説明

電力変換装置及びそれを備えた冷凍装置

【課題】容易な構成でパワー半導体チップを効率よく冷却できる冷却手段を備えた電力変換装置及びそれを備えた冷凍装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置(30)は、パワー半導体チップ(50)と、該パワー半導体チップ(50)が接続される主回路が形成された主基板(51)とを備えている。電力変換装置(30)に、表面(52b)に絶縁層(54)を介してパワー半導体チップ(50)が実装され、裏面(52a)に冷却用流体が流通する冷却管(23a)が嵌め込まれる凹溝(52c)が形成されると共に、主基板(51)とは別部材で形成された放熱基板(52)と、該放熱基板(52)が主基板(51)と異なる面に位置するように放熱基板(52)を主基板(51)に固定する固定部材(53)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体チップを有する電力変換装置及びそれを備えた冷凍装置に関し、特に、稼動時に高温に発熱するパワー半導体チップの冷却対策に係る。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置等の冷凍装置で用いられる圧縮機等の電動機の制御に電力変換装置が用いられている。電力変換装置の駆動回路には、稼動時に高温に発熱するパワー半導体チップが用いられている。そのため、電力変換装置には、パワー半導体チップが動作可能な温度よりも高温にならないように、パワー半導体チップを冷却する冷却手段が設けられている(下記特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電力変換装置では、銅等の金属からなる放熱板上に絶縁基板を接合し、該絶縁基板の上に導体パターンを設け、該導体パターン上にパワー半導体チップを実装してこれらを1つのパッケージに収めることによって構成されたパワーモジュールが、制御回路等が搭載された主基板に固定されている。そして、該パワーモジュールには、冷媒配管を保持するアルミニウム等の金属からなる冷却器が取り付けられている。このように主基板に固定されたパワーモジュールに冷却器を取り付けることにより、パワーモジュールに内蔵されたパワー半導体チップを、冷却器に保持された冷媒配管を流れる冷媒によって冷却することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パワーモジュールに冷却器を取り付けてパワーモジュールに内蔵されたパワー半導体チップを冷却することとすると、パワーモジュールと冷却器との間に微小な隙間が形成され、この隙間に空気が介在することによって熱が伝わり難くなる。即ち、パワーモジュールと冷却器との間に接触熱抵抗が発生する。通常、このような接触熱抵抗を低減するためにパワーモジュールと冷却器との間にサーマルグリスを塗布することが行われる。このサーマルグリスにより接触熱抵抗を低減することは可能であるが、サーマルグリスの熱伝導率が通常1W/m・K程度と小さいため、完全に接触熱抵抗を無くすことはできない。そのため、パワーモジュールに内蔵されたパワー半導体チップを効率よく冷却できないという問題があった。特に、近年、パワー半導体チップの小型化が進み、パワー半導体チップが高密度に実装されるために、発熱密度が増大する傾向にある。そのため、パワー半導体チップを冷却する冷却器の冷却性能のさらなる向上が求められている。
【0006】
また、上述のようなサーマルグリスの塗布作業は、自動化が難しく、塗布量や塗りむらの管理等、作業が煩雑であるという問題があった。
【0007】
また、上述のようにパワーモジュールに冷却器を取り付けることとすると、パワー半導体チップが実装される基板と冷却器との間に放熱板が介在することとなるが、この放熱板が不要に電力変換装置の重量とコストとを増大させる要因となっていた。とりわけ、放熱板は比重の大きな銅板によって構成されることが多いため、放熱板が設けられることが電力変換装置の重量を増大させる大きな要因となっていた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パワー半導体チップの冷却手段を有する電力変換装置及びそれを備えた冷凍装置において、パワー半導体チップの冷却効率の向上と電力変換装置の組立性の改善と電力変換装置の重量及びコストの低減とを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、パワー半導体チップ(50)と、該パワー半導体チップ(50)が接続される主回路が形成された主基板(51)とを備えた電力変換装置であって、表面(52b)に絶縁層(54)を介して上記パワー半導体チップ(50)が実装され、裏面(52a)に冷却用流体が流通する冷却管(23a)が嵌め込まれる凹溝(52c)が形成されると共に、上記主基板(51)とは別部材で形成された放熱基板(52)と、上記放熱基板(52)が上記主基板(51)と異なる面に位置するように上記放熱基板(52)を主基板(51)に固定する固定部材(53)とを備えている。
【0010】
第1の発明では、放熱基板(52)の表面(52b)に絶縁層(54)を介して稼動時に発熱するパワー半導体チップ(50)が実装される一方、放熱基板(52)の裏面(52a)に冷却用流体が流通する冷却管(23a)が嵌め込まれる凹溝(52c)が形成されている。そのため、稼動時に発熱したパワー半導体チップ(50)の熱は、放熱基板(52)を介して冷却管(23a)内を流通する冷却用流体に吸収され、パワー半導体チップ(50)が冷却される。このように、パワー半導体チップが実装される基板と冷却管(23a)が取り付けられる冷却器とが別部材に構成されるのではなく1つの部材によって構成されている。そのため、実装基板と冷却器とが別部材によって構成される場合に比べてパワー半導体チップと冷却管との接触熱抵抗が大幅に小さくなり、パワー半導体チップが冷却され易くなる。また、実装基板と冷却器とが1つの部材によって構成されているため、これらの間にサーマルグリスを塗布する必要がない。また、上述のように、実装基板と冷却器とが1つの部材によって構成されてその間に放熱板が介在しないため、従来の電力変換装置のように、パワー半導体チップが実装された基板と冷却器との間に放熱板が介在するために不要に電力変換装置の重量及びコストを増大させてしまうようなことがない。
【0011】
また、第1の発明では、放熱基板(52)が、主回路が形成された主基板(51)と別部材によって構成され、固定部材(53)によって主基板(51)と異なる面に位置するように主基板(51)に固定されている。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記放熱基板(52)には、上記パワー半導体チップ(50)を有するパワー回路が形成される一方、上記固定部材(53)は、上記主回路と上記パワー回路とを電気的に接続している。
【0013】
第2の発明では、固定部材(53)が、パワー半導体チップ(50)を有して放熱基板(52)に形成されたパワー回路と主基板(51)に形成された主回路とを電気的に接続する電気接続部材を兼ねている。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、上記固定部材(53)は、リード又はハーネスによって構成されている。
【0015】
第3の発明では、リード又はハーネスにより、主基板(51)と放熱基板(52)とが固定されると共に、主回路とパワー回路とが電気的に接続されている。
【0016】
第4の発明は、第2の発明において、上記主基板(51)には開口(51b)が形成され、上記固定部材(53)は、上記主基板(51)に設けられて上記主回路の一部を構成する第1導体パターン(51a)と上記放熱基板(52)に設けられて上記パワー回路の一部を構成する第2導体パターン(55)とを電気的に接続する半田によって構成され、上記パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が上記開口(51b)内に位置するように上記放熱基板(52)と上記主基板(51)とを固定している。
【0017】
第4の発明では、半田によって、主基板(51)に設けられて主回路の一部を構成する第1導体パターン(51a)と放熱基板(52)に設けられてパワー回路の一部を構成する第2導体パターン(55)とが電気的に接続されると共に、放熱基板(52)と主基板(51)とが固定されている。また、放熱基板(52)と主基板(51)とは、パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が主基板(51)に形成された開口(51b)内に位置するように固定されている。
【0018】
第5の発明は、第1の発明において、上記主基板(51)には開口(51b)が形成され、上記固定部材(53)は、上記パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が上記開口(51b)内に位置するように上記放熱基板(52)と上記主基板(51)とを接触させて固定するネジ部材又は接着剤であり、上記放熱基板(52)には、上記パワー半導体チップ(50)を有するパワー回路が形成される一方、上記主回路と上記パワー回路とは、ワイヤ、リボン、又はリードフレームによって電気的に接続されている。
【0019】
第5の発明では、主基板(51)に開口(51b)が形成され、ネジ部材又は接着剤によって、パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が開口(51b)内に位置するように主基板(51)と放熱基板(52)とが固定されている。また、ワイヤ、リボン、又はリードフレームによって主回路とパワー回路とが電気的に接続されている。
【0020】
第6の発明は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)と、上記冷媒回路(10)において冷凍サイクルを実行させるための電気機器(18)に電力を供給する請求項1乃至5のいずれか1つの電力変換装置(30)とを備え、上記電力変換装置(30)の上記放熱基板(52)の上記凹溝(52c)には、上記冷媒回路(10)の冷媒配管が上記冷却管(23a)として嵌め込まれている。
【0021】
第6の発明では、冷媒回路(10)を流れる冷媒によって、電力変換装置(30)のパワー半導体チップ(50)が冷却される。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、放熱基板(52)の表面(52b)にパワー半導体チップ(50)を実装する一方、裏面(52a)に冷却管(23a)を取り付ける凹溝(52c)を形成することとして、パワー半導体チップ(50)が実装される基板と冷却管(23a)が取り付けられる冷却器とを1つの部材によって構成することとした。そのため、実装基板と冷却器とを別部材によって構成した場合に比べてパワー半導体チップ(50)と冷却管(23a)との接触熱抵抗を大幅に低減することができる。よって、冷却管(23a)内を流通する冷却用流体によってパワー半導体チップ(50)を効率よく冷却することができる。また、実装基板と冷却器とを1つの部材によって構成したため、これらの間にサーマルグリスを塗布する必要がない。そのため、電力変換装置の組立性を改善することができる。さらに、実装基板と冷却器とを1つの部材によって構成したため、従来の電力変換装置のように、パワー半導体チップ(50)が実装された基板と冷却器との間に放熱板が介在しない。そのため、電力変換装置の重量及びコストを低減することができる。
【0023】
ところで、第1の発明では、固定部材(53)によって、主回路が形成された主基板(51)に、パワー半導体チップ(50)が実装された放熱基板(52)を固定するだけで容易に電力変換装置が形成される。このように放熱基板(52)を主基板(51)と別部材によって構成して固定部材(53)によって主基板(51)と異なる面に固定することすると、容易に電力変換装置を形成することができるものの、装置が大きくなることが懸念される。
【0024】
しかしながら、第1の発明によれば、上述のように、パワー半導体チップ(50)が実装される基板と冷却器とが1つの放熱基板(52)によって構成されてその間に放熱板が介在していないため、パワー半導体チップ(50)と冷却器とを含む冷却構造体を従来よりも小さく形成することができる。
【0025】
また、第2の発明によれば、固定部材を主回路とパワー回路とを電気的に接続するように構成することにより、電気接続部材として兼用することができる。つまり、1つの部材で主基板(51)と放熱基板(52)の固定と主回路とパワー回路との電気接続を行うことができる。従って、部品点数を低減して電力変換装置の構成を容易化することができると共に、組み立て工数を低減することができる。
【0026】
また、第3の発明によれば、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定すると共に、主回路とパワー回路とを電気的に接続する固定部材を容易に構成することができる。
【0027】
また、第4の発明によれば、固定部材(53)を主基板(51)に設けられた主回路の一部を構成する第1導体パターン(51a)と放熱基板(52)に設けられたパワー回路の一部を構成する第2導体パターン(55)とを電気的に接続する半田によって構成することにより、電気接続部材として兼用することができる。つまり、1つの部材で主基板(51)と放熱基板(52)の固定と主回路とパワー回路との電気接続を行うことができる。従って、部品点数を低減して構成を容易化することができると共に、組み立て工数を低減することができる。また、主基板(51)に開口(51b)を形成し、パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が開口(51b)内に位置するように主基板(51)放熱基板(52)とを固定することにより、放熱基板(52)を主基板(51)と別部材とすることによる装置の大型化を最低限度に抑制することができる。
【0028】
また、第5の発明によれば、接着剤によって主基板(51)と放熱基板(52)とを固定することとしたため、主基板(51)及び放熱基板(52)に何ら細工を施すことなく容易に固定作業を行うことができる。また、主基板(51)に開口(51b)を形成し、パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が開口(51b)内に位置するように主基板(51)と放熱基板(52)とを固定することにより、放熱基板(52)を主基板(51)と別部材とすることによる装置の大型化を最低限度に抑制することができる。また、通常、パワー半導体チップ(50)を電気回路に組み込む際には、ワイヤ、リボン、又はリードフレームによるボンディング工程が必要となる。そこで、上述のように、電気接続部材をワイヤ、リボン、又はリードフレームによって構成することにより、放熱基板(52)におけるパワー回路の形成と、主基板(51)の主回路と放熱基板(52)のパワー回路との電気接続とをまとめて1つのボンディング工程において行うことができる。従って、電力変換装置の組み立て工数を低減することができる。
【0029】
また、第6の発明によれば、パワー半導体チップ(50)を冷却する冷却手段を有する電力変換装置(30)を備えた冷凍装置において、パワー半導体チップ(50)の冷却効率の向上と電力変換装置(30)の重量及びコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態1に係る空気調和装置の構成を示す配管系統図である。
【図2】図2は、実施形態1の電力変換装置の構成を示す電気回路図である。
【図3】図3は、実施形態1の電力変換装置の構成を示す断面図である。
【図4】図4は、実施形態2の電力変換装置の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、実施形態3の電力変換装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態では、本発明に係る冷凍装置の一例として、空気調和装置について説明する。
【0032】
《発明の実施形態1》
−全体構成−
〈冷媒回路〉
図1に示すように、本発明の実施形態に係る空気調和装置(1)は、室外機(1A)と室内機(1B)とを有し、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備えている。該冷媒回路(10)は、圧縮機(11)と室外熱交換器(12)と膨張弁(13)と室内熱交換器(14)とが順に冷媒配管によって接続されることにより形成されている。圧縮機(11)の吸入側にはアキュムレータ(15)が設けられる一方、吐出側には油分離器(16)が設けられている。また、冷媒回路(10)は四路切換弁(17)を備え、冷媒循環が可逆に構成されている。
【0033】
圧縮機(11)の吐出側は、高圧ガス管(21)を介して四路切換弁(17)の第1ポート(a)に接続されている。高圧ガス管(21)の中途部には前述の油分離器(16)が設けられている。
【0034】
上記室外熱交換器(12)は、例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器によって構成されている。該室外熱交換器(12)には、室外ファン(12a)が近接して配置されている。また、室外熱交換器(12)のガス側端部は、室外ガス管(22)を介して四路切換弁(17)の第2ポート(b)に接続されている。一方、室外熱交換器(12)の液側端部には、液管(23)の一端が接続されている。液管(23)には、開度可変に構成された膨張弁(13)が設けられている。また、液管(23)の膨張弁(13)よりも室外熱交換器(12)側の一部は、後述するパワー半導体チップ(50)が実装される放熱基板(52)に取り付けられてパワー半導体チップ(50)を冷却する冷媒が流通する冷却管(23a)に構成されている。液管(23)の他端は、室内熱交換器(14)の液側端部に接続されている。
【0035】
上記室内熱交換器(14)は、例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器によって構成されている。該室内熱交換器(14)には、室内ファン(14a)が近接して配置されている。室内熱交換器(14)のガス側端部には、ガス連絡管(24)の一端が接続されている。ガス連絡管(24)の他端は、四路切換弁(17)の第4ポート(d)に接続されている。
【0036】
上記四路切換弁(17)は、第1〜第4ポート(a,b,c,d)を備え、第1ポート(a)と第2ポート(b)とを連通させると共に第3ポート(c)と第4ポート(d)とを連通させる第1の状態(図1の実線)と、第1ポート(a)と第4ポート(d)とを連通させると共に第2ポート(b)と第3ポート(c)とを連通させる第2の状態(図1の破線)とに切換可能に構成されている。
【0037】
四路切換弁(17)の第3ポート(c)には、低圧ガス管(25)の一端が接続されている。低圧ガス管(25)の他端は、アキュムレータ(15)に接続されている。
【0038】
上記アキュムレータ(15)には、吸入管(26)の一端が接続され、該吸入管(26)の他端は圧縮機(11)の吸入側に接続されている。アキュムレータ(15)は、低圧ガス管(25)からの冷媒中に含まれる液冷媒を除去し、ガス冷媒のみを圧縮機(11)に吸入させる。
【0039】
なお、吸入管(26)には、油戻し管(20)の一端が接続され、該油戻し管(20)の他端は前述の油分離器(16)に接続されている。油分離器(16)で冷媒から分離された冷凍機油は、油戻し管(20)及び吸入管(26)を経て圧縮機(11)に吸入される。
【0040】
〈電力変換装置〉
室外機(1A)には、上記冷媒回路(10)の各構成部品の各駆動部に電力を供給するための電力変換装置(30)が設けられている。
【0041】
図2に示すように、上記電力変換装置(30)は、圧縮機(11)のモータ(18)等の各駆動部に供給する電力の制御や変換を行うための駆動回路(31)を備えている。なお、図2では、駆動回路(31)の一例として圧縮機(11)のモータ(18)に接続された圧縮機(11)用の駆動回路(31)を示している。駆動回路(31)は、コンバータ回路(32)と、コンデンサ回路(33)と、インバータ回路(34)とを備えている。
【0042】
コンバータ回路(32)は、三相交流電源である商用電源(38)に接続されている。コンバータ回路(32)は商用電源(38)の交流電圧を直流電圧に変換するための回路であり、6つのダイオード(35)が三相ブリッジ結線されている。
【0043】
コンデンサ回路(33)は、コンバータ回路(32)とインバータ回路(34)との間に接続され、コンデンサ(36)が接続されている。
【0044】
インバータ回路(34)は、圧縮機(11)のモータ(18)に接続され、コンデンサ(36)の直流電圧を三相交流電圧に変換し、変換後の交流電圧を負荷となるモータ(18)に供給するものである。インバータ回路(34)は、6つのパワートランジスタ(37)がスイッチング素子として三相ブリッジ結線されている。インバータ回路(34)では、スイッチング素子のスイッチングが制御されることにより、モータ(18)に出力される交流電圧及びその周波数が増減し、モータ(18)の回転速度が調節される。なお、スイッチング素子のスイッチングは、制御回路(60)によって制御される。
【0045】
このような構成により、電力変換装置(30)では、商用電源(38)の交流電圧をコンバータ回路(32)において直流電圧に変換し、該直流電圧をインバータ回路(34)において所望の周波数の交流電圧に変換した後、圧縮機(11)のモータ(18)等の駆動部に供給する。
【0046】
コンバータ回路(32)の6つのダイオード(35)及びインバータ回路(34)の6つのパワートランジスタ(37)は、それぞれベアチップによって構成され、本発明に係るパワー半導体チップ(50)を構成している。
【0047】
また、図3に示すように、電力変換装置(30)は、上記駆動回路(31)、制御回路(60)の他に、主基板(51)と、放熱基板(52)と、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する固定部材(53)とを備えている。
【0048】
主基板(51)は、ガラスエポキシ樹脂によって形成された絶縁基板である。図3では図示を省略しているが、主基板(51)の上面には、上記制御回路(60)と上記駆動回路(31)の一部が搭載されている。なお、本実施形態では、主基板(51)に搭載される駆動回路(31)の一部は、駆動回路(31)のコンバータ回路(32)とインバータ回路(34)以外の部分、即ち、コンデンサ回路(33)によって構成されている。つまり、主基板(51)の上面には、制御回路(60)と駆動回路(31)のコンデンサ回路(33)とが搭載されている。また、この主基板(51)に搭載された制御回路(60)と駆動回路(31)の一部とによって本発明に係る主回路が構成されている。
【0049】
放熱基板(52)は、アルミニウムを押出成型することによって後述する凹溝(52c)付きの板状体に形成されている。放熱基板(52)は、片側の第1面(52a)(図3における下面)が、上記冷却管(23a)が取り付けられる冷却面に構成される一方、第1面(52a)の裏面の第2面(52b)(図3における上面)が、パワー半導体チップ(50)が実装される実装面に構成されている。なお、第1面(52a)が放熱基板(52)の裏面を構成し、第2面(52b)が放熱基板(52)の表面を構成する。
【0050】
具体的には、放熱基板(52)の第1面(52a)には、冷却管(23a)が嵌り込む凹溝(52c)が形成されている。該凹溝(52c)は、横断面形状が半円形状の溝であり、放熱基板(52)の第1面(52a)の一端から他端に亘って形成されている。また、凹溝(52c)は、該凹溝(52c)と第1面(52a)との2つの角部をそれぞれ通り第1面(52a)と45度の角度をなす2つの面(S1,S2)の間に挟まれる領域(W)に、第2面(52b)に実装される複数のパワー半導体チップ(50)それぞれの少なくとも一部が位置するように形成されている。
【0051】
一方、放熱基板(52)の第2面(52b)には、例えばエポキシ樹脂からなる絶縁層(54)が形成されている。また、絶縁層(54)上には、銅箔によって構成された導体パターン(55)が形成されている。そして、導体パターン(55)の上には、複数のパワー半導体チップ(50)が実装されている。本実施形態では、6つのダイオード(35)と6つのパワートランジスタ(37)を構成する12つのパワー半導体チップ(50)が半田実装されている。また、各パワー半導体チップ(50)は、ワイヤ(56)によって他のパワー半導体チップ(50)が実装された導体パターン(55)に電気的に接続されている。このようにパワー半導体チップ(50)が導体パターン(55)とワイヤ(56)とによって電気的に接続されることによって駆動回路(31)のコンバータ回路(32)とインバータ回路(34)とが形成される。つまり、放熱基板(52)の第2面(52b)の絶縁層(54)上には、駆動回路(31)のコンバータ回路(32)とインバータ回路(34)とからなるパワー回路が搭載されている。また、このパワー回路のパワー半導体チップ(50)及びワイヤ(56)は、エポキシ系のハードレジン又はシリコン系のソフトゲルからなる封止材(57)によって覆われて封止されている。
【0052】
上記固定部材(53)は、導電性材料からなるリードによって構成され、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定している。また、リード(53)は、一端が主基板(51)に形成されたスルーホール(図示省略)を介して主基板(51)の両面に形成された導体パターン(51a)に接合され、他端が放熱基板(52)の導体パターン(55)に接合されるように主基板(51)と放熱基板(52)との間に架け渡されている。このようなリード(53)により、主基板(51)と放熱基板(52)とが固定されると共に、主基板(51)に搭載された主回路と放熱基板(52)に搭載されたパワー回路とが電気的に接続される。
【0053】
〈冷却管〉
ところで、上記ダイオード(35)と上記パワートランジスタ(37)をそれぞれ構成するパワー半導体チップ(50)は、稼動時に高温に発熱する。そこで、本実施形態では、パワー半導体チップ(50)が動作可能な温度よりも高温にならないように、冷媒回路(10)の冷媒によってパワー半導体チップ(50)を冷却することとしている。
【0054】
具体的には、電力変換装置(30)の放熱基板(52)には、冷媒回路(10)の液管(23)の一部を構成する冷却管(23a)が取り付けられている。冷却管(23a)は、グリスや伝熱シート等の熱伝導性部材(58)を介して放熱基板(52)の第1面(52a)に形成された凹溝(52c)に嵌め込まれている。
【0055】
−動作−
次に、上記空気調和装置(1)の運転動作を説明する。上記空気調和装置(1)は、四路切換弁(17)を切り換えることにより、冷房運転と暖房運転とを行う。
【0056】
冷房運転では、四路切換弁(17)は第1の状態(図1の実線状態)となり、圧縮機(11)の吐出側と室外熱交換器(12)とが連通し、且つ圧縮機(11)の吸入側と室内熱交換器(14)とが連通する。そして、上記圧縮機(11)及び各ファン(12a,14a)が駆動され、上記膨張弁(13)が適宜開度調整される。その結果、冷媒は、図1の実線矢印に示す方向に循環し、室外熱交換器(12)が凝縮器、室内熱交換器(14)が蒸発器として機能する蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0057】
一方、暖房運転では、四路切換弁(17)は第2の状態(図1の破線状態)となり、圧縮機(11)の吐出側と室内熱交換器(14)とが連通し、且つ圧縮機(11)の吸入側と室外熱交換器(12)とが連通する。そして、上記圧縮機(11)及び各ファン(12a,14a)が駆動され、上記膨張弁(13)が適宜開度調整される。その結果、冷媒は、図1の破線矢印に示す方向に循環し、室内熱交換器(14)が凝縮器、室外熱交換器(12)が蒸発器として機能する蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0058】
〈パワー半導体チップの冷却〉
冷却管(23a)の内部には、冷房運転時には室外熱交換器(12)で凝縮した冷媒が流れ、暖房運転時には室内熱交換器(14)で凝縮した後、膨張弁(13)で減圧された冷媒が流れる。該冷却管(23a)を流れる冷媒の温度は、運転条件や外気条件によって異なるが、冷房運転時には例えば45℃程度、暖房運転時には例えば4℃程度になっている。
【0059】
一方、パワー半導体チップ(50)は、作動時に発熱して高温となっている。該パワー半導体チップ(50)から発生する排熱の温度は、例えば、80℃程度になっている。
【0060】
以上のような冷却管(23a)の内部を流れる冷媒とパワー半導体チップ(50)との温度差により、パワー半導体チップ(50)は冷却される。つまり、パワー半導体チップ(50)の熱が放熱基板(52)を介して冷却管(23a)に伝達され、該冷却管(23a)の内部を流れる冷媒が吸熱することによってパワー半導体チップ(50)が冷却される。
【0061】
〈電力変換装置の製造方法〉
次に、上記電力変換装置(30)の製造方法について説明する。
【0062】
主基板(51)には、銅箔をプレスした後、エッチングにより不要な部分を取り除いて導体パターン(51a)を形成する。その後、主回路を構成する種々の電気部品を導体パターン(51a)上に半田実装して主基板(51)上に主回路を形成する。
【0063】
一方、放熱基板(52)は、押し出し成型した後、第2面(52b)に絶縁層(54)を形成する。そして、絶縁層(54)の上に銅箔をプレスした後、エッチングにより不要な部分を取り除いて導体パターン(55)を形成する。その後、パワー回路を構成する複数のパワー半導体チップ(50)を導体パターン(55)上に半田実装し、ワイヤ(56)によってパワー半導体チップ(50)どうし又はパワー半導体チップ(50)と導体パターン(55)とを電気的に接続して放熱基板(52)の絶縁層(54)上にパワー回路を形成する。その後、封止材(57)によってパワー回路のパワー半導体チップ(50)及びワイヤ(56)を封止する。
【0064】
主基板(51)及び放熱基板(52)上にそれぞれ電気回路を形成した後、主基板(51)と放熱基板(52)を固定すると共に、それぞれの電気回路を電気的に接続する。具体的には、導電性材料からなるリード(53)の一端を、予め放熱基板(52)の導体パターン(55)に半田により接続し、さらにリード(53)の他端を主基板(51)の導体パターン(51a,55)に半田により接続して主基板(51)と放熱基板(52)との間に架け渡すことにより、主基板(51)と放熱基板(52)とが固定されると共に、主基板(51)に搭載された主回路と放熱基板(52)に搭載されたパワー回路とが電気的に接続される。
【0065】
−実施形態1の効果−
以上より、上記電力変換装置(30)によれば、放熱基板(52)の第2面(52b)にパワー半導体チップ(50)を実装する一方、第1面(52a)に冷却管(23a)を取り付ける凹溝(52c)を形成することとして、パワー半導体チップ(50)が実装される基板と冷却管(23a)が取り付けられる冷却器とを1つの部材によって構成することとした。そのため、実装基板と冷却器とを別部材によって構成した場合に比べてパワー半導体チップ(50)と冷却管(23a)との接触熱抵抗を大幅に低減することができる。よって、冷却管(23a)内を流通する冷却用流体によってパワー半導体チップ(50)を効率よく冷却することができる。また、実装基板と冷却器とを1つの部材によって構成したため、これらの間にサーマルグリスを塗布する必要がない。そのため、電力変換装置(30)の組立性を改善することができる。さらに、実装基板と冷却器とを1つの部材によって構成したため、従来の電力変換装置のように、パワー半導体チップ(50)が実装された基板と冷却器との間に放熱板が介在しない。そのため、電力変換装置(30)の重量及びコストを低減することができる。
【0066】
ところで、上記電力変換装置(30)では、リード(53)によって、主回路が形成された主基板(51)に、パワー半導体チップ(50)が実装された放熱基板(52)を固定するだけで容易に電力変換装置を形成することができる。このように放熱基板(52)を主基板(51)と別部材によって構成してリード(53)によって主基板(51)と異なる面に固定することすると、容易に電力変換装置(30)を形成することができるものの、装置が大きくなることが懸念される。
【0067】
しかしながら、上記電力変換装置(30)によれば、上述のように、パワー半導体チップ(50)が実装された基板と冷却器とが1つの放熱基板(52)によって構成されてその間に放熱板が介在していないため、パワー半導体チップ(50)と冷却器とを含む冷却構造体を従来よりも小さく形成することができる。
【0068】
また、上記電力変換装置(30)によれば、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する固定部材(53)を、主回路とパワー回路とを電気的に接続するリードによって構成することとした。そのため、固定部材を主回路とパワー回路とを電気的に接続する電気接続部材として兼用することができる。つまり、1つの部材で主基板(51)と放熱基板(52)の固定と主回路とパワー回路との電気接続を行うことができる。従って、部品点数を低減して電力変換装置の構成を容易化することができると共に、組み立て工数を低減することができる。
【0069】
また、上記電力変換装置(30)によれば、リードによって主基板(51)と放熱基板(52)とを固定すると共に主回路とパワー回路とを電気的に接続することとすることにより、電気接続部材を兼用する固定部材(53)を容易に構成することができる。
【0070】
また、上記空気調和装置(1)では、圧縮機(11)のモータ(18)に電力を供給する手段として上記電力変換装置(30)を用い、冷媒回路(10)の冷媒を利用して電力変換装置(30)のパワー半導体チップ(50)を冷却することとした。従って、パワー半導体チップ(50)を冷却する冷却手段を有する電力変換装置(30)を備えた空気調和装置(1)において、パワー半導体チップの冷却効率の向上と電力変換装置の重量及びコストの低減を図ることができる。
【0071】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る空気調和装置(1)は、電力変換装置(30)の構成を一部変更したものである。図4に示すように、電力変換装置(30)の主基板(51)と放熱基板(52)との取り付け構造が実施形態1と異なる。
【0072】
実施形態2では、主基板(51)に開口(51b)が形成されている。そして、主基板(51)と放熱基板(52)とは、該放熱基板(52)に実装された各パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が主基板(51)の開口(51b)内に位置するように固定されている。また、実施形態2では、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する固定部材(53)が、半田によって構成されている。また、固定部材(53)を構成する半田は、主基板(51)の下面に形成されて主回路の一部を構成する導体パターン(51a)と放熱基板(52)の第2面(52b)の絶縁層(54)上に形成されてパワー回路の一部を構成する導体パターン(55)とを接続することにより、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定すると共に、主基板(51)に形成された主回路と放熱基板(52)に形成されたパワー回路とを電気的に接続している。
【0073】
〈電力変換装置の製造方法〉
実施形態2では、実施形態1と同様にして、主基板(51)上に主回路を形成し、その後、主回路を構成する種々の電気部品を導体パターン(51a)上に半田実装する。一方、放熱基板(52)側では、実施形態1と同様にして、第2面(52b)に絶縁層(54)を形成し、該絶縁層(54)上に導体パターン(55)を形成する。
【0074】
放熱基板(52)に導体パターン(55)を形成した後、複数のパワー半導体チップ(50)を導体パターン(55)上に半田実装する際に、主基板(51)の下面に形成された導体パターン(51a)と放熱基板(52)の第2面(52b)の絶縁層(54)上に形成された導体パターン(55)とを半田(53)によって接続する。これにより、半田(53)によって主基板(51)と放熱基板(52)とが固定されると共に、主基板(51)に形成された主回路と放熱基板(52)に形成されたパワー回路とが電気的に接続される。なお、このとき、主基板(51)の開口(51b)内に各パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が位置するように主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する。
【0075】
このようにして、パワー半導体チップ(50)を導体パターン(55)上に半田実装する際に、半田(53)によって主基板(51)の下面の導体パターン(51a)と放熱基板(52)の第2面(52b)の絶縁層(54)上の導体パターン(55)とを接続することにより、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定すると共に主回路とパワー回路とを電気的に接続する。このように、実施形態2では、1つの半田付け工程において、放熱基板(52)の主基板(51)への固定と、主基板(51)と放熱基板(52)の電気接続とを行うことができる。
【0076】
上記半田工程の後、ワイヤ(56)によってパワー半導体チップ(50)どうし又はパワー半導体チップ(50)と導体パターン(55)とを電気的に接続して放熱基板(52)の絶縁層(54)上にパワー回路を形成する。その後、封止材(57)によってパワー回路のパワー半導体チップ(50)及びワイヤ(56)を封止する。
【0077】
−実施形態2の効果−
以上より、実施形態2によれば、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する固定部材を、主基板(51)に設けられた主回路の一部を構成する導体パターン(51a)と放熱基板(52)に設けられたパワー回路の一部を構成する導体パターン(55)とを電気的に接続する半田(53)によって構成することとした。そのため、固定部材を主回路と上記パワー回路とを電気的に接続する接続手段として兼用することができる。従って、電力変換装置(30)の部品点数を低減することができ、電力変換装置(30)の構成を容易化することができる。また、パワー半導体チップ(50)の半田付けと同時に主基板(51)と放熱基板(52)とを半田付けすることができるため、電力変換装置(30)の組み立て工数を低減することもできる。
【0078】
また、実施形態2によれば、主基板(51)に開口(51b)を形成し、各パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が開口(51b)内に位置するように主基板(51)と放熱基板(52)とを固定することにより、放熱基板(52)を主基板(51)と別体に構成することによる装置の大型化を最低限度に抑制することができる。
【0079】
《発明の実施形態3》
実施形態3に係る空気調和装置(1)は、電力変換装置(30)の構成を一部変更したものである。図5に示すように、電力変換装置(30)の主基板(51)と放熱基板(52)との取り付け構造が実施形態1と異なる。
【0080】
実施形態3では、実施形態2と同様に、主基板(51)に開口(51b)が形成されている。そして、主基板(51)と放熱基板(52)とは、該放熱基板(52)に実装された各パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が主基板(51)の開口(51b)内に位置するように固定されている。また、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する固定部材(53)が、接着剤によって構成されている。具体的には、主基板(51)の下面と放熱基板(52)の上面とを接着剤によって接着させることにより、主基板(51)と放熱基板(52)とが固定されている。さらに、主基板(51)に形成された主回路と放熱基板(52)の第2面(52b)の絶縁層(54)上に形成されたパワー回路とが、ワイヤ(61)によって電気的に接続されている。具体的には、主基板(51)の上面に形成されて主回路の一部を構成する導体パターン(51a)と放熱基板(52)の第2面(52b)の絶縁層(54)上に形成されてパワー回路の一部を構成する導体パターン(55)及びパワー半導体チップ(50)とがそれぞれワイヤ(61)によって電気的に接続されている。
【0081】
〈電力変換装置の製造方法〉
実施形態3では、実施形態1と同様にして、主基板(51)上に主回路を形成し、その後、主回路を構成する種々の電気部品を導体パターン(51a)上に半田実装する。一方、放熱基板(52)側では、実施形態1と同様にして、第2面(52b)に絶縁層(54)を形成し、該絶縁層(54)上に導体パターン(55)を形成し、複数のパワー半導体チップ(50)を導体パターン(55)上に半田実装する。
【0082】
放熱基板(52)にパワー半導体チップ(50)を実装した後、ワイヤボンディングによってパワー回路を形成する前に、接着剤によって主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する。このとき、主基板(51)の開口(51b)内に各パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が位置するように主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する。
【0083】
このようにして、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定した後、パワー半導体チップ(50)どうし又はパワー半導体チップ(50)と導体パターン(55)とをワイヤ(56)によって電気的に接続して放熱基板(52)の絶縁層(54)上にパワー回路を形成する。そして、その際に、ワイヤ(61)によって主基板(51)の導体パターン(51a)と放熱基板(52)の導体パターン(55)とパワー半導体チップ(50)とを電気的に接続することにより、主回路とパワー回路とを電気的に接続する。このように、実施形態3では、1つのワイヤボンディング工程において、放熱基板(52)におけるパワー回路の形成と、主回路とパワー回路との電気接続とを行うことができる。
【0084】
上記ワイヤボンディング工程の後、封止材(57)によってパワー回路のパワー半導体チップ(50)とワイヤ(56,61)とを封止する。
【0085】
−実施形態3の効果−
以上より、実施形態3によれば、接着剤によって主基板(51)と放熱基板(52)とを固定することとしたため、主基板(51)及び放熱基板(52)に何ら細工を施すことなく容易に固定作業を行うことができる。また、主基板(51)に開口(51b)を形成し、パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が開口(51b)内に位置するように主基板(51)と放熱基板(52)とを固定することにより、放熱基板(52)を主基板(51)と別体に構成することによる装置の大型化を最低限度に抑制することができる。また、通常、パワー半導体チップ(50)を電気回路に組み込む際には、ワイヤ等による配線作業が必要となる。そこで、上述のように、主回路とパワー回路とを電気的に接続する接続手段をワイヤ(61)によって構成することにより、放熱基板(52)におけるパワー回路の形成と、主基板(51)の主回路と放熱基板(52)のパワー回路との電気接続とをまとめて1つのワイヤボンディング工程において行うことができる。従って、電力変換装置(30)の組み立て工数を低減することができる。
【0086】
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0087】
上記実施形態1では、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定すると共に、主基板(51)の主回路と放熱基板(52)のパワー回路とを電気的に接続する固定部材(53)として導電性材料からなるリードを用いていたが、該リードの代わりに導電性材料からなるハーネスを用いることとしてもよい。このようにハーネスを用いることとしても実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0088】
また、上記実施形態3では、主基板(51)と放熱基板(52)とを固定する固定部材(53)を、接着剤によって構成していたが、接着剤の代わりにネジ部材を固定部材(53)として締結することによって主基板(51)と放熱基板(52)とを固定することとしてもよい。このようにしても主基板(51)と放熱基板(52)とを容易に固定することができる。
【0089】
また、上記実施形態3では、放熱基板(52)に実装されたパワー半導体チップ(50)どうし又はパワー半導体チップ(50)と導体パターン(55)とをワイヤ(56)によって電気的に接続してパワー回路を形成し、主基板(51)の主回路と放熱基板(52)のパワー回路とをワイヤ(61)によって電気的に接続することとしていた。しかし、放熱基板(52)のパワー回路の形成、及び主基板(51)の主回路と放熱基板(52)のパワー回路との電気接続は、ワイヤに限られず、その他にリボンやリードフレーム等を用いることが可能である。リボンやリードフレーム等を用いた場合であっても、上記実施形態3と同様の効果を奏することができる。
【0090】
また、上記各実施形態において、放熱基板(52)は扁平な板状に形成されていたが、凹溝が形成された部分以外の部分が薄肉状に形成されていてもよい。
【0091】
また、上記各実施形態において、放熱基板(52)の導体パターン(55)とパワー半導体チップ(50)との間にヒートスプレッダを設けることとしてもよい。
【0092】
上記冷却管(23a)の冷媒回路(10)における設置位置は上記実施形態のものに限られない。パワー半導体チップ(50)を冷却可能な温度の冷媒が流通する箇所であればいかなる箇所であってもよい。
【0093】
また、本発明に係る冷凍装置は、上記空気調和装置に限られない。例えば、空冷式の熱交換器の代わりに水冷式の熱交換器を備えた給湯装置や冷却装置等であってもよい。
【0094】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明は、パワー半導体チップを有する電力変換装置及びそれを備えた冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 空気調和装置(冷凍装置)
10 冷媒回路
18 モータ(電気機器)
23a 冷却管
30 電力変換装置
50 パワー半導体チップ
51 主基板
51a 導体パターン(第1導体パターン)
51b 開口
52 放熱基板
52a 第1面(裏面)
52b 第2面(表面)
52c 凹溝
53 固定部材
54 絶縁層
55 導体パターン(第2導体パターン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体チップ(50)と、該パワー半導体チップ(50)が接続される主回路が形成された主基板(51)とを備えた電力変換装置であって、
表面(52b)に絶縁層(54)を介して上記パワー半導体チップ(50)が実装され、裏面(52a)に冷却用流体が流通する冷却管(23a)が嵌め込まれる凹溝(52c)が形成されると共に、上記主基板(51)とは別部材で形成された放熱基板(52)と、
上記放熱基板(52)が上記主基板(51)と異なる面に位置するように上記放熱基板(52)を主基板(51)に固定する固定部材(53)とを備えている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記放熱基板(52)には、上記パワー半導体チップ(50)を有するパワー回路が形成される一方、
上記固定部材(53)は、上記主回路と上記パワー回路とを電気的に接続している
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記固定部材(53)は、リード又はハーネスによって構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項2において、
上記主基板(51)には開口(51b)が形成され、
上記固定部材(53)は、上記主基板(51)に設けられて上記主回路の一部を構成する第1導体パターン(51a)と上記放熱基板(52)に設けられて上記パワー回路の一部を構成する第2導体パターン(55)とを電気的に接続する半田によって構成され、上記パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が上記開口(51b)内に位置するように上記放熱基板(52)と上記主基板(51)とを固定している
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記主基板(51)には開口(51b)が形成され、
上記固定部材(53)は、上記パワー半導体チップ(50)の少なくとも一部が上記開口(51b)内に位置するように上記放熱基板(52)と上記主基板(51)とを接触させて固定するネジ部材又は接着剤であり、
上記放熱基板(52)には、上記パワー半導体チップ(50)を有するパワー回路が形成される一方、
上記主回路と上記パワー回路とは、ワイヤ、リボン、又はリードフレームによって電気的に接続されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)と、
上記冷媒回路(10)において冷凍サイクルを実行させるための電気機器(18)に電力を供給する請求項1乃至5のいずれか1つの電力変換装置(30)とを備え、
上記電力変換装置(30)の上記放熱基板(52)の上記凹溝(52c)には、上記冷媒回路(10)の冷媒配管が上記冷却管(23a)として嵌め込まれている
ことを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−73949(P2013−73949A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209619(P2011−209619)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】