説明

電力線測定器

【課題】OFDM信号を基準信号として発振部から被測定電力線を介して送信し、その信号を測定部で受信したときの各サブキャリアのS/N値に基づいて当該被測定電力線の伝送路特性と使用可能な伝送速度を演算して推定することにより、伝送路特性と使用可能な伝送速度が容易に測定できる電力線測定器を提供する。
【解決手段】この電力線測定器100は、大きく分けて基準信号として広帯域OFDM信号を生成して被測定電力線9にOFDM信号を注入する発振部1と、被測定電力線9を介して送信されたOFDM信号を受信して各サブキャリアのS/N値に応じてモデムの使用帯域を演算する測定部10と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線測定器に関し、さらに詳しくは、被測定電力線の各周波数のS/N値に基づいて当該被測定電力線の伝送速度を予測する電力線測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力線を用いた高周波信号の伝送では、通信ケーブルのように送信側と受信側が1対1で直接結ばれることはなく、伝送路の分岐やトランス、分電盤、電力量計、またはコンセントに接続される家電機器、信号の注入、抽出方法やその設置場所によって、減衰やインピーダンスの変化が周波数に応じて生じてくる。そして、これらの組み合わせは無数にあるため、電力線搬送装置には伝送路の状況に応じた回線設計と現地確認が不可欠である。
【0003】
また、汎用の測定器を使用して伝送路の特性を測定する場合、ネットワークアナライザを使用するが、1台の機器で送信側と受信側を共用するため、どちらかの信号を同軸ケーブルで対向箇所まで引き伸ばす必要がある。図7は従来のネットワークアナライザを用いた測定システムの構成図である。このシステムは、ネットワークアナライザ50と、そこから送信される信号をカップリングユニット54を介して電力線55に注入する注入器51と、カップリングユニット53を介して電力線55から信号を抽出する抽出器52と、を備えて構成される。そしてこのシステムでは、1台のネットワークアナライザ50で送信側と受信側を共用するため、例えば、送信側の信号を同軸ケーブル56で対向箇所まで引き伸ばす必要がある。
【0004】
また、同様の問題を克服しようとしている先行技術として、特許文献1には、同期用にFM変調をかけたパイロットチャネル(周波数)を設けて復調結果からタイミング信号を生成させる伝送路特性測定装置について開示されている。
また特許文献2には、任意波形発生器やデジタルオシロスコープを用いた方式について開示されている。
【特許文献1】特開平8−163010号公報
【特許文献2】特開2004−354155公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のネットワークアナライザを用いた測定システムでは、同軸ケーブル56の長さによる測定範囲の制約や、増幅器が必要になるなど測定機材の規模が大きくなってしまい、アクセス系商用サービスの大規模設置時の使用には適していないといった問題がある。
また、現在、電力線の伝送路を簡易に測定する専用機器がないため、配線図や設置図面からおよその回路設計を実施し、最適な周波数を現地でスペクトラムアナライザや電力線搬送機器を入れ替え、且つ各種の設定を切り替えて確認しながら設置しているため、設置作業に多大の時間を要するといった問題がある。
【0006】
また、特許文献1に開示されている従来技術は、電力線の場合、分岐や家電製品の接続により様々な周波数特性によりパイロット信号が受信側に届かないことも予想され電力線には不向きである。
また、特許文献2に開示されている従来技術は、高精度の測定を目的としているため、フィールドで使用するための簡便さがなく、電力線搬送装置の伝送特性が測定できないなどの問題がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑み、OFDM信号を基準信号として発振部から被測定電力線を介して送信し、その信号を測定部で受信したときの各サブキャリアのS/N値に基づいて当該被測定電力線の伝送路特性と使用可能な伝送速度を演算して推定することにより、伝送路特性と使用可能な伝送速度が容易に測定できる電力線測定器を提供することを目的とする。
また、他の目的は、発振部と測定部を小型、軽量に構成することにより、携帯に適した形状にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、電力線伝送に使用される中継器及びモデムを設置する際に、電力線のS/N値に基づいて前記モデムの適正な使用帯域を判断する情報を提供する電力線測定器であって、基準信号として所定の周波数帯域に複数のサブキャリアを有するOFDM信号を生成して被測定電力線に該OFDM信号を注入する発振部と、前記被測定電力線を介して送信された前記OFDM信号を受信して各サブキャリアのS/N値に応じて前記モデムの使用帯域を演算する測定部と、を備えたことを特徴とする。
本発明の測定器の基本的な構成は、発振部と測定部であり、その間に被測定電力線を接続する。そして発振部からOFDM信号を電力線に送信して、測定部により受信したOFDM信号のS/N値に応じてモデムの使用帯域を演算するものである。尚、OFDM(orthogonal frequency division multiplex)信号とは、直交周波数分割多重方式の略であり、多数の搬送波を隣り合う搬送波間で直交させ、且つ搬送波の帯域を一部重ね合わせて周波数帯域を有効利用する方式である。
【0009】
請求項2は、前記発振部は、少なくとも前記OFDM信号を生成するOFDM変調部と、前記被測定電力線に前記OFDM信号を注入する発振側カップリングユニットと、該発振側カップリングユニットに対応するインターフェースを選択する発振側インターフェース変換回路と、を備え、前記測定部は、前記被測定電力線から前記OFDM信号を抽出する測定側カップリングユニットと、該測定側カップリングユニットに対応するインターフェースを選択する測定側インターフェース変換回路と、前記発振部から受信したOFDM信号の周波数成分を解析する周波数解析部と、測定に必要な波形データを記憶する記憶部と、前記発振部から受信したOFDM信号及び前記記憶部に記憶されている波形データに基づいて、当該被測定電力線の伝送速度を演算する演算部と、該演算部による演算結果を表示する表示部と、制御部と、を備えたことを特徴とする。
発振部からはOFDM信号を変調、増幅してカップリングユニットを介して電力線に注入する。また、カップリングユニットを介して電力線から受信したOFDM信号の各周波数のピーク値を記憶する。そして予め記憶されたノイズ信号と受信したピーク値を演算部により演算して、S/N値を求め、そのS/N値で利用可能な変調値に基づいて各周波数の伝送速度を演算する。
【0010】
請求項3は、前記制御部は、前記記憶部に少なくとも前記発振部の送信スペクトラム、前記被測定電力線に存在する雑音スペクトラム、前記発振部から受信したOFDM信号の最大値、サブキャリアの本数、周波数、変調度、及び許容される誤り率から算出された変調度の切り替わりS/N値のデータを記憶することを特徴とする。
演算部が各種の演算を行うためには、基となる基準信号を記憶しておく必要がある。例えば、伝送路特性を演算するためには、予め発振部の送信スペクトラムを記憶しておき、電力線により減衰した受信スペクトラムとの差を演算して伝送路特性を求める。また、発振部からOFDM信号を送信しないときの電力線の雑音スペクトラムを記憶しておくことにより、各周波数のS/N値を算出することができる。
【0011】
請求項4は、前記制御部は、伝送路特性の表示操作が行われると、前記記憶部に記憶された送信スペクトラムと前記発振部から受信したOFDM信号の最大値との差分を演算し、その演算結果を前記表示部に表示するように前記演算部を制御することを特徴とする。
電力線の伝送路特性は、全く減衰がなければ発振側から送信された送信スペクトラムと同じになる。しかし、実際には全く減衰が無いということはなく、各周波数に応じて減衰が生じる。そこで、操作部から伝送路特性の表示操作が行われると、制御部は、記憶部に記憶された基準となる送信スペクトラムと発振部から受信したOFDM信号の最大値との差分を演算して、表示部にその結果を表示する。
【0012】
請求項5は、前記制御部は、S/Nの表示操作が行われると、前記周波数解析部により解析された各周波数のOFDM信号から前記記憶部に記憶された前記雑音スペクトラムを減算し、その演算結果を前記表示部に表示するように前記演算部を制御することを特徴とする。
周波数解析部により解析された各周波数のOFDM信号は記憶部に記憶されている。また、雑音スペクトラムも記憶部に記憶されているので、双方の信号を減算することにより、各周波数のS/N値が演算される。
【0013】
請求項6は、前記制御部は、伝送速度予測の表示操作が行われると、前記周波数解析部により解析された各周波数毎のOFDM信号から前記記憶部に記憶された前記雑音スペクトラムを減算してサブキャリア毎のS/N値を算出し、算出されたS/N値から各サブキャリアで使用可能な変調度を求め、全てのサブキャリアの値を集計し、その演算結果を前記表示部に表示するように前記演算部を制御することを特徴とする。
サブキャリア毎のS/N値が演算されると、各サブキャリアで使用可能な変調度が求まる。例えば、ある周波数では16QAM(4ビット)のデータ伝送が可能であることが求められ、最後に全てのサブキャリアの値を集計して伝送路の伝送速度を推定するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基準信号として広帯域OFDM信号を生成して被測定電力線にこのOFDM信号を注入する発振部と、被測定電力線を介して送信されたOFDM信号を受信して各サブキャリアのS/N値に応じてモデムの使用帯域を演算する測定部と、を備えたので、測定範囲の制約を受けずに伝送路特性と使用可能な伝送速度が容易に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施形態に係る電力線測定器の内部ブロック図である。この電力線測定器100は、大きく分けて基準信号として広帯域OFDM信号を生成して被測定電力線9にOFDM信号を注入する発振部1と、被測定電力線9を介して送信されたOFDM信号を受信して各サブキャリアのS/N値に応じてモデムの使用帯域を演算する測定部10と、を備えて構成される。
【0016】
そして発振部1は、擬似データを発生する擬似データ発生部2と、OFDM信号を生成するOFDM変調部3と、OFDMをアナログ信号に変換するD/A変換器4と、アナログに変換された信号に含まれる不要な高調波を除去するLPF5と、増幅器6と、発振側カップリングユニット8に対応するインターフェースを選択する発振側インターフェース変換回路7と、被測定電力線9にOFDM信号を注入する発振側カップリングユニット8と、を備え、測定部10は、被測定電力線9からOFDM信号を抽出する測定側カップリングユニット11と、測定側カップリングユニット11に対応するインターフェースを選択する測定側インターフェース変換回路12と、増幅器13と、発振部1から受信したOFDM信号の周波数成分を解析する周波数解析部14と、測定に必要な波形データを記憶する記憶部16と、発振部1から受信したOFDM信号及び記憶部16に記憶されている波形データに基づいて、当該被測定電力線9の伝送速度を演算する演算部17と、演算部17による演算結果を表示する表示部19と、表示を指示する操作部18と、測定部全体を制御する制御部15と、を備えて構成されている。尚、本実施形態では、発振側インターフェース変換回路7と測定側インターフェース変換回路12は夫々50Ω平衡側が選択されている。
【0017】
次に図1の電力線測定器の詳細な説明の前に、本発明の概要について説明する。図2は被測定電力線のノイズ特性一例を示す図である。電力線の伝送路としての性能はまちまちである。また、使用している家電品の種類や数により電力線に重畳されるノイズの成分も様々に変化する。例えば、図2(a)の電力線では高い周波数帯域にノイズレベルが高いノイズが存在する(例1)。また、図2(b)では低い周波数帯域と高い周波数帯域の両方にノイズレベルが高いノイズが存在する(例2)。また、図2(c)では全帯域に亘ってノイズレベルが小さいのが解る(このような例は少ない)(例3)。このように電力線によりノイズ特性が様々に異なるものであり、時間によりまた季節によりこれらの特性も変動する。しかし、PLCの場合、モデムのサブキャリアの帯域を何処に設定するかは、電力線のノイズ特性を実際に測定しておかなければ判断することはできない。
そこで図2(a)〜(c)のノイズ特性が測定により予めわかっている場合、モデムの使用帯域を図3のように設定する。即ち、例1の場合、図3(a)に示すように低い周波数帯域のノイズレベルが低いので、この帯域にモデムの使用帯域を設定する(設定A)。例2の場合、図3(b)に示すように中心付近の周波数帯域のノイズレベルが低いので、この帯域にモデムの使用帯域を設定する(設定B)。例3の場合、図3(c)に示すように全体の周波数帯域のノイズレベルが低いので、全帯域にモデムの使用帯域を設定する(設定C)。
【0018】
モデムは、ノイズの多い帯域で通信してもエラーが多くなり、その結果、再送を繰り返すために当該チャネルの伝送速度が低下する。即ち、効率が悪くなり電力を使う割りにデータが少ししか伝送できないといったことが発生する。そこで、理想的には設定Cで伝送することで多くのビットを伝送することができるが、実際には、設定Aや設定Bを電力線の状況に応じて使うことになる。
例えば、設定Aのときの変調度が16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)のとき4ビットのデータが伝送でき、設定Bのときの変調度が128QAMのとき7ビットのデータが伝送でき、設定Cのときの変調度が256QAMのとき8ビットのデータが伝送できる。このように、本発明の電力線測定器は、PLCの中継器(電柱上の装置)とモデム(各家庭装置)とを設置する際に、電力線の伝送路特性とノイズ(S/N)に応じてどの設定を使用するかを事前に判断するための測定器である。
【0019】
図4は本発明の電力線測定器の測定手順を説明する図である。(a)は測定の概略構成図、(b)は送信信号と受信信号の図、(c)はノイズの図である。図4(a)により発振部1と測定部10の間に被測定電力線9が接続されており、説明を簡略化するためにその間には何も介在しないものとする。図4(b)のように発振部1から基準信号である送信信号20(波形A)を被測定電力線9に送信し、被測定電力線9を伝送する間に減衰して測定部10で受信信号21(波形B)を受信する。波形Bは被測定電力線9の伝送特性により、周波数毎のレベルが変動している。ここで、波形Aが予め解っていれば、(波形A)−(波形B)により被測定電力線9の伝送特性が判明する。この特性は、レベルが高く、且つ周波数毎の変動が少ない(フラット)程好ましい。また、図4(c)により発振部1から送信信号をOFFにしたときに、測定部10側で被測定電力線9に存在するノイズ波形22(波形C)を測定しておく。そして(波形B)−(波形C)から各サブキャリアのS/N値が判る。
【0020】
図5は各サブキャリアのS/N値をグラフ化した図である。横軸は周波数、縦軸はS/N値であり、高いほどS/Nが良いことを表している。この図からわかるとおりS/Nが良いサブキャリア(Q点)では、変調の密度を高くすることができ(例えば256QAM)、高い伝送速度を得ることができる。また、S/Nが悪いサブキャリア(P点)では、変調の密度を低くせざるを得ない(例えば16QAM)ため、低い伝送速度しか得られない。従って、全てのサブキャリアの伝送速度を合算することにより、被測定電力線9の伝送速度を推定することができる。
【0021】
図6は本発明の実施形態に係る電力線測定器の測定手順を示すフローチャートである。図1を参照して説明する。予め測定部10の記憶部16には、被測定電力線9に存在する雑音スペクトラムを記憶しておく(S1)。その状態で発振部1からOFDM信号をカップリングユニット8を介して被測定電力線9に注入する(S13)。注入されたOFDM信号は被測定電力線9を伝送してカップリングユニット11を介して抽出される(S2)。測定部10ではスペクトラムアナライザと同様に受信信号を一定時間毎にスイープ受信しており、OFDM信号パターンによるレベル変動による誤差を取り除くため、スイープ毎に各周波数の最大値のみを取り込んで記憶部16に記憶する(S3)。尚、測定周波数ポイントは、伝送路周波数特性を得るには400ポイント以上が望ましい。
【0022】
次に予め発振部1の送信スペクトラムを記憶部16に記憶しておき、測定者が操作部18により伝送路特性の表示操作を行うと(S4でYESのルート)、演算部17により送信スペクトラムと記憶した受信波形の差分を演算し(S5)、その演算結果を表示部19に表示する(S6)。次に測定者が操作部18によりS/Nの表示操作を行うと(S7でYESのルート)、演算部17により各周波数の受信基準信号データから記憶部16に記憶した雑音スペクトラムを減算し(S8)、その演算結果を表示部19に表示する(S9)。次に測定者が操作部18により伝送速度予測の表示操作を行うと(S10でYESのルート)、周波数解析部14により解析された各周波数毎のOFDM信号から記憶部16に記憶された雑音スペクトラムを減算してサブキャリア毎のS/N値を算出し、算出されたS/N値から各サブキャリアで使用可能な変調度を求め、全てのサブキャリアの値を集計し(S11)、その演算結果を表示部19に表示する(S12)。
【0023】
以上の通り本発明によれば、基準信号として広帯域OFDM信号を生成して被測定電力線にこのOFDM信号を注入する発振部1と、被測定電力線9を介して送信されたOFDM信号を受信して各サブキャリアのS/N値に応じてモデムの使用帯域を演算する測定部10と、を備えたので、測定範囲の制約を受けずに伝送路特性と使用可能な伝送速度が容易に測定することができる。
また、発振部1からはOFDM信号を変調、増幅してカップリングユニット8を介して被測定電力線9に注入する。また、カップリングユニット11を介して被測定電力線9から受信したOFDM信号の各周波数のピーク値を記憶し、予め記憶されたノイズ信号と受信したピーク値を演算部17により演算して、S/N値を求め、そのS/N値で利用可能な変調値に基づいて各周波数の伝送速度を演算するので、周波数毎の正確な伝送速度を推定することができる。
【0024】
また、記憶部16に少なくとも発振部1の送信スペクトラム、被測定電力線9に存在する雑音スペクトラム、発振部1から受信したOFDM信号の最大値、サブキャリアの本数、周波数、変調度、及び許容される誤り率から算出された変調度の切り替わりS/N値のデータを記憶するので、測定部10により受信したOFDM信号から容易に演算することができ、且つ後日、波形データを詳細に解析することができる。
また、制御部15は、伝送路特性の表示操作が行われると、記憶部16に記憶された送信スペクトラムと発振部1から受信したOFDM信号の最大値との差分を演算し、その演算結果を表示部19に表示するように演算部17を制御するので、伝送特性をリアルタイムに表示することができる。
【0025】
また、制御部15は、S/Nの表示操作が行われると、周波数解析部14により解析された各周波数のOFDM信号から記憶部16に記憶された雑音スペクトラムを減算し、その演算結果を表示部19に表示するように演算部17を制御するので、サブキャリア毎のS/N値がリアルタイムに表示することができる。
また、制御部15は、伝送速度予測の表示操作が行われると、周波数解析部14により解析された各周波数のOFDM信号から記憶部16に記憶された雑音スペクトラムを減算してサブキャリア毎のS/N値を算出し、算出されたS/N値から各サブキャリアで使用可能な変調度を求め、全てのサブキャリアの値を集計し、その演算結果を表示部19に表示するように演算部17を制御するので、サブキャリア毎の伝送速度がリアルタイムに表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る電力線測定器の内部ブロック図である。
【図2】被測定電力線のノイズ特性の一例を示す図である。
【図3】モデムの使用帯域の設定を説明する図である。
【図4】本発明の電力線測定器の測定手順を説明する図である。
【図5】各サブキャリアのS/N値をグラフ化した図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電力線測定器の測定手順を示すフローチャートである。
【図7】従来のネットワークアナライザを用いた測定システムの構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 発振部、2擬似データ発生部、3 OFDM変調部、4 D/A変換器、5 LPF、6 増幅器、7 発振側インターフェース変換回路、8 発振側カップリングユニット、9 被測定電力線、10 測定部、11 測定側カップリングユニット、12 測定側インターフェース変換回路、13 増幅器、14 周波数解析部、15 制御部、16 記憶部、17 演算部、18 操作部、19 表示部、100 電力線測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線伝送に使用される中継器及びモデムを設置する際に、電力線のS/N値に基づいて前記モデムの適正な使用帯域を判断する情報を提供する電力線測定器であって、
基準信号として所定の周波数帯域に複数のサブキャリアを有するOFDM信号を生成して被測定電力線に該OFDM信号を注入する発振部と、前記被測定電力線を介して送信された前記OFDM信号を受信して各サブキャリアのS/N値に応じて前記モデムの使用帯域を演算する測定部と、を備えたことを特徴とする電力線測定器。
【請求項2】
前記発振部は、少なくとも前記OFDM信号を生成するOFDM変調部と、
前記被測定電力線に前記OFDM信号を注入する発振側カップリングユニットと、該発振側カップリングユニットに対応するインターフェースを選択する発振側インターフェース変換回路と、を備え、
前記測定部は、前記被測定電力線から前記OFDM信号を抽出する測定側カップリングユニットと、
該測定側カップリングユニットに対応するインターフェースを選択する測定側インターフェース変換回路と、
前記発振部から受信したOFDM信号の周波数成分を解析する周波数解析部と、
測定に必要な波形データを記憶する記憶部と、
前記発振部から受信したOFDM信号及び前記記憶部に記憶されている波形データに基づいて、当該被測定電力線の伝送速度を演算する演算部と、
該演算部による演算結果を表示する表示部と、
制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力線測定器。
【請求項3】
前記制御部は、前記記憶部に少なくとも前記発振部の送信スペクトラム、前記被測定電力線に存在する雑音スペクトラム、前記発振部から受信したOFDM信号の最大値、サブキャリアの本数、周波数、変調度、及び許容される誤り率から算出された変調度の切り替わりS/N値のデータを記憶することを特徴とする請求項2に記載の電力線測定器。
【請求項4】
前記制御部は、伝送路特性の表示操作が行われると、前記記憶部に記憶された送信スペクトラムと前記発振部から受信したOFDM信号の最大値との差分を演算し、その演算結果を前記表示部に表示するように前記演算部を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の電力線測定器。
【請求項5】
前記制御部は、S/Nの表示操作が行われると、前記周波数解析部により解析された各周波数のOFDM信号から前記記憶部に記憶された前記雑音スペクトラムを減算し、その演算結果を前記表示部に表示するように前記演算部を制御することを特徴とする請求項2、3又は4に記載の電力線測定器。
【請求項6】
前記制御部は、伝送速度予測の表示操作が行われると、前記周波数解析部により解析された各周波数毎のOFDM信号から前記記憶部に記憶された前記雑音スペクトラムを減算してサブキャリア毎のS/N値を算出し、算出されたS/N値から各サブキャリアで使用可能な変調度を求め、全てのサブキャリアの値を集計し、その演算結果を前記表示部に表示するように前記演算部を制御することを特徴とする請求項2、3、4又は5に記載の電力線測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−318229(P2007−318229A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142879(P2006−142879)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】