説明

電力供給制御装置

【課題】車載機器の消費電力が急激に増大した場合であっても、これに対応して電力供給量を増大させることができ、車載機器を安定して動作させることができる電力供給制御装置を提供する。
【解決手段】車輌に搭載された発電機及びバッテリから負荷への電力供給経路4にスイッチング素子としてFET11を配し、FET11から負荷への電力供給経路4に平滑回路12を設けると共に、制御部20のCPU24が出力する制御信号によりFET11を周期的にオン/オフする。また、FET11のソース−ドレイン間の電位差を比較器21にて比較し、電位差が閾値を超えた場合には比較器21の出力信号によりFET11をオンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に搭載された発電機により発電された電力及びバッテリに蓄積された電力を、車輌に搭載された種々の車載機器(負荷)へ供給する制御を行う電力供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌には多数の電子機器が搭載されており、車輌の走行時にはエンジンの回転により発電を行う発電機から機器へ電力供給が行われ、車輌のエンジン停止時にはバッテリに蓄積された電力が機器へ供給される。また近年では、車輌の安全性、利便性及び快適性等を向上させるため、車輌に搭載される機器の数は増加している。これらの車載機器には、車輌の停車中であっても動作し、又は、車輌の停車中には待機状態として低消費電力モードで動作するものがあり、バッテリに蓄積された電力を消費するため、これらの車載機器が長期間に亘って電力を消費することによってバッテリ上がりが発生するという問題がある。このため、バッテリから車載機器への電力供給を制御する電力供給制御装置に関し、車載機器による電力消費を低減することを目的とした種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、バッテリから車輌電装機器に対して暗電流が流される暗電流経路に、バッテリの電源電圧をスイッチング素子のオン/オフ制御により車輌電装機器の待機動作に必要な最低電圧に変換するDC/DCコンバータを接続することにより、車載電装機器が支障なく待機動作を行うことができると共に、必要以上の無駄な電力の消費を防止でき、バッテリ蓄積電力の低下を軽減することができる電源供給装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2においては、出力電圧及び目標電圧の誤差を増幅する誤差増幅器と、この誤差増幅器から出力された誤差信号により周波数を増減する電圧制御発振器と、この電圧制御発信器から出力された周波数信号によりトリガされて所定のオン時間を生成するワンショット回路とで構成され、スイッチに対して所定のオン時間のPFM(Pulse Frequency Modulation)制御を行う制御回路を備え、スイッチのオン時間を入出力電圧の変化に連動させるDC/DCコンバータが提案されている。このDC/DCコンバータは、簡易な制御回路の構成で、軽負荷時にはスイッチング周波数が低下して消費電流の低減を図ることができ、重負荷時には入出力電圧の変化に関わらず概ね一定のスイッチング周波数で動作することができる。
【0005】
一方、配線の短絡又は機器の故障等の種々の要因により、発電機又はバッテリから車載機器へ異常な過電流が流れる場合があり、車載機器への電力供給を制御する電力供給制御装置には車載機器への過電流を防止する機能が求められる。このため、電力供給制御装置は、発電機又はバッテリから車載機器への電力供給経路中に配されたヒューズを有し、過電流が流れた場合にはヒューズの溶断によって過電流を防止する構成とすることが一般的である。
【0006】
特許文献3においては、バッテリ及び負荷を電気的に接続する主電源ラインに近接又は絶縁層を介して接続され、主電源ラインより電流容量が小さい小電流用電源ラインと、この小電流用電源ライン上に設けられて、異常電流が流れると溶断して接続を遮断するヒューズと、ヒューズの溶断を検出した場合に主電源ラインを接続状態から遮断状態へ切り替える電源遮断部を備えることによって、簡単かつ効率的な構成で、電源ラインを電流異常から適切に保護できる車輌用電源供給装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−59712号公報
【特許文献2】特開2008−29159号公報
【特許文献3】特開平10−322880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば車輌のエンジンが停止してバッテリから車載機器へ電力が供給され、車載機器は低消費電力モードで動作しているときであっても、ユーザの操作などに応じて車載機器が低消費電力モードから通常の動作モードへ移行した場合には、必要な電力が急激に増大する。このため車載機器への電力供給を制御する電力供給制御装置は、車載機器による必要電力の急激な増大に対応して電力供給量を増大させなければならない。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の電源供給装置である暗電流用の電源は、待機動作に必要な最低電圧をDC/DCコンバータが出力する構成であり、DC/DCコンバータは出力電圧を検出して出力を安定化する回路構成であるものの、上記のような車載機器の必要電力の急激な増大を想定していない。また特許文献2に記載のDC/DCコンバータも同様であり、出力電圧と目標電圧との誤差に応じてスイッチのオン時間を制御することによって出力を安定化する構成であるものの、上述のような必要電力の急激な増大に対応して出力を増大させることはできない。
【0010】
一方、特許文献3に記載の車輌用電源供給装置のように、ヒューズを用いて過電流を遮断する構成においては、ヒューズが溶断された場合にはヒューズの交換を行わなければならない。近年では車輌に多数の車載機器が搭載されることから、車輌における車輌用電源供給装置の搭載場所は限られており、ヒューズを用いる車輌用電源供給装置は、メンテナンス性の観点から、搭載場所がユーザなどの手の届く範囲内など、更に限られるという問題がある。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車載機器の消費電力が急激に増大した場合であっても、これに対応して電力供給量を増大させることができ、車載機器を安定して動作させることができる電力供給制御装置を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的とするところは、ヒューズを用いることなく、車載機器への過電流を遮断することができる電力供給制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電力供給制御装置は、車輌に搭載された発電機及びバッテリからの電力を、前記車輌に搭載された負荷へ供給する制御を行う電力供給制御装置において、一端側に前記発電機及びバッテリが接続され、他端側に前記負荷が接続されて、前記発電機及びバッテリから前記負荷への電力供給経路の接続/遮断を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子の接続/遮断を周期的に行わせる制御手段と、前記スイッチング素子の両端の電位差が閾値を超えた場合に、前記スイッチング素子に継続的な接続を行わせる継続接続手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、車輌に搭載された発電機及びバッテリから車載機器などの負荷への電力供給経路にスイッチング素子を配し、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御などによりスイッチング素子を周期的に接続/遮断すると共に、スイッチング素子及び負荷の間には平滑回路を設ける。これにより、車載機器へ供給される電力の電力量が、発電機及びバッテリからの電力を直接的に供給する場合と比較して、低減することができる。
【0015】
また電力供給制御装置は、スイッチング素子の両端の電位差、即ち発電機及びバッテリからスイッチング素子までの電力供給経路の電位と、スイッチング素子から負荷までの電力供給経路の電位との電位差を監視する。負荷の消費電力量が増大した場合には負荷側の電位が低下するため、スイッチング素子の両端の電位差を監視することで電力供給制御装置は負荷の消費電力量の増大を監視することができる。電力供給制御装置は、電位差が閾値を超えた場合に、スイッチング素子を継続的に接続することによって、発電機及びバッテリから最大限の電力を負荷へ供給することができ、負荷の消費電力量の急激な増大に対応することができる。
【0016】
また、本発明に係る電力供給制御装置は、前記制御手段が、前記スイッチング素子に接続/遮断を行わせる制御信号を出力するようにしてあり、前記継続接続手段は、前記スイッチング素子の両側の電位を比較して、閾値を超える電位差が生じたことを検知する比較器を有し、該比較器の出力信号を前記スイッチング素子に接続/遮断を行わせる制御信号として出力するようにしてあり、前記スイッチング素子は、前記制御手段が出力する制御信号又は前記継続接続手段が出力する制御信号により接続の制御がなされた場合に、前記電力供給経路を接続するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、スイッチング素子の両端の電位、即ち発電機及びバッテリからスイッチング素子までの電力供給経路の電位と、スイッチング素子から負荷までの電力供給経路の電位とを比較して、閾値を超える電位差が生じた場合にこの旨を通知する信号を出力する比較器を備え、この比較器の出力信号をスイッチング素子の制御信号として出力する。また、スイッチング素子の周期的な接続/遮断を行う制御手段は、周期的にスイッチング素子を接続する制御信号を出力する。電力供給制御装置は、比較器から出力される制御信号と、制御手段から出力される制御信号とを、例えばAND演算してスイッチング素子へ与え、いずれかの制御信号により接続の指示が与えられた場合にスイッチング素子が電力供給経路の接続を行う構成とする。
これによりスイッチング素子は、比較器からの制御信号又は制御手段からの制御信号に応じて電力供給経路を接続し、負荷への電力供給を行うことができる。即ち、比較器により電位差が閾値を超えたことが検出された場合には、周期的な接続/遮断の制御を行う制御手段の制御信号に関係なく、負荷への電力供給を行うことができるため、負荷の消費電力の急激な変化に対応することができる。
【0018】
また、本発明に係る電力供給制御装置は、前記車輌のエンジンが停止状態であるか否かを検出する車輌状態検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記エンジンが停止状態の場合に、前記スイッチング素子の接続/遮断を周期的に行わせるようにしてあることを特徴とする。
【0019】
車輌のエンジンが動作状態の場合には、発電機が発電を行うため車輌の負荷へ十分な電力を供給することができるが、エンジンが停止状態の場合には発電機の発電が行われないため、バッテリに蓄積された電力を負荷へ供給しなければならない。そこで本発明においては、車輌のエンジンが停止状態であるか否かを検出し、エンジンが停止状態の場合にスイッチング素子の周期的な接続/遮断の制御を行う。これにより、バッテリから負荷への電力供給量を低減することができ、バッテリの残容量の低下を抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る電力供給制御装置は、前記車輌が駐車状態であるか否かを検出する車輌状態検出手段と、前記駐車状態の継続時間を計時する計時手段とを更に備え、前記制御手段は、前記計時手段が計時した継続時間が所定時間を超えた場合に、前記スイッチング素子を遮断させるようにしてあることを特徴とする。
【0021】
車輌が駐車状態の場合にはバッテリから負荷への電力供給が行われるため、駐車状態が長期間に亘って継続された場合には、バッテリの残容量がエンジンの始動に必要な電力量より低減する虞がある。そこで本発明においては、車輌が駐車状態であるか否かを検出し、駐車状態の継続時間を計時して、継続時間が所定時間を超えた場合にはスイッチング素子を遮断して、バッテリから負荷への電力供給を停止する。これにより、バッテリの残容量の極端な低下を抑制することができる。
【0022】
また、本発明に係る電力供給制御装置は、前記バッテリの残容量を検出する残容量検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記残容量検出手段が検出した残容量が所定容量より少ない場合に、前記スイッチング素子を遮断させるようにしてあることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、バッテリの残容量を検出する残容量検出手段を備えて、残容量が所定容量より少ない場合には、スイッチング素子を遮断してバッテリから負荷への電力供給を停止する。これにより、バッテリの残容量の低下をより確実に防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る電力供給制御装置は、前記スイッチング素子が、FET(Field Effect Transistor)であり、ソースに前記発電機及びバッテリが接続してあり、ドレインに前記負荷が接続してあり、前記FETの温度を検知する温度検知手段と、前記FETのゲート−ソース間の電圧及びソース−ドレイン間の電圧を検知する電圧検知手段と、前記温度検知手段が検知した温度及び前記電圧検知手段が検知した電圧に基づいて、前記FETのソース−ドレイン間を流れる電流値を算出する電流値算出手段とを更に備え、前記制御手段は、前記電流値算出手段が算出した電流値に応じて、前記スイッチング素子を遮断させるようにしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、スイッチング素子としてFETを用い、FETのソースに電力供給経路を介して発電機及びバッテリを接続し、ドレインに電力供給経路を介して負荷を接続する。スイッチング素子としてリレーなどの機械式スイッチを用いる場合と比較して、耐久性及び切替速度等においてFETが優れている。
【0026】
また、サーミスタなどを用いてFETの温度を検知すると共に、FETのゲート−ソース間の電圧及びソース−ドレイン間の電圧を検知し、検知した温度及び電圧からFETのソース−ドレイン間の電流を算出する。なお、FETのソース−ドレイン間の電流はFETのソースドレイン間の電圧及びオン抵抗に基づいて算出することができ、FETのオン抵抗は温度及びゲート−ソース間電圧に依存する。また、予めFETのオン抵抗の特性を測定しておき、この特性をテーブルなどとしてメモリに記憶させておくことで、電力供給制御装置は検知したFETの温度及びゲート−ソース間電圧からFETのオン抵抗を取得することができる。
【0027】
FETに過電流が流れた場合には、負荷を保護するために、電流を遮断する必要がある。よって、電力供給制御装置は、算出したFETのソース−ドレイン間の電流量に基づいて過電流の判断を行い、過電流が流れた場合にはFETを遮断する。これにより、ヒューズを備えることなく過電流の遮断を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明による場合は、発電機及びバッテリから負荷への電力供給経路にスイッチング素子を配設し、スイッチング素子を周期的に接続/遮断すると共に、スイッチング素子の両端の電位差を監視し、電位差が閾値を超えた場合に、スイッチング素子を継続的に接続する構成とすることにより、負荷への電力供給量を低減することができると共に、負荷の消費電力量の急激な増大に対応して供給電力量を増大することができる。よって、バッテリに蓄積された電力の節約と、車載機器などの負荷の安定した動作とを両立して実現することができる。
【0029】
また本発明による場合は、スイッチング素子としてFETを用い、FETの温度と、FETのゲート−ソース間の電圧及びソース−ドレイン間の電圧とを検知して、これらの検知結果に基づいてソース−ドレイン間の電流量を算出し、FETに過電流が流れた場合にはFETを遮断する構成とすることにより、電力供給制御装置はヒューズを備えることなく過電流の遮断を行うことができる。よって、ヒューズ交換などを行う必要がないため、車輌における電力供給制御装置の搭載場所の制限を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る電力供給制御装置を備える車輌の電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電力供給制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】電力供給制御装置のCPUによる電力供給の制限を説明するための模式図である。
【図4】電力供給制御装置のCPUによる電力供給制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】電力供給制御装置の比較器による電力供給の制御を説明するための模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る電力供給制御装置のCPU及び比較器による電力供給の制御を説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1の変形例に係る電力供給制御装置を備える車輌の電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【図8】変形例に係る電力供給制御装置の制御部による電力供給制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2に係る電力供給制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る電力供給制御装置のCPU及び比較器による電力供給の制御を説明するための模式図である。
【図11】実施の形態3に係る車輌の電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る電力供給制御装置を備える車輌の電力供給システムの構成を示すブロック図である。また図2は、本発明に係る電力供給制御装置の構成を示すブロック図である。図において1は電力供給制御装置であり、車輌(図示は省略する)に搭載された発電機2及びバッテリ3から、車輌の各種の電子ユニット5への電力供給経路4に配設されて、発電機2及びバッテリ3から電子ユニット5への電力の供給量を制御する。
【0032】
発電機2は、車輌のエンジンの回転による運動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより電力を発生する(発電する)装置であり、所謂オルタネータである。また発電機2は、内部に整流回路(図示は省略する)を有しており、発電した交流の電力を直流の電力に変換して出力する。発電機2が出力する直流の電力は、車輌に搭載された電子ユニット5へ供給されると共に、バッテリ3にて蓄積される。
【0033】
バッテリ3は、例えば鉛蓄電池などの二次電池であり、発電機2から電力が供給されている場合には、供給された電力を蓄積する。また車輌のエンジンが停止して発電機2から電力が供給されていない場合には、蓄積した電力を電子ユニット5へ供給する。
【0034】
電力供給経路4は、例えば発電機2、バッテリ3及び電子ユニット5に共通に接続された電力ケーブルである。電子ユニット5は、車輌に搭載された種々の電子機器である。例えば、ルームランプ、ヘッドランプ、テールランプ、オーディオ装置、エアーコンディショナー、カーナビゲーション装置、パワーウインドウ、ドアのロック装置及びワイパー等である。これらの電子ユニット5は、電力供給制御装置1を介して発電機2及びバッテリ3から与えられる電力により動作する。
【0035】
電力供給制御装置1は、Pチャネル型のFET11、平滑回路12、及び制御部20を備えて構成されている。FET11は、半導体のスイッチング素子であり、発電機2及びバッテリ3から電子ユニット5への電力供給経路4中に配され、電力供給経路4の接続/遮断を行う。詳しくは、FET11のソースが発電機2及びバッテリ3への電力供給経路4に接続され、FET11のドレインが電子ユニット5への電力供給経路4に接続され、FET11のゲートが制御部20に接続されて、接続/遮断の制御が制御部20により行われる。
【0036】
平滑回路12は、コイルL及びコンデンサCで構成された回路であり、FET11から電子ユニット5への電力供給経路4に配されている。詳しくは、平滑回路12のコイルLの一端はFET11のドレインに接続され、コイルLの他端は電子ユニット5に接続されている。また、平滑回路12のコンデンサCの一端はコイルLの他端に接続され、コンデンサCの他端は接地電位に接続されている。平滑回路12は、FET11から電子ユニット5への電力供給経路4の電圧変化を平滑化する、即ちFET11の出力電力を平滑化して電子ユニット5へ与える回路である。
【0037】
制御部20は、FET11のゲートへ制御信号を出力することによって、FET11のオン/オフを制御し、電力供給経路4の接続/遮断を制御することができ、これにより発電機2及びバッテリ3から電子ユニット5への電力供給を制御する。制御部20は、比較器21、NOR22、ROM(Read Only Memory)23、CPU(Central Processing Unit)24、通信部25及びタイマ26等を備えている。
【0038】
比較器21は、FET11のソース(図中Aで示す位置)の電位VAと、FET11のドレイン(図中Bで示す位置)の電位VBとを比較し、電位VAが電位VBに対して高く、その電位差が閾値を超える場合に”H”を出力し、それ以外の場合に”L”を出力する。比較器21の出力信号は、NOR22へ入力される。NOR22は、2入力1出力の論理演算素子であり、入力された2つの信号に対してNOR演算を行い、演算結果の出力信号をFET11のゲートへ入力する。
【0039】
ROM23は、マスクROM又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性のメモリ素子で構成されており、制御部20が処理を行うためのプログラム及びデータ等が予め記憶されている。CPU24は、ROM23に記憶されたプログラムを実行することによって各種の演算処理などを行い、処理結果としてFET11のオン/オフを制御する制御信号を出力する。なお、CPU24が出力する制御信号は、電力供給経路4を接続する場合が”H”であり、遮断する場合が”L”である。タイマ26は、計時を行うものであり、CPU24にて掲示の開始及び停止等が制御されると共に、計時結果をCPU24へ通知する。
【0040】
通信部25は、電力供給制御装置1と車輌の他の電子ユニット5とのデータ通信に係る処理を行うものである。電力供給制御装置1の通信部25と他の電子ユニット5とは通信ケーブルなどを介して接続されており、CAN(Controller Area Network)などのプロトコルに従って通信を行うことができる。通信部25は、CPU24の制御に従って他の電子ユニット5へデータの送信を行うと共に、他の電子ユニット5から送信されたデータを受信してCPU24へ与える。
【0041】
上記の構成の制御部20では、比較器21の出力信号及びCPU24の出力信号がNOR22に入力され、NOR22の出力信号がFET11のゲートに入力される。即ち、比較器21の出力信号又はCPU24の出力信号のいずれかが”H”の場合にNOR22から”L”が出力され、FET11がオンして電力供給経路4が接続される。よって、制御部20によるFET11のオン/オフの制御は、比較器21の出力信号と、CPU24の出力信号との2つにより行われる。なお、FET11はPチャネル型であるため、ゲートに”L”が入力された場合にオンし、”H”が入力された場合にオフする。
【0042】
CPU24は、通信部25により他の電子ユニット5と通信を行って車輌の状態(例えば、エンジンが動作しているか否か、車輌が停車中であるか否か、又は車輌が走行中であるか否か等)に係る情報を収集する。これにより車輌のエンジンが動作していると判断した場合、CPU24は、発電機2が発電を行うことができる状態であることから、FET11をオンして発電機2から電子ユニット5への電力供給経路4を接続し、発電機2から電子ユニット5への電力供給を行う。
【0043】
また、車輌のエンジンが停止しており、車輌が駐車状態である場合、CPU24は、発電機2が発電を行うことができない状態であることから、バッテリ3の電力消費を低減するために、バッテリ3から電子ユニット5への電力供給を制限する。具体的には、CPU24は、周期的に”H”/”L”を繰り返す制御信号(所謂、PWM信号)を出力することによって、FET11にオン/オフを周期的に繰り返させ、電力供給を制限する。
【0044】
図3は、電力供給制御装置1のCPU24による電力供給の制限を説明するための模式図であり、(a)にFET11のソース電圧(即ち、バッテリ3の出力電圧)を図示し、(b)にFET11のゲート電圧(即ち、NOR22の出力電圧)を図示し、(c)にFET11のドレイン電圧(即ち、電子ユニット5へ供給される電圧)を図示してある。
【0045】
バッテリ3からは例えば14.5Vなどの一定の電圧が出力される(図3(a)参照)。ただし、バッテリ3の残容量が低下した場合にはバッテリ3の出力電圧は若干低下する。制御部20のCPU24は、FET11を周期的にオン/オフすると共に、オン/オフの時間(デューティ比)を調整する制御(PWM制御)を行う。これにより、FET11のゲートには”H”/”L”を繰り返す信号が入力され(図3(b)参照)、この信号が”L”の場合にバッテリ3から電子ユニット5への電力供給経路4が接続され、”H”の場合に遮断される。
【0046】
このとき、FET11のドレイン電圧は、平滑回路12により平滑化されるため、滑らかに増減を繰り返す(図3(c)参照)。即ち、FET11のドレイン電圧は、FET11のオンと共に緩やかに上昇し、オフと共に緩やかに下降する動作を繰り返し行う。これにより、FET11のドレイン電圧の平均は例えば10V程度となる。よって、CPU24がFET11を周期的にオン/オフする制御を行うことによって、FET11の入力電圧14.5Vを出力電圧10Vに低減することができ、バッテリ3から電子ユニット5への供給電力を低減することができる。
【0047】
しかしながら、電力供給制御装置1によって停車時の電力供給を制限したとしても、車輌が駐車状態で長期間放置された場合には、電子ユニット5にて電力が消費され続けるためバッテリ3の残容量が車輌のエンジン始動に必要な容量以下に低下する虞がある。そこで、電力供給制御装置1のCPU24は、車輌状態が駐車状態へ移行した際にタイマ26による計時を開始し、所定期間(例えば20日など)が経過した場合に、FET11をオフして電力供給経路4を遮断する。これにより、バッテリ3の残容量が著しく低下することを防止できる。
【0048】
図4は、電力供給制御装置1のCPU24による電力供給制御処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU24は、通信部25による他の電子ユニット5との通信を行って情報を収集することにより、車輌状態を取得する(ステップS1)。次いで、CPU24は、取得した車輌状態に基づいて、車輌がエンジン停止状態であるか否かを判定し(ステップS2)、エンジン停止状態でない場合(S2:NO)、FET11を継続的にオンすることで発電機2の電力を電子ユニット5へ供給する通常供給を行い(ステップS3)、処理を終了する。
【0049】
車輌がエンジン停止状態の場合(S2:YES)、CPU24は、更に車輌が駐車状態であるか否かを判定する(ステップS4)。また、車輌が駐車状態の場合には(S4:YES)、CPU24は、タイマ26の計時結果に基づいて、駐車状態にて所定期間が経過したか否かを更に判定する(ステップS5)。所定時間が経過した場合(S5:YES)、CPU24は、FET11をオフして電力供給経路を遮断し(ステップS6)、処理を終了する。車輌が駐車状態でない場合(S4:NO)、又は、所定期間が経過していない場合(S5:NO)、CPU24は、FET11を周期的にオン/オフし、電力供給経路4を周期的に接続/遮断することによって、周期的な電力供給を行い(ステップS7)、処理を終了する。
【0050】
なお、CPU24は、図4に示した処理を繰り返し行っており、これにより車輌状態に応じた電子ユニット5への電力供給の制御を恒久的に行っている。
【0051】
また、電力供給制御装置1のFET11のオン/オフは比較器21の出力信号に応じても行われる。図5は、電力供給制御装置1の比較器21による電力供給の制御を説明するための模式図であり、(a)にFET11の両端の電位差(VA−VB)を示し、これに対する比較器21の出力信号を(b)に示してある。比較器21は、2つの入力電位を比較して、その電位差が閾値を超える場合に”H”を出力する回路であり、比較器21にFET11の両端の電位を入力することによって、FET11のソース−ドレイン間の電圧が閾値を超えるか否かを判定することができる。
【0052】
電子ユニット5の処理量が増し、消費電力が増加した場合、FET11のドレインの電圧VBが低下する。バッテリ3の出力電圧、即ちFET11のソースの電圧VAは一定であるため、電圧VBの低下により電位差(VA−VB)は大きくなる(図5(a)参照)。比較器21は、この電位差(VA−VB)が閾値を超えるか否かを判定することにより、電子ユニット5の消費電流の増加を判定することができ、電位差(VA−VB)が閾値を超えた場合に”H”を出力してFET11をオンすることによって(図5(b)参照)、電子ユニット5へ十分な電力供給を行うことができる。
【0053】
なお、比較器21によるFET11のオン/オフの制御は、CPU24が周期的なFET11のオン/オフの制御を行っている際にのみ行われる。CPU24が継続的にFET11をオン又はオフしている場合には、比較器21は動作せず、”L”出力を継続して行う。
【0054】
図6は、本発明の実施の形態1に係る電力供給制御装置1のCPU24及び比較器21による電力供給の制御を説明するための模式図であり、(a)にCPU24によるFET11を制御するための出力信号を示し、(b)に比較器21の出力信号を示し、(c)にFET11のゲート電圧、即ちNOR22の出力信号を示し、(d)にFET11のオン/オフの状態を示してある。
【0055】
CPU24が周期的に”H”/”L”を繰り返す制御信号を出力しており、比較器21が”L”を出力しているとき(即ち、FET11の両端の電位差が閾値以下のとき)、NOR22はCPU24の出力信号の反転信号をFET11のゲートへ入力し、この信号が”L”の場合にのみFET11がオンしてバッテリ3から電子ユニット5への電力供給が行われる。
【0056】
また、CPU24が周期的に”H”/”L”を繰り返す制御信号を出力していても、比較器21が”H”を出力しているとき(即ち、FET11の両端の電位差が閾値を超えるとき)には、NOR22は継続的に”L”の信号をFET11のゲートへ入力するため、FET11が継続的にオンしてバッテリ3から電子ユニット5への電力供給が行われる。
【0057】
以上の構成の電力供給制御装置1においては、発電機2及びバッテリ3から電子ユニット5への電力供給経路4にスイッチング素子としてFET11を配し、CPU24がPWM制御などによりFET11を周期的にオン/オフして電力供給経路の接続/遮断を行うと共に、FET11から電子ユニット5への電力供給経路4に平滑回路12を設ける構成とすることにより、発電機2及びバッテリ3から電子ユニット5へ直接的に電力を供給する場合と比較して、電子ユニット5への電力供給量を低減することができる。
【0058】
また、発電機2及びバッテリ3からFET11までの電力供給経路4の電位(FET11のソースの電位)と、FET11から電子ユニット5までの電力供給経路4の電位(FET11のドレインの電位)とを比較器21にて比較し、この電位差が閾値を超えた場合にFET11を継続的にオンする構成とすることにより、電子ユニット5の消費電流量が増大した場合には電力供給を継続的に行うことができ、消費電流量の急激な増大に対応することができる。
【0059】
また、通信部25による電子ユニット5との通信を行って車輌情報を取得し、エンジン停止状態の場合にCPU24がFET11の周期的なオン/オフを行う構成とすることにより、発電機2の発電が行われない状態において、バッテリ3から電子ユニット5への電力供給量を低減することができ、バッテリ3の残容量の低下を抑制できる。また、車輌が駐車状態であり、駐車状態の継続時間が所定時間を超えた場合に、FET11をオフしてバッテリ3から電子ユニット5への電力供給を停止する構成とすることにより、バッテリ3の残容量の著しい低下を抑制することができる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、スイッチング素子としてFET11を用いる構成としたが、これに限るものではなく、バイポーラトランジスタなどのその他のスイッチング素子を用いる構成としてもよい。また、図3、図5及び図6に示した信号波形などは一例であって、これに限るものではない。また、車輌状態としてエンジン停止状態及び駐車状態を判定し、各状態に応じた電力供給制御を行う構成としたが、更に他の車輌状態に応じた電力供給制御をおこなってもよい。
【0061】
(変形例)
図7は、本発明の実施の形態1の変形例に係る電力供給制御装置101を備える車輌の電力供給システムの構成を示すブロック図である。変形例に係る電力供給制御装置101を備える電力供給システムは、バッテリ3の残容量を検出するバッテリセンサ7を備えている。バッテリセンサ7は、バッテリ3の電圧、又はバッテリ3に対して流入及び流出する電流等を検知することによって、バッテリ3の残容量を算出する。バッテリセンサ7が検出したバッテリ3の残容量は、電力供給制御装置101の制御部20へ通知される。
【0062】
図8は、変形例に係る電力供給制御装置101の制御部20による電力供給制御処理の手順を示すフローチャートであり、制御部20のCPU24が行う処理である。まず、制御部20のCPU24は、通信部25による他の電子ユニット5との通信を行って情報を収集することにより、車輌状態を取得する(ステップS31)。次いで、CPU24は、取得した車輌状態に基づいて、車輌がエンジン停止状態であるか否かを判定し(ステップS32)、エンジン停止状態でない場合(S32:NO)、FET11を継続的にオンすることで発電機2の電力を電子ユニット5へ供給する通常供給を行い(ステップS33)、処理を終了する。
【0063】
車輌がエンジン停止状態の場合(S32:YES)、CPU24は、車輌が駐車状態であるか否かを判定し(ステップS34)、更に車輌が駐車状態の場合(S34:YES)、CPU24は、タイマ26の計時結果に基づいて、駐車状態にて所定期間が経過したか否かを判定する(ステップS35)。所定時間が経過した場合(S35:YES)、CPU24は、FET11をオフして電力供給経路を遮断し(ステップS38)、処理を終了する。
【0064】
車輌が駐車状態でない場合(S34:NO)、又は、所定期間が経過していない場合(S35:NO)、CPU24は、バッテリセンサ7が検出するバッテリ7の残容量を取得して(ステップS36)、残容量が70%より少ないか否かを判定する(ステップS37)。バッテリ7の残容量が70%より少ない場合(S37:YES)、CPU24は、FET11をオフして電力供給経路を遮断し(ステップS38)、処理を終了する。バッテリ7の残容量が70%以上の場合(S37:NO)、CPU24は、FET11を周期的にオン/オフし、電力供給経路4を周期的に接続/遮断することによって、周期的な電力供給を行い(ステップS39)、処理を終了する。
【0065】
以上の構成の変形例に係る電力供給制御装置101は、バッテリセンサ7によりバッテリ3の残容量を検出し、この検出結果に応じてFET11のオン/オフを制御する構成とすることにより、バッテリ3の残容量が車輌のエンジン始動に必要な電力量より低減することを確実に防止することができる。なお、変形例に係る電力供給制御装置101は、タイマ26の計時結果に基づいて駐車状態が所定期間継続したかを判定する構成としたが、これに限るものではなく、バッテリセンサ7を備える場合には駐車状態の継続期間の判定を行わない構成としてもよい。また、図8に示すフローチャートのステップS37にて、バッテリ3の残容量を判定する閾値として70%を用いたが、この数値は一例であってこれに限るものではない。
【0066】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る電力供給制御装置201の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る電力供給制御装置201は、FET11のソース及びドレインの電圧を電圧計241により検知する電圧検知部227と、FET11の温度を検知する温度検知部228とを備えている。電圧検知部227は検知した電圧をCPU224へ通知する。また温度検知部228は、例えばサーミスタ抵抗を利用して温度検知を行うものであり、検知結果をCPU224へ通知する。
【0067】
実施の形態2に係る電力供給制御装置201は、実施の形態1に係る電力供給制御装置1と同様に、FET11のオン/オフを周期的に行う制御信号をCPU224が出力する。この制御信号はCPU224からOR229へ入力される。また比較器21の出力信号がOR229へ入力される。OR229は、2入力1出力の論理演算素子であり、入力された2つの信号に対してOR演算を行い、演算結果の出力信号をNAND230へ入力する。
【0068】
また、実施の形態2に係る電力供給制御装置201は、電圧検知部227が検知した電圧及び温度検知部228が検知した温度に基づいて、FET11を強制的に遮断するための遮断信号を出力する。この遮断信号は、例えば”L”が遮断を示し、”H”が接続を示す信号であり、NAND230へ入力される。NAND230は、2入力1出力の論理演算素子であり、入力された2つの信号に対してNAND演算を行い、演算結果をFET11のゲートへ入力する。
【0069】
図10は、本発明の実施の形態2に係る電力供給制御装置201のCPU224及び比較器21による電力供給の制御を説明するための模式図であり、(a)にCPU224によるFET11を制御するための出力信号を示し、(b)に比較器21の出力信号を示し、(c)にCPU224がFET11を遮断するための遮断信号を示し、(d)にFET11のゲート電圧、即ちNAND230の出力信号を示し、(e)にFET11のオン/オフの状態を示してある。
【0070】
CPU224の遮断信号が”H”(接続)である場合、FET11は実施の形態1に係る電力供給制御装置1と同様の制御でオン/オフが行われる。これに対して遮断信号が”L”(遮断)である場合、FET11のゲートは”H”となるため、CPU224の他の出力信号及び比較器21の出力信号に関わらず、FET11はオフし、発電機2及びバッテリ3から電子ユニット5への電力供給は停止される。
【0071】
CPU224の遮断信号によるFET11の強制的な遮断は、FET11を通して電子ユニット5へ過電流が流れた場合に行われ、ヒューズの代替の機能として電力供給制御装置201に備えられた機能である。このためCPU224は、電圧検知部227にて検知した電圧と、温度検知部228が検知した温度とに基づいて、FET11のソース−ドレイン間に流れるドレイン電流Idを算出する。
【0072】
FET11のドレイン電流Idは、FET11のソース−ドレイン間の電圧と、FET11のオン抵抗から算出することができ、更にFET11のオン抵抗は、FET11のゲート−ソース間の電圧と、FET11の温度とから決定される。そこでFET11の特性を予め測定し、ゲート−ソース間の電圧及びFET11の温度にFET11のオン抵抗を対応付けたオン抵抗テーブル223が、実施の形態2に係る電力供給制御装置201のROM23には予め記憶されている。
【0073】
CPU224は、電圧検知部227が検知したFET11のソース電圧が通知されており、FET11はオンの場合にゲート電圧が0Vであることから、電圧検知部227から通知されるソース電圧をFET11のゲート−ソース電圧とすることができる。なお、電圧検知部227は、FET11がオンのタイミングで電圧の検知を行うものとする。
【0074】
CPU224は、電圧検知部227が検知したFET11のソース電圧(ゲート−ソース間電圧)及び温度検知部228が検知したFET11の温度を基にROM23のオン抵抗テーブル223を参照し、FET11のオン抵抗を取得する。次いでCPU224は、オン抵抗テーブル223から取得したオン抵抗と、電圧検知部227が検知したFET11のソース電圧及びドレイン電圧とを用いて、以下の1式によりFET11のドレイン電流Idを算出する。
【0075】
Id = 1/Ron*|VA−VB| …(1式)
Id:FET11のドレイン電流
Ron:FET11のオン抵抗
VA:FET11のソース電圧
VB:FET11のドレイン電圧
【0076】
CPU224は、算出したFET11のドレイン電流Idが例えば10Aなどの閾値を超える場合に、遮断信号を”L”として出力し、FET11をオフして電子ユニット5へ流れる過電流を遮断する。なお、過電流を遮断した後、CPU224がFET11を接続するのは、例えば遮断してから所定時間が経過した場合、温度検知部228が検知するFET11の温度が所定温度以下となった場合、又は車輌のイグニッションスイッチが一度オフされてその後にオンされた場合等の適宜の条件で行えばよい。
【0077】
以上の構成の実施の形態2に係る電流供給制御装置201においては、電圧検知部227が検知したFET11のソース及びドレインの電圧と、温度検知部228が検知したFET11の温度とに基づいて、ROM223からFET11のオン抵抗を取得し、演算によりFET11のドレイン電流Idを算出して過電流の判断を行い、FET11のオン/オフを制御して過電流の遮断を行う構成とすることにより、電流供給制御装置201はヒューズを備えることなく過電流の遮断を行うことができる。また、ヒューズを備えない構成とすることができるため、過電流が流れた場合であってもヒューズ交換を行う必要がなく、車輌における電力供給制御装置201の搭載場所の制限を緩和することができる。
【0078】
なお、実施の形態2に係る電力供給制御装置201のその他の構成は、実施の形態1に係る電力供給制御装置1の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0079】
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3に係る車輌の電力供給システムの構成を示すブロック図である。実施の形態3は、実施の形態1に係る車輌の電力供給システムにおいて、電力供給制御装置1と、発電機2及びバッテリ3との間にジャンクションボックス30を設けた構成となっている。ジャンクションボックス30は、発電機2及びバッテリ3から電力供給制御装置1への電力供給経路4中に配されたヒューズ30Hを有し、過電流が流れた場合にはヒューズ30Hの溶断によって過電流を防止する。
【0080】
また、一方が発電機2及びバッテリ3に接続されているヒューズ30Hの他方には、電子ユニット6がさらに接続されている。電子ユニット6は、電力供給制御装置301を備えている。電力供給制御装置301は、電力供給制御装置1と同じ構成であり、電力供給制御装置301が備えるFET11は、ソースがヒューズ30Hに接続され、ドレインが平滑回路12を介して、例えば電子ユニット6のCPU61(負荷)に接続されている。なお、電力供給制御装置301は、実施の形態1で説明した通信部25を備えていなくてもよい。
【0081】
以上のように、実施の形態3では、例えば、互いに近くに配置されている複数の電子ユニット5に対しては、一つの電力供給制御装置1により、電力の接続/遮断を行う。そして、離れた電子ユニット6に対しては、電力供給制御装置301を搭載し、個別に電力の接続/遮断を行う。斯かる構成とすることで、電力供給制御装置を効率よく配置することができ、数の増大を防ぐことができる。また、電力供給制御装置301を電子ユニット6内に搭載することで、電子ユニット6を車輌に搭載する差異に新たに電力供給制御装置301の搭載場所を確保する必要がなく、設計上、簡単にすることができる。また、電子ユニット毎に電力供給制御装置301を設けることで、電子ユニットの種類に応じた大きさの電力の遮断が可能となり、車両全体の消費電力を実現できる。
【0082】
なお、実施の形態3では、電力供給制御装置1を設けず、車輌に搭載されている全ての電子ユニット5,6に電力供給制御装置301を設けるようにしてもよい。また、実施の形態3に係る電力供給制御装置301のその他の構成は、実施の形態1に係る電力供給制御装置1の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0083】
1 電力供給制御装置
2 発電機
3 バッテリ
4 電力供給経路
5 電子ユニット(負荷)
7 バッテリセンサ(残容量検出手段)
11 FET(スイッチング素子)
12 平滑回路
20 制御部
21 比較器(継続接続手段)
22 NOR
23 ROM
24 CPU(制御手段、車輌状態検出手段)
25 通信部(車輌状態検出手段)
26 タイマ(計時手段)
101 電力供給制御装置
201 電力供給制御装置
223 オン抵抗テーブル
224 CPU(制御手段、車輌状態検出手段、電流値算出手段)
227 電圧検知部(電圧検知手段)
228 温度検知部(温度検知手段)
229 OR
230 NAND
241 電圧計(電圧検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載された発電機及びバッテリからの電力を、前記車輌に搭載された負荷へ供給する制御を行う電力供給制御装置において、
一端側に前記発電機及びバッテリが接続され、他端側に前記負荷が接続されて、前記発電機及びバッテリから前記負荷への電力供給経路の接続/遮断を行うスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の接続/遮断を周期的に行わせる制御手段と、
前記スイッチング素子の両端の電位差が閾値を超えた場合に、前記スイッチング素子に継続的な接続を行わせる継続接続手段と
を備えることを特徴とする電力供給制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記スイッチング素子に接続/遮断を行わせる制御信号を出力するようにしてあり、
前記継続接続手段は、
前記スイッチング素子の両側の電位を比較して、閾値を超える電位差が生じたことを検知する比較器を有し、
該比較器の出力信号を前記スイッチング素子に接続/遮断を行わせる制御信号として出力するようにしてあり、
前記スイッチング素子は、前記制御手段が出力する制御信号又は前記継続接続手段が出力する制御信号により接続の制御がなされた場合に、前記電力供給経路を接続するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記車輌のエンジンが停止状態であるか否かを検出する車輌状態検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記エンジンが停止状態の場合に、前記スイッチング素子の接続/遮断を周期的に行わせるようにしてあること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給制御装置。
【請求項4】
前記車輌が駐車状態であるか否かを検出する車輌状態検出手段と、
前記駐車状態の継続時間を計時する計時手段と
を更に備え、
前記制御手段は、前記計時手段が計時した継続時間が所定時間を超えた場合に、前記スイッチング素子を遮断させるようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の電力供給制御装置。
【請求項5】
前記バッテリの残容量を検出する残容量検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記残容量検出手段が検出した残容量が所定容量より少ない場合に、前記スイッチング素子を遮断させるようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の電力供給制御装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、FET(Field Effect Transistor)であり、ソースに前記発電機及びバッテリが接続してあり、ドレインに前記負荷が接続してあり、
前記FETの温度を検知する温度検知手段と、
前記FETのゲート−ソース間の電圧及びソース−ドレイン間の電圧を検知する電圧検知手段と、
前記温度検知手段が検知した温度及び前記電圧検知手段が検知した電圧に基づいて、前記FETのソース−ドレイン間を流れる電流値を算出する電流値算出手段と
を更に備え、
前記制御手段は、前記電流値算出手段が算出した電流値に応じて、前記スイッチング素子を遮断させるようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の電力供給制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−183822(P2010−183822A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182573(P2009−182573)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】