説明

電動式パーキング機構付ブレーキ装置

【課題】パーキングブレーキの作動を解除する為に必要な何らかの部品の故障に伴って、回転に伴って制動用摩擦部材を制動用回転体に対して遠近動させる回転軸と、この回転軸と係脱自在で、係合時にこの回転軸との間で回転力の伝達を行う回転阻止軸との係合を外せなくなった場合にも、この回転軸の回転を可能にして、前記パーキングブレーキの作動を解除できる構造を実現する。
【解決手段】回転側、抑止側両係合部材11a、12aの係合により、パーキングブレーキを作動させる。故障時には、回り止めピン75を引き抜く事で、前記抑止側係合部材12aの回転を可能とし、パーキングブレーキの作動解除を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータを駆動源として制動力を発生させ、しかも、この電動モータへの通電を停止した後も制動力を維持したままの状態にできる、電動式パーキング機構付ブレーキ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源とする電動式ディスクブレーキ装置は、従来から広く実施されている油圧式のディスクブレーキ装置に比べて、配管が不要になり、製造の容易化、低コスト化を図れるだけでなく、用済のブレーキ液が生じず環境負荷が少ない、ブレーキ液の移動がない分応答性の向上を図れる等、多くの利点がある為、研究が進められている。又、パーキング機構のみを電動式とするディスクブレーキ装置も、油圧式ディスクブレーキ装置の信頼性を確保したまま、坂道発進時の制御が容易にできる等の理由により、研究が進められている。この様な電動式ディスクブレーキ装置として、電動モータの出力を増力機構に入力し、この増力機構により、この電動モータの回転運動を増力しつつ直線運動に変換し、一対のパッドをロータの両側面に強く押し付ける構造のものが、従来から各種提案されている。又、電動モータへの通電を停止した後も制動力を維持したままの状態にできる、電動式パーキング機構付ブレーキ装置も、例えば特許文献1〜3に記載される等により、従来から知られている。これら各特許文献に記載された発明は、何れも、それぞれが制動用摩擦部材である一対のパッドを、車輪と共に回転する、制動用回転体であるロータの軸方向両側面に押圧する、ディスクブレーキ装置を対象としている。
【0003】
この為、前記各特許文献に記載された何れの電動式パーキング機構付ブレーキ装置も、電動モータの出力軸の回転運動を直線運動に変換して前記両パッドを前記ロータに押圧する電動式押圧装置と、前記電動モータへの通電停止後にもこれら両パッドをこのロータに押し付けたままの状態に維持する為のパーキングロック装置とを備えている。このうちのパーキングロック装置には、前記電動モータへの通電停止後の状態でも、前記両パッドを前記ロータに押圧し続けられる機能が要求される。又、安全の為、故障時にも不用意にパーキングロック装置が作動しない構造とする事が好ましい。
【0004】
電動モータへの通電停止後にも前記両パッドを前記ロータに押圧し続ける機能に就いては、前記各特許文献に記載された何れの発明もが備えてはいるが、何れも構造が複雑でコストが嵩む事が避けられない。又、故障時にパーキングロック装置が作動しない構造に関しては、特許文献1、2に記載された発明の構造は備えているが、特許文献3に記載された発明の構造は備えていない。
【0005】
この様な事情に鑑みて本発明者等は先に、図12〜16に示す様な、電動式パーキング機構付ブレーキ装置を発明した。後述する本発明の実施の形態は、この先発明に係る構造に改良を加えたものであるから、先ず、この先発明の構造に就いて説明する。
この先発明に係る電動式パーキング機構付ブレーキ装置は、図12に示す様に、制動用回転体であるロータ1と、支持部材であるサポート(図示省略)と、それぞれが制動用摩擦部材である、インナパッド2及びアウタパッド3と、電動式押圧装置4と、パーキングロック装置5とを備える。このうちのロータ1は、図示しない車輪と同心に固定されて、この車輪と共に回転する。又、前記サポートは、前記ロータ1の円周方向の一部を跨ぐ状態で、このロータ1に隣接して設けられ、懸架装置を構成するナックル等の、回転しない部分に支持固定される。この様なフローティングキャリパ型ディスクブレーキ装置を構成するサポートの構造及び機能に就いては、従来から一般的に実施されている油圧式のディスクブレーキ装置で周知である事は勿論、電動式ディスクブレーキ装置に関しても、特許文献4等、多くの文献に記載されていて周知であるから、図示並びに説明は省略する。又、前記インナ、アウタ両パッド2、3は、前記サポートの一部で前記ロータ1の円周方向の一部を軸方向両側から挟む部分に、このロータ1の軸方向両側面に対向した状態で、このロータ1に対する遠近動を可能に、即ち、このロータ1の軸方向の変位を可能に支持されている。
【0006】
又、前記電動式押圧装置4は、図12〜13に示す様に、駆動源である電動モータ6と、歯車式減速機の如き、動力の伝達方向に関して可逆性を有する減速機7と、ボール螺子機構の如き、回転運動を直線運動に変換する推力発生機構8とを備えたもので、キャリパ9内に設置されている。又、このキャリパ9は前記サポートに対し、前記ロータ1の軸方向(図12の左右方向)の変位を可能に支持されている。本例の場合に前記推力発生機構8は、前記インナパッド2を前記ロータ1のインナ側面に押し付ける様にしている。この推力発生機構8に関しても、力の伝達方向に関して、可逆性を持たせている。そして、この押し付けの反作用として前記キャリパ9が前記サポートに対してインナ側に変位し、このキャリパ9のアウタ側端部に設けたキャリパ爪10が前記アウタパッド3を、前記ロータ1のアウタ側面に押し付ける。この状態でこのロータ1が、このアウタパッド3と前記インナパッド2とで軸方向両側から強く挟持され、制動が行われる。
【0007】
更に、前記パーキングロック装置5は、前記電動モータ6への通電停止後にも、前記インナ、アウタ両パッド2、3を前記ロータ1の軸方向両側面に押し付けたままの状態に維持する為に設けている。この様な役目を持つ、前記パーキングロック装置5は、図14に示す様に、回転側係合部材11と、抑止側係合部材12と、圧縮ばね13等の弾性部材と、ソレノイド14等の電動式リニアアクチュエータとを備える。
【0008】
このうちの回転側係合部材11は、前記電動モータ6の出力軸15の先端部に、前記減速機7を構成する減速小歯車16と共に固定している。この様な回転側係合部材11の先端面(前記電動モータ6の本体部分と反対側の面)の外径寄り部分は、前記出力軸15と同心の回転側係合面17としている。本例の場合、この回転側係合面17の円周方向に関する形状を、図14、16に示す様に、円周方向に関して非対称な(波の頂部が円周方向に関して一方に偏った)波形としている。即ち、前記回転側係合部材11の先端面の外径寄り部分に複数の回転側係合突起18、18を、円周方向に関して等間隔に形成して、前記回転側係合面17としている。これら各回転側係合突起18、18は、それぞれ頂角が鋭角である三角形状で、基部から頂部に向かうに従って円周方向に関して同じ側に向かう方向に傾斜している。この為、前記各回転側係合突起18、18の円周方向両側面は、何れも前記出力軸15の中心軸に直交する仮想平面に対し傾斜している。
【0009】
これら各回転側係合突起18、18の円周方向両側面のうち、軸方向に関して前記回転側係合部材11の基端側に向いた面である円周方向片側面を、それぞれ傾斜辺19、19としている。前記減速小歯車16を含む前記減速機7、並びに、前記推力発生機構8は、前述の様に、動力若しくは力の伝達方向に関して可逆性を有する。この可逆性の為に前記回転側係合部材11は、前記インナ、アウタ両パッド2、3を前記ロータ1の軸方向両側面に押し付けて制動力を生じさせた状態で、この制動力の反作用に基づいて所定方向に回転しようとするトルクが付与される。このトルクの作用方向は、前記各回転側係合突起18、18の頂部が回転方向前側に位置する方向、言い変えれば、前記各傾斜片19、19が回転方向に関して前側面となる方向としている。
【0010】
又、前記抑止側係合部材12及び前記ソレノイド14は、前記キャリパ9の内部に固定している。この為に、このキャリパ9の内面に、円環状に構成した前記ソレノイド14と、前記抑止側係合部材12を支持する為のホルダ20とを、前記キャリパ9の内面側から重ね合わせる状態で、複数本(図示の例では3本)の取付ボルト21、21により固定している。前記抑止側係合部材12は、先端部に大径の頭部22を、中間部乃至基端部に小径の杆部23を、それぞれ有する。この様な抑止側係合部材12の材料は、金属、合成樹脂等、十分な強度及び剛性を確保できる限り問わない。但し、非磁性材製とする場合には、少なくとも一部に磁性材を固定して、前記ソレノイド14により前記抑止側係合部材12を軸方向に変位させられる様にする。この様な抑止側係合部材12のうちの頭部22の外周面は、図15に示す様に、円周方向の一部に平坦部24を有する、非円筒面としている。この平坦部24が、特許請求の範囲に記載した回転阻止部に相当する。そして、前記頭部22を、前記ホルダ20の保持孔25に内嵌している。この保持孔25の内周面に関しても、円周方向の一部に平坦部26を有する非円筒面としている。前記頭部22は前記保持孔25に、これら両平坦部24、26の位相を合致させた状態で内嵌している。従って、前記抑止側係合部材12は、これら両平坦部24、26同士の係合に基づいて回転を阻止された状態で、前記ホルダ20の内側に、前記回転側係合面17に対し遠近動する方向、即ち、前記出力軸15の軸方向の変位を可能に支持されている。
【0011】
この様な抑止側係合部材12のうち、前記頭部22の先端面の外径寄り部分の形状を、前記回転側係合面17と係脱可能な形状としている。即ち、図14、16に示す様に、この頭部22の先端面の外径寄り部分に、前記回転側係合部材11の先端面の回転側係合突起18、18と同数の抑止側係合突起27、27を、円周方向に関して等間隔に形成している。これら各抑止側係合突起27、27は、前記各回転側係合突起18、18と同様に、それぞれ頂角が鋭角である三角形状で、基部から頂部に向かうに従って円周方向に関して同じ側に向かう方向に傾斜している。この為、前記各抑止側係合突起27、27の円周方向両側面は、何れも前記抑止側係合部材12の軸方向(出力軸15の軸方向)に対し傾斜している。但し、前記各抑止側係合突起27、27の円周方向両側面が傾斜している方向は、前記各回転側係合突起18、18とは逆方向としている。そして、前記各抑止側係合突起27、27の円周方向片側面で前記回転側、抑止側両係合部材11、12同士が互いに近づいた状態で、このうちの回転側係合部材11側の前記各傾斜辺19、19と当接する面を、これら各傾斜辺19、19と同方向に、略同じ角度θだけ傾斜した、第二の傾斜辺28、28としている。
【0012】
要するに、前記回転側係合部材11側の各傾斜辺19、19と、前記抑止側係合部材12側の各第二の傾斜辺28、28とを、前記各回転側係合突起18、18と前記各抑止側係合突起27、27との先端に向う程、これら各係合突起18、27同士の係り代(前記各傾斜辺19、28同士を当接させた状態で、これら各回転側係合突起18、27同士が軸方向に重畳する寸法)が大きくなる方向に傾斜させている。
【0013】
上述の様な抑止側係合部材12には、前記圧縮ばね13により、前記回転側係合部材11から離れる方向の弾力を付与している。即ち、前記杆部23の基端部に外嵌固定した磁性材製のスライダ29と、前記ソレノイド14のケース30に固定したガイドスリーブ31との間に前記圧縮ばね13を設けて、前記抑止側係合部材12に前記回転側係合部材11から離れる方向の弾力を付与している。又、前記ソレノイド14への通電により前記抑止側係合部材12に、前記圧縮ばね13の弾力よりも大きな、前記回転側静止部材11に向かう方向の力を付与できる様にしている。従って、前記ソレノイド14のON・OFFにより、前記抑止側係合部材12が軸方向に往復移動する。但し、前記圧縮ばね13の弾力は、前記制動力の反力に基づいて前記回転側係合部材11に加わるトルクにより、前記各傾斜辺19、28同士が当接した状態では、前記抑止側係合部材12が前記回転側係合部材11から離れる方向に変位しない程度の小さな値に止めている。
【0014】
上述の様に構成する先発明に係る電動式パーキング機構付ブレーキ装置による制動時には、前記電動モータ6に通電する事により、前記推力発生機構8を伸張させ、前記インナパッド2を前記ロータ1のインナ側面に押し付ける。これと共に、前記キャリパ9をインナ側に変位させて、前記キャリパ爪10により前記アウタパッド3を前記ロータ1のアウタ側面に押し付ける。そして、これら両パッド2、3によりこのロータ1を両側から強く挟持して、このロータ1と共に回転する車輪に対して制動力を加える。制動力の大きさは、前記電動モータ6への通電量を規制して、前記出力軸15から前記減速機7を介して前記推力発生機構8に入力するトルクを調節する事により調節する。この様なサービスブレーキの作動時には、前記ソレノイド14には通電せず、前記圧縮ばね13の弾力に基づいて前記抑止側係合部材12の先端部を、図16の(A)に示す様に、前記回転側係合部材11から退避させておく。従って、前記抑止側係合部材12が、前記電動モータ6を含む電動式押圧装置4の作動に影響を及ぼす事はない。
【0015】
又、車両を停止状態に維持する為のパーキングブレーキの作動時には、前記電動式押圧装置4により前記インナ、アウタ両パッド2、3を前記ロータ1の両側面に押し付けて制動力を発生させた状態で、前記ソレノイド14に通電する(ONする)。この通電に基づいて、前記抑止側係合部材12が前記圧縮ばね13の弾力に抗して、前記回転側係合部材11に近付く方向に変位する。そして、前記抑止側係合部材12の先端面から軸方向に突出した前記各抑止側係合突起27、27と、前記回転側係合部材11の先端面から軸方向に突出した前記各回転側係合突起18、18とが、この回転側係合部材11の回転方向に関して重畳する。言い換えれば、前記各抑止側係合突起27、27の先端部が、円周方向に隣り合う前記各回転側係合突起18、18同士の間に進入し、これら各抑止側係合突起27、27の第二の傾斜辺28、28と、前記回転側係合部材11の回転側係合突起18、18の傾斜辺19、19とが、この回転側係合部材11の回転に伴って係合可能な状態となる。
【0016】
そこで、前記ソレノイド14に通電した状態のまま、前記電動式押圧装置4を構成する電動モータ6への通電を停止する。この電動モータ6の出力軸15の回転に基づいて、前記インナ、アウタ両パッド2、3を前記ロータ1の両側面に押圧して制動力を発生させる為の、前記推力発生機構8及び前記減速機7は、前述の様に、力の伝達に関して可逆性を有するものであるから、前記電動モータ6への通電を停止した状態では、前記制動力の反作用に基づいて前記回転側係合部材11が所定方向に回転する傾向になる。この状態では前記抑止側係合部材12に、前記ソレノイド14により、前記回転側係合部材11に向かう方向の力が付与されている為、この回転側係合部材11が少しだけ回転した状態で、図16の(B)に示す様に、各抑止側係合突起27、27の第二の傾斜辺28、28と、前記回転側係合部材11の回転側係合突起18、18の傾斜辺19、19とが係合する。
【0017】
この状態で、この回転側係合部材11がそれ以上、前記制動力を低下させる方向に回転する事はなくなる。前記各傾斜辺28、19同士が係合するまでに前記回転側係合部材11が回転する量(角度)は僅かであり、しかも、この回転側係合部材11と前記両パッド2、3との間には、大きな増力比(減速比)を有する、前記減速機7及び推力発生機構8が存在する。従って、前記各傾斜辺28、19同士が係合するまで、前記回転側係合部材11が回転する事に伴う、前記制動力の低下は、殆ど無視できる程度の僅かなものである。そこで、図16の(B)に示す様に、前記各傾斜辺28、19同士が係合した状態で、前記ソレノイド14への通電を停止する(OFFする)。
【0018】
この様にソレノイド14をOFFした状態で前記抑止側係合部材12は、前記圧縮ばね13の弾力に基づき、前記回転側係合部材11から退避する傾向になる。言い換えれば、特に抵抗がなければ、図16の(A)に示す様に、前記回転側係合部材11の先端面の回転側係合突起18、18と、前記抑止側係合部材12の先端面の抑止側係合突起27、27との係合が外れる傾向になる。但し、前記各傾斜辺28、19は、これら各係合突起18、27が外れる方向に変位する程、これら各係合突起18、27同士の係り代が大きくなる方向に傾斜している。又、前記圧縮ばね13の弾力や前記各傾斜辺28、19の傾斜角度θ等を適切に規制して、パーキングブレーキの作動時に、前記圧縮ばね13の弾力により、前記各係合突起18、27同士の係合が外れない様にしている。従って、前記ソレノイド14をOFFした後に於いても、前記各係合突起18、27同士を係合させたままの状態に維持できる。尚、前記各傾斜辺28、19同士が係合した状態で、前記各抑止側係合突起27、27と前記回転側係合突起18、18とには、制動力に基づく反力により、前記両係合部材11、12の回転方向の力が加わる。但し、この力に関しても、前記大きな増力比の分だけ小さくなる(摩擦を無視しても、前記反力をこの増力比で除した、小さな値になる)為、上記各係合突起27、18の強度を特に大きくしなくても、十分な耐久性を確保できる。
【0019】
上述の様に、前記各傾斜辺28、19同士を係合させた状態では、何れの部分にも通電する事なく、前記インナ、アウタ両パッド2、3を前記ロータ1の軸方向両側面に押し付けたままにできる為、バッテリー等の電源を消耗する事なく、制動力を確保できる。
パーキングブレーキの作動を解除する為には、前記電動モータ6に通電する事より前記回転側係合部材11を、制動力を高める方向に僅かに回転させる。この際、前記ソレノイド14はOFFのままとしておく。そして、前記各係合突起18、27同士の係り代が喪失する(これら各係合突起18、27の先端同士が軸方向に重畳しない状態に)まで、前記回転側係合部材11を回動させる。すると、前記抑止側係合部材12が、前記圧縮ばね13の弾力に基づいて前記回転側係合部材11から退避し、前記各係合突起18、28同士の係合が外れて、前記回転側係合部材11が回転可能となり、前記両パッド2、3を前記ロータ1の軸方向両側面に押し付けていた力が喪失する。
【0020】
又、仮に前記ソレノイド14に断線等の故障が発生した場合には、前記抑止側係合部材12が、前記圧縮ばね13の弾力により前記回転側係合部材11から退避する方向に変位し、前記各係合突起18、27同士が係合する事がなくなる。この為、前記ソレノイド14の故障により、前記電動式押圧装置4の作動が損なわれる事はなく、パーキングブレーキ用の部品である前記ソレノイド14の故障により、サービスブレーキの作動が損なわれる事はない。
この為、故障時に不用意にパーキング機構の為のロック装置が作動する事がなく、しかも、比較的簡単に構成できて、小型且つ低コストな電動式パーキング機構付ブレーキ装置を実現できる。
【0021】
但し、上述の様な先発明に係る電動式パーキング機構付ブレーキ装置の場合には、パーキングブレーキを作動させた状態で前記電動モータ6が故障すると、パーキングブレーキの作動を解除できなくなる。即ち、前述した通り、このパーキングブレーキの作動を解除する際には、僅かとは言え、前記電動モータ6により前記回転側係合部材11を、制動力を高める方向に回動させる必要がある。この為、前記電動モータ6が故障すると、前記パーキングブレーキの作動を解除する事ができなくなり、故障した車両を移動させる(例えば、信号待ちで停止した車両を路肩に寄せたり、或は駐車中に故障した車両をキャリアカーに積み込む)事ができなくなる。この様な問題は、前記先発明に係る電動式パーキング機構付ブレーキ装置に限らず、回転に伴ってブレーキパッド等の制動用摩擦部材をロータ等の制動用回転体に対して遠近動させる回転軸と、この回転軸と係脱自在で、係合時にこの回転軸との間で回転力の伝達を行う(自身が回転しない状態ではこの回転軸の回転を阻止する)回転阻止軸とを備えた電動式パーキング機構付ブレーキ装置であれば生じ得る。又、故障した部材が、制動力発生用の電動モータである場合に限らず、パーキングブレーキを解除する為の電動式アクチュエータである場合にも生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、パーキングブレーキの作動を解除する為に必要な何らかの部品の故障により、回転に伴ってブレーキパッド等の制動用摩擦部材をロータ等の制動用回転体に対して遠近動させる回転軸と、この回転軸と係脱自在で、係合時にこの回転軸との間で回転力の伝達を行う回転阻止軸との係合を外せなくなった場合にも、この回転軸の回転を可能にして、前記パーキングブレーキの作動を解除できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の電動式パーキング機構付ブレーキ装置は、制動用回転体と、支持部材と、制動用摩擦部材と、電動式押圧装置と、パーキングロック装置とを備える。
このうちの制動用回転体は、車輪と共に回転するもので、ディスクブレーキ装置を構成するロータ、或はドラムブレーキ装置を構成するドラムが相当する。
又、前記支持部材は、前記制動用回転体に隣接した状態で、回転しない部分に支持されたもので、フローティングキャリパ型ディスクブレーキ装置を構成するサポート、対向ピストン型ディスクブレーキ装置を構成するキャリパ、ドラムブレーキ装置を構成するバックプレートが、それぞれ相当する。
又、前記制動用摩擦材は、前記支持部材の一部に前記制動用回転体の一部に対向した状態で、この制動用回転体に対する遠近動を可能に支持されたもので、ディスクブレーキ装置を構成する一対のパッド、ドラムブレーキ装置を構成する一対のブレーキシューが、それぞれ相当する。
又、前記電動式押圧装置は、電動モータを駆動源とし、減速機を介して前記制動用摩擦部材を前記制動用回転体に近づく方向に移動させるものである。
更に、前記パーキングロック装置は、前記電動モータへの通電停止後にも、前記制動用摩擦部材を前記制動用回転体に押し付けたままの状態に維持する為のものである。
【0024】
特に、本発明の電動式パーキング機構付ブレーキ装置に於いては、前記パーキングロック装置は、回転軸と、回転阻止軸と、ホルダと、アクチュエータとを備える。
このうちの回転軸は、回転に伴って前記制動用摩擦部材を前記制動用回転体に対して遠近動させる。
又、前記回転阻止軸は、前記回転軸と係脱自在で、係合時にこの回転軸との間で回転力の伝達を行う。言い換えれば、この係合時に、この回転軸と共に回転する傾向になり、前記回転阻止軸自身が回転しない状態では、この回転軸の回転を阻止する。
又、前記ホルダは、前記回転阻止軸を保持した状態で前記支持部材の一部に支持されて回転しないもので、保持孔及びピン保持孔を備える。このうちの保持孔は、内周面が円筒形である。又、このピン保持孔は、中心軸がこの保持孔の中心軸と捩れの位置関係にあって、この保持孔の内周面に一部を露出させている。
又、前記アクチュエータは、前記ホルダに対しこの回転阻止軸を、例えば軸方向に変位させて、この回転阻止軸と前記回転軸とを係脱させる。
更に、前記回転阻止軸の一部外周面でこのピン保持孔の一部に対向する部分の円周方向の一部に、同じく残部に対して径方向に凹んだ回転阻止部を形成し、この回転阻止部と前記ピン保持孔に挿入した回り止めピンとを係脱可能としている。
そして、これら回転阻止部と回り止めピンとが係合した状態で、前記保持孔内での前記回転阻止軸の回転を阻止し、同じく係合が外れた状態で、この保持孔内でのこの回転阻止軸の回転を可能とする。
【0025】
上述の様な本発明の電動式パーキング機構付きブレーキ装置を実施するのに、より具体的には、前述した先発明と同様、請求項2に係る発明の様に、前記回転軸を、前記電動モータへの通電に伴って回転するものとする。
又、前記パーキングロック装置を、回転側係合部材と、抑止側係合部材と、弾性部材と、アクチュエータとを備えたものとする。
このうちの回転側係合部材は、前記回転軸の一部に固定されたもので、この回転軸と同心の回転側係合面を有する。
又、前記抑止側係合部材は、前記支持部材に前記ホルダを介して、前記回転側係合面に対し遠近動する方向の変位を可能に、前記回転軸を中心とする回転を阻止された状態で支持されたもので、先端部を前記回転側係合面と係脱可能な形状としている。
又、前記弾性部材は、前記抑止側係合部材に対して、前記回転側係合部材から遠ざける方向の弾力を付与する。
又、前記アクチュエータは、電動式のもので、通電に基づき前記抑止側係合部材に対して、この弾性部材の弾力に抗して前記回転側係合部材に近づく方向の力を付与する。
そして、前記回転側係合部材は、前記電動式押圧装置により前記制動用摩擦部材を前記制動用回転体に押し付けて制動力を生じさせた状態で、この制動力の反作用に基づいて所定方向に回転しようとするトルクが付与されるものとする。
更に、前記回転側係合面の円周方向複数箇所に回転側係合突起を形成し、これら各回転側係合突起の円周方向片側面は、前記抑止側係合部材の変位方向に対し傾斜した傾斜辺として、この傾斜辺を、前記弾性部材の弾力に基づく前記抑止側係合部材の移動方向に関して前方に向かう程、前記抑止側係合部材の先端部との係り代が大きくなる方向に傾斜させる。
【0026】
又、上述の様な本発明の電動式パーキング機構付ブレーキ装置に関して、前記回り止めピンと、前記ホルダに設けた前記ピン保持孔と、前記回転阻止部との係合状態として具体的には、例えば、請求項3〜7に記載した様な構造を採用できる。
このうちの請求項3に記載した構造は、前記回り止めピンを前記ピン保持孔に圧入固定する。そして、これら回り止めピンの外周面と前記ピン保持孔の内周面との締り嵌めに抗してこの回り止めピンをこのピン保持孔から引き抜く事により、この回り止めピンと前記回転阻止部との係合を外す。
【0027】
又、請求項4に記載した発明の場合には、前記回り止めピンを、基半部に設けた雄ねじ部と前記ピン保持孔の開口寄り部分に形成した雌ねじ部とを螺合させる事により、このピン保持孔内に保持する。そして、前記ホルダに対して前記回り止めピンを回転させ、前記雄ねじ部と雌ねじ部との係合を外し、この回り止めピンをこのピン保持孔から引き抜く事により、この回り止めピンと前記回転阻止部との係合を外す。
【0028】
又、請求項5に記載した発明の場合には、前記回り止めピンを前記ピン保持孔内に、回転可能に保持する。又、この回り止めピンのうちで、軸方向に関する位相が、前記ピン保持孔が前記保持孔の内周面に露出している部分に整合する部分の円周方向に関する一部に、径方向内方に凹んだ凹入部を設ける。そして、前記ホルダに対して前記回り止めピンを回転させ、この凹入部を前記回転阻止部に対向させる事により、これら回り止めピンと前記回転阻止部との係合を外す。
【0029】
又、請求項6に記載した発明の場合には、前記ピン保持孔及び前記回り止めピン及び前記回転阻止部を、前記保持孔及び前記回転阻止軸の径方向に関して反対側2箇所位置にそれぞれ設ける。
この様な請求項6に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項7に記載した発明の様に、前記保持孔から外れた位置で前記ホルダの一部に、前記一対のピン保持孔に直交する状態で形成されたねじ保持孔と、このねじ保持孔に挿入された、両端部に互いに逆向きの雄ねじ部を設けた雄ねじ部材とを備える。そして、前記一対の回り止めピンを前記一対のピン保持孔内に、前記一対の回転阻止部に対する遠近動を可能に保持する。更に、前記両回り止めピンの基部に設けられたねじ孔と、前記雄ねじ部材の両端部の雄ねじ部とを、それぞれ螺合させる。
【発明の効果】
【0030】
上述の様に構成する本発明の電動式パーキング機構付ブレーキ装置によれば、通常状態では、ホルダのピン保持孔内に挿入した回り止めピンと、回転阻止軸の一部外周面に形成した回転阻止部との係合により、この回転阻止軸の回転が阻止される。従って、この回転阻止軸と回転軸とを係合させた状態では、この回転軸の回転を阻止する事ができる。この為、電動モータによりこの回転軸を回転させて、制動用摩擦材を制動用回転部材に押し付けた状態で、この回転軸と前記回転阻止軸とを係合させれば、この回転軸の回転を阻止して、前記電動モータへの通電を停止した後の状態であっても、前記制動用摩擦材を前記制動用回転部材に押し付けたままの状態にできて、パーキングブレーキの作動状態を維持できる。
【0031】
これに対して、パーキングブレーキが作動した状態のまま、前記回転軸と前記回転阻止軸との係合を外せなくなった場合には、前記回り止めピンと前記回転阻止部との係合を外す。この状態では、前記ホルダ内で前記回転阻止軸が回転可能な状態となり、この回転阻止軸と係合した前記回転軸も回転可能となる。従って、パーキングブレーキの作動を解除する為に必要な何らかの部品の故障に伴って、前記回転軸と前記回転阻止軸との係合を外せなくなった場合にも、この回転軸の回転を可能にして、前記パーキングブレーキの作動を解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図で、左下部は図2のイ−イ断面を、右上部は同ロ−ロ断面を、それぞれ表している。
【図2】一部を省略して示す、図1のハ−ハ断面図。
【図3】図2の上方から見た図。
【図4】図1のニ部拡大図。
【図5】図4のホ−ホ断面図。
【図6】増力機構及び軸力センサを組み合わせたユニットを取り出して、キャリパに組み付けた状態で示す断面図(A)及び組み付ける以前の状態で示す断面図(B)。
【図7】本発明の実施の形態の第2例を示す、図5と同様の図。
【図8】同第3例を示す、図5と同様の図。
【図9】図8のヘ−ヘ断面図。
【図10】本発明の実施の形態の第4例を示す、図5と同様の図。
【図11】同第5例を示す、図5と同様の図。
【図12】先発明に係る構造の1例を示す模式図。
【図13】パーキングブレーキの為のロック装置部分を示す、図12のト部に相当する模式図。
【図14】より具体的な構造を示す、図13のチ部に相当する断面図。
【図15】図14のリーリ断面図。
【図16】回転側、抑止側両係合部材を、非係合状態(A)と係合状態(B)とで示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施の形態の第1例]
図1〜6は、請求項1〜3に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の場合、本発明をフローティングキャリパ型ディスクブレーキ装置に適用した場合に就いて示している。この為に本例の場合には、電動式押圧装置4aを構成する、電動モータ6aと、減速機7aと、推力発生装置8aとをキャリパ9aに組み付け、更にこのキャリパ9aを図示しないサポートに対し、ロータ1aの軸方向(図1の左右方向)の変位を可能に支持している。又、本例の場合には、前記推力発生装置8aを、送りねじ機構32とボール・ランプ機構33との組み合わせにより構成している。この様な推力発生装置8aの構造及び作用は、基本的には、特許文献5に記載された従来構造と同様である。但し、本発明を実施する場合、前記推力発生機構8aは、図示の様な送りねじ機構32とボール・ランプ機構33とを組み合わせた構造や、前述した先発明に係る構造の様なボールねじ機構に限らず、カム・ローラ機構等、回転方向の力を増力しつつ軸力に変換する、各種機械的な増力機構を採用できる。
【0034】
本例の場合には、前記電動モータ6aと、前記減速機7aと、パーキングロック装置5aとを、前記キャリパ9aに固定したケーシング34内に収納している。又、前記電動モータ6aの出力軸15aの先端部に回転側係合部材11aと減速小歯車16aとを、この出力軸15aの先端側から順に、互いに同心に外嵌固定し(スプライン係合させ)ている。このうちの回転側係合部材11aの先端面(図1、4の右端面)に、回転側係合突起18a、18aを形成している。これら各回転側係合突起18a、18aの形状に関しては、前述した先発明に係る構造の回転側係合部材11の回転側係合突起18、18(例えば図16参照)と同様である。又、前記減速機7aは、前記減速小歯車16aと、前記推力発生機構8aの中心部に設けた駆動スピンドル35の基端部に外嵌固定した減速大歯車36との間に、図2に示す様に複数個の歯車を配置する事により、前記出力軸15aの回転を、増力(トルクを増大)して、前記駆動スピンドル35に伝達し、この駆動スピンドル35を大きなトルクで回転駆動する様にしている。
【0035】
前記推力発生機構8aを構成する為に、前記駆動スピンドル35の軸方向中間部に外向フランジ状の鍔部37を形成し、この鍔部37のインナ側面をスラスト転がり軸受38により支承している。この構成により前記駆動スピンドル35を、インナ側に向いたスラスト荷重を支承しつつ、回転駆動自在としている。又、本例の場合には、前記鍔部37と前記スラスト転がり軸受38とを、軸力センサ39、及び、波板ばね、圧縮コイルばね、ゴム等、軸方向に関して弾性変形自在な弾性部材40と共に、ケースユニット41内に収納している。このケースユニット41は、インナ側ケース42とアウタ側ケース43とを組み合わせて成る。このケースユニット41は、これらインナ側、アウタ側両ケース42、43を、軸方向に関する若干の相対変位を可能に、且つ、非分離に組み合わせて成る。
【0036】
このうちのインナ側ケース42は、中心部に円形の通孔44を有する円輪形の底板部45の外周縁からアウタ側に向け、円筒状の固定側周壁部46を設けている。この固定側周壁部46の基半寄り部分(インナ寄り部分)の円周方向1箇所位置に、前記軸力センサ39の測定信号を取り出すコネクタ47の端部を露出させる為の取り出し孔48を形成している。又、前記固定側周壁部46の先半寄り部分(アウタ寄り部分)の円周方向複数箇所(例えば、円周方向等間隔の2〜3箇所位置)に、軸方向に長い係止孔49、49を形成している。尚、前記コネクタ47の端部を露出させる為の構造は、前記取り出し孔48に代えて、前記固定側周壁部46の先端縁(アウタ側端縁)に開口する切り欠きとしても良い。但し、この場合には、この切り欠きと前記各係止孔49、49との円周方向に関する位相をずらせる(円周方向に隣り合う係止孔49、49同士の間に切り欠きを設ける)。
【0037】
一方、前記アウタ側ケース43は、中心部に円形の通孔50を有する円輪形の底板部51の外周縁からインナ側に向け、円筒状の変位側周壁部52を設けている。そして、この変位側周壁部52の先端縁(インナ側端縁)の円周方向複数箇所位置に形成した各係合片53、53を前記各係止孔49、49に、軸方向の変位を可能に係合させて、前記ケースユニット41を構成している。このケースユニット41の軸方向寸法は、前記各係止孔49、49内で前記各係合片53、53が変位できる範囲で、伸縮可能になる。又、前記変位側周壁部52の円周方向複数箇所(例えば、円周方向等間隔の2〜3箇所位置)に、この変位側周壁部52の外周面から、前記ケースユニット41の径方向外方に突出する状態で、それぞれ係止片54、54を、突出形成している。
【0038】
この様なケースユニット41内に、前記駆動スピンドル35の中間部に設けた鍔部37と、前記軸力センサ39と、前記スラスト転がり軸受38と、前記弾性部材40とを組み込んで、図6に示す様な軸力測定ユニット55とする。そして、この軸力測定ユニット55を、図1に示す様に、前記キャリパ9aのインナ側部分に設けたシリンダ空間56の奥端部(インナ側端部)に組み付けている。このシリンダ空間56の奥端部のうちで前記コネクタ47の端部に整合する部分には、このシリンダ空間56の内径側及びアウタ側に開口する凹溝57を形成して、前記コネクタ47の端部との干渉防止を図っている。又、前記シリンダ空間56の中間部奥端寄り部分に係止凹部58を、前記凹溝57部分を除き、ほぼ全周に亙って形成している。
【0039】
前記軸力測定ユニット55は前記シリンダ空間56の奥端部に、前記弾性部材40を軸方向に、前記各係止片54、54を径方向内方に、それぞれ弾性的に圧縮しつつ押し込む。そして、押し込み完了後の状態で、前記弾性部材40の弾力により、前記各係止片54、54の先端縁を前記係止凹部58のアウタ側内側面に突き当てる。この状態で、前記アウタ側ケース43が前記シリンダ空間56から抜け出る方向(アウタ側)に変位する事はなくなり、前記軸力センサ39に、測定精度を確保する為に十分な予圧が付与された状態となる。そこで、前記キャリパ9aに形成した接続孔59を通じて前記シリンダ空間56内に、ハーネス60の端部に設けたプラグ61を差し込んで、このプラグ61と前記コネクタ47とを接続し、前記軸力センサ39の測定信号を取り出し可能とする。
【0040】
この様にして、前記シリンダ空間56の奥端部に組み付けた前記軸力測定ユニット55とインナパッド2aとの間に、前記送りねじ機構32と前記ボール・ランプ機構33とを組み合わせた、前記推力発生装置8aを設けている。このうちの送りねじ機構32は、前記駆動スピンドル35のアウタ側半部(図1の左半部)に設けた雄ねじ部62に、駆動側ロータ63の中心部に設けたねじ孔64を螺合させる事により構成している。又、前記ボール・ランプ機構33は、前記駆動側ロータ63と、被駆動側ロータ65と、複数個のボール66、66とを備える。これら両ロータ63、65の互いに対向する面の円周方向複数箇所(例えば3〜4箇所)には、それぞれが軸方向に見た形状が円弧形である、駆動側ランプ部67、67と被駆動側ランプ部68、68とを設けている。
【0041】
これら各ランプ部67、68の、軸方向に関する深さは、円周方向に関して漸次変化しているが、変化の方向は前記各駆動側ランプ部67、67と前記各被駆動側ランプ部68、68とで、互いに逆方向としている。従って、前記両ロータ63、65を相対回転させ、前記各ボール66、66を前記各ランプ部67、68に沿って転動させると、前記ロータ63、65同士の間隔が大きな力で拡縮される。又、このうちの被駆動側ロータ65と前記インナパッド2aとの間には、この被駆動側ロータ65と球面係合した間座69を挟持している。更に、この被駆動側ロータ65の一部外周縁から突出した係合突片70と前記凹溝57の一部とが、スリーブ71を介して係合してこの被駆動側ロータ65を前記駆動スピンドル35の先端部周囲に、回転を阻止した状態で、軸方向の変位を可能に支持している。
【0042】
制動を行う際には、前記電動モータ6aに通電して前記出力軸15aを回転させ、前記減速機7aを介して前記駆動スピンドル35を回転駆動させる。この回転駆動の初期段階では前記駆動側ロータ63が、付勢ばね72等の抵抗により回転せず、前記雄ねじ部62と前記ねじ孔64との螺合に基づいて、前記駆動スピンドル35の先端側に平行移動(前記ロータ1aに向けて、回転せずに移動)する。この平行移動により、前記ロータ1aの軸方向両側面と、前記インナパッド2a及びアウタパッド3aとの間の隙間が詰められる。この様な平行移動の間、前記各ボール66、66は、前記各ランプ部67、68のうちで最も深くなった側の端部に位置している。
【0043】
前記平行移動の結果、前記各部の隙間が喪失し、前記駆動側ロータ63がそれ以上前記ロータ1aに向けて移動する事に対する抵抗が大きくなると、この駆動側ロータ63が前記駆動スピンドル35と共に回転し、この駆動側ロータ63と前記被駆動側ロータ65とが相対回転する。すると、前記各ボール66、66が、転動しながら、前記各ランプ部67、68のうちで浅い側に移動し、前記両ロータ63、65同士の間隔が拡がる。これら各ランプ部67、68の傾斜角度は緩いので、これら両ロータ63、65同士の間隔を拡げる力は大きくなり、前記インナ、アウタ両パッド2a、3aを前記ロータ1aの両側面に、前記間座69及びキャリパ爪10aにより、大きな力で押し付けて、制動を行える。この様にして制動を行うべく、前記インナ、アウタ両パッド2a、3aを前記ロータ1aの両側面に押し付ける力の大きさの調節は、前記電動モータ6aへの通電量を調節するフィードフォワード制御により行える他、前記軸力センサ39の測定信号に基づくフィードバック制御によっても行える。
【0044】
上述の様にして前記インナ、アウタ両パッド2a、3aを前記ロータ1aの両側面に押し付けて制動力を生じさせた後、前記電動モータ6aの通電を停止した後にも制動力を維持する、パーキングブレーキ機構を実現する為に、前記ケーシング34内に前記出力軸15aの先端部に固定した回転側係合部材11aと対向する状態で、抑止側係合部材12aを設けて、前記パーキングロック機構5aを構成している。このパーキングロック機構5aの構成は、基本的には、前述した先発明に係る構造のパーキングロック機構5(図13〜14参照)と同様である。但し、本例の場合には、パーキングブレーキを作動させた状態で前記電動モータ6aに断線等の故障が発生し、前記回転側係合突起18a、18aと、抑止側係合部材12a側に設けた抑止側係合突起27a、27aとの係合を外せなくなっても、前記パーキングブレーキの解除を行える様にする為の、非常用解除機構を設けている。
【0045】
本例の場合も前記先発明に係る構造と同様に、互いに対向する、前記回転側、抑止側両係合部材11a、12aの先端面に、それぞれ複数個ずつの回転側、抑止側各係合突起18a、27aを、互いに同心に形成している。これら回転側、抑止側各係合突起18a、27aの形状は、前述した先発明に係る構造の回転側、抑止側各係合突起18、27(図16参照)の形状と同様である。そして、圧縮ばね13aにより前記抑止側係合部材12aに、前記回転側係合部材11aから退避する方向の弾力を付与すると共に、ソレノイド14aにより前記抑止側係合部材12aを、前記圧縮ばね13aの弾力に抗して、前記回転側係合部材11aに近づく方向に変位させられる様にしている。
【0046】
特に本例の場合には、前記ソレノイド14aと共に取付ボルト21aにより前記ケーシング34の内面に固定した、ホルダ20aの保持孔25aを、前記先発明に係る構造の様な平坦部26(図15参照)を持たない、単なる円孔と(内周面を円筒面と)している。これに対して、前記抑止側係合部材12aの頭部22aには、前述の実施の形態の第1例と同様の平坦部24aを設けている。尚、この頭部22aが、特許請求の範囲に記載した回転阻止軸に相当する。又、前記ホルダ20aの外径寄り部分にピン保持孔73を、このピン保持孔73の一部が前記保持孔25aの内周面の一部に露出する状態で形成している。即ち、これらピン保持孔73と保持孔25aとの中心軸を捩れの位置関係としている。又、このピン保持孔73の一端(図5の左端)部は、このピン保持孔73の中間部乃至他端部よりも内径が大きい大径部74としている。そして、このピン保持孔73内に、回り止めピン75を圧入固定している。この回り止めピン75は、このピン保持孔73の中間部乃至他端部に圧入可能な円杆部76と、前記大径部74に圧入可能な頭部77とを備える。又、この頭部77の端面中央部にねじ孔78を形成している。このねじ孔78は、前記回り止めピン75を前記ピン保持孔73から引き抜く為の引き抜き治具の雄ねじ部を螺合させる為のものである。
【0047】
上述の様な回り止めピン75の円杆部76のうちで、前記保持孔25aの内周面から露出した部分は、前記抑止側係合部材12aの頭部22aの平坦部24aと係合する。これにより、この抑止側係合部材12aが前記保持孔25a内で回転せずに、軸方向の変位のみ行える様にしている。但し、後述の様に、前記回り止めピン75を前記ピン保持孔73から抜き取った状態では、前記抑止側係合部材12aが前記保持孔25a内で回転して、仮に前記回転側、抑止側各係合突起18a、27a同士が互いに係合した状態であっても、前記回転側係合部材11aの回転を阻止できない状態となる。
【0048】
上述の様な構成を有する本例の電動式パーキング機構付ブレーキ装置も、何れの部分も故障していない、通常状態では、前述した先発明に係る構造の場合と(推力発生機構8a部分以外)ほぼ同様の作用により、前記インナ、アウタ両パッド2a、3aを前記ロータ1aの両側面に強く押し付けて制動を行う。又、パーキングブレーキの作動時には、前記ソレノイド14aへの通電後に前記電動モータ6aへの通電を停止する事により、前記回転側、抑止側各係合突起18a、27a同士を互いに係合させて、前記インナ、アウタ両パッド2a、3aを前記ロータ1aの両側面に強く押し付けたままの状態にする。この状態で、前記各係合突起18a、27aの傾斜辺19aと第二の傾斜辺28aとが、互いに当接した状態となる。
【0049】
更に本例の場合には、上述の様にしてパーキングブレーキを作動させた状態で、前記電動モータ6aに断線等の故障が発生した場合にも、このパーキングブレーキの作動を解除できる。即ち、前述した通り、このパーキングブレーキの作動を解除する際には、僅かとは言え、前記電動モータ6aにより前記回転側係合部材11aを、制動力を高める方向に回動させる必要がある。この為、前述した先発明に係る構造では、前記電動モータ6aが故障すると、前記パーキングブレーキの作動を解除する事ができなくなり、故障した車両を移動させる(例えば、信号待ちで停止した車両を路肩に寄せたり、或は駐車中に故障した車両をキャリアカーに積み込む)事が、非常に面倒になる。
【0050】
これに対して本例の構造の場合には、前記ホルダ20aから前記回り止めピン75を引き抜く事により、前記パーキングブレーキの作動を解除できる。即ち、前記ケーシング34の一部で前記回り止めピン75の頭部77に対向する部分に設けた透孔を塞いだ盲蓋を外し、この透孔を通じて前記ケース内に引き抜き治具の先端部を差し込んで、この先端部に形成した雄ねじ部と、前記頭部77に形成したねじ孔78とを螺合させる。そして、前記引き抜き治具により前記回り止めピン75を前記ピン保持孔73から引き抜いて、この回り止めピン75の円杆部76と、前記回転側係合部材11aの頭部22aの平坦部24aとの係合を外す。この状態では、前述の様に、前記回転側、抑止側各係合突起18a、27a同士が互いに係合していても、前記回転側係合部材11aの回転が可能になり、前記インナ、アウタ両パッド2a、3aが、ブレーキ反力に基づいて、前記ロータ1aの両側面から退避する方向に変位し、前記パーキングブレーキが解除される。
【0051】
[実施の形態の第2例]
図7は、請求項1、2、4に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の構造の場合には、回り止めピン75aを、基半部に設けた雄ねじ部79とピン保持孔73aの開口寄り部分に形成した雌ねじ部80とを螺合させる事により、このピン保持孔内73a内に保持している。通常状態、即ち、電動モータ6a(図1参照)が故障しておらず、抑止側係合部材12aの頭部22aが保持孔25a内で回転するのを阻止する場合には、前記回り止めピン75aの先半部に設けた円杆部81の外周面と、前記頭部22aの外周面に形成した平坦部24aとを係合させる。そして、前記抑止側係合部材12aが、ホルダ20aの保持孔25a内で回転する事を防止する。これに対して、駐車ブレーキを作動させた状態で前記電動モータ6aが故障した場合には、前記ホルダ20aに対して前記回り止めピン75aを回転させ、前記雄ねじ部79と前記雌ねじ部80との係合を外し、この回り止めピン75aを前記ピン保持孔73aから引き抜く。この結果、前記円杆部81と前記平坦部24aとの係合が外れて、パーキングブレーキが解除される。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0052】
[実施の形態の第3例]
図8〜9は、請求項1、2、5に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、回り止めピン75bをピン保持孔73b内に、回転可能に保持している。回転可能とする為の構造は、雄ねじ部と雌ねじ部とを螺合させる構造でも、或は軽い締り嵌め構造でも良い。何れの構造を採用するにしても、前記回り止めピン75bの先半部を、半円柱状としている。そして、この半円柱状部分を、前記ピン保持孔73bがホルダ20aの保持孔25aの内周面に露出している部分に位置させている。
【0053】
この様な本例の構造の場合、通常状態では、前記回り止めピン75bの先半部の半円柱部を、図8〜9に示す様に、ホルダ20aに形成した保持孔25aの内周面から径方向内方に突出させ、抑止側係合部材12aの頭部22aの外周面に形成した平坦部24aと係合させて、この抑止側係合部材12aが回転する事を防止する。これに対して、故障時には、前記回り止めピン75bの端面に形成した六角孔等の係止部に六角レンチ等の工具の端部を係合させる等により、前記回り止めピン75bを、自身の中心軸周りで180度回転させ、前記半円柱部を前記保持孔25aの内周面から突出しない状態とする。そして、この半円柱部と前記抑止側係合部材12aの平坦部24aとの係合を外し、パーキングブレーキを解除する。その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0054】
[実施の形態の第4例]
図10は、請求項1、2、4、6に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、抑止側係合部材12aの頭部22aの外周面の直径方向反対側2個所位置にそれぞれ平坦部24a、24aを互いに平行に形成して、前記頭部22aの端面形状を小判形としている。これに合わせて、この頭部22aを直径方向反対側から挟む位置に、それぞれピン保持孔73a、73a及び回り止めピン75a、75aを設置している。この様な本例の構造の場合には、通常状態での前記抑止側係合部材12aの回転阻止を、バランス良く行える。その他の部分の構造及び作用は、前述の図7に示した実施の形態の第2例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。尚、本例の様に、ピン保持孔及び回り止めピン及び平坦部径方向に関して反対側2箇所位置にそれぞれ設ける技術は、実施の形態の第1、3、4の構造に適用する事もできる。
【0055】
[実施の形態の第5例]
図11は、請求項1、2、6、7に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、保持孔25aから外れた位置でホルダ20aの一部にねじ保持孔82を、一対のピン保持孔73c、73cに直交する状態で形成している。そして、このねじ保持孔82に雄ねじ部材83を挿通している。この雄ねじ部材83は、両端部に互いに逆向きの雄ねじ部84a、84bを設けている。そして、一対の回り止めピン75c、75cを前記両ピン保持孔73c、73c内に、抑止側係合部材12aの頭部22aの外周面の直径方向反対側2個所位置にそれぞれ形成した一対の平坦部24a、24aに対する遠近動を可能に保持している。更に、前記両回り止めピン75c、75cの基部に設けられた、互いに逆向きのねじ孔85a、85bと、前記雄ねじ部材83の両端部の雄ねじ部84a、84bとを、それぞれ螺合させている。この様な本例の構造では、前記雄ねじ部材83を回転させる事により、前記両回り止めピン75c、75cの間隔を拡縮し、前記抑止側係合部材12aの回転を阻止してパーキングブレーキの作動を可能としたり、或はこの抑止側係合部材12aの回転を可能にしてパーキングブレーキの作動を解除したりできる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。尚、本例の構造を実施する場合で、前記両回り止めピン75c、75cの支持剛性を高くする為に、これら両回り止めピン75c、75cの両端部を、それぞれ雄ねじ部材により遠近動可能に支持する事もできる。更に、これら両端部に設けた一対の雄ねじ部材同士を、歯車伝達機構等の同期機構により、同期して回転させる事もできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上の説明は、パーキングブレーキだけでなくサービスブレーキも電動式とする構造に本発明を適用した場合に就いて述べた。但し、本発明の特徴は、電動モータを動力源としてパーキングブレーキを作動させ、且つ、電動モータへの通電を停止した後も制動力を維持したままの状態にできる構造の改良に関する。従って、サービスブレーキを油圧式に作動させ、パーキングブレーキのみを電動モータにより作動させる構造にも、本発明を適用できる。又、本発明は、ディスクブレーキ装置に限らず、ドラムブレーキ装置で実施する事もできる。
更に、回転軸と回転阻止軸とに関しても、必ずしも同心に配置する必要はない。例えば、回転軸の先端部に固定した傘歯車状の回転側係合突起群と、回転阻止軸の先端部に固定した傘歯車状の回転側係合突起群とを係脱自在とすれば、これら回転軸と回転阻止軸とを、互いに交差する方向に配置できる。
【符号の説明】
【0057】
1、1a ロータ
2、2a インナパッド
3、3a アウタパッド
4、4a 電動式押圧装置
5、5a パーキングロック装置
6、6a 電動モータ
7、7a 減速機
8、8a 推力発生機構
9、9a キャリパ
10、10a キャリパ爪
11、11a 回転側係合部材
12、12a 抑止側係合部材
13、13a 圧縮ばね
14、14a ソレノイド
15、15a 出力軸
16、16a 減速小歯車
17 回転側係合面
18、18a、18b 回転側係合突起
19、19a、19b 傾斜辺
20、20a ホルダ
21、21a 取付ボルト
22、22a 頭部
23 杆部
24、24a 平坦部
25、25a 保持孔
26 平坦部
27、27a 抑止側係合突起
28、28a 第二の傾斜辺
29 スライダ
30 ケース
31 ガイドスリーブ
32 送りねじ機構
33 ボール・ランプ機構
34 ケーシング
35 駆動スピンドル
36 減速大歯車
37 鍔部
38 スラスト転がり軸受
39 軸力センサ
40 弾性部材
41 ケースユニット
42 インナ側ケース
43 アウタ側ケース
44 通孔
45 底板部
46 固定側周壁部
47 コネクタ
48 取り出し孔
49 係止孔
50 通孔
51 底板部
52 変位側周壁
53 係合片
54 係止片
55 軸力測定ユニット
56 シリンダ空間
57 凹溝
58 係止凹部
59 接続孔
60 ハーネス
61 プラグ
62 雄ねじ部
63 駆動側ロータ
64 ねじ孔
65 被駆動側ロータ
66 ボール
67 駆動側ランプ部
68 被駆動側ランプ部
69 間座
70 係合突片
71 スリーブ
72 付勢ばね
73、73a、73b、73c ピン保持孔
74 大径部
75、75a、75b、75c 回り止めピン
76 円杆部
77 頭部
78 ねじ孔
79 雄ねじ部
80 雌ねじ部
81 円杆部
82 ねじ保持孔
83 雄ねじ部材
84a、84b 雄ねじ部
85a、85b ねじ孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2003−307240号公報
【特許文献2】特開2008−275053号公報
【特許文献3】特表2001−524647号公報
【特許文献4】特開平8−244580号公報
【特許文献5】特開2004−169729号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転する制動用回転体と、この制動用回転体に隣接した状態で、回転しない部分に支持された支持部材と、この支持部材の一部にこの制動用回転体の一部に対向した状態で、この制動用回転体に対する遠近動を可能に支持された制動用摩擦部材と、電動モータを駆動源とし、減速機を介してこの制動用摩擦部材を前記制動用回転体に近づく方向に移動させる電動式押圧装置と、前記電動モータへの通電停止後にも前記制動用摩擦部材を前記制動用回転体に押し付けたままの状態に維持する為のパーキングロック装置とを備えた電動式パーキング機構付ブレーキ装置に於いて、
前記パーキングロック装置は、回転に伴って前記制動用摩擦部材を前記制動用回転体に対して遠近動させる回転軸と、この回転軸と係脱自在で、係合時にこの回転軸との間で回転力の伝達を行う回転阻止軸と、この回転阻止軸を保持した状態で前記支持部材の一部に支持されて回転しないホルダと、このホルダに対しこの回転阻止軸を変位させてこの回転阻止軸と前記回転軸とを係脱させるアクチュエータとを備えたものであり、
前記ホルダは、内周面が円筒形である保持孔、及び、中心軸がこの保持孔の中心軸と捩れの位置関係にあってこの保持孔の内周面に一部を露出させたピン保持孔を備えたものであり、前記回転阻止軸の一部外周面でこのピン保持孔の一部に対向する部分の円周方向の一部に、同じく残部に対して径方向に凹んだ回転阻止部を形成しており、この回転阻止部と前記ピン保持孔に挿入した回り止めピンとを係脱可能とし、これら回転阻止部と回り止めピンとが係合した状態で、前記保持孔内での前記回転阻止軸の回転を阻止し、同じく係合が外れた状態で、この保持孔内でのこの回転阻止軸の回転を可能とする事を特徴とする電動式パーキング機構付ブレーキ装置。
【請求項2】
前記回転軸が、前記電動モータへの通電に伴って回転するものであり、前記パーキングロック装置が、前記回転軸の一部に固定された、この回転軸と同心の回転側係合面を有する回転側係合部材と、前記支持部材に前記ホルダを介して、この回転側係合面に対し遠近動する方向の変位を可能に、前記回転軸を中心とする回転を阻止された状態で支持された、先端部を前記回転側係合面と係脱可能な形状とした抑止側係合部材と、この抑止側係合部材に対して、前記回転側係合部材から遠ざける方向の弾力を付与する弾性部材と、通電に基づきこの抑止側係合部材に対して、この弾性部材の弾力に抗して前記回転側係合部材に近づく方向の力を付与する電動式のアクチュエータとを備えたものであり、
前記回転側係合部材は、前記電動式押圧装置により前記制動用摩擦部材を前記制動用回転体に押し付けて制動力を生じさせた状態で、この制動力の反作用に基づいて所定方向に回転しようとするトルクが付与されるものであり、
前記回転側係合面の円周方向複数箇所に回転側係合突起が形成されており、これら各回転側係合突起の円周方向片側面は、前記抑止側係合部材の変位方向に対し傾斜した傾斜辺であって、この傾斜辺は、前記弾性部材の弾力に基づく前記抑止側係合部材の移動方向に関して前方に向かう程、前記抑止側係合部材の先端部との係り代が大きくなる方向に傾斜しているものである、
請求項1に記載した電動式パーキング機構付ブレーキ装置。
【請求項3】
前記回り止めピンが前記ピン保持孔に圧入固定されており、これら回り止めピンの外周面と前記ピン保持孔の内周面との締り嵌めに抗してこの回り止めピンをこのピン保持孔から引き抜く事により、この回り止めピンと前記回転阻止部との係合を外す、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した電動式パーキング機構付ブレーキ装置。
【請求項4】
前記回り止めピンが、基半部に設けた雄ねじ部と前記ピン保持孔の開口寄り部分に形成した雌ねじ部とを螺合させる事により、このピン保持孔内に保持されており、前記ホルダに対して前記回り止めピンを回転させ、前記雄ねじ部と雌ねじ部との係合を外し、この回り止めピンをこのピン保持孔から引き抜く事により、この回り止めピンと前記回転阻止部との係合を外す、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した電動式パーキング機構付ブレーキ装置。
【請求項5】
前記回り止めピンが前記ピン保持孔内に、回転可能に保持されており、この回り止めピンのうちで、軸方向に関する位相が、前記ピン保持孔が前記保持孔の内周面に露出している部分に整合する部分の円周方向に関する一部に径方向内方に凹んだ凹入部が設けられており、前記ホルダに対して前記回り止めピンを回転させ、この凹入部を前記回転阻止部に対向させる事により、これら回り止めピンと前記回転阻止部との係合を外す、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した電動式パーキング機構付ブレーキ装置。
【請求項6】
前記ピン保持孔及び前記回り止めピン及び前記回転阻止部が、前記保持孔及び前記回転阻止軸の径方向に関して反対側2箇所位置にそれぞれ設けられている、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した電動式パーキング機構継ブレーキ装置。
【請求項7】
前記保持孔から外れた位置で前記ホルダの一部に、前記一対のピン保持孔に直交する状態で形成されたねじ保持孔と、このねじ保持孔に挿入された、両端部に互いに逆向きの雄ねじ部を設けた雄ねじ部材とを備え、前記一対の回り止めピンは前記一対のピン保持孔内に、前記一対の回転阻止部に対する遠近動を可能に保持されており、前記両回り止めピンの基部に設けられたねじ孔と、前記雄ねじ部材の両端部の雄ねじ部とがそれぞれ螺合している、請求項6に記載した電動式パーキング機構付ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−202696(P2011−202696A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68401(P2010−68401)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】