説明

電力供給制御装置

【課題】MOSFETを正常に通電動作させた後に電源電圧がオン可能レベルよりもある程度低下しても、その通電状態を保持することが可能な電力供給制御装置を提供する。
【解決手段】電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベルと第2レベルとの間のレベルまで低下したとき(A期間)は、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベルを下回った時点ではヒステリシス回路29からの出力信号S4がローレベルのままとされ、放電阻止用FET28がオフした放電阻止状態が継続される。つまり、充電回路25の駆動によって蓄積されたゲート電荷の放電を阻止してゲート電圧を維持することでパワーMOSFET14の通電状態が保持され、負荷11への電力供給が継続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイサイドドライブで用いられる電力供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給制御装置には、下記特許文献1に示すように、nチャネル型のMOSFETをプラス電源と負荷との間に挿入して電流制御を行う、いわゆるハイサイドドライバとして使用されるものがある。このものでは、上記MOSFETを十分にオン(通電動作)させるためには、そのゲート電圧を電源電圧以上(一般には電源電圧の2倍程度の電圧)とする必要があり、このためにゲート駆動回路(チャージポンプ回路)が必要となる。具体的には、ゲート駆動回路は、電力供給制御装置に外部からオン指令信号が入力されたときに、電源電圧に基づく入力電圧を昇圧した出力電圧をゲートに与えてMOSFETをオンさせる。
【特許文献1】特開2001−217696公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ゲート駆動回路の入力電圧は電源電圧に基づき生成されているため、この電源電圧がある程度低くなると、これに応じて上記入力電圧も低下する。そして、電源電圧が所定値(以下、「オン可能レベル」という)よりも低くなると、これに応じて低下した入力電圧をゲート駆動回路で昇圧してもMOSFETを十分にオンさせる程度にゲート電圧を持ち上げることができなくなり、正常な電力供給制御が行えなくなるおそれがある。従って、ハイサイドドライバとして用いられる電力供給制御装置では、電源電圧が上記オン可能レベルよりも低いときにオン指令信号が入力されても、MOSFETをターンオンさせないようにする必要がある。
【0004】
このために、従来の電力供給制御装置では、電源電圧が上記オン可能レベルよりも低いときには、常に、ゲート駆動回路を停止させ、かつ、ゲート電荷を放電させる放電回路(ターンオフ回路)を駆動させてMOSFETを強制的にオフ状態に保持する構成とされていた。つまり、この従来の構成では、電源電圧がオン可能レベル以上の状態でオン指令信号が入力されてMOSFETが正常にオンされた後に、電源電圧がオン可能レベルよりも低下したときには、その時点でMOSFETが即時的に強制オフされてしまう。
【0005】
ここで、例えば、車両に搭載されその車両用電源(バッテリー)によって駆動される電力供給制御装置では、オン指令信号が入力されてMOSFETが正常にオンされた後、エンジン始動時に車両用電源の電源電圧が一時的に低下することがある。特に、車両用電源の充電量が低下している場合には、エンジン始動時に電源電圧が一時的にオン可能レベルよりも低くなることがある。このような場合、上記従来のものでは、エンジン始動時に電源電圧がオン可能レベルを下回った時点でMOSFETが即時的に強制オフされてしまうことがあるという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、MOSFETを正常に通電動作させた後に電源電圧がオン可能レベルよりもある程度低下しても、その通電状態を保持することが可能な電力供給制御装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る電力供給制御装置は、電源と負荷との間に設けられて前記電源から前記負荷への電力供給を制御する電力供給制御装置であって、前記電源から前記負荷への通電路に配されるnチャネル型のMOSFETと、外部からのオン指令信号が入力されるとともに前記電源の電源電圧が第1レベル以上であることを条件に、前記MOSFETのゲートに充電電流を流して当該MOSFETに通電動作を行わせるゲート駆動回路と、前記ゲート駆動回路によって前記MOSFETが通電状態とされ、かつ、前記オン指令信号が入力された状態では、前記電源電圧が前記第1レベルよりも低い第2レベルに低下するまで前記MOSFETのゲート電荷の放電を阻止する放電阻止回路と、を備える。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力供給制御装置において、前記放電阻止回路は、前記電源電圧が前記第2レベルを下回ったことを条件に前記ゲート電荷の放電を行う。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電力供給制御装置において、前記放電阻止回路は、前記ゲートからの放電経路に設けられたスイッチ素子を有し、このスイッチ素子をオンオフさせることで前記ゲート電荷の放電とその阻止とを行う構成とされている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電力供給制御装置において、前記オン指令信号が入力されたことを条件に前記電源電圧に基づき定電圧を生成するための定電圧電源回路を備え、前記放電阻止回路は、前記定電圧電源回路の生成電圧が前記第1レベルを超えたときに前記スイッチ素子にターンオフさせ、前記生成電圧が前記第2レベルを下回ったときに前記スイッチ素子にターンオンさせるヒステリシス回路を備える。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
本構成によれば、ゲート駆動回路によってMOSFETが正常に通電動作された後に、電源電圧が第1レベル(例えばMOSFETを十分にターンオンさせるために必要なオン可能レベル)を下回っても、第2レベルに低下するまでは電圧にMOSFETのゲートからの放電が阻止されるから、MOSFETの通電状態を保持できる。
【0012】
<請求項2の発明>
例えば、電源電圧が、電力供給制御装置に設けられオン指令信号及びオフ指令信号に基づきゲート駆動回路等を制御する制御回路が動作可能なレベルを下回る程度まで低下した場合には、オフ指令信号が入力されてもMOSFETに遮断動作をさせることができなくなるおそれがある。そこで、本構成によれば、電源電圧が第2レベルを下回ったことを条件にゲート電荷の放電を行ってMOSFETに遮断動作させるようにした。
【0013】
<請求項3の発明>
本構成によれば、ゲートからの放電経路中に設けられたスイッチ素子をオンオフさせることによってゲート電荷の放電とその阻止とを行うようにしている。
【0014】
<請求項4の発明>
電源電圧に基づき定電圧を生成するための定電圧電源回路を備えて、この生成電圧によって駆動させる電力供給制御装置では、電源電圧が上記定電圧よりも低いレベルまで低下した場合には、定電圧電源回路の生成電圧は電源電圧に応じたレベルになる。そこで、本構成では、ヒステリシス回路を用いて、定電圧電源回路の生成電圧が第1レベルを超えたときにスイッチ素子にターンオフ(ゲート電荷の放電阻止)させ、生成電圧が第2レベルを下回ったときにスイッチ素子にターンオン(ゲート電荷の放電開始)させる構成とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態1を図1,2を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る電力供給制御装置10の全体構成のブロック図である。この電力供給制御装置10は図示しない車両に搭載され、その車両用電源(以下、「電源12」)から負荷11として例えば車両用のランプ、クーリングファン用モータ、ワイパー用モータやデフォッガー用ヒータなどへの電力供給制御を行うために使用される。また、電力供給制御装置10は、nチャネル型のMOSFET(以下、「パワーMOSFET14」という)をプラスの電源12と負荷11との間に挿入して電流制御を行う、いわゆるハイサイドドライバとして使用される。
【0016】
(1)基本構成
電力供給制御装置10は、電源12から負荷11への通電路13中に設けられるパワーFETとしてのMOSFET14を備えている。そして、電力供給制御装置10は、パワーMOSFET14のゲートに定電圧信号、或いは、PWM(Pulse Width Modulation。パルス幅変調)制御信号などの制御信号S1を与えてオンオフ動作させることで、この出力段のパワーMOSFET14に連なる負荷11への電力供給を制御するように構成されている。なお、本実施形態では、この電力供給制御装置10は、入力端子P1が外部の操作スイッチ15に接続される構成をなし、この操作スイッチ15がオンとなることで動作するようになっている。具体的には、入力端子P1は、抵抗15aを介して操作スイッチ15に接続され、抵抗15aと操作スイッチ15との接続点が抵抗15bを介して電源12に接続されており、入力端子P1は、操作スイッチ15がオフしているときは、電源電圧Vcc側にプルアップされている。
【0017】
電力供給制御装置10は、図1に示すように、上記入力端子P1と、電源12に接続される電源端子P2及びタブ端子P3と、負荷11に接続される負荷接続端子P4と、例えば車両のボディなどに接続されてグランド電位とされるグランド端子P5と、を備えた半導体スイッチ装置17(半導体ディバイス)として構成されている。
【0018】
半導体スイッチ装置17には、主として、入力インターフェース部18、内部グランド生成部19、コントロールロジック部20、ゲート駆動部21が備えられている。入力インターフェース部18は、入力側が入力端子P1に接続されており、操作スイッチ15がオフしているときにハイレベルの制御信号S1が入力され、オンしているときにローレベルの制御信号S1が入力され、この制御信号S1が内部グランド生成部19及びコントロールロジック部20に与えられる。
【0019】
内部グランド生成部19は、定電圧電源生成回路としての内部電源生成回路22を備え、この内部電源生成回路22は、入力側が上記電源端子P2に接続されるとともに、出力側がスイッチ素子としてのFET23及びを抵抗24を介してグランド端子P5に接続されている。内部グランド生成部19は、入力インターフェース部18からローレベルの制御信号S1を受けることでFET23がオンして内部電源生成回路22が通電し、これにより、電源電圧Vccよりも所定の定電圧Vx分(本実施形態では例えば6V)だけ低い内部グランドGND2を生成する。そして、電源電圧Vccから内部グランドGND2を差し引いた生成電圧Vinがコントロールロジック部20に供給されることで、このコントロールロジック部20が動作可能な状態となる。なお、このような構成により、電源電圧Vccが上記定電圧Vxよりも低くなっている場合には、内部電源生成回路22の生成電圧Vinは概ね電源電圧Vccと等しくなる。従って、後述するように、電源電圧Vccが低い場合には、それと等価的な値を示す生成電圧Vinを見ることにより、電源電圧Vccのレベル変動を見ることができる。
【0020】
コントロールロジック部20は、内部電源生成回路22の生成電圧Vinが第2レベル以上で動作可能となる。この第2レベルは本実施形態では例えば3Vである。コントロールロジック部20は、入力インターフェース部18から上記ローレベルの制御信号S1を受けたときには、そのときの電源電圧Vcc(内部電源生成回路22の生成電圧Vin)が第1レベル(>第2レベル 上記の「オン可能レベル」に相当)以上であることを条件に、ゲート駆動部21によってパワーMOSFET14に通電動作(ターンオン)をさせる。
【0021】
ここで、後述するようにパワーMOSFET14をゲート駆動するための充電回路25は、電源電圧Vccを入力電圧として昇圧してゲート電圧を電源電圧Vccよりも高い電圧に持ち上げることで当該パワーMOSFET14に通電動作を行わせる。従って、電源電圧Vccがある程度低いときには、このパワーMOSFET14に十分な通電動作をさせるために必要なレベルまでゲート電圧を持ち上げることができない。従って、上記したように、コントロールロジック部20は、パワーMOSFET14に十分な通電動作をさせることが可能な第1レベル(本実施形態では例えば4.5V)以上であることを条件に充電回路25を駆動させる構成としている。
【0022】
一方、コントロールロジック部20は、ハイレベルの制御信号S1を受けるとゲート駆動部21によってパワーMOSFET14に遮断動作(ターンオフ)をさせる。従って、この実施形態では、ローレベルの制御信号S1がパワーMOSFET14に通電動作をさせるための「オン指令信号」に相当し、ハイレベルの制御信号S1がパワーMOSFET14に遮断動作をさせるための「オフ指令信号」に相当する。
【0023】
ゲート駆動部21は、電源端子P2とパワーMOSFET14のゲートとの間に接続された充電回路25、及び、パワーMOSFET14のゲートと負荷接続端子P4との間に接続された放電回路26を備える。充電回路25は、チャージポンプ回路であって、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベル以上のときに上記ローレベルの制御信号S1(オン指令信号)を受けているコントロールロジック部20から駆動信号S2が与えられて駆動し、パワーMOSFET14のゲート電圧を電源電圧Vccの略2倍の電圧まで持ち上げて、パワーMOSFET14に十分な通電動作をさせる。一方、放電回路26は、上記ハイレベルの制御信号S1(オフ指令信号)を受けているコントロールロジック部20から駆動信号S3を与えられて駆動し、パワーMOSFET14に蓄積されたゲート電荷を放電しパワーMOSFET14に遮断動作をさせる。以下、このようにハイレベルの制御信号S1に基づくパワーMOSFET14の遮断(動作)を「通常遮断(動作)」という。
【0024】
(2)電源電圧低下時対策
半導体スイッチ装置17には、パワーMOSFET14に通電状態になっている間に、電源電圧Vccが上記第1レベルよりも低くなったときでもその通電状態を保持するための放電阻止回路27が備えられている。この放電阻止回路27は、パワーMOSFET14のゲートと負荷接続端子P4との間に接続されたスイッチ素子としての放電阻止用FET28と、上記内部電源生成回路22の生成電圧Vinを入力電圧とするヒステリシス回路29とを備えて構成されている。
【0025】
ヒステリシス回路29は、内部電源生成回路22の生成電圧Vinが増加して第1レベルを超えたときに放電阻止用FET28をターンオフ(放電阻止)させるためのローレベルの出力信号S4を出力し、その後に、生成電圧Vinが減少して上記第2レベルを下回ったときに放電阻止用FET28をターンオン(放電)させるためのハイレベルの出力信号S4を出力する。
【0026】
具体的には、内部電源生成回路22の入出力間には抵抗30及び抵抗31が直列接続されており、この抵抗31には抵抗32及びFET33が並列接続されている。また、内部電源生成回路22の入出力間には、FET34と定電流素子35とが直列接続されており、このFET34のゲートに抵抗30及び抵抗31による分圧電圧が与えられるようになっている。更に、内部電源生成回路22の入出力間には、定電流素子36とFET37とが直列接続されており、このFET37と上記FET33とのゲート同士がFET34のドレイン側に共通接続されている。なお、本実施形態では、FET34の閾値電圧は例えば1.5Vに設定されている。また、抵抗30〜32は、抵抗比が1:2:2に設定されている。
【0027】
このような構成により、内部電源生成回路22の生成電圧Vinが第1レベルに達する前まではFET33,34,37はいずれもオフしており、第1レベルに達したときにFET34のゲート−ソース間電圧が閾値電圧(1.5V)となってオンし、これに伴ってFET33,37もオンし、出力信号S4がハイレベルからローレベルに反転する。コントロールロジック部20は、FET34のドレインに接続されており、このドレイン電位がローレベルからハイレベルに反転したことに基づき内部電源生成回路22の生成電圧Vinが第1レベル以上になっていることを認識できる。一度、生成電圧Vinが第1レベル以上になると、FET33がオンし、出力信号S4がローレベルからハイレベルに反転する閾値が第2レベルとなる。
【0028】
ゲート駆動部21には、電源端子P2と、FET23及びを抵抗24の接続点(GND1)との間において、互いに直列接続されたFET40及び定電流素子41と、互いに直列接続されたFET42及び定電流素子43とが備えられている。FET40は、ヒステリシス回路29からのローレベルの出力信号S4をゲートに受けることでオンし、これに伴って、FET40のドレインにゲートが接続されたFET42がオンし、上記放電阻止用FET28がターンオフし、パワーMOSFET14のゲート電荷の放電経路を遮断してパワーMOSFET14の通電状態を維持させるように働く。
【0029】
一方、ヒステリシス回路29からの出力信号S4がローレベルからハイレベルに反転すると、上記放電阻止用FET28がターンオンし、パワーMOSFET14のゲート電荷を放電させてパワーMOSFET14に遮断動作をさせる。このときの遮断動作は、オン指令信号が入力されているときにパワーMOSFET14を強制的に遮断するものであり、以下、これを「第1強制遮断(動作)」という。なお、上記定電流素子35,36,41,43は、抵抗等の抵抗性回路素子であってもよい。
【0030】
図2には、電源電圧Vccのレベル変動による放電阻止回路27の動作を示すタイムチャートである。なお、同図中の第3レベル(<第2レベル)は、放電阻止用FET28をオンさせるのに必要な電源電圧Vccのレベルである。
【0031】
当初、電源電圧Vccが定電圧Vx以上であるときに、操作スイッチ15がオンされローレベルの制御信号S1(オン指令信号)が電力供給制御装置10に入力されると、内部電源生成回路22の生成電圧Vinが上昇し、上記定電圧Vxが生成される。この過程において、生成電圧Vinが第3レベルに達した時点で放電阻止用FET28がターンオンし、更に第1レベルに達した時点でヒステリシス回路29からの出力信号S4がハイレベルからローレベルに反転し、放電阻止用FET28がオフした放電阻止状態となる。また、上記生成電圧Vinが第1レベル以上となったときに、ゲート駆動部21の充電回路25が、コントロールロジック部20から駆動信号S2に基づき駆動し、パワーMOSFET14にターンオンさせて通電状態とする。
【0032】
ここで、この通電状態になった後に、例えばエンジン始動時に電源12の電源電圧Vccが一時的に低下することがある。特に、電源12の充電量が低下しているときには、エンジン始動時に電源電圧Vccが一時的に第1レベルよりも低くなることがある。電源電圧Vccが内部電源生成回路22で生成すべき定電圧Vx以下まで低下した場合には、内部電源生成回路22の生成電圧Vinも電源電圧Vccと同レベルまで低下する。
【0033】
図2に示すように、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベルと第2レベルとの間のレベルまで低下したとき(同図A期間)は、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベルを下回った時点ではヒステリシス回路29からの出力信号S4がローレベルのままとされ、放電阻止用FET28がオフした放電阻止状態が継続される。つまり、充電回路25の駆動によって蓄積されたゲート電荷の放電を阻止してゲート電圧を維持することでパワーMOSFET14の通電状態が保持され、負荷11への電力供給が継続される。このとき、内部電源生成回路22の生成電圧Vinはまだコントロールロジック部20を動作可能な第2レベル以上になっているから、この状態で、ハイレベルの制御信号S1(オフ指令信号)が電力供給制御装置10に入力されても、コントロールロジック部20が正常に動作し、放電回路26を駆動させてパワーMOSFET14に通常遮断動作をさせることができる。
【0034】
これに対して、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第2レベルよりも低いレベルまで低下したとき(同図B,C期間)は、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第2レベルを下回った時点ではヒステリシス回路29からの出力信号S4がローレベルからハイレベルに反転し、放電阻止用FET28がターンオンして第1強制遮断動作が行われる。前述したように電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第2レベルを下回った場合には、コントロールロジック部20が正常に動作できなくなり、この状態でハイレベルの制御信号S1が電力供給制御装置10に入力されても、通常遮断動作が行われないという事態を回避するためである。その後、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベルを上回った時点で放電阻止用FET28がターンオフされ、充電回路25によってパワーMOSFETが通電状態に復帰される。
【0035】
なお、C期間においては、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第3レベルを下回っているときは、放電阻止用FET28がオフされるが、その前後のタイミングでの放電阻止用FET28のターンオフによってゲート電荷が放電されパワーMOSFETを遮断動作させることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベル以上でローレベルの制御信号S1が入力されて正常にパワーMOSFET14が通電状態になったあと、電源電圧Vcc(生成電圧Vin)が第1レベルを下回っても、コントロールロジック部20を正常に動作可能な第2レベルを下回らない限り、パワーMOSFET14の通電状態を保持して負荷11への電力供給を継続することができる。
【0037】
(3)グランド端子未接続対策
半導体スイッチ装置17には、グランド端子P5が正規に接地箇所に接続されておらず、グランド端子P5の電位VgndがパワーMOSFET14のソース電位Vsよりも第4レベル以上高くなっているときに、パワーMOSFET14を強制遮断状態とする強制遮断回路50が備えられている。なお、この強制遮断回路50による強制遮断(状態)を、「第2強制遮断(状態)」という。
【0038】
この強制遮断回路50は、パワーMOSFET14のゲート−ソース間に接続されたスイッチ素子としての短絡用FET51を備える。短絡用FET51のゲートには、抵抗52及び上記抵抗24を介してグランド端子P5に接続されており、このグランド端子P5の電位Vgndに応じた電圧がゲートに与えられるようになっている。また、短絡用FET51のゲート−ソース間には抵抗53が接続されている。
【0039】
この短絡用FET51は、パワーMOSFET14のソース電位Vsに対するグランド端子P5の電位Vgndの電位差が、上記第4レベル以上になっているときにオンしてパワーMOSFET14のゲート−ソース間を短絡させることで、当該パワーMOSFET14を第2強制遮断状態とする。
【0040】
ここで、グランド端子P5が正規に接地され、かつ、パワーMOSFET14が通常遮断状態にあるとき(ハイレベルの制御信号S1を受けているとき)でも、例えば車両用ボディにおいてグランド端子P5が接地される箇所と負荷11が接地される箇所とがある程度の距離だけ離れている場合には両者に電位差が生じていることがある。つまり、グランド端子P5の電位Vgndが、パワーMOSFET14のソース電位Vs(負荷11の接地電位)よりもあるレベル(第5レベル)だけ高くなっていることがある。また、上記第4レベルがパワーMOSFET14の閾値電圧(パワーMOSFET14の通電が開始されるときのゲート−ソース間電圧)よりも大きいレベルに設定された場合には、グランド端子P5が正規に接地されておらず、グランド端子P5の電位Vgndが、パワーMOSFET14のソース電位Vs(負荷11の接地電位)よりも上記閾値電圧分だけ高くなった時点でパワーMOSFET14に通電動作をさせてしまうことになる。
【0041】
そこで、本実施形態では、上記第4レベルを、グランド端子P5が正規に接地され、かつ、パワーMOSFET14が通常遮断状態にあるときにおけるグランド端子P5とパワーMOSFET14のソースとの電位差よりも大きく、パワーMOSFET14の閾値電圧よりも小さいレベルに設定されている。これにより、グランド端子P5が正規に接地された状態で上記第2強制遮断状態になってしまうことを防止することができる。また、グランド端子P5が接地されていない状態でパワーMOSFET14が通電動作することを防止しつつ確実に第2強制遮断状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力供給制御装置の全体構成を示すブロック図
【図2】電源電圧のレベル変動による放電阻止回路の動作を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0043】
10…電力供給制御装置
11…負荷
12…電源
13…通電路
14…パワーMOSFET(nチャネル型のMOSFET)
21…ゲート駆動部(ゲート駆動回路)
22…内部電源生成回路(定電圧電源生成回路)
27…放電阻止回路
28…放電阻止用FET(スイッチ素子)
29…ヒステリシス回路
Vcc…電源電圧
Vin…生成電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と負荷との間に設けられて前記電源から前記負荷への電力供給を制御する電力供給制御装置であって、
前記電源から前記負荷への通電路に配されるnチャネル型のMOSFETと、
外部からのオン指令信号が入力されるとともに前記電源の電源電圧が第1レベル以上であることを条件に、前記MOSFETのゲートに充電電流を流して当該MOSFETに通電動作を行わせるゲート駆動回路と、
前記ゲート駆動回路によって前記MOSFETが通電状態とされ、かつ、前記オン指令信号が入力された状態では、前記電源電圧が前記第1レベルよりも低い第2レベルに低下するまで前記MOSFETのゲート電荷の放電を阻止する放電阻止回路と、を備える電力供給制御装置。
【請求項2】
前記放電阻止回路は、前記電源電圧が前記第2レベルを下回ったことを条件に前記ゲート電荷の放電を行う請求項1に記載の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記放電阻止回路は、前記ゲートからの放電経路に設けられたスイッチ素子を有し、このスイッチ素子をオンオフさせることで前記ゲート電荷の放電とその阻止とを行う構成とされている請求項2に記載の電力供給制御装置。
【請求項4】
前記オン指令信号が入力されたことを条件に前記電源電圧に基づき定電圧を生成するための定電圧電源回路を備え、
前記放電阻止回路は、前記定電圧電源回路の生成電圧が前記第1レベルを超えたときに前記スイッチ素子にターンオフさせ、前記生成電圧が前記第2レベルを下回ったときに前記スイッチ素子にターンオンさせるヒステリシス回路を備える請求項3に記載の電力供給制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−201728(P2007−201728A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16812(P2006−16812)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】