説明

電動ファン

【課題】ロータヨーク内への水の浸入を効果的に抑制することができる電動ファンを提供する。
【解決手段】コイル10が巻装されているステータ11と、ステータ11の径方向中央に設けられ、ステータ11に対して回転自在に設けられた回転軸13と、この回転軸13に設けられ、ステータ11をその前面から覆うように有底筒状に形成されたロータヨーク14と、ステータ11の後面を覆うように形成され、ステータ11をファンシュラウド16に固定するためのブラケット12と、回転軸13、およびロータヨーク14と一体に回転して送風を行うファン本体3とを備え、ファン本体3は、ロータヨーク14をその前面から覆うように有底筒状に形成されたファンボス34と、ファンボス34の外周面から放射状に突設された複数のブレード35とを有し、ファンボス34の開口部とブラケット12との間にラビリンス部63を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車のラジエータ冷却用等に用いられる電動ファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のラジエータ冷却用の電動ファンとして、アウタロータ型の電動ブラシレスモータが用いられる場合がある。この種の電動モータは、複数のティースにコイルを巻装してなるステータと、ステータをその前面から覆う有底筒状のロータヨークと、このロータヨークの内周面に配置された永久磁石と、ステータの径方向中央に設けられ、ロータヨークを回転自在に枢支する回転軸とを備えている。
また、ロータヨークの外周にはファンブレードが設けられている。そして、コイルに電流が供給されるとステータのティースに磁界が形成され、ロータヨークの永久磁石との間に磁気的な吸引力や反発力が生じてロータヨークが回転し、ファンブレードによって回転軸の軸方向に冷却風を発生させる。
【0003】
この種の電動モータにあっては、ステータの外側でロータヨークが回転するので、内部の水密性を確保しようとすると、別途カバーが必要となり大型化してしまう。このため、通常はロータヨークが露出した開放型である場合が多く、結果として必然的に外部から水が浸入し易くなる。
例えば、特許文献1に記載されたものでは、内部を冷却するために設けたロータヨーク前面の空気取り入れ口から水が浸入するのを防止するために防水壁を設けたり、水が浸入した際にこの水を外部に排出するための水抜き孔を設けたりした構造となっている。
また、ステータには、ロータヨークの開口部を閉塞するようにモータホルダが設けられている。このモータホルダによって、ロータヨーク内への水の浸入を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−40934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、モータホルダに対してロータヨークが回転する構造上、これらモータホルダとロータヨークの開口部との間に隙間を形成する必要がある。この隙間から内部に水が浸入することになるが、浸入経路が単純でロータヨーク内への水の浸入を効果的に抑制できるとはいいにくい。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ロータヨーク内への水の浸入を効果的に抑制することができる電動ファンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、コイルが巻装されているステータと、前記ステータの径方向中央に設けられ、前記ステータに対して回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に設けられ、前記ステータをその前面から覆うように有底筒状に形成されたロータヨークと、前記ステータの後面を覆うように形成され、前記ステータを外部機器に固定するためのブラケットと、前記回転軸、および前記ロータヨークと一体に回転して送風を行うファン本体とを備え、前記ファン本体は、前記ロータヨークをその前面から覆うように有底筒状に形成されたファンボスと、前記ファンボスの外周面から放射状に突設された複数のブレードとを有し、前記ファンボスの開口部と前記ブラケットとの間にラビリンス部を設けたことを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、ファンボスとブラケットとによりロータヨークの開口部を覆うことができるので、ロータヨーク内へ水が入りにくくなる。しかも、ファンボスとブラケットとの間の隙間にラビリンス部が形成されているので、水のロータヨーク内への浸入経路が複雑化される。このため、ロータヨーク内への水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記ブラケットは、前記ステータの後面を覆う円板状のベース部と、前記ベース部の周縁から前記ファン本体側に向かって立ち上がり形成され、前記ロータヨークの開口縁側を径方向外側から覆う筒状の浸入規制壁とを有し、前記ファンボスの周壁は、前記浸入規制壁に対して径方向外側で重なるように延出形成され、前記浸入規制壁の開口部に、径方向外側に向かって外フランジ部を設け、これらファンボスの周壁、ブラケットの浸入規制壁、および外フランジ部によって前記ラビリンス部を構成していることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、外フランジ部が水の浸入を防ぐ邪魔板として機能し、ロータヨーク内への水の浸入をより確実に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、前記ファンボスの底壁には、前記周壁よりも径方向内側に、第2の周壁が前記浸入規制壁の手前に至るまで延出するように立ち上がり形成されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、ファンボスの内側に、周壁、底壁、および第2の周壁により袋小路が形成される。この袋小路が形成される分、水の浸入経路が長く、複雑になり、さらにロータヨーク内への水の浸入を抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載した発明は、前記ロータヨークの底壁と、前記ファンボスの底壁との間に隙間を形成すると共に、前記ロータヨークの底壁に、前記ロータヨークを取り付けた状態で鉛直方向に沿う平坦部を形成し、この平坦部に、水抜き孔を形成したことを特徴とする。
【0014】
このように、ロータヨークの底壁と、ファンボスの底壁との間に隙間を形成することにより、この隙間をファンボス内に浸入した水の排水路として機能させることができる。また、ロータヨーク内に浸入した水を、水抜き孔を介してロータヨークの底壁とファンボスの底壁との間に形成された隙間に排出することができる。さらに、ロータヨークの平坦部に水抜き孔を形成することにより、ロータヨークの底壁外面を天方向から伝ってくる水がロータヨーク内に浸入してしまうことを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ファンボスとブラケットとによりロータヨークの開口部を覆うことができるので、ロータヨーク内へ水が入りにくくなる。しかも、ファンボスとブラケットとの間の隙間にラビリンス部が形成されているので、水のロータヨーク内への浸入経路が複雑化される。このため、ロータヨーク内への水の浸入を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における電動ファンを鉛直方向に沿って切った断面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるファンボスの外周部に水がかかった場合の水の挙動についての説明図である。
【図3】本発明の実施形態におけるファンボスの外周部に水がかかった場合の水の挙動についての説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるファンボスの外周部に水がかかった場合の水の挙動についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(電動ファン)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電動ファンを鉛直方向に沿って切った断面図である。なお、図1における矢印Fは、車両の前方側を指している。以下の説明においては、矢印Fの指す方向(図1における左方向)を「前」、矢印Fの指す方向と逆の方向(図1における右方向)を「後」などと表現して説明する。
【0018】
図1に示すように、電動ファン1は、例えば車両のラジエータ冷却用として用いられるものであって、外部機器であるラジエータ(不図示)の前方側に設置される。電動ファン1は、駆動部である電動モータ2と、電動モータ2によって回転駆動されるファン本体3とを備えている。
【0019】
(電動モータ)
電動モータ2は、アウタロータ型のブラシレスモータによって構成され、励磁用の複数のコイル10が巻装されたステータ11と、ステータ11を支持するブラケット12と、ブラケット12に回転自在に支持される回転軸13と、この回転軸13に一体回転可能に結合されたロータヨーク14と、ロータヨーク14の回転をフィードバックしてコイル10の通電を制御する制御ユニット15とを備えている。
【0020】
ステータ11は、複数の金属板を積層したり、軟磁性粉を加圧したりして形成された環状のステータコア18を有している。ステータコア18には、径方向外側に向かって放射方向に突出する複数のティース18aが設けられている。これらティース18aに絶縁部材であるインシュレータ19を介してコイル10が巻装されている。
【0021】
ブラケット12は、ステータ11の後面を覆うように略円盤状に形成されたベース部51と、ベース部51の外周縁から前方に向かって立ち上がる略円筒状の浸入規制壁52とが一体成形されたものである。浸入規制壁52は、ロータヨーク14内への水の浸入を抑制するためのものである(詳細は後述する)。浸入規制壁52の開口縁52aには、径方向外側に向かって外フランジ部53が一体成形されている。
【0022】
一方、ベース部51には、外周縁から径方向外側に向かって固定アーム12aが延設されている。この固定アーム12aは、ファン本体3の周囲を取り囲んで送風を案内するファンシュラウド16に締結固定され、ファンシュラウド16は、ラジエータの前方側に固定設置されるようになっている。
また、ベース部51の前面側には、径方向中央に円筒状のボス部12bが突設されている。このボス部12bには、外周側でステータ11を固定する略円筒状のステータ固定パイプ17が取り付けられている。
【0023】
ステータ固定パイプ17は、一端側がボス部12b内に圧入固定され、他端側がボス部12bの前端部から前方に突出している。このステータ固定パイプ17のボス部12bから前方に突出した領域の外周面に、ステータコア18が嵌合固定されている。
また、ベース部51の前面には、浸入規制壁52よりも小径の2つの円筒壁26,27がボス部12bと同軸に形成されている。円筒壁26,27は、ロータヨーク14内に浸入し、ブラケット12の上部外周側から、電気接点や制御ユニット15の配置されている中心側に流入しようとする水滴を、これらの外周面に沿わせて下方に滴下させるためのものである。
【0024】
回転軸13は、車体前後方向に沿うように略水平に延出し、一対の軸受20a,20bを介してブラケット12のボス部12bとステータ固定パイプ17とに回転自在に支持されている。回転軸13の後端部は軸受20aから後方側に突出し、その突出端に回転検出用のセンサリング21が取り付けられている。このセンサリング21を用いて検出された回転軸13の回転は、ロータヨーク14の回転情報として制御ユニット15に出力される。
【0025】
制御ユニット15は、不図示のビスを介してブラケット12に固定されたセンサケース55を有している。センサケース55には、センサリング21から発生する磁界の変化を検出するホール素子(不図示)が実装されている制御基板56等が収納されている。
制御基板56には、ホール素子の他に所定のコイル10に順次電流を供給するスイッチング素子や整流回路などを含むドライブ回路も構成されている。ここで、制御基板56とコイル10は、互いに接続端子57を介して電気的に接続されている。センサケース55のブラケット12側には、接続端子57を導く導通部58が突出形成されている。導通部58には、センサケース55の厚さ方向に貫通する挿通孔59が形成されており、この挿通孔59に接続端子57が挿通されている。
【0026】
一方、回転軸13の前端部は軸受20bから前方側に突出し、その突出部分にロータヨーク14とファン本体3とが取り付けられている。
具体的には、回転軸13の前部側の突出領域には、軸受20bに隣接してロータ支持部22が拡径して形成されるとともに、そのロータ支持部22に隣接してロータ支持部22よりも小径のファン固定部23が形成されている。そして、回転軸13のファン固定部23よりも先端側にはファン固定部23よりも小径の雄ねじ部24が形成されている。
【0027】
ロータヨーク14は、ステータ11をその前面から覆うように有底筒状に形成されたものであって、底壁28と、この底壁28から後方に向かって立ち上がり形成された周壁29とを有している。底壁28は、軸方向に略直交する面、つまり鉛直方向に沿う平坦部28aを有し、この平坦部28aの径方向中央の大部分に、周壁29と同側に膨出する膨出部32aが形成されている。
【0028】
平坦部28aの外周側には、複数の水抜き孔61が周方向に等間隔で形成されている。この水抜き孔61は、ロータヨーク14の内部に浸入した水を排出する機能を有する。この他に、水抜き孔61は、ロータヨーク14の内部から空気を排出する機能も有している。
また、膨出部32aの径方向中央には、周壁29と同側に突出するボス部32bが形成され、そのボス部32bが回転軸13のロータ支持部22の外周に圧入固定されている。
【0029】
一方、ロータヨーク14の周壁29には、内面に複数のマグネット30が円周方向に沿って取り付けられている。これらマグネット30は、ステータ11のティース18aの先端と対峙した状態になっている。また、ロータヨーク14の周壁29には、開口縁(後端縁)29aに径方向外側に屈曲した外フランジ部33が突設されている。
【0030】
この外フランジ部33を含むロータヨーク14の開口縁29aは、ロータヨーク14が回転軸13と軸受20a,20bを介してブラケット12に組み付けられた状態において、ブラケット12の浸入規制壁52と円筒壁26の間のスペースに配置されている。そして、ロータヨーク14の開口縁29aは、浸入規制壁52と円筒壁26に対して径方向で所定量重なり合うようになっており、ロータヨーク14と浸入規制壁52と円筒壁26とのラップ領域R1(ハッチ部参照)が形成される。
なお、外フランジ部33は、ロータヨーク14の周壁29の外周面に滴下した水滴が、開口縁29a側に流れ込むのを規制する規制壁として機能するとともに、ロータヨーク14の補強部としても機能する。
【0031】
一方、ファン本体3は、ロータヨーク14をその前面から覆うように有底筒状に形成されたファンボス34と、ファンボス34の外周面から放射状に突設された複数のブレード35とを備えている。このファンボス34とブレード35は樹脂によって一体に形成されている。
ファンボス34は、底壁34aと、この底壁34aから後方に向かって立ち上がる周壁34bとが一体成形されたものである。底壁34aは、ロータヨーク14を構成する底壁28の平坦部28aと略平行となるように設けられ、この平坦部28aと対向している。また、底壁34aの中央には開口部36が形成されるとともに、その開口部36を閉塞するように別体の金属プレート37が後面側から取り付けられている。
【0032】
この金属プレート37は、ファン本体3を回転軸13に直接固定するための軸固定部を構成するものであり、その中央部には、回転軸13のファン固定部23が嵌入される嵌合孔38が形成されている。ファン本体3は、金属プレート37が座金39とともに回転軸13のファン固定部23に嵌合され、金属プレート37から突出した回転軸13の雄ねじ部24にナット40を締め込むことによって回転軸13に一体に結合されている。
【0033】
また、金属プレート37とともにファン固定部23に嵌合された座金39は、回転軸13上のファン固定部23よりも大径のロータ支持部22の近傍部に当接し、それにより、ロータヨーク14の底壁28と金属プレート37の間に軸方向に離間する隙間Sが確保されている。
この実施形態の場合、軸固定部である金属プレート37はファンボス34の底壁に複数のビス41によって固定されている。ただし、ファンボス34に対する金属プレート37の固定はビス止めに限らず、金属プレート37をファンボス34の内周縁部にインサート成形によって埋め込み固定するようにしてもよい。
【0034】
一方、ファンボス34の周壁34bにおける開口部34dの縁部は、回転軸13に金属プレート37を介してファン本体3が組み付けられた状態において、ブラケット12における浸入規制壁52の外フランジ部53よりも径方向外側に配置されている。そして、ファンボス34の周壁34bにおける開口部34dの縁部は、浸入規制壁52に対して径方向で所定量重なり合うようになっており、周壁34bと浸入規制壁52とのラップ領域R2(ハッチ部参照)が形成される。これにより、ロータヨーク14の開口部側(後端側)は、ファンボス34の周壁34bとブラケット12の浸入規制壁52とで覆われた状態になる。
【0035】
また、ファンボス34の底壁34aには、周壁34bよりも径方向内側に第2の周壁34cが後方側に向かって立ち上がり形成されている。この第2の周壁34cは、底壁34aからブラケット12の浸入規制壁52の手前に至るまで延出している。このように形成された第2の周壁34cに加え、ファンボス34の底壁34a、および周壁34bによって、袋小路部62が形成される。
また、ファンボス34の周壁34bと、ブラケット12の浸入規制壁52と、この浸入規制壁52に形成されている外フランジ部53とにより外部からロータヨーク14内への水の浸入を抑制するためのラビリンス部63が構成される。
【0036】
このような構成のもと、電動ファン1のコイル10に電流が供給されるとティース18aに磁界が形成され、ロータヨーク14のマグネット30との間に磁気的な吸引力や反発力が生じてロータヨーク14が回転し、ファン本体3によって回転軸13の軸方向に冷却風が発生する。
このとき、電動ファン1のロータヨーク14、およびファンボス34は、ステータ11を前面から覆っているので、前側からの水の浸入が阻止される。一方、ファンボス34の外周部に水がかかった場合であっても、ファンボス34の周壁34bと、ブラケット12の浸入規制壁52と、この浸入規制壁52に形成されている外フランジ部53とによりラビリンス部63が構成されているので、ロータヨーク14内への水の浸入が抑制される。
【0037】
(ラビリンス部の作用)
より詳しく、図2〜図4に基づいて、ラビリンス部63の作用について説明する。
図2〜図4は、ファンボスの外周部に水がかかった場合の水の挙動についての説明図である。
まず、図2に示すように、ファンボス34の外周部に水がかかり、ブレードを伝って下方に垂れてきた水は、ブラケット12の浸入規制壁52に垂れ落ちる(図2における矢印Y1参照)。この浸入規制壁52に水が垂れ落ちたとしても、浸入規制壁52の開口縁52aに外フランジ部53が一体成形されているので、ファンボス34の内部に水が浸入しにくい(図2における矢印Y2参照)。
【0038】
図3に示すように、仮にファンボス34の周壁34bの内面を伝って、ファンボス34内に水が浸入した場合であっても、ファンボス34の底壁34a、周壁34b、および第2の周壁34cによって袋小路部62が形成されているので、この分ロータヨーク14までの水の浸入経路が複雑で、かつ長くなり、ロータヨーク14内に水が浸入しにくい(図3における矢印Y3参照)。
【0039】
さらに、図4に示すように、ファンボス34内に水が浸入し、ロータヨーク14の外周部に水がかかった場合であっても、ロータヨーク14の周壁29に外フランジ部33が突設されているので、ステータ11側に水が回り込みにくい。仮にステータ11側に水が回り込んだとしても、ロータヨーク14の底壁28に形成されている水抜き孔61により、速やかに水をロータヨーク14の外側に排水することができる。
【0040】
また、前方に向かった水は、ロータヨーク14の底壁28を伝って下方に垂れ落ち、そのままファンボス34の外部に排水される。このため、ファンボス34内に水が溜まる虞がない。すなわち、ロータヨーク14の底壁28と金属プレート37の間に軸方向に離間する隙間Sが、水の排水路として機能する。
【0041】
ここで、ロータヨーク14の底壁28は、軸方向に略直交する面に沿う平坦部28aを有し、ここに水抜き孔61が形成されている。すなわち、鉛直方向に沿う平坦部28aに水抜き孔61が形成されている。このため、天方向から平坦部28aを伝って下方に向かう水は、そのまま真直ぐ下方に向かって垂れ落ちることが多く、ロータヨーク14の外側から水抜き孔61を介して内部に水が浸入しにくい(図4における矢印Y4参照)。
【0042】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、ファンボス34の周壁34bとブラケット12の浸入規制壁52とのラップ領域R2(ハッチ部参照)が形成される。これにより、ロータヨーク14の開口部側(後端側)を、ファンボス34の周壁34bとブラケット12の浸入規制壁52とで覆うことができる。このため、ロータヨーク14内へ水が入りにくくなる。
しかも、ファンボス34の周壁34bと、ブラケット12の浸入規制壁52と、この浸入規制壁52に形成されている外フランジ部53とによりラビリンス部63が構成される。このため、ロータヨーク14内への水の浸入経路が複雑になる。また、ブラケット12の外フランジ部53が水の浸入を防止する邪魔板として機能する(図2、図3参照)。よって、ロータヨーク14内への水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0043】
さらに、ファンボス34の底壁34a、周壁34b、および第2の周壁34cにより、袋小路部62が形成される。このため、ファンボス34の周壁34bの内面を伝ってファンボス34の内部に浸入した水の浸入経路が複雑で、かつ長くなる(図3参照)。このため、より確実にロータヨーク14内への水の浸入を抑制することができる。
【0044】
そして、ロータヨーク14の底壁28と金属プレート37の間に、軸方向に離間する隙間Sを形成し、この隙間Sを水の排水路として機能させている。このため、仮にファンボス34の内部に水が浸入した場合であっても速やかに水を外部に排水することができる。
また、ロータヨーク14の底壁28に鉛直方向に沿う平坦部28aを形成し、ここに水抜き孔61を形成している。このため、ロータヨーク14の外側から水抜き孔61を介して内部に水を浸入しにくくすることができる。
【0045】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ファンボス34の周壁34bと、ブラケット12の浸入規制壁52と、この浸入規制壁52に形成されている外フランジ部53とによりラビリンス部63を構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ファンボス34の周壁34bの開口部側(後端側)と、ブラケット12との間にラビリンス部が形成されていればよく、特にこのラビリンス部の形状を特定するものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 電動ファン
2 電動モータ
3 ファン本体
10 コイル
11 ステータ
12 ブラケット
13 回転軸
14 ロータヨーク
16 ファンシュラウド(外部機器)
28 底壁
28a 平坦部
29a 開口縁
34 ファンボス
34a 底壁
34b 周壁
34c 第2の周壁
34d 開口部
35 ブレード
52 浸入規制壁
53 外フランジ部
61 水抜き孔
63 ラビリンス部
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻装されているステータと、
前記ステータの径方向中央に設けられ、前記ステータに対して回転自在に設けられた回転軸と、
この回転軸に設けられ、前記ステータをその前面から覆うように有底筒状に形成されたロータヨークと、
前記ステータの後面を覆うように形成され、前記ステータを外部機器に固定するためのブラケットと、
前記回転軸、および前記ロータヨークと一体に回転して送風を行うファン本体とを備え、
前記ファン本体は、
前記ロータヨークをその前面から覆うように有底筒状に形成されたファンボスと、
前記ファンボスの外周面から放射状に突設された複数のブレードとを有し、
前記ファンボスの開口部と前記ブラケットとの間にラビリンス部を設けたことを特徴とする電動ファン。
【請求項2】
前記ブラケットは、
前記ステータの後面を覆う円板状のベース部と、
前記ベース部の周縁から前記ファン本体側に向かって立ち上がり形成され、前記ロータヨークの開口縁側を径方向外側から覆う筒状の浸入規制壁とを有し、
前記ファンボスの周壁は、前記浸入規制壁に対して径方向外側で重なるように延出形成され、
前記浸入規制壁の開口部に、径方向外側に向かって外フランジ部を設け、
これらファンボスの周壁、ブラケットの浸入規制壁、および外フランジ部によって前記ラビリンス部を構成していることを特徴とする請求項1に記載の電動ファン。
【請求項3】
前記ファンボスの底壁には、前記周壁よりも径方向内側に、第2の周壁が前記浸入規制壁の手前に至るまで延出するように立ち上がり形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動ファン。
【請求項4】
前記ロータヨークの底壁と、前記ファンボスの底壁との間に隙間を形成すると共に、
前記ロータヨークの底壁に、前記ロータヨークを取り付けた状態で鉛直方向に沿う平坦部を形成し、
この平坦部に、水抜き孔を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の電動ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−145010(P2012−145010A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2952(P2011−2952)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】