説明

防振装置及びその製造方法

【課題】成形用金型を用いて内筒体及び外筒体にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置及びその製造方法において、バリを取るバリ取り加工を無くす。
【解決手段】成形用金型Mは、外筒体10,11の軸方向一方側の端面に対向当接すると共に、外筒体10,11の内外を連通させ且つキャビティC1,C2から漏れ出た余剰ゴム4a,5aを逃がすゴム逃がし凹部63a,68aが形成された当接面63,68を備えている。外筒体10,11の全面に加硫接着剤を塗布する。外筒体10,11の軸方向一方側の端面にゴム逃がし凹部63a,68aに逃げた余剰ゴム4a,5aを加硫接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用金型を用いて所定の部材にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、成形用金型を用いて所定の部材にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置が開示されている。この防振装置は、内筒体及び外筒体にゴム弾性体を加硫一体成形したものである。成形用金型は、外筒体が保持されるキャビティを区画形成する上型及び下型と、これらの上型及び下型のそれぞれにおいて、内筒体を保持するための芯体押え及び支持ピンとを備えており、この文献に記載された成形用金型ではさらに、内筒体の軸方向端面とキャビティの区画面との間の隙間を通って、キャビティ内に注入した未加硫ゴムが漏れ出すことを防止するために、内筒体の軸方向端部の外周面に当接するシールリングを備えるようにしている。つまり、漏れ出したゴムは成形品におけるバリとなり、そのバリ取り加工が必要になることから、そうした仕上げ工程を無くすために、特許文献1に記載された成形用金型では、ゴムの漏れ出しを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−79551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では内筒体の軸方向端面からの漏れを問題にしているが、例えば外筒体の軸方向端面とキャビティの区画面との間の隙間を通って未加硫ゴムが漏れ出す場合もある。こうして外筒体の外に未加硫ゴムが漏れ出すことは、成形品にバリを発生させることから、そのバリ取りの仕上げ工程が必要になるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、成形用金型を用いて所定の部材にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置及びその製造方法において、バリを取るバリ取り加工を無くすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、成形用金型を用いて所定の部材にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置であって、上記成形用金型は、上記所定の部材における上記ゴム弾性体側の面以外の所定の面に対向すると共に、キャビティから漏れ出たゴムを逃がすゴム逃がし凹部が形成された対向面を備えており、上記所定の部材の上記所定の面には、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムが加硫接着されていることを特徴とするものである。
【0007】
これによれば、所定の部材の所定の面には、成形用金型のゴム逃がし凹部に逃げたゴムが加硫接着されているので、バリは発生しない。このため、バリを取るバリ取り加工を無くすことができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、内筒体及び上記所定の部材としての外筒体に上記ゴム弾性体を加硫一体成形したものであり、上記成形用金型は、上記外筒体の上記所定の面としての軸方向一方側の端面に対向当接すると共に、上記外筒体の内外を連通させ且つ上記ゴム逃がし凹部が形成された上記対向面としての当接面を備えており、上記外筒体の軸方向一方側の端面には、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムが加硫接着されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、外筒体の軸方向一方側の端面に、成形用金型のゴム逃がし凹部に逃げたゴムが加硫接着されているので、そのゴムは外筒体外に漏れ出ず、バリは発生しない。このため、ゴムが外筒体外に漏れ出すことにより発生するバリを取るバリ取り加工を無くすことができる。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記外筒体の全面に接着剤が塗布されていることを特徴とするものである。
【0011】
ところで、本発明において、外筒体には、少なくとも内周面及び軸方向一方側の端面に接着剤を塗布する必要があるが、外筒体において、その部分にのみ接着剤を塗布する場合、その作業性が悪化する。
【0012】
ここで、本発明によれば、外筒体の全面に接着剤を塗布しているので、外筒体において、内周面及び軸方向一方側の端面にのみ接着剤を塗布する場合と比較して、その作業性を向上させることができる。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記外筒体はアルミ合金からなることを特徴とするものである。
【0014】
ところで、アルミ合金からなる外筒体は、接着剤の塗布前において、全面銀色であるが、そのような外筒体において、内周面及び軸方向一方側の端面にのみ接着剤を塗布する場合、外筒体の表面は斑模様となり、その見栄えが悪化する。
【0015】
ここで、本発明によれば、外筒体の全面に接着剤を塗布しているので、外筒体において、内周面及び軸方向一方側の端面にのみ接着剤を塗布する場合と比較して、その見栄えを向上させることができる。
【0016】
第5の発明は、成形用金型を用いて所定の部材にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置の製造方法であって、上記成形用金型は、上記所定の部材における上記ゴム弾性体側の面以外の所定の面に対向すると共に、キャビティから漏れ出たゴムを逃がすゴム逃がし凹部が形成された対向面を備えており、上記所定の部材に接着剤を塗布するステップと、上記成形用金型に上記所定の部材をセットするステップと、上記キャビティ内にゴムを供給するステップと、上記ゴムを加硫することにより、上記所定の部材に上記ゴム弾性体を加硫接着すると共に、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムを上記所定の部材の上記所定の面に加硫接着するステップとを含んでいることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、上記第1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0018】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記防振装置は、内筒体及び上記所定の部材としての外筒体に上記ゴム弾性体を加硫一体成形したものであり、上記成形用金型は、上記外筒体の上記所定の面としての軸方向一方側の端面に対向当接すると共に、上記外筒体の内外を連通させ且つ上記ゴム逃がし凹部が形成された上記対向面としての当接面を備えており、上記塗布ステップでは、上記内筒体及び上記外筒体に上記接着剤を塗布し、上記セットステップでは、上記成形用金型に上記内筒体及び上記外筒体をそれぞれセットし、上記加硫ステップでは、上記ゴムを加硫することにより、上記内筒体及び上記外筒体に上記ゴム弾性体を加硫接着すると共に、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムを上記外筒体の軸方向一方側の端面に加硫接着することを特徴とするものである。
【0019】
これによれば、上記第2の発明と同様の作用効果が得られる。
【0020】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記ゴム逃がし凹部は、該ゴム逃がし凹部に逃げたゴムが該ゴム逃がし凹部における上記外筒体外との連通部に達しない形状構造を有していることを特徴とするものである。
【0021】
これによれば、ゴム逃がし凹部は、このゴム逃がし凹部に逃げたゴムがゴム逃がし凹部における外筒体外との連通部に達しない形状構造を有しているので、そのゴムはその連通部から外筒体外に漏れ出ず、バリは発生しない。このため、ゴムが外筒体外に漏れ出すことにより発生するバリを取るバリ取り加工を確実に無くすことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、所定の部材の所定の面には、成形用金型のゴム逃がし凹部に逃げたゴムが加硫接着されているので、バリは発生しない。このため、バリを取るバリ取り加工を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るトルクロッドを示す側面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】成形用金型の中型を示す平面図である。
【図4】図3のB−B線矢視断面図に対応する成形用金型の断面図である。
【図5】図3のC−C線矢視断面図に対応する成形用金型の第2ゴム逃がし凹部の断面図である。
【図6】図3のD−D線矢視断面図に対応する成形用金型の第2ゴム逃がし凹部の断面図である。
【図7】真空引きを説明するための図3相当図である。
【図8】その他の実施形態に係る防振装置を示す斜視図であり、(a)はある防振装置を示す図、(b)はまた別の防振装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る防振装置としてのトルクロッドTを示す側面図、図2は、図1のA−A線矢視断面図である。このトルクロッドTは、自動車のエンジンマウントに適用され、その長手方向が車両前後方向になるように配置されている。トルクロッドTは、ブラケット1と、第1及び第2内筒体2,3と、第1及び第2ゴム弾性体4,5とを備えている。
【0026】
上記ブラケット1は、相対的に小さい筒孔を有する円筒状の第1外筒体10(所定の部材)と、この第1外筒体10に対して車両後側に間隔を空けて配置され、第1外筒体10の筒孔と同じ方向に開口する相対的に大きい筒孔を有する八角形筒状の第2外筒体11(所定の部材)と、両外筒体10,11を互いに連結する2本の連結リブ12,12とを有する略瓢箪状のアルミ合金押し出し製品である。つまり、ブラケット1は、加硫接着剤の塗布前において、全面銀色である。ブラケット1の全面に、加硫成形前において、加硫接着剤が塗布されている。この加硫接着剤は、単一剤で構成される黒色の一層型接着剤、又は、金属側に塗布されるプライマーとその上に塗布されてゴム側となる上塗り剤とで構成される黒色の二層型接着剤である。つまり、ブラケット1は、加硫接着剤の塗布後において、全面黒色である。尚、ブラケット1をアルミ合金製品にしているのは、軽量化のためである。
【0027】
上記第1外筒体10の軸方向(車幅方向)一方側(図1では手前側)の端面における後述する成形用金型Mの第1ゴム逃がし凹部63a(図3を参照)に対応する部分には、第1キャビティC1から第1ゴム逃がし凹部63aに逃げた第1余剰ゴム4aが、第1外筒体10の軸方向一方側の端面に塗布された加硫接着剤で加硫接着されている。第1ゴム逃がし凹部63aは、後述の如く、第1余剰ゴム4aが第1ゴム逃がし凹部63aの第1外部連通部63dに達しない形状構造を有するため、第1余剰ゴム4aは、第1ゴム逃がし凹部63aの第1外部連通部63d以外の部分に対応する部分に接着固定されている。図1の例では、第1余剰ゴム4aは、第1ゴム逃がし凹部63aの第1内部連通部63c及び第1ゴム逃がし凹部本体63bの上端近傍から下端近傍までの部分に対応する部分に接着されている。
【0028】
上記第2外筒体11の軸方向一方側(図1では手前側)の端面における成形用金型Mの第2ゴム逃がし凹部68a(図3を参照)に対応する部分には、第2キャビティC2から第2ゴム逃がし凹部68aに逃げた第2余剰ゴム5aが、第2外筒体10の軸方向一方側の端面に塗布された加硫接着剤で加硫接着されている。第2ゴム逃がし凹部68aは、後述の如く、第2余剰ゴム5aが第2ゴム逃がし凹部68aの第2外部連通部68dに達しない形状構造を有するため、第2余剰ゴム5aは、第2ゴム逃がし凹部68aの第2外部連通部68d以外の部分に対応する部分に接着固定されている。図1の例では、第2余剰ゴム5aは、第2ゴム逃がし凹部68aの第2内部連通部68c及び第2ゴム逃がし凹部本体68bの上端辺部及び下端辺部以外の部分に対応する部分に接着されている。
【0029】
尚、ブラケット1を、その第1及び第2外筒体10,11の軸方向一方側の端面側が上側になるように成形用金型MのキャビティC1,C2内にセットするため、以下の説明では、「軸方向一方側の端面」を「上端面」とも言う。
【0030】
上記第1内筒体2は、円筒状の金属製品(例えばアルミ製品)であり、第1外筒体10の筒孔内の略中央部位置に同軸となるように配設されている。第1内筒体2の外周面に、加硫成形前において、加硫接着剤が塗布されている。この加硫接着剤は、上述の如く、黒色の一層型接着剤又は黒色の二層型接着剤である。第1内筒体2は、その筒孔に挿通されたボルト等によりパワープラントの下端部に連結される。上記第2内筒体3は、円筒状の金属製品(例えばアルミ製品)であり、第2外筒体11の筒孔内の略中央位置に第1内筒体2の筒軸と平行となるように配設されている。第2内筒体3の外周面に、加硫成形前において、加硫接着剤が塗布されている。この加硫接着剤は、上述の如く、黒色の一層型接着剤又は黒色の二層型接着剤である。第2内筒体3は、その筒孔に挿通されたボルト等によりパワープラントの車両後方に位置する車体フレームに連結される。
【0031】
上記第1ゴム弾性体4は、第1内筒体2と第1外筒体10との間に設けられ、この両筒体2,10を互いに連結している。上記第2ゴム弾性体5は、第2内筒体3と第2外筒体11との間に設けられ、この両筒体3,11を互いに連結している。第2ゴム弾性体5には、第2内筒体3を挟んで車両前後方向両側に、第2ゴム弾性体5を第2内筒体3の筒軸方向に貫通する貫通孔50,50がそれぞれ形成されている。これにより、第2内筒体3から第2外筒体11に向かって径方向に延びる2つの主ばね部51,51が形成されている。車両前側の貫通孔50には、第2外筒体11の内周面に沿ってゴム弾性体からなるストッパ52が配設されている。車両後側の貫通孔50には、第2外筒体11の内周面から車両前側に向かって突出するゴム弾性体からなるストッパ53が配設されている。これらのストッパ52,53は、第2内筒体3及び第2外筒体11が車両前後方向に相対変位したときに、第2内筒体3(正確にはそれを囲むゴム弾性体の部分である)と当接することになり、そのことにより、第2内筒体3と第2外筒体11との車両前後方向に対する相対変位を所定量に規制する機能を有している。
【0032】
以下、以上の如く構成されたトルクロッドTを成形するための成形用金型Mについて、図3〜図6を用いて説明する。この図3は、成形用金型Mの中型8を示す平面図、図4は、図3のB−B線矢視断面図に対応する成形用金型Mの断面図、図5は、図3のC−C線矢視断面図に対応する成形用金型Mの第2ゴム逃がし凹部68aの断面図、図6は、図3のD−D線矢視断面図に対応する成形用金型Mの第2ゴム逃がし凹部68aの断面図である。
【0033】
この成形用金型Mは、図示省略するが、一度に複数個(例えば8個)のトルクロッドTを成形することができるように、複数個のキャビティを有するものであるが、図3及び図4では、その中の1つのキャビティのみを抜き出して示している。成形用金型Mは、上型6、中型8及び下型9を備えており、これらの上型6、中型8及び下型9が組み合わされることにより、その内部にキャビティが区画形成される。このキャビティは、第1ゴム弾性体4を成形するための第1キャビティC1と、第2ゴム弾性体5を成形するための第2キャビティC2とからなる。
【0034】
尚、以下の説明では、その説明の便宜上、図3の左側を成形用金型Mの前側、右側を成形用金型Mの後側、下側を成形用金型Mの左側、上側を成形用金型Mの右側とする。
【0035】
上記上型6は、第1及び第2キャビティC1,C2の上面及び周側面の一部を区画形成する金型であり、第1内筒体2を支持する第1上側支持ピン60が取り付けられる第1凹部61を有する共に、この第1凹部61の外周側に、第1外筒体10の上端部を保持する円環状の第1上側凸部62を有している。そして、第1凹部61に第1上側支持ピン60が取り付けられることにより、第1内筒体2の上端部に内挿される第1上側支持ピン60が上型6から下向きに突出するように配設される。
【0036】
上型6における第1上側凸部62の径方向の外周側には、第1上側凸部62に外挿された第1外筒体10の上端面(所定の面)にその全周に亘って対向当接する円環状の第1上側当接面63(対向面)が形成されている。この第1上側当接面63には、第1外筒体10の内外を連通させ且つ第1キャビティC1(第1外筒体10内)から漏れ出た未加硫の第1余剰ゴム4aを逃がす(流入させる)第1ゴム逃がし凹部(溝部)63aが凹陥形成されている。この第1ゴム逃がし凹部63aは、第1キャビティC1内の空気を強制的に吸引排出して真空引きするのにも用いられる。第1ゴム逃がし凹部63aの深さは、第1余剰ゴム4aが成形用金型Mの上型6に加硫接着されることを防止するために、第1余剰ゴム4aの量や加硫成形時の温度・圧力などに基づいて設定されており、例えば、約1mmである。
【0037】
第1ゴム逃がし凹部63aは、第1ゴム逃がし凹部本体63bと、この第1ゴム逃がし凹部本体63bと第1外筒体10内とを連通させる第1内部連通部63cと、第1ゴム逃がし凹部本体63bと第1外筒体10外とを連通させる第1外部連通部63d(外筒体外との連通部)とを有している。上記第1ゴム逃がし凹部本体63bは、第1外筒体10の上端面の前側半分に対応する部分において、第1外筒体10の形状に沿って延びるように半円弧状に形成されている。上記第1内部連通部63cは、第1ゴム逃がし凹部本体63bの長さ方向中央部から後側に延びて、第1外筒体10内に向かって開口している。上記第1外部連通部63dは、第1ゴム逃がし凹部本体63bの左端部から左側に延びて、第1外筒体10外に向かって開口し、中型8とブラケット1の外周面との間の隙間Sに連通している。つまり、第1外部連通部63dは、第1外筒体10(第1ゴム逃がし凹部本体63b)の周方向において、第1内部連通部63cに対して90°だけ間隔を空けて配置されている。第1内部連通部63cの幅は、バリ取り加工が必要な従来のゴム逃がし凹部の内部連通部と比較して、バリ取り加工が必要でない分、大きくなっている。
【0038】
以上の如く構成された第1ゴム逃がし凹部63aは、第1余剰ゴム4aが第1外部連通部63dに達しない形状構造(例えば、長さ)を有している。
【0039】
第1上側当接面63は、第1外筒体10の上端面の内周縁における第1内部連通部63cに対応する部分以外の部分に当接するように設定されると共に、型閉め時において、第1外筒体10の上端面の内周縁における第1内部連通部63cに対応する部分以外の部分を潰すように、第1外筒体10の上端面に圧接するように構成されている。これにより、加硫成形時において、第1キャビティC1内の未加硫ゴムが第1外筒体10の上端面と上型6の第1上側当接面63との間の隙間を通って第1外筒体10外に漏れ出すことが防止される。
【0040】
上型6には、未加硫ゴムを第1キャビティC1内に射出注入するための第1ゴム注入孔64が上下方向に延びるように形成されている。この第1ゴム注入孔64は、第1外筒体10の周方向において、第1内部連通部63cに対して180°だけ、第1外部連通部63dに対して90°だけ間隔を空けて、第1キャビティC1内に向かって1箇所、開口している。
【0041】
また、上型6は、第2内筒体3を支持する第2上側支持ピン65が取り付けられる第2凹部66を有している。そして、この第2凹部66に第2上側支持ピン65が取り付けられることにより、第2内筒体3の上端部に内挿される第2上側支持ピン65が上型6から下向きに突出するように配設される。
【0042】
上型6における第2凹部66の外周側には、第2外筒体11の上端面(所定の面)にその全周に亘って対向当接する八角形環状の第2上側当接面68(対向面)が形成されている。この第2上側当接面68には、第2外筒体11の内外を連通させ且つ第2キャビティC2(第2外筒体11内)から漏れ出た未加硫の第2余剰ゴム5aを逃がす(流入させる)第2ゴム逃がし凹部(溝部)68aが凹陥形成されている。この第2ゴム逃がし凹部68aは、第2キャビティC2内の空気を強制的に吸引排出して真空引きするのにも用いられる。第2ゴム逃がし凹部68aの深さは、第2余剰ゴム5aが上型6に加硫接着されることを防止するために、第2余剰ゴム5aの量や加硫成形時の温度・圧力などに基づいて設定されており、例えば、約1mmである。
【0043】
第2ゴム逃がし凹部68aは、第2ゴム逃がし凹部本体68bと、この第2ゴム逃がし凹部本体68bと第2外筒体11内とを連通させる一対の第2内部連通部68c,68cと、第2ゴム逃がし凹部本体68bと第2外筒体11外とを連通させる一対の第2外部連通部68d,68d(外筒体外との連通部)とを有している。上記第2ゴム逃がし凹部本体68bは、第2外筒体11の形状に沿って延びるように八角形環状に形成されている。第2ゴム逃がし凹部本体68bの幅は、第1ゴム逃がし凹部本体63bの幅よりも大きく、例えば、約3mmである。
【0044】
上記一対の第2内部連通部68c,68cのうち前側のものは、第2ゴム逃がし凹部本体68bの前端辺部の中央部から後側に延びて、第1外筒体10内に向かって開口している。後側の第2内部連通部68cは、第2ゴム逃がし凹部本体68bの後端辺部の中央部から前側に延びて、第2外筒体11内に向かって開口している。つまり、第2内部連通部68c,68cは、第2外筒体11(第2ゴム逃がし凹部本体68b)の周方向において、互いに180°だけ間隔を空けて配置されている。前側の第2内部連通部68cの幅は、第2ゴム逃がし凹部本体68b及び後側の第2内部連通部68cの幅よりも狭くなっている。後側の第2内部連通部68cの幅は、第2ゴム逃がし凹部本体68bの幅とほぼ同じになっている。また、第2内部連通部68cの幅は、バリ取り加工が必要な従来のゴム逃がし凹部の内部連通部と比較して、バリ取り加工が必要でない分、大きくなっている。
【0045】
ところで、第1ゴム弾性体4は、第2ゴム弾性体5と比較して、その大きさが小さい分、加硫オーバしやすい。そこで、第2内部連通部68cの幅は、第1内部連通部63cの幅よりも大きくなっている。これにより、第2キャビティC2内の圧力が抜けやすくなり、加硫一体成形品全体が同じ時間で加硫される。
【0046】
上記一対の第2外部連通部68d,68dのうち左側の第2外部連通部68dは、第2ゴム逃がし凹部本体68bの左端辺部の中央部から左側に延びて、第2外筒体11外に向かって開口し、中型8とブラケット1の外周面との間の隙間Sに連通している。右側の第2外部連通部68dは、第2ゴム逃がし凹部本体68bの右端辺部の中央部から右側に延びて、第1外筒体10外に向かって開口し、中型8とブラケット1の外周面との間の隙間Sに連通している。つまり、第2外部連通部68d,68dは、第2外筒体11の周方向において、互いに180°だけ間隔を空けて配置されている。また、第2外部連通部68dは、第2外筒体11の周方向において、第2内部連通部68cに対して90°だけ間隔を空けて配置されている。第2外部連通部68dの幅は、第2ゴム逃がし凹部本体68b及び第2内部連通部68cの幅よりも狭くなっている。
【0047】
以上の如く構成された第2ゴム逃がし凹部68aは、第2余剰ゴム5aが第2外部連通部68dに達しない形状構造(例えば、長さ)を有している。
【0048】
第2上側当接面68は、第2外筒体11の上端面の内周縁における第2内部連通部68cに対応する部分以外の部分に当接するように設定されると共に、型閉め時において、第2外筒体11の上端面の内周縁における第2内部連通部68cに対応する部分以外の部分を潰すように、第2外筒体11の上端面に圧接するように構成されている。これにより、加硫成形時において、第2キャビティC2内の未加硫ゴムが第2外筒体11の上端面と上型6の第2上側当接面68との間の隙間を通って第2外筒体11外に漏れ出すことが防止される。
【0049】
上型6には、未加硫ゴムを第2キャビティC2内に射出注入するための第2ゴム注入孔69が上下方向に延びるように形成されている。この第2ゴム注入孔69は、第2外筒体11の周方向において、第2内部連通部68cに対して90°だけ間隔を空けて、第2キャビティC2内に向かって2箇所、開口している。
【0050】
さらに、上型6には、中型8とブラケット1の外周面との間の隙間Sに連通する真空引き通路70が形成されている。この真空引き通路70は、成形用金型M外に設けられ且つキャビティC1,C2内の空気を吸引する真空引き装置に接続されている。
【0051】
上記中型8は、上型6と下型9との間において、第1及び第2キャビティC1,C2の周側面の残部及び下面を区画形成する金型であり、第1キャビティC1の周側面及び下面を構成する第1挿入孔80と、第2キャビティC2の周側面及び下面を構成する第2挿入孔81とを有している。そして、第1挿入孔80には、下型9の第1下側支持ピン90が内挿される。また、第2挿入孔81には、下型9の第2下側支持ピン92が内挿される。
【0052】
第1挿入孔80には、第1内筒体2の下端面の外周縁にその全周に亘って対向当接する円環状の第1当接段部82が形成されると共に、この第1当接段部82の上側で且つ径方向の外周側に、第1外筒体10の下端部を保持する円環状の第1下側凸部83を有している。中型8における第1下側凸部83の径方向の外周側には、第1下側凸部83に外挿された第1外筒体10の下端面にその全周に亘って対向当接する円環状の第1下側当接面84が形成されている。この第1下側当接面84は、第2外筒体11の下端面の内周縁にその全周に亘って当接するように設定されると共に、型閉め時において、第1外筒体10の下端面の内周縁をその全周に亘って潰すように、第1外筒体10の下端面に圧接するように構成されている。これにより、加硫成形時において、第1キャビティC1内の未加硫ゴムが第1外筒体10の下端面と中型8の第1下側当接面84との間の隙間を通って第1外筒体10外に漏れ出すことが防止される。
【0053】
第2挿入孔81には、第2内筒体3の下端面の外周側にその全周に亘って対向当接する円環状の第2当接段部85が形成されている。中型8における第2当接段部85の上側で且つ径方向の外周側には、第2外筒体11の下端面にその全周に亘って対向当接する円環状の第2下側当接面87が形成されている。この第2下側当接面87は、第2外筒体11の下端面の内周縁にその全周に亘って当接するように設定されると共に、型閉め時において、第2外筒体11の下端面の内周縁をその全周に亘って潰すように、第2外筒体11の下端面に圧接するように構成されている。これにより、加硫成形時において、第2キャビティC2内の未加硫ゴムが第2外筒体11の下端面と中型8の第2下側当接面87との間の隙間を通って第1外筒体10外に漏れ出すことが防止される。
【0054】
上記下型9は、第1内筒体2を支持する第1下側支持ピン90が取り付けられる第1孔部91と、第2内筒体3を支持する第2下側支持ピン92が取り付けられる第2孔部93とを有している。そして、第1孔部91に第1下側支持ピン90が取り付けられることにより、第1内筒体2の上端部以外の部分に内挿される第1下側支持ピン90が下型9から上向きに突出するように配設される。また、第2孔部93に第2下側支持ピン92が取り付けられることにより、第2内筒体3の上端部以外の部分に内挿される第2下側支持ピン92が下型9から上向きに突出するように配設される。
【0055】
以下、上述の如く構成された成形用金型Mを用いたトルクロッドTの製造手順について、図3〜図7を用いて説明する。この図7は、真空引きを説明するための図3相当図である。
【0056】
まず、ブラケット1を加硫接着剤に浸漬することにより、この全面に加硫接着剤を塗布すると共に、スプレー等により、第1及び第2内筒体2,3の外周面にそれぞれ加硫接着剤を塗布する(塗布ステップ)。次に、成形用金型Mを型開きして、ブラケット1並びに第1及び第2内筒体2,3をそれぞれキャビティC1,C2内の所定の位置にセットする(セットステップ)。
【0057】
それから、成形用金型Mを型閉めする(型閉めステップ)。このとき、上型6及び中型8により、第1外筒体10の上端面の内周縁における第1内部連通部63cに対応する部分以外の部分、第1外筒体10の下端面の内周縁全周、第2外筒体11の上端面の内周縁における第2内部連通部68cに対応する部分以外の部分及び第2外筒体11の下端面の内周縁全周が潰される。
【0058】
続いて、真空引き装置により、第1及び第2キャビティC1,C2内の空気をそれぞれ第1及び第2ゴム逃がし凹部63a,68aを介して強制的に吸引排出して真空引きする(真空引きステップ)。このとき、第1キャビティC1内の空気は、第1ゴム逃がし凹部63aの第1内部連通部63c、第1ゴム逃がし凹部本体63b、第1外部連通部63d、中型8とブラケット1の外周面との間の隙間S、真空引き通路70の順に流れて、成形用金型M外に排出される(図7の矢印を参照)。第2キャビティC2内の空気は、第2ゴム逃がし凹部68aの第2内部連通部68c、第2ゴム逃がし凹部本体68b、第2外部連通部68d、中型8とブラケット1の外周面との間の隙間S、真空引き通路70の順に流れて、成形用金型M外に排出される(図7の矢印を参照)。
【0059】
そして、ゴム射出注入装置により、未加硫ゴムを第1ゴム注入孔64を介して第1キャビティC1内に、第2ゴム注入孔69を介して第2キャビティC2内にそれぞれ射出注入する(供給ステップ)。これにより、未加硫ゴムが第1及び第2キャビティC1,C2にそれぞれ充填供給される。この未加硫ゴムの供給において、必要最低限の量を供給することは困難であるため、その供給量は、必要最低限の量よりも多い量である。これにより、未加硫ゴムは第1及び第2キャビティC1,C2からそれぞれ溢れる。
【0060】
このとき、第1外筒体10の上端面の内周縁における第1内部連通部63cに対応する部分以外の部分及び第1外筒体10の下端面の内周縁全周は潰されているため、第1キャビティC1内の未加硫ゴムが第1外筒体10の上下端面と成形用金型Mとの間の隙間を通って第1外筒体10外に漏れ出すことが防止される。また、第2外筒体11の上端面の内周縁における第2内部連通部68cに対応する部分以外の部分及び第2外筒体11の下端面の内周縁全周も潰されているため、第2キャビティC2内の未加硫ゴムが第2外筒体11の上下端面と成形用金型Mとの間の隙間を通って第2外筒体11外に漏れ出すことが防止される。
【0061】
さらに、第1上側当接面63には第1ゴム逃がし凹部63aが形成されているため、第1キャビティC1から漏れ出た第1余剰ゴム4aは、第1ゴム逃がし凹部63aの第1内部連通部63cを介して第1ゴム逃がし凹部本体63b内に流入する。ここで、第1ゴム逃がし凹部63aは、第1余剰ゴム4aが第1外部連通部63dに達しない形状構造を有するため、第1ゴム逃がし凹部63a内に流入した第1余剰ゴム4aは、第1外部連通部63dから第1外筒体10外に漏れ出さない。また、第2上側当接面68には第2ゴム逃がし凹部68aが形成されているため、第2キャビティC2から漏れ出た第2余剰ゴム5aは、第2ゴム逃がし凹部68aの第2内部連通部68cを介して第2ゴム逃がし凹部本体68b内に流入する。ここで、第2ゴム逃がし凹部68aは、第2余剰ゴム5aが第2外部連通部68dに達しない形状構造を有するため、第2ゴム逃がし凹部68a内に流入した第2余剰ゴム5aは、第2外部連通部68dから第2外筒体11外に漏れ出さない。
【0062】
次に、未加硫ゴムを成形用金型M内で、所定温度、所定圧力で加熱、加圧する(加硫ステップ)。このとき、第1キャビティC1内に供給された未加硫ゴムは加硫して、第1ゴム弾性体4が成形され、この第1ゴム弾性体4は第1内筒体2の外周面と第1外筒体10の内周面(第1ゴム弾性体4側の面)に加硫接着される。第2キャビティC2内に供給された未加硫ゴムも加硫して、第2ゴム弾性体5が成形され、この第2ゴム弾性体5は第2内筒体3の外周面と第2外筒体12の内周面(第2ゴム弾性体5側の面)に加硫接着される。また、第1ゴム逃がし凹部63a内に流入した第1余剰ゴム4aも加硫して、第1外筒体10の上端面における第1ゴム逃がし凹部63aの第1外部連通部63d以外の部分に対応する部分に加硫接着される。第2ゴム逃がし凹部68a内に流入した第2余剰ゴム5aも加硫して、第2外筒体11の上端面における第2ゴム逃がし凹部68aの第2外部連通部68d以外の部分に対応する部分に加硫接着される。
【0063】
それから、成形用金型Mを型開きして、第1及び第2内筒体2,3並びにブラケット1に第1及び第2ゴム弾性体4,5が加硫一体成形された加硫一体成形品を取り出す(取出ステップ)。このとき、第1余剰ゴム4aは、第1ゴム逃がし凹部63aの第1外部連通部63d以外の部分に対応する部分に接着固定されている。また、第2余剰ゴム5aは、第2ゴム逃がし凹部68aの第2外部連通部68d以外の部分に対応する部分に接着固定されている。
【0064】
以上により、トルクロッドTの製造が完了する。
【0065】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、外筒体10,11の軸方向一方側の端面に、成形用金型Mのゴム逃がし凹部63a,68aに逃げた余剰ゴム4a,5aが加硫接着されているので、その余剰ゴム4a,5aは外筒体10,11外に漏れ出ず、バリは発生しない。このため、余剰ゴム4a,5aが外筒体10,11外に漏れ出すことにより発生するバリを取るバリ取り加工を無くすことができる。
【0066】
ところで、本実施形態において、外筒体10,11には、少なくとも内周面及び軸方向一方側の端面に加硫接着剤を塗布する必要があるが、外筒体10,11において、その部分にのみ加硫接着剤を塗布する場合、その作業性が悪化する。
【0067】
ここで、本実施形態によれば、ブラケット1の全面、すなわち、外筒体10,11の全面に加硫接着剤を塗布しているので、外筒体10,11において、内周面及び軸方向一方側の端面にのみ加硫接着剤を塗布する場合と比較して、その作業性を向上させることができる。
【0068】
ところで、アルミ合金からなるブラケット1は、加硫接着剤の塗布前において、全面銀色であるが、そのようなブラケット1の外筒体10,11において、内周面及び軸方向一方側の端面にのみ加硫接着剤を塗布する場合、外筒体10,11の表面は斑模様となり、その見栄えが悪化する。
【0069】
ここで、本実施形態によれば、ブラケット1の全面、すなわち、外筒体10,11の全面に加硫接着剤を塗布しているので、外筒体10,11において、内周面及び軸方向一方側の端面にのみ加硫接着剤を塗布する場合と比較して、その見栄えを向上させることができる。
【0070】
また、ゴム逃がし凹部63a,68aは、このゴム逃がし凹部63a,68aに逃げた余剰ゴム4a,5aがゴム逃がし凹部63a,68aの外部連通部63d,68dに達しない形状構造を有しているので、その余剰ゴム4a,5aはその連通部63d,68dから外筒体10,11外に漏れ出ず、バリは発生しない。このため、余剰ゴム4a,5aが外筒体10,11外に漏れ出すことにより発生するバリを取るバリ取り加工を確実に無くすことができる。
【0071】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、本発明を防振装置としてのトルクロッドTに適用しているが、これに限らず、例えば、内筒体及び外筒体にゴム弾性体を加硫一体成形したラバーブッシュに適用してもよい。この場合、外筒体の軸方向一方側の端面に、成形用金型のゴム逃がし凹部に逃げた余剰ゴムが加硫接着されている。
【0072】
また、図8に示すように、所定の構成部材101にゴム弾性体102を加硫一体成形した防振装置に適用してもよい。図8(a)のものの構成部材101は、略ハット状のアルミ合金板金製品である。そのゴム弾性体102は、構成部材101内に設けられた筒部102aと、この筒部102aから構成部材101の互いに対向する面(ゴム弾性体102側の面)に向かって延びる2つの主ばね部102b,102bとを有している。図8(a)のものを成形するための成形用金型のゴム逃がし凹部は、図示省略するが、構成部材101における筒部102aの軸方向一方側の端面(所定の面)に対向する対向面に形成され、構成部材101の内外を連通させる第1ゴム逃がし凹部と、構成部材101における主ばね部102bとは反対側の面(所定の面)に対向する対向面に形成され、第1ゴム逃がし凹部に連通する第2ゴム逃がし凹部とを有している。そして、構成部材101における筒部102aの軸方向一方側の端面及び主ばね部102bとは反対側の面に、ゴム逃がし凹部に逃げた余剰ゴム102cが加硫接着されている。
【0073】
図8(b)のものの構成部材101は、略ハット状のアルミ合金押し出し製品である。そのゴム弾性体102は、構成部材101内に設けられた筒部102aと、この筒部102aから構成部材101の互いに対向する面に向かって延びる2つの主ばね部102b,102bとを有している。図8(b)のものを成形するための成形用金型のゴム逃がし凹部は、図示省略するが、構成部材101における筒部102aの軸方向一方側の端面に対向する対向面に形成され、構成部材101内に連通している。そして、構成部材101における筒部102aの軸方向一方側の端面に、ゴム逃がし凹部に逃げた余剰ゴム102cが加硫接着されている。
【0074】
また、第1外筒体10を円筒状に、第2外筒体11を八角形筒状にそれぞれ形成しているが、これに限定されず、第1外筒体10を多角形筒状に形成したり、第2外筒体11を円筒状や八角形筒状以外の多角形筒状に形成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ゴム逃がし凹部63a,68aを、成形用金型Mの上側当接面63,68に形成しているが、下側当接面84,87又はその両当接面63,68,84,87に形成してもよい。この場合、外筒体10,11の下端面の内周縁における第1内部連通部に対応する部分以外の部分を潰す。
【0076】
また、上記実施形態では、ゴム逃がし凹部63a,68aを上述の如く形状構造にしているが、これに限定されず、本発明の課題を解決することができる限り、如何なる形状構造にしてもよい。例えば、第1ゴム逃がし凹部63aに第1外部連通部63dを2つ設けてもよい。この場合、第1外部連通部63dは、第1外筒体10の周方向において、180°だけ間隔を空けて配置される。
【0077】
また、上記実施形態では、ブラケット1をアルミ合金製品にしているが、これに限らず、例えば、アルミ合金以外の金属製品や樹脂製品などにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ブラケット1の全面に加硫接着剤を塗布しているが、外筒体10,11においては、少なくとも内周面及び軸方向一方側の端面に加硫接着剤を塗布すればよい。但し、作業性及び見栄えを向上させる観点からは、ブラケット1の全面に加硫接着剤を塗布することが望ましい。
【0079】
また、上記実施形態では、真空引きステップを供給ステップの直前に行っているが、これと同時に行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明に係る防振装置及びその製造方法は、ゴムが外筒体外に漏れ出すことにより発生するバリを取るバリ取り加工を無くすことが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
T トルクロッド(防振装置)
1 ブラケット
10 第1外筒体(所定の部材)
11 第2外筒体(所定の部材)
2 第1内筒体
3 第2内筒体
4 第1ゴム弾性体
4a 第1余剰ゴム
5 第2ゴム弾性体
5a 第2余剰ゴム
101 所定の構成部材(所定の部材)
102 ゴム弾性体
102c 余剰ゴム
M 成形用金型
C1 第1キャビティ
C2 第2キャビティ
63 第1上側当接面
63a 第1ゴム逃がし凹部
63c 第1外部連通部(外筒体外との連通部)
68 第2上側当接面
68a 第2ゴム逃がし凹部
68d 第2外部連通部(外筒体外との連通部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用金型を用いて所定の部材にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置であって、
上記成形用金型は、上記所定の部材における上記ゴム弾性体側の面以外の所定の面に対向すると共に、キャビティから漏れ出たゴムを逃がすゴム逃がし凹部が形成された対向面を備えており、
上記所定の部材の上記所定の面には、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムが加硫接着されていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項2記載の防振装置において、
内筒体及び上記所定の部材としての外筒体に上記ゴム弾性体を加硫一体成形したものであり、
上記成形用金型は、上記外筒体の上記所定の面としての軸方向一方側の端面に対向当接すると共に、上記外筒体の内外を連通させ且つ上記ゴム逃がし凹部が形成された上記対向面としての当接面を備えており、
上記外筒体の軸方向一方側の端面には、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムが加硫接着されていることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
請求項2記載の防振装置において、
上記外筒体の全面に接着剤が塗布されていることを特徴とする防振装置。
【請求項4】
請求項3記載の防振装置において、
上記外筒体はアルミ合金からなることを特徴とする防振装置。
【請求項5】
成形用金型を用いて所定の部材にゴム弾性体を加硫一体成形した防振装置の製造方法であって、
上記成形用金型は、上記所定の部材における上記ゴム弾性体側の面以外の所定の面に対向すると共に、キャビティから漏れ出たゴムを逃がすゴム逃がし凹部が形成された対向面を備えており、
上記所定の部材に接着剤を塗布するステップと、
上記成形用金型に上記所定の部材をセットするステップと、
上記キャビティ内にゴムを供給するステップと、
上記ゴムを加硫することにより、上記所定の部材に上記ゴム弾性体を加硫接着すると共に、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムを上記所定の部材の上記所定の面に加硫接着するステップとを含んでいることを特徴とする防振装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の防振装置の製造方法において、
上記防振装置は、内筒体及び上記所定の部材としての外筒体に上記ゴム弾性体を加硫一体成形したものであり
上記成形用金型は、上記外筒体の上記所定の面としての軸方向一方側の端面に対向当接すると共に、上記外筒体の内外を連通させ且つ上記ゴム逃がし凹部が形成された上記対向面としての当接面を備えており、
上記塗布ステップでは、上記内筒体及び上記外筒体に上記接着剤を塗布し、
上記セットステップでは、上記成形用金型に上記内筒体及び上記外筒体をそれぞれセットし、
上記加硫ステップでは、上記ゴムを加硫することにより、上記内筒体及び上記外筒体に上記ゴム弾性体を加硫接着すると共に、上記ゴム逃がし凹部に逃げたゴムを上記外筒体の軸方向一方側の端面に加硫接着することを特徴とする防振装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の防振装置の製造方法において、
上記ゴム逃がし凹部は、該ゴム逃がし凹部に逃げたゴムが該ゴム逃がし凹部における上記外筒体外との連通部に達しない形状構造を有していることを特徴とする防振装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−92909(P2012−92909A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241124(P2010−241124)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】