離型検査装置及びそれに用いられる離型検査方法
【課題】離型検査装置において、樹脂成形品の表面を損傷させることなく、離型不良を検知する。
【解決手段】金型を用いて成形された樹脂成形品100の非製品部分102をプレス治具2,3によって挟み込んで固定し、エアー噴出口22から製品部分101に対してエアーを噴出する。離型が正常であれば、エアーは製品部分101によって堰き止められ、圧力センサ4によって検知されない。圧力センサ4がエアーを検知すると、制御部5は、離型が異常であると判定する。
【解決手段】金型を用いて成形された樹脂成形品100の非製品部分102をプレス治具2,3によって挟み込んで固定し、エアー噴出口22から製品部分101に対してエアーを噴出する。離型が正常であれば、エアーは製品部分101によって堰き止められ、圧力センサ4によって検知されない。圧力センサ4がエアーを検知すると、制御部5は、離型が異常であると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて成形品を製造する際に、成形品が金型から正常に取出されていることを検査する離型検査装置及びそれに用いられる離型検査方法に関する。特に通信機器等に組み込まれる小型の精密部品の離型検査に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂成形品や金属成形品の製造においては、金型を用いた射出成形やダイキャスト成型が広く実施されている。図11は、このような成型の一例として、射出成形による樹脂成形品の製造における各工程の流れを示している。まず、材料充填工程においては、閉じられた金型のキャビティ空間に樹脂材料が充填される(#1)。次に成形工程においては、充填された樹脂材料が金型によって成形される(#2)。そして、離型工程においては、樹脂成形品が金型から取り出される(#3)。このとき、樹脂成形品が正常に離型されず、その一部が金型内に残留し異物となると、次の樹脂成形品を成形するにあたって金型が閉じられたときに、金型に損傷を及ぼす虞が生ずる。そこで、樹脂成形品が正常に離型されたことを検査・確認する離型検査工程(#4)を設けるのが一般的である。離型検査工程において、樹脂成形品が正常に離型されたと判定されると(#4においてYES)、#1に戻って次の成形サイクルに移行する。一方、樹脂成形品が正常に離型されなかったと判定されると(#4においてNO)、金型内の異物すなわち離型されずに残った樹脂成形品の一部を除去した後(#5)、#1に戻って次の成形サイクルに移行する。なお、正常に離型された樹脂成形品は、#4の後、切断工程に移行し、ランナ等の不要部分が切断される。
【0003】
上記離型検査工程においては、一般に離型後の金型に残留する樹脂成形品の有無を確認することにより、離型の正否の判定がなされている。例えば、特許文献1には、離型後の金型にエアーを供給し、そのエアーを検知することにより離型の正否を判定する技術が示されている。
【0004】
また、離型された樹脂成形品から離型の正否を間接的に判定する技術も検討されている。例えば、特許文献2には、離型された樹脂成形品をバキューム装置で吸引し、治具本体のチャック部のエアー流量を検知することにより離型の正否を間接的に判定する技術が示されている。
【0005】
【特許文献1】実開平1−70527号公報
【特許文献2】特開平10−44199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示された技術においては、同文献の図4に示されているように離型検査の際に型閉め動作を伴うため、離型不良で樹脂成形品が金型に残留する場合には、金型が損傷を受ける。また、離型が不完全であって樹脂成形品の一部の破片が金型内に残留する場合(配管部材の出口が完全に塞がれてない場合)、金型にエアーを供給してもエアー流路の気圧はほとんど変化しないことから、離型の異常を検知できないことがある。また、樹脂材料とエアーを同一系統の配管から供給するように構成されていることから、エアーの供給時に配管部材の内部に滞留している樹脂材料がキャビティ空間に射出されるため、次の成形サイクルに悪影響を及ぼす虞がある。仮に、樹脂材料の供給用の配管とは別系統の配管によりエアーを供給するように構成しても、エアーの供給用の配管に浸透した樹脂材料によってエアーの供給用の配管が塞がれて、配管が機能しなくなる虞が生ずる。このような樹脂材料の浸透は、特に低粘度樹脂原料等において顕著であり、その対策には複雑な構造の金型が必要となり、金型のコストアップを招来する。
【0007】
また、上記特許文献2に示された技術においては、離型直後の樹脂成形品が落下されて治具本体によってチャックされるため、樹脂成形品と治具本体との接触により樹脂成形品が変形・損傷する虞がある。同文献には、樹脂成形品に傷を付けない工夫として面取り加工が示されているが、表面の微細な傷が致命的な欠陥となる精密部品の製造には十分に対応できない。
【0008】
以上、樹脂成形品に関して説明したが、ダイキャスト成型された金属成形品に関しても同様の課題がある。例えば、上記特許文献1に示された技術においては、溶融金属原料の浸透の対策として複雑な構造の金型が必要となり、金型のコストアップを招来する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、成形品の表面を損傷させることなく、離型不良を検知することができる離型検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、成形品の非製品部分を固定する固定手段と、前記固定手段によって固定された成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出手段と、前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知手段と、前記エアー検知手段による検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定手段を備えたことを特徴とする離型検査装置である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の離型検査装置において、前記固定手段は、前記製品部分との接触を回避するために、該製品部分の周辺に向かって退避された退避部を有することを特徴する。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の離型検査装置において、前記固定手段は、前記製品部分の背後から前記エアー検知手段に亘って、前記エアー噴出手段から噴出されたエアーを流通させるエアー流路を有し、前記エアー噴出手段の開口面積及び前記エアー流路の断面積は、該エアー噴出手段から視た前記製品部分の投影面積よりも小さいことを特徴する。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の離型検査装置において、前記成形品は、樹脂によって成形され、前記固定手段は、前記成形品の非製品部分と当接して該非製品部分との間で熱交換を行う熱交換部を有し、前記成形品の温度が前記樹脂のガラス転移点未満に低下するまで熱交換し続けることを特徴する。
【0014】
請求項5の発明は、成形品の非製品部分と当接することにより、該非製品部分を固定し、かつ該非製品部分との間で熱交換を行う固定熱交換工程と、前記固定熱交換工程によって固定されている成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出工程と、前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知工程と、前記エアー検知工程における検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定工程を有することを特徴とする離型検査方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、成形品の離型が正常になされ、製品部分の欠損がない場合には、エアー噴出手段から噴出されたエアーが製品部分によって遮蔽され、製品部分の背後のエアーは、ほとんど変化しないのでエアー検知手段によって検知されない。一方、成形品の離型が異常であり、製品部分の欠損が生じた場合には、エアー噴出手段から噴出されたエアーが遮蔽されることなくエアー検知手段に到達し、検知される。従って、判定手段は、エアー検知手段による検知結果に基づいて、離型の正否を判定することが可能となる。なお、固定手段によって固定される部分は、例えばランナ等の非製品部分であるため、固定手段との接触により、変形・損傷が生じても問題とはならない。
【0016】
請求項2の発明によれば、固定手段は、製品部分の周辺に退避された退避部を有しているので、製品部分に対して非接触により離型の正否を判定することが可能となり、製品部分の変形・損傷を防止できる。特に、精密部品の製造に本発明を適用する場合においては、部品の表面に損傷を及ぼすことがないので、品質の向上を図ることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、エアー噴出手段の開口面積及びエアー流路の断面積がエアー噴出手段から視た製品部分の投影面積よりも小さいので、エアー噴出手段から噴出されたエアーが製品部分の外側を回り込んでエアー検知手段に到達することを効果的に抑制できる。これにより、離型の正否を正確に判定することが可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、熱交換部との当接から解放された樹脂成形品は、既にガラス転移点未満の温度に冷却されていることとなるので、その後自重により変形する虞がなくなる。これにより、所望の形状の樹脂成形品を成形できるようになる。
【0019】
請求項5の発明によれば、固定熱交換工程において、成形品の非製品部分を固定し、その後のエアー噴出工程及びエアー検知工程において成形品を支持する際にも、継続して該非製品部分から熱を奪い冷却するので、製品部分の欠損の判定と成形品の冷却を同時に行うことができる。そして、製品部分に欠損がないと判定した場合には、金型を用いて次のサイクルの成形工程に移行する。ここで、金型において次のサイクルの成形工程を実行するのと同時進行で固定熱交換工程を継続して実行することにより、成形品の生産効率を低下させることなく、離型直後の成形品の自重による変形を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態による離型検査装置について図面を参照して説明する。図1は離型検査装置の概略構成を示している。離型検査装置1は、金型を用いて成形された樹脂成形品100を固定する板状のプレス治具(固定手段)2,3と、樹脂成形品100の製品部分101の背後の気圧を検知するための圧力センサ(エアー検知手段)4と、各部を制御する制御部(判定手段)5等によって構成されている。本実施形態の離型検査装置1は、例えば、通信機器、OA・情報機器又は自動車部品に組み込まれる精密部品、例えばコネクタ、スイッチ、歯車又は光デバイス部品等の成形に適用される。このような精密部品は通常多数のキャビティ空間が形成された金型によって成形され、1つの成形サイクルで多数個成形される。このような多数個取りの工法において金型から離型された樹脂成形品100は、製品部分101と、材料充填工程においてキャビティ空間に成形材料を流し込むためのランナ等の非製品部分102とを有している。なお、樹脂成形品100を形成する樹脂としては、熱硬化性樹脂の他、熱可塑性樹脂が挙げられ、射出成形法、トランスファー成形法又は注型成形法などによって成形される。
【0021】
プレス治具2は、樹脂成形品100の非製品部分102を図中下方から支持する。プレス治具3は、樹脂成形品100の非製品部分102を上方から下方に押圧する。プレス治具2とプレス治具3とによって樹脂成形品100の非製品部分102が上下から挟み込まれて固定される。プレス治具2及びプレス治具3は、成形直後の非製品部分102を直線的に固定できるように、平面状に形成された熱交換部20及び30を有し、非製品部分102との間で活発に熱交換がなされるよう金属で形成されている。また、プレス治具2及びプレス治具3の内部には、必要に応じて冷却水路等が組み込まれている。非製品部分102の固定時に製品部分101とプレス治具2とが接触しないように、プレス治具2の製品部分101に対応する位置には、下方に退避する退避部21が形成されている。同様に、プレス治具3の製品部分101に対応する位置には、上方に退避する退避部31が形成されている。
【0022】
プレス治具2は、箱状治具6の開放された上面に、例えばねじ等を介して着脱自在に装着されている。箱状治具6の各側面には、圧縮エアーを供給するためのエアー供給口61が設けられている。エアー供給口61は、プレス治具2と箱状治具6とによって囲まれた充填室62に4方向から圧縮エアーを供給する。エアー供給口61の個数及び配置は、充填室62の容積、圧縮エアーの供給元の元圧、エアー噴出口22の個数及び配置等に応じて適宜設定される。プレス治具2の製品部分101の略中心に対応する位置には、上方に向けてエアーを噴出するエアー噴出口(エアー噴出手段)22が形成されている。エアー噴出口22の開口面積は、エアー噴出口22から視た製品部分101の投影面積よりも小さく形成されている。エアー供給口61から供給された圧縮エアーは、充填室62に一旦充填された後、エアー噴出口22から上方すなわち製品部分101に向けて噴出される。
【0023】
プレス治具3は、プレス治具2に対して昇降自在に設けられている。プレス治具3の昇降動作のために昇降駆動部(図示せず)が別途設けられており、プレス治具3は、例えばねじ等を介して昇降駆動部に着脱自在に装着されている。プレス治具3の製品部分101の略中心に対応する位置には、上方に向けてエアー流路(エアー検知手段)32が形成されている。エアー流路32の断面積は、エアー噴出口22から視た製品部分101の投影面積よりも小さく形成されている。圧力センサ4は、製品部分101の個数に応じてプレス治具3の上方に複数個設けられ、チューブ(エアー検知手段)7を介してプレス治具3のエアー流路32に接続されている。
【0024】
プレス治具2及びプレス治具3は、離型検査を行う樹脂成形品100の形状、すなわち製品部分101及び非製品部分102の形状及び配置に応じて複数種類準備されている。プレス治具2及びプレス治具3を検査対象である樹脂成形品100に応じて交換し、チューブ7の配管を接続することにより、異なる構成の樹脂成形品100に容易かつ迅速に対応させることができる。
【0025】
圧力センサ4は、エアー流路32及びチューブ7から流入したエアーの圧力を検知して、制御部5に検知結果に応じた信号を出力する。圧力センサ4の形態としては、半導体ダイヤフラム型、静電容量型、弾性体ダイヤフラム型の他圧電型等の各種形態が挙げられる。制御部5は、圧力センサ4から出力された信号に基づいて製品部分101の有無、すなわち離型の正否を判定する。例えば、圧力センサ4から出力された信号が所定の閾値よりも小さい場合、制御部5は、エアー噴出口22から噴出されたエアーが製品部分101によって堰き止められたと判断して、離型が正常であると判定する。このとき、制御部5は、成形装置に次のサイクルの成形を実行する旨の信号を出力する。一方、圧力センサ4から出力された信号が所定の閾値よりも大きい場合、エアー噴出口22とエアー流路32の間に、エアーを遮る製品部分101が存在しなかったと考えられる。この場合、製品部分101は、離型時に非製品部分102から分離され、金型に残留している可能性がある。このまま次のサイクルの成形を実行すると金型に損傷を及ぼす虞があるため、制御部5は、その旨の警告を発し、その警告を受けた作業者は金型を点検することにより、金型の損傷を未然に防止できる。
【0026】
図2は、金型から離型された直後の樹脂成形品100を示している。樹脂成形品100は、中央部のスプル103が把持されて金型から離型検査装置1に移動される。離型直後の樹脂成形品100の温度はガラス転移点よりも高いため、樹脂成形品100の形状は安定しない状態となり、その自重により両端部が下方に垂れ下がる。この状態で樹脂成形品100の温度がガラス転移点よりも低下すると、両端部が下方に垂れ下がり、非製品部分102が湾曲した形状で安定する。樹脂成形品100は、その後の切断工程において非製品部分102から製品部分101を精度よく切断する際に、切断用の治具に正確に固定される必要があるところ、非製品部分102の湾曲により治具への固定が不能又は不正確となる虞がある。
【0027】
そこで、図3に示すように、本実施形態の離型検査装置1においては、離型直後の樹脂成形品100を矯正しつつ冷却する。すなわち、金型から離型された直後の樹脂成形品100の非製品部分102をプレス治具2とプレス治具3とによって上下から挟み込んで固定した状態で、非製品部分102と熱交換部20及び30との間で熱交換を生じさせる。これにより、非製品部分102からプレス治具2及びプレス治具3に熱が移動し、非製品部分102がガラス転移点未満まで冷却される。その結果、図4に示すように、非製品部分102は直線的に矯正され、樹脂成形品100の形状は正常なものとなり、その後の切断工程に円滑に移行できるようになる。
【0028】
図5乃至図8は、非製品部分102が固定された樹脂成形品100の製品部分101にエアー噴出口22からエアーを噴出して、離型の正否を検知する工程を示している。図5に示すように、離型の正常になされ、樹脂成形品100の先端に製品部分101が存在する場合は、エアー噴出口22から噴出されたエアーは、製品部分101に衝突し、図6に示すように、製品部分101の周囲に放射状に拡散される。そのため、製品部分101に衝突したエアーは、エアー流路32及びチューブ7にほとんど流入することがなく、圧力センサ4によって検出されない。よって制御部5は、離型工程が正常になされたことを判定できる。なお、製品部分101に衝突するエアー及びその後非製品部分102の周辺を流れるエアーによっても、製品部分101及び非製品部分102が冷却される。
【0029】
一方、図7に示すように、離型が正常になされずに製品部分101が離型時に非製品部分102から分離された場合、エアー噴出口22から噴出されたエアーの大部分が遮られることなくエアー流路32及びチューブ7に流入し、圧力センサ4によって検出される。そして、圧力センサ4から出力される信号が所定の閾値を超えると、制御部5は、離型工程に異常があることを判定できる。
【0030】
また、図8に示すように、離型が不完全で製品部分101の一部に欠損が生じた場合(この場合、金型のキャビティ空間内に上記欠損部分の破片が残留するが、特許文献1に示された技術によっては、段落(0006)に記載したように、検出されない虞が生ずる)においても、エアー噴出口22から噴出されたエアーがエアー流路32及びチューブ7に流入するので、圧力センサ4によって検知できる。どの程度の欠損を検知可能とするかは、エアー供給口61から供給される圧縮エアーの圧力やエアー噴出口22の開口面積並びに上記閾値によって適宜調整可能である。
【0031】
ここで、離型工程において非製品部分102の一部が離型されずに金型に残留した場合について説明する。この場合にあっては、本離型検査装置1によっては、非製品部分102の一部の欠損を直接的に検出できないことになり、離型は正常であるとして次の成形サイクルに移行する。この次の成形サイクルの材料充填工程においては、金型内に残留する非製品部分102によって樹脂材料が堰き止められ、それより下流のキャビティ空間には充填されない。その結果、図7に示した状態と同様に製品部分101の一部に欠損が生ずることとなり、本離型検査装置1によって検出される。非製品部分102は、製品部分101とは異なり、高精度を要求されず、また表面の傷も問題とならないため、非製品部分102が部分的に離型されずに金型に残留したまま次の成形サイクルに移行しても大きな問題とならない。
【0032】
図9は、離型検査装置1の動作、すなわち図11における離型検査工程(#4)の詳細を示している。まず、金型から離型された樹脂成形品100の非製品部分102は、固定熱交換工程(#11)においてプレス治具2及びプレス治具3によって固定され、プレス治具2及びプレス治具3との間で熱交換される。次に、エアー噴出工程において(#12)エアー噴出口22からエアーを噴出させ、エアー検知工程(#13)において圧力センサ4によってエアーを検知する。このとき、樹脂成形品100の先端に製品部分101が存在する場合は、圧力センサ4によってエアーが検出されない。また、製品部分101が存在しない場合には、圧力センサ4によってエアーが検出される。そして、判定工程(#14)において圧力センサ4から出力された信号に基づいて制御部5が離型の正否を判定する。なお固定熱交換工程(#11)は、その後のエアー噴出工程(#12)、エアー検知工程(#13)及び判定工程(#14)が実行される際にも同時に継続されて、非製品部分102をガラス転移点未満に冷却する。エアー噴出工程(#12)乃至判定工程(#14)において同時に固定熱交換工程(#11)を継続させる場合にあっても、非製品部分102の冷却が不足する場合には、次のサイクルの材料充填工程及び成形工程(図11参照)に亘って固定熱交換工程(#11)を継続させればよい。
【0033】
以上のように、本実施形態の離型検査装置1によれば、エアー噴出口22とエアー流路32とが、樹脂成形品100の製品部分101を挟んで対向配置されているので、樹脂成形品100の離型が正常になされ、製品部分101の欠損がない場合には、エアー噴出口22から噴出されたエアーが製品部分101によって遮蔽され、圧力センサ4によって検知されない。一方、樹脂成形品100の離型が異常であり、製品部分101の欠損が生じた場合には、エアー噴出口22から噴出されたエアーが遮蔽されることなくエアー流路32に流入し、圧力センサ4によって検知される。従って、制御部5は、圧力センサ4による検知結果に基づいて、離型の正否を判定することが可能となる。また、プレス治具2及びプレス治具3によって非製品部分102が固定された状態で噴出されたエアーによって製品部分101及び非製品部分102が冷却されるので、離型直後の樹脂成形品100の変形を抑制できる。なお、プレス治具2及びプレス治具3によって固定される部分は、非製品部分102等の非製品部分であるため、プレス治具2及びプレス治具3との接触により、変形・損傷が生じても問題とはならない。また、プレス治具2及びプレス治具3は交換可能に構成され、樹脂成形品100の構成に応じて複数種類準備されているので、離型検査を行う樹脂成形品100に容易かつ迅速に対応させることができる。
【0034】
また、プレス治具2及びプレス治具3は、製品部分101の周辺に退避された退避部21及び31を有しているので、製品部分101に対して非接触により離型の正否を判定することが可能となり、製品部分101の変形・損傷を防止でき、品質の向上を図ることができる。また、エアー流路32の断面積がエアー噴出口22から視た製品部分101の投影面積よりも小さいので、エアー噴出口22から噴出されたエアーが製品部分101の外側を回り込んでエアー流路32に流入し、圧力センサ4によって検知されることを効果的に抑制できる。これにより、離型の正否を正確に判定することが可能となる。また、熱交換部20及び30との当接から解放された樹脂成形品100は、既にガラス転移点未満の温度に冷却されていることとなるので、その後自重により変形する虞がなくなる。これにより、所望の形状の樹脂成形品100を成形できるようになる。
【0035】
また、固定熱交換工程(#11)において、樹脂成形品100の非製品部分102を固定し、その後、エアー噴出工程(#12)及びエアー検知工程(#13)において樹脂成形品を支持する際に、非製品部分102から熱を奪い冷却するので、製品部分101の欠損の判定と樹脂成形品100の冷却を同時に行うことができる。そして、製品部分101に欠損がないと判定した場合には、金型を用いて次のサイクルの成形工程に移行する。ここで、金型において次のサイクルの成形工程を実行するのと同時進行で固定熱交換工程(#11)を継続して実行することにより、樹脂成形品100の生産効率を低下させることなく、離型直後の樹脂成形品100の自重による変形を防止することが可能となる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも非製品部分102が固定された樹脂成形品100の製品部分にエアーを噴出し、その背後のエアーを検知して製品部分101等の製品部分の欠損を判定するように構成されていればよい。また、本発明は、種々の変形が可能であり、例えば、樹脂成形品100の大きさや形状によっては、圧力センサ4の替わりに流量センサを用いてエアー流路32から流れ込むエアーを検知するように構成してもよい。流量センサの形態としては、例えば、電磁式、羽根車式、浮き子式の他超音波式等の各種形態が挙げられる。また、プレス治具2の下部に充填室62を設けることなく、圧縮エアーの供給元とエアー噴出口22とを配管にて接続し、エアー噴出口22から圧縮エアーを直接供給するように構成してもよい。また、離型検査装置1は、樹脂成形品100に替えて、溶融金属射出成形法や金属粉末射出成形法等を用いた金属成形品にも適用可能である。
【0037】
また、図10に示すように、製品部分101の下端部が非製品部分102の下端部よりも下方に突出しない場合には、プレス治具2の退避部21は不要となる。製品部分101の上端部が非製品部分102の上端部よりも上方に突出しない場合にあっても、同様にプレス治具3の退避部31は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態による離型検査装置の構成を示す断面図。
【図2】金型から取出された直後の樹脂成形品を示す正面図。
【図3】離型検査装置の固定熱交換工程を示す断面図。
【図4】離型検査装置によって矯正された樹脂成形品を示す正面図。
【図5】離型検査装置のエアー噴出工程を示す断面図。
【図6】製品部分によって拡散されるエアーを示す平面図。
【図7】製品部分が欠損している樹脂成形品を検査する離型検査装置を示す断面図。
【図8】製品部分の一部が欠損している樹脂成形品を検査する離型検査装置を示す断面図。
【図9】離型検査装置の動作を示すフローチャート。
【図10】離型検査装置の変形例を示す断面図。
【図11】樹脂成形品の製造工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0039】
1 離型検査装置
2 プレス治具(固定手段)
3 プレス治具(固定手段)
4 圧力センサ(エアー検知手段)
5 制御部(判定手段)
20 熱交換部
21 退避部
22 エアー噴出口
30 熱交換部
31 退避部
32 エアー流路
100 樹脂成形品
101 製品部分
102 非製品部分
103 スプル
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて成形品を製造する際に、成形品が金型から正常に取出されていることを検査する離型検査装置及びそれに用いられる離型検査方法に関する。特に通信機器等に組み込まれる小型の精密部品の離型検査に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂成形品や金属成形品の製造においては、金型を用いた射出成形やダイキャスト成型が広く実施されている。図11は、このような成型の一例として、射出成形による樹脂成形品の製造における各工程の流れを示している。まず、材料充填工程においては、閉じられた金型のキャビティ空間に樹脂材料が充填される(#1)。次に成形工程においては、充填された樹脂材料が金型によって成形される(#2)。そして、離型工程においては、樹脂成形品が金型から取り出される(#3)。このとき、樹脂成形品が正常に離型されず、その一部が金型内に残留し異物となると、次の樹脂成形品を成形するにあたって金型が閉じられたときに、金型に損傷を及ぼす虞が生ずる。そこで、樹脂成形品が正常に離型されたことを検査・確認する離型検査工程(#4)を設けるのが一般的である。離型検査工程において、樹脂成形品が正常に離型されたと判定されると(#4においてYES)、#1に戻って次の成形サイクルに移行する。一方、樹脂成形品が正常に離型されなかったと判定されると(#4においてNO)、金型内の異物すなわち離型されずに残った樹脂成形品の一部を除去した後(#5)、#1に戻って次の成形サイクルに移行する。なお、正常に離型された樹脂成形品は、#4の後、切断工程に移行し、ランナ等の不要部分が切断される。
【0003】
上記離型検査工程においては、一般に離型後の金型に残留する樹脂成形品の有無を確認することにより、離型の正否の判定がなされている。例えば、特許文献1には、離型後の金型にエアーを供給し、そのエアーを検知することにより離型の正否を判定する技術が示されている。
【0004】
また、離型された樹脂成形品から離型の正否を間接的に判定する技術も検討されている。例えば、特許文献2には、離型された樹脂成形品をバキューム装置で吸引し、治具本体のチャック部のエアー流量を検知することにより離型の正否を間接的に判定する技術が示されている。
【0005】
【特許文献1】実開平1−70527号公報
【特許文献2】特開平10−44199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示された技術においては、同文献の図4に示されているように離型検査の際に型閉め動作を伴うため、離型不良で樹脂成形品が金型に残留する場合には、金型が損傷を受ける。また、離型が不完全であって樹脂成形品の一部の破片が金型内に残留する場合(配管部材の出口が完全に塞がれてない場合)、金型にエアーを供給してもエアー流路の気圧はほとんど変化しないことから、離型の異常を検知できないことがある。また、樹脂材料とエアーを同一系統の配管から供給するように構成されていることから、エアーの供給時に配管部材の内部に滞留している樹脂材料がキャビティ空間に射出されるため、次の成形サイクルに悪影響を及ぼす虞がある。仮に、樹脂材料の供給用の配管とは別系統の配管によりエアーを供給するように構成しても、エアーの供給用の配管に浸透した樹脂材料によってエアーの供給用の配管が塞がれて、配管が機能しなくなる虞が生ずる。このような樹脂材料の浸透は、特に低粘度樹脂原料等において顕著であり、その対策には複雑な構造の金型が必要となり、金型のコストアップを招来する。
【0007】
また、上記特許文献2に示された技術においては、離型直後の樹脂成形品が落下されて治具本体によってチャックされるため、樹脂成形品と治具本体との接触により樹脂成形品が変形・損傷する虞がある。同文献には、樹脂成形品に傷を付けない工夫として面取り加工が示されているが、表面の微細な傷が致命的な欠陥となる精密部品の製造には十分に対応できない。
【0008】
以上、樹脂成形品に関して説明したが、ダイキャスト成型された金属成形品に関しても同様の課題がある。例えば、上記特許文献1に示された技術においては、溶融金属原料の浸透の対策として複雑な構造の金型が必要となり、金型のコストアップを招来する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、成形品の表面を損傷させることなく、離型不良を検知することができる離型検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、成形品の非製品部分を固定する固定手段と、前記固定手段によって固定された成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出手段と、前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知手段と、前記エアー検知手段による検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定手段を備えたことを特徴とする離型検査装置である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の離型検査装置において、前記固定手段は、前記製品部分との接触を回避するために、該製品部分の周辺に向かって退避された退避部を有することを特徴する。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の離型検査装置において、前記固定手段は、前記製品部分の背後から前記エアー検知手段に亘って、前記エアー噴出手段から噴出されたエアーを流通させるエアー流路を有し、前記エアー噴出手段の開口面積及び前記エアー流路の断面積は、該エアー噴出手段から視た前記製品部分の投影面積よりも小さいことを特徴する。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の離型検査装置において、前記成形品は、樹脂によって成形され、前記固定手段は、前記成形品の非製品部分と当接して該非製品部分との間で熱交換を行う熱交換部を有し、前記成形品の温度が前記樹脂のガラス転移点未満に低下するまで熱交換し続けることを特徴する。
【0014】
請求項5の発明は、成形品の非製品部分と当接することにより、該非製品部分を固定し、かつ該非製品部分との間で熱交換を行う固定熱交換工程と、前記固定熱交換工程によって固定されている成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出工程と、前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知工程と、前記エアー検知工程における検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定工程を有することを特徴とする離型検査方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、成形品の離型が正常になされ、製品部分の欠損がない場合には、エアー噴出手段から噴出されたエアーが製品部分によって遮蔽され、製品部分の背後のエアーは、ほとんど変化しないのでエアー検知手段によって検知されない。一方、成形品の離型が異常であり、製品部分の欠損が生じた場合には、エアー噴出手段から噴出されたエアーが遮蔽されることなくエアー検知手段に到達し、検知される。従って、判定手段は、エアー検知手段による検知結果に基づいて、離型の正否を判定することが可能となる。なお、固定手段によって固定される部分は、例えばランナ等の非製品部分であるため、固定手段との接触により、変形・損傷が生じても問題とはならない。
【0016】
請求項2の発明によれば、固定手段は、製品部分の周辺に退避された退避部を有しているので、製品部分に対して非接触により離型の正否を判定することが可能となり、製品部分の変形・損傷を防止できる。特に、精密部品の製造に本発明を適用する場合においては、部品の表面に損傷を及ぼすことがないので、品質の向上を図ることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、エアー噴出手段の開口面積及びエアー流路の断面積がエアー噴出手段から視た製品部分の投影面積よりも小さいので、エアー噴出手段から噴出されたエアーが製品部分の外側を回り込んでエアー検知手段に到達することを効果的に抑制できる。これにより、離型の正否を正確に判定することが可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、熱交換部との当接から解放された樹脂成形品は、既にガラス転移点未満の温度に冷却されていることとなるので、その後自重により変形する虞がなくなる。これにより、所望の形状の樹脂成形品を成形できるようになる。
【0019】
請求項5の発明によれば、固定熱交換工程において、成形品の非製品部分を固定し、その後のエアー噴出工程及びエアー検知工程において成形品を支持する際にも、継続して該非製品部分から熱を奪い冷却するので、製品部分の欠損の判定と成形品の冷却を同時に行うことができる。そして、製品部分に欠損がないと判定した場合には、金型を用いて次のサイクルの成形工程に移行する。ここで、金型において次のサイクルの成形工程を実行するのと同時進行で固定熱交換工程を継続して実行することにより、成形品の生産効率を低下させることなく、離型直後の成形品の自重による変形を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態による離型検査装置について図面を参照して説明する。図1は離型検査装置の概略構成を示している。離型検査装置1は、金型を用いて成形された樹脂成形品100を固定する板状のプレス治具(固定手段)2,3と、樹脂成形品100の製品部分101の背後の気圧を検知するための圧力センサ(エアー検知手段)4と、各部を制御する制御部(判定手段)5等によって構成されている。本実施形態の離型検査装置1は、例えば、通信機器、OA・情報機器又は自動車部品に組み込まれる精密部品、例えばコネクタ、スイッチ、歯車又は光デバイス部品等の成形に適用される。このような精密部品は通常多数のキャビティ空間が形成された金型によって成形され、1つの成形サイクルで多数個成形される。このような多数個取りの工法において金型から離型された樹脂成形品100は、製品部分101と、材料充填工程においてキャビティ空間に成形材料を流し込むためのランナ等の非製品部分102とを有している。なお、樹脂成形品100を形成する樹脂としては、熱硬化性樹脂の他、熱可塑性樹脂が挙げられ、射出成形法、トランスファー成形法又は注型成形法などによって成形される。
【0021】
プレス治具2は、樹脂成形品100の非製品部分102を図中下方から支持する。プレス治具3は、樹脂成形品100の非製品部分102を上方から下方に押圧する。プレス治具2とプレス治具3とによって樹脂成形品100の非製品部分102が上下から挟み込まれて固定される。プレス治具2及びプレス治具3は、成形直後の非製品部分102を直線的に固定できるように、平面状に形成された熱交換部20及び30を有し、非製品部分102との間で活発に熱交換がなされるよう金属で形成されている。また、プレス治具2及びプレス治具3の内部には、必要に応じて冷却水路等が組み込まれている。非製品部分102の固定時に製品部分101とプレス治具2とが接触しないように、プレス治具2の製品部分101に対応する位置には、下方に退避する退避部21が形成されている。同様に、プレス治具3の製品部分101に対応する位置には、上方に退避する退避部31が形成されている。
【0022】
プレス治具2は、箱状治具6の開放された上面に、例えばねじ等を介して着脱自在に装着されている。箱状治具6の各側面には、圧縮エアーを供給するためのエアー供給口61が設けられている。エアー供給口61は、プレス治具2と箱状治具6とによって囲まれた充填室62に4方向から圧縮エアーを供給する。エアー供給口61の個数及び配置は、充填室62の容積、圧縮エアーの供給元の元圧、エアー噴出口22の個数及び配置等に応じて適宜設定される。プレス治具2の製品部分101の略中心に対応する位置には、上方に向けてエアーを噴出するエアー噴出口(エアー噴出手段)22が形成されている。エアー噴出口22の開口面積は、エアー噴出口22から視た製品部分101の投影面積よりも小さく形成されている。エアー供給口61から供給された圧縮エアーは、充填室62に一旦充填された後、エアー噴出口22から上方すなわち製品部分101に向けて噴出される。
【0023】
プレス治具3は、プレス治具2に対して昇降自在に設けられている。プレス治具3の昇降動作のために昇降駆動部(図示せず)が別途設けられており、プレス治具3は、例えばねじ等を介して昇降駆動部に着脱自在に装着されている。プレス治具3の製品部分101の略中心に対応する位置には、上方に向けてエアー流路(エアー検知手段)32が形成されている。エアー流路32の断面積は、エアー噴出口22から視た製品部分101の投影面積よりも小さく形成されている。圧力センサ4は、製品部分101の個数に応じてプレス治具3の上方に複数個設けられ、チューブ(エアー検知手段)7を介してプレス治具3のエアー流路32に接続されている。
【0024】
プレス治具2及びプレス治具3は、離型検査を行う樹脂成形品100の形状、すなわち製品部分101及び非製品部分102の形状及び配置に応じて複数種類準備されている。プレス治具2及びプレス治具3を検査対象である樹脂成形品100に応じて交換し、チューブ7の配管を接続することにより、異なる構成の樹脂成形品100に容易かつ迅速に対応させることができる。
【0025】
圧力センサ4は、エアー流路32及びチューブ7から流入したエアーの圧力を検知して、制御部5に検知結果に応じた信号を出力する。圧力センサ4の形態としては、半導体ダイヤフラム型、静電容量型、弾性体ダイヤフラム型の他圧電型等の各種形態が挙げられる。制御部5は、圧力センサ4から出力された信号に基づいて製品部分101の有無、すなわち離型の正否を判定する。例えば、圧力センサ4から出力された信号が所定の閾値よりも小さい場合、制御部5は、エアー噴出口22から噴出されたエアーが製品部分101によって堰き止められたと判断して、離型が正常であると判定する。このとき、制御部5は、成形装置に次のサイクルの成形を実行する旨の信号を出力する。一方、圧力センサ4から出力された信号が所定の閾値よりも大きい場合、エアー噴出口22とエアー流路32の間に、エアーを遮る製品部分101が存在しなかったと考えられる。この場合、製品部分101は、離型時に非製品部分102から分離され、金型に残留している可能性がある。このまま次のサイクルの成形を実行すると金型に損傷を及ぼす虞があるため、制御部5は、その旨の警告を発し、その警告を受けた作業者は金型を点検することにより、金型の損傷を未然に防止できる。
【0026】
図2は、金型から離型された直後の樹脂成形品100を示している。樹脂成形品100は、中央部のスプル103が把持されて金型から離型検査装置1に移動される。離型直後の樹脂成形品100の温度はガラス転移点よりも高いため、樹脂成形品100の形状は安定しない状態となり、その自重により両端部が下方に垂れ下がる。この状態で樹脂成形品100の温度がガラス転移点よりも低下すると、両端部が下方に垂れ下がり、非製品部分102が湾曲した形状で安定する。樹脂成形品100は、その後の切断工程において非製品部分102から製品部分101を精度よく切断する際に、切断用の治具に正確に固定される必要があるところ、非製品部分102の湾曲により治具への固定が不能又は不正確となる虞がある。
【0027】
そこで、図3に示すように、本実施形態の離型検査装置1においては、離型直後の樹脂成形品100を矯正しつつ冷却する。すなわち、金型から離型された直後の樹脂成形品100の非製品部分102をプレス治具2とプレス治具3とによって上下から挟み込んで固定した状態で、非製品部分102と熱交換部20及び30との間で熱交換を生じさせる。これにより、非製品部分102からプレス治具2及びプレス治具3に熱が移動し、非製品部分102がガラス転移点未満まで冷却される。その結果、図4に示すように、非製品部分102は直線的に矯正され、樹脂成形品100の形状は正常なものとなり、その後の切断工程に円滑に移行できるようになる。
【0028】
図5乃至図8は、非製品部分102が固定された樹脂成形品100の製品部分101にエアー噴出口22からエアーを噴出して、離型の正否を検知する工程を示している。図5に示すように、離型の正常になされ、樹脂成形品100の先端に製品部分101が存在する場合は、エアー噴出口22から噴出されたエアーは、製品部分101に衝突し、図6に示すように、製品部分101の周囲に放射状に拡散される。そのため、製品部分101に衝突したエアーは、エアー流路32及びチューブ7にほとんど流入することがなく、圧力センサ4によって検出されない。よって制御部5は、離型工程が正常になされたことを判定できる。なお、製品部分101に衝突するエアー及びその後非製品部分102の周辺を流れるエアーによっても、製品部分101及び非製品部分102が冷却される。
【0029】
一方、図7に示すように、離型が正常になされずに製品部分101が離型時に非製品部分102から分離された場合、エアー噴出口22から噴出されたエアーの大部分が遮られることなくエアー流路32及びチューブ7に流入し、圧力センサ4によって検出される。そして、圧力センサ4から出力される信号が所定の閾値を超えると、制御部5は、離型工程に異常があることを判定できる。
【0030】
また、図8に示すように、離型が不完全で製品部分101の一部に欠損が生じた場合(この場合、金型のキャビティ空間内に上記欠損部分の破片が残留するが、特許文献1に示された技術によっては、段落(0006)に記載したように、検出されない虞が生ずる)においても、エアー噴出口22から噴出されたエアーがエアー流路32及びチューブ7に流入するので、圧力センサ4によって検知できる。どの程度の欠損を検知可能とするかは、エアー供給口61から供給される圧縮エアーの圧力やエアー噴出口22の開口面積並びに上記閾値によって適宜調整可能である。
【0031】
ここで、離型工程において非製品部分102の一部が離型されずに金型に残留した場合について説明する。この場合にあっては、本離型検査装置1によっては、非製品部分102の一部の欠損を直接的に検出できないことになり、離型は正常であるとして次の成形サイクルに移行する。この次の成形サイクルの材料充填工程においては、金型内に残留する非製品部分102によって樹脂材料が堰き止められ、それより下流のキャビティ空間には充填されない。その結果、図7に示した状態と同様に製品部分101の一部に欠損が生ずることとなり、本離型検査装置1によって検出される。非製品部分102は、製品部分101とは異なり、高精度を要求されず、また表面の傷も問題とならないため、非製品部分102が部分的に離型されずに金型に残留したまま次の成形サイクルに移行しても大きな問題とならない。
【0032】
図9は、離型検査装置1の動作、すなわち図11における離型検査工程(#4)の詳細を示している。まず、金型から離型された樹脂成形品100の非製品部分102は、固定熱交換工程(#11)においてプレス治具2及びプレス治具3によって固定され、プレス治具2及びプレス治具3との間で熱交換される。次に、エアー噴出工程において(#12)エアー噴出口22からエアーを噴出させ、エアー検知工程(#13)において圧力センサ4によってエアーを検知する。このとき、樹脂成形品100の先端に製品部分101が存在する場合は、圧力センサ4によってエアーが検出されない。また、製品部分101が存在しない場合には、圧力センサ4によってエアーが検出される。そして、判定工程(#14)において圧力センサ4から出力された信号に基づいて制御部5が離型の正否を判定する。なお固定熱交換工程(#11)は、その後のエアー噴出工程(#12)、エアー検知工程(#13)及び判定工程(#14)が実行される際にも同時に継続されて、非製品部分102をガラス転移点未満に冷却する。エアー噴出工程(#12)乃至判定工程(#14)において同時に固定熱交換工程(#11)を継続させる場合にあっても、非製品部分102の冷却が不足する場合には、次のサイクルの材料充填工程及び成形工程(図11参照)に亘って固定熱交換工程(#11)を継続させればよい。
【0033】
以上のように、本実施形態の離型検査装置1によれば、エアー噴出口22とエアー流路32とが、樹脂成形品100の製品部分101を挟んで対向配置されているので、樹脂成形品100の離型が正常になされ、製品部分101の欠損がない場合には、エアー噴出口22から噴出されたエアーが製品部分101によって遮蔽され、圧力センサ4によって検知されない。一方、樹脂成形品100の離型が異常であり、製品部分101の欠損が生じた場合には、エアー噴出口22から噴出されたエアーが遮蔽されることなくエアー流路32に流入し、圧力センサ4によって検知される。従って、制御部5は、圧力センサ4による検知結果に基づいて、離型の正否を判定することが可能となる。また、プレス治具2及びプレス治具3によって非製品部分102が固定された状態で噴出されたエアーによって製品部分101及び非製品部分102が冷却されるので、離型直後の樹脂成形品100の変形を抑制できる。なお、プレス治具2及びプレス治具3によって固定される部分は、非製品部分102等の非製品部分であるため、プレス治具2及びプレス治具3との接触により、変形・損傷が生じても問題とはならない。また、プレス治具2及びプレス治具3は交換可能に構成され、樹脂成形品100の構成に応じて複数種類準備されているので、離型検査を行う樹脂成形品100に容易かつ迅速に対応させることができる。
【0034】
また、プレス治具2及びプレス治具3は、製品部分101の周辺に退避された退避部21及び31を有しているので、製品部分101に対して非接触により離型の正否を判定することが可能となり、製品部分101の変形・損傷を防止でき、品質の向上を図ることができる。また、エアー流路32の断面積がエアー噴出口22から視た製品部分101の投影面積よりも小さいので、エアー噴出口22から噴出されたエアーが製品部分101の外側を回り込んでエアー流路32に流入し、圧力センサ4によって検知されることを効果的に抑制できる。これにより、離型の正否を正確に判定することが可能となる。また、熱交換部20及び30との当接から解放された樹脂成形品100は、既にガラス転移点未満の温度に冷却されていることとなるので、その後自重により変形する虞がなくなる。これにより、所望の形状の樹脂成形品100を成形できるようになる。
【0035】
また、固定熱交換工程(#11)において、樹脂成形品100の非製品部分102を固定し、その後、エアー噴出工程(#12)及びエアー検知工程(#13)において樹脂成形品を支持する際に、非製品部分102から熱を奪い冷却するので、製品部分101の欠損の判定と樹脂成形品100の冷却を同時に行うことができる。そして、製品部分101に欠損がないと判定した場合には、金型を用いて次のサイクルの成形工程に移行する。ここで、金型において次のサイクルの成形工程を実行するのと同時進行で固定熱交換工程(#11)を継続して実行することにより、樹脂成形品100の生産効率を低下させることなく、離型直後の樹脂成形品100の自重による変形を防止することが可能となる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも非製品部分102が固定された樹脂成形品100の製品部分にエアーを噴出し、その背後のエアーを検知して製品部分101等の製品部分の欠損を判定するように構成されていればよい。また、本発明は、種々の変形が可能であり、例えば、樹脂成形品100の大きさや形状によっては、圧力センサ4の替わりに流量センサを用いてエアー流路32から流れ込むエアーを検知するように構成してもよい。流量センサの形態としては、例えば、電磁式、羽根車式、浮き子式の他超音波式等の各種形態が挙げられる。また、プレス治具2の下部に充填室62を設けることなく、圧縮エアーの供給元とエアー噴出口22とを配管にて接続し、エアー噴出口22から圧縮エアーを直接供給するように構成してもよい。また、離型検査装置1は、樹脂成形品100に替えて、溶融金属射出成形法や金属粉末射出成形法等を用いた金属成形品にも適用可能である。
【0037】
また、図10に示すように、製品部分101の下端部が非製品部分102の下端部よりも下方に突出しない場合には、プレス治具2の退避部21は不要となる。製品部分101の上端部が非製品部分102の上端部よりも上方に突出しない場合にあっても、同様にプレス治具3の退避部31は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態による離型検査装置の構成を示す断面図。
【図2】金型から取出された直後の樹脂成形品を示す正面図。
【図3】離型検査装置の固定熱交換工程を示す断面図。
【図4】離型検査装置によって矯正された樹脂成形品を示す正面図。
【図5】離型検査装置のエアー噴出工程を示す断面図。
【図6】製品部分によって拡散されるエアーを示す平面図。
【図7】製品部分が欠損している樹脂成形品を検査する離型検査装置を示す断面図。
【図8】製品部分の一部が欠損している樹脂成形品を検査する離型検査装置を示す断面図。
【図9】離型検査装置の動作を示すフローチャート。
【図10】離型検査装置の変形例を示す断面図。
【図11】樹脂成形品の製造工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0039】
1 離型検査装置
2 プレス治具(固定手段)
3 プレス治具(固定手段)
4 圧力センサ(エアー検知手段)
5 制御部(判定手段)
20 熱交換部
21 退避部
22 エアー噴出口
30 熱交換部
31 退避部
32 エアー流路
100 樹脂成形品
101 製品部分
102 非製品部分
103 スプル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の非製品部分を固定する固定手段と、
前記固定手段によって固定された成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出手段と、
前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知手段と、
前記エアー検知手段による検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定手段を備えたことを特徴とする離型検査装置。
【請求項2】
前記固定手段は、前記製品部分との接触を回避するために、該製品部分の周辺に向かって退避された退避部を有することを特徴する請求項1に記載の離型検査装置。
【請求項3】
前記固定手段は、前記製品部分の背後から前記エアー検知手段に亘って、前記エアー噴出手段から噴出されたエアーを流通させるエアー流路を有し、
前記エアー噴出手段の開口面積及び前記エアー流路の断面積は、該エアー噴出手段から視た前記製品部分の投影面積よりも小さいことを特徴する請求項1又は請求項2に記載の離型検査装置。
【請求項4】
前記成形品は、樹脂によって成形され、
前記固定手段は、前記成形品の非製品部分と当接して該非製品部分との間で熱交換を行う熱交換部を有し、前記成形品の温度が前記樹脂のガラス転移点未満に低下するまで熱交換し続けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の離型検査装置。
【請求項5】
成形品の非製品部分と当接することにより、該非製品部分を固定し、かつ該非製品部分との間で熱交換を行う固定熱交換工程と、
前記固定熱交換工程によって固定されている成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出工程と、
前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知工程と、
前記エアー検知工程における検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定工程を有することを特徴とする離型検査方法。
【請求項1】
成形品の非製品部分を固定する固定手段と、
前記固定手段によって固定された成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出手段と、
前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知手段と、
前記エアー検知手段による検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定手段を備えたことを特徴とする離型検査装置。
【請求項2】
前記固定手段は、前記製品部分との接触を回避するために、該製品部分の周辺に向かって退避された退避部を有することを特徴する請求項1に記載の離型検査装置。
【請求項3】
前記固定手段は、前記製品部分の背後から前記エアー検知手段に亘って、前記エアー噴出手段から噴出されたエアーを流通させるエアー流路を有し、
前記エアー噴出手段の開口面積及び前記エアー流路の断面積は、該エアー噴出手段から視た前記製品部分の投影面積よりも小さいことを特徴する請求項1又は請求項2に記載の離型検査装置。
【請求項4】
前記成形品は、樹脂によって成形され、
前記固定手段は、前記成形品の非製品部分と当接して該非製品部分との間で熱交換を行う熱交換部を有し、前記成形品の温度が前記樹脂のガラス転移点未満に低下するまで熱交換し続けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の離型検査装置。
【請求項5】
成形品の非製品部分と当接することにより、該非製品部分を固定し、かつ該非製品部分との間で熱交換を行う固定熱交換工程と、
前記固定熱交換工程によって固定されている成形品の製品部分に対してエアーを噴出するエアー噴出工程と、
前記製品部分の背後のエアーを検知するエアー検知工程と、
前記エアー検知工程における検知結果に基づいて、前記製品部分の欠損を判定する判定工程を有することを特徴とする離型検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−120170(P2010−120170A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293170(P2008−293170)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【特許番号】特許第4378423号(P4378423)
【特許公報発行日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(390025140)株式会社小松ライト製作所 (71)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【特許番号】特許第4378423号(P4378423)
【特許公報発行日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(390025140)株式会社小松ライト製作所 (71)
【Fターム(参考)】
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