説明

防音・遮音材

【課題】 曲げやすさの向上を図った防音・遮音材を提供する点にある。
【解決手段】低比重の防音繊維体1と高比重の遮音繊維体2とを積重ねて、その積重ねられた両繊維体1,2を、そのあわせ面方向Xに分散する多数の可撓性の繊維3aによって結合してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低比重の防音繊維体と高比重の遮音繊維体が積重ねられた防音・遮音材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルやマンション等の建屋内の下水配管等においては、配管からの排水音が騒音であると認識される傾向にあり、その対策として、防音材を配管に被覆したり、予めに防音材を被覆してある配管を用いたりしている。
一例として、低比重の防音材からなる防音体と、高比重の遮音材からなる遮音体とを備えた防音・遮音材を配管に筒状に被覆したものが存在している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−96496号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の配管に被覆する防音・遮音材においては、防音体と遮音体とを有機系の接着材で接合しているので、接着剤が固まった接合状態になると曲げ難い素材傾向がある。
そのため、配管に筒状に巻き付け難いといった問題がある。
また、配管部品に防音・遮音材を筒状に巻き付けた配管製品を製作する際においても、同様の問題があり製作性の悪い問題がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、曲げやすさの向上を図った防音・遮音材を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1番目の防音・遮音材の特徴構成は、低比重の防音繊維体と高比重の遮音繊維体とを積重ねて、その積重ねられた両繊維体を、そのあわせ面方向に分散する多数の可撓性の繊維によって結合してある点にある。
【0007】
このような構成によれば、防音・遮音材を曲げた状態では、防音繊維体と遮音繊維体との合わせ面で生じる相対移動に対して、両繊維体を結合する繊維が重ね合せ部分で可撓変形して追従するので、両繊維体の合わせ面が結合状態のまま曲げに対応することができる。
【0008】
従って、従来の防音体と遮音体とが接着剤体によって接合されて曲げ難いといった問題のある防音・遮音材に比し、曲げやすい防音・遮音材を形成することができるので、曲げにおける作業性の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の第2番目の防音・遮音材の特徴構成は、配管に筒状に巻き付け可能な防音・遮音材であって、低比重の防音繊維体と高比重の遮音繊維体とを積重ねて、その積重ねられた両繊維体を、そのあわせ面方向に分散する多数の可撓性の繊維によって結合してある点にある。
【0010】
このような構成によれば、防音・遮音材を配管に筒状に巻き付けた状態では、防音繊維体と遮音繊維体との合わせ面で生じる相対移動に対して、両繊維体を結合する繊維が重ね合せ部分で可撓変形して追従するので、両繊維体の合わせ面が結合状態のまま曲げに対応することができる。
【0011】
従って、従来の防音体と遮音体とが接着剤体によって接合されて曲げ難いといった問題のある防音・遮音材に比し、曲げやすい防音・遮音材を形成することができるので、配管への巻き付けにおける作業性の向上を図ることができる。
そのため、既存の配管や新設の配管に防音・遮音材を筒状に巻き付けをおこなう場合、巻き付け作業の能率化を図ることができるとともに、防音・遮音材を巻き付けた配管を製作する場合、製作性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第3番目の防音・遮音材の特徴構成は、低比重の防音繊維体と高比重の遮音繊維体とを積重ねて、前記防音繊維体の表面に不織布を付設するとともに、前記遮音繊維体の表面には金属製の遮音シートを付設し、更に、前記積重ねられた両繊維体を、そのあわせ面方向に分散する多数の可撓性の繊維によって結合してある点にある。
【0013】
このような構成によれば、防音・遮音材の曲げやすさに加えて、表面側から防音繊維が剥がれ落ちやすい低比重の防音繊維体に不織布を付設することによって、剥がれ落ちを阻止して防音性を保持することができるとともに、高比重の遮音繊維体の表面に金属製の遮音シートを付設することによって、遮音繊維体から漏れでた音を反射して外部に漏れ出るのを阻止することにより遮音性を高めることができる。
【0014】
従って、曲げやすい機能に加えて防音性と遮音性の向上を図ることができるので、品質の高い防音・遮音材を提供することができる。
【0015】
本発明の第4番目の防音・遮音材の特徴構成は、前記繊維が、前記積重ねられた両繊維体へニードルパンチの出入に連れて両繊維体に亘る状態で引き出された繊維であり、前記両繊維体がロックウールから構成されている点にある。
【0016】
このような構成によれば、多数の繊維をニールドパンチによって、防音繊維体と遮音繊維体の両繊維体に亘って結合状態に設けることができるので、能率よく防音・遮音材を製作することができる。
また、防音繊維体と遮音繊維体を形成する繊維に安価なロックウールを用いることによって、製作コストを低減することができる。
【0017】
従って、製作性やコスト性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の防音・遮音材の一実施例を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
この実施形態の防音・遮音材Aは、図1、図2に示すように、低比重の防音繊維体1と高比重の遮音繊維体2とを積重ねし、その積重ねさせた両繊維体1,2を、そのあわせ面方向Xに分散する多数の可撓性の繊維3aによって結合して形成されている。
【0019】
前記防音繊維体1は、例えば、防音繊維素材にロックウールが用いられ、その表面にポリエチレン等の合成樹脂繊維から形成された不織布3が付設されている。
【0020】
前記遮音繊維体2は、例えば、遮音繊維素材にロックウールが用いられ、その表面にアルミニューム等の金属製の遮音シート4が接着剤5によって接着状態に付設されている。
【0021】
前記繊維3aは、防音繊維体1と遮音繊維体2とを積重ねて、防音繊維体1に付設された不織布3側から多数のニードルをニードルパンチの出入りに連れて遮音繊維体2の体中にまで引き出して、不織布3を構成する不織繊維を防音繊維体1から遮音繊維体2に亘らせることによって構成されている。
【0022】
遮音繊維体2に引き出された繊維3aは、高比重のロックウールの遮音繊維を切断しながら、ロックウールの切断繊維にからみ付き遮音繊維体2に一体化される。
【0023】
その結果、不織布3と防音繊維体1と遮音繊維体2が結合されることになる。この結合状態の繊維3aは、不織布3から無理やり引き出された繊維であるので、防音繊維体1と遮音繊維体2との両繊維体1,2間を近づけようと引っ張り合うような弾性力が作用することになるので、防音繊維体1に対して遮音繊維体2が圧接気味な結合状態を形成することができる。
【0024】
また、このニードルパンチによる繊維3aによる防音繊維体1と遮音繊維体2の結合は、その積重ねさせた両繊維体1,2のあわせ面の全域に実施することで、あわせ面方向Xに繊維3aの多数が分散する状態に形成される。
【0025】
さらに、ニードルパンチによる繊維3aによる防音繊維体1と遮音繊維体2の結合によって、不織布3が防音繊維体1の表面に付設状態となる。
【0026】
繊維3aは、可撓性を有しているので、両繊維体1,2の合わせ面の相対移動に対して伸びる等の可撓変形することによって対応して、両繊維体1,2の結合状態を維持することになる。
【0027】
このような構成であれば、例えば、防音繊維体1を内周側に湾曲状に折り曲げた場合、防音繊維体1と遮音繊維体2が相対移動することに追従して、両繊維体1,2を結合する繊維3aが可撓性によりその重ね合せの相対移動に対応することができるので、両繊維体1,2の結合は維持しながら容易に曲げ操作することができる。
【0028】
また、この実施形態の防音・遮音材Aにおいては、表面側から防音繊維が剥がれ落ちやすい低比重の防音繊維体1に不織布3を付設してあるので、剥がれ落ちを阻止して防音性を保持することができるとともに、高比重の遮音繊維体2の表面に金属製の遮音シート4を付設してあるので、遮音繊維体2から漏れでた音を反射して外部に漏れ出るのを阻止することにより遮音性を高めることができる。
【0029】
次に、このような防音・遮音材Aを、図3に示すように、配管6に筒状に巻き付ける場合について説明する。
【0030】
対象となる配管6としては、直管、エルボやチーズ等の継手管、分技管等があげられる。また、配管6への巻き付けは、既設配管や新設配管の施工現場での配管を防音・遮音配管に改善する場合や、配管に巻き付けて防音・遮音機能を持たせた配管製品を製作する場合に実施される。
【0031】
具体的には、配管6の外周面に接着剤7を塗設し、防音・遮音材Aの一面の不織布3側を対応する接着面として一端側から外周面にその円周方向に沿って他端側に至るまで巻き付けておこなわれる。
【0032】
この巻き付けに際して、防音・遮音材Aの曲げ反力が強く、配管6に塗設して接着可能になった状態の接着剤7の接着力に勝るような場合、巻き付け難くなるが、低比重の防音繊維体1と高比重の遮音繊維体2とを積重ねし、その積重ねさせた両繊維体1,2を、そのあわせ面方向に分散する多数の可撓性の繊維3aによって結合してある防音・遮音材Aを巻き付けることになるので、巻き付けが容易で巻き付け反力は弱いので、接着剤7の接着力の強弱に間係なく巻き付けることができるので、巻き付け作業性がよい。
【0033】
防音・遮音材Aが巻き付けられた配管6において、配管6からの排水音等の騒音は、防音繊維体1で減衰され、遮音繊維層2で外部に音漏れするのを阻止することになる。
【0034】
また、この実施形態における防音・遮音材Aでは、防音繊維体1と遮音繊維体2との結合をなす繊維3aがその先端が遮音繊維体2の体内に位置して、遮音繊維体2を貫通するものではないので、遮音繊維体2が遮音シート4で密閉状態に覆われることになり遮音作用を損なうことはない。
【0035】
[別実施形態]
1)上記実施形態の防音・遮音材Aでは、防音繊維体1と遮音繊維体2を結合する繊維3aをニードルパンチによって形成する例を説明したが、本発明はこれに限らず、防音繊維体1に付設された不織布3側から遮音繊維体2を貫通する状態にウォータージェットパンチを打ち込むことによって引き出し、引き出した不織繊維からなる繊維3aを防音繊維体1から遮音繊維体2に亘らせることによって、防音繊維体1と遮音繊維体2を結合する防音・遮音材であってもよい。
この場合、防音繊維体1と遮音繊維体2とを繊維3aで結合した後、遮音繊維体2の表面に遮音シート4が付設される。
【0036】
2)上記実施形態では、防音繊維体1と遮音繊維体2とをロックウールから形成するものについて説明したが、本発明はこれに限らず、両者がグラスウールであっても、いずれか一方がロックウールで形成され、他方がグラスウールから形成されているものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】防音・遮音材を分解して示す分解断面図
【図2】防音・遮音材の構成状態を示す要部断面図
【図3】配管に防音・遮音材を筒状に巻き付けた状態を示す断面図
【符号の説明】
【0038】
A 防音・遮音材
1 防音繊維体
2 遮音繊維体
3 不織布
3a 繊維
4 遮音シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低比重の防音繊維体と高比重の遮音繊維体とを積重ねて、その積重ねられた両繊維体を、そのあわせ面方向に分散する多数の可撓性の繊維によって結合してある防音・遮音材。
【請求項2】
配管に筒状に巻き付け可能な防音・遮音材であって、低比重の防音繊維体と高比重の遮音繊維体とを積重ねて、その積重ねられた両繊維体を、そのあわせ面方向に分散する多数の可撓性の繊維によって結合してある防音・遮音材。
【請求項3】
低比重の防音繊維体と高比重の遮音繊維体とを積重ねて、前記防音繊維体の表面に不織布を付設するとともに、前記遮音繊維体の表面には金属製の遮音シートを付設し、更に、前記積重ねられた両繊維体を、そのあわせ面方向に分散する多数の可撓性の繊維によって結合してある防音・遮音材。
【請求項4】
前記結合繊維が、前記積重ねられた両繊維体へニードルパンチの出入に連れて両繊維体に亘る状態で引き出された繊維であり、前記両繊維体がロックウールから構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の防音・遮音材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−270976(P2007−270976A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97783(P2006−97783)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】