説明

長尺成形品

【課題】装飾層の変色を防止して、車室内の内装品と調和し、微細高密度の発泡外観を有する、高級感のある表面模様を有する装飾層を有する長尺成形品を得る。
【解決手段】熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層を有する押出成形により成形された長尺成形品において、装飾層は、OBSH系発泡剤2〜10重量部と、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、及びコハク酸塩より選ばれる1種以上である有機酸塩を3重量部〜10重量部とを含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡のセル径が均一で細かい熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層を表面に有する長尺成形品に関するものである。
具体的な応用分野としては、例えば、自動車のドアやトランクリッド等の扉と車体の開口部との間をシールするための自動車用ウエザストリップ等の押出成形により成形される長尺成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用ウエザストリップ等の長尺成形品は、押出成形により成形されている。この場合、合成ゴム、熱可塑性エラストマー等の材料を使用して、押出成形された後に、合成ゴムの場合には加硫槽で加硫されて長尺成形品が成形される。そして、所定寸法に切断された後に、コーナー部等は型成形により成形され、自動車用ウエザストリップ等の製品となる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
自動車用ウエザストリップの場合には、通常その本体は、合成ゴムや熱可塑性エラストマーで形成され、その場合は配合材料補強材としてのカーボンブラックの関係から黒色で形成されている場合が多い。
しかしながら、自動車の車室内の内装部品との調和と見栄えの向上のため、各種の表面模様と色彩を持った製品が必要とされてきた。
上記の要望から、自動車用ウエザストリップの押出成形された長尺成形品本体の表面に布等の表皮材を貼着するか、あるいは着色された装飾層を設けることが行われている。しかし、布等の表皮材を貼着する場合は、製造工程が複雑になり、コストアップとなっていた。
【0004】
また、この長尺成形品本体の表面に装飾層を設けるには、図2に示すように、押出成形機1により押出成形され、加硫槽2で加硫された長尺成形品本体としてのウエザストリップ本体111を一次プレフォーム機3により、若干山形に折り曲げるようにプレフォームを行い、接着剤又はプライマー塗布機4、あるいは、コロナ放電処理又はプラズマ処理等の表面処理によりウエザストリップ本体111上に接着性を向上させる表面処理を施す。なお、ウエザストリップ本体111と装飾層117との間に十分な相溶性があり、熱溶着可能な場合には、この表面処理工程を省略してもよい。また、押出成形機5に接続された押出ダイス9により、上記ウエザストリップ本体111上にシート状に装飾層117を押出成形する。その後、貼り合せ機6によりシート状に押出された装飾層117を、ウエザストリップ本体111に圧着させて、装飾層117をウエザストリップ本体111に接着する。さらに、冷却槽7により冷却したオープニングトリムウエザストリップ110を引取機8により引取る(例えば、特許文献2参照。)。なお、貼り合わせ機6を通過する段階で、トリム部を断面略U字形に折り曲げる2次曲げ加工を行う。
更にその後、所定の寸法に切断して、必要な場合は、コーナー部等を型成形して、製品としている。
【0005】
この場合に、図4に示すように、装飾層117の表面は、車室内の内装品との調和のため、光沢を抑えて落ち着いた視覚を得て、触感も向上させるため、ウエザストリップ本体111とは異なり黒色ではなく、各種の色彩を有する装飾層117を設けていた。この装飾層117としては、例えば、熱可塑性エラストマーの発泡体を使用するものである(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
しかし、この熱可塑性エラストマーの発泡体で優れた色彩を有する装飾層117は、特定の環境化において一定期間放置すると例えば、赤く変色して、概観が著しく損なわれる場合があった(例えば、特許文献4参照。)。
この変色は、装飾層117のアルカリ化によるものと考えられるが、そのアルカリ化は、ウエザストリップ本体111や装飾層117に含まれる各種の薬品の成分が原因していると考えられ、特に発泡成形後の発泡剤の分解残渣が強くアルカリ性を呈することによるものと考えられる。
【0007】
発泡剤は、発泡成形後の分解残渣が酸性を呈するものや、アルカリ性を呈するもの等、様々に存在するが、発泡のセル径が小さい微細高密度の発泡外観を得るためには、従来、発泡剤として分解残渣が強アルカリ性となる重曹系の発泡剤を使用せざるを得なかった。従って、特定の環境下において、装飾層117の変色を防止することが困難であった。
【特許文献1】特開平6−106597号公報
【特許文献2】特開平8−174620号公報
【特許文献3】特開2001―246991号公報
【特許文献4】特開2004―346171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、装飾層の変色を防止して、車室内の内装品と調和し、微細高密度の発泡外観を有する、高級感のある表面模様を有する装飾層を有する長尺成形品を、容易に確実に得ることが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層を有する長尺成形品において、装飾層は、4,4‘−オキシビス・ベンゼン・スルフォニルヒドラジン(以下「OBSH」という。)系発泡剤を2重量部〜10重量部と、有機酸塩を3重量部〜10重量部とを含有する熱可塑性エラストマー発泡体であることを特徴とする長尺成形品である。
【0010】
請求項1の本発明では、熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層を有する長尺成形品であるため、装飾層の色彩や材質を長尺成形品本体とは別に選択することができ、長尺成形品を使用する環境に合わせて、装飾層の色彩等を変更することが容易であり、デザイン的に好ましい。
【0011】
装飾層は、OBSH系発泡剤を2重量部〜10重量部と、有機酸塩を3重量部〜10重量部含有するため、有機酸が、発泡の核となり、発泡径が小さな微細高密度の発泡外観を有する、高級感のある表面模様を有し、柔軟な触感を有する装飾層を得ることができる。また、従来微細発泡密度の発泡体を得るために使用した重曹系の発泡剤と比べて、OBSH系発泡剤と、有機酸塩により発泡成形後のOBSH系発泡剤の分解残渣を酸性にすることができ、装飾層の変色を防止することができる。
【0012】
請求項2の本発明は、熱可塑性エラストマー発泡体は押出成形により成形され、その平均発泡セル径は、100μm〜300μmである長尺成形品である。
【0013】
請求項2の本発明では、装飾層は、長尺成形品本体と一体的に設けられ、長尺成形品の押出成形と同時、又は、押出成形後に一連の工程の中で連続して形成することができる。長尺成形品である熱可塑性エラストマー発泡体の平均の発泡セル径は、100μm〜300μmであるため、装飾層の表面が微細高密度の凹凸模様を有する外観であり、高級感のある表面光沢と、ソフト感のある触感を有することができる。
【0014】
請求項3の本発明は、有機酸塩が、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、及びコハク酸塩より選ばれる1種以上であることを特徴とする長尺成形品である。
【0015】
請求項3の本発明では、有機酸塩が、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、及びコハク酸塩より選ばれる1種以上であるため、OBSH系発泡剤が、発泡するときに上記の有機酸塩が発泡の核になることができ、発泡径を微細にすることができる。また、有機酸は比較的強い酸であるため、発泡剤の分解残渣が生じても、装飾層が酸性を維持することができ、装飾層に変色が発生することを防止することができる。
【0016】
請求項4の本発明は、有機酸塩は、クエン酸ナトリウムであることを特徴とする長尺成形品である。
【0017】
請求項4の本発明では、有機酸塩は、クエン酸ナトリウムであるため、酸化還元電位が高く、酸性が強いため、OBSH系発泡剤の分解残渣が生じても、装飾層がアルカリ性になることを防止でき、装飾層の変色を防止できる。また、クエン酸ナトリウムがOBSH系発泡剤の発泡の核となり、一層微細な発泡を有する装飾層を得ることができる。
【0018】
請求項5の本発明は、装飾層のOBSH系発泡剤の含有量は4重量部〜8重量部であり、発泡剤の含有量が少ない時には、有機酸塩の含有量を多くするようにして、10重量部〜3重量部の範囲内で調整されている長尺成形品である。
【0019】
請求項5の本発明では、装飾層のOBSH系発泡剤の含有量は4重量部〜8重量部であり、発泡剤の含有量が少ない時には、有機酸塩の含有量を多くするようにして、10重量部〜3重量部の範囲内で調整されている。発泡剤の量を少なくして、発泡の核となる有機酸塩を多く配合されているため、微細な発泡セルを均一に多数発泡させることができる。
【0020】
請求項6の本発明は、熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層は、自動車用ウエザストリップの装飾層であり、装飾層は、ウエザストリップ本体の断面略U字形のトリム部及び/又は該トリム部から延出しているカバーリップの上面に設けられ、ウエザストリップ本体は、エチレン、α―オレフィン、ジエン、非共役重合体(EPDM)で形成された長尺成形品である。
【0021】
請求項6の本発明では、熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層は、自動車用ウエザストリップの装飾層であり、装飾層は、ウエザストリップ本体の断面略U字形のトリム部及び/又は該トリム部から延出しているカバーリップの上面に設けられ、ウエザストリップ本体は、エチレン、α―オレフィン、ジエン、非共役重合体(EPDM)で形成された。このため、自動車のドア等の開口部に取付けられるウエザストリップの車室内側から観察される表面の部分に、装飾層を設けることができ、ウエザストリップに車室内の内装製品と調和した色彩や、模様を有する装飾層を設けることができる。また、装飾層の表面の艶を抑えて、落ち着いた光沢を有し、高級感のある模様を形成することができ、微細な発泡により表面を柔らかな感触にすることができる。
【0022】
ウエザストリップ本体は、EPDMゴムで形成され、装飾層は、熱可塑性エラストマーで形成されたため、熱可塑性エラストマーをオレフィン系のものを使用した場合には、ウエザストリップ本体と装飾層とを接着することが容易である。EPDMゴムからなる加硫された自動車用ウエザストリップ本体に連続して装飾層を設ける場合は、加硫により加熱された自動車用ウエザストリップ本体に対して、装飾層の接着時に、加熱を必要とせず、装飾層を容易に熱接着することができる。
【0023】
また、熱可塑性エラストマーを使用した場合は、押出した装飾層の表面模様を形成した後に加硫する必要がなく、形成した模様が消えたり、凹凸が小さくなったりすなることがない。
また、ウエザストリップ本体は、EPDMで形成されたため、加硫により形状を保持できる充分な剛性と、柔軟性と弾力性を有し、耐候性に優れた安価な製品を得ることができる。装飾層はオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されたため、EPDMで形成された長尺成形品本体と同じオレフィン系の材料のため、接着しやすく、強固に接着することができる。
また、装飾層は熱可塑性エラストマー製のため、装飾層を成形した後に加硫する必要がなく、EPDMに接着した後でも柔軟性を有することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、装飾層の色彩や材質を長尺成形品とは別に選択することができ、長尺成形品を使用する環境に合わせて、装飾層の色彩等を変更することが容易である。また、装飾層は、OBSH系発泡剤4〜12重量部と、有機酸塩を3重量部〜10重量部とを含有するため、有機酸塩が、発泡の核となり、発泡径が小さな微細高密度の発泡外観を有する、高級感のある表面模様を有する装飾層を得ることができ、OBSH系発泡剤の分解残渣を酸性にすることができ、装飾層の変色を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図1〜図4に基づき説明する。本実施の形態では自動車用のオープニングトリムウエザストリップ10に適用した場合を例にとり説明するが、本発明は、他の押出成形により成形される長尺成形品に対して適用することができる。
図1は、本実施の形態の成形方法で製造される自動車用のオープニングトリムウエザストリップ10の断面図である。オープニングトリムウエザストリップ10は、トリム部12、カバーリップ13と中空シール部18からなるウエザストリップ本体11と、そのトリム部12とカバーリップ13の上面に設けられた装飾層17から構成される。
【0026】
トリム部12は、断面略U字形をなし、内部にインサート14が埋設され、上部に車室内側に延びるカバーリップ13が設けられている。トリム部12の断面略U字形の内面には複数の車外側保持リップ15と1つの車内側保持リップ16が設けられている。トリム部12のU字形の内部にドアや車体開口縁のフランジが挿入され、車外側保持リップ15と車内側保持リップ16により保持されて、オープニングトリムウエザストリップ10が上記のフランジに装着される。
【0027】
トリム部12とカバーリップ13は、ゴム、熱可塑性エラストマーや軟質合成樹脂等のソリッド材又は微発泡材で形成され、中空シール部18は、柔軟性と弾力性のためゴムや熱可塑性エラストマー等のスポンジ材で構成されている。ゴムとしては、例えば合成ゴムであるエチレン、α―オレフィン、ジエン、非共役重合体、エチレン、プロピレン、ジエン、3元非共役重合体(EPDMゴム)を使用することができる。
【0028】
トリム部12の上面とカバーリップ13の上面には、装飾層17が固着されている。トリム部12とカバーリップ13の上面は車室内側から見ることができる。このため、この装飾層17は、デザイン的に自動車の内装の色彩や色艶に対応してその表面模様を変化させることが必要であり、内装に調和した表面模様を有する装飾層17が使用される。
装飾層17は熱可塑性エラストマーの発泡材で構成されている。熱可塑性エラストマーとしては、ウエザストリップ本体11がEPDMゴムで形成される場合は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用することが、ウエザストリップ本体11と装飾層17との接着が強くなるため好ましい。
【0029】
装飾層17は、本実施の形態においては後述するように、略一定の肉厚のシート状のものが押出成形により形成され、オープニングトリムウエザストリップ10の長手方向にオープニングトリムウエザストリップ10と密着して帯状に形成されている。そして、図1に示すように、装飾層17の幅方向の一方の側端は、トリム部12と中空シール部18の境界付近まで設けられ、トリム部12をカバーしている。装飾層17の幅方向の他方の側端は、カバーリップ13の先端を覆い、包んでおり、装飾層17がカバーリップ13とトリム部12の車室内側を完全に覆っている。
【0030】
図4は、カバーリップ13を覆う装飾層17の一部拡大斜視図である。
装飾層17の表面は、第4図では、装飾層17を発泡させてその表面に設けた発泡セルによる微細な凹凸模様が設けられている。凹凸模様は、装飾層17の略全面に亘り設けられている。この凹凸模様により、装飾層17の表面の光沢を抑えて、高級感をかもし出して触感を向上させることができる。
【0031】
装飾層17は、平均の発泡セル径は、100μm〜300μmの微細な発泡層を形成し、OBSH系発泡剤と、有機酸塩を3重量部〜10重量部含有している。このとき、装飾層17は、OBSH系発泡剤を2重量部〜10重量部含有することができ、その他下記に示すような、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤を含有することができるとともに、ステアリン酸カルシュウムやタルク等を含有することができる。
OBSH系発泡剤は、4、4´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを主成分とする発泡剤であり、分解すると窒素ガスや水蒸気を発生する。
【0032】
上記有機酸塩は、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、及びコハク酸塩より選ばれる1種以上であることが好ましい。この有機酸塩の配合は、上述のとおり2種以上の有機酸塩を使用した場合においても、3重量部〜10重量部であることが好ましい。
上記有機酸塩の配合が3重量部未満の場合には、装飾層17において微細な発泡セルを多数成形できなくなるとともに、装飾層17の変色を充分に防止できないおそれがある。上記有機酸塩の配合が10重量部以上の場合には、微細な発泡セルが多くなりすぎて、その一部がつながってしまい大きな発泡セルとなって、所定の微細で均一な発泡セルを得られなくなるとともにコストが上昇して好ましくない。
有機酸塩は、OBSH系発泡剤が、発泡するときに発泡の核になることができ、発泡のセル径を小さくして、微細で均一な多数の発泡セルを有した発泡層を得ることができる。
【0033】
有機酸塩として上記のものを選択すると、分解残渣は比較的強い酸となる。そのため、OBSH系発泡剤が分解した分解残渣が装飾層17に存在しても、アルカリになることが無く、装飾層17の変色を充分に防止することができる。
また、上記有機酸塩は、酸としての性質に加えて還元力を有する。そのため、装飾層17の変色が発生することを防止することができる。
【0034】
この装飾層17の変色は、オープニングトリムウエザストリップ10の成形後から経時後に観察される。このような変色は、装飾層17を変色させる変色物質が時間の経過に伴い装飾層17に発生するために起こると考えられる。
即ち、装飾層17中には、変色物質の前駆体(変色物質前駆体)が存在しており、経時後に、この変色物質前駆体が変色物質に変化することにより、装飾層17を変色させると考えられる。
【0035】
また、上記変色物質が発生する原因を更に考察すれば、例えば装飾層17から生じるラジカル等が要因になっていると考えられる。即ち、上記の環境的要因及び成形時の熱により装飾層17中に生じたラジカルが、上記酸化防止剤と反応して変色物質前駆体が発生し、変色物質前駆体とNOx等の環境的要因とが反応することにより変色物質が発生すると考えられる。
また、上記酸化防止剤やラジカルがNOx等の環境的要因と反応することにより、装飾層17は、その少なくとも一部において、アルカリ性になっていると考えられる。このアルカリの作用により上記変色物質が発生し、装飾層17の変色を引き起こすと考えられる。
【0036】
そのため本件発明においては、装飾層17には有機酸塩が含まれており、その有機酸塩は、酸としての性質や還元力を有している。そのため、装飾層17の有機酸塩の酸としての性質やその還元力により、装飾層17の発泡剤の分解残渣がアルカリを示さないことと相まって、装飾層17の変色を防止することができる。
【0037】
また、装飾層17は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物よりなる部分を少なくとも一部に有しているものを用いる。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)よりなる部分を少なくとも一部に有する装飾層17は、変色が起こりやすくなる。これは、このような樹脂成分を有する装飾層17がラジカルを発生しやすいからであると考えられる。そのため、この場合には、有機酸塩を含有させることによる、装飾層17の変色を除去又は/及び防止できるという効果を、より顕著に得ることができる。
【0038】
また、装飾層17は、酸化防止剤を含有する。
上記酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトール
テトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、製品名「IRGANOX1010」)、チオジエチレン
ビス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデジル−3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N、N’−ヘキサン−1、6−ジイルビス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、及び2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等がある。装飾層17は、これらの酸化防止剤を単独で又は2種以上含有することができる。
【0039】
また、装飾層17は、光安定剤又は/及び紫外線吸収剤を含有していてもよい。
上記光安定剤としては、例えばN、N’、N’’、N’’−テトラキス−(4、6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4、7−ジアザデカン−1、10−ジアミン、ジブチルアミン−1、3、5−トリアジン−N、N’−ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル−1、6−ヘキサメチレンジアミン−N−(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)アミン−1、3、5−トリアジン−2、4−ジイル}{(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2、2、6、6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「TINUVIN770」)等のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等がある。装飾層17は、これらの光安定剤を単独で又は2種以上含有することができる。
【0040】
また、上記紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3、4、5、6−テトラヒドロフタリミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(3−タート−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(住友化学株式会社製、商品名「SUMISORB300」)、2−(2−ヒドロキシ−5−タート−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジ−タート−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2、4−ジ−タート−ブチルフェニル3、5−ジ−タート−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤等がある。装飾層17は、これらの紫外線吸収剤を単独で又は2種以上含有することができる。
【0041】
次に、このオープニングトリムウエザストリップ10の製造方法を説明する。図2は、オープニングトリムウエザストリップ10の製造ラインの一部分を示す模式図である。
オープニングトリムウエザストリップ10は、まず、ウエザストリップ本体11及びカバーリップ13が押出成形機1により成形される。押出成形機にインサート14を供給し、押出成形機1によりトリム部12及びカバーリップ13を構成するソリッド材と中空シール部18を構成するスポンジ材を同時に押出してウエザストリップ本体11を押出成形する。その後、それらの材料がゴムの場合は高周波加熱炉、熱風加熱炉等に移送され、加熱して加硫される。
【0042】
加硫されたウエザストリップ本体11は、図2に示すように、一次プレフォーム機3に送られ、そこで、一次プレフォーム機3のローラーにより、プライマー塗布等の表面処理の容易性や装飾層17の接着を容易にするため、若干山形に折り曲げられる。
一次プレフォーム機3の後に、ウエザストリップ本体11は表面処理機4に送られる。そこでウエザストリップ本体11と装飾層17との接着力が弱い場合には、トリム部12の上面とカバーリップ13の装飾層17が固着する部分に、装飾層17の固着力を強化するための表面処理が施される。
ウエザストリップ本体11がEPDMで形成され、装飾層17がオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成される場合において、EPDMの加硫熱で装飾層17を熱溶着できる場合等には、この表面処理の工程を省略することができる。
【0043】
表面処理が施こされたウエザストリップ本体11は、押出成形機5のノズルが取付けられた押出ダイス40に送られる。ここでウエザストリップ本体11のトリム部12及び/又はカバーリップ13の上面上に車内の内装に対応した色を有する装飾層17が、後述するように、押出ダイス9によりシート状に押出される(図3参照)。
【0044】
装飾層17がトリム部12及び/又はカバーリップ13の上面上に押出されたウエザストリップ本体11は、図2に示すように、貼り合わせ機6に送られ、ローラーにより、装飾層17をウエザストリップ本体11に押し付けるとともに、装飾層17の表面に模様を形成することができる。さらに、ローラーにより、装飾層17の側部の端部をカバーリップ13の先端裏面に回り込ませて、ウエザストリップ本体11と装飾層17を圧着する。
【0045】
このとき、ウエザストリップ本体11は、加硫された後のため、温かい状態であり、また、装飾層17は押出された直後のため高温であり、上記の表面処理作用と併せて、装飾層17がウエザストリップ本体11に強固に接着される。
さらに、ウエザストリップ本体11がEPDMで形成され、装飾層17がオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されるような、同じオレフィン系の材料の場合はより強固に接着される。また、貼り合わせ機6のローラーにより、トリム部12が断面略U字形となるように折り曲げる2次曲げ加工が施される。
【0046】
装飾層17が固着されたオープニングトリムウエザストリップ10は、冷却槽7に送られ、水または冷風により冷却される。
冷却槽7から出たオープニングトリムウエザストリップ10は、引取機8により引き取られて、所定の寸法に裁断された後、ドアや車体のコーナー部等に合わせてコーナー部や端末部等が型成形されて製品となる。なお、ウエザストリップによっては両面接着テープやクリップ等が取付けられて製品となるものもある。
【0047】
次に、装飾層17を押出して、ウエザストリップ本体11に装飾層17を固着する工程について図3により説明する。
図3は、装飾層17を押出成形する工程の断面図である。
ウエザストリップ本体11のトリム部12及びカバーリップ13の上面上に装飾層17を設けるには、図3に示すように、まず押出成形機5のスクリュー5bを回転させ、装飾層17の材料を押出ダイス9に押出す。押出材料は押出ダイス9からシート状でかつ、一定の肉厚に押出される。その後、後述する、貼り合せ機6により、装飾層17に表面模様が形成されるとともに、装飾層17がウエザストリップ本体11の形状に合わせてローラーによりウエザストリップ本体11に圧着されて接着される。
このとき、貼り合せ機6のローラーで、ウエザストリップ本体11のカバーリップの先端を包み込むように装飾層17が回り込んで接着される。
【0048】
上記実施形態では、押出ダイス40から一層の装飾層17を押出す例を示したが、ウエザストリップ本体側に面する接着剤層を有する2層の装飾層17を同時押出して接着させるようにしてもよい。この場合、接着剤層としては、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができる。
また、上記の実施形態におけるプライマー塗布等の表面処理は、必須ではなく、なくてもよい。また、接着剤塗布に置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態の自動車用ウエザストリップの断面形状である。
【図2】本発明の実施の形態の自動車用ウエザストリップにおける、装飾層を押出成形する工程の模式図である。
【図3】図2における、装飾層を押出成形する押出機のヘッドと押出ダイスの部分の詳細断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の自動車用ウエザストリップの装飾層の一部を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 ウエザストリップ
11 ウエザストリップ本体
12 トリム部
13 カバーリップ
17 装飾層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層を有する長尺成形品において、上記装飾層は、4,4‘−オキシビス・ベンゼン・スルフォニルヒドラジン(以下「OBSH」という。)系発泡剤を2重量部〜10重量部と、有機酸塩を3重量部〜10重量部とを含有する熱可塑性エラストマー発泡体であることを特徴とする長尺成形品。
【請求項2】
上記熱可塑性エラストマー発泡体は押出成形により成形され、その平均発泡セル径は、100μm〜300μmである請求項1に記載の長尺成形品。
【請求項3】
上記有機酸塩は、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、及びコハク酸塩より選ばれる1種以上である請求項1又は請求項2のいずれかに記載の長尺成形品。
【請求項4】
上記有機酸塩は、クエン酸ナトリウムである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺成形品。
【請求項5】
上記装飾層のOBSH系発泡剤の含有量は4重量部〜8重量部であり、上記発泡剤の含有量が少ない時には、上記有機酸塩の含有量を多くするようにして、10重量部〜3重量部の範囲内で調整されていることを特徴とする請求項1及至請求項4のいずれかに記載の長尺成形品。
【請求項6】
上記熱可塑性エラストマー発泡体の装飾層は、自動車用ウエザストリップの装飾層であり、上記装飾層は、ウエザストリップ本体の断面略U字形のトリム部及び/又は該トリム部から延出しているカバーリップの上面に設けられ、上記ウエザストリップ本体は、エチレン、α―オレフィン、ジエン、非共役重合体(EPDM)で形成された請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の長尺成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−55687(P2008−55687A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233486(P2006−233486)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】