】本発明の演算を示すフローチャート図である。
【図14】本発明の検出方法から算出した鋼板突き合わせ状態の計測結果を示すグラフである。
【図15】本発明の検出方法にから算出した鋼板突き合わせギャップ幅の計測結果を示すグラフである。
【図16】本発明の検出方法にから算出したレーザ溶接時の溶接目外れの計測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、鋼板の製造ラインにおいて、2枚の鋼板の後端部と先端部とを溶接するときを一例として取り上げて、図を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。この際各鋼板の端部はシャー等により切断されており、ほぼ平面状の端面を有するとする。図1は本発明を実現するための鋼板突き合わせ開先位置の検出装置1の構成の一例を示した模式図である。撮像装置としての撮像部10は、例えば撮像デバイスとしてCCDカメラ11、2枚の鋼板21、22の突き合わせ部を照明する照明装置12、並びに、鋼板表面にCCDカメラ11のピントを調整するためのステージ13または自動焦点調整機構つきのレンズ14からなる。撮像部10は撮像制御部15により制御されて鋼板面を撮影する。撮影された画像は、信号線16によって別場所に設置された画像処理部17によって画像処理され、その画像データに基づきデータ処理部19で下記の手順により2枚の溶接鋼板21、22の端部および突き合わせ開先位置を検出する。
【0021】
以下では、鋼板21の後端部と鋼板22の先端部とを突き合わせてできる鋼板の突き合わせ線が、CCDカメラ11の撮像面の水平軸方向(したがって撮像画像の水平軸方向)と平行となるようにCCDカメラ11が設置されているとして、本発明の突き合わせ開先位置検出方法を説明する。このとき、突き合せ線は鋼板21、22の製造ラインの通板方向とほぼ直角となっている。したがって、CCDカメラ11の撮像面の水平軸方向と通板方向とはほぼ直交する。以下では撮像画素の輝度値を、画像の黒色部が輝度値0、白色部が輝度値255として8ビット(256階調)で表したときを例として説明する。
【0022】
ここで、鋼板21、22の突き合わせ線は、必ずしもCCDカメラ11の水平軸と厳密に平行である必要はない。また、ほぼ垂直であってもよい。そして、鋼板21、22の突き合わせ線と水平軸とが傾斜するときには、後述する様に、鋼板21、22の突き合わせ線の撮像画像を回転させる事で、鋼板21、22の突き合わせ線とCCDカメラ11の水平あるいは垂直軸の方向をほぼ平行にする事が可能である。
【0023】
図1の撮像部10で撮像した鋼板突き合わせ部の画像の一例を図2に示す。図2の撮像画像の上部が鋼板21、図2の下部が鋼板22である。A部が両鋼板21、22の突き合わせ開先部である。撮像画像は水平方向(x方向とする)にN画素、垂直方向(y方向とする)にM画素の画素数を有する。
【0024】
図2の撮像画像に示した垂直方向の線S1(水平方向の画素座標x=i番目)に沿った画像の輝度値Uの分布のグラフを図3に示す。第1の鋼板21の開先の近傍A部では除々に輝度が低下し画像が暗くなっている(図2を参照のこと)。したがって、特許文献1および2に開示されているような、各画素の輝度値の2値化処理を施すと、閾値の設定によって鋼板端部の位置の検出値に大きな差が発生する。さらに、鋼板端部の傷などのわずかな光の反射の違いや、鋼板の突き合わせ部の照明状態などの影響から、撮像画像のどの部位の2値化画像を、鋼板端部の位置の検出に使用するかによって、開先部の位置の検出値が大きく変動し、溶接時に問題となる。
【0025】
例えば、図2に示した撮像画像を2値化処理し、画素の輝度値がある閾値T未満の部分の輝度を255(白色)、画素の輝度が閾値T以上の部分の輝度を0(黒色)で表現した例の画像を図4に示す。図4では、右側の照明強度が強くなっていたために、2値化閾値T未満で白(輝度255)に変換される開先ギャップB部の太さが、左から右に行くにしたがい細くなっている。このように、上記のような単純な2値化処理を用いた開先位置の高精度な検出は難しいことは明らかである。
【0026】
<2値化画像に基づく開先位置の検出の概要>
(処理の基本的構成)
以下、本実施の形態における撮像画像のデータ処理方法を具体的に説明する。本発明ではまず撮像画像(図2)を2値化する(図4)。以下の説明においては、2値化閾値T(0<T<255)未満の画素の輝度を白(輝度U´=255)、閾値T以上の画素の輝度を黒(輝度U´=0)に変換して輝度値を反転させる。なお、必ずしも2値化画像の輝度を反転させることは必要ではない。その場合、以下の説明について、演算結果の符号が反対になるだけで、検出結果にはなんら影響を与えるものではない。
【0027】
上記したように、2値化によって開先のギャップ部(図4のB部)はおおよそ直線状の形状をしめすが、照明状態の違いにより、画像の左から右に行くにしたがい開先ギャップB部の太さが変化する。さらに、図4の2値化画像のC部の拡大図を図5に示す。図5の画像のD部の様に、鋼板端部においてはダレと鋼板表面の粗度による反射強度のバラつきなどによって、白黒の2値化領域の境界がぼやけてしまい、どの部分を境界とするかの判定が困難である。図5の2値化画像の線S1(x=i番目の画素)に沿った輝度値U´の分布を図6に示す。図5のD部付近の境界のぼやけに対応して、輝度値U´が細かく変動している事が判る。
【0028】
本実施の形態では2値化画像に基づき、鋼板21、22の端部の開先位置を得るための基礎データを以下の処理(イ)〜(ハ)で導出する。2値化画像における(x、y)=(n、m)座標の画素の輝度値を2値化輝度値U´(n、m)とする。ここで、0≦n≦N−1、0≦m≦M−1、N、Mはx方向(水平方向)、y方向(垂直方向)の画素数に相当する整数である。
【0029】
(イ)鋼板21、22の突き合わせ開先と垂直の方向(図4の場合はY方向)に沿って輝度差分値V(n、j)を式(1)により計算する。
【0030】
【数1】
ここで、0≦j≦M−3である。
【0031】
(ロ)この輝度差分値V(n、j+1)をX方向に射影して、nについて積算し、輝度差分射影値W(j+1)を式(2)により計算する。
【0032】
【数2】
ここで、0≦j≦M−3である。
【0033】
なお、輝度差分射影値Wとして式(2)で得られる値をNで除算して規格化してもよい。
【0034】
(ハ)上記W(j+1)の結果は例えば模式的に書くと、鋼板21、22の突き合わせ線がほぼ直線であり、撮像画像の水平軸方向と若干の傾斜を有するときには、図7に示したようなプラス、マイナスに2つの鋭いピークを持つ曲線となる。この2つのピークをそれぞれ、鋼板21の端部位置E1(−符号のピーク)および鋼板22の端部位置E2(+符号のピーク)と決定する。
【0035】
(イ)の処理は、図4に示した2値化画像の垂直方向(y方向)の線分S1に沿って白領域(輝度U´=255)と黒領域(輝度U´=0)の境界(白から黒または黒から白)を判定する処理である。すなわち、白領域(U´=255)あるいは黒領域(U´=0)が連続して続く場合は、輝度差分値V(n、j+1)=0となる。一方、黒領域(U´=0)から白領域(U´=255)、あるいは白領域(U´=255)から黒領域(U´=0)への変化がある場合は、輝度差分値V(n、j+1)=255あるいは輝度差分値V(n、j+1)=−255となる。よって、輝度差分値V(n、j+1)の値が0以外の値となる画素位置y=j+1(0≦i≦M−3)が、図5の画像の白領域(輝度255)と黒領域(輝度0)の境界である。ただし、1画素分の位置の誤差がある。
【0036】
なお、(イ)の処理の式(1)の右辺における、y=jとj+2の2値化輝度値U´の差分値Vの計算を、y=jとj+1の2値化輝度値U´の差分値Vに換えてもよい。この算出方法の方が位置精度が高い。
【0037】
例えば、図8(a)に模式的に示す、単純化した2値化画像の例において、水平方向x=iの位置にある垂直線分S2に沿った2値化輝度値U´の分布は、図8(b)に示したように開先ギャップB部において、2値化輝度値U´=255を持ち、その他の鋼板表面部分(21、22の領域)はU´=0である。図8(a)の線分S2に処理(イ)の演算を行うと輝度差分値Vは式(3)となり、開先A部の境界位置y=E1、y=E2および、その1画素分外側の位置y=E1+1、y=E2−1の4箇所のみV≠0となり、それ以外の場所では輝度差分値V(j、y)=0となる。
【0038】
【数3】
【0039】
上記処理(イ)の結果の輝度差分値V(i、y)を0≦i≦N−1について、積算すると、図8(a)では、全てのxの位置で、上の式(3)の結果になるため輝度差分射影値Wは式(4)となり、y=E2−1、E2、E1、E1+1の4つの画素の水平位置でWが最小または最大値を得る。Wが最大または最小を得るyは、開先の境界E1またはE2と、その1画素分だけ水平方向の外側であり、本発明の処理(イ)、(ロ)により開先の境界が検出できる。
【0040】
【数4】
【0041】
一方、実際の画像においては、図7に示した例のように開先の境界が一直線になる事はないため、Wの最大、最小値がおのおの複数存在する事はなく、境界は一義的に決定される。
【0042】
実際の鋼板突き合わせ部の開先画像においては、照明輝度の違いや、鋼板表面の反射率の局所的な違いによって、実際の画像を2値化処理すると図4、図5の様に、鋼板端部の黒領域と白領域との境界がぼけた(斑な)画像となる。このとき線S1に沿って(イ)の処理を行うと、白領域と黒領域の境界が複数存在するので、例えば図9(b)の結果を得る。図9(b)の+値(+255)となるy方向位置は黒領域から白領域へ変化する境界位置を示し、逆に−値(−255)となるy方向位置は白領域から黒領域へ変化する境界位置を示している。白領域と黒領域の境界があいまいな図5に示した拡大2値画像のD部に相当する部分で、図9(b)のグラフの様に、輝度差分値VはV=−255とV=255の値の間で振動する。
【0043】
この様に画像のある1線分上S1のみを対象とした場合、輝度差分値VがV=−255またはV=255となるy方向の位置が複数あり、白黒の領域の境界を1カ所に決定する事ができないことがある。本発明では2値化画像の白領域と黒領域の境界位置(y座標)を、処理(イ)の演算の後に、水平方向に射影積算する事で決定する(処理(ロ))。すなわち処理(イ)によって、画像の垂直方向(y方向)に沿って白領域(輝度255)と黒領域(輝度0)の境界と判定される画素位置が複数出てくることがあるが、処理(イ)を行う位置を水平方向(x方向)にずらして輝度差分値Vを計算し、この輝度差分値Vを順次加算すると、白領域(輝度255)と黒領域(輝度0)の境界と判定されたy方向の画素位置の頻度がもっとも多かった画素位置ypでの輝度差分射影値W値が最小値(マイナスのピーク値)および最大値(プラスのピーク値)となるので、その画素位置ypを当該撮影画像全体で判定した2値化処理により得られた境界位置、すなわち鋼板21および鋼板22の突き合わせ開先位置と決定する。
【0044】
(端部の形状や照明の影響の除去方法)
図1に示したような、鋼板突き合わせ開先位置の検出装置1の構成配置において、鋼板21、22の突き合わせ部へ照射される照明光のうち、鋼板21、22の垂直端面に当たった光はCCDカメラ11の方向にはほとんど戻らないので、撮像画像における当該部分の輝度が小さくなる。鋼板21、22の上面や、中間部位である鋼板端部のダレが発生している部位に当たった光は照明光の正反射成分が多く、そのため鋼板表面の微小な粗度変化による反射光量の変動の影響を強く受け、撮像画像の輝度値分布を2値化処理した2値化画像において開先部の境界がぼやけた状態となることが多い。本発明では以下で詳細に説明するように2値化の閾値を逐次変更し、2値化画像の白領域と黒領域の境界がもっともシャープになる閾値を探索し、当該閾値での2値化輝度値、輝度差分値および輝度差分射影値の結果に基づいて鋼板21、22の端部、開先位置を判定する。
【0045】
すなわち、開先部の境界がぼけた状態の撮像画像についてある閾値T1で2値化処理を行い、あるx=iの水平方向(x方向)の画素位置において、処理(イ)で輝度差分値Vを算出すると、y方向の複数の画素位置y=jに輝度差分値Vのピークが現れる。開先部の境界がぼけた状態であるので、水平方向の位置iを変えて各々のx=iの位置で同じ垂直方向(y方向)の画素位置y=jに境界位置(V≠0となる位置)を持つ確率が小さい。このとき、その結果の輝度差分値Vを水平方向(x=iに関して)に積算(処理(ロ))して射影すると、得られる輝度差分射影値Wは幅広いなだらかなピークとなる(例えば図7を参照のこと)。
【0046】
一方、上記と同じ撮像画像について、上記の閾値T1と異なる閾値T2で2値化した結果、仮に開先部の境界がシャープに得られている場合は、白領域と黒領域とが斑に混在する境界の画素位置の範囲が狭くなる。すなわち、処理(イ)で得られる、各々の水平位置x=iにおける輝度差分値Vについて、同じ垂直方向の画素位置y=jに境界位置(V≠0となる位置)を持つ確率が高くなり、処理(ロ)の水平方向の射影積算の演算値である輝度差分射影値Wのピークは幅狭く急峻になる。
【0047】
本発明では予め設定した範囲で2値化の閾値Tを逐次変更して複数の閾値Tそれぞれを用いた各2値化画像に対し、処理(イ)および処理(ロ)の結果の輝度差分射影値Wのピークがもっとも高く得られた2値化条件での演算処理(イ)および(ロ)で演算結果である輝度差分射影値Wのピークのy方向の画素位置(y画素位置)を検出して、鋼板21、22の突き合わせ開先位置とする。
【0048】
ここで、2枚の鋼板21、22の切断部のダレや、鋼板表面の状態は必ずしも同じではなく、また2枚の鋼板21、22に対する照明の角度も厳密には一致しない。従って、各々の鋼板21、22の開先位置の判定に同じ2値化の閾値を設定する必要は無い。本発明では2値化の閾値Tを逐次変更して処理(イ)、(ロ)を実施した演算結果について、+符号のピーク、−符号のピークの各々について、個別にピークが最大となる結果を持って鋼板21、22の端部とした。つまり+符号のピークと、−符号のピークを得る2値化閾値は、必ずしも同じでは無い。
【0049】
(突き合わせ線と画像水平軸のずれを補正する方法)
実際の装置においては、CCDカメラの撮像面の水平軸(x軸)と、鋼板の端部である開先線の方向とが完全に平行になる事はほとんどなく、カメラ撮像面の水平軸に対し、開先線が非零値の傾きθ(deg.)を持つことが多い。したがって、撮像画像においても水平方向と開先線とが傾きθを持つ。図10(a)に、突き合わせた鋼板21、22を鋼板面の上側みた見た模式図を示した。ただし、2枚の鋼板21、22の切断端面は互いに平行であると仮定する。この場合、処理(イ)による輝度差分値Vについて、V≠0となるy=jの位置は水平方向のx=iの各々において異なり、処理(ロ)の演算の結果の輝度差分射影値Wは図10(b)に示すように幅Δのピーク(±Pp1)を持つ結果となる。
【0050】
そのために、撮像画像について、鋼板21、22の開先方向と撮像画像の水平方向とを所望の精度で一致させるために、以下に示す手順(A)〜(D)で撮像画像を画像に垂直な軸の周りに回転させて、鋼板21、22の開先方向と撮像画像の水平方向とが一致する最適回転角度θminを探索する。
【0051】
(A)撮像画像の水平カメラ撮像面の水平軸に対し、開先線が非零値の傾きθ(deg.)予め決めた範囲(θ1≦θ≦θ2)において一定の角度ピッチΔθで変化させた画像回転角度θiそれぞれで撮像画像を回転させる。
(B)回転させた画像それぞれついて2値化処理を行い2値化画像を得る。
(C)さらに処理(イ)および処理(ロ)を行って輝度差分射影値Wを算出する。CCDカメラ11の水平軸方向と、2枚の鋼板21、22の突き合わせ開先の向きが平行に近くなると(図11(a))、処理(イ)による輝度差分値Vについて、水平方向のx=i軸各々のおけるピーク位置となるy=jのずれが小さくなり、図11(b)の様に、水平方向のx=i軸各々についての境界判定位置を射影積算(処理(ロ))して得られた輝度差分射影値Wのピークの山または谷の広がり幅Δが狭くなり、ピーク値(Pp2)が大きくなる(|Pp2|>|Pp1|)。
(D)ピーク値が最大となる画像回転角度θiを最適回転角度θminとする。
【0052】
以上の手順で最適回転角度θminを求め、撮像画像その角度θminで回転させて得られた回転画像の輝度差分射影値Wに基づいて、鋼板端部の位置を決定する。なお、上記(A)〜(D)の手順に際して、画像回転角度をΔθずつ逐次換えて、撮像画像を回転させて回転画像を得てもよく、また、(φ1≦θ≦φ2)の区間の角度で一括して複数の角度で撮像画像を回転させて回転画像を得てもよい。
【0053】
前述の2値化閾値Tを逐次変更したのと同様に、鋼板21、鋼板22の開先位置の検出について、+符号のピーク値と−符号のピーク値を取る画像の回転角度θminが必ずしも一致するとは限らない。例えば、先行鋼板21の端面と後行鋼板22の端面とが互いに若干傾いていることがある。このとき鋼板21の開先位置と鋼板22の開先位置が得られる回転角θminが異なる。このように、鋼板21の端部線と鋼板22の端部線が完全に平行でない場合や、照明角度の影響から一方の鋼板端部線の角度が、カメラ視野の水平軸からずれている場合などがある。2つのθminの差が小さいときには、いずれか一方を用いて輝度差分射影値Wを求めてもい。また、差が大きい特には、各θminにより得られたそれぞれの開先位置を用いればよい。
【0054】
<第1の実施の態様>
鉄鋼業の鋼板の製造ラインの冷延コイル継ぎ溶接ラインに、本発明の突き合わせ開先位置の検出方法を適用するときの具体的な態様を以下で説明する。
【0055】
冷延コイル継ぎ溶接ラインおいて厚さ4.0mmおよび4.5mmの一般鋼板をシャー切断し(図示しない)、鋼板21、22をクランプ装置(図示しない)で挟んで固定し、鋼板21、22の端部を突き合わせた後、開先部にCO2レーザを照射してレーザ溶接を行うコイル継ぎレーザ溶接機に、CCDカメラ(水平方向画素数1392、垂直方向画素数1040)11と照明装置12とを含む構成の撮像部10を設置した。溶接設備全体の模式図を図12に示す。撮像部10は図1を用いて上記した構成を有している。なお、一例として鋼板21、22は水平面内で通板されている配置で説明する。
【0056】
図12において、溶接する端部をシャー切断された鋼板21と鋼板22の端面が横行キャリッジ(ライン幅方向移送機構)31の移動方向とほぼ平行となる様に、ラインの上流にあるシャー切断機の刃の向きを調整しておく。撮像部10は横行キャリッジ31に取り付けられ、内蔵するCCDカメラ11は鋼板21、22の突き合わせ部にレンズ14を対向させて、その光軸が鋼板面にほぼ直交になるように配置されている。CCDカメラ11の撮像面の水平軸は横行キャリッジ31の移動方向と平行に、すなわち鋼板21と鋼板22の端部開先の向きとおおむね平行となる様に調整されている。
【0057】
鋼板21と鋼板22との突き合わせ部のレーザ溶接時に、レーザビームを突き合わせ部に集光・照射するレーザ溶接トーチ30は、横行キャリッジ31に取り付けられており、鋼板21と鋼板22の開先に沿ってライン上を横行する。撮像部10は、レーザ溶接トーチ30に対して一定距離(例えば50cm)だけ先行して横行し、レーザ溶接の前に鋼板21と鋼板22の突き合わせ開先部を撮像する。撮影した画像データは信号線16を通じて、別に設置されたデータ処理用パーソナルコンピュータ(PC)で構成したデータ処理部(図示しない)19に送られる。鋼板21、22への照明装置12はLED光源をレンズで集光するスポット照明を用いた(図1を参照)。鋼板21、22の突き合わせ部の撮像箇所が均一に照明される様に、例えば照明装置12は撮像用のCCDカメラ11を挟んで対称の位置に2個配置し、照明範囲の中心がおおむねCCDカメラ視野の中心となる様に照明位置および角度を調整する。なお、CCDカメラ11の視野範囲は、例えば20cm×20cmとする。
【0058】
横行キャリッジ31の上部には、CCDカメラ11と照明装置12と上下移動ステージ13とからなる撮像部10、および焦点調整機構付の撮像レンズ14を制御して鋼板21、22の突き合わせ部のクリアな画像を得るための撮像制御部15を設置した。実際の鋼板溶接において、鋼板21および鋼板22の板厚等の製造情報が、溶接作業全体と統括して制御する上位制御コンピュータ(PC)(上位制御部)図示せず)からデータ処理部19に入力される。データ処理部19からは撮像制御部15に鋼板21、22の板厚や幅値等の撮像のための情報が入力される。なお、上位制御部から撮像制御部15に直接鋼板21、22の板厚や幅値等の撮像のための情報を入力するようにしてもよい。この撮像のための情報に基づいて撮像制御部15は、溶接する鋼板21、22の板厚に基づいて溶接する鋼板表面にピントが合う様に、上下移動ステージ13および焦点調整機構付撮像レンズ14に制御信号を出力する。なお、撮像制御部15を横行キャリッジ31の上部ではなく、溶接ラインの横に固定して設置してもよい。
【0059】
鋼板21の後に鋼板22が溶接ラインの予め設定した位置に到着した後、レーザ溶接する時には、上位制御PCから入力される撮像開始の信号によるか、または、オペレータがする開始スイッチのON入力により、横行キャリッジ31により撮像部10が鋼板21、22の幅方向に、例えば一定の間隔で1ステップずつ移動する。ここで横行キャリッジ31は上位制御PCにより鋼板幅方向の移動が制御される。また、撮像部10は横行キャリッジ31の上記の移動に同期して、上下移動ステージ13、焦点調整機構付撮像レンズ14およびCCDカメラ11を制御して、予め設定してある鋼板幅方向の位置間隔で、鋼板21、22の突き合わせ部の開先を撮像して、得られた撮像画像を撮像制御部15を介してデータ処理部19に出力する。なお、撮像画像を撮像部10からデータ処理部19に直接出力してもよい。突き合わせ部において撮像部10が撮像する鋼板幅方向の位置は、1点でも複数点であってもよい。突き合わせ溶接する鋼板21、22の端部の形状の乱れの大きさ(例えば直線状や曲線状)等に基づいて、適宜設定すればよい。
【0060】
データ処理部19には、撮像画像のデータの他、横行キャリッジ31により移動した撮像部10の位置情報および鋼板21、22の撮像されたエリアの位置情報が上位制御部から伝達される。そして、CCDカメラ11により得られた撮像画像に、当該撮像画像が鋼板21、22のどの幅方向の位置の画像であるか(すなわちカメラ視野=被撮像部分)の位置情報を紐付ける。
【0061】
なお、一枚の撮像画像に映る視野範囲の広さ(高さL×幅C)は、予めオペレータがCCDカメラ11で撮像して校正してもよく、また、撮像画像を得るときに、鋼板21、22の上面で開先の近傍に、基準となる目印(位置基準マーク)を複数個配置しておいてもよい。こうして、撮像画像における各画素の位置(画素座標)と、当該画素に対応した鋼板21、22の撮像部位の位置とを紐付けすることができる。
【0062】
上記の図2に示した画像は、このようにして撮影された撮像画像の1例である。データ処理部19に含まれる画像処理部17により、入力された撮像画像について以下で説明する画像処理を実行する。
【0063】
まず図2に示した撮像画像に対し、画像の中心位置(水平方向:x軸、垂直方向:y軸とする)の回りに、当該撮像画像を画面内で例えば±2°の範囲で0.1°のピッチで変化させた角度θi(i=1、2・・・)で回転させ複数の回転画像を得る。さらに回転後の撮像画像(回転画像と記す)について、水平方向画素数1392、垂直方向画素数1040のうち、処理エリアを800≦x、200≦y≦800の範囲に限定する前処理(切り出し処理)を行った。カメラ全視野を画像処理の対象とする場合、照明の均一性の要求が厳しくなるが、処理エリアを限定する事で照明状態の差による影響を低減する事ができ、照明の均一性への要求を緩和する事が可能となる。なお、回転の方向は時計まわり方向を+、反時計まわり方向を−とした。
【0064】
実施した演算処理の手順の具定的な一例を示す(図13フローチャート)。
【0065】
(1)CCDカメラ11の画像をθ=+2°回転させた後(図13の工程S11)、800≦x、200≦y≦800の範囲の部分画像を切り取り処理し、以降はその切り取った部分画像に演算を行った。
【0066】
上記部分画像について、各画素(n、m)の輝度値Uを2値化の閾値Tで2値化処理し、式(5)により2値化輝度値U´Tを演算する(図13の工程S12)。なお、閾値Tを、15≦T≦30で、値を1ずつ変更して各T値での2値化輝度値U´Tを求める。
【0067】
【数5】
【0068】
各T値の輝度値U´T(n、m)について、上記の処理(イ)で輝度差分値Vを演算し(図13の工程S13)、処理(ロ)を実行して輝度差分射影値Wを求めた(図13の工程S14)。この輝度差分射影値Wの最大値W01と対応するy画素の値E01、輝度差分射影値Wの最小値(―符号のピーク)w01と、対応するy画素の値e01の値を求めて記録する(図13の工程S15)。
【0069】
(2)続いて、CCDカメラ11の画像をθ=+1.9°回転させた後(図13の工程S11)、800≦x、200≦y≦800の範囲の画像を切り取り処理し、以降はその切り取った部分画像に演算を行った。
【0070】
上記切り取り画像について、2値化閾値Tを、15≦T≦30で、Tの値を1ずつ変更して2値化処理し、式(6)により2値化輝度値U´Tを演算する(図13の工程S12)。
【0071】
【数6】
【0072】
各T値の2値化輝度値U´T(n、m)について、処理(イ)、処理(ロ)を実行し(図13の工程S13、S14)、輝度差分射影値Wの最大値W02と、対応するy画素の値E02の組(W02、E02)演算値Wの最小値(―符号のピーク)w02と対応するy画素の値e02の組(w02、e02)を記録する(図13の工程S15)。
【0073】
以上の手順を画像回転角度θ=−2°まで、0.1°ずつ41回繰り返して実行し、各T値について、(W01、E01)から(W41、E41)、(w01、01)から(w41、e41)の82組のデータからなる、輝度差分射影値のピークに関するデータ(ピーク情報と記す)を得た(図13の工程S16)。
【0074】
(3)上記の様に得られたピーク情報についてW=W01、W02・・・W41の中で最大の値を得るWmaxに対応するy画素の値を、y=ymaxとして鋼板22の端部と決定する。さらにW=w01、w02・・・w41の中で最小の値(―符号のピーク値)を得るWmimに対応するy画素の値を、y=yminとして、鋼板21の部分画像に対応する鋼板部位における端部とした(図13の工程S17)。すなわち、ymaxおよびyminは、当該鋼板部位における開先位置の平均値であるとも言える。
【0075】
以上の様に、図2の撮影画像について、回転角度θについて41パターンと、2値化閾値Tの値に関して16パターンとの組み合わせ、すなわち41×16=656パターンそれぞれについて(イ)、(ロ)の処理を行い、輝度差分射影値の+符号のピーク(最大値)および−符号のピーク(最小値)それぞれの垂直方向の画素座標ymaxおよびyminを算出した。図2の撮影画像については、+符号の最大値を持つ画素座標は、画像回転角度θ=0.0°、2値化閾値T=22のとき、ymax=291との結果が得られた。また、−符号の最大値を持つ画素座標は、画像回転角度θ=−0.4°、2値化閾値T=19のとき、ymin=312と得られた。
【0076】
上記のように、部分画像の回転角θが0.0°と−0.4°の回転画像それぞれにおけるymaxおよびyminから、回転角θが0°の元の撮像画像におけるy画素座標を求めることができる。このためには、CCDカメラ11の撮像面の水平軸方向と、シャー切断機の刃の向きとを所望の精度で一致させておく。
【0077】
なお、上記の例のように、回転角度が小さいときには、ymaxおよびyminの値を、回転角θが0°の元の撮像画像におけるy画素座標と見做しても、誤差は溶接に殆ど影響しない。そこで、以上の演算結果から、鋼板22の端部は画素座標y=291、鋼板21の端部は画素座標y=312の位置であるとの結果を得、開先の中心はその中点ymid=(ymax+ymin)/2=301.5となった。さらに本発明では予め画素サイズと、実際の寸法との較正によって、1画素=10μmであったので、鋼板21と鋼板22の開先ギャップはΔy=(ymin−ymax)×0.01mm=0.21mmと算出した。
【0078】
なお、(1)〜(3)の処理では、撮像画像から一部を切り出して部分画像を得たが、撮像画像の全体にほぼ均一に照明する場合には、撮像画像全体を部分画像の代わりに用いてもよい。また、照明が鋼板の幅方向において若干不均一であっても、例えば鋼板等の疵検査装置で用いられているようなシェーディング補正を撮像画像について行って、その画像を用いてもよい。
【0079】
ところで、上記の上位制御部、撮像制御部15、データ処理部19は、それぞれ別のパーソナルコンピュータ(PC)で構成して、上記の動作およびデータ処理を実行するためのソフトウェアを作成してロードしてもよい。また、それぞれ専用機のハードウェアとして、DSPやMPUを用いて構成してもよい。また、上位制御部、撮像制御部15、データ処理部19を単一のPCで構成してもよい。その際、PCは、制御およびデータ処理のための入出力部(キーボード、マウス、インターフェースボード、コンピュータディスプレー等)、およびHDD等の記録装置を具備させておくとよい。
【0080】
<その他の実施の態様>
次に、上記した図12に示した溶接装置では、レーザ溶接トーチ30に先行して撮像部10が鋼板21と鋼板22との突合せ部の上方を鋼板21、22の幅方向に移動する。本実施の態様では撮像部10の移動に合わせて、一定周期sで鋼板突き合わせ部の画像を撮影し、撮影画像ごとに上記の第1の実施の態様に記載の処理を行い、鋼板21の端部yminと鋼板22の端部ymaxの位置および、突き合わせ開先位置ymid、開先ギャップ幅Δyを検出する。本実施の態様では上位制御部(図示しない)から、データ処理部19に、撮像部10の移動位置データL(mm)が伝送されている。移動位置データLとしては、例えばCCDカメラ11の視野中心座標であってもよい。
【0081】
また、予めレーザ溶接トーチ30でレーザビームを鋼板21、22に照射して得られた溶融ビードを、撮像部10で撮影して校正用の撮像画像を得て、当該撮像画像における溶融ビードの中心点の画素座標を求める。CCDカメラ視野におけるレーザビーム照射位置を記録しておく事で、カメラ視野におけるレーザビームの相対的位置の校正を行う。
【0082】
また、予め定規などの寸法基準を撮影する事で、カメラ視野(鋼板面上の実寸法)と撮像画像の寸法との校正を行っておく(カメラの水平画素、垂直画素について、実際の撮影画像に相当する長さを校正しておく)。
【0083】
これらの校正用データを用いて、例えば突き合わせ開先位置の鋼板幅方向位置による変化の測定例を示す図14のグラフの様に、溶接した鋼板21、22について、溶接開始点からの、鋼板21の端部(L0)、鋼板22の端部(L1)、突き合わせ開先位置(L2)、および溶接用レーザ照射位置(L3)をグラフに表現する事ができる。図14において溶接用レーザ照射位置(L3)は一定値であるので、レーザ照射位置(L3)と突き合わせ開先位置(L2)の差分δを、溶接時の目外れ量として図16の様に評価できる。さらに、突き合わせギャップ幅Δyを図15の様に評価できる。これらの結果をもとに、例えば目外れ量δや突き合わせギャップ幅について、許容できる限界値である管理閾値を予め設定しておけば、溶接の良否判定を行う事も可能である。
【0084】
また、本発明の方法で得た突き合わせ開先位置の情報に基づいて、溶接中に開先線と垂直方向のレーザ溶接トーチ30の位置を制御すれば目外れをゼロにする事が可能である。この場合、開先線と垂直方向の移動について、溶接トーチ30の移動にともなって鋼板突き合わせ開先位置の検出装置1も開先線と垂直方向に移動しない様に、溶接トーチと開先検出装置とは独立の移動機構を持つ必要がある。
【0085】
さらに、図14のグラフから得られる鋼板21あるいは鋼板22の端部の形状(L0)、(L1)から、鋼板切断シャーの刃の状態を管理し、例えば鋼板21、22の端部の切断線の形状が板幅方向の曲がりが発生するなど、切断形状の劣化が見られた時に切断シャーの刃の整備や交換を行うなど、切断シャーの保守管理や、鋼板21、22を固定するクランプ装置のガタや弛みなど機械装置の保守管理に利用する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、テーラードブランクや冷延コイル溶接などシャー切断やプレス切断された端部を有する鋼板を突き合わせて、レーザやアーク溶接などの溶接装置で溶接を行う溶接機において、鋼板の突き合わせ部を検出するセンサーの鋼板端部の検出方法に関する発明である。
【符号の説明】
【0087】
1 鋼板突き合わせ開先位置の検出装置
10 撮像部
11 CCDカメラ
12 照明装置
13 ステージ
14 レンズ
15 撮像制御部
16 信号線
17 画像処理部
19 データ処理部
21、22 鋼板
30 レーザ溶接トーチ
31 横行キャリッジ
B、B1、B2 鋼板突き合わせ部の開先ギャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分を撮像装置により得た撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法であって、
(1)前記撮像装置を前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置して、突き合わせ線が前記撮像装置の撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像工程と、
(2)前記撮像工程で取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する2値化工程と、
(3)前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算する工程イと、
(4)前記工程イで演算した輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算する工程ロと、
(5)前記工程ロで演算した輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するピーク位置検出工程と、
を有することを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
前記2値化工程は、予め設定した複数の閾値Tを用いて2値化処理して、閾値Tそれぞれの前記2値化輝度値U´T(i、j)を求め、
前記工程イは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
閾値Tそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる閾値Tにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる閾値Tにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出する、
ことを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
まず、予め設定した複数の角度θそれぞれで前記部分画像を回転させて回転画像を求め、
前記2値化工程は、前記複数の角度θの回転画像を2値化処理して、複数の角度θそれぞれの前記2値化輝度値を求め、
前記工程イは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
前記複数の角度θそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる角度θにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる角度θにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出する、
ことを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項4】
さらに、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置の検出値から突き合わせ開先ギャップを算出することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項5】
前記2枚の鋼板は溶接するために突き合わせられた鋼板であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項6】
2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分の撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置であって、
前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置され、突き合わせ線が撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する画像処理部と、
前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算し、
かつ前記輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算し、
かつ前記輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するデータ処理部と、
を有することを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置。
【請求項1】
2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分を撮像装置により得た撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法であって、
(1)前記撮像装置を前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置して、突き合わせ線が前記撮像装置の撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像工程と、
(2)前記撮像工程で取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する2値化工程と、
(3)前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算する工程イと、
(4)前記工程イで演算した輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算する工程ロと、
(5)前記工程ロで演算した輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するピーク位置検出工程と、
を有することを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
前記2値化工程は、予め設定した複数の閾値Tを用いて2値化処理して、閾値Tそれぞれの前記2値化輝度値U´T(i、j)を求め、
前記工程イは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
閾値Tそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
閾値Tそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる閾値Tにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる閾値Tにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出する、
ことを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法において、
まず、予め設定した複数の角度θそれぞれで前記部分画像を回転させて回転画像を求め、
前記2値化工程は、前記複数の角度θの回転画像を2値化処理して、複数の角度θそれぞれの前記2値化輝度値を求め、
前記工程イは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分値を演算し、
前記工程ロは前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値を演算し、
前記ピーク位置検出工程は、
前記複数の角度θそれぞれについて前記輝度差分射影値の垂直軸方向jに関する正値のピークの画素位置とピーク値、および、負値のピークの画素位置とピーク値を求めて、
前記複数の角度θそれぞれピーク値のうち、正値のピーク値が最大となる角度θにおけるピークの画素位置、および、負値のピーク値が最小となる角度θにおけるピークの画素位置に基づいて前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置を検出する、
ことを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項4】
さらに、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置の検出値から突き合わせ開先ギャップを算出することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項5】
前記2枚の鋼板は溶接するために突き合わせられた鋼板であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の鋼板の突き合わせ開先位置の検出方法。
【請求項6】
2枚の鋼板の端部を鋼板面内で突き合わせた部分の撮像画像を用いて、該撮像画像を画像処理して前記2枚の鋼板それぞれの開先位置を計測する鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置であって、
前記2枚の鋼板の突き合わせ部に対向して配置され、突き合わせ線が撮像面の水平軸方向となるようにして撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された撮像画像の全部、または突き合わせ部を含む部分画像について各画素の輝度値を、予め設定した閾値Tを用いて2値化処理して2値化画像を出力する画像処理部と、
前記2値化画像において水平軸方向をx軸方向、垂直軸方向をy軸方向として、各画素座標(i、j)の2値化輝度値U´(i、j)について、y軸方向に直接または1つおきに隣接する画素の2値化輝度値の差分である輝度差分値V(i、j)を、各iについて演算し、
かつ前記輝度差分値V(i、j)を水平軸方向iについて積算して輝度差分射影値W(j)を演算し、
かつ前記輝度差分射影値W(j)において、垂直軸方向jに関する正値および負値のピークの画素位置を求めて、前記2枚の鋼板それぞれの突き合わせ開先位置として検出するデータ処理部と、
を有することを特徴とする鋼板の突き合わせ開先位置の検出装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図15】
【図16】
【図2】
【公開番号】特開2011−104617(P2011−104617A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261710(P2009−261710)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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