説明

電動アシスト台車

【課題】機械的により簡素な機構で作業者の押し引き力を検知し、前進及び後進のみならず電動アシスト台車の左右の旋回曲折動作をもアシストできる電動アシスト台車を提供する。
【解決手段】電動アシスト台車1は、左右一対の後輪20L、Rに補助動力を与える左右の電動アシスト用駆動手段10L、Rと、台車部5と握りバー31との間に介在された左右の変形回復性部材としてのプレート部材33L、Rと、左右のプレート部材の各々に取り付けられた左右の歪みゲージセンサー36L、Rと、歪みゲージセンサーの出力信号に応じて左右のモーターを各々制御するマイクロコンピュータとを備える。マイクロコンピュータは、歪みゲージセンサーの出力信号の差が所定の範囲内にある場合は、左右のモーターの回転速度を同一に制御し、出力差が所定の範囲を超えた場合は、左右のモーターの回転速度を異ならせる制御を行って旋回ないし曲折のアシスト制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト台車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場などで使用する台車は、重量のある荷物を載せるため、運搬開始時に大きな力が必要となり、作業者にとっては、大変な重労働となる。この問題に鑑みて、台車においても、所謂電動アシスト自転車と同様に、作業者の力を検出し、人力に応じた電動力で補助する電動アシスト台車が開発された。
【0003】
例えば、特開平10−109647号には、通常の台車に走行力を付勢するアシスト装置を備えた電動アシスト台車1が開示されている。この電動アシスト台車1は、操作トルク情報を入力する操作トルク情報入力手段7aと、操作トルク情報を検出する操作トルク情報検出手段9と、検出された操作トルク情報に応じて走行力を出力する走行力出力部11と、を備える。
【0004】
操作トルク情報入力手段7aは、一端部が支持部14により回動自在に支持され、一対のバネ部材23により左右両側から挟持されている。操作トルク情報入力手段7aにトルクが入力されていないときは、操作トルク情報入力手段7aは、略中央に位置決めされ、入力されたトルクの大きさに応じて操作トルク情報入力手段7aの回転位置が定まる。
【0005】
操作トルク情報検出手段9には、位置検出用のポテンショメータ8が設けられている。ポテンショメータ8から延在する回転可能アームの突起部は、操作トルク情報入力手段7aの長穴14aに係合しており、これによって操作トルク情報入力手段7aの回転位置、即ち、入力されたトルクを検出することができる。
【0006】
電動アシスト台車の走行方向を変更する場合には、使用者がアシスト装置5を方向変更部材19を中心に手動で回動させる。これにより、駆動輪14自体の方向が変更され、電動アシスト台車1の進行方向を変更することができる。
【0007】
また、特開平11−124037号には、手押し式の一輪運搬車又は二輪運搬車にモーター及びバッテリを取り付け、人手による操作力に応じてモーターで補助動力を発生させる電動補助運搬車が開示されている。この電動補助運搬車は、車体フレームから後上方に延びる左右の操作ハンドル7L、7Rのいずれかの端部に、スライド式グリップ11Rと、このグリップを操作者側へ押し出す弾性部材47と、車体フレームへ向かうグリップの移動量を検知する移動量検知部62と、該移動量検知部の出力に応じてモーター5を制御する制御部と、を備える。
【特許文献1】特開平10−109647号
【特許文献2】特開平11−124037号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術では、作業者の力を検出する手段が、機械的に大掛かりなものであり、それにも係わらず電動アシスト台車の操舵は、依然として作業者による力のみに任せられていた。
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みなされたもので、機械的により簡素な機構で作業者の力を検知することができる電動アシスト台車を提供することを目的とする。
【0010】
更に、本発明は、前進及び後進のみならず電動アシスト台車の左右の旋回動作をもアシストできる、電動アシスト台車を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、少なくとも左右一対の車輪を有する電動アシスト台車であって、左右一対の車輪に補助動力を与えるため各々設けられた左右の駆動手段と、台車部分又は車輪とハンドル操作部分との間に介在された左右の変形回復性部材と、左右の変形回復性部材の各々に取り付けられた左右の歪み検出手段と、左右の歪み検出手段の出力信号に応じて左右の駆動手段を個別に制御する制御手段と、を備える。
【0012】
本発明によれば、制御手段が左右の歪み検出手段の出力信号に応じて左右の駆動手段を各々制御するので、台車の前進、後進、及び、左右の旋回のいずれの動作を的確にアシストすることができる。例えば、左右の変形回復性部材は、使用者の左右の旋回ないし曲折の操作に応じて、各々異なる量だけ歪むので、左右の歪み検出手段の出力信号は、左右で異なっている。左右の駆動手段の回転速度を異なる歪みを示す出力信号に応じて互いに異ならせて回転制御することで、旋回アシスト動作が可能となる。また、使用者の前進及び後進の操作に応じて変形回復性部材の歪む方向が変化し、出力信号も変化するため、これに応じて、駆動手段を正転又は逆転させれば、前進又は後進アシスト動作が可能となる。即ち、制御手段は、左右の歪み検出手段の出力信号が変形回復性部材の押し引きのいずれを示すかに応じて、電動アシスト台車を前進させる回転方向及び後進させる回転方向のいずれかに左右の駆動手段を個別に制御する。
【0013】
好ましい態様では、制御手段は、左右の歪み検出手段の出力信号の差が所定の範囲内にある場合は、左右の駆動手段の回転速度を同一に制御する。これによって、頻繁な旋回アシスト動作を回避して、より安定した前進又は後進アシスト動作が可能となる。逆に、左右の歪み検出手段の出力信号の差が所定の範囲を超えた場合は、制御手段は、左右の駆動手段を、左右の歪み検出手段の出力信号の各々に応じた回転速度となるように各々制御するのが好ましい。
【0014】
変形回復性部材は、力が加えられると、例えば伸び縮み変形、反り曲がり変形、及び、凹凸変形のうち少なくともいずれかで変形する部材であり、力の印加が無くなると、元の形状に戻る特性を有する。具体的には、変形回復性部材は、バネ性部材、弾性体部材及びプレート部材などが挙げられ、望ましい態様としては、直方体形状の金属プレートである。また、歪み検出手段として、例えば、歪みゲージセンサー、位置センサー、応力センサー、圧電抵抗センサー及び電気抵抗センサーなどが挙げられる。
【0015】
上記態様では、電動アシスト台車は、前輪を更に有し、ハンドル操作部分が台車部分の後方に取り付けられ、左右一対の車輪が後輪であってもよい。なお、この前輪は、一輪、二輪のいずれでもよい。
【0016】
本発明の別の態様は、少なくとも1個の車輪を有する電動アシスト台車であって、車輪に補助動力を与えるため設けられた少なくとも1個の駆動手段と、台車部分又は車輪とハンドル操作部分との間に介在された少なくとも1個の変形回復性部材と、変形回復性部材の歪みを検出するための少なくとも1個の歪み検出手段と、該歪み検出手段により検出された変形回復性部材の歪みに応じて駆動手段を制御する制御手段と、を備える。
【0017】
この態様の電動アシスト台車は、左右一対の車輪を有するものに限定されない。例えば、車輪が1個であり、一輪車の台車として構成されてもよい。勿論、車輪が3個で三輪車の台車として構成されてもよく、更に、これ以外の数の車輪を有していてもよい。これによって、駆動手段も、左右の車輪に各々設ける必要はなく、少なくとも1個の車輪に一つ設け、或いは、3個以上の車輪に各々設けられていてもよい。更に、この態様の電動アシスト台車は、変形回復性部材を、左右一対ずつ設ける必要はなく、少なくとも1個、設ければよい。歪み検出手段についても同様である。例えば、前進、後進及び左右の旋回の動作等の電動アシスト台車に対する動作によりもたらされる変形回復性部材の変形の差異を互いに識別することができる限り、任意数の変形回復性部材、任意数の歪み検出手段並びに、変形回復性部材の任意の取り付け態様及び歪み検出手段の任意の配置態様を用いることができる。
【0018】
上記態様では、制御手段は、変形回復性部材の歪みが電動アシスト台車に対する前進及び後進のいずれの動作を示すかに従って駆動手段を前進制御及び後進制御する。
【0019】
台車を旋回動作させるための1つの好ましい態様では、少なくとも1個の車輪を左右に旋回又は曲折動作させるための旋回駆動手段を有し、制御手段は、変形回復性部材の歪みが電動アシスト台車に対する左右のいずれの旋回又は曲折動作を示すかに従って旋回駆動手段を制御する。
【0020】
台車を旋回動作させるための別の好ましい態様では、車輪は、左右側に少なくとも1個ずつ設けられ、駆動手段は、左右の車輪の各々に補助動力を与えるように設けられ、制御手段は、変形回復性部材の歪みが電動アシスト台車に対する左右のいずれの旋回又は曲折動作を示すかに従って駆動手段の左右の回転速度を異ならせて制御する。この態様では、好ましくは、制御手段は、旋回又は曲折動作を示す変形回復性部材の歪みが所定の範囲内にある場合は、駆動手段の各々の回転速度を同一に制御し、旋回又は曲折動作を示す変形回復性部材の歪みが所定の範囲を超えた場合は、駆動手段の各々を、異なる回転速度となるように制御する。
【0021】
駆動手段の回転速度は、歪み検出手段の出力信号の大きさに基づいて決定され、駆動手段の回転方向は、歪み検出手段の出力信号の符号に基づいて決定されてもよい。
【0022】
駆動手段は、一例として、モーターと、該モーターの出力を伝達するためのモーターギアと、車輪と共に同軸で回転するように取り付けられた車輪ギアと、モーターギアと車輪ギアとの間に設けられた、チェーン、ベルト又はギア等の駆動伝達手段と、を備える。
【0023】
本発明の他の目的及び利点は、以下で説明される本発明の好ましい実施例を参酌することによって、より明瞭に理解されよう。
【実施例】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
【0025】
図1(a)、(b)には、本発明の一実施例に係る電動アシスト台車1の後面図及び側面図が各々示されている。図示のように、電動アシスト台車1は、荷物を載せるための台車部5と、左右一対の前輪22L、Rと、左右一対の後輪20L、Rと、使用者が持つところのハンドル操作部30と、を備える。この電動アシスト台車1は、一例として、重量の大きいダンベルを運搬するためのものとして示されており、下側ダンベルキャリア6と、上側ダンベルキャリア8と、が台車部5に設けられている。下側ダンベルキャリア6と、上側ダンベルキャリア8とは、各々、複数対のリッジ24、25を有し、これらのリッジの間に形成された多数の溝の間にダンベル26、28が各々配置可能となっている。
【0026】
左右一対の後輪20L、Rの軸方向内側には、電動アシスト用駆動手段10L、Rが台車部5の底面に各々取り付けられている。電動アシスト用駆動手段10L、Rは、各々モーター37L、R(図3参照)を収容しており、該モーター37L、Rの出力を伝達するためのモーターギア12L、Rが電動アシスト用駆動手段10L、Rの外部に突出するように設けられている。電動アシスト用駆動手段10L、Rは、更に、モーター37L、R(図3参照)とモーターギア12L、Rとの間に、減速ギアを有していてもよい。これらのモーターギア12L、Rと、後輪20L、Rと共に同軸で回転するように取り付けられた車輪ギア18L、Rとの間には、駆動伝達手段の一例としてのチェーン16L、Rが各々張設されている。これによって、モーター37L、Rの補助動力を後輪20L、Rに各々独立に伝達することができる。
【0027】
また、台車部5の底部には、バッテリーブラケット13が取り付けられており、該バッテリーブラケット13には、バッテリー17が着脱自在の態様で装着されている。モーター37L、Rは、このバッテリー17によって電力供給されるように配線がなされている。
【0028】
図2に、ハンドル操作部30の上面図を示す。ハンドル操作部30は、台車の使用者によって把持されるところの握りバー31と、握りバー31の左右両端部を各々支持する一対の支持バー32L、Rと、台車部5の後方から斜め方向に延在する台車バー35L、Rと、支持バー32L、Rと台車バー35L、Rとの間をボルト40を介して接続された変形回復性部材の一例としての一対のプレート部材33L、Rと、を備えている。プレート部材33L、Rは、外力に応じて反り曲がり変形されるが、変形回復性を有する。
【0029】
プレート部材33L、Rには、各々、歪み検出手段の一例としての歪みゲージセンサー36L、Rが取り付けられている。歪みゲージセンサー36は、プレート部材33の歪みに応じた信号を出力する。即ち、歪みゲージセンサー36の出力信号の大きさは、プレート部材33の歪み量、即ち使用者の押し引き力の大きさに関連して増大する。更に、その出力信号のプラスマイナスの符号は、プレート部材33の歪みの種類、即ち、使用者が台車を押しているか又は引いているかを示している。これによって、例えば、歪みゲージセンサーの出力信号がプラスの符号を持っているとき、使用者が台車を前方に押してプレート部材33が収縮する方向に歪んでいると判定でき、その逆に出力信号がマイナスの符号を持っているとき、使用者が台車を後方に引いてプレート部材33が伸長する方向に歪んでいると判定できる。
【0030】
ここで、プレート部材の「変形回復性」とは、使用者の握りバー31への押し引き力によりもたらされたプレート部材が歪みゲージセンサーにより検知できる程度に歪み、押し引き力が無くなると、元の形状に戻る特性をいう。この特性を有している限り、変形回復性部材は、任意好適の材料及び形状で、バネ性部材、弾性部材又はプレート部材を用いて作ることができる。好ましくは、変形回復性部材は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料を直方体のプレートに形成することにより作られ、その長辺を台車の前後方向に一致させるように配置される。このように直方体形状にすることにより、左右のプレート部材33L、Rは、左右側の各々における使用者の押し引き力を有効に検知することができる。
【0031】
次に、電動アシスト台車1の制御系の概略が図3に示されている。電動アシスト台車1の制御系は、該台車全体の電子的処理を一括して制御する1個のマイクロコンピュータ14と、PWM制御可能な上述した左右のモーター37L、Rと、マイクロコンピュータ14に直接接続され、左右のモーター37L、Rへの制御信号の各々の電力を増幅する増幅回路15L、Rと、該増幅回路に接続された上述したバッテリー17と、を備えている。
【0032】
マイクロコンピュータ14には、歪みゲージセンサー36L、Rから歪みゲージセンサーの出力信号1、2が入力される。マイクロコンピュータ14は、これらの信号に基づいて、モーター37L、Rの回転速度及び回転方向を各々決定し、各モーターへのPWM指令を各々出力する。ここで、歪みゲージセンサーの出力信号1、2の大きさとモーター37L、Rの回転速度とは、一定の関数関係でマップされていてもよい。例えば、出力信号の所定の範囲では、歪みゲージセンサーの出力信号が大きいほど、モーターの回転速度が上昇するように関数関係が設定される。また、歪みゲージセンサーの出力信号の符号と、モーターの回転方向との対応関係もマップされている。
【0033】
次に、電動アシスト台車1の制御の流れを図4のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
図4に示すように、先ず、左右の歪みゲージセンサー36L、Rからの出力信号を読み込む(ステップ100)。次に、読み込んだ出力信号の差を計算し、その出力差が所定の閾値Thを超えているか否かを判定する(ステップ102)。出力差が所定の閾値Thを超えている場合(ステップ102の肯定判定)、左右の歪みゲージセンサー36L、Rからの出力信号の各々に応じて、左右のモーター37L、Rの回転速度及び回転方向を各々制御する。例えば、歪みゲージセンサー36R、Lの両出力信号がプラスの符号を持っているとき、使用者が台車1を前進させようとしていることを示しているので、左右のモーター37L、Rは台車1が前進する方向に回転するように制御される。このとき、右側のセンサー36Rの出力信号が左側のセンサー36Lの出力信号より大きい場合、使用者が台車1を左に旋回させようとしていることを示しているので、右側のモーター37Rの回転速度は、左側のモーター37Lの回転速度よりも前進方向に増大される。これによって、台車1を前進方向左に旋回ないし曲折させることができる。逆に左側のセンサー36Lの出力信号が右側のセンサー36Rの出力信号より大きい場合は、左側のモーター37Lの回転速度が右側のモーター37Rの回転速度よりも前進方向に増大され、台車1を前進方向右に旋回ないし曲折させることができる。
【0035】
また、歪みゲージセンサー36R、Lの両出力信号がマイナスの符号を持っている場合、使用者が台車1を後進させようとしていることを示しているので、左右のモーター37L、Rは後進方向に回転するように制御される。このときも歪みゲージセンサー36R、Lの各々の出力が異なるため、各出力信号に応じて左右のモーター37の回転速度が異なるように制御される。これによって、後進方向の左右の旋回ないし曲折が可能となる。
【0036】
更に、歪みゲージセンサー36R、Lの出力信号が、一方がプラスの符号を持ち、他方がマイナスの符号を持っている場合、プラス出力に対応する一方のモーターは前進方向に制御され、マイナス出力に対応する他方のモーターは後進方向に制御される。これによって、旋回ないし曲折半径が小さい台車1の旋回曲折動作を行うことができる。
【0037】
ステップ102で、歪みゲージセンサーの出力差が所定の閾値Th以下であった場合(ステップ102の否定判定)、歪みゲージセンサー出力信号の符号を判定する(ステップ106)。左右の歪みゲージセンサー出力信号が両方ともプラス側であった場合、台車1の前進方向に左右のモーター37L、Rの回転数を同一にして制御する(ステップ108)。逆に、左右の歪みゲージセンサー出力信号が両方ともマイナス側であった場合、台車1の後進方向に左右のモーターの同一速度制御を行う(ステップ112)。なお、このときの左右のモーターの同一回転数は、左右の歪みゲージセンサー出力信号のいずれか一方、又は、両信号の平均値に基づいて決定されてもよい。このように、出力差が有意に小さいときには左右のモーターを同一速度で制御することにより、使用者による単なる左右の力のばらつきに起因した頻繁な旋回動作を的確に回避することができ、より安定した直進アシスト制御が可能となる。
【0038】
また、ステップ106で、左右の歪みゲージセンサーの出力信号が両方ともゼロであるか、又は、一方がプラスで他方がマイナスであった場合、左右のモーターを停止させる(ステップ110)。ここで、出力信号がゼロであるか否かの判定を、出力信号がゼロを含む所定の範囲内にあるか否かによって行ってもよい。これによって、一定以上の力を加えないと、左右一対の車輪に補助動力を与えるための各々設けられた左右の駆動手段が働かず、アシスト動作が行われないこととなる。かくして、頻繁なアシスト動作を回避することができる。
【0039】
次に、ステップ100に戻って同様の処理が繰り返される。
【0040】
以上が本発明の実施例であるが、本発明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において任意好適に変更可能である。
【0041】
例えば、上記例では、電動アシスト用駆動手段10L、Rを後輪側に取り付けたが、前輪側に取り付けてもよい。また、前輪及び後輪の両方に取り付けるようにしてもよい。また、上記実施例では、少なくとも左右一対の車輪を用いる電動アシスト台車に適用した発明について記載したが、1個の車輪を有する1輪車や、3個の車輪を有する3輪車等に用いて、前進、後進、旋回曲折させる電動アシスト用駆動手段としても有用である。
【0042】
また、上記例では、ハンドル操作部30と台車部との間に変形回復性部材としてのプレート部材33L、Rを介在させたが、使用者が台車部に印加する力を検知できる限り他の任意の位置に介在させてもよい。例えば、車輪とハンドル操作部30との間に、車輪付近の応力のかかる箇所等に変形回復性部材を介在させることもできる。
【0043】
更に、プレート部材33L、Rを左右側に1個ずつ設けたが、本発明は、これに限定されず、電動アシスト台車に対する動作、例えば、前進、後進及び左右の旋回の動作によりもたらされる変形回復性部材の変形の差異を互いに識別することができる限り、1個のプレート部材、又は、3個以上のプレート部材を用いることができる。プレート部材に取り付けられる歪みゲージセンサーの配置及び数に関しても同様である。例えば、変形回復性部材がハンドルの幅方向に亘って延在する一枚のプレート部材として構成され、該プレート部材の左右の両端部付近に歪み検出手段を取り付けるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、左右の電動アシスト用駆動手段10L、Rの異速度制御で台車の旋回制御を行ったが、例えば、後輪又は前輪を左右に電動旋回させる電動旋回機構(図示せず)を設けることにより、旋回を行うこともできる。
【0045】
また、歪み検出手段として歪みゲージセンサーを例にしたが、本発明は、これに限定されず、変形回復性部材の変形を検出するように構成されたセンサーである限り、任意のセンサー、例えば位置センサー、応力センサー、圧電抵抗センサー又は電気抵抗センサー等を用いることができる。
【0046】
更に、ハンドル操作部30を台車部5の後方ではなく前方に取り付けたリアカー式の台車にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る電動アシスト台車の線図であって、(a)は電動アシスト台車の後面図、(b)はその側面図である。
【図2】図2は、歪みゲージセンサーの取り付け位置を示す、図1の電動アシスト台車のハンドル操作部の上面図及び側面図である。
【図3】図3は、図1の電動アシスト台車の制御系を示す概略図である。
【図4】図4は、図1の電動アシスト台車の制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1 電動アシスト台車
5 台車部
6 下側ダンベルキャリア
8 上側ダンベルキャリア
10L、R 左右の電動アシスト用駆動手段
12L、R 左右のモーターギア
13 バッテリーブラケット
14 マイクロコンピュータ
15L、R 増幅回路
16L、L 左右のチェーン
17 バッテリー
18L、R 左右の車輪ギア
20L、R 左右一対の後輪
24、25 リッジ
26、28 ダンベル
30 ハンドル操作部
31 握りバー
32L、R 左右の支持バー
33L、L 左右のプレート部材33L、R
35L、R 左右の台車バー
36L、R 左右の歪みゲージセンサー
37L、R 左右一対のモーター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左右一対の車輪を有する電動アシスト台車であって、
前記左右一対の車輪に補助動力を与えるため各々設けられた左右の駆動手段と、
台車部分又は前記車輪とハンドル操作部分との間に介在された左右の変形回復性部材と、
前記左右の変形回復性部材の各々に取り付けられた左右の歪み検出手段と、
前記左右の歪み検出手段の出力信号に応じて前記左右の駆動手段を個別に制御する制御手段と、
を備える、電動アシスト台車。
【請求項2】
前記制御手段は、前記左右の歪み検出手段の出力信号の差が所定の範囲内にある場合は、前記左右の駆動手段の回転速度が同一となるように制御する、請求項1に記載の電動アシスト台車。
【請求項3】
前記制御手段は、前記左右の歪み検出手段の出力信号の差が所定の範囲を超えた場合は、前記左右の駆動手段の回転速度が異なるように制御する、請求項2に記載の電動アシスト台車。
【請求項4】
前記制御手段は、前記左右の歪み検出手段の出力信号の各々が前記変形回復性部材の押し引きのいずれを示すかに応じて、前記電動アシスト台車を前進させる回転方向及び後進させる回転方向のいずれかに前記左右の駆動手段を個別に制御する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項5】
前輪を更に有し、
前記ハンドル操作部分は、前記台車部分の後方に取り付けられ、前記左右一対の車輪は、後輪である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項6】
少なくとも1個の車輪を有する電動アシスト台車であって、
前記車輪に補助動力を与えるため設けられた少なくとも1個の駆動手段と、
台車部分又は前記車輪とハンドル操作部分との間に介在された少なくとも1個の変形回復性部材と、
前記変形回復性部材の歪みを検出するための少なくとも1個の歪み検出手段と、
前記歪み検出手段により検出された前記変形回復性部材の歪みに応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備える、電動アシスト台車。
【請求項7】
前記制御手段は、前記変形回復性部材の歪みが前記電動アシスト台車に対する前進及び後進のいずれの動作を示すかに従って前記駆動手段を前進制御及び後進制御する、請求項6に記載の電動アシスト台車。
【請求項8】
前記少なくとも1個の車輪を左右に旋回又は曲折動作させるための旋回駆動手段を有し、
前記制御手段は、前記変形回復性部材の歪みが前記電動アシスト台車に対する左右のいずれの旋回又は曲折動作を示すかに従って前記旋回駆動手段を制御する、請求項6又は7に記載の電動アシスト台車。
【請求項9】
前記車輪は、左右側に少なくとも1個ずつ設けられ、
前記駆動手段は、前記左右の車輪の各々に補助動力を与えるように設けられ、
前記制御手段は、前記変形回復性部材の歪みが前記電動アシスト台車に対する左右のいずれの旋回又は曲折動作を示すかに従って前記駆動手段を左右の回転速度が異なるように制御する、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項10】
前記制御手段は、前記旋回又は曲折動作を示す前記変形回復性部材の歪みが所定の範囲内にある場合は、前記駆動手段を左右の回転速度が同一となるように制御する、請求項9に記載の電動アシスト台車。
【請求項11】
前記制御手段は、前記旋回又は曲折動作を示す前記変形回復性部材の歪みが所定の範囲を超えた場合は、前記駆動手段の各々の回転速度が異なるように制御する、請求項10に記載の電動アシスト台車。
【請求項12】
前記駆動手段の回転速度は、前記歪み検出手段の出力信号の大きさに基づいて決定され、前記駆動手段の回転方向は、前記歪み検出手段の出力信号の符号に基づいて決定される、請求項1又は6に記載の電動アシスト台車。
【請求項13】
前記車輪は1個であり、前記電動アシスト台車は、一輪車の台車として構成されている、請求項6乃至12のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項14】
前記車輪は3個であり、前記電動アシスト台車は、三輪車の台車として構成されている、請求項6乃至12いずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項15】
前記変形回復性部材は、伸び縮み変形、反り曲がり変形、及び、凹凸変形のうち少なくともいずれかで変形する、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項16】
前記変形回復性部材は、バネ性部材、弾性体部材、プレート部材、及び、金属プレートのうちいずれかである、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項17】
前記歪み検出手段は、歪みゲージセンサー、位置センサー、応力センサー、圧電抵抗センサー、及び、電気抵抗センサーのいずれかである、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項18】
前記駆動手段は、
モーターと、
前記モーターの出力を伝達するためのモーターギアと、
前記車輪と共に同軸で回転するように取り付けられた車輪ギアと、
前記モーターギアと前記車輪ギアとの間に設けられた駆動伝達手段と、
を備える、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の電動アシスト台車。
【請求項19】
前記駆動伝達手段は、チェーン、ベルト及びギアの少なくともいずれかである、請求項18に記載の電動アシスト台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−176195(P2007−176195A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373787(P2005−373787)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】