説明

防音材およびその成型物

【課題】 ガラス繊維や当該布帛を用いた防音材および当該材料を用いてなる各種の成型物を提供すること。
【解決手段】 シラン変性ポリウレタン樹脂をガラス繊維または当該布帛に含浸させてなることを特徴とする防音材;当該防音材を用いてなる層(A)を含有することを特徴とする成型物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音材およびその成型物に関する。より詳細には、軽量、寸歩安定性、機械的強度、防音性、難燃性などの諸特性に優れた防音材、および当該材料を用いてなる各種の成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
防音材料は、その効果に基づき、通常は遮音材料と吸音材料に区別することができる。吸音材料は、音のエネルギーを熱に変換する材料とされ、例えば各種の繊維材料(ガラスウール、ロックウール、化学繊維など)、剛性材料(発泡コンクリート、セラミック粒子結合体、ガラス粒子結合体など)、金属材料(アルミ繊維、アルミ焼結体、SUS焼結体など)などが知られている。一方、吸音材料は、単層品では一般的に質量則(遮音効果は当該材料の面密度に比例する)に依存するため、当該材料の用途に応じて、当該材料の厚みを調整したり、多層構造とするなどして使用されており、例えばボード系(スレート、フレキシブルボード、石膏ボードなど)、コンクリート系(ALC、コンクリートブロックなど)、金属系(鉄板、鉛板など)などが知られている。
【0003】
上記の防音材料の用途は、家電・OA機器、自動車、建築・住宅、橋梁・高速道路、鉄道車両など多岐に亘るが、特にガラス繊維や当該布帛を用いた防音材料は、建築・住宅用途や自動車用途に好適とされ、例えば床材料、壁材料、防音カーテン、自動車用ライニングなどに使用されている。
【0004】
ガラス繊維や当該布帛を用いた防音材料に関する先行技術を以下により具体的に示す。特許文献1には、ガラス繊維基材にポリウレタン樹脂を含浸させた半硬質重合体(例えば、感熱性ポリウレタン樹脂)の層を有する多層製品が開示され、当該多層製品は軽量で機械的対抗性に優れ、また美的効果や防音効果などを有するものであると記載されている。特許文献2には、ポリウレタン系樹脂処理を施したガラス繊維布帛からなることを特徴とする床材用補強部材が記載されている。
【0005】
なお、本願人は各種のシラン変性ポリウレタン、当該製造法、当該用途に関する発明を提案し、当該シラン変性ポリウレタンが各種の無機系基材に対する接着性に優れること、各種コーティング剤や接着剤などに利用できることなどにつき開示している(特許文献3〜8参照)。しかしながら、これらシラン変性ポリウレタンに基づく防音効果については、一切認識できていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−192677号公報
【特許文献2】特開2003−213572号公報
【特許文献3】特開平11−315264号公報
【特許文献4】特開2000−1647号公報
【特許文献5】特開2000−63661号公報
【特許文献6】特開2000−327739号公報
【特許文献7】特開2001−64346号公報
【特許文献8】特開2002−220431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ガラス繊維や当該布帛を用いた防音材および当該材料を用いてなる各種の成型物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ガラス繊維布帛のバインダーとして特定の有機無機ハイブリッドであるシラン変性ポリウレタンを用いた場合には、上記課題を解決しうる防音材およびその成型物が得られることを意外にも見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、シラン変性ポリウレタン樹脂をガラス繊維布帛に含浸させてなることを特徴とする防音材;当該防音材を用いてなる層(A)を含有することを特徴とする成型物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量、寸法安定性、機械的強度、防音性などの諸特性に優れた防音材および当該材料を用いてなる各種の成型物を提供できるという特有の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ガラス繊維および当該布帛について
本発明において用いるガラス繊維としては、ガラスフィラメント(単繊維)、当該単繊維を集束してなるストランド、当該ストランドに撚りをかけてなるガラスヤーン、前記ストランドに撚りをかけずに複数本引き揃えてなるロービングなどが挙げられる。また前記ガラス繊維から構成される布帛としては、例えば、前記ヤーンから織成された平織、からみ織、朱子織もしくは綾織等のガラスクロス、ロービングから織成されたロービングクロス、ガラスネットまたは編物などの織編布状のものなどが挙げられる。これらは、公知の方法で製造でき、また一般市販品を便宜に使用できる。なお、これらの原料であるガラスは、無アルカリガラス(例えば、Eガラス)、含アルカリガラス(例えば、Cガラス)、アルカリやホウ素、フッ素などの含量を低減したECRガラス等、何れであってもよい。
【0012】
本発明で用いるガラス繊維や当該布帛(以下、単に「ガラス基材」という)は、その表面をシランカップリング剤により処理したものであってもよい。シランカップリング剤は、通常、有機材料との親和性や結合性をもたらすための有機鎖部と、ガラス繊維や当該布帛の表面と化学的・電気的結合を形成させるための−SiOHや−SiORなどの官能基を有する無機鎖部とからなっている。そのため、シランカップリング処理を行うと、ガラス基材と後述するシラン変性ポリウレタン樹脂との接着性を一層高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾリンシラン、N−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩などの公知の化合物を挙げることができる。これらのシランカップリング剤を使用する場合、その付着量はガラス基材に対し0.05〜1重量%程度である。
【0013】
シラン変性ポリウレタン樹脂について
本発明で用いるシラン変性ポリウレタン樹脂としては、アルキレン基の炭素数が3以上であるポリオキシアルキレンジオールおよびポリイソシアネートならびに必要に応じて鎖伸長剤とを反応させてなるポリウレタンであって、水への接触角が70度以上のもの(PU1)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とを含有してなる組成物(C1);両末端にアルコキシシリル基を有するポリウレタン(PU2)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とからなる組成物(C2);高分子ポリオールおよびポリイソシアネートを主構成成分としてなり且つ両末端に水酸基を有するポリウレタン(PU3)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とを、脱アルコール反応させて得られる化合物(C3);高分子ポリオールとポリイソシアネートを反応させた後、鎖伸長剤として水酸基含有ポリアミン、第1級および第2級アミノ基含有ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させて得られるものであって、当該分子中に水酸基および/またはアミノ基を有し、且つ水酸基価とアミン価の合計が1以上のポリウレタン(PU4)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とからなる組成物(C4);高分子ポリオールおよびポリイソシアネートを主構成成分としてなり且つエポキシ基と反応性を有するポリウレタン(PU5)と、1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物と加水分解性アルコキシシランとの脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(S2)とを反応させて得られる化合物(C5)があげられ、これらのシラン変性ポリウレタン樹脂はそれぞれ1種単独で、または2種以上を適宜に組み合わせて使用することができる。
【0014】
より具体的には、前記組成物(C1)は特開平11−315264号公報に、組成物(C2)は特開2000−63661号公報に、化合物(C3)は特開2000−327739号公報に、組成物(C4)は特開2001−64346号公報に、化合物(C5)は特開2002−220431号公報に詳述されている。
【0015】
組成物C1、PU1、S1について
組成物C1の構成成分であるPU1は、アルキレン基の炭素数が3以上であるポリオキシアルキレンジオールおよびポリイソシアネートならびに必要に応じて鎖伸長剤とを反応させてなるポリウレタンであって、水への接触角が70度以上のものである。ここに、水への接触角とは、PU1の乾燥皮膜とその上に滴下した水滴との間で観察される接触角をいう。PU1はハードセグメントと疎水性のソフトセグメントから構成されている。当該ハードセグメントとはウレタン結合、ウレア結合等を多く含み、凝集してドメインを形成する部位であり、また当該疎水性のソフトセグメントとは長鎖状となり得られるPU1に柔軟性を与え、ハードセグメントが分散相として存在しうるマトリックス相(連続相)を形成する部位である。当該疎水性のソフトセグメントとは、得られるPU1の水への接触角が通常70度以上になるようなもの、好ましくは75度以上になるようなもの、更に好ましくは80度以上になるようなものをいう。なお、親水性のソフトセグメントを有するポリウレタンを用いた場合には、得られる組成物C1とガラス基材との接着層が脆くなる不利がある。
【0016】
疎水性の高分子ポリオールであるアルキレン基の炭素数が3以上のポリオキシアルキレンジオールは、PU1のソフトセグメントを形成するものであり、好ましくはアルキレン基の炭素数が4〜6であるものを例示できる。なお、アルキレン基は直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。当該ポリオキシアルキレンジオールは、通常、プロピレンオキサイド、オキセタン、テトラヒロドロフラン、3−メチルテトラヒロドロフラン等の、炭素数が3以上であるアルキレンオキサイドを開環重合または共重合することにより得られ、その具体例としては、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシブチレンジオール等があげられるが、特に好ましくはポリオキシブチレンジオールである。なお、ポリオキシエチレンジオール等のアルキレン基の炭素数が2以下のものでは親水性が強いため、本発明の効果を発現できない。
【0017】
当該ポリオキシアルキレンジオールの数平均分子量は、格別限定はされないが、通常1500〜6000程度であるのが好ましい。
【0018】
ポリイソシアネートは、PU1のハードセグメントを形成するものであり、例えば鎖状脂肪族ポリイソシアネート、環状脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、アミノ酸誘導体から得られるポリイソシアネート等の各種のものを例示できる。
【0019】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸が有するカルボキシル基をイソシアネート基に置き換えたダイマージイソシアネート等があげられる。環状脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等があげられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等のジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート等のテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等があげられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等があげられる。アミノ酸誘導体から得られるジイソシアネートの具体例としては、リジンジイソシアネート等があげられる。
【0020】
PU1に用いられる鎖伸長剤は、PU1のハードセグメントを形成するものであり、通常、炭素数2〜6程度の低分子ポリオールおよび/または低分子ポリアミンを好ましく使用できる。
【0021】
当該低分子ポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の低分子グリコール類、グリセリン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ソルビトール等の4価以上のアルコールがあげられる。
【0022】
また、当該低分子ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミン等のアミン化合物;2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン化合物等があげられる。
【0023】
これら鎖伸長剤の使用量は、前記ポリオキシアルキレンジオールとポリイソシアネートとの合計量の20重量%程度までであり、好ましくは15重量%以下である。
【0024】
PU1は、前記ポリオキシアルキレンジオール、ポリイソシアネート、および必要に応じて鎖伸長剤を反応させることにより得られる。当該反応としては、一般的なポリウレタンの製造法を採用でき、これら各成分の一括仕込み法のほか、鎖伸長剤を用いる場合には前記ポリオキシアルキレンジオールとポリイソシアネートを予め反応させるウレタンプレポリマー法を採用できる。また、各成分の使用量を適宜に調整することにより、本発明のポリウレタンの末端に水酸基、イソシアネート基、アミノ基のいずれの官能基を導入してもよい。更には、PU1の製造において、必要に応じてジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;エタノール、イソプロパノール等の一価アルコ−ル等の鎖長停止剤を用いることもできる。こうして得られたPU1の数平均分子量は1800〜100000程度であるのが好ましい。
【0025】
前記した加水分解性アルコキシシラン(S1)としては、一般的にゾル−ゲル法に用いられているものを使用できる。例えば、一般式:R1Si(OR4−m(式中、mは0〜2の整数を示し、R1は炭素原子に直結した官能基を持っていてもよい低級アルキル基、アリール基、または不飽和脂肪族残基であって、互いに同一または異なっていてよく、またRは水素原子または低級アルキル基を示す。)で表される化合物またはこれらの部分縮合物等を例示できる。なお、低級アルキル基とは炭素数6以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。
【0026】
S1の具体的としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;またはこれらの部分縮合物等があげられる。
【0027】
これらのなかでもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類またはこれらの部分縮合物等が好ましい。特に、一般式(a):
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、Meはメチル基を示し、nは0〜8の整数である)で表されるテトラメトキシシランの部分縮合物であるポリ(テトラメトキシシラン)が好ましい。また、当該ポリ(テトラメトキシシラン)の数平均分子量は260〜1116程度のものが好ましい。かかるポリ(テトラメトキシシラン)は、テトラメトキシシランとは異なり、脱メタノール反応において、生成メタノールとともに系外に留出しないため、反応操作の面で好ましく、また毒性の懸念もない。一方、一般式(a)において、nの値が8を超えると、PU1、PU2、PU4などとの相溶性が悪くなる傾向がある。
【0030】
S1の使用量は、得られる本発明の防音材の性能のうち、組成物C1におけるシラン変性ポリウレタンとガラス基材との接着性や防音効果などを考慮して決定され、具体的にはPU1(固形分換算100重量部)に対して、生成するシリカに換算して1〜50重量部程度となるような量とするのがよく、より好ましくは3重量〜30重量部である。すなわち、S1の縮合により生成するシリカが、PU1のハードセグメントが形成するドメインの総量を超える場合には、当該シリカが接着層で相分離し、ガラス基材との接着性が低下傾向にあることを考慮したためである。
【0031】
組成物C1においては、S1中の官能基の一部がシラノール基となるため、ガラス基材との接着性向上に寄与すると考えられる。また、S1が反応して生成するシリカの殆どは、PU1のハードセグメントのドメインに導入されて複合ドメインとなり、当該複合ドメインと疎水性のソフトセグメントが二層分離(海島)構造をとるハイブリッド体となる。得られる組成物C1の硬化物では、かかる二層分離構造に基づき、PU1のソフトセグメントが有する柔軟性を保持し、かつ複合ドメインが有する強靭であるため良好な耐熱性や防音性を発現しうる。
【0032】
組成物C2、PU2、S1について
組成物C2の構成成分であるPU2は、ポリウレタンの両末端にアルコキシシリル基を有する構造のものであれば特に限定はないが、例えば、イソシアネート基、水酸基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を両末端に有するポリウレタン(a)と、当該ポリウレタンの末端官能基と反応しうる官能基を有するアルコキシシラン(b)とから得られる反応物が該当する。当該ポリウレタン(a)は、ポリオール成分およびポリイソシアネート、さらにはこれらに鎖伸長剤を反応させることにより製造でき、ポリオール成分、ポリイソシアネート、鎖伸長剤の各成分の使用量を適宜に調整することにより、末端に所望の官能基を導入できる。なお、PU2としては、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンと、アミノ基を有するアルコキシシランとの反応物であるのが、合成の簡便さの観点から好ましく使用できる。
【0033】
前記ポリウレタン(a)におけるポリオール成分は、PU2のソフトセグメントを形成するものであり、水酸基を2個以上有する各種の化合物を使用できるが、高分子ポリオールを使用するのが柔軟性や強靭性の点から好ましい。高分子ポリオールとしては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和もしくは不飽和の各種公知の低分子グリコール類またはn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などとを脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリクロロプレンジオール、ポリブタジエングリコールの水素化物、ポリイソプレングリコールの水素化物等のポリオレフィンジオール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られたグリコール類、2つ以上の水酸基およびメルカプト基等の連鎖移動基を1つ有する連鎖移動剤の存在下にアルキル(メタ)アクリレート等の各種のラジカル重合性不飽和単量体を重合させて得られるアクリルポリマー等のマクロモノマー、ポリジメチルシロキサン等のポリアルコキシシラン類、ヒマシ油ポリオール、塩素化ポリプロピレンポリオール等があげられる。かかる高分子ポリオールのなかでも、ガラス基材に対する接着性に優れることから、ポリエステルポリオール類を使用するのが好ましい。なお、これら高分子ポリオールの数平均分子量は、通常1500〜6000程度である。
【0034】
当該ポリイソシアネート成分はPU2のハードセグメントを形成するものであり、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、環状脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、アミノ酸誘導体から得られるポリイソシアネート等の各種を例示できる。より具体的には、前記PU1において記述したと同様のポリイソシアネート成分と同様である。
【0035】
前記ポリウレタン(a)の構成成分である鎖伸長剤としては、通常、炭素数2〜6程度の低分子ポリオールおよび/または低分子ポリアミンを使用するのが好ましい。より具体的には、前記PU1における鎖伸長剤と同様であり、当該鎖伸長剤の使用量についても前記PU1におけると同様である。
【0036】
前記ポリウレタン(a)は、前記PU1の製造方法と同様にして製造でき、当該数平均分子量は1800〜100000程度とするのが好ましい。
【0037】
前記ポリウレタン(a)と反応させる前記アルコキシシラン(b)は、ポリウレタン(a)の官能基に応じた官能基を有するものを適宜に選択して使用する。すなわち、ポリウレタン(a)の末端官能基がイソシアネート基である場合には、水酸基および/またはアミノ基を有するアルコキシシラン(b)が使用され、またポリウレタン(a)の末端官能基が水酸基またはアミノ基である場合には、イソシアネート基を有するアルコキシシラン(b)が使用される。
【0038】
アミノ基を有するアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン等があげられる。また、イソシアネート基を有するアルコキシシランとしては、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルモノメチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルジメチルエトキシシラン等が例示できる。
【0039】
PU2も製造方法は格別限定されないが、例えば以下の方法を採用できる。末端がイソシアネート基のポリウレタン(a)に対しては、末端官能基と等量以下のアミノ基または水酸基含有アルコキシシラン(b)を添加し、同様に末端官能基が水酸基またはアミノ基であるポリウレタン(a)に対しても、官能基と等量以下のイソシアネート基含有アルコキシシラン(b)を添加して、30℃から100℃の範囲で1〜12時間程度、反応させることにより製造できる。
【0040】
組成物C2の構成成分であるS1は、前記PU1で用いたものと同様である。S1の使用量についても、得られる本発明の防音材性能のうち、組成物C2におけるシラン変性ポリウレタンとガラス基材との接着性を考慮して決定され、前記PU1における使用割合と同様である。
【0041】
化合物C3、PU3、S1について
化合物(C3)の構成成分であるPU3は、高分子ポリオールおよびポリイソシアネートを主構成成分としてなり且つ両末端に水酸基を有するポリウレタンである。当該高分子ポリオールは、PU3のソフトセグメントを形成するものであり、水酸基を2個以上有する各種の高分子ポリオールを例示できる。これらの具体例は、前記PU2の構成成分であるポリウレタン(a)において記述したと同様のものである。当該高分子ポリオールの中では、組成物(C3)の硬化物の性能(柔軟性や強靭性)に優れていることからポリオキシアルキレングリコールが好ましく、特にポリプロピレングリコール、ポリ(プロピレングリコール−エチレングリコール)ブロックコポリマーなどを例示できる。これら高分子ポリオールの数平均分子量は、前記と同様、通常1500〜6000程度であるのが好ましい。
【0042】
なお、PU3の構成成分として、必要に応じて、低分子ポリオールの使用も差し支えなく、炭素数2〜6程度の低分子ポリオールを使用するのが好ましい。特に、均一な硬化物が得られることから、3級アミノ基を持つジオール化合物を使用するのがより好ましい。低分子ポリオールの使用量は、その水酸基の当量が、高分子ポリオールの水酸基1当量に対して、通常、1以下、好ましくは0.8以下で使用される。
【0043】
当該ポリイソシアネートは、PU3のハードセグメントを形成するものであり、前記PU1やPU2の成分として用いたものと同様のポリイソシアネートを使用できる。
【0044】
PU3は、前記高分子ポリオールおよびポリイソシアネート、さらに必要により低分子ポリオールを主構成成分としてなり、かつ両末端に水酸基を有するものであり、PU3分子の両末端が水酸基になるように、高分子ポリオールとポリイソシアネート、さらに必要に応じて低分子ポリオールの使用量を適宜に調整して反応させることにより製造できる。当該製造方法は、前記PU1やPU2の場合と同様である。PU3の数平均分子量は3000〜50000程度とするのが好ましい。
【0045】
化合物C3は、前記PU3とS1とを脱アルコール反応させて得られるが、これらの使用割合(PU3/S1)は、通常、重量比で100/(3〜40)の範囲とするのが好ましい。当該使用割合において、S1の割合が少なくなると、化合物C3の硬化物にタックが残る傾向があるため、S1の割合は、5以上とするのがより好ましい。一方、S1の割合が多くなると、化合物C3の硬化時の収縮が大きくなり、ひび割れを起こす場合があるため、S1の割合は、35以下とするのがより好ましい。
【0046】
化合物C3は、例えば、前記各成分を仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながらエステル交換反応させて得られる。反応温度は70〜150℃程度、好ましくは80〜130℃であり、全反応時間は2〜15時間程度である。また、上記の脱アルコール反応に際しては、反応促進のために従来公知のエステルと水酸基のエステル交換触媒を使用することができる。たとえば、酢酸、パラ-トルエンスルホン酸、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸やリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシュウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガンのような金属や、これら酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド等があげられる。これらのなかでも、特に有機酸系や有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、酢酸、ジブチル錫ジラウレートが有効である。
【0047】
上記脱アルコール反応は、無溶剤下または溶剤存在下で行うことができる。作業性の観点から溶剤を使用する場合は、格別限定されないが、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトンなどの非プロトン性極性溶媒を用いるのが好ましい。
【0048】
こうして得られる化合物C3は、当該分子の両末端水酸基がシラン変性されたポリウレタンを主成分として含むが、生成物中には未反応のPU3やS1を少量含有していてもよい。
【0049】
組成物C4、PU4、S1について
組成物C4の構成成分であるPU4は、高分子ポリオールとポリイソシアネートを反応させた後、鎖伸長剤として水酸基含有ポリアミン、第1級および第2級アミノ基含有ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させて得られるものであって、当該分子中に水酸基および/またはアミノ基を有し、且つ水酸基価とアミン価の合計が1以上のポリウレタンである。PU4における水酸基および/またはアミノ基は、S1の加水分解によって生成するシラノール基と水素結合又は化学結合して、シリカをハードセグメントへと導く作用を有するため、PU4の水酸基価とアミン価の合計は1以上であり、更には2以上とするのが好ましい。また、水酸基価とアミン価の合計が多くなると、PU4の有機溶剤への溶解性が低下したり、合成時にゲル化を発生する原因となりうるため、水酸基価とアミン価の合計は、100以下、更には50以下とするのが好ましい。
【0050】
PU4における水酸基および/またはアミノ基は、当該分子の主鎖に存在するが、更に末端に存在していてもよい。かかる水酸基および/またはアミノ基は、各種手段により、ポリオール成分およびポリイソシアネート、さらには鎖伸長剤、鎖長停止剤を、水酸基価とアミン価の合計が前記の所定範囲になるように適宜に調整して反応させることにより、PU4に導入できる。
【0051】
例えば、PU4の分子末端に水酸基を導入する場合には、ポリオール成分およびポリイソシアネートを、ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量に対してポリオール成分の水酸基の当量が過剰になるように反応させる。
【0052】
PU4におけるポリオール成分は、PU4のソフトセグメントを形成するものであり、水酸基を2個以上有する各種の化合物を使用できるが、高分子ポリオールを使用するのが好ましい。これらの具体例としては前記PU1〜PU3で記述したと同様の化合物があげられる。また、PU4のポリイソシアネートも、前記PU1〜PU3で記述したと同様の化合物があげられる。
【0053】
前記ポリオール成分およびポリイソシアネートに、さらに、鎖伸長剤を反応させた場合には、PU4の主鎖、更には末端に、水酸基および/またはアミノ基を導入できる。ポリオール成分、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤の反応は、一般的なポリウレタンの製法を採用できるが、通常は、ポリオール成分とポリイソシアネートを予め反応させた後に鎖伸長剤を反応させるウレタンプレポリマー法を採用する。
【0054】
PU4の製造では、当該分子の主鎖に水酸基および/またはアミノ基を導入するために、鎖伸長剤としては、当該鎖伸長反応に関与しない水酸基および/またはアミノ基を持つ化合物を用いる。当該鎖伸長剤として水酸基含有ポリアミン化合物を使用できるが、当該化合物はアミノ基のみが当該鎖伸長反応に関与し、水酸基は未反応のままPU4の主鎖中に残存する。当該水酸基含有ポリアミン化合物としては、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等が例示できる。
【0055】
PU4の分子主鎖にアミノ基を導入するには、鎖伸長剤として、1級アミノ基と2級アミノ基を有するポリアミン化合物を用いる。当該ポリアミン化合物は、反応性の良い1級アミノ基のみが当該鎖伸長反応に関与し、2級アミノ基はPU4の主鎖中に残存する。当該当該ポリアミン化合物としては、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等が例示できる。
【0056】
PU4の分子末鎖に水酸基を導入する場合には、鎖伸長剤として、低分子ポリオールを用い、末端にアミノ基を導入する場合には、鎖伸長剤として低分子ポリアミン化合物を用いる。これらの場合にはウレタンポリマーのイソシアネート基の当量よりも鎖伸長剤のアミノ基および/または水酸基の当量が過剰になるように各成分を調整する。
【0057】
当該低分子ポリオールとしては、前記PU1などで記述したと同様の化合物を使用できる。また、当該低分子ポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等があげられる。
【0058】
これら鎖伸長剤は1種を単独でまたは2種以上を併用できるが、低分子ポリオールと前記ポリアミン化合物を併用する場合には、まず低分子ポリオールで鎖伸長した後、ポリアミン化合物で更に鎖伸長する2段階鎖伸張法を採用するのが好ましい。
【0059】
また、PU4の調製には、水酸基価とアミン価の合計が、前記の所定範囲に入るものであれば、必要に応じて、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;エタノール、イソプロパノール等の一価アルコール等の鎖長停止剤を用いることもできる。
【0060】
なお、これら鎖伸長剤と鎖伸張停止剤の使用量は水酸基価とアミン価の合計が、前記の所定範囲に入るものであれば、格別限定はされないが、ポリオール成分とポリイソシアネートとの合計量の20重量%程度までであり、さらには15重量%以下とすることが好ましい。
【0061】
こうして得られたPU4の数平均分子量は5000〜100000程度とするのが好ましい。
【0062】
組成物C4の構成成分であるSIは、前記PU1などで記述したと同様の化合物である。S1の使用量についても、得られる本発明の防音材性能のうち、組成物C4におけるシラン変性ポリウレタンとガラス基材との接着性を考慮して決定され、前記PU1における使用割合と同様である。
【0063】
化合物C5、PU5、S2について
組成物C5の構成成分であるPU5は、高分子ポリオールおよびポリイソシアネートを主構成成分としてなり且つエポキシ基と反応性を有するポリウレタンである。当該高分子ポリオールにおけるポリオール成分は、前記PU2の構成成分であるポリウレタン(a)において記述したと同様の化合物である。また、高分子ポリオールの一部を低分子ジオールに置換可能な点もポリウレタン(a)における記述と同様である。
【0064】
当該ポリイソシアネートについても前記PU1やポリウレタン(a)において記述したと同様の化合物を使用できる。更に、鎖伸長剤についても、前記PU1などにおいて記述したと同様の化合物を使用できるほか、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸など分子内にカルボキシル基を持つグリコール類なども使用できる。またPU5の分子量を調節するために、前記PU1やポリウレタン(a)において記述したと同様の鎖長停止剤を使用できる。
【0065】
PU5の製造方法は前記PU1におけると同様の方法を採用できる。
【0066】
PU5におけるエポキシ基と反応性を有する官能基は、当該分子の末端、主鎖のいずれに存在していてもよい。当該官能基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基などの酸性基、アミノ基、水酸基、メルカプト基などがあげられるが、通常はエポキシ基との反応性や、官能基付与容易性の点から酸性基、アミノ基が好ましい。PU5に酸性基を付与する方法に限定はないが、例えば前記の鎖伸長剤や鎖長停止剤のうちで、カルボキシル基を持つものを用いれば容易にカルボキシル基を付与できる。またPU5にアミノ基を付与する方法に限定はないが、例えばプレポリマーの末端イソシアネート基に対し、アミノ基が過剰になるようポリアミン類を反応させればよい。PU5におけるエポキシ基反応性官能基の量は特に制限されないが、通常は0.1〜20mgKOH/gであることが好ましい。0.1mgKOH/g未満になると得られるシラン変性ポリウレタン樹脂硬化物の柔軟性や耐熱性が低下し、また20mgKOH/gを超えるとシラン変性ポリウレタン樹脂硬化物の耐水性が低下する傾向がある。
【0067】
化合物C5の他の構成成分であるS2は、エポキシ化合物(α)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるものである。
【0068】
エポキシ化合物(α)としては、1分子中に水酸基を1つ持つエポキシ化合物であれば、エポキシ基の数は特に限定されない。また、エポキシ化合物(α)としては、分子量が小さいもの程、アルコキシシラン部分縮合物(B)に対する相溶性がよく、耐熱性や密着性付与効果が高いことから、炭素数が15以下のものが好適である。その具体例としては、エピクロロヒドリンと、水、2価アルコールまたはフェノール類とを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するモノグリシジルエーテル類;エピクロロヒドリンとグリセリンやペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールとを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するポリグリシジルエーテル類;エピクロロヒドリンとアミノモノアルコールとを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するエポキシ化合物;分子中に1つの水酸基を有する脂環式炭化水素モノエポキシド(例えば、エポキシ化テトラヒドロベンジルアルコール)などが例示できる。これらのエポキシ化合物の中でも、グリシドールが耐熱性や強靭性の点で最も優れており、またアルコキシシラン部分縮合物(B)との反応性も高いため、最適である。
【0069】
アルコキシシラン部分縮合物(B)は前記S1と同様の化合物であるが、当該アルコキシシラン部分縮合物(B)の数平均分子量は230〜2000程度のものが反応性がよく、また反応時に系外留去されにくいなどの理由から好ましく使用できる。
【0070】
S2は、エポキシ化合物(α)とアルコキシシラン部分縮合物(B)を脱アルコール(エステル交換)反応させることにより得られる。エポキシ化合物(α)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との使用割合は、アルコキシ基が実質的に残存するような割合であれば特に制限されないが、通常、エポキシ化合物(α)の水酸基の当量/アルコキシシラン縮合物(B)のアルコキシル基の当量=0.01/1〜0.7/1となる仕込み比率で、アルコキシシラン部分縮合物(B)とエポキシ化合物(α)を脱アルコール反応させることが好ましい。前記仕込み比率が少なくなるとエポキシ変性されていないアルコキシシラン部分縮合物(B)の割合が増加するため、前記仕込み比率は、0.03以上/1とするのが好ましい。また、前記仕込み比率が大きくなると、エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物のエポキシ基が多官能化し、シラン変性ウレタン樹脂合成時にゲル化しやすくなるため、前記仕込み比率は、0.5以下/1とするのが好ましい。
【0071】
アルコキシシラン部分縮合物(B)とエポキシ化合物(α)の反応は、たとえば、前記各成分を仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながら行なう。反応温度は50〜150℃程度、好ましくは70〜110℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。なお、脱アルコール反応を110℃を超える温度で行うと、反応系中でアルコキシシランの縮合に伴って、反応生成物の分子量が上がりすぎ、高粘度化やゲル化する傾向がある。このような場合には、脱アルコール反応を反応途中で、停止させるなどの方法により高粘度化、ゲル化を防止できる。また、当該脱アルコール反応に際しては、反応促進のために従来公知の触媒の内、エポキシ環を開環しないものを使用することができる。たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガンのような金属や、これら酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド等があげられる。これらのなかでも、特に有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などが有効である。また、当該反応は溶剤中で行うこともできる。溶剤としては、アルコキシシラン縮合物(B)とエポキシ化合物(α)を溶解し、且つエポキシ化合物(α)のエポキシ基に対して不活性なものであれば、特に限定されない。このような有機溶剤としては、PU5の製造に使用した溶剤を用いるのが好ましい。
【0072】
化合物C5は、PU5とS2とを反応させて得られる。PU5とS2の使用割合は、特に限定されないが、S2のエポキシ基の当量/PU5のエポキシ基反応性官能基の合計当量(当量比)が0.30〜5の範囲とするのが好ましい。0.30未満では、得られる化合物C5が十分に本発明の効果を発揮できず、また5を超えると化合物C5中の未反応S2の割合が増えるため好ましくない。
【0073】
化合物C5の製造は、例えば、前記各成分を仕込み、実質的に無水状態で加熱して反応させる。本反応はPU5の酸性基及び/又はアミノ基とS2のオキシラン基の反応を主目的にしており、本反応中にS2のアルコキシシリル部位のゾル−ゲル反応によるシリカの生成を抑える必要がある。そのため、反応温度は室温〜150℃程度、好ましくは40〜120℃であり、全反応時間は1〜10時間程度で行うのが好ましい。
【0074】
また、上記の反応に際しては、特に触媒は必要としないが、反応促進のために従来公知の触媒を使用することができる。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)ウレタンなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などをあげることができる。反応触媒はPU5の固形分100重量部に対し、0.01〜5重量部の割合で使用してもよい。
【0075】
また、上記反応は使用目的に応じて、溶剤中、無溶剤下のいずれかを適宜選定できる。溶剤としては、PU5およびS2を溶解する溶剤であれば特に限定はなく、当該溶剤としては、PU5又はS2の製造時に用いたと同様のものを使用できる。
【0076】
こうして得られた化合物C5は、その分子中にアルコキシシラン部分縮合物(B)に由来するアルコキシ基を有している。当該アルコキシ基の含有量は、特に限定はされないが、このアルコキシ基は溶剤の蒸発や加熱処理により、又は水分(湿気)との反応によりゾル−ゲル反応や脱アルコール縮合して、相互に結合した硬化物を形成するために必要となるため、アルコキシ基含有シラン変性ポリウレタン樹脂は通常、アルコキシシラン部分縮合物(B)のアルコキシ基の50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%を未反応のままで保持しておくのがよい。
【0077】
化合物C5から得られる硬化物は、ゲル化した微細なシリカ部位(シロキサン結合の高次網目構造)を有するものである。また化合物C5は、PU5中のエポキシ基反応性官能基の一部がシラン変性されたポリウレタン樹脂を主成分とするが、化合物C5中には未反応のアルコキシシラン部分縮合物(B)やS2、反応に使用した溶剤や触媒を含有されていてもよい。なお未反応のアルコキシシラン部分縮合物(B)、S2は硬化時に、加水分解、重縮合によりシリカ硬化し、化合物C5と一体化する。
【0078】
こうして調製された前記各種のシラン変性ポリウレタン(組成物C1、組成物C2、化合物C3、組成物C4、化合物C5)は、ガラス基材に対する接着性に優れており、以下の方法に従いガラス基材と配合して、本発明の防音材を調製することができる。なお、本発明の防音材の調製に際して、填料(シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど)、溶剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤などの各種添加剤を適宜に添加することもできる。また、各種の用途において、通常使用される成分を配合して使用できることはもとよりである。
【0079】
本発明では、ガラス基材が繊維である場合は、当該繊維を前記のシラン変性ポリウレタンやその有機溶剤溶液に浸漬する。ガラス基材が布帛である場合は、シラン変性ポリウレタン樹脂やその有機溶剤溶液に当該布帛を浸漬し、ついでこれを引き上げればよく、または当該布帛の片面または両面に塗布すればよい。塗布方法としては、例えばアプリケーター、ナイフコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ロッドコーター又は刷毛塗り等、公知の手段を採用できる。
【0080】
シラン変性ポリウレタン樹脂の塗布量又は含浸量は、当該ポリウレタン樹脂を塗布又は含浸させた前記ガラス基材に対して、1〜50重量%程度、好ましくは5〜25重量%である。かかる処理をガラス基材に施すことによって、ガラス基材の結束が強化され、得られる防音材成型物の防音性や強度が良好となる。
【0081】
本発明の防音材における防音性や強度は、用いるガラス基材の種類・当該厚さや、シラン変性ポリウレタン樹脂の塗布量又は含浸量に関係する。ガラス基材の厚さは、得られる防音材の用途に応じて適宜決定できるが、通常は1mm程度以下とされ、30〜500μm程度であるのが好ましい。一般に、成型物の単層での厚さが500μmを超えると、成型プレスをかけたときに防音材成型物に布帛の目が浮き出たり、上反り、膨れ等の原因となったり、剛性が大きくなり過ぎて柔軟性が損なわれ施工がし辛くなるなどの傾向がある。この場合には、多層構造の成型物とすることにより、布帛の目の浮き出し、上反り、膨れ等の問題を軽減できる。
【0082】
シラン変性ポリウレタン樹脂を必須成分とする本発明の防音材が前記のような諸特性を発現する理由は必ずしも明確ではないが、シラン変性ポリウレタン樹脂におけるS1およびS2由来の部位がガラス基材や填料との強く相互作用または反応することにより、強度、耐熱性、基材への接着性が向上すること、シラン変性ポリウレタン樹脂におけるソフトセグメント由来の部位が柔軟性を保持することにより適度の柔軟性を発現できるものと推定される。
【0083】
本発明の防音材は、意匠性などを考慮して、必要に応じ絵柄層や上塗り層を設けることもできる。当該絵柄層や上塗り層については格別の限定はなく、各種公知のものを適宜に選択して使用すればよい。
【実施例】
【0084】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。尚、各例中、部、%はいずれも原則として重量基準である。
【0085】
製造例1(ポリウレタン樹脂(PU1)の製造)
攪拌機、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)1000部とイソホロンジイソシアネート278部を仕込み、窒素気流下、80℃で4時間反応させ、次いで、系内にメチルエチルケトン2820部を加え、よく撹拌しながら50℃まで冷却した後、イソホロンジアミン114部とジブチルアミン18.2部をイソプロピルアルコール1410部に溶かした溶液を10分間で滴下し、その後、同温度で1時間反応させた。かくして、数平均分子量約20000、固形分25%のポリウレタン溶液(PU1)を得た。得られたポリウレタンの水への接触角は82度であった。
【0086】
製造例2(シラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1の製造)
製造例1で得られたポリウレタン溶液(PU1)100部、テトラメトキシシラン部分縮合体(S1)(多摩化学(株)製、商品名「メチルシリケート51」、Siの平均個数が4)3.43部、オクチル酸錫0.06部を混合し、シラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1を調製した。なおシラン変性ポリウレタン樹脂中の固形分中のSi含有量が、シリカ重量換算で6.5%であった。
【0087】
製造例3(エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(S2)の製造)
攪拌機、温度計、分水器、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、グリシドール(日本油脂(株)製、商品名「エピオールOH」)1400部およびテトラメトキシシラン部分縮合物(前記商品名「メチルシリケート51」)8957.9部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら、90℃に昇温した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート2.0部を加え、反応させた。反応中、分水器を使ってメタノールを留去し、その量が約630部に達した時点で冷却した。昇温後冷却までに要した時間は5時間であった。ついで、13kPaで約10分間、系内に残存するメタノール約80部を減圧除去した。このようにして、エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(S2)を得た。なお、仕込み時のエポキシ化合物(A)の水酸基の当量/アルコキシシラン縮合物(B)のアルコキシル基の当量(当量比)=0.10、エポキシ当量は512g/eqである。
【0088】
製造例4(ポリウレタン樹脂(PU5)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルCD220」、分子量2000)1000部とイソホロンジイソシアネート278部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ、これにメチルエチルケトン548部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン46.4部、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン14.2部 、ジ−n−ブチルアミン6.1部、メチルエチルケトン1249部及びイソプロピルアルコール776部からなる混合物の存在下に、上記ウレタンプレポリマー溶液1000部を添加し、50℃で3時間反応させた。かくして、数平均分子量約15000、樹脂固形分のアミン価が4.0mgKOH/g、固形分25%のポリウレタン溶液(PU5)を得た。
【0089】
製造例5(シラン変性ポリウレタン樹脂C5の製造)
製造例4で得られたポリウレタン樹脂(PU5)100部を50℃に加温した後、製造例3で得たエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(S2)3.7部を加え、窒素気流下、60℃で4時間反応させ、シラン変性ポリウレタン樹脂(C5)を得た。なおアルコキシ基含有シラン変性ポリウレタン樹脂中の固形残分中のSi含有量が、シリカ重量換算で6.5%であった。
【0090】
実施例1(防音成型物の調製)
80cm×80cmのガラスクロス〔単繊維径6μm、クロスの重量335g/m、クロスの密度(2.5cm当たりの単繊維の本数)が30×28のもの〕に、製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1を、気泡を含ませないよう含浸させた後、当該樹脂組成物C1を片面づつ塗り重ね、合計7層で全体の厚みが約0.8mmであり、シラン変性ポリウレタン樹脂層を6層有する防音シートを調製した。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0091】
比較例1
実施例1において、製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1に代えて、製造例1で得られたポリウレタン樹脂PU1を用いた他は、実施例1と同様にして、合計7層で全体の厚みが約0.8mmである防音シートを得た。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0092】
実施例2
実施例1で用いたと同一のガラスクロスに、製造例1で得られたポリウレタン樹脂PU1を含浸させた後、その両面にそれぞれ製造例1で得られたポリウレタン樹脂PU1を塗工し常温で乾燥させた。ついで、当該両面にそれぞれ製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1を塗工し常温で乾燥させた。更に、当該両面にそれぞれ製造例1で得られたポリウレタン樹脂PU1を塗工し常温で乾燥させることにより、合計7層で全体の厚みが約0.8mmであり、シラン変性ポリウレタン樹脂層を4層有する防音シートを調製した。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0093】
実施例3
実施例1で用いたと同一のガラスクロスに、製造例5で得られたポリウレタン樹脂C5を、気泡を含ませないよう含浸させた後、その両面にそれぞれ当該樹脂C5を塗工し常温で乾燥させた。ついで、当該両面にそれぞれ製造例1で得られたポリウレタン樹脂PU1を塗工し常温で乾燥させた。更に、当該両面にそれぞれ当該樹脂C5を塗工し常温で乾燥させることにより、合計7層で全体の厚みが約0.8mmであり、シラン変性ポリウレタン樹脂層を4層有する防音シートを調製した。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0094】
実施例4
80cm×80cmのガラスクロス〔単繊維径9μm、クロスの重量312g/m、クロスの密度(2.5cm当たりの単繊維の本数)が32×25のもの〕に、製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1を、気泡を含ませないよう含浸させた後、その両面にそれぞれ当該樹脂組成物C1を塗工し常温で乾燥させた。ついで、当該両面にそれぞれ製造例5で得られたポリウレタン樹脂C5を塗工し常温で乾燥させた。更に、当該両面にそれぞれ当該樹脂組成物C1を塗工し常温で乾燥させることにより、合計7層で全体の厚みが約0.8mmであり、シラン変性ポリウレタン樹脂層を6層有する防音シートを調製した。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0095】
比較例2
比較例1において、異なるガラスクロス(実施例4で用いたと同一のもの)に代えた他は、比較例1と同様にして、合計7層で全体の厚みが約0.8mmである防音シートを得た。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0096】
(防音性の測定)
JIS Z 8732に準拠して測定した。すなわち、湿度56%、温度26℃の半無音響室に、前記で得られた防音材(両面塗工シート)を垂直になるよう設置し、当該シート面に対して垂直になるよう、音波(音圧レベル80dB、入力波の中心周波数2.5KHz)を照射し、2500HZにおける入射音および透過音の強度を測定した。これにより、次式より透過率(τ)を求めた。透過率(τ)=透過音の強度/入射音の強度
【0097】
また、上記の透過率(τ)から、次式に従い透過損失(R)を求めた。
R=10log101/τ
【0098】
得られた透過損失を表1に示す。透過損失が大きいほど防音性に優れることを意味する。
【0099】
【表1】

【0100】
実施例1と比較例1を対比して明らかなように、本願発明に係わる防音材の方が防音効果に優れることが認められる。同様に、実施例2、3と比較例1を対比して明らかなように、本願発明に係わる防音材の方が防音効果に優れることが認められる。更に、実施例4と比較例2を対比して明らかなように、本願発明に係わる防音材の方が防音効果に優れることが認められる。
【0101】
製造例6(シラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1の製造)
製造例1で得られたポリウレタン溶液(PU1)100部、テトラメトキシシラン部分縮合体(S1)(多摩化学(株)製、商品名「メチルシリケート51」、Siの平均個数が4)6.86部、オクチル酸錫0.06部を混合し、シラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1−2を調製した。なおシラン変性ポリウレタン樹脂中の固形分中のSi含有量が、シリカ重量換算で12.3%であった。
【0102】
製造例7(ポリウレタン樹脂組成物の製造)
製造例1で得られたポリウレタン溶液(PU1)100部にシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名「MEK−ST」、シリカ含有量:30重量%)5.83部を添加し、常温で撹拌混合することにより、ポリウレタン樹脂組成物PU2を調製した。なおポリウレタン樹脂組成物(固形分として)中のシリカ含有量は6.5%である。
【0103】
実施例5(防音成型物の調製)
80cm×80cmのガラスクロス〔単繊維径6.5μm、クロスの重量343g/m、クロスの密度(2.5cm当たりの単繊維の本数)が29×32のもの〕に、製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1を、気泡を含ませないよう含浸させた後、当該シラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1を片面づつ塗り重ね、シラン変性ポリウレタン樹脂層を6層有する防音シートを調製した。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0104】
実施例6
実施例5において、製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1に代えて、製造例6で得られたポリウレタン樹脂C1−2を用いた他は、実施例5と同様にして、シラン変性ポリウレタン樹脂層を6層有する防音シートを調製した。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0105】
比較例3
実施例5において、製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1に代えて、製造例1で得られたポリウレタン樹脂PU1を用いた他は、実施例5と同様にして、合計7層で全体の厚みが約0.7mmである防音シートを得た。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0106】
比較例4
実施例5において、製造例2で得られたシラン変性ポリウレタン樹脂組成物C1に代えて、製造例7で得られたポリウレタン樹脂組成物PU2を用いた他は、実施例5と同様にして、合計7層で全体の厚みが約0.7mmである防音シートを得た。なお各層の厚みは約0.1mmである。
【0107】
実施例5、実施例6、比較例3および比較例4で得られた各防音シートを用いて、前記と同様(但し、測定時の湿度は45%、温度は23℃)にして防音性を測定した。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
表1の実施例1と表2の実施例5を比較して、ガラスクロスの種類や、測定時の湿度・温度の相違により、防音性のデータに若干の差異が認められるが、表1における実施例1と比較例1の差異(本願発明に係わる防音材の方が防音効果に優れること)と同様、表2における実施例5と比較例3の差異が同様の傾向(本願発明に係わる防音材の方が防音効果に優れること)を示すことが確認できた。また、表2の実施例5と比較例4を対比して明らかなように、本願発明に係わる防音材の方が防音効果に優れることが認められた。すなわち、シラン変性ポリウレタン(分子内にシリカ形成部位を有する)の方が、ポリウレタンとシリカの混合物に比べて、防音効果に優れることが確認できた。更に、実施例6と比較例3、4を対比して明らかなように、本願発明に係わる防音材の方が防音効果に優れることが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン変性ポリウレタン樹脂をガラス繊維または当該布帛に含浸させてなることを特徴とする防音材。
【請求項2】
ガラス繊維が単繊維、ストランド、ヤーンおよびロービングからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、ガラス布帛が当該ガラス繊維で構成された厚み0.03〜0.5mmのものである請求項1に記載の防音材。
【請求項3】
シラン変性ポリウレタン樹脂が、アルキレン基の炭素数が3以上であるポリオキシアルキレンジオールおよびポリイソシアネートならびに必要に応じて鎖伸長剤とを反応させてなるポリウレタンであって、水への接触角が70度以上のもの(PU1)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とを含有してなる組成物(C1)である請求項1または2に記載の防音材。
【請求項4】
シラン変性ポリウレタン樹脂が、両末端にアルコキシシリル基を有するポリウレタン(PU2)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とからなる組成物(C2)である請求項1または2に記載の防音材。
【請求項5】
シラン変性ポリウレタン樹脂が、高分子ポリオールおよびポリイソシアネートを主構成成分としてなり且つ両末端に水酸基を有するポリウレタン(PU3)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とを、脱アルコール反応させて得られる化合物(C3)である請求項1または2に記載の防音材。
【請求項6】
シラン変性ポリウレタン樹脂が、高分子ポリオールとポリイソシアネートを反応させた後、鎖伸長剤として水酸基含有ポリアミン、第1級および第2級アミノ基含有ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させて得られるものであって、当該分子中に水酸基および/またはアミノ基を有し、且つ水酸基価とアミン価の合計が1以上のポリウレタン(PU4)と、加水分解性アルコキシシラン(S1)とからなる組成物(C4)である請求項1または2に記載の防音材。
【請求項7】
シラン変性ポリウレタン樹脂が、高分子ポリオールおよびポリイソシアネートを主構成成分としてなり且つエポキシ基と反応性を有するポリウレタン(PU5)と、1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物と加水分解性アルコキシシランとの脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(S2)とを反応させて得られるもの(C5)である請求項1または2に記載の防音材。
【請求項8】
ポリウレタン(PU2)が、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンと、アミノ基を有するアルコキシシランとの反応物である請求項4に記載の防音材。
【請求項9】
ポリウレタン(PU3)が、当該高分子ポリオールとしてポリオキシアルキレングリコールを用いたものである請求項5に記載の防音材。
【請求項10】
ポリウレタン(PU5)が、当該高分子ポリオールとしてポリエステルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを用いたものである請求項7に記載の防音材。
【請求項11】
加水分解性アルコキシシラン(S1)が、一般式(a):
【化1】

(式中、Meはメチル基を示し、nは0〜8の整数である)で表されるポリ(テトラメトキシシラン)である請求項1〜10のいずれかに記載の防音材。
【請求項12】
フィラーを更に含有する請求項1〜11のいずれかに記載の防音材。
【請求項13】
フィラーがシリカである請求項12に記載の防音材。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の防音材を用いてなる層(A)を含有することを特徴とする成型物。
【請求項15】
当該層(A)の片側又は両側に絵柄層および/または上塗り層を設けてなる請求項14に記載の成型物。
【請求項16】
成型物の形状がシートである請求項15に記載の成型物。

【公開番号】特開2006−143982(P2006−143982A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−908(P2005−908)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】