説明

関節駆動装置及び多軸マニピュレータ

【課題】関節駆動装置の数を関節の数と等しくすることができ、駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を各関節部で解消することができるとともに、駆動力伝達用の線状部材の交換を短時間で容易に行うことができ、利便性を高めることができるようにする。
【解決手段】所定のリンク部材と次のリンク部材とを回転可能に接続する関節軸上に配設された関節部の駆動用の線状部材から駆動力を受けて回転することによって所定のリンク部材に対して次のリンク部材を回転させる被駆動部材と、関節軸上に配設された経路長補償ユニットであって、所定のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材からの駆動力を、次のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材に伝達するとともに、他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の変化を吸収する経路長補償ユニットとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節駆動装置及び多軸マニピュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多関節マニピュレータ、すなわち、多軸マニピュレータは、産業、医療福祉、娯楽等の広い分野で利用される機械であって、多彩な姿勢と広い可動範囲とを実現するために複数の関節を有する。しかし、各関節を駆動するための駆動装置を各関節の近傍に配設すると、駆動装置の重量を各関節の近傍で支えなければならず、マニピュレータの先端での可搬重量が著しく減少するという問題がある。
【0003】
そこで、重い駆動装置をマニピュレータの土台部分に配設し、軽量で高剛性なワイヤを介して各関節を駆動する多軸マニピュレータが提案されている。これにより、マニピュレータの先端の運動性能を向上させることができるとともに、駆動装置を小型化することができる。
【0004】
しかし、ワイヤの経路をマニピュレータの内部に設定すると、マニピュレータの姿勢変化に応じてワイヤの経路長が変化するといった問題がある。これにより、ある関節の動作が他の関節の動作に干渉してしまう。
【0005】
そこで、マニピュレータの先端に取り付けられたエンドエフェクタを駆動するワイヤをマニピュレータの土台部分まで沿わせ、マニピュレータの駆動中は干渉を回避するためにクラッチ機構を備え、さらに、エンドエフェクタの駆動装置が経路長の変化量や延び量を制御する技術が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、ワイヤ駆動による関節間の干渉の効率化を実現するための経路を設定し、各ワイヤの張力を制御することによって、それぞれの駆動装置単体で複数の関節を駆動するため駆動負荷の偏在を解消し、均一化する技術が提供されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−179676号公報
【特許文献2】特開平4−300179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の多軸マニピュレータにおいては、経路長が変化するワイヤの長さを調節するために、関節の屈曲及び伸展のそれぞれに駆動装置が必要となり、関節数以上の駆動装置が必要となってしまう。
【0009】
また、ワイヤの経路が複雑かつ長距離であるので、破断又は寿命によってワイヤを交換する際に、多大な労力が必要となる。そのため、駆動装置の維持管理に多大の時間及び費用がかかってしまう。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、関節駆動装置の数を関節の数と等しくすることができ、駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を各関節部で解消することができるとともに、駆動力伝達用の線状部材の交換を短時間で容易に行うことができる利便性の高い関節駆動装置及び多軸マニピュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明の関節駆動装置においては、隣接するリンク部材同士を接続する関節部を駆動する関節駆動装置であって、所定のリンク部材と次のリンク部材とを回転可能に接続する関節軸上に配設された被駆動部材であって、当該関節部の駆動用の線状部材から駆動力を受けて回転することによって所定のリンク部材に対して次のリンク部材を回転させる被駆動部材と、前記関節軸上に配設された経路長補償ユニットであって、所定のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材からの駆動力を、次のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材に伝達するとともに、前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の変化を吸収する経路長補償ユニットとを有する。
【0012】
本発明の他の関節駆動装置においては、さらに、前記経路長補償ユニットは差動機構を備える。
【0013】
本発明の更に他の関節駆動装置においては、さらに、前記差動機構は遊星歯車機構である。
【0014】
本発明の更に他の関節駆動装置においては、さらに、前記経路長補償ユニットは前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の捩(ねじ)れを吸収する。
【0015】
本発明の多軸マニピュレータにおいては、複数のリンク部材と、隣接するリンク部材同士を接続する関節部とを有する多軸マニピュレータであって、各関節部は、所定のリンク部材と次のリンク部材とを回転可能に接続する関節軸上に配設された被駆動部材であって、当該関節部の駆動用の線状部材から駆動力を受けて回転することによって所定のリンク部材に対して次のリンク部材を回転させる被駆動部材と、前記関節軸上に配設された経路長補償ユニットであって、所定のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材からの駆動力を、次のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材に伝達するとともに、前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の変化を吸収する経路長補償ユニットとを備え、前記リンク部材のうちのマニピュレータ支持部材に固定されたリンク部材には、それぞれが各関節部を個別に駆動するための駆動源が配設されている。
【0016】
本発明の他の多軸マニピュレータにおいては、さらに、各関節部を駆動するための駆動力伝達経路は、各リンク部材に対応して配設された駆動用の線状部材を含み、相互に独立している。
【0017】
本発明の更に他の多軸マニピュレータにおいては、さらに、前記経路長補償ユニットは差動機構を備える。
【0018】
本発明の更に他の多軸マニピュレータにおいては、さらに、前記差動機構は遊星歯車機構である。
【0019】
本発明の更に他の多軸マニピュレータにおいては、さらに、前記経路長補償ユニットは前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の捩れを吸収する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、関節駆動装置においては、その数を関節の数と等しくすることができ、駆動用の線状部材の経路長の変化を各関節部で解消することができるとともに、駆動用の線状部材の交換を短時間で容易に行うことができ、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態における多軸マニピュレータの模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における第1関節部の関節駆動装置の構成を示す概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における関節部の動作を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における多軸マニピュレータの構造を示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における多軸マニピュレータのワイヤの経路を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態における第1関節部の関節駆動装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態における多軸マニピュレータの模式図である。
【0024】
図において、10は本実施の形態における多関節マニピュレータ、すなわち、多軸マニピュレータであって、例えば、溶接ロボット、組立搬送ロボット、ヒューマノイド型ロボット等の指、腕、脚等として、産業、医療福祉、娯楽等の広い分野で利用されるものであり、いかなる種類の装置においても使用することができるものである。なお、ここでは、説明の都合上、前記多軸マニピュレータ10が物品を把持して搬送する組立搬送ロボットの一部として使用される場合について説明する。
【0025】
本実施の形態において、多軸マニピュレータ10は、マニピュレータ基部である第1リンク部材としての台座11、第2リンク部材としての上腕部12、第3リンク部材としての前腕部13、及び、第4リンク部材としてのエンドエフェクタ14を有する。前記台座11は、多軸マニピュレータ10を支持する土台、装置本体等のマニピュレータ支持部材に固定された部材であり、図において左方に向けて突出する台座凸部11aを備える。
【0026】
そして、前記上腕部12は、その基部が前記台座凸部11aの先端部に第1関節部21を介して回転可能に接続されている。また、前記前腕部13は、その基部が前記上腕部12の先端部に第2関節部22を介して回転可能に接続されている。さらに、前記エンドエフェクタ14は、その基部が前記前腕部13の先端部に第3関節部23を介して回転可能に接続されている。
【0027】
また、前記エンドエフェクタ14は、その先端部から図において左方に向けて突出する一対の把持部材14aを備える。該一対の把持部材14aは、エンドエフェクタ14が備える第4関節部としての把持用駆動部24によって、相互の間隔を変更するように変位させられ、これにより、図示されない物品の把持及び把持解除を行う。なお、前記第1〜第3関節部21〜23及び把持用駆動部24を統合的に説明する場合には、関節部として説明する。また、各関節部は、関節駆動装置によって駆動される。
【0028】
そして、前記台座11と第1関節部21とは、各関節部の駆動用の線状部材、すなわち、駆動力伝達用の線状部材としての第1ワイヤ311、第2ワイヤ312、第3ワイヤ313及び第4ワイヤ314によって接続されている。また、前記第1関節部21と第2関節部22とは、駆動力伝達用の線状部材としての第2−2ワイヤ322、第2−3ワイヤ323及び第2−4ワイヤ324によって接続されている。さらに、前記第2関節部22と第3関節部23とは、駆動力伝達用の線状部材としての第3−3ワイヤ333及び第3−4ワイヤ334によって接続されている。さらに、前記第3関節部23と把持用駆動部24とは、駆動力伝達用の線状部材としての第4−4ワイヤ344によって接続されている。
【0029】
次に、前記多軸マニピュレータ10の関節部を駆動する関節駆動装置の構成について詳細に説明する。ここでは、第1関節部21を例に説明する。
【0030】
図2は本発明の第1の実施の形態における第1関節部の関節駆動装置の構成を示す概念図である。
【0031】
図において、21aは、第1関節部21の関節軸としての第1関節軸であり、次のリンク部材としての上腕部12は、第1関節軸21aを中心にして、所定のリンク部材としての台座凸部11aに対して回転する。なお、第1関節部21は、前記第1関節軸21aと平行な回転軸21bも備える。
【0032】
そして、41は、第1関節部21が備える駆動力伝達用の線状部材の経路長補償ユニットとしての第1経路長補償ユニットであり、前記第1関節軸21aと同軸上に配設され、第2ワイヤ312と第2−2ワイヤ322とが接続されている。つまり、前記第1経路長補償ユニット41は、第2ワイヤ312と第2−2ワイヤ322とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニットである。
【0033】
なお、第1関節部21は、前記第1経路長補償ユニット41に加えて、第3ワイヤ313と第2−3ワイヤ323とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニット、及び、第4ワイヤ314と第2−4ワイヤ324とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニットを備えるものであるが、第1経路長補償ユニット41以外の経路長補償ユニットについては、図示が省略されている。また、他の経路長補償ユニットについては、第1経路長補償ユニット41と同様の構成を有するので、その説明も省略することとする。なお、他の経路長補償ユニットも、第1経路長補償ユニット41と同様に、第1関節軸21aと同軸上に配設されている。つまり、第1関節部21は、第1関節軸21aと同軸上に並列に配設された3つの経路長補償ユニットを備える。
【0034】
また、台座11には、台座凸部11aに対して上腕部12を回転させるための、すなわち、第1関節部21を駆動するための第1駆動源としての第1駆動モータ15が配設されている。そして、該第1駆動モータ15の回転軸に取り付けられた駆動源側伝達部としての第1駆動モータプーリ51の外周には第1ワイヤ311の一端側の部分が巻き付けられて接続され、第1関節軸21aに取り付けられた第1関節部側伝達部としての第1関節被駆動プーリ52の外周には第1ワイヤ311の他端側の部分が巻き付けられて接続されている。なお、第1関節被駆動プーリ52は上腕部12と一体的に回転する。これにより、第1駆動モータ15の駆動力が上腕部12に伝達され、台座凸部11aに対して上腕部12を回転させることができる。
【0035】
そして、第1関節軸21aには、台座凸部11aと一体的に回転する台座側伝達部としての台座側プーリ53が回転可能に配設されている。また、回転軸21bには回転軸側伝達部としての回転軸第1プーリ54が固定されている。そして、前記台座側プーリ53と回転軸第1プーリ54とは、ワイヤ、タイミングベルト(コッグドベルト)、チェーン等の駆動力伝達用の線状部材によって、駆動力伝達可能に連結されている。
【0036】
また、第1経路長補償ユニット41は、回転軸21bに固定され、回転軸第1プーリ54と一体的に回転する回転軸側伝達部としての回転軸第2プーリ55を備える。さらに、第1経路長補償ユニット41は、差動機構として機能する遊星歯車機構を形成する遊星機構第1〜第4伝達部56〜59を備える。
【0037】
遊星機構第1伝達部56は、遊星キャリアとして機能するとともに、プーリとしても機能する部材であり、第1関節軸21aと同軸上に回転可能に配設されている。そして、遊星機構第1伝達部56と回転軸第2プーリ55とは、ワイヤ、タイミングベルト、チェーン等の駆動力伝達用の線状部材によって、駆動力伝達可能に連結されている。
【0038】
また、遊星機構第2伝達部57は、遊星歯車として機能する部材であり、複数個が、遊星機構第1伝達部56に回転可能に取り付けられている。さらに、遊星機構第3伝達部58は、太陽歯車として機能する部材であり、第1関節軸21aと同軸上に回転可能に配設され、遊星機構第2伝達部57と噛(か)み合っている。さらに、遊星機構第4伝達部59は、内歯車として機能する部材であり、第1関節軸21aと同軸上に回転可能に配設され、遊星機構第2伝達部57と噛み合っている。
【0039】
そして、61は、第2ワイヤ312からの駆動力を第2−2ワイヤ322へ伝達する第2駆動力伝達部としての第2駆動力用第1プーリであって、第1関節軸21aと同軸上に回転可能に配設され、遊星機構第2伝達部57と一体的に回転する。また、第2駆動力用第1プーリ61の外周には第2ワイヤ312が巻き付けられて接続されている。なお、第2ワイヤ312は、図示されない第2駆動モータの回転軸に取り付けられた駆動源側伝達部としての第2駆動モータプーリの外周に、巻き付けられて接続されている。これにより、第2駆動力用第1プーリ61は、第2ワイヤ312によって、第2駆動モータプーリと駆動力伝達可能に連結される。前記第2駆動モータは、上腕部12に対して前腕部13を回転させるための、すなわち、第2関節部22を駆動するための第2駆動源であり、台座11に配設されている。
【0040】
また、62は、第2ワイヤ312からの駆動力を第2−2ワイヤ322へ伝達する第2駆動力伝達部としての第2駆動力用第2プーリであって、第1関節軸21aと同軸上に回転可能に配設され、遊星機構第4伝達部59と一体的に回転する。また、第2駆動力用第2プーリ62の外周には第2−2ワイヤ322が巻き付けられて接続されている。これにより、第2ワイヤ312によって伝達された第2駆動源の駆動力は、遊星歯車機構を形成する遊星機構第1〜第4伝達部56〜59を介して、第2−2ワイヤ322へ伝達される。なお、第2−2ワイヤ322は、第2関節部22のプーリの外周に巻き付けられて接続されている。これにより、第2駆動力用第2プーリ62は、第2−2ワイヤ322によって、第2関節部22のプーリと駆動力伝達可能に連結される。
【0041】
なお、他の経路長補償ユニットも、前述のように第1経路長補償ユニット41と同様の構成を備えるので、第3ワイヤ313及び第4ワイヤ314によって伝達された第3駆動源及び第4駆動源の駆動力も、それぞれ同様に、他の経路長補償ユニットの遊星歯車機構を形成する遊星機構第1〜第4伝達部56〜59を介して、第2−3ワイヤ323及び第2−4ワイヤ324へ伝達される。
【0042】
次に、前記構成の多軸マニピュレータ10の動作について説明する。ここでは、第1関節部21での第2ワイヤ312及び第2−2ワイヤ322の動作を例に説明する。
【0043】
図3は本発明の第1の実施の形態における関節部の動作を示す図である。なお、図において、(a)は関節部が伸展している状態、(b)は関節部が屈曲している状態を示す図である。
【0044】
上腕部12に対して前腕部13を回転させるための、すなわち、第2関節部22を駆動するための駆動力は、第2駆動モータによって発生し、第2駆動モータプーリから第2ワイヤ312を介して、第2駆動力用第1プーリ61へ伝達される。そして、該第2駆動力用第1プーリ61が回転すると、該第2駆動力用第1プーリ61と一体的に遊星歯車機構の太陽歯車である遊星機構第3伝達部58が回転し、遊星歯車である遊星機構第2伝達部57を逆方向に回転させる。すると、内歯車である遊星機構第4伝達部59が回転し、該遊星機構第4伝達部59と一体的に回転する第2駆動力用第2プーリ62が前記第2駆動力用第1プーリ61と逆方向に回転する。そして、第2駆動力用第2プーリ62の駆動力が、第2−2ワイヤ322によって、第2関節部22のプーリに伝達される。
【0045】
一方、台座凸部11aに対して上腕部12を回転させるための、すなわち、第1関節部21を駆動するための駆動力は、第1駆動モータ15によって発生し、第1駆動モータプーリ51から第1ワイヤ311を介して、第1関節被駆動プーリ52へ伝達される。そして、該第1関節被駆動プーリ52が回転すると、上腕部12も一体的に、第1関節軸21aを中心として回転する。ここでは、上腕部12が、図3(a)において、矢印R0で示される方向に回転するものとする。これにより、第1関節部21は屈曲して、図3(b)に示されるような状態になる。なお、第2関節部22を駆動するための第2駆動モータは停止しているものとする。
【0046】
上腕部12が回転すると、第1関節軸21a上で、台座凸部11aの長軸と上腕部12の長軸との間に角度変化が生じる。これにより、回転軸21bに固定された回転軸第1プーリ54は、第1関節軸21a上の台座側プーリ53の周囲を弧を描くように変位する。ここで、台座側プーリ53は台座凸部11aと一体的であり、かつ、前記台座側プーリ53と回転軸第1プーリ54とは線状部材によって駆動力伝達可能に連結されているので、回転軸第1プーリ54は、図3(b)において、矢印R1で示される方向に回転する。
【0047】
すると、回転軸第2プーリ55は、回転軸21bに固定されているので、回転軸第1プーリ54と一体的に回転する。そして、該回転軸第1プーリ54と遊星機構第1伝達部56とは線状部材によって駆動力伝達可能に連結されているので、遊星機構第1伝達部56は、図3(b)において、矢印R3で示される方向に回転する。遊星歯車機構の遊星キャリアである遊星機構第1伝達部56が回転すると、遊星歯車である遊星機構第2伝達部57は、第1関節軸21aの周囲を矢印R3で示される方向に公転する。
【0048】
この場合、太陽歯車である遊星機構第3伝達部58は、第2駆動力用第1プーリ61と一体的であり、かつ、該第2駆動力用第1プーリ61が第2ワイヤ312を介して第2駆動モータプーリに連結されて拘束されているので、回転しない。そのため、遊星機構第2伝達部57の矢印R3で示される方向への公転と、上腕部12の矢印R0で示される方向への回転との差分として、図3(b)において、矢印R2で示される方向の回転が内歯車である遊星機構第4伝達部59に生じる。すると、該遊星機構第4伝達部59と一体的に回転する第2駆動力用第2プーリ62にも、矢印R2で示される方向の回転が生じる。
【0049】
このように、本実施の形態においては、第2関節部22を駆動するための第2駆動モータの駆動力は、第2ワイヤ312から、遊星歯車機構を備える第1経路長補償ユニット41を介して、第2−2ワイヤ322に伝達される。
【0050】
ここで、第2駆動力用第1プーリ61のピッチ円半径、すなわち、回転半径をZ61とし、第2駆動力用第2プーリ62の回転半径をZ62とし、遊星歯車機構の太陽歯車である遊星機構第3伝達部58の回転半径をZ58とし、内歯車である遊星機構第4伝達部59の回転半径をZ59とすると、第2ワイヤ312から第1関節部21に入力される引張量Iin2と、第1関節部21から第2−2ワイヤ322に出力される引張量Iout2との関係は、次の式(1)で表される。
【0051】
Iout2=−Iin2*Z62*Z58/(Z61*Z59) ・・・式(1)
そして、第2関節部22を駆動するための駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を第1関節部21で解消するためには、第2駆動モータが駆動することによって第2ワイヤ312が引っ張られる量と、第2ワイヤ312が引っ張られることによって、第1経路長補償ユニット41を介して、第2−2ワイヤ322が引っ張られる量とを等しくする必要がある。つまり、Iout2=−Iin2という関係を満足する必要がある。そのためには、前記式(1)から、各伝達部の回転半径が次の式(2)を満足する必要がある。
【0052】
Z62*Z58/(Z61*Z59)=1 ・・・式(2)
例えば、第2駆動力用第1プーリ61の回転半径Z61と第2駆動力用第2プーリ62の回転半径Z62との比をZ61:Z62=1:2とし、太陽歯車である遊星機構第3伝達部58の回転半径Z58と、内歯車である遊星機構第4伝達部59の回転半径Z59との比をZ58:Z59=1:2とする必要がある。
【0053】
また、第1関節部21が屈曲して、台座凸部11aの長軸と上腕部12の長軸との間の角度がQ1になる場合、台座凸部11aの長軸に対する遊星機構第4伝達部59の角度変化をQ59とし、台座側プーリ53のピッチ円半径、すなわち、回転半径をZ53とし、回転軸第1プーリ54の回転半径をZ54とし、回転軸第2プーリ55の回転半径をZ55とし、遊星機構第1伝達部56の回転半径をZ56とすると、台座凸部11aの長軸に対する上腕部12の長軸の角度変化Q1と台座凸部11aの長軸に対する遊星機構第4伝達部59の角度変化Q59との関係は、次の式(3)で表される。
【0054】
Q59
=Q1*(1−Z53*Z55/(Z54*Z56))*(Z58+Z59)/Z59
・・・式(3)
そして、第2関節部22を駆動するための駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を第1関節部21で解消するためには、外周に第2−2ワイヤ322が巻き付けられて接続されている第2駆動力用第2プーリ62の角度変化と、台座凸部11aの長軸に対する上腕部12の長軸の角度変化Q1とを等しくする必要がある。すなわち、第2駆動力用第2プーリ62と一体的に回転する遊星機構第4伝達部59の台座凸部11aの長軸に対する角度変化Q59と、上腕部12の長軸の台座凸部11aの長軸に対する角度変化Q1とを等しくする必要がある。そのためには、前記式(3)から、各伝達部の回転半径が次の式(4)を満足する必要がある。
【0055】
(1−Z53*Z55/(Z54*Z56))*(Z58+Z59)/Z59=1
・・・式(4)
例えば、台座側プーリ53の回転半径Z53と遊星機構第1伝達部56の回転半径Z56との比をZ53:Z56=1:3とし、太陽歯車である遊星機構第3伝達部58の回転半径Z58と、内歯車である遊星機構第4伝達部59の回転半径Z59との比をZ58:Z59=1:2とし、回転軸第1プーリ54の回転半径Z54と回転軸第2プーリ55の回転半径Z55との比をZ54:Z55=1:1とする必要がある。
【0056】
このように、本実施の形態においては、前記式(2)及び(4)をともに満足するように各伝達部の回転半径を設定することによって、第2関節部22を駆動するための駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を第1関節部21で吸収して解消することができる。すなわち、第1関節部21が屈曲して、台座凸部11aの長軸と上腕部12の長軸との間の角度が変化しても、第2駆動モータが駆動することによって第2ワイヤ312が引っ張られる量と、第2ワイヤ312が引っ張られることによって、第1経路長補償ユニット41を介して、第2−2ワイヤ322が引っ張られる量とが等しくなる。
【0057】
同様にして、第3関節部23及び把持用駆動部24を駆動するための駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を第1関節部21で吸収して解消することができる。さらに、同様にして、第3関節部23及び把持用駆動部24を駆動するための駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を第2関節部22で吸収して解消することができる。さらに、同様にして、把持用駆動部24を駆動するための駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を第3関節部23で吸収して解消することができる。
【0058】
「背景技術」の項で説明したような従来の多軸マニピュレータにおいては、関節の角度変化によって、関節を経由して拮(きっ)抗するワイヤの経路長が変化し、一方のワイヤが弛(ゆる)み、他方のワイヤが突っ張るようになる。そして、このようなワイヤの弛みや突っ張りを防止するために、各ワイヤの終端を巻き取る機構が必要となる。
【0059】
これに対して、本実施の形態においては、関節部における各伝達部の回転半径を適切に設定することによって駆動力伝達用の線状部材の経路長の変化を吸収して解消することができる。したがって、各線状部材の終端を巻き取る機構が不要である。その結果、線状部材の経路長の変化を考慮する必要がなく、関節数以上の余分な駆動装置を配設する必要もない。
【0060】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0061】
図4は本発明の第2の実施の形態における多軸マニピュレータの構造を示す模式図、図5は本発明の第2の実施の形態における多軸マニピュレータのワイヤの経路を示す図である。
【0062】
図4に示されるように、第1関節部21には、第2ワイヤ312と第2−2ワイヤ322とから成る組の経路長を補償するための第1経路長補償ユニット41に加えて、第3ワイヤ313と第2−3ワイヤ323とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニット、及び、第4ワイヤ314と第2−4ワイヤ324とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニットが配設されている。つまり、第1関節部21は、第1関節軸21aと同軸上に並列に配設された3つの経路長補償ユニットを備える。
【0063】
また、第2関節部22には、第2−3ワイヤ323と第3−3ワイヤ333とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニット、及び、第2−4ワイヤ324と第3−4ワイヤ334とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニットが配設されている。つまり、第2関節部22は、その関節軸と同軸上に並列に配設された2つの経路長補償ユニットを備える。
【0064】
さらに、第3関節部23には、第3−4ワイヤ334と第4−4ワイヤ344とから成る組の経路長を補償するための経路長補償ユニットが配設されている。つまり、第3関節部23は、その関節軸と同軸上に配設された1つの経路長補償ユニットを備える。
【0065】
そして、図5には、各ワイヤの経路が示されている。なお、第1ワイヤ311の図5に示されない両下端は、前記第1の実施の形態において説明したように、台座11に配設された第1関節部21を駆動するための第1駆動源としての第1駆動モータ15の回転軸に取り付けられた駆動源側伝達部としての第1駆動モータプーリ51の外周に巻き付けられて接続されている。
【0066】
同様に、第2ワイヤ312、第3ワイヤ313及び第4ワイヤ314の両下端は、台座11に配設された第2関節部22、第3関節部23及び把持用駆動部24を駆動するための第2〜4駆動源の回転軸に取り付けられた駆動源側伝達部の外周に、それぞれ、巻き付けられて接続されている。
【0067】
また、第2−2ワイヤ322、第2−3ワイヤ323、第2−4ワイヤ324、第3−3ワイヤ333、第3−4ワイヤ334及び第4−4ワイヤ344は、それぞれ、独立した環状の線状部材である。すなわち、駆動力伝達用の線状部材は、各リンク部材に対応して分割されている。
【0068】
次に、本実施の形態における多軸マニピュレータ10の動作について説明する。
【0069】
まず、第1関節部21を駆動するための第1駆動源としての第1駆動モータ15が作動すると、第1ワイヤ311が作動し、第1関節部21が屈曲又は伸展して台座凸部11aに対して上腕部12が回転する。
【0070】
この場合、前記第1の実施の形態において説明したように、第1経路長補償ユニット41によって、第2ワイヤ312と第2−2ワイヤ322とから成る組の経路長は変化しない。同様に、第1関節部21に配設された他の経路長補償ユニットによって、第3ワイヤ313と第2−3ワイヤ323とから成る組の経路長、及び、第4ワイヤ314と第2−4ワイヤ324とから成る組の経路長は変化しない。
【0071】
そして、第2関節部22を駆動するための第2駆動源が作動すると、第2ワイヤ312が作動し、続いて、第1関節部21に配設された経路長補償ユニットを介して第2ワイヤ312に接続された第2−2ワイヤ322が作動し、第2関節部22が屈曲又は伸展して上腕部12に対して前腕部13が回転する。
【0072】
この場合、第2関節部22に配設された経路長補償ユニットによって、第2−3ワイヤ323と第3−3ワイヤ333とから成る組の経路長、及び、第2−4ワイヤ324と第3−4ワイヤ334とから成る組の経路長は変化しない。
【0073】
また、第3関節部23を駆動するための第3駆動源が作動すると、第3ワイヤ313が作動し、続いて、第1関節部21に配設された経路長補償ユニットを介して第3ワイヤ313に接続された第2−3ワイヤ323が作動し、第2関節部22に配設された経路長補償ユニットを介して第2−3ワイヤ323に接続された第3−3ワイヤ333が作動し、第3関節部23が屈曲又は伸展して上腕部12に対してエンドエフェクタ14が回転する。
【0074】
この場合、第3関節部23に配設された経路長補償ユニットにより、第3−4ワイヤ334と第4−4ワイヤ344とから成る組の経路長は変化しない。
【0075】
さらに、把持用駆動部24を駆動するための第4駆動源が作動すると、第4ワイヤ314が作動し、続いて、第1関節部21に配設された経路長補償ユニットを介して第4ワイヤ314に接続された第2−4ワイヤ324が作動し、第2関節部22に配設された経路長補償ユニットを介して第2−4ワイヤ324に接続された第3−4ワイヤ334が作動し、第3関節部23に配設された経路長補償ユニットを介して第3−4ワイヤ334に接続された第4−4ワイヤ344が作動し、把持用駆動部24が駆動され、一対の把持部材14aが相互の間隔を変更するように変位して物品の把持及び把持解除を行う。
【0076】
このように、本実施の形態においては、台座11に配設された第1〜第4駆動源が発生する駆動力をエンドエフェクタ14まで伝達して、第1〜第3関節部21〜23及び把持用駆動部24を作動させることができる。そして、駆動力伝達用の線状部材は、各リンク部材に対応して分割されている。
【0077】
したがって、線状部材の点検、交換等の保守管理作業の際には、多軸マニピュレータ10全体を分解することなく、対象となる線状部材の保守管理作業を行うことができるので、保守管理の労力及び作業時間を低減することができ、多軸マニピュレータ10の維持コストを低減することができる。
【0078】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0079】
図6は本発明の第3の実施の形態における第1関節部の関節駆動装置の構成を示す概念図である。
【0080】
本実施の形態における多軸マニピュレータ10の関節部の関節軸は、前記第1の実施の形態における多軸マニピュレータ10の関節部の関節軸に対して、直交する方向に延在する。図において、42は、本実施の形態における第1関節部21が備える駆動力伝達用の線状部材の経路長補償ユニットとしての第1経路捩れ解消ユニットであり、第1関節軸21aと同軸上に配設され、第2ワイヤ312と第2−2ワイヤ322とが接続されている。図に示されるように、本実施の形態における第1関節軸21aは、中空構造を有するとともに、前記第1の実施の形態における第1関節軸21aに対して、直交する方向に延在する。なお、本実施の形態における回転軸21bは第1関節軸21aと平行であり、したがって、前記第1の実施の形態における回転軸21bに対して、直交する方向に延在する。
【0081】
また、本実施の形態においては、第1関節軸21aの向きが変更されたことに伴い、第1関節部21に経路変換機構としての経路変換第1プーリ71が配設され、第1駆動モータプーリ51からの第1ワイヤ311は、前記経路変換第1プーリ71によって経路の方向が変換され、第1関節軸21aに取り付けられた第1関節被駆動プーリ52に巻き付けられて接続される。
【0082】
さらに、第1関節部21に経路変換機構としての経路変換第2プーリ72及び経路変換第3プーリ73が配設されている。そして、第2ワイヤ312は、中空の第1関節軸21aの一端から第1関節軸21aの内部に進入し、経路変換第2プーリ72によって経路の方向が変換され、第1関節軸21aの側面に穿(せん)設された引出孔(こう)を通過し、経路変換第3プーリ73によって再度経路の方向が変換され、第2駆動力用第1プーリ61の外周に巻き付けられて接続される。
【0083】
さらに、第1関節部21に経路変換機構としての経路変換第4プーリ74が配設されている。そして、第2駆動力用第2プーリ62からの第2−2ワイヤ322は、前記経路変換第4プーリ74によって経路の方向が変換され、第2関節部22のプーリに連結される。
【0084】
なお、その他の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0085】
次に、本実施の形態における多軸マニピュレータ10の動作について説明する。ここでは、第1関節部21での第2ワイヤ312及び第2−2ワイヤ322の動作を例に説明する。
【0086】
上腕部12に対して前腕部13を回転させるための、すなわち、第2関節部22を駆動するための駆動力は、第2駆動モータによって発生し、第2駆動モータプーリから第2ワイヤ312を介して、第2駆動力用第1プーリ61へ伝達される。この場合、第2ワイヤ312は、第1関節軸21aの内部を通り、経路変換第2プーリ72及び経路変換第3プーリ73によって経路の方向が変換されている。
【0087】
そして、前記第2駆動力用第1プーリ61が回転すると、該第2駆動力用第1プーリ61と一体的に遊星歯車機構の太陽歯車である遊星機構第3伝達部58が回転し、遊星歯車である遊星機構第2伝達部57を逆方向に回転させる。
【0088】
すると、内歯車である遊星機構第4伝達部59が回転し、該遊星機構第4伝達部59と一体的に回転する第2駆動力用第2プーリ62が前記第2駆動力用第1プーリ61と逆方向に回転する。そして、第2駆動力用第2プーリ62の駆動力が、第2−2ワイヤ322によって、第2関節部22のプーリに伝達される。この場合、第2−2ワイヤ322は、経路変換第4プーリ74によって経路の方向が変換されている。
【0089】
一方、台座凸部11aに対して上腕部12を回転させるための、すなわち、第1関節部21を駆動するための駆動力は、第1駆動モータ15によって発生し、第1駆動モータプーリ51から第1ワイヤ311を介して、第1関節被駆動プーリ52へ伝達される。この場合、第1ワイヤ311は、経路変換第1プーリ71によって経路の方向が変換されている。
【0090】
上腕部12が回転すると、第1関節軸21a上で、台座凸部11aと上腕部12との間に角度変化が生じる。これにより、回転軸21bに固定された回転軸第1プーリ54は、第1関節軸21a上の台座側プーリ53の周囲を弧を描くように変位する。ここで、台座側プーリ53は台座凸部11aと一体的であり、かつ、前記台座側プーリ53と回転軸第1プーリ54とは線状部材によって駆動力伝達可能に連結されているので、回転軸第1プーリ54は回転する。
【0091】
すると、回転軸第2プーリ55は、回転軸21bに固定されているので、回転軸第1プーリ54と一体的に回転する。そして、該回転軸第1プーリ54と遊星機構第1伝達部56とは線状部材によって駆動力伝達可能に連結されているので、遊星機構第1伝達部56は回転する。遊星歯車機構の遊星キャリアである遊星機構第1伝達部56が回転すると、遊星歯車である遊星機構第2伝達部57は、第1関節軸21aの周囲を公転する。
【0092】
この場合、太陽歯車である遊星機構第3伝達部58は、第2駆動力用第1プーリ61と一体的であり、かつ、該第2駆動力用第1プーリ61が第2ワイヤ312を介して第2駆動モータプーリに連結されて拘束されているので、回転しない。そのため、遊星機構第2伝達部57の公転と、上腕部12の回転との差分として、回転が内歯車である遊星機構第4伝達部59に生じる。すると、該遊星機構第4伝達部59と一体的に回転する第2駆動力用第2プーリ62にも回転が生じる。
【0093】
このように、本実施の形態において、第2ワイヤ312、経路変換第2プーリ72、経路変換第3プーリ73及び第1関節軸21aは、台座凸部11aと一体的になっているので、上腕部12の台座凸部11aに対する回転によっても位置変化が生じることがない。また、第2−2ワイヤ322及び経路変換第4プーリ74は、遊星機構第4伝達部59及び第2駆動力用第2プーリ62と一体的になっているので、前記第1の実施の形態において説明した式(2)及び(4)をともに満足するように各伝達部の回転半径が設定されていれば、上腕部12とともに回転する。
【0094】
したがって、第2ワイヤ312及び第2−2ワイヤ322は、上腕部12が台座凸部11aに対して回転しても捩れることがなく、第2ワイヤ312から第1関節部21に入力される引張量Iin2と、第1関節部21から第2−2ワイヤ322に出力される引張量Iout2とが等しくなる。
【0095】
なお、前記第1〜第3の実施の形態においては、駆動力伝達用の線状部材としてワイヤを使用した例について説明したが、タイミングベルト、ゴムベルト、チェーン等を使用することもできる。
【0096】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、関節駆動装置及び多軸マニピュレータに適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10 多軸マニピュレータ
11 台座
11a 台座凸部
12 上腕部
13 前腕部
14 エンドエフェクタ
15 第1駆動モータ
21 第1関節部
21a 第1関節軸
22 第2関節部
23 第3関節部
24 把持用駆動部
41 第1経路長補償ユニット
42 第1経路捩れ解消ユニット
56 遊星機構第1伝達部
57 遊星機構第2伝達部
58 遊星機構第3伝達部
59 遊星機構第4伝達部
311 第1ワイヤ
312 第2ワイヤ
313 第3ワイヤ
314 第4ワイヤ
322 第2−2ワイヤ
323 第2−3ワイヤ
324 第2−4ワイヤ
333 第3−3ワイヤ
334 第3−4ワイヤ
344 第4−4ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)隣接するリンク部材同士を接続する関節部を駆動する関節駆動装置であって、
(b)所定のリンク部材と次のリンク部材とを回転可能に接続する関節軸上に配設された被駆動部材であって、当該関節部の駆動用の線状部材から駆動力を受けて回転することによって所定のリンク部材に対して次のリンク部材を回転させる被駆動部材と、
(c)前記関節軸上に配設された経路長補償ユニットであって、所定のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材からの駆動力を、次のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材に伝達するとともに、前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の変化を吸収する経路長補償ユニットとを有することを特徴とする関節駆動装置。
【請求項2】
前記経路長補償ユニットは差動機構を備える請求項1に記載の関節駆動装置。
【請求項3】
前記差動機構は遊星歯車機構である請求項2に記載の関節駆動装置。
【請求項4】
前記経路長補償ユニットは前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の捩れを吸収する請求項1〜3のいずれか1項に記載の関節駆動装置。
【請求項5】
(a)複数のリンク部材と、隣接するリンク部材同士を接続する関節部とを有する多軸マニピュレータであって、
(b)各関節部は、
(b−1)所定のリンク部材と次のリンク部材とを回転可能に接続する関節軸上に配設された被駆動部材であって、当該関節部の駆動用の線状部材から駆動力を受けて回転することによって所定のリンク部材に対して次のリンク部材を回転させる被駆動部材と、
(b−2)前記関節軸上に配設された経路長補償ユニットであって、所定のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材からの駆動力を、次のリンク部材に対応して配設された他の関節部の駆動用の線状部材に伝達するとともに、前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の変化を吸収する経路長補償ユニットとを備え、
(c)前記リンク部材のうちのマニピュレータ支持部材に固定されたリンク部材には、それぞれが各関節部を個別に駆動するための駆動源が配設されていることを特徴とする多軸マニピュレータ。
【請求項6】
各関節部を駆動するための駆動力伝達経路は、各リンク部材に対応して配設された駆動用の線状部材を含み、相互に独立している請求項5に記載の多軸マニピュレータ。
【請求項7】
前記経路長補償ユニットは差動機構を備える請求項5又は6に記載の多軸マニピュレータ。
【請求項8】
前記差動機構は遊星歯車機構である請求項7に記載の多軸マニピュレータ。
【請求項9】
前記経路長補償ユニットは前記他の関節部の駆動用の線状部材の経路長の捩れを吸収する請求項5〜8のいずれか1項に記載の多軸マニピュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218500(P2011−218500A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91237(P2010−91237)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】