階調補正方法、階調補正装置及びコンピュータプログラム
【課題】グレースケール標準表示関数に従って階調補正を行う階調補正方法、階調補正装置及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】各階調の階調画像を表示し(S13)、輝度計により計測された階調画像の輝度のデータを取得する(S14)。次いで、設定された白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従う目標輝度を算出する(S15)。目標輝度を与える画像のRGB値と計測輝度を与える階調画像のRGB値とを比較し、両者が一致しない場合には、黒色輝度又は白色輝度を調整しながら(S19又はS21)、目標輝度の再調整を行う。両RGB値が一致する場合、出力階調値に対応したRGB値(入力階調値)を登録することにより(S23)、ルックアップテーブルを完成させ、このルックアップテーブルを反映させた階調補正を行う(S26)。
【解決手段】各階調の階調画像を表示し(S13)、輝度計により計測された階調画像の輝度のデータを取得する(S14)。次いで、設定された白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従う目標輝度を算出する(S15)。目標輝度を与える画像のRGB値と計測輝度を与える階調画像のRGB値とを比較し、両者が一致しない場合には、黒色輝度又は白色輝度を調整しながら(S19又はS21)、目標輝度の再調整を行う。両RGB値が一致する場合、出力階調値に対応したRGB値(入力階調値)を登録することにより(S23)、ルックアップテーブルを完成させ、このルックアップテーブルを反映させた階調補正を行う(S26)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレースケール標準表示関数に従って階調補正を行う階調補正方法、階調補正装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場におけるフィルムレス化が急速に進み、医療用画像の表示装置として液晶ディスプレイが使用されるようになってきている。正確な診断をサポートするために、医療現場で使用される液晶ディスプレイには、一般用途の液晶ディスプレイと比較して、高輝度・高コントラストのものが要求される。また、画像を正確に表示するために、表示のムラを少なくし、階調特性を正確に表現することも求められている。
【0003】
医療用の表示装置に要求される階調特性を表した関数として、DICOM規格(DICOM : Digital Imaging and COmmunication in Medicine)のPart14で規定されたグレースケール標準関数(GSDF : Grayscale Standard Display Function)が知られている。
グレースケール標準関数(以下、DICOMカーブという)では、どの階調間でも輝度差が等しく認識されるように階調特性が定められており、最低階調の輝度(黒色輝度)と最高階調の輝度(白色輝度)とによって、中間階調において参照すべき輝度が決定されるように構成されている。
【0004】
このようなDICOMカーブに準拠した階調特性を得ようとすれば、表示装置に表示した画像の輝度を計測し、計測結果に従ってルックアップテーブルを作成し、表示装置にフィードバックすればよい。具体的には、まず、信号源から256個程度の階調画像を出力させて表示装置に表示し、輝度計を用いて各階調の輝度を計測する。そして、計測した輝度のうち、最低階調に対応した輝度(黒色輝度)と最高階調に対応した輝度(白色輝度)とを用いて目標のDICOMカーブを算出し、算出した輝度に近い値が得られるように入力値を換算するルックアップテーブルを作成すればよい(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0005】
また、全階調で同じ色にする場合は、前述と同様にして、RGBの色成分毎に目標カーブを設定し、これに近い値となるルックアップテーブルを作成することが可能である。
更に、DICOMカーブに準拠しつつ、全階調の色補正を行う場合には、最終的な白色輝度、黒色輝度及び色を予め決めておくことにより、RGBの各色成分の目標カーブが定まり、これに適合するルックアップテーブルを作成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−244436号公報
【特許文献2】特開2005−157260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DICOMカーブは、黒色輝度及び白色輝度によって各階調の輝度が算出されるため、通常の方法では、DICOMカーブに準拠しつつ、全階調について色補正を行うことはできない。例えば、先にDICOM調整を行い、その後に色補正を行った場合、黒色輝度や白色輝度が変化するため、理想のDICOMカーブから外れてしまうからである。
【0008】
逆に、全階調の色補正を行い、仮のルックアップテーブルを作成してからDICOM調整を行い、最終のルックアップテーブルを決定する場合、仮のルックアップテーブルをフィードバックする必要があり、処理が複雑となる。また、この手法では、輝度を再計測しなければならないため、時間が掛かるという問題点を有している。更に、2回の輝度計測間で計測誤差が生じた場合、正確なDICOM調整が行えない虞がある。
【0009】
白色輝度及び黒色輝度を予め定めることにより、上記の問題点は解決する。しかしながら、人為的に白色輝度及び黒色輝度を定める手法では、必ずしも医療用の表示装置に要求されるような表示性能が得られない。例えば、白色輝度及び黒色輝度を予め定めてDICOM調整を行う場合、ルックアップテーブルの作成時にエラーが発生しないように、マージンを設定して白色輝度及び黒色輝度を定める必要があるため、黒色輝度については表示装置が本来表示可能な黒色輝度より高く、白色輝度は低くなり、コントラストが大きく低下する。一方、予め定める白色輝度を高く設定したり、黒色輝度を低く設定した場合には、ルックアップテーブルの作成時に目標値に達しないことがあり、エラーが発生する。
【0010】
本願は、上記の課題を解決するため、輝度を再計測することなく、予め定めた階調特性曲線から外れずに全階調で色補正を実行することができ、しかも可能な限り高輝度及び高コントラストを実現することができる階調補正方法、階調補正装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に開示する階調補正方法は、複数の色成分の階調値を示す画像信号に従い表示装置に画像を表示し、前記表示装置に表示した画像の階調値毎の輝度を計測し、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出し、計測した輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定し、両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出し、両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成し、画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願によれば、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定するような関数により定められる階調特性曲線に対応した色補正を実行することができ、調整対象の表示装置が本来有する表示性能の範囲内で輝度を高めることでき、高コントラストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【図2】従来例における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。
【図3】従来例において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。
【図4】調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。
【図5】本願における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。
【図6】目標輝度を再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。
【図7】目標輝度を更に再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。
【図8】本実施の形態において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。
【図9】調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。
【図10】本実施の形態に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態3に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る表示装置1は、画像信号が入力される画像信号入力部11、画像信号入力部11に入力された画像信号に基づき画像を表示する表示部12、表示部12に表示した画像の輝度が輝度計2により計測された後、この輝度計2から輝度のデータを取得する入力インタフェース13、取得した輝度のデータを基に演算を行う演算部14、取得した輝度のデータや演算結果として得られるデータ等を記憶する記憶部15、ハードウェア各部の全体的な制御を行う制御部16を備える。
記憶部15には、本願による階調補正方法(DICOM調整)を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されており、制御部16が、このコンピュータプログラムを実行して、ハードウェア各部の制御を行うことにより、表示装置1を本願の階調補正装置として機能させる。
【0015】
以下、本願のDICOM調整の手法を、従来のDICOM調整手法と対比させながら説明する。
図2は、従来例における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。図2(a)は、目標とするDICOMカーブの一例を示したテーブルである。前述したように、DICOMカーブでは、最低階調の輝度と最高階調の輝度とを与えることにより、各階調における輝度が定まる。例えば、図2(a)の例では、最低階調の輝度として階調値0に対応した輝度(1.00)と、最高階調の輝度として階調値255に対応した輝度(240)とを与えることにより、階調値1〜254のそれぞれに対応した輝度が定まる。
【0016】
新たな表示装置についてDICOM調整を行う場合、表示装置がどの程度の輝度で画像を表示し得るのかについては未知であるため、従来例では、ルックアップテーブルの作成時にエラーが発生しないようにマージンを持たせる必要があり、最低階調の輝度を高めに、最高階調の輝度を低めに設定する。
【0017】
図2(b)に示した例では、階調値(入力階調値)を0〜1023まで変更しながら、各階調画像の輝度を計測した結果を示している。この計測の結果、最低階調(階調値0)の輝度は0.30であり、最高階調(階調値1023)の輝度が300であった。他の階調での輝度についても、図2(b)に示したような値が得られた。なお、各階調階調のRGB値は、図2(b)に示した値を用いているものとしている。
【0018】
ルックアップテーブルを作成する際、目標とするDICOMカーブにおける各色成分(RGB値)に近い値を、輝度の計測結果から検索する。そして、検索されたRGB値を与える階調値(入力階調値)を階調画像の階調値に対応付けて登録することにより、ルックアップテーブルを作成する。例えば、図2(a)のテーブルを参照した場合、階調値0のRの色成分は0.08であるため、この0.08に近い色成分を、図2(b)に示すような計測結果のテーブルから検索する。図2(b)において、Rの色成分が0.08となる階調画像の入力階調値は50であるため、出力階調値0に対応した入力階調値(R)として検索結果の50という数値をルックアップテーブルに登録する。他の階調値、他の色成分についても同様にして、色成分の値の検索と検索結果である入力階調値の登録とを繰り返して実行することにより、ルックアップテーブルを完成させる。
図3は、従来例において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。作成されたルックアップテーブルは、RGBの各入力階調値に対し、0〜255の出力階調値を与える。
【0019】
以上のように、従来例では、DICOMカーブに対応する目標輝度を、実際の表示画像の輝度計測結果から検索して、ルックアップテーブルを作成することでDICOM調整を行うため、目標輝度のレンジを拡げすぎた場合には、検索時に該当する色成分の値が存在しない虞がある。このような検索エラーが生じた場合、DICOM調整は途中で停止することになるため、目標とするDICOMカーブを再設定し、再度、DICOM調整を実行しなければならない。検索エラーを回避するためには、目標輝度のレンジを狭く(すなわち、黒色輝度を高く、白色輝度を低く)設定した状態でDICOMカーブにおける各階調の輝度を演算し、DICOM調整を行う必要がある。
【0020】
したがって、黒色輝度及び白色輝度を予め固定した上でDICOM調整を行う従来手法の場合、調整後のコントラストは、調整対象の表示装置が本来的に表示できるコントラストよりかなり低下することとなり、調整後の輝度も低下する。図4は、調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。図2(b)の輝度計測結果を参照すれば、最高輝度(白色輝度)は300であり、最低輝度(黒色輝度)が0.3であるため、コントラストは1000:1となる。これは、計測した表示装置が本来表示できる性能を表している。これに対し、前述のようなDICOM調整を行った場合、表示性能は、図2(a)に示されるようなDICOMカーブに従うため、調整後の最高輝度は240、最低輝度は1、コントラストは240:1となり、表示輝度及びコントラストがかなり低下していることが分かる。
【0021】
次に、本願によるDICOM調整手法について説明する。図5は、本願における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。本願においてもDICOMカーブを使用する点では従来と同様であり、最低階調の輝度と最高階調の輝度とを与え、各階調値における目標輝度を算出する。ただし、本願においては、従来例のように、目標輝度のレンジを予め狭く設定しておく必要はなく、最低階調の輝度(黒色輝度)を低く、最高階調の輝度(白色輝度)を高く設定することができる。図5(a)は、本願において目標とするDICOMカーブの一例を示したテーブルである。
【0022】
また、従来例と同じように、階調値(入力階調値)を0〜1023まで変更しながら各階調画像の輝度を計測し、計測結果を取得する。図5(b)は、輝度計測結果の一例を示している。
なお、本実施の形態では、階調値が0〜1023の1024個の階調画像について輝度を計測する構成としたが、1024個の全ての階調画像の輝度を計測する代わりに、予め定めた複数の階調値に対応した階調画像の輝度を計測し、それ以外の階調値に対応した階調画像の輝度は直線補間やスプライン補間などの補間演算によって求める構成としてもよい。この場合、低階調側及び高階調側の密度を上げ、中間調の密度を下げることにより、誤差の低下が避けられる。また、入力画像の階調数は1024に限定されるものではないことは勿論のことである。
【0023】
次いで、目標輝度を与えるRGB値と輝度計測を行った際に用いた各階調画像のRGB値との比較を行う。このとき、目標輝度を与える画像のRGB値を、計測輝度を与える画像(入力画像)のRGB値から検索し、近い値のRGB値が存在するか否かを判定する。近い値のRGB値が存在しない場合には、黒色輝度及び白色輝度の値を再設定し、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度及びRGB値を算出し直して、近い値が存在するか否かの再判定を行う。本実施の形態では、黒色輝度を再設定する場合には、高輝度側へ値を変更し、白色輝度を変更する場合には、低輝度側へ値を変更する。
目標輝度を与える画像のRGB値に近い値が存在すると判定した場合、入力画像のRGB値と出力階調値との関係を示すルックアップテーブルを作成する。
【0024】
なお、目標輝度を与える画像のRGB値と計測輝度を与える画像(入力画像)のRGB値とが近いか否かの判定は、両者の差が予め定めた範囲であるか否かを判定することによって行う。両者の差が予め定めた範囲内であれば、目標輝度を与える画像のRGB値と計測輝度を与える画像(入力画像)のRGB値とが近いと判定する。
【0025】
例えば、図5(a)を参照すれば、階調値0において、輝度0.30の画像を与えるRGBの値は、それぞれ0.01,0.01,0.01であることが分かる。一方、図5(b)に示す輝度計測結果を参照すれば、輝度計測時の入力画像(各階調画像)のうち、G及びBの値が0.01となる入力画像は輝度0.30の入力画像として存在するものの、Rの値が0.01となる入力画像は存在していない。この場合、本実施の形態では、最低輝度である黒色輝度の値を高く設定し直して、DICOMカーブに従う目標輝度の値を再度算出する。
【0026】
また、図5(b)を参照すれば、階調値255において、輝度280の画像を与えるRGBの値は、それぞれ0.80,0.90,1.00であることが分かる。一方、図5(b)に示す輝度計測結果を参照すれば、輝度計測時の入力画像(各階調画像)のうち、Bの値が1.0となる入力画像は存在しないことが分かる。この場合、本実施の形態では、最高輝度である白色輝度の値を低く設定し直して、DICOMカーブに従う目標輝度の値を再度算出する。
【0027】
図6は、目標輝度を再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。図6に示した例は、黒色輝度を0.30から0.40に変更し、白色輝度を280から279に変更して、DICOMカーブに従って目標輝度及びRGB値を設定し直したテーブルである。黒色輝度を0.30から0.40に変更したことによって、その階調におけるRGBの値が、それぞれ0.02,0.02,0.03となったため、Rの値についても輝度計測時の入力画像の値として含まれることとなった。すなわち、再設定後の階調値0(輝度0.40)のRの値と、輝度計測時の入力画像のうち、階調値が0の入力画像のRの値とが一致することになった。なお、図6には明示していないが、再設定後の階調値0(輝度0.40)のB及びGの値については、輝度計測時の入力画像のうち、階調値が1以上の入力画像にそれぞれの値が含まれているものとしている。
【0028】
一方、白色輝度を280から279に変更したことによって、その階調におけるRGBの値は、それぞれ0.79,0.89,0.99となった。このうち、Bの値は、依然として輝度計測時の入力画像の値として含まれていない。このため、白色輝度の値のみを更に低く設定し直して、DICOMカーブに従う目標輝度の値を再度算出する。
【0029】
図7は、目標輝度を更に再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。図7に示した例は、黒色輝度を変更せずに、白色輝度を279から260に変更して、DICOMカーブに従って目標輝度及びRGB値を設定し直したテーブルである。白色輝度を260へ変更したことによって、その階調におけるRGBの値は、それぞれ0.75,0.85,0.95となり、RGBの値が輝度計測時の入力画像の値として含まれることとなった。したがって、図7で示されるDICOMカーブを最終的な目標輝度として設定し、入力画像のRGB各色の階調値と表示画像(グレースケールの画像)の階調値との関係を示すルックアップテーブルを作成する。図8は、本実施の形態において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。
【0030】
本願によるDICOM調整では、目標輝度のレンジを予め広く設定し、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭める構成であるため、全階調において色補正を実施しつつ、評価対象の表示装置において可能な限り高輝度及び高コントラストを実現することができる。図5〜図8を用いて説明した本願のDICOM調整の具体例に従って調整前後の輝度及びコントラストを比較する。図9は、調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。図5(b)の輝度計測結果を参照すれば、最高輝度(白色輝度)は300であり、最低輝度(黒色輝度)が0.3であるため、コントラストは1000:1となる。これに対し、最終調整が得られたDICOMカーブ(図7)を参照すると、調整後の最高輝度は260、最低輝度は0.3であり、コントラストは650:1となる。したがって、予め設定したレンジの目標輝度を用いてDICOM調整を行う従来手法と比較して、輝度及びコントラストが改善することが分かる。
【0031】
以下、本実施の形態に係る表示装置1が実行する処理の手順を説明する。
図10は、本実施の形態に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。表示装置1の制御部16は、まず、取得する画像の階調値nをゼロにセットする(ステップS11)。次いで、表示装置1は、階調値nの階調画像を示す画像信号を画像信号入力部11を通じて取得し(ステップS12)、取得した画像信号に基づいて階調値nの階調画像を表示部12に表示する(ステップS13)。
【0032】
表示部12に表示された階調値nの階調画像の輝度が輝度計2により計測される。表示装置1は、輝度計2によって計測された輝度のデータを入力インタフェース13を通じて取得する(ステップS14)。表示装置1は、取得した輝度のデータを、階調値n、階調画像の各色成分の値(RGB値)に対応付けて、計測結果テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0033】
次いで、表示装置1の制御部16は、階調値nが1023に達したか否かを判断する(ステップS15)。階調値nが1023に達していないと判断した場合(S15:NO)、制御部16は、階調値nの値を1だけインクリメントして(ステップS16)、処理をステップS12へ戻す。
【0034】
なお、本実施の形態では、入力される画像信号が示す階調数を1024と想定しているため、階調値nが1023に達したか否かを判定する構成としたが、入力画像信号が示す階調数は1024に限定する必要はない。また、前述したように、補間演算によって輝度を求めることも可能であるため、全ての階調値に対応した階調画像を表示する必要もない。よって、ステップS15で判断する階調数、ステップS16でインクリメントする値は適宜設定し得るものである。
【0035】
階調値nが1023に達したと判断した場合(S15:YES)、表示装置1の演算部14は、予め設定した白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度を算出する(ステップS17)。表示装置1は、各階調の目標輝度及びRGB値を階調値に対応付けて目標輝度テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0036】
次いで、表示装置1の制御部16は、記憶部15に記憶されている計測結果テーブルと目標輝度テーブルとを比較し、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最小値より小さい値が存在するか否かを各色成分毎に判断する(ステップS18)。前記最小値より小さい値が存在すると判断した場合(S18:YES)、黒色輝度の値を所定値αだけ高く設定して(ステップS19)、処理をステップS17へ戻し、目標輝度の再計算を行う。
【0037】
前記最小値より小さい値が存在しないと判断した場合(S18:NO)、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最大値より大きい値が存在するか否かを各色成分毎に判断する(ステップS20)。前記最大値より大きい値が存在すると判断した場合(S20:YES)、白色輝度の値を所定値βだけ低く設定して(ステップS21)、処理をステップS17へ戻し、目標輝度の再計算を行う。なお、所定値α,βの値は、適宜設定し得る値であり、所定値α及びβは同一の値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0038】
前記最大値より大きい値が存在しないと判断した場合(S20:NO)、表示装置1の制御部16は、出力階調値mをゼロにセットし(ステップS22)、出力階調値mの目標値に近い値を有する入力画像の各色成分の階調値をルックアップテーブルに登録する(ステップS23)。次いで、表示装置1の制御部16は、出力階調値mが255に達したか否かを判断し(ステップS24)、出力階調値mが255に達していなければ(S24:NO)、出力階調値mを1だけインクリメントして(ステップS25)、処理をステップS23へ戻す。
【0039】
なお、表示装置1に256階調のグレースケールで画像を表示することを想定しているため、階調値mが255に達したか否かを判定する構成としたが、表示する階調数は256に限定する必要はない。よって、ステップS23で判断する階調数は適宜設定し得るものである。
【0040】
出力階調値mが255に達した場合(S24:YES)、入力画像のRGB各色の階調値と表示画像の階調値との関係を示すルックアップテーブルが完成するので、表示装置1の制御部16は、完成したルックアップテーブルを記憶部15に記憶させ、DICOMカーブに準拠した画像を表示する際、記憶させたルックアップテーブルを反映させた階調補正を行ってグレースケールの画像を表示する(ステップS26)。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、目標輝度のレンジを予め広く設定しておき、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭める構成であるため、全階調において色補正を実施しつつ、評価対象の表示装置において可能な限り高輝度及び高コントラストを実現することができる。
また、本実施の形態では、一旦輝度計測が終了した場合には、輝度を再計測することなく、しかも途中でエラーを発生させることなく、階調補正のためのルックアップテーブルを取得することができる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1では、目標輝度のレンジを予め広く設定しておき、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭め、最終的な階調特性を有するDICOMカーブを求めるようにしたが、逆に、目標輝度のレンジを予め狭く設定しておき、エラーが発生するまでレンジを徐々に拡大するようにして、DICOMカーブを求めてもよい。
なお、表示装置1におけるハードウェアの構成は、実施の形態1と全く同様であるため、その説明を省略することとする。
【0043】
図11は、実施の形態2に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。表示装置1は、実施の形態1で説明した手順と同様にして、n=0からn=1023までの各階調の輝度データを取得する(ステップS31〜S36)。
【0044】
次いで、表示装置1の演算部14は、予め設定した白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度を算出する(ステップS37)。実施の形態2では、予め設定する白色輝度を低く、黒色輝度を高く設定しておく。表示装置1は、各階調の目標輝度及びRGB値を階調値に対応付けて目標輝度テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0045】
次いで、表示装置1の制御部16は、記憶部15に記憶されている計測結果テーブルと目標輝度テーブルとを比較し、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最小値より大きいか否かを各色成分毎に判断する(ステップS38)。目標値が前記最小値より大きい場合(S38:YES)、黒色輝度の値を所定値αだけ低く設定して(ステップS39)、処理をステップS37へ戻し、目標輝度の再計算を行う。
【0046】
目標値が前記最小値以下である場合(S38:NO)、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最大値より小さいか否かを各色成分毎に判断する(ステップS40)。目標値が前記最大値より小さい場合(S40:YES)、白色輝度の値を所定値βだけ高く設定して(ステップS41)、処理をステップS37へ戻し、目標輝度の再計算を行う。
【0047】
目標値が前記最大値以上であると判断した場合(S40:NO)、実施の形態1で説明した手順と同様にして、ルックアップテーブルを完成させ、ルックアップテーブルを反映させた階調補正を行う(ステップS42〜S46)。
【0048】
実施の形態3.
実施の形態1では、目標輝度のレンジを予め広く設定しておき、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭め、最終的な階調特性を有するDICOMカーブを求め、逆に、実施の形態2では、目標輝度のレンジを予め狭く設定しておき、エラーが発生するまでレンジを徐々に拡大するようにして、DICOMカーブを求めた。しかしながら、白色輝度及び黒色輝度の探索範囲を予め設定しておき、その範囲で二分探索法を用いてDICOMカーブに入力する白色輝度を探索することも可能である。
なお、表示装置1におけるハードウェアの構成は、実施の形態1と全く同様であるため、その説明を省略することとする。
【0049】
図12は、実施の形態3に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。表示装置1は、実施の形態1で説明した手順と同様にして、n=0からn=1023までの各階調の輝度データを取得する(ステップS51〜S56)。
【0050】
次いで、表示装置1の演算部14は、予め設定した白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度を算出し(ステップS57)、白色輝度及び黒色輝度の探索範囲を設定する(ステップS58)。実施の形態3では、予め設定する白色輝度は、例えば、白色輝度について設定する探索範囲の中央値であり、予め設定する黒色輝度は、例えば、黒色輝度について設定する探索範囲の中央値である。表示装置1は、各階調の目標輝度及びRGB値を階調値に対応付けて目標輝度テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0051】
次いで、表示装置1の制御部16は、二分探索法を用いて白色輝度及び黒色輝度のそれぞれの探索範囲において、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)と計測輝度を与える画像のRGB値とが一致するような、白色輝度及び黒色輝度を探索する(ステップS59)。
表示装置1の制御部16は、探索結果が得られたか否かを判断し(ステップS60)、探索結果が得られていない場合には(S60:NO)、処理をステップS59へ戻して、二分探索法を継続する。
【0052】
探索結果が得られた場合(S60:YES)、すなわち、最終的に目標とするDICOMカーブを与える白色輝度及び黒色輝度が検索された場合、実施の形態1で説明した手順と同様にして、ルックアップテーブルを完成させ、ルックアップテーブルを反映させた階調補正を行う(ステップS61〜S65)。
【0053】
このように、実施の形態3では、二分探索法を利用して最終的に目標とするDICOMカーブを与える白色輝度及び黒色輝度を求めるため、ルックアップテーブルの作成に要する時間を短縮することができる。
【0054】
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0055】
(付記1)
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従い表示装置に画像を表示し、
前記表示装置に表示した画像の階調値毎の輝度を計測し、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出し、
計測した輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定し、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出し、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成し、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する
ことを特徴とする階調補正方法。
【0056】
(付記2)
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従って表示装置に表示した画像の計測輝度を取得する取得部と、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出する算出部と、
計測輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定する判定部と、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出する再算出部と、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成するテーブル生成部と、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する階調補正部と
を備えることを特徴とする階調補正装置。
【0057】
(付記3)
前記関数は、グレースケール標準表示関数であることを特徴とする付記2に記載の階調補正装置。
【0058】
(付記4)
前記関数における白色輝度及び黒色輝度を変更する際、白色輝度を低輝度側の値に変更し、黒色輝度を高輝度側の値に変更するようにしてあることを特徴とする付記2又は付記3に記載の階調補正装置。
【0059】
(付記5)
前記関数における白色輝度及び黒色輝度を変更する際、白色輝度を高輝度側の値に変更し、黒色輝度を低輝度側の値に変更するようにしてあることを特徴とする付記2又は付記3に記載の階調補正装置。
【0060】
(付記6)
白色輝度及び黒色輝度の夫々について変更範囲を予め定めておき、前記変更範囲内で変更すべき白色輝度及び黒色輝度を、二分探索法を用いて決定するようにしてあることを特徴とする付記2又は付記3に記載の階調補正装置。
【0061】
(付記7)
一部の階調値に対応する輝度を計測して得られるデータを取得し、他の階調値に対応する輝度を、取得したデータの補間演算により算出するようにしてあることを特徴とする付記2から付記6の何れか1つに記載の階調補正装置。
【0062】
(付記8)
コンピュータに、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出させるステップと、
コンピュータに、入力されるべき入力画像の色成分と算出した目標輝度を与える表示画像の色成分との類似度を判定させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更させて、階調値毎の目標輝度を再度算出させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似すると判定した場合、入力画像の各色成分の階調値と表示画像の階調値との関係を示すテーブルを生成させるステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1 表示装置(階調補正装置)
2 輝度計
11 画像信号入力部
12 表示部
13 入力インタフェース(取得部)
14 演算部(算出部、再算出部)
15 記憶部
16 制御部(判定部、テーブル生成部、階調補正部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレースケール標準表示関数に従って階調補正を行う階調補正方法、階調補正装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場におけるフィルムレス化が急速に進み、医療用画像の表示装置として液晶ディスプレイが使用されるようになってきている。正確な診断をサポートするために、医療現場で使用される液晶ディスプレイには、一般用途の液晶ディスプレイと比較して、高輝度・高コントラストのものが要求される。また、画像を正確に表示するために、表示のムラを少なくし、階調特性を正確に表現することも求められている。
【0003】
医療用の表示装置に要求される階調特性を表した関数として、DICOM規格(DICOM : Digital Imaging and COmmunication in Medicine)のPart14で規定されたグレースケール標準関数(GSDF : Grayscale Standard Display Function)が知られている。
グレースケール標準関数(以下、DICOMカーブという)では、どの階調間でも輝度差が等しく認識されるように階調特性が定められており、最低階調の輝度(黒色輝度)と最高階調の輝度(白色輝度)とによって、中間階調において参照すべき輝度が決定されるように構成されている。
【0004】
このようなDICOMカーブに準拠した階調特性を得ようとすれば、表示装置に表示した画像の輝度を計測し、計測結果に従ってルックアップテーブルを作成し、表示装置にフィードバックすればよい。具体的には、まず、信号源から256個程度の階調画像を出力させて表示装置に表示し、輝度計を用いて各階調の輝度を計測する。そして、計測した輝度のうち、最低階調に対応した輝度(黒色輝度)と最高階調に対応した輝度(白色輝度)とを用いて目標のDICOMカーブを算出し、算出した輝度に近い値が得られるように入力値を換算するルックアップテーブルを作成すればよい(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0005】
また、全階調で同じ色にする場合は、前述と同様にして、RGBの色成分毎に目標カーブを設定し、これに近い値となるルックアップテーブルを作成することが可能である。
更に、DICOMカーブに準拠しつつ、全階調の色補正を行う場合には、最終的な白色輝度、黒色輝度及び色を予め決めておくことにより、RGBの各色成分の目標カーブが定まり、これに適合するルックアップテーブルを作成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−244436号公報
【特許文献2】特開2005−157260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DICOMカーブは、黒色輝度及び白色輝度によって各階調の輝度が算出されるため、通常の方法では、DICOMカーブに準拠しつつ、全階調について色補正を行うことはできない。例えば、先にDICOM調整を行い、その後に色補正を行った場合、黒色輝度や白色輝度が変化するため、理想のDICOMカーブから外れてしまうからである。
【0008】
逆に、全階調の色補正を行い、仮のルックアップテーブルを作成してからDICOM調整を行い、最終のルックアップテーブルを決定する場合、仮のルックアップテーブルをフィードバックする必要があり、処理が複雑となる。また、この手法では、輝度を再計測しなければならないため、時間が掛かるという問題点を有している。更に、2回の輝度計測間で計測誤差が生じた場合、正確なDICOM調整が行えない虞がある。
【0009】
白色輝度及び黒色輝度を予め定めることにより、上記の問題点は解決する。しかしながら、人為的に白色輝度及び黒色輝度を定める手法では、必ずしも医療用の表示装置に要求されるような表示性能が得られない。例えば、白色輝度及び黒色輝度を予め定めてDICOM調整を行う場合、ルックアップテーブルの作成時にエラーが発生しないように、マージンを設定して白色輝度及び黒色輝度を定める必要があるため、黒色輝度については表示装置が本来表示可能な黒色輝度より高く、白色輝度は低くなり、コントラストが大きく低下する。一方、予め定める白色輝度を高く設定したり、黒色輝度を低く設定した場合には、ルックアップテーブルの作成時に目標値に達しないことがあり、エラーが発生する。
【0010】
本願は、上記の課題を解決するため、輝度を再計測することなく、予め定めた階調特性曲線から外れずに全階調で色補正を実行することができ、しかも可能な限り高輝度及び高コントラストを実現することができる階調補正方法、階調補正装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に開示する階調補正方法は、複数の色成分の階調値を示す画像信号に従い表示装置に画像を表示し、前記表示装置に表示した画像の階調値毎の輝度を計測し、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出し、計測した輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定し、両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出し、両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成し、画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願によれば、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定するような関数により定められる階調特性曲線に対応した色補正を実行することができ、調整対象の表示装置が本来有する表示性能の範囲内で輝度を高めることでき、高コントラストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【図2】従来例における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。
【図3】従来例において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。
【図4】調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。
【図5】本願における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。
【図6】目標輝度を再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。
【図7】目標輝度を更に再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。
【図8】本実施の形態において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。
【図9】調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。
【図10】本実施の形態に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態3に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る表示装置1は、画像信号が入力される画像信号入力部11、画像信号入力部11に入力された画像信号に基づき画像を表示する表示部12、表示部12に表示した画像の輝度が輝度計2により計測された後、この輝度計2から輝度のデータを取得する入力インタフェース13、取得した輝度のデータを基に演算を行う演算部14、取得した輝度のデータや演算結果として得られるデータ等を記憶する記憶部15、ハードウェア各部の全体的な制御を行う制御部16を備える。
記憶部15には、本願による階調補正方法(DICOM調整)を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されており、制御部16が、このコンピュータプログラムを実行して、ハードウェア各部の制御を行うことにより、表示装置1を本願の階調補正装置として機能させる。
【0015】
以下、本願のDICOM調整の手法を、従来のDICOM調整手法と対比させながら説明する。
図2は、従来例における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。図2(a)は、目標とするDICOMカーブの一例を示したテーブルである。前述したように、DICOMカーブでは、最低階調の輝度と最高階調の輝度とを与えることにより、各階調における輝度が定まる。例えば、図2(a)の例では、最低階調の輝度として階調値0に対応した輝度(1.00)と、最高階調の輝度として階調値255に対応した輝度(240)とを与えることにより、階調値1〜254のそれぞれに対応した輝度が定まる。
【0016】
新たな表示装置についてDICOM調整を行う場合、表示装置がどの程度の輝度で画像を表示し得るのかについては未知であるため、従来例では、ルックアップテーブルの作成時にエラーが発生しないようにマージンを持たせる必要があり、最低階調の輝度を高めに、最高階調の輝度を低めに設定する。
【0017】
図2(b)に示した例では、階調値(入力階調値)を0〜1023まで変更しながら、各階調画像の輝度を計測した結果を示している。この計測の結果、最低階調(階調値0)の輝度は0.30であり、最高階調(階調値1023)の輝度が300であった。他の階調での輝度についても、図2(b)に示したような値が得られた。なお、各階調階調のRGB値は、図2(b)に示した値を用いているものとしている。
【0018】
ルックアップテーブルを作成する際、目標とするDICOMカーブにおける各色成分(RGB値)に近い値を、輝度の計測結果から検索する。そして、検索されたRGB値を与える階調値(入力階調値)を階調画像の階調値に対応付けて登録することにより、ルックアップテーブルを作成する。例えば、図2(a)のテーブルを参照した場合、階調値0のRの色成分は0.08であるため、この0.08に近い色成分を、図2(b)に示すような計測結果のテーブルから検索する。図2(b)において、Rの色成分が0.08となる階調画像の入力階調値は50であるため、出力階調値0に対応した入力階調値(R)として検索結果の50という数値をルックアップテーブルに登録する。他の階調値、他の色成分についても同様にして、色成分の値の検索と検索結果である入力階調値の登録とを繰り返して実行することにより、ルックアップテーブルを完成させる。
図3は、従来例において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。作成されたルックアップテーブルは、RGBの各入力階調値に対し、0〜255の出力階調値を与える。
【0019】
以上のように、従来例では、DICOMカーブに対応する目標輝度を、実際の表示画像の輝度計測結果から検索して、ルックアップテーブルを作成することでDICOM調整を行うため、目標輝度のレンジを拡げすぎた場合には、検索時に該当する色成分の値が存在しない虞がある。このような検索エラーが生じた場合、DICOM調整は途中で停止することになるため、目標とするDICOMカーブを再設定し、再度、DICOM調整を実行しなければならない。検索エラーを回避するためには、目標輝度のレンジを狭く(すなわち、黒色輝度を高く、白色輝度を低く)設定した状態でDICOMカーブにおける各階調の輝度を演算し、DICOM調整を行う必要がある。
【0020】
したがって、黒色輝度及び白色輝度を予め固定した上でDICOM調整を行う従来手法の場合、調整後のコントラストは、調整対象の表示装置が本来的に表示できるコントラストよりかなり低下することとなり、調整後の輝度も低下する。図4は、調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。図2(b)の輝度計測結果を参照すれば、最高輝度(白色輝度)は300であり、最低輝度(黒色輝度)が0.3であるため、コントラストは1000:1となる。これは、計測した表示装置が本来表示できる性能を表している。これに対し、前述のようなDICOM調整を行った場合、表示性能は、図2(a)に示されるようなDICOMカーブに従うため、調整後の最高輝度は240、最低輝度は1、コントラストは240:1となり、表示輝度及びコントラストがかなり低下していることが分かる。
【0021】
次に、本願によるDICOM調整手法について説明する。図5は、本願における目標DICOMカーブ及び輝度計測結果の一例を示す模式図である。本願においてもDICOMカーブを使用する点では従来と同様であり、最低階調の輝度と最高階調の輝度とを与え、各階調値における目標輝度を算出する。ただし、本願においては、従来例のように、目標輝度のレンジを予め狭く設定しておく必要はなく、最低階調の輝度(黒色輝度)を低く、最高階調の輝度(白色輝度)を高く設定することができる。図5(a)は、本願において目標とするDICOMカーブの一例を示したテーブルである。
【0022】
また、従来例と同じように、階調値(入力階調値)を0〜1023まで変更しながら各階調画像の輝度を計測し、計測結果を取得する。図5(b)は、輝度計測結果の一例を示している。
なお、本実施の形態では、階調値が0〜1023の1024個の階調画像について輝度を計測する構成としたが、1024個の全ての階調画像の輝度を計測する代わりに、予め定めた複数の階調値に対応した階調画像の輝度を計測し、それ以外の階調値に対応した階調画像の輝度は直線補間やスプライン補間などの補間演算によって求める構成としてもよい。この場合、低階調側及び高階調側の密度を上げ、中間調の密度を下げることにより、誤差の低下が避けられる。また、入力画像の階調数は1024に限定されるものではないことは勿論のことである。
【0023】
次いで、目標輝度を与えるRGB値と輝度計測を行った際に用いた各階調画像のRGB値との比較を行う。このとき、目標輝度を与える画像のRGB値を、計測輝度を与える画像(入力画像)のRGB値から検索し、近い値のRGB値が存在するか否かを判定する。近い値のRGB値が存在しない場合には、黒色輝度及び白色輝度の値を再設定し、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度及びRGB値を算出し直して、近い値が存在するか否かの再判定を行う。本実施の形態では、黒色輝度を再設定する場合には、高輝度側へ値を変更し、白色輝度を変更する場合には、低輝度側へ値を変更する。
目標輝度を与える画像のRGB値に近い値が存在すると判定した場合、入力画像のRGB値と出力階調値との関係を示すルックアップテーブルを作成する。
【0024】
なお、目標輝度を与える画像のRGB値と計測輝度を与える画像(入力画像)のRGB値とが近いか否かの判定は、両者の差が予め定めた範囲であるか否かを判定することによって行う。両者の差が予め定めた範囲内であれば、目標輝度を与える画像のRGB値と計測輝度を与える画像(入力画像)のRGB値とが近いと判定する。
【0025】
例えば、図5(a)を参照すれば、階調値0において、輝度0.30の画像を与えるRGBの値は、それぞれ0.01,0.01,0.01であることが分かる。一方、図5(b)に示す輝度計測結果を参照すれば、輝度計測時の入力画像(各階調画像)のうち、G及びBの値が0.01となる入力画像は輝度0.30の入力画像として存在するものの、Rの値が0.01となる入力画像は存在していない。この場合、本実施の形態では、最低輝度である黒色輝度の値を高く設定し直して、DICOMカーブに従う目標輝度の値を再度算出する。
【0026】
また、図5(b)を参照すれば、階調値255において、輝度280の画像を与えるRGBの値は、それぞれ0.80,0.90,1.00であることが分かる。一方、図5(b)に示す輝度計測結果を参照すれば、輝度計測時の入力画像(各階調画像)のうち、Bの値が1.0となる入力画像は存在しないことが分かる。この場合、本実施の形態では、最高輝度である白色輝度の値を低く設定し直して、DICOMカーブに従う目標輝度の値を再度算出する。
【0027】
図6は、目標輝度を再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。図6に示した例は、黒色輝度を0.30から0.40に変更し、白色輝度を280から279に変更して、DICOMカーブに従って目標輝度及びRGB値を設定し直したテーブルである。黒色輝度を0.30から0.40に変更したことによって、その階調におけるRGBの値が、それぞれ0.02,0.02,0.03となったため、Rの値についても輝度計測時の入力画像の値として含まれることとなった。すなわち、再設定後の階調値0(輝度0.40)のRの値と、輝度計測時の入力画像のうち、階調値が0の入力画像のRの値とが一致することになった。なお、図6には明示していないが、再設定後の階調値0(輝度0.40)のB及びGの値については、輝度計測時の入力画像のうち、階調値が1以上の入力画像にそれぞれの値が含まれているものとしている。
【0028】
一方、白色輝度を280から279に変更したことによって、その階調におけるRGBの値は、それぞれ0.79,0.89,0.99となった。このうち、Bの値は、依然として輝度計測時の入力画像の値として含まれていない。このため、白色輝度の値のみを更に低く設定し直して、DICOMカーブに従う目標輝度の値を再度算出する。
【0029】
図7は、目標輝度を更に再設定した後のDICOMカーブの一例を示す模式図である。図7に示した例は、黒色輝度を変更せずに、白色輝度を279から260に変更して、DICOMカーブに従って目標輝度及びRGB値を設定し直したテーブルである。白色輝度を260へ変更したことによって、その階調におけるRGBの値は、それぞれ0.75,0.85,0.95となり、RGBの値が輝度計測時の入力画像の値として含まれることとなった。したがって、図7で示されるDICOMカーブを最終的な目標輝度として設定し、入力画像のRGB各色の階調値と表示画像(グレースケールの画像)の階調値との関係を示すルックアップテーブルを作成する。図8は、本実施の形態において作成されるルックアップテーブルの一例を示す模式図である。
【0030】
本願によるDICOM調整では、目標輝度のレンジを予め広く設定し、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭める構成であるため、全階調において色補正を実施しつつ、評価対象の表示装置において可能な限り高輝度及び高コントラストを実現することができる。図5〜図8を用いて説明した本願のDICOM調整の具体例に従って調整前後の輝度及びコントラストを比較する。図9は、調整前後の輝度及びコントラストの比較例を示す模式図である。図5(b)の輝度計測結果を参照すれば、最高輝度(白色輝度)は300であり、最低輝度(黒色輝度)が0.3であるため、コントラストは1000:1となる。これに対し、最終調整が得られたDICOMカーブ(図7)を参照すると、調整後の最高輝度は260、最低輝度は0.3であり、コントラストは650:1となる。したがって、予め設定したレンジの目標輝度を用いてDICOM調整を行う従来手法と比較して、輝度及びコントラストが改善することが分かる。
【0031】
以下、本実施の形態に係る表示装置1が実行する処理の手順を説明する。
図10は、本実施の形態に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。表示装置1の制御部16は、まず、取得する画像の階調値nをゼロにセットする(ステップS11)。次いで、表示装置1は、階調値nの階調画像を示す画像信号を画像信号入力部11を通じて取得し(ステップS12)、取得した画像信号に基づいて階調値nの階調画像を表示部12に表示する(ステップS13)。
【0032】
表示部12に表示された階調値nの階調画像の輝度が輝度計2により計測される。表示装置1は、輝度計2によって計測された輝度のデータを入力インタフェース13を通じて取得する(ステップS14)。表示装置1は、取得した輝度のデータを、階調値n、階調画像の各色成分の値(RGB値)に対応付けて、計測結果テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0033】
次いで、表示装置1の制御部16は、階調値nが1023に達したか否かを判断する(ステップS15)。階調値nが1023に達していないと判断した場合(S15:NO)、制御部16は、階調値nの値を1だけインクリメントして(ステップS16)、処理をステップS12へ戻す。
【0034】
なお、本実施の形態では、入力される画像信号が示す階調数を1024と想定しているため、階調値nが1023に達したか否かを判定する構成としたが、入力画像信号が示す階調数は1024に限定する必要はない。また、前述したように、補間演算によって輝度を求めることも可能であるため、全ての階調値に対応した階調画像を表示する必要もない。よって、ステップS15で判断する階調数、ステップS16でインクリメントする値は適宜設定し得るものである。
【0035】
階調値nが1023に達したと判断した場合(S15:YES)、表示装置1の演算部14は、予め設定した白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度を算出する(ステップS17)。表示装置1は、各階調の目標輝度及びRGB値を階調値に対応付けて目標輝度テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0036】
次いで、表示装置1の制御部16は、記憶部15に記憶されている計測結果テーブルと目標輝度テーブルとを比較し、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最小値より小さい値が存在するか否かを各色成分毎に判断する(ステップS18)。前記最小値より小さい値が存在すると判断した場合(S18:YES)、黒色輝度の値を所定値αだけ高く設定して(ステップS19)、処理をステップS17へ戻し、目標輝度の再計算を行う。
【0037】
前記最小値より小さい値が存在しないと判断した場合(S18:NO)、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最大値より大きい値が存在するか否かを各色成分毎に判断する(ステップS20)。前記最大値より大きい値が存在すると判断した場合(S20:YES)、白色輝度の値を所定値βだけ低く設定して(ステップS21)、処理をステップS17へ戻し、目標輝度の再計算を行う。なお、所定値α,βの値は、適宜設定し得る値であり、所定値α及びβは同一の値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0038】
前記最大値より大きい値が存在しないと判断した場合(S20:NO)、表示装置1の制御部16は、出力階調値mをゼロにセットし(ステップS22)、出力階調値mの目標値に近い値を有する入力画像の各色成分の階調値をルックアップテーブルに登録する(ステップS23)。次いで、表示装置1の制御部16は、出力階調値mが255に達したか否かを判断し(ステップS24)、出力階調値mが255に達していなければ(S24:NO)、出力階調値mを1だけインクリメントして(ステップS25)、処理をステップS23へ戻す。
【0039】
なお、表示装置1に256階調のグレースケールで画像を表示することを想定しているため、階調値mが255に達したか否かを判定する構成としたが、表示する階調数は256に限定する必要はない。よって、ステップS23で判断する階調数は適宜設定し得るものである。
【0040】
出力階調値mが255に達した場合(S24:YES)、入力画像のRGB各色の階調値と表示画像の階調値との関係を示すルックアップテーブルが完成するので、表示装置1の制御部16は、完成したルックアップテーブルを記憶部15に記憶させ、DICOMカーブに準拠した画像を表示する際、記憶させたルックアップテーブルを反映させた階調補正を行ってグレースケールの画像を表示する(ステップS26)。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、目標輝度のレンジを予め広く設定しておき、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭める構成であるため、全階調において色補正を実施しつつ、評価対象の表示装置において可能な限り高輝度及び高コントラストを実現することができる。
また、本実施の形態では、一旦輝度計測が終了した場合には、輝度を再計測することなく、しかも途中でエラーを発生させることなく、階調補正のためのルックアップテーブルを取得することができる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1では、目標輝度のレンジを予め広く設定しておき、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭め、最終的な階調特性を有するDICOMカーブを求めるようにしたが、逆に、目標輝度のレンジを予め狭く設定しておき、エラーが発生するまでレンジを徐々に拡大するようにして、DICOMカーブを求めてもよい。
なお、表示装置1におけるハードウェアの構成は、実施の形態1と全く同様であるため、その説明を省略することとする。
【0043】
図11は、実施の形態2に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。表示装置1は、実施の形態1で説明した手順と同様にして、n=0からn=1023までの各階調の輝度データを取得する(ステップS31〜S36)。
【0044】
次いで、表示装置1の演算部14は、予め設定した白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度を算出する(ステップS37)。実施の形態2では、予め設定する白色輝度を低く、黒色輝度を高く設定しておく。表示装置1は、各階調の目標輝度及びRGB値を階調値に対応付けて目標輝度テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0045】
次いで、表示装置1の制御部16は、記憶部15に記憶されている計測結果テーブルと目標輝度テーブルとを比較し、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最小値より大きいか否かを各色成分毎に判断する(ステップS38)。目標値が前記最小値より大きい場合(S38:YES)、黒色輝度の値を所定値αだけ低く設定して(ステップS39)、処理をステップS37へ戻し、目標輝度の再計算を行う。
【0046】
目標値が前記最小値以下である場合(S38:NO)、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)のうち、計測輝度を与える画像のRGB値の最大値より小さいか否かを各色成分毎に判断する(ステップS40)。目標値が前記最大値より小さい場合(S40:YES)、白色輝度の値を所定値βだけ高く設定して(ステップS41)、処理をステップS37へ戻し、目標輝度の再計算を行う。
【0047】
目標値が前記最大値以上であると判断した場合(S40:NO)、実施の形態1で説明した手順と同様にして、ルックアップテーブルを完成させ、ルックアップテーブルを反映させた階調補正を行う(ステップS42〜S46)。
【0048】
実施の形態3.
実施の形態1では、目標輝度のレンジを予め広く設定しておき、エラーが発生しなくなるまでレンジを徐々に狭め、最終的な階調特性を有するDICOMカーブを求め、逆に、実施の形態2では、目標輝度のレンジを予め狭く設定しておき、エラーが発生するまでレンジを徐々に拡大するようにして、DICOMカーブを求めた。しかしながら、白色輝度及び黒色輝度の探索範囲を予め設定しておき、その範囲で二分探索法を用いてDICOMカーブに入力する白色輝度を探索することも可能である。
なお、表示装置1におけるハードウェアの構成は、実施の形態1と全く同様であるため、その説明を省略することとする。
【0049】
図12は、実施の形態3に係るDICOM調整の処理手順を示すフローチャートである。表示装置1は、実施の形態1で説明した手順と同様にして、n=0からn=1023までの各階調の輝度データを取得する(ステップS51〜S56)。
【0050】
次いで、表示装置1の演算部14は、予め設定した白色輝度及び黒色輝度に基づき、DICOMカーブに従って各階調における目標輝度を算出し(ステップS57)、白色輝度及び黒色輝度の探索範囲を設定する(ステップS58)。実施の形態3では、予め設定する白色輝度は、例えば、白色輝度について設定する探索範囲の中央値であり、予め設定する黒色輝度は、例えば、黒色輝度について設定する探索範囲の中央値である。表示装置1は、各階調の目標輝度及びRGB値を階調値に対応付けて目標輝度テーブルとして記憶部15に記憶する。
【0051】
次いで、表示装置1の制御部16は、二分探索法を用いて白色輝度及び黒色輝度のそれぞれの探索範囲において、目標輝度を与える画像のRGB値(目標値)と計測輝度を与える画像のRGB値とが一致するような、白色輝度及び黒色輝度を探索する(ステップS59)。
表示装置1の制御部16は、探索結果が得られたか否かを判断し(ステップS60)、探索結果が得られていない場合には(S60:NO)、処理をステップS59へ戻して、二分探索法を継続する。
【0052】
探索結果が得られた場合(S60:YES)、すなわち、最終的に目標とするDICOMカーブを与える白色輝度及び黒色輝度が検索された場合、実施の形態1で説明した手順と同様にして、ルックアップテーブルを完成させ、ルックアップテーブルを反映させた階調補正を行う(ステップS61〜S65)。
【0053】
このように、実施の形態3では、二分探索法を利用して最終的に目標とするDICOMカーブを与える白色輝度及び黒色輝度を求めるため、ルックアップテーブルの作成に要する時間を短縮することができる。
【0054】
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0055】
(付記1)
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従い表示装置に画像を表示し、
前記表示装置に表示した画像の階調値毎の輝度を計測し、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出し、
計測した輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定し、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出し、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成し、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する
ことを特徴とする階調補正方法。
【0056】
(付記2)
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従って表示装置に表示した画像の計測輝度を取得する取得部と、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出する算出部と、
計測輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定する判定部と、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出する再算出部と、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成するテーブル生成部と、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する階調補正部と
を備えることを特徴とする階調補正装置。
【0057】
(付記3)
前記関数は、グレースケール標準表示関数であることを特徴とする付記2に記載の階調補正装置。
【0058】
(付記4)
前記関数における白色輝度及び黒色輝度を変更する際、白色輝度を低輝度側の値に変更し、黒色輝度を高輝度側の値に変更するようにしてあることを特徴とする付記2又は付記3に記載の階調補正装置。
【0059】
(付記5)
前記関数における白色輝度及び黒色輝度を変更する際、白色輝度を高輝度側の値に変更し、黒色輝度を低輝度側の値に変更するようにしてあることを特徴とする付記2又は付記3に記載の階調補正装置。
【0060】
(付記6)
白色輝度及び黒色輝度の夫々について変更範囲を予め定めておき、前記変更範囲内で変更すべき白色輝度及び黒色輝度を、二分探索法を用いて決定するようにしてあることを特徴とする付記2又は付記3に記載の階調補正装置。
【0061】
(付記7)
一部の階調値に対応する輝度を計測して得られるデータを取得し、他の階調値に対応する輝度を、取得したデータの補間演算により算出するようにしてあることを特徴とする付記2から付記6の何れか1つに記載の階調補正装置。
【0062】
(付記8)
コンピュータに、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出させるステップと、
コンピュータに、入力されるべき入力画像の色成分と算出した目標輝度を与える表示画像の色成分との類似度を判定させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更させて、階調値毎の目標輝度を再度算出させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似すると判定した場合、入力画像の各色成分の階調値と表示画像の階調値との関係を示すテーブルを生成させるステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1 表示装置(階調補正装置)
2 輝度計
11 画像信号入力部
12 表示部
13 入力インタフェース(取得部)
14 演算部(算出部、再算出部)
15 記憶部
16 制御部(判定部、テーブル生成部、階調補正部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従い表示装置に画像を表示し、
前記表示装置に表示した画像の階調値毎の輝度を計測し、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出し、
計測した輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定し、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出し、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成し、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する
ことを特徴とする階調補正方法。
【請求項2】
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従って表示装置に表示した画像の計測輝度を取得する取得部と、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出する算出部と、
計測輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定する判定部と、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出する再算出部と、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成するテーブル生成部と、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する階調補正部と
を備えることを特徴とする階調補正装置。
【請求項3】
前記関数は、グレースケール標準表示関数であることを特徴とする請求項2に記載の階調補正装置。
【請求項4】
前記関数における白色輝度及び黒色輝度を変更する際、白色輝度を低輝度側の値に変更し、黒色輝度を高輝度側の値に変更するようにしてあることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の階調補正装置。
【請求項5】
コンピュータに、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出させるステップと、
コンピュータに、入力されるべき入力画像の色成分と算出した目標輝度を与える表示画像の色成分との類似度を判定させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更させて、階調値毎の目標輝度を再度算出させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似すると判定した場合、入力画像の各色成分の階調値と表示画像の階調値との関係を示すテーブルを生成させるステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従い表示装置に画像を表示し、
前記表示装置に表示した画像の階調値毎の輝度を計測し、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出し、
計測した輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定し、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出し、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成し、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する
ことを特徴とする階調補正方法。
【請求項2】
複数の色成分の階調値を示す画像信号に従って表示装置に表示した画像の計測輝度を取得する取得部と、
白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出する算出部と、
計測輝度を与える画像の色成分と算出した目標輝度を与える画像の色成分との類似度を判定する判定部と、
両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更して、階調値毎の目標輝度を再度算出する再算出部と、
両色成分が類似すると判定した場合、前記画像信号の各色成分の階調値と表示すべき画像の階調値との関係を示すテーブルを生成するテーブル生成部と、
画像信号に基づいて前記表示装置に画像を表示する際、生成したテーブルに従って階調値を補正する階調補正部と
を備えることを特徴とする階調補正装置。
【請求項3】
前記関数は、グレースケール標準表示関数であることを特徴とする請求項2に記載の階調補正装置。
【請求項4】
前記関数における白色輝度及び黒色輝度を変更する際、白色輝度を低輝度側の値に変更し、黒色輝度を高輝度側の値に変更するようにしてあることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の階調補正装置。
【請求項5】
コンピュータに、白色輝度及び黒色輝度を変数として階調値と輝度との対応関係を規定する関数を用いて、予め定めた白色輝度及び黒色輝度に基づき、階調値毎の目標輝度を算出させるステップと、
コンピュータに、入力されるべき入力画像の色成分と算出した目標輝度を与える表示画像の色成分との類似度を判定させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似しないと判定した場合、前記関数における白色輝度又は黒色輝度を変更させて、階調値毎の目標輝度を再度算出させるステップと、
コンピュータに、両色成分が類似すると判定した場合、入力画像の各色成分の階調値と表示画像の階調値との関係を示すテーブルを生成させるステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−154110(P2011−154110A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14476(P2010−14476)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(592019877)富士通周辺機株式会社 (149)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(592019877)富士通周辺機株式会社 (149)
【Fターム(参考)】
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