説明

鋼管の外面曲がり測定方法

【課題】搬送される鋼管が跳ねた場合や楕円または外径の変動が鋼管に生じている場合も正確に測定できるとともに、工数を増大させることなく測定間隔を短くして定量的に測定できる外面曲がりの測定方法を提供する。
【解決手段】複数のローラ31によって鋼管11をその周方向に回転させつつ長手方向に搬送し、ローラ31のうちで隣り合うローラ31の間に鋼管外面の上端および下端の位置を検出する検出器21を等間隔に3台配置し、検出器21で検出した上端および下端の位置から鋼管外面の中心位置を3台の検出器についてそれぞれ求め、下記(1)式により振れwを算出すること特徴とする鋼管の外面曲がり測定方法である。ここで、3台の検出器21のうちで上流側(A位置)での中心位置をCA、中央(B位置)での中心位置をCB、下流側(C位置)での中心位置をCCとする。
w=CB−(CA+CC)/2 ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向に回転させつつ長手方向に搬送される鋼管について外面曲がりを測定する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、搬送される鋼管が跳ねた場合や楕円または外径の変動が鋼管に生じている場合も正確に測定できるとともに、工数を増大させることなく測定間隔を短くして定量的に測定できる外面曲がりの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管の製造では、製造された鋼管の外面の中心位置(軸心)が直線状となることなく曲線状となり、外面に曲がりが生じる場合がある。製造された鋼管の外面に曲がりが生じると、鋼管を装置に組み付けて使用する場合や、鋼管を加工する場合に不具合が発生するおそれがある。
【0003】
このような外面曲がり等を低減するため、鋼管の製造では、傾斜ロール式矯正機を用いた矯正が行われる場合がある。傾斜ロール式矯正機では、一般に、鼓形状のロールを回転軸の方向が互いに交差する状態で上下方向に対向配置してロール対とし、このロール対が3〜5対配設される。傾斜ロール式矯正機では、ロール対の対向間隔を被矯正管の外径より若干小さくすることにより付与されるクラッシュ量や、隣接するロール対に対してロール高さ変更することにより付与されるオフセット量が設定される。これらのクラッシュ量やオフセット量といった矯正条件を調整することにより、鋼管の曲がりが矯正される。
【0004】
一方、JIS規格では、鋼管の曲がりについて実用的にまっすぐであることを規定するのみで、測定方法や許容範囲について規定されていない。このため、鋼管の用途に応じて、鋼管の外面曲がりの検査や測定が行われている。
【0005】
鋼管の外面曲がりの検査や測定として、一般的に、鋼管の転がり具合による検査、ダイヤルゲージによる測定および隙間ゲージによる測定が用いられる。
【0006】
鋼管の転がり具合による検査は、例えば、下記の手順により行うことができる。
(1)鋼管を検査台上に載置し、
(2)目視により鋼管の曲がりを確認し、
(3)鋼管を転がした際の鋼管の振れの大きさおよび転がし易さを確認する。
【0007】
このような転がり具合による検査は、比較的に大きい外面曲がりが鋼管に生じていれば確認できるが、外面曲がりを定量的に測定することはできない。また、検査作業が経験に基づく作業にならざるを得ず、検査員の個人技能によって検査結果に違いが生じる。このため、鋼管の製造において、製造された鋼管の外面曲がりについて転がり具合により検査を行い、その結果に応じて傾斜ロール式矯正機の矯正条件といった製造条件を調整するのは困難である。
【0008】
続いて、ダイヤルゲージによる測定は、例えば、下記の手順により行うことができる。
(1)鋼管を、その端部から所定の距離(例えばl/4、l:鋼管の長さ)を設けた2点でV字ブロックまたはローラによって回転可能に支持し、
(2)ダイヤルゲージの測定子を鋼管外面に当てた状態で鋼管を回転させ、その際のダイヤルゲージの振れ幅を測定し、
(3)上記(2)による振れ幅の測定を、鋼管の長手方向に所定の測定間隔で行う。
【0009】
このようなダイヤルゲージによる測定では、所定の測定間隔で振れ幅を測定することにより定量的な測定が可能であるが、測定間隔を短くすると測定に要する工数が増大する。ここで、鋼管の外面には、周期が短い曲がりが繰り返し現れる外面曲がり、いわゆる蛇曲がりが生じる場合がある。このような蛇曲がりを定量的に測定して把握するには、蛇曲がりの周期ごとに複数の位置で振れ幅が測定されるように測定間隔を短くする必要がある。しかし、ダイヤルゲージによる測定で測定間隔を短くすることは、工数の増大を招くことから、困難である。このため、測定間隔が適切に設定されていない状態で蛇曲がりが生じた鋼管についてダイヤルゲージによる測定を行う場合があり、この場合は、鋼管の長手方向で不規則に振れ幅が変化し、鋼管の外面曲がりを把握することができない。
【0010】
一方、鋼管を製造すると、円となるはずの外面が変形して楕円となったり、外径が局所的に変動して径が大きくなる箇所や小さくなる箇所が発生したりする場合がある。これらの場合、ダイヤルゲージによる測定では、楕円や外径の変動に影響されて振れ幅が変動することから、測定された外面曲がりが誤差を含むこととなり、外面曲がりを正確に測定することが困難となる。
【0011】
続いて、隙間ゲージによる測定は、例えば、下記の手順により行うことができる。
(1)鋼管を定盤上に載置し、
(2)この鋼管と定盤との隙間に隙間ゲージを挿入することによって外面曲がりを測定する。
【0012】
このような隙間ゲージによる外面曲がりの測定は、隙間ゲージを挿入する隙間の測定を、鋼管の長手方向に所定の間隔ごとに行うとともに、鋼管の周方向に所定の角度ごとに360°にわたって行うことにより、理論上は、外面曲がりを定量的に測定できる。しかしながら、鋼管の長手方向および周方向にわたる隙間の測定は、測定に要する工数が非常に増大するので、実用上で実施するのは難しい。また、隙間ゲージによる外面曲がりの測定では、鋼管に楕円や外径の変動が発生すると、それに影響されて鋼管と定盤との隙間が変動することから、測定された外面曲がりが誤差を含むこととなり、外面曲がりを正確に測定することが困難となる。
【0013】
一方、搬送される鋼管の外面曲がりの測定に関し、従来から種々の提案がなされており、例えば、特許文献1および2がある。特許文献1で提案される外面曲がりの測定では、継目無鋼管の製造ラインにおいて、被加工材である鋼管の外径を複数の径方向から測定する外径計を配設する。このように配設された複数の外径計を用いて外径測定位置に対する鋼管の中心位置を各径方向についてそれぞれ算出することにより、鋼管の中心位置の変動量を算出する。この鋼管の中心位置の変動量を鋼管の長手方向にわたって算出することにより、鋼管の外面曲がりを測定する。
【0014】
特許文献1で提案される外面曲がりの測定では、外径測定位置を設定するために、略真円状の対比試験片を用意する必要があり、様々な外径の鋼管に対応するには対比試験片の管理が煩雑となって工数が非常に増大する。また、特許文献1で提案される外面曲がりの測定では、鋼管に楕円や外径の変動が発生すると、搬送される鋼管がローラ等で支持されていることから、鋼管の中心位置も変動する。これにより、鋼管の外面に曲がりがない場合でも、外径計を用いて算出される中心位置の変動量が零となることなく、外面曲がり測定されるので、測定された外面曲がりが誤差を含むこととなり、外面曲がりを正確に測定することが困難となる。
【0015】
ここで、製造ラインで搬送される鋼管は、搬送装置を構成する部材が有する段差や、装置や設備の動作に起因して生じる振動によって、鋼管が跳ねる(上下動する)場合がある。特許文献1で提案される外面曲がりの測定では、測定する際に鋼管が跳ねると、それによって外径計を用いて算出される中心位置も変動することから、測定された外面曲がりが誤差を含むこととなり、外面曲がりを正確に測定することが困難となる。
【0016】
特許文献2は、傾斜ロール式矯正機の制御方法に関するものであり、傾斜ロール式矯正機の出側で鋼管の外面曲がりを測定する方法が開示されている。特許文献2に開示される外面曲がりの測定では、継目無鋼管の製造ラインに配置される傾斜ロール式矯正機の出側に、被加工材である鋼管の外径を複数の径方向から測定する外径計を配設する。このように配設された複数の外径計を用いて鋼管の中間位置を各径方向についてそれぞれ算出し、幾何学計算によって鋼管の中心位置を算出する。そして、鋼管の外面曲がりは、外径計から入力された鋼管の中心位置について長手方向の変動量を算出することによって測定されるとしている。
【0017】
このような特許文献2で開示される外面曲がりの測定は、傾斜ロール式矯正機の出側で鋼管を測定するものであり、すなわち、鋼管の一部をロールにより挟んだ状態で測定する必要がある。このため、搬送される鋼管の測定にそのまま用いることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2006−247724号公報
【特許文献2】特開2006−281228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述の通り、鋼管の外面曲がりの検査や測定には、鋼管の転がり具合による検査、ダイヤルゲージによる測定および隙間ゲージによる測定が用いられていた。しかし、従来の鋼管の転がり具合による検査では、外面曲がりを定量的に測定することはできない。また、従来のダイヤルゲージによる測定および隙間ゲージによる測定では、定量的な測定が可能であるが、測定に要する工数が増大することから測定間隔を短くするのが難しく、楕円や外径の変動が生じた鋼管では外面曲がりを正確に測定することが困難であった。
【0020】
一方、特許文献1で提案される外面曲がりの測定では、対比試験片を用意する必要があり、様々な外径の鋼管に対応するには対比試験片の管理が煩雑となって工数が非常に増大する。また、特許文献2で開示される外面曲がりの測定では、傾斜ロール式矯正機の出側で鋼管を測定するものであり、搬送される鋼管の測定にそのまま用いることは難しい。
【0021】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、搬送される鋼管が跳ねた場合や楕円または外径の変動が鋼管に生じている場合も正確に測定できるとともに、工数を増大させることなく測定間隔を短くして定量的に測定できる外面曲がりの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の要旨は、以下の通りである。
複数のローラによって鋼管をその周方向に回転させつつ長手方向に搬送し、前記ローラのうちで隣り合うローラの間に前記鋼管外面の上端および下端の位置を検出する検出器を等間隔に3台配置し、前記検出器で検出した上端および下端の位置から前記鋼管外面の中心位置を前記3台の検出器についてそれぞれ求め、下記(1)式により振れwを算出すること特徴とする鋼管の外面曲がり測定方法。
w=CB−(CA+CC)/2 ・・・(1)
ここで、3台の検出器のうちで上流側の検出器について求めた中心位置をCA、中央の検出器について求めた中心位置をCB、下流側の検出器について求めた中心位置をCCとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の外面曲がり測定方法は、下記の顕著な効果を有する。
(1)ローラ間に検出器を等間隔に3台配置し、それぞれの検出器を用いて求めた鋼管外面の中心位置から振れを算出する。
(2)上記(1)により、搬送される鋼管が跳ねた場合も正確に振れを算出できるとともに、楕円や外径の変動が生じた鋼管でも振れを正確に算出することができる。
(3)さらに、工数を増大させることなく、測定間隔を短くして鋼管の長手方向にわたって振れを算出することができるので、外面曲がりを定量的に測定できる。
(4)対比試験片を用意する必要がなく、様々な外径の鋼管に容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の外面曲がり測定方法を説明する模式図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)は側面図である。
【図2】本発明で規定する計算式により算出される振れを説明する模式図であり、同図(a)は外面曲がりが生じていない場合、同図(b)は外面曲がりが生じている場合、同図(c)は鋼管が跳ねた場合をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の外面曲がり測定方法について、図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の外面曲がり測定方法を説明する模式図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)は側面図である。同図には被測定材である鋼管11と、鋼管11を搬送する搬送装置が備えるローラ31と、鋼管外面の上端および下端の位置を検出する検出器21とを示す。同図(a)は、搬送装置が備える複数のローラの一部と、搬送される鋼管11の長手方向の一部を示すものである。例えば、鋼管の長さが5mであれば、隣り合うローラの間隔は700mm程度に設定され、ローラ31の数は鋼管を搬送する距離によって決定される。このローラ31は、鋼管外面の下部を支持しつつ鋼管11を搬送する。
【0027】
本発明の外面曲がり測定方法は、複数のローラ31によって鋼管11をその周方向に回転(同図の太線矢印参照)させつつ長手方向に搬送(同図のハッチングを施した矢印参照)し、このローラ31のうちで隣り合うローラ31の間に鋼管外面の上端および下端の位置を検出する検出器21を等間隔に3台配置する。複数のローラ31によって鋼管11をその周方向に回転させつつ長手方向に搬送するのは、鋼管の長手方向に所定の間隔ごとに振れを算出するとともに、鋼管の周方向についても所定の角度ごとに振れを算出するためである。
【0028】
鋼管外面の上端および下端の位置を検出する検出器21を用いるのは、検出した鋼管外面の上端および下端の位置から中心位置を求め、この中心位置に基づいて前記(1)式により振れを算出するためである。これにより、鋼管に楕円や外径の変動が生じた場合にも振れを正確に算出することができる。
【0029】
検出器21は、同図に実線または破線の矢印で示すように、レーザビームを走査しながら鋼管11に向けて投光する投光部22と、投光部22に対向配置され、レーザビームを受光する受光部23とで構成できる。この構成の検出器21では、投光部22から投光されたレーザビームの一部が鋼管によって遮蔽されることから、受光部23で受光されなかった位置を検出することによって鋼管外面の上端および下端の位置(高さ位置)を検出できる。
【0030】
このような構成を採用できる検出器21は、同図に示すように、隣り合うローラ31の間にあり、上流側のA位置、中央のB位置、下流側のC位置にそれぞれ配置される。このように隣り合うローラ間に検出器を3台配置するのは、搬送される鋼管が跳ねた場合にも、振れを正確に算出するためである。また、同図に示すように、A〜Cの各位置に配置される3台の検出器21は、鋼管の長手方向におけるA位置とB位置の間隔とB位置とC位置との間隔とを同じにして配置される。このように検出器21を等間隔にして配置するのは、本発明が前記(1)式によって算出される振れによって外面曲がりを測定することによる。
【0031】
本発明の外面曲がりの測定方法は、検出器21で検出した上端および下端の位置から鋼管外面の中心位置を3台の検出器についてそれぞれ求め、前記(1)式により振れwを算出する。すなわち、同図に示すA〜Cの各位置においてそれぞれ鋼管外面の中心位置を求め、前記(1)式により振れwを算出する。鋼管外面の中心位置は上端および下端位置の中間位置とすればよく、例えば、検出器21の基準(原点)をローラの中心位置(高さ)とし、鋼管外面の上端位置(高さ)をPU、下端位置(高さ)をPDとすると、中心位置(高さ)は(PU−PD)/2で算出できる。
【0032】
図2は、本発明で規定する計算式により算出される振れを説明する模式図であり、同図(a)は外面曲がりが生じていない場合、同図(b)は外面曲がりが生じている場合、同図(c)は鋼管が跳ねた場合をそれぞれ示す。同図では、搬送される鋼管11と、ローラ31とを示し、検出器については省略したが、3台の検出器が配置されるA〜C位置をそれぞれ一点鎖線で示す。また、3台の検出器により検出される鋼管外面の上端および下端位置を黒塗りの丸印で示し、その上端および下端位置から求められる中心位置CA〜CCを×印でそれぞれ示す。さらに、同図には、A位置およびC位置について求められた中心位置を結ぶ直線Lを破線でそれぞれ示す。
【0033】
外面曲がりが生じていないまっすぐな鋼管を測定する場合、A位置(上流側)での中心位置をCA、B位置(中央)での中心位置をCB、C位置(下流側)での中心位置をCCとすると、同図(a)に示すように、同じ高さとなる。
【0034】
ここで、振れwを算出する前記(1)式は、中心位置CBから中心位置CAおよびCCの平均値を減じたものである。この中心位置CAおよびCCの平均値は、A〜C位置までの各間隔が等しいことから、中心位置CAおよびCCを結ぶ直線L(同図に破線で示す直線)とB位置を示す直線との交点で表される。すなわち、振れwは、中心位置CBと、中心位置CAおよびCCを結ぶ直線とB位置を示す直線との交点との高さ(垂直)方向の距離となる。このような振れwの値は、外面曲がりが生じていないまっすぐな鋼管を測定する場合には0(ゼロ)となる。
【0035】
外面曲がりが生じている鋼管を測定する場合、同図(b)に示すように、中心位置CA、CBおよびCCが異なる高さとなる。通常、鋼管はローラ31によって支持されつつ搬送されるので、同図(b)に示すように上流側の検出器が配置されるA位置と、下流側の検出器が配置されるC位置とをローラ31の近傍にそれぞれ設定すれば、中心位置CAおよびCCはほぼ同じ高さとなり、中心位置CAおよびCCを結ぶ直線は水平となる。振れwは、前述の通り、中心位置CBと、中心位置CAおよびCCを結ぶ直線LとB位置を示す直線との交点との高さ方向の距離であり、同図(b)に示すようになる。
【0036】
鋼管が跳ねると、同図(c)に示すように、一方のローラ31によってのみ鋼管が支持される状態となる場合がある。本発明の外面曲がり測定方法は、A位置およびC位置に検出器を配置するとともに、前記(1)式に第2項を設け、すなわち、中心位置CAおよびCCを結ぶ直線Lに基づいて振れwを算出する。これにより、同図(c)に示すように、鋼管の跳ねを考慮して振れwを算出することができる。
【0037】
このように本発明の外面曲がり測定方法は、ローラ間に検出器を等間隔に3台配置し、それぞれの検出器を用いて求めた鋼管外面の中心位置から振れを算出する。これにより、搬送される鋼管が跳ねた場合も正確に振れを算出できるとともに、楕円や外径の変動が生じた鋼管でも振れを正確に算出することができる。また、3台の検出器の間隔を変更することによって測定間隔を調整でき、検出器を用いることから、工数を増大させることなく測定間隔を容易に短くして鋼管の長手方向にわたって振れを算出することができる。これらにより、本発明の外面曲がり測定方法は、外面曲がりを定量的に測定できる。
【0038】
さらに、本発明の外面曲がり測定方法は、対比試験片を用意する必要がないことから、様々な外径の鋼管に容易に対応できる。
【0039】
本発明の外面曲がり測定方法は、検出器で検出した上端および下端の位置から鋼管外面の中心位置を3台の検出器についてそれぞれ求め、前記(1)式により振れwを算出する際に、演算装置を用いるのが好ましい。これにより、振れwの算出に要する手間を省き、容易に曲がり状況を把握できる。演算装置としては、例えば、CPU、ROM、RAM等を備えた汎用の演算装置を用いることができる。
【0040】
本発明の外面曲がり測定方法は、複数のローラによって鋼管をその周方向に回転させつつ長手方向に搬送する鋼管について、検出器で検出された位置に基づいて振れを算出して外面曲がりを測定する。このため、様々な長手方向の位置および周方向の角度での振れを算出できる。本発明の外面曲がり測定方法は、3台の検出器で鋼管外面の上端および下端位置を検知する時期や、搬送する鋼管の長手方向の速度または周方向の速度(回転数)を調整し、所定の角度(例えば1°)ごとに振れを算出し、この所定の角度ごとに振れを整理(マッピング)することにより、所定の角度間隔で鋼管の長手方向の全長にわたる振れを評価するのが好ましい。これにより、鋼管外面の曲がり量を可視化することができ、容易に曲がり状況を把握できる。
【0041】
本発明の外面曲がり測定方法は、3台の検出器を等間隔に配置して外面曲がりを測定するので、測定可能な外面曲がりの周期は検出器の間隔によって決定される。具体的には、測定可能な外面曲がりの周期(mm)は、上流側の検出器と下流側の検出器との間隔(mm)が下限となる。ここで、製造された鋼管に発生する外面曲がりは、製造条件が同じであれば、同じ傾向の外面曲がりとなる場合が多い。例えば、前述の傾斜ロール式矯正機で矯正された鋼管は、矯正条件を同じにすれば、矯正された鋼管に発生する外面曲がりも同程度となる。したがって、本発明の外面曲がり測定方法は、鋼管の製造条件に応じて検出器の間隔を調整すれば、蛇曲がりも測定することができる。
【0042】
鋼管に蛇曲がりが発生していない場合や、上流側の検出器と下流側の検出器との距離により決定される測定可能な外面曲がりの周期が鋼管に生じる外面曲がりの周期より十分に小さくできる場合には、ロール間に配置される3台の検出器のうちで中央の検出器は、両方のロールとも距離が同じになるように配置し、上流側および下流側をローラの近傍に配置するのが好ましい。このようにローラの近傍に上流側および下流側の検出器を配置すれば、通常は鋼管がローラと接触することから、上流側および下流側の検出器で求められる中心位置は変動がほとんどなく、基準点として認識し易くなる。
【0043】
また、測定を開始する際は、搬送される鋼管が下流側の検出器に到達することが必要であるが、下流側の検出器の近傍にローラがあることから、搬送される鋼管が下流側の検出器に到達するのとほぼ同時にその近傍のローラにも鋼管が到達する。これにより、測定を開始する際に鋼管が片持ち状態になることなく、両側のローラに支持された状態とすることができる。測定を終了する際も、上流側の検出器の近傍にローラがあることから、同様に、測定を開始する際に鋼管が片持ち状態になることなく、両側のローラに支持された状態とすることができる。
【0044】
搬送される鋼管の長手方向の速度および周方向の速度(角速度)は、速すぎると検出器で検出する鋼管外面の上端および下端位置に誤差が生じるおそれがあり、遅すぎると測定に要する時間が長くなる。例えば、周方向の角速度は400°/秒、長手方向への送り速度は最速で14mm/回転に設定できる。この場合、検出器による上端および下端位置の検出および振れの算出は、周方向の1°ごとに鋼管の長手方向にわたって振れを整理(マッピング)するため、400回/秒で行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の外面曲がり測定方法は、下記の顕著な効果を有する。
(1)ローラ間に検出器を等間隔に3台配置し、それぞれの検出器を用いて求めた鋼管外面の中心位置から振れを算出する。
(2)上記(1)により、搬送される鋼管が跳ねた場合も正確に振れを算出できるとともに、楕円や外径の変動が生じた鋼管でも振れを正確に算出することができる。
(3)さらに、工数を増大させることなく、測定間隔を短くして鋼管の長手方向にわたって振れを算出することができるので、外面曲がりを定量的に測定できる。
(4)対比試験片を用意する必要がなく、様々な外径の鋼管に容易に対応できる。
【0046】
このような本発明の外面曲がり測定方法を、鋼管の製造において、製造された鋼管の外面曲がりの測定に適用すれば、測定結果を製造工程にフィードバックすることができ、鋼管の品質を向上させることができる。したがって、本発明は鋼管の製造において有効に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
11:鋼管、 21:検出器、 22:投光部、 23:受光部、 31:ローラ、
CA〜CC:A〜C位置で求められた中心位置、
L:中心位置CAおよびCCを結ぶ直線、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラによって鋼管をその周方向に回転させつつ長手方向に搬送し、
前記ローラのうちで隣り合うローラの間に前記鋼管外面の上端および下端の位置を検出する検出器を等間隔に3台配置し、
前記検出器で検出した上端および下端の位置から前記鋼管外面の中心位置を前記3台の検出器についてそれぞれ求め、下記(1)式により振れwを算出すること特徴とする鋼管の外面曲がり測定方法。
w=CB−(CA+CC)/2 ・・・(1)
ここで、3台の検出器のうちで上流側の検出器について求めた中心位置をCA、中央の検出器について求めた中心位置をCB、下流側の検出器について求めた中心位置をCCとする。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−104719(P2013−104719A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247378(P2011−247378)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】