説明

難燃性樹脂フィルム及びフレキシブルフラットケーブル

【課題】難燃性、加工性及び接着性に優れた新規難燃性樹脂フィルム及びこれを用いて成るフレキシブルフラットケーブルを提供すること。
【解決手段】基材フィルムに難燃接着層(A)が積層され、これとは反対側の面に難燃樹脂層(B)が積層された構成を有する樹脂フィルムであって、前記難燃樹脂層(B)が、バインダー樹脂、平均粒子径が1.0μm以下の水酸化マグネシウム及び平均粒子径が1.0μm以下のメラミンシアヌレートを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い難燃性を有する難燃性樹脂フィルムに関し、より詳細には、難燃性、加工性及び接着性に優れた難燃性樹脂フィルムや、これを用いたフレキシブルフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線ケーブルの一種であるフラットケーブルは、金属導体を並列に配置して樹脂フィルムで被覆してなる配線ケーブルであり、例えばパソコンなどの電子機器内部での部品間の結線などに用いられている。
この種の配線ケーブルに用いる樹脂フィルムには、難燃性のほかに、絶縁性、柔軟性、耐熱性、金属導体との接着性などが求められる。そのため、この種の配線ケーブルに用いる樹脂フィルムの多くは、絶縁性や柔軟性等に優れたポリエステル系樹脂などからなる絶縁基材フィルムに、難燃剤等を混合したポリエステル系樹脂を主成分とする接着層を積層してなる絶縁性積層フィルムが使用されている。
【0003】
この際、難燃化剤として、例えばデカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニル等のハロゲン系難燃剤が用いられてきたが、ハロゲン系難燃剤は、燃焼時にダイオキシン関連物質を生成する等の問題があるため、最近はハロゲン以外の難燃剤が提案され用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリエステル系樹脂からなるフィルム基材上に接着剤層が形成された接着性フィルムであって、上記基材及び/又は粘着剤層がリン系難燃剤により難燃化されていることを特徴とするノンハロゲン難燃性接着性フィルムと、これを用いたフラットケーブルについて開示されている。このように、リン系化合物を配合することによる難燃化の手法が開示されているが、安全性や環境調和性が不十分で、さらに成形性や耐熱性等の実用面に影響を与えるなどの問題があった。
【0005】
これらの問題を解決するために、例えば、絶縁フィルムの片面に、高接着性・高絶縁性のノンハロゲン・ノンリン難燃接着層を設け、他面に高難燃性のノンハロゲン・ノンリン難燃非接着層を設けてなるフラットケーブル用絶縁難燃接着フィルムなどが提案されてきた(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−221642号公報
【特許文献2】特開2004−146286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の発明をはじめとする従来の方法であっても、難燃性等の観点から必ずしも満足できるものではなく、改善が求められていた。さらに、フラットケーブルのような部材への適用には、難燃性以外にも、加工性及び接着性などの要求特性を満足する必要性がある。
そこで本発明は、接着性を維持しつつ、難燃性及び加工性に優れた難燃性フィルムや、これを用いたフレキシブルフラットケーブルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基材フィルムに難燃接着層(A)が積層され、これとは反対側の面に難燃樹脂層(B)が積層された構成を有する樹脂フィルムであって、前記難燃樹脂層(B)は、バインダー樹脂100重量部に対して、平均粒子径が1.0μm以下の水酸化マグネシウムを32〜176重量部及び平均粒子径が1.0μm以下のメラミンシアヌレートを7〜56重量部含有し、かつ所定の特性を備えた難燃性樹脂フィルムによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、第1の本発明は、基材フィルムに難燃接着層(A)が積層され、これとは反対側の面に難燃樹脂層(B)が積層された構成を有する樹脂フィルムであって、前記難燃樹脂層(B)は、バインダー樹脂、平均粒子径が1.0μm以下の水酸化マグネシウムを32〜176重量部及び平均粒子径が1.0μm以下のメラミンシアヌレートを7〜56重量部含有し、接着性試験方法により測定される剥離強度が3.8N/cm以上であって、かつ以下に示す燃焼試験方法による燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性樹脂フィルムである。
(燃焼試験方法)
メタンガス(純度98.0%以上)を使用し、ASTM D5205−99に基づくチリルバナーで外炎125±10mm、内炎40±2mmに調整し(内炎の先端温度816℃以上)、長さ400mm×幅50mm(幅2mm程度の錫メッキ銅箔を並列に12本程度挟んでいる)の評価用サンプルを用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL1581−1080 VW−1燃焼試験の手順に基づき、試験回数5回にて燃焼試験を実施し、UL1581−1080 VW−1燃焼試験の判定基準に基づき、試験回数5回中2回以上合格したもの「燃焼試験に合格する」という。
【0010】
第1の本発明において、前記難燃接着層(A)は、少なくとも、接着樹脂、水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートを含有することが好ましい。
【0011】
また第1の本発明において、前記基材フィルムと前記難燃接着層(A)との間に接着層(C)を有することが好ましく、前記接着層(C)は、ポリエステル系樹脂に硬化剤を含有して成る硬化型接着層であることが好ましい。
【0012】
さらに、第1の本発明において、ハロゲン、リン化合物及びアンチモン化合物のいずれも含有しないことが好ましい。
【0013】
第2の本発明は、第1の難燃性樹脂フィルムを有するフレキシブルフラットケーブルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、基材フィルムに難燃接着層及び特定の難燃樹脂層を有する構成を備え、高難燃性が付与された難燃性樹脂フィルムであって、難燃性以外にも、加工性及び接着性などに優れるという利点があり、特にフレキシブルフラットケーブル用途に好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の難燃性樹脂フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の難燃性樹脂フィルムの実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<難燃性樹脂フィルム>
第1の本発明である難燃性樹脂フィルムとしては、基材フィルムに難燃接着層(A)が積層され、これとは反対側の面に難燃樹脂層(B)が積層された構成を有する樹脂フィルムであって、前記難燃樹脂層(B)は、バインダー樹脂100重量部に対して、平均粒子径が1.0μm以下の水酸化マグネシウムを32〜176重量部及び平均粒子径が1.0μm以下のメラミンシアヌレートを7〜56重量部含有し、接着性試験方法により測定される剥離強度が3.8N/cm以上であって、かつ以下に示す燃焼試験方法による燃焼試験に合格するものであれば、特に制限されず、このような構成とすることで、難燃性、加工性及び接着性に優れた難燃性樹脂フィルムとすることができる。
(燃焼試験方法)
メタンガス(純度98.0%以上)を使用し、ASTM D5205−99に基づくチリルバナーで外炎125±10mm、内炎40±2mmに調整し(内炎の先端温度816℃以上)、長さ400mm×幅50mm(幅2mm程度の錫メッキ銅箔を並列に12本程度挟んでいる)の評価用サンプルを用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL1581−1080 VW−1燃焼試験の手順に基づき、試験回数5回にて燃焼試験を実施し、UL1581−1080 VW−1燃焼試験の判定基準に基づき、試験回数5回中2回以上合格したもの「燃焼試験に合格する」という。
【0017】
上記「接着性試験方法により測定される剥離強度」とは、以下に示す試験方法により測定される剥離強度をいう。
(接着性試験方法)
恒温恒湿槽付精密材料試験機(ESPEC社製インテスコ201X型試験機)を使用し、長さ100mm×幅10mm(福田金属箔粉工業株式社製の両面スズメッキ圧延銅箔と難燃性樹脂フィルムを熱ラミネートしている)の評価用サンプルを用いて、温度(湿度)が23.1℃(50%)、剥離速度10mm/分で、180°剥離試験(難燃性樹脂フィルム側を引張り、銅箔及び難燃性樹脂フィルムの層間を剥離する。)を実施し、剥離強度を測定する。
【0018】
[難燃樹脂層(B)]
上記難燃樹脂層(B)は、バインダー樹脂100重量部に対して、平均粒子径が1.0μm以下の水酸化マグネシウムを32〜176重量部及び平均粒子径が1.0μm以下のメラミンシアヌレートを7〜56重量部含有するものである。このように特定の平均粒子径をもつ水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートを特定量含有させることで、加工性に影響を及ぼすことなく、高い難燃性を発揮することができる。なお、前記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布から測定された値であり、粒度分布の累積値が50%を示す平均粒径D50として表される値をいう。詳細には下記の実施例中の測定方法によって特定されるものである。
【0019】
上記特定の平均粒子径をもつ水酸化マグネシウムは、例えば、協和化学株式会社製;商品名「キスマ5P」(平均粒子径:0.9μm)や、堺化学社製;商品名「MGZ−3」(平均粒子径:0.1μm)として、一般に入手することができる。また上記特定の平均粒子径をもつメラミンシアヌレートは、例えば、堺化学社製;商品名:「MC−5S」(平均粒子径:0.5μm)や、堺化学社製;商品名「MC−5F」(平均粒子径:0.47μm)として、一般に入手することができる。
【0020】
上記に示した特定の平均粒子径をもつ水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートは、バインダー樹脂と混合・混練させて上記難燃樹脂層(B)を構成する主成分である樹脂組成物Bとして用いることができる。前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂及びフェノール系樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、接着性と耐熱性の観点から、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂が好ましく、中でもポリエステル樹脂がより好ましい。
【0021】
(配合量)
上記特定の平均粒子径をもつ水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートは、バインダー樹脂100重量部に対して、それぞれ32〜176重量部及び7〜56重量部の範囲で含有することを要し、中でも66〜176重量部及び24〜56重量部の範囲で含有することが好ましく、66〜115重量部及び35〜56重量部の範囲で含有することがより好ましい。このような範囲で配合することにより、透過性や加工性が高いなどの利点がある。
【0022】
(基材フィルム)
上記基材フィルムとしては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、スチレン系樹脂等を構成成分とするものを挙げることができる。このように基材フィルムは、難燃性樹脂とは認められない非難燃性樹脂からなる形成することもできるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
[難燃接着層(A)]
上記難燃接着層(A)としては、接着性樹脂に難燃材料を混合・混練させて得られる樹脂組成物Aより形成されるものを挙げることができる。前記接着性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂及びフェノール系樹脂などを挙げることができる。本発明においては、難燃樹脂層(B)の作用によっても、高い難燃性を発現させることができるため、難燃接着層(A)に用いる難燃材料選択の幅が広く、難燃接着層(A)に接着性機能付与がしやすいという利点がある。
前記難燃材料としては、公知の難燃材料を適宜選択して用いることができるが、水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートの混合物を用いることが好ましく、中でも、水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートの他に、ホウ酸カルシウムを混合させた混合物を用いることがより好ましい。また、この際、水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートの含有量は、前記接着樹脂100重量部に対して、それぞれ82〜166重量部及び34〜68重量部の範囲で混合することが好ましい。このような範囲で混合することにより、難燃性や加工性が高いなどの利点がある。また、水酸化マグネシウム、メラミンシアヌレート及びホウ酸カルシウムの含有量は、前記接着樹脂100重量部に対して、それぞれ82〜98重量部、34〜40重量部及び22〜26重量部の範囲で混合することが好ましい。このような範囲で混合することにより、さらに接着性が高いなどの利点がある。
【0024】
(接着層(C))
基材フィルムと難燃接着層(A)との間に、接着層(C)を介在させることもできる。接着層(C)としては、公知の接着剤を適宜選択して用いることができるが、ポリエステル系樹脂に硬化剤を含有して成る硬化型接着剤を用いることが好ましい。
【0025】
上述した難燃接着層(A)や難燃樹脂層(B)は、ハロゲン、リン化合物及びアンチモン化合物のいずれも含有せずに構成することも可能である(ただし、これらを含有しないで構成されたものに限定する意図ではない。)。
【0026】
(厚み)
本発明の難燃性樹脂フィルムの厚みとしては、その総厚みが100μm以下であることが好ましく、中でも85μm以下が好ましく、70μm以下であることが最も好ましい。また当該総厚みに占める難燃接着層(A)の厚みの割合は20〜70%、中でも30%以上或いは70%以下、その中でも特に40%以上或いは70%以下であるのが好ましい。かかる範囲にすることにより、非難燃性樹脂が本来有する機械特性や耐熱性などを損なうことなく、難燃性を付与することができる。
【0027】
また、上記総厚みに占める難燃樹脂層(B)の厚みの割合は1〜30%、中でも2%以上或いは20%以下、その中でも特に4%以上或いは10%以下であるのが好ましい。かかる範囲にすることにより、視認性などを損なうことなく、難燃性を付与することができる。
【0028】
(他の添加剤)
本発明の難燃性樹脂フィルムには、必要に応じて熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、可塑剤、核剤、光安定剤、顔料、染料等の添加剤を配合することもできる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の難燃剤乃至難燃助剤を併用しても良い。他の難燃剤の具体例としては、例えば、リン酸エステル、リン酸エステルアミド、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物、ポリリン酸塩等のリン系化合物、水酸化アルミニウム、カルシウム・アルミネート水和物、酸化スズ水和物等の金属水酸化物を挙げることができる。難燃助剤の具体例としては、例えば、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、硝酸鉄、硝酸銅、スルホン酸金属塩等の金属化合物、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、フッ素シリコーン等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物を挙げることができる。
【0029】
<難燃性樹脂フィルムの製造方法>
難燃性樹脂フィルムの製造方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、難燃接着層(A)の構成成分を十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出して樹脂組成物Aのペレットを作製する。この際、各原料の配合割合によって、粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。
次いで、前記ペレットを十分に乾燥させて水分を除去した後、共押出、押出ラミネート等の方法により仮支持体と難燃接着層(A)とを積層したフィルム1(仮支持体/難燃接着層(A)/仮支持体)を作製する。
次いで、別途作製した基材フィルムに難燃樹脂層(B)を積層させたフィルム2を、前記フィルム1の仮支持体を剥がして、これと積層させればよい。基材フィルムと難燃樹脂層(B)との積層に際しては、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等の方法以外にも、グラビアコーター、バーコーターなどを用いたコーティングなどの方法も考えられる。
【0030】
<フレキシブルフラットケーブル>
第2の本発明のフレキシブルフラットケーブルとしては、第1の本発明である難燃性樹脂フィルムを有するものであれば、特に制限されるものではなく、フレキシブルフラットケーブルとは、金属導体を前記難燃性樹脂フィルムで被覆してなる構成を備えたものを意味し、例えば、2以上の金属導体を並べ、これらを前記難燃性樹脂フィルムで被覆してなる構成を備えたフラットケーブルを代表例として挙げることができる。
【0031】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書中に示されるについての種々の測定値及び評価は以下のようにして求めた。
【0032】
<燃焼試験方法>
メタンガス(純度98.0%以上)を使用し、ASTM D5205−99に基づくチリルバナーで外炎125±10mm、内炎40±2mmに調整し(内炎の先端温度816℃以上)、長さ400mm×幅50mm(幅2mm程度の錫メッキ銅箔を並列に12本程度挟んでいる)の評価用サンプルを用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL1581−1080 VW−1燃焼試験の手順に基づき、試験回数5回にて燃焼試験を実施し、UL1581−1080 VW−1燃焼試験の判定基準に基づき、試験回数5回中2回以上合格したものを○、それ以外を×として評価した。
【0033】
<平均粒子系測定法>
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA LA−500 フローセル)を用いて測定し、粒度分布の累積値が50%を示すD50を平均粒子径として測定した。なお、測定条件は、前処理分散は超音波2分、分散溶媒は水を使用し、分散剤はヘキサメタリン酸Naの0.025%溶液、相対屈折率1.35を用いた。
【0034】
<加工性>
難燃樹脂層(B)の構成する成分の調製において、ミキサーを用いた混合時に、分散不良、沈殿、分離の問題が発生しないものを○、問題が発生するものを×として評価した。
【0035】
<接着性>
恒温恒湿槽付精密材料試験機(ESPEC社製インテスコ201X型試験機)を使用し、長さ100mm×幅10mm(福田金属箔粉工業株式社製の両面スズメッキ圧延銅箔と難燃性樹脂フィルムを熱ラミネートしている)の評価用サンプルを用いて、温度(湿度)が23.1℃(50%)、剥離速度10mm/分で、180°剥離試験(難燃性樹脂フィルムを引張り、銅箔及び難燃性樹脂フィルムの層間を剥離する。)を実施し、剥離強度を測定した。
【実施例1】
【0036】
難燃樹脂層(B)のバインダー樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10L、難燃材料として、メラミンシアヌレート(堺化学社製「MC−5S」(平均粒径約0.5μm))及び水酸化マグネシウム(堺化学社製「MGZ−3」(平均粒径約0.1μm))を用い、これらを混合重量比100:24:76で配合した後、ミキサーを用いて、難燃塗料を作成した。上記難燃塗料を使用し、グラビアコーターを用いて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「EMBPTM12」)にコーティングをすることにより、厚さ17μmの樹脂フィルムを得た。
難燃接着層(A)の接着樹脂として、東洋紡社製バイロンGA5410と日本合成化学社製SP160、難燃材料として、メラミンシナヌレート(日産化学社製「MC6000」(平均粒径約1.8μm))、水酸化マグネシウム(協和化学社製「キスマ5P」(平均粒径約0.9μm))及びホウ酸カルシウム(キンセイマテック社製「UBP」(平均粒径約15.8μm))を用い、これらを混合重量比100:37:88:24でドライブレンドした後、φ同方向二軸押出機(タンデム押出機やバンバリーミキサーでも可能)を用いて、230℃で混練しペレット化した。上記ペレットと仮支持体層としてポリエチレンペレットを使用し、単軸押出機を用いて230℃で丸ダイより多層共押出し、仮支持体層を片方剥離することにより、厚さ100μmの積層体(難燃接着樹脂層/PE=50μm/50μm)を得た。
接着層(C)の接着樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10Lを使用し、バーコーターを用いて、上記積層体の難燃接着樹脂層にコーティングし、上記樹脂フィルムとドライラミネートし、残りの仮支持体層を剥離することで、厚さ70μmの難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。なお、取り扱い性の観点から、本発明の難燃性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルムに積層させた積層体として、各種難燃性の評価を実施した。
【0037】
[比較例1]
難燃樹脂層(B)を設けない以外は、実施例1と同様にして難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0038】
[比較例2]
難燃樹脂層(B)のバインダー樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10L、難燃材料として、メラミンシアヌレート(堺化学社製「MC−5S」(平均粒径約0.5μm))を用い、混合重量比100:100とした以外は、実施例1と同様にして難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0039】
[比較例3]
難燃樹脂層(B)のバインダー樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10L、難燃材料として、水酸化マグネシウム(堺化学社製「MGZ−3」(平均粒径約0.1μm))を用い、混合重量比100:100とした以外は、実施例1と同様にして難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0040】
[比較例4]
難燃樹脂層(B)のバインダー樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10L、難燃材料として、メラミンシアヌレート(堺化学社製「MC6000」(平均粒径約1.8μm))を用い、混合重量比100:100とした以外は、実施例1と同様にして難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0041】
[比較例5]
難燃樹脂層(B)のバインダー樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10L、難燃材料として、水酸化アルミニウム(昭和電工社製「ハイジライトHP350」(平均粒径約3.4μm))を用い、混合重量比100:100とした以外は、実施例1と同様にして難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0042】
[比較例6]
難燃樹脂層(B)のバインダー樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10L、難燃材料として、メラミンシアヌレート(堺化学社製「MC−5S」(平均粒径約0.5μm))及び水酸化マグネシウム(堺化学社製「MGZ−3」(平均粒径約0.1μm))を用い、これらを混合重量比100:76:24で配合した以外は、実施例1と同様にして難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0043】
[比較例7]
難燃樹脂層(B)のバインダー樹脂として、東洋モートン社製TM−265LとCAT−10L、難燃材料として、メラミンシアヌレート(堺化学社製「MC−5S」(平均粒径約0.5μm))及び水酸化マグネシウム(堺化学社製「MGZ−3」(平均粒径約0.1μm))を用い、これらを混合重量比100:57:177で配合した以外は、実施例1と同様にして難燃性樹脂フィルムを得た。得られた難燃性樹脂フィルムについて、難燃性の評価を行った結果を表1に示す。
【表1】

【0044】
表1の結果から、特定の平均粒子径を有するメラミンシアヌレート及び水酸化マグネシウムを特定量含有する難燃樹脂層(B)を積層した構成の実施例1においては、難燃性、接着性及び加工性のいずれも優れることが分かる。一方で、難燃樹脂層(B)を備えない構成の比較例1や、難燃層樹脂層(B)の難燃材料が実施例と異なる比較例2〜5や、難燃層樹脂層(B)の難燃材料であるメラミンシアヌレート及び水酸化マグネシウム含有量を特定範囲外とした比較例6及び7においては、難燃性、接着性及び加工性のいずれかの特性に劣ることが分かる。
【符号の説明】
【0045】
1 基材フィルム
2 難燃接着層(A)
3 難燃樹脂層(B)
4 接着層(C)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムに難燃接着層(A)が積層され、これとは反対側の面に難燃樹脂層(B)が積層された構成を有する樹脂フィルムであって、
前記難燃樹脂層(B)は、バインダー樹脂100重量部に対して、平均粒子径が1.0μm以下の水酸化マグネシウムを32〜176重量部及び平均粒子径が1.0μm以下のメラミンシアヌレートを7〜56重量部含有し、接着性試験方法により測定される剥離強度が3.8N/cm以上であって、かつ以下に示す燃焼試験方法による燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性樹脂フィルム。
(燃焼試験方法)
メタンガス(純度98.0%以上)を使用し、ASTM D5205−99に基づくチリルバナーで外炎125±10mm、内炎40±2mmに調整し(内炎の先端温度816℃以上)、長さ400mm×幅50mm(幅2mm程度の錫メッキ銅箔を並列に12本程度挟んでいる)の評価用サンプルを用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL1581−1080 VW−1燃焼試験の手順に基づき、試験回数5回にて燃焼試験を実施し、UL1581−1080 VW−1燃焼試験の判定基準に基づき、試験回数5回中2回以上合格したもの「燃焼試験に合格する」という。
【請求項2】
前記難燃接着層(A)が、少なくとも、接着樹脂、水酸化マグネシウム及びメラミンシアヌレートを含有する、請求項1記載の難燃性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムと前記難燃接着層(A)との間に接着層(C)を有する、請求項1又は2記載の難燃性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記接着層(C)が、ポリエステル系樹脂に硬化剤を含有して成る硬化型接着層である、請求項3記載の難燃性樹脂フィルム。
【請求項5】
ハロゲン、リン化合物及びアンチモン化合物のいずれも含有しない、請求項1〜4のいずれか記載の難燃性樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の難燃性樹脂フィルムを有するフレキシブルフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−173366(P2011−173366A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40197(P2010−40197)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】