説明

防振装置、及び、防振装置用ブラケット

【課題】製造コスト及び部品点数の増加を抑制することの可能な防振装置用のブラケット、及び、この防振装置用ブラケットを備えた防振装置を提供する。
【解決手段】防振装置用ブラケット40は、防振装置本体12の外側取付部材16を挟んで両側に一対設けられ、車体に固定される取付板部42Aと、取付板部42Aと一体的に連続され板面に沿った方向が外側取付部材16の外面と交わるように配置された第1翼部42B、第2翼部42Cとを有し、第1翼部42B、第2翼部42Cと一体的に連続され外側取付部材16の側面に沿って配置される側面保持部44と、側面保持部44と一体的に連続され側面保持部から主振動入力方向へ突出し、外側取付部材16と側面保持部44との主振動入力方向での相対移動を阻止する阻止部45と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業機械、自動車のエンジンマウント等として用いられ、エンジン等の振動発生部からの振動を吸収して車体等の振動受部への振動伝達を抑制する防振装置、及び、この防振装置に用いられる防振装置用ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の振動発生部であるエンジンと振動受部である車体との間にはエンジンマウントとしての防振装置が配設されており、この防振装置はエンジンが発生する振動を吸収し、車体側への振動伝達を抑制する。このような防振装置としては、例えば、防振装置の内部に弾性体及び一対の液室を設けると共に、オリフィスとなる制限通路でこれらの液室を互いに連通した液体封入式のものが知られている。液体封入式の防振装置によれば、搭載されたエンジンが作動して振動が発生した場合には、弾性体の制振機能及び、一対の液室間を連通するオリフィス内の液体の粘性抵抗等で振動を吸収し、車体側への振動伝達を抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の防振装置には、防振基体3を保持する下側取付金具1が開示されている。下側取付部材1は、鋼板などの金属材が一体に絞り加工されて、防振基体3を保持する保持筒11と、車体側に連結される支持部12と、かしめ固定部14が形成されている。しかしながら、このように絞り加工を行うと、製造コストが高くなってしまう。
【0004】
また、特許文献2には、絞り加工ではなく、板材を折り曲げて脚部材と保持部材とを別々に構成し、防振装置本体を支持する構成が開示されている。しかしながら、脚部材と保持部材とが別部材であり、部品点数が多くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−280404
【特許文献2】特開2010−65749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記事実を考慮して成されたものであり、製造コスト及び部品点数の増加を抑制することの可能な防振装置用のブラケット、及び、この防振装置用ブラケットを備えた防振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る防振装置用ブラケットは、振動発生部及び振動受部の一方に連結される外側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される内側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体、を有する防振装置本体を支持する防振装置用ブラケットであって、板状とされ、前記防振装置本体の外側取付部材を挟んで両側に一対設けられ、振動発生部及び振動受部の一方に固定される取付板部と、前記取付板部と一体的に連続され板面に沿った方向が前記外側取付部材の外面と交わるように配置された翼部と、を有する脚部と、前記翼部と一体的に連続され前記外側取付部材の側面に沿って配置され前記防振装置本体を保持する側面保持部と、前記側面保持部と一体的に連続され前記側面保持部から主振動入力方向へ突出し、前記外側取付部材と前記側面保持部との主振動入力方向での相対移動を阻止する阻止部と、を備えている。
【0008】
上記構成の防振装置用ブラケットでは、振動発生部及び振動受部の一方に固定される取付板部と一体的に連続される翼部は、板面が外側取付部材の外面と交わるように配置されている。したがって、板面が防振装置本体の外側取付部材に沿って配置されている場合のように、脚部の板面を外側取付部材の外周に沿った形状に加工することなく、外側取付部材または外側取付部材が固定される部材に、突き合わせ等により脚部を固定することができる。
【0009】
また、脚部の翼部と一体的に連続された側面保持部で外側取付部材を保持し、側面保持部と一体的に連続された阻止部で外側取付部材と側面保持部との主振動入力方向での相対移動を阻止することにより、防振装置本体を別部材で保持する必要がなく、部品点数を少なくすることができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る防振装置用ブラケットは、前記脚部、前記保持部、及び、前記阻止部が、一枚の板材で構成されていること、を特徴とする。
【0011】
前記脚部、前記側面保持部、及び、前記阻止部は、溶接などにより一体的に構成することもできるが、このように、一枚の板材で構成することにより、製造時における部品点数を少なくすることができる。
【0012】
本発明の請求項3に係る防振装置用ブラケットは、前記脚部に固定され、前記側面保持部を挟んで前記阻止部と対向する位置に配置され、前記阻止部との間で前記外側取付部材を挟持する挟持部を備えている。
【0013】
このように、挟持部を備えることにより、阻止部と挟持部との間で外側取付部材を挟んで、外側取付部材と側面保持部との主振動入力方向での相対移動を阻止することができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る防振装置用ブラケットは、前記挟持部は、前記防振装置本体の主振動入力方向のストッパ部材で構成されていること、を特徴とする。
【0015】
このように、ストッパ部材が挟持部を兼ねる構成することができる。
【0016】
本発明の請求項5に係る防振装置用ブラケットは、前記側面保持部は板面が前記外側取付部材の外周面に沿って配置されていること、を特徴とする。
【0017】
このように、側面保持部の板面を外側取付部材の外周面に沿って配置することにより、板材の曲げにより容易に側面保持部を脚部と一体的に構成することができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る防振装置用ブラケットは、前記ストッパ部材が筒状とされ、前記主振動入力方向と筒軸が直交する方向に配置されていること、を特徴とする。
【0019】
このようにストッパ部材を筒状として主振動入力方向と筒軸が直交する方向に配置されることにより、簡単にストッパアームと対向するバウンド面及びリバウンド面を構成することができる。
【0020】
本発明の請求項7に係る防振装置は、前記防振装置用ブラケットに固定された外側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される内側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体と、前記内側取付部材に固定され前記外側取付部材の径方向に沿って延出されるストッパアームと、を備えている。
【0021】
上記構成の防振装置によれば、請求項1〜請求項6のいずれかの防振装置用ブラケットを用いることにより、製造コスト、部品点数を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、製造コスト、部品点数を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る防振装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る防振装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケット、防振装置本体、及びストッパ筒の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る防振装置の正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケットでの保持状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態の防振装置用ブラケットの、(A)は展開図であり、(B)は側面図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例に係る防振装置の正面図である。
【図8】本発明の実施形態の他の変形例に係る防振装置の正面図である。
【図9】本発明の実施形態の変形例に係る防振装置用ブラケットの、(A)は展開図であり、(B)は側面図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例に係る防振装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケット40、及び、防振装置10について図面を参照して説明する。
【0025】
図1には本発明の実施形態に係る防振装置10が示されている。この防振装置10は、自動車における振動発生部であるエンジンを振動受部である車体へ支持するエンジンマウントとして適用されるものである。なお、図中の符号Sは装置の軸心を示し、この軸心に沿った方向を装置の軸方向Sとし、図の上下方向を防振装置10の上下方向として以下の説明を行う。防振を目的とする主たる振動(主振動)は、軸方向Sに入力される。
【0026】
本実施形態の防振装置10は、図2に示されるように、防振装置本体12、ストッパ筒60及び、防振装置用ブラケット40を備えている。
【0027】
防振装置本体12は、内側取付部材14、外側取付部材16、及び、弾性体18を備えている。
【0028】
図3に示すように、内側取付部材14は、下側が小径となる略円錐台形とされ、上側中央(大径側中央)に、連結ねじ穴14Aが構成されている。連結ねじ穴14Aには、後述するストッパアーム56との連結用ボルト58を螺合するための雌ネジが形成されている。内側取付部材14は、外側取付部材16よりも小径とされている。
【0029】
外側取付部材16は、略円筒形状とされ、軸方向Sでみて内側取付部材14と同軸的に内側取付部材14の径方向外側に配置されている。内側取付部材14は、外側取付部材16に対して軸方向Sの外側に突出するように配置されている。内側取付部材14及び外側取付部材16の軸心は、軸方向Sに沿って配置されている。外側取付部材16の中間部には、段部16Bが構成されている。外側取付部材16は、段部12Bを挟んで、上側が弾性体連結部16Aとされ、下側が弾性体連結部16Aよりも小径の仕切挟持部16Cとされている。仕切挟持部16Cの下端部には、径方向内側に加締められた加締め部16Dが形成されている。外側取付部材16は、防振装置用ブラケット40を介して、車体に連結される。
【0030】
内側取付部材14と外側取付部材16との間には、吸振主体となるゴム製の弾性体18が配置されている。弾性体18は、内側取付部材14の外面に加硫接着されると共に、外側取付部材16の弾性体連結部16A及び段部16Bに加硫接着されており、内側取付部材14と外側取付部材16とを弾性的に連結している。
【0031】
弾性体18には、外側取付部材16内側で内側取付部材14の軸方向Sの外側側に、凹部18Aが構成されている。また、弾性体18には、その下端部から下方へ延出する薄膜状の被覆部18Dが一体的に形成されている。この被覆部18Dは、外側取付部材16の仕切挟持部16Cの内周面に加硫接着されて外側取付部材16の内壁を覆っている。被覆部18Dの段部16Bに対応する部分の下側には、段部16Eが構成されている。この段部16Eには、後述する仕切部材20のフランジ部24が当接される。
【0032】
被覆部18Dの内周側には、仕切部材20及び制限通路部材30が配置されている。仕切部材20及び制限通路部材30は、仕切挟持部16C、及び、加締め部16Dが、径方向内側に加締められて固定されている。仕切部材20は、フランジ付円筒形状とされ、筒部22、フランジ部24、及び、可動弾性膜28を備えている。
【0033】
筒部22は円筒状とされ、筒部22の上端部には、径方向外側に延出するようにフランジ部24が構成されている。フランジ部24の外周端が段部16Eに当接され、軸方向Sの位置決めがなされている。フランジ部24には、後述する主液室38と制限通路26を連通させる連通穴(不図示)が構成されている。
【0034】
筒部22の径方向内側には、可動弾性膜28が配置されている。可動弾性膜28は、円板状で、弾性変形可能とされている。可動弾性膜28は、筒部22内を上下方向に仕切るように筒部22の内壁に接着されている。可動弾性膜28は、ゴム、樹脂などの弾性変形可能な膜で構成されている。
【0035】
弾性体18の下面の凹部18Aと仕切部材20の上面とで囲まれた内側には、主液室38が構成されている。主液室38には、液体が封入されている。液体としては、水、オイル、エチレングリコール等を用いることができる。
【0036】
制限通路部材30は、環状とされており、通路外筒部32、底部34、及び、通路内筒部36を備えている。
【0037】
通路外筒部32は、外径が仕切挟持部16Cよりもやや小径とされた円筒形状とされ、仕切挟持部16Cの内周側に配置されている。通路外筒部32は、仕切部材20の筒部22の外周面と対向して離間配置され、仕切挟持部16Cの内周面に被覆部18Dを介して圧接されている。
【0038】
底部34は、通路外筒部32の下端部から径方向内側に屈曲されて形成され、仕切部材20の筒部22の外周側でフランジ部24と対向して離間配置されている。また、底部34は、軸方向Sにおいて筒部22の内側、すなわち径方向からみたときに筒部22と重なり合うように配置されている。
【0039】
通路内筒部36は、底部34の内端部から下方向へ屈曲されて形成され、仕切部材20の筒部22に沿って配置されている。通路内筒部36の下端部は、第2取付部材12の下端部よりも下側に突出されている。
【0040】
通路外筒部32の内周面及び底部34の上面と、フランジ部24の下面及び筒部22の外周面に囲まれて、主液室38と後述する副液室39とを連通させる制限通路26が構成される。
【0041】
制限通路部材30の周方向の一部には、通路内筒部36の周方向一部と底部34の周方向一部を切り欠いて構成された連通口30Aが構成されている。なお、底部34を切り欠いた部分については、径方向外側にかしめ用の補強部34Aが残されている。制限通路部材30には、下側の開口を覆うように弾性膜状のダイヤフラム50が加硫接着されている。制限通路部材30には、底部34の径方向内側と通路内筒部36の内周面を覆うように、シール部56がダイヤフラム50と一体的に加硫形成されている。シール部56により、ダイヤフラム50は、その外周が制限通路部材30と接着されている。また、シール部56と一体的に形成され、底部34の内側、通路外筒部32の内側を覆う内膜部58が形成されている。
【0042】
ダイヤフラム50は、筒壁部52及び可動底部54を備えている。筒壁部52は、略円筒形状とされ、上部端がシール部56として、制限通路部材30の底部34の内周側と接着されている。筒壁部52の連通口30Aに対応する部分は、径方向外側へ凸形状とされ、底部34の外周側に接着されている。これにより、筒部22の外周とダイヤフラム50の間に、後述する副液室39と連通する連通路50Rが構成される。
【0043】
可動底部54は、椀形状とされ、外周が筒壁部52と連続されると共に、振動入力のない状態では、椀の底部が上側に向くように形成されている。可動底部54は、筒壁部52と一体的に構成されている。
【0044】
ダイヤフラム50と仕切部材20の下面に囲まれた内側には、副液室39が構成されている。副液室39は、連通口30A、制限通路26、連通穴24Aを介して主液室38と連通されている。連通口30Aの下方で凸形状とされているダイヤフラム50は、他の部分よりも、厚みが厚い構成とされている。以下、ダイヤフラム50の当該部分を「連通凸部50A」という。副液室39内についても、主液室38と同様に、液体が封入されている。
【0045】
仕切部材20は、フランジ部24と逆側がダイヤフラム50側となるように、また、連通口30Aと連通穴24Aとが周方向に重なり合わず、ずれるようにして、制限通路部材30の中空部にシール部56を介して圧入されている。シール部56により、仕切部材20の筒部22と制限通路部材30の通路内筒部36との間が密着されている。
【0046】
図1、2、4に示されるように、ストッパ筒60は、四角筒形状とされ、筒軸方向は、軸方向Sと直交する方向に配置される。ストッパ筒60の一対の互いに向かい合う面には、互いに同軸的にボルト穴62A及び本体穴62Bが構成されている。ボルト穴62Aは、後述するボルトBを挿通可能な径とされ、本体穴62Bは、防振装置本体12の外側取付部材16の外径よりもわずかに小径とされ、外側取付部材16の上端面が当接されるように構成されている。ボルト穴62Aの構成された面がリバウンドストッパ面65とされ、本体穴62Bが構成された面がバウンドストッパ面63とされる。バウンドストッパ面63は、本体穴62Bの構成された面の一端辺が、ストッパ筒60の他の3面の筒端よりも外側へ突出されている。ストッパ筒60は、一枚の金属板材を曲げ加工で角筒形状に形成し両端面同士を突き合わせて溶接することにより、構成することができる。本実施形態では、突合部62Cで突き合わせられている。ストッパ筒60を曲げ加工で製造することにより、絞り加工で製造する場合と比較して、製造工程が少なくなり、低コストで製造することができる。
【0047】
図1、3、4に示されるように、防振装置用ブラケット40は、一対のブラケット部材42、46を備えている。
【0048】
一対のブラケット部材42、46は、防振装置本体12を挟んで、互いに対向する位置に配置されている。ブラケット部材42、46は、各々、一枚の金属板を曲げ加工して形成されており、取付板部42A、46A、第1翼部42B、46B、第2翼部42C、46C、側面保持部44B、44C(これらをまとめて「側面保持部44」という)、側面保持部48B、48Cこれらをまとめて「側面保持部48」という)、及び、阻止部45B、45C(これらをまとめて「阻止部45」という)、阻止部47B、47C(これらをまとめて「阻止部47」という)を備えている。ブラケット部材42、46についても、曲げ加工で製造することにより、絞り加工で製造する場合と比較して、製造工程が少なくなり、低コストで製造することができる。
【0049】
ブラケット部材42の取付板部42Aは、防振装置本体12の外側取付部材16の軸方向Sと略直交する方向に板面が配置され、車体(不図示)との連結用の連結穴42Hが構成されている。第1翼部42Bは、取付板部42Aから立ち上がるように折り曲げられ、板面が外側取付部材16の軸方向Sに沿った方向で、且つ、外側取付部材16の外周面の周方向と交わる方向となるように配置されている。第2翼部42Cは、取付板部42Aの板面の第1翼部42Bと逆サイドから立ち上がるように折り曲げられ、板面が外側取付部材16の軸方向Sに沿った方向で、且つ、外側取付部材16の外周面の周方向と交わる方向となるように配置されている。
【0050】
第1翼部42Bと第2翼部42Cとは、互いの板面が略平行に配置され、板厚方向に沿って形成される一端面42Tが、防振装置本体12の外側取付部材16と対向するように配置されている。第1翼部42B及び第2翼部42Cの各々の先端側には、第1接合部42BS、第2接合部42CSが形成されている。第1接合部42BS、第2接合部42CSは、板面がストッパ筒60の側面と略直交するように配置され、その端面がストッパ筒60の外面に固定されている。第1翼部42B、第2翼部42C、及び、取付板部42Aで、本発明の一対の脚部の一方が形成されている。
【0051】
第1翼部42Bの軸方向Sの中間部で第1接合部42BSの下側には、側面保持部44Bが形成されている。側面保持部44Bは、第1翼部42Bと一体的に連続形成され、第1翼部42Bから離れる方向へ延出されている。側面保持部44Bは板面が外側取付部材16の外周面に沿って配置され、板面内側は、外側取付部材16の外周面の周方向に沿ったR形状とされている。また、側面保持部44Bの一端面42Tと連続する端面44Tは、図5に示すように、ストッパ筒60のバウンドストッパ面63の裏面(ストッパ裏面63R)側に当接されている。
【0052】
第2翼部42Cの軸方向Sの中間部で第2接合部42CSの下側には、側面保持部44Cが形成されている。側面保持部44Cは、第2翼部42Cと一体的に連続形成され、第2翼部42Cから離れる方向へ延出されている。側面保持部44Cの板面が外側取付部材16の外周面に沿って配置され、板面内側は、外側取付部材16の外周面の周方向に沿ったR形状とされている。また、側面保持部44Cの一端面42Tと連続する端面は、側面保持部44Bと同様にして、ストッパ筒60のバウンドストッパ面63の裏面(ストッパ裏面63R)側に当接されている。
【0053】
側面保持部44Bには、阻止部45Bが一体的に連続形成されている。阻止部45Bは、側面保持部44Bの下部から下方へ延出され、外側取付部材16の径方向内側に折り込まれて段部16Bに係合されている。阻止部45Bは、外側取付部材16の弾性連結部16Aを、ストッパ裏面63Rとの間で挟み込んでいる。
【0054】
また、側面保持部44Cには、阻止部45Cが一体的に連続形成されている。阻止部45Cの形状及び段部16Bへの係合、弾性連結部16Aの挟み込みについては、阻止部45Bと同様である。
【0055】
ブラケット部材46は、ブラケット部材42と防振装置本体12を挟んで径方向で向かい合う位置に配置されている。ブラケット部材46の取付板部46A、第1翼部46B、第2翼部46C、側面保持部48B、48C、及び阻止部47B、47Cを備えている。これらの構成、及び、各部の取付は、ブラケット部材42の取付板部42A、第1翼部42B、第2翼部42C、側面保持部44B、44C、及び阻止部45B、45Cと同様である。また、第1翼部46B、第2翼部46Cには、第1接合部42BS、第1接合部42CSと同様の構成とされた、第1接合部46BS、第1接合部46CSが構成され、第1接合部46BS、第1接合部46CSには、一端面42Tと同様に一端面46Tが構成されている。また、側面保持部48B、48Cには、端面44Tと同様に端面48Tが構成されている。第1翼部46B、第2翼部46C、及び、取付板部46Aで、本発明の一対の脚部の他方が形成されている。
【0056】
ブラケット部材42、46は、上記のようにして、ストッパ筒60に固定されると共に、ストッパ筒60のストッパ裏面63Rと阻止部45、47との間に防振装置本体12の弾性連結部16Aを挟み、ブラケット部材42、46と外側取付部材16との間の軸方向Sでの相対移動が阻止されている。
【0057】
防振装置用ブラケット40は、不図示のボルトが連結穴42H、46Hを介して車体(不図示)に締結されることにより、車体と連結されている。
【0058】
防振装置本体12は、内側取付部材14がストッパ筒60側(上側)になるように、防振装置用ブラケット40の下側から挿入され、外側取付部材16が側面保持部44、45の内側に固定されている。
【0059】
図3に示されるように、内側取付部材14の上面(大径面)側には、ストッパアーム56が固定されている。ストッパアーム56は、断面長方形の長尺形状とされ、連結穴56Aが穿孔されている。連結穴56Aを介して、ボルトBが内側取付部材14の連結ねじ穴14Aと螺合されることにより、ストッパアーム56は内側取付部材14に固定されている。ストッパアーム56は、バウンドストッパ面63が突出された側で、外側取付部材16の外側へ延出されている。ストッパアーム56の外側は、厚みをもったゴム部材で被覆されており、ストッパアーム56の上面側に上ゴム部57Aが形成され、ストッパアーム56の下面側に下ゴム部57Bが形成されている。上ゴム部57Aは、リバウンドストッパ面65と対向するように配置され、下ゴム部57Bは、バウンドストッパ面63と対向するように配置されている。ストッパアーム56は、延出された側の端部で、不図示のエンジンと連結されている。
【0060】
次に、防振装置用ブラケット40の製造、及び、防振装置本体12の組み付けについて説明する。
【0061】
ブラケット部材42については、金属板を図6(A)に示す形状に打ち抜き、第1翼部42B及び第2翼部42Cを折り立てると共に、側面保持部44B、44Cを外側取付部材16の外周に沿った形状に湾曲させる。また、ブラケット部材46の場合にも同様に、金属板をブラケット部材42と同様の形状に打ち抜き、第1翼部46B及び第2翼部46Cを折り立てると共に、側面保持部45B、45Cを外側取付部材16の外周に沿った形状に湾曲させる。
【0062】
ストッパ筒60についても、金属板を打ち抜き、四角筒状に折り曲げ加工し、長手方向の端面を突き合わせて溶接する。
【0063】
そして、ブラケット部材42の第1接合部42BS及び第2接合部42CSの一端面42Tを、ストッパ筒60の側面に溶接等により固定し、側面保持部44B、44Cの上端面44Tをストッパ裏面63Rへ当接させる。また、ブラケット部材46の第1接合部46BS及び第2接合部46CSの一端面46Tを、ストッパ筒60の側面に溶接等により固定し、側面保持部45の上端面をストッパ裏面63Rへ当接させる。これにより、ストッパ筒60と防振装置用ブラケット40とが一体化される。
【0064】
次に、防振装置用ブラケット40の下側から、防振装置本体12を挿入し、内側取付部材14をストッパ筒60内に配置し、外側取付部材16の上端面をストッパ裏面63Rへ当接させる。この状態で、阻止部45、47を径方向内側へ折り込み、ストッパ裏面63Rと阻止部45、47との間に外側取付部材16を固定する。
【0065】
次に、ストッパアーム56をストッパ筒60へ挿入し、内側取付部材14の上面へ置き、締結穴56Aを連結ねじ穴14Aに対応した位置へ配置する。そして、締結用ボルトBをストッパ筒60のボルト穴62Aから挿入し、連結ねじ穴14Aへねじ込んで、ストッパアーム56と内側取付部材14とを連結する。
【0066】
これにより、防振装置本体12が防振装置用ブラケット40及びストッパ筒60へ組み付けられる。
【0067】
次に、本実施形態に係る防振装置10の作用を説明する。
【0068】
防振装置10では、エンジン又は車体側から振動が入力されると、吸振主体である弾性体18が弾性変形する。この弾性変形により、入力された振動が、減衰吸収される。
【0069】
また防振装置10では、エンジンから比較的低い周波数域の振動、例えばシェイク振動等が入力されると、弾性体18の弾性変形により主液室38の内容積が拡縮し、この主液室38の拡縮に伴って、主液室38と副液室39との間で、液体が制限通路26を通して相互に流通する。このとき、制限通路26内で液柱共振が生じ、この液柱共振等により、防振効果、制振効果を得ることができる。
【0070】
一方、エンジンから比較的高い周波数域の振動、例えばアイドル振動等が入力されると、制限通路26に目詰まりが発生する。この時には、可動弾性膜28が、主液室38内の容積を拡縮するように弾性変形する。これにより、主液室38内の液圧上昇が抑制され、動的ばね定数の上昇を抑制できるので、高い周波数域の振動も効果的に吸収することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の防振装置用ブラケット40は、防振装置本体12の外側取付部材16を保持する側面保持部44、45が、第1翼部42B、第2翼部42C、または、第1翼部46B、第2翼部46Cと一体的に連続されており、1枚の板材を曲げ加工して形成されているので、外側取付部材16を保持する部材を別に設ける必要がなく、部品点数を少なくすることができる。また、絞り加工の場合と比較して、製造コストを抑えることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、ブラケット部材42の側面保持部44とブラケット部材46の側面保持部45とは離間しているが、図7に示すように、側面保持部44、側面保持部48を周方向に延出して互いに付き合わせ、溶接しておいてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、ストッパ筒60のストッパ裏面63Rと阻止部45、47との間に外側取付部材16を固定したが、図8に示すように、側面保持部44、45の阻止部45、47と対向する位置に、側面保持部44、45と一体的に連続した挟持部44A、48Aを形成し、挟持部44A、45Aを径方向内側に折り込んで外側取付部材16の上端面に係合させ、阻止部45、47と挟持部44A、45Aの間に外側取付部材16の弾性体連結部16Aを挟み込んで固定してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、ブラケット部材42、46は、各々が一枚の金属板で形成されている例について説明したが、必ずしも1枚の金属板で形成されている必要はなく、例えば、2枚の金属板で形成してもよい。この場合には、図9に示すように、第1翼部42Bと取付板部42Aが一体的に形成された一枚板42P1、及び、第2翼部42Cと取付板部42Aが一体的に形成された一枚板42P2を用意し、第1翼部42B、第2翼部42Cを各々折り立て、2枚の取付板部42Aを重ね合わせてボルトなどにより車体に取り付ける構成にすることができる。このように、取付板部42Aを2枚板で構成することにより、車体との取付部分の強度を高くすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、防振装置本体12の外側取付部材14の外周面をブラケット部材42、46で直接保持したが、別部材、例えば円筒状部材に防振装置本体12を収納し、その外側をブラケット部材42、46で保持してもよい。
【0076】
また、本実施形態で説明した防振装置本体12は、一例であって、他の構成の防振装置本体を防振装置用ブラケット40で保持することもできる。例えば、本実施形態では、液封式の防振装置本体12を、防振装置用ブラケット40に取り付けた防振装置10について説明したが、防振装置本体としては、図10に示すように、液封式でない、いわゆるソリッド式の防振装置本体13を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0077】
10 防振装置
12 防振装置本体
12 防振装置用ブラケット
13 防振装置本体
14 内側取付部材
16 外側取付部材
16B 段部
18 弾性体
40 防振装置用ブラケット
42、46 ブラケット部材
42A 取付板部
42B 第1翼部
42C 第2翼部
44A 挟持部
44T 上端面
44 側面保持部
44T 端面
45 阻止部
46 ブラケット部材
46T 一端面
46A 取付板部
46B 第1翼部
46C 第2翼部
47 阻止部
48 側面保持部
48T 端面
60 ストッパ筒(ストッパ部材)
63R ストッパ裏面
S 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部及び振動受部の一方に連結される外側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される内側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体、を有する防振装置本体を支持する防振装置用ブラケットであって、
板状とされ、前記防振装置本体の外側取付部材を挟んで両側に一対設けられ、振動発生部及び振動受部の一方に固定される取付板部と、前記取付板部と一体的に連続され板面に沿った方向が前記外側取付部材の外面と交わるように配置された翼部と、を有する脚部と、
前記翼部と一体的に連続され前記外側取付部材の側面に沿って配置され前記防振装置本体を保持する側面保持部と、
前記側面保持部と一体的に連続され前記側面保持部から主振動入力方向へ突出し、前記外側取付部材と前記側面保持部との主振動入力方向での相対移動を阻止する阻止部と、
を備えた防振装置用ブラケット。
【請求項2】
前記脚部、前記保持部、及び、前記阻止部が、一枚の板材で構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項3】
前記脚部に固定され、前記側面保持部を挟んで前記阻止部と対向する位置に配置され、前記阻止部との間で前記外側取付部材を挟持する挟持部を備えた請求項1または請求項2に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項4】
前記挟持部は、前記防振装置本体の主振動入力方向のストッパ部材で構成されていること、を特徴とする請求項3に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項5】
前記側面保持部は板面が前記外側取付部材の外周面に沿って配置されていること、を特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項6】
前記ストッパ部材は筒状とされ、前記主振動入力方向と筒軸が直交する方向に配置されていること、を特徴とする請求項4または請求項5に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケットと、
前記防振装置用ブラケットに固定された外側取付部材と、
振動発生部及び振動受部の他方に連結される内側取付部材と、
前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体と、
前記内側取付部材に固定され前記外側取付部材の外側へ延出されるストッパアームと、
を備えた防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−252572(P2011−252572A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128118(P2010−128118)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】