説明

電動機のクラッチ機構

【課題】電動機や出力軸の動作状態にかかわらずクラッチの切換え操作が支障なく行なえる電動機のクラッチ機構を提供する。
【解決手段】クラッチ機構9が接続される第1の位置とクラッチ機構9の接続が解除される第2の位置で各々保持されるクラッチギヤ25と、第1の位置でクラッチギヤ25と噛み合いが外れ、第2の位置でクラッチギヤ25と噛み合う解除用ギヤ26を備え、クラッチギヤ25及び解除用ギヤ26は互いに向きの異なるワンウェイ構造を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシャッター、ブラインド、カーテンなどの長尺物が巻き取られた回転ドラムを電動機により回転駆動する駆動部に設けられる電動機のクラッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッター、ブラインド、カーテンなどの長尺物が巻き取られた回転ドラムを電動機により回転駆動する電動巻取り装置が用いられている。電動巻取り装置の一例について説明すると、筒状の回転ドラム内に一端側に駆動源であるモータが設けられており、モータ軸(出力軸)に連繋するクラッチ機構を介して回転ドラムを回転駆動するようになっている。
【0003】
電動機が動作中に停電や故障などにより回転停止すると、例えばシャッターなどを手動により開放若しくは閉じる必要がある。この場合、シャッター自体の重量の他に電動機と出力軸とを連繋するクラッチ機構やブレーキ機構が作動して負荷として加わるため、作業性が悪くなる。このため、非常停止時に電動機と出力軸との駆動伝達を解除する様々な解除機構が設けられている。
【0004】
例えば、モータの回転停止時にケーブルを通じて摺動板を軸方向へスライドさせてクラッチ板とクラッチピンとの係合を解除することでモータ軸との連繋を遮断して回転ドラムを回転可能にすることで、手動操作を可能にしている。摺動板のスライド位置は、例えばハートカムを用いたスライド機構により切換え保持される(特許文献1参照)。
【0005】
また、例えば電動機の軸方向一方側に、複数段の遊星ギヤを軸方向に設けた減速クラッチ機構を通じて出力軸(回転ドラム)と連繋し、軸方向他方側に電動機の起動に応じて作動するブレーキ機構(電磁ブレーキ)が設けられている。電磁ブレーキを解除してから出力軸に加わるトルクが軽減するまで電動機を回転させ、所定トルク以下になったときに出力軸に連繋する複数段の遊星ギヤを軸方向にスライドさせて出力軸との噛み合いを外すことで、手動操作を可能にしている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−138779号公報
【特許文献2】特開平11−200743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した解除機構において、電動機が非常停止した際に一旦使用者がケーブルを引いてクラッチ機構の接続を解除して手動で作業を行なった後にクラッチを接続しないまま誤って再度電動機のスイッチをONにした場合や、電動機によりシャッターを上動又は下動させている間に誤ってケーブルを手動操作した場合に、相互に嵌め合うクラッチ溝とクラッチピンや互いに噛み合う遊星ギヤと内歯車がかみあわなかったり、一方のギヤが固定されたまま他方のギヤが回転したりするためクラッチの切換えがうまくいかずに部品が破損するおそれがある。
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、電動機や出力軸の動作状態にかかわらずクラッチの切換え操作が支障なく行なえる電動機のクラッチ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
電動機と減速機との間に、当該電動機の駆動が減速機を通じて出力軸へ伝達されるクラッチ機構を備えた電動機のクラッチ機構であって、モータ軸と平行に設けられたクラッチ軸上に設けられ、クラッチ機構が接続される第1の位置と減速機本体に設けられたスライド部材のスライド動作に連繋してスライドしクラッチ機構の接続が解除される第2の位置で各々保持されるクラッチギヤと、第1の位置でクラッチギヤと噛み合いが外れ、第2の位置でクラッチギヤと噛み合うようにスライド部材のスライド動作に連繋してモータ軸上をスライドする解除用ギヤを備え、クラッチギヤ及び解除用ギヤは互いに向きの異なるワンウェイ構造を具備していることを特徴とする。
【0009】
具体的には、クラッチギヤ及び解除用ギヤが互いに噛み合う第2の位置にあるときには、モータ軸の回転方向への回転をクラッチギヤのワンウェイ構造で逃がし、クラッチギヤの反対方向の回転を解除用ギヤに設けられたワンウェイ構造により逃がすことを特徴とする。
また、解除用ギヤはモータ軸に固定されたスリーブの外周に同軸状に嵌め込まれ、スリーブ端面に傾斜面を有する段付部に、対向する解除用ギヤの端面に傾斜面を有する段付部が常時押し当てられており、解除用ギヤはスリーブの回転により段付部どうしが噛み合ってモータ軸に連れ回りし、反対方向には傾斜面どうしが摺動することにより空転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述した電動機のクラッチ機構を用いれば、クラッチの接続が解除されておりクラッチギヤ及び解除用ギヤが互いに噛み合っている第2の位置にあるときは、モータ軸の回転方向への回転をクラッチギヤのワンウェイ構造で逃がし、クラッチギヤの反対方向の回転を解除用ギヤに設けられたワンウェイ構造により逃がす。
したがって、モータの動作状態や出力軸の動作状態にかかわらず互いに向きの異なるいずれかのワンウェイ構造でギヤどうしの噛み合い部分に作用する無理な応力を逃がすことができるので、部品が破損することなくクラッチの切換え操作が支障なく行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動機のクラッチ機構の最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下では、シャッター用の電動巻取り装置に設けられる電動機のクラッチ機構を例示して説明する。電動巻取り装置は一例としてチューブラタイプの装置が用いられる。すなわち、回転ドラムと同軸に設けられるハウジング部内に設けられるブレーキ付電動機と、回転ドラム内に電動機のクラッチ機構を一体に備えている。回転ドラム内の電動機を起動するとクラッチ機構を通じて出力軸へ駆動伝達することにより回転ドラムを回転駆動するようになっている。
【0012】
先ず、図14及び図15を参照して、シャッター用の電動巻取り装置の概略構成について説明する。図15において、回転ドラム1には、シャッター2が繰り出し可能に巻き取られる。回転ドラム1内の巻取り軸3には、アシストバネ4が巻き付けられている。アシストバネ4は、シャッター2が繰り出される際の負荷変動を軽減するように設けられている。巻取り軸3は、カップリング5を介して駆動側出力軸6と連結されている。
【0013】
図14において、駆動部7は回転ドラム1内に設けられ、軸端方向右端より図示しない電磁ブレーキ、電動機(モータ)8、クラッチ機構9、減速機10が軸方向にこの順に配置されている。電磁ブレーキ及び電動機8は回転ドラム1内に配置され、回転ドラム1は図示しない取付け枠などに回転可能に固定される。図15において、電磁ブレーキ及び電動機8には回転ドラム1の軸端側より商用電源が供給され、壁等に設けられるスイッチ11に配線接続されている。また、図14において、減速機10に設けられたワイヤー取付け板(スライド部材の一例)12にはクラッチ操作用のワイヤー13が連結されておりアウターチューブ14を挿通して引き出され、図15に示す操作棒15に連結されている。
【0014】
次に、駆動部7のより詳細な構成について、図1及び図5乃至図13を参照して説明する。図示しない電磁ブレーキは、電動機8の起動に連動してブレーキが解除されるようになっている。図1Bにおいて電動機8はダンパー16を介して減速機本体(ハウジング)17と一体に組み付けられている。減速機本体17内にはモータ軸18が挿入され、該モータ軸18に連繋してクラッチ機構9及び減速機10が収納されている。
【0015】
減速機本体17に収納される内歯車19の端面にクラッチ溝20が周方向に所定間隔で複数形成されている。クラッチ機構9には、クラッチピン21がクラッチ溝20に対向してワイヤー取付け板12のスライド動作に連繋して軸方向に挿抜可能に設けられている。また、図1Cにおいて、減速機本体17には回転支点22を中心に揺動する揺動アーム23が設けられている。この揺動アーム23の一端23aはクラッチピン21と、他端23bがワイヤー取付け板12と各々連繋している。クラッチピン21はダンパー16との間に設けられた第2の圧縮ばね35により内歯車19の端面に向けて常時付勢されている。クラッチが接続されるとクラッチピン21は内歯車19の端面に押し当てられてそのままクラッチ溝20に嵌り込むか、内歯車19の端面に押し当てられたまま該内歯車19が回転していずれかのクラッチ溝20へ嵌り込むようになっている。
また、ワイヤー取付け板12に連結するワイヤー13を手動操作することによりクラッチピン21がクラッチ溝20から抜け出たまま保持されるようになっている。
【0016】
ここでクラッチ機構9のより詳細な構成について説明する。図1Bにおいて、減速機本体17にはモータ軸18と平行にクラッチ軸24が設けられている。クラッチ軸24には、クラッチギヤ25及び押動部材32がスライド可能に支持されている。また、ベース部材29がクラッチ軸24の外周側に一体に組み付けられている。このベース部材29は、クラッチギヤ25及び押動部材32の移動をガイドするものである。クラッチギヤ25及び押動部材32は後述するようにワイヤー取付け板12のスライド動作に連繋してスライドし、クラッチピン21がクラッチ溝20に嵌り込んだ第1の位置とクラッチ溝20より抜け出た第2の位置とで保持される。
【0017】
また、モータ軸18にはクラッチの接続が解除される第2の位置でクラッチギヤ25と噛み合う解除用ギヤ26が設けられている。クラッチギヤ25はワイヤー取付け板12のスライド動作に連繋してクラッチ軸24に沿って第1の位置又は第2の位置へスライドして保持される。解除用ギヤ26は、第1の位置でクラッチギヤ25との噛み合いが外れており、第2の位置へ移動する際に若干回転しながらクラッチギヤ25と噛み合うようになっている。また、クラッチギヤ25が第2の位置、即ちワイヤー取付け板12を手動操作してクラッチピン21がクラッチ溝20から抜け出た状態で電動機8を起動すると、解除用ギヤ26を通じてクラッチギヤ25を回転させてクラッチギヤ25が第2の位置から第1の位置へスライドし、ワイヤー取付け板12がスライドすることによりクラッチピン21がクラッチ溝20に嵌り込む第1の位置へ移動して保持されるようになっている。解除用ギヤ26は、モータ軸18の周囲に設けられた第3の圧縮ばね48によって電動機8側へ付勢されている。
【0018】
次に、クラッチギヤ25の構成について図5乃至図8を参照してより具体的に説明する。
図8において、クラッチ軸24には、スリット27が軸方向に減速機側軸端部まで形成され当該軸端部に傾斜面が断続的に形成された第1の歯面部28を有するベース部材29が同軸状に嵌め込まれている
ベース部材29の外周にはスリット27に嵌り込む第1の突起30が内周面に突設されクラッチギヤ25に押接する端面に第2の歯面部31が形成された押動部材32が嵌め込まれている。また、押動部材32に近接して設けられ、スリット27に嵌り込み第2の歯面部31と押接する傾斜面を有する第2の突起33が内周面に突設されたクラッチギヤ25がスライド可能に嵌め込まれている。
【0019】
図5A乃至図5Dにおいて、クラッチギヤ25は減速機本体17との間に設けられた第1の圧縮ばね34により(図1B参照)常時押動部材32に向けて押圧されている。このとき、クラッチギヤ25は第2の突起33の端面が押動部材32の第2の歯面部31に押し当てられたまま第1の突起30(図8参照)がベース部材29のスリット27の端部に突き当てられて保持されている(第1の位置;クラッチ接続)。
【0020】
図1Bにおいて、ワイヤー取付け板12には、クラッチ軸24及びモータ軸18と交差する位置へ係止部材12aが突設されている。係止部材12aはクラッチギヤ25と連繋しており、ワイヤー取付け板12のスライド動作によって解除用ギヤ26と連繋するようになっている。ワイヤー13を引くと(図14参照)、ワイヤー取付け板12が減速機本体17側へスライドする。このとき、図6A乃至図6Dにおいて、ワイヤー取付け板12がスライドすると押動部材32及びクラッチギヤ25が第1の圧縮ばね34の付勢に抗して減速機本体17(図1C参照)側へスライドする。
【0021】
図6Aにおいて、ワイヤー取付け板12の係止部材12aに連繋する押動部材32の鍔部が軸方向へ押されると、押動部材32は第1の突起30がスリット27に嵌り込んだまま第2の歯面部31をスリット27に嵌り込んだ第2の突起33の端面に突き当ててクラッチギヤ25を押しながらベース部材29上を軸方向左側(減速機本体17側)へスライドする。そして、クラッチギヤ25の第2の突起33がスリット27より外れると第2の歯面部31の更なる押動により第2の突起33が第2の歯面部31の歯面にならってクラッチギヤ25が所定方向(図6Bの反時計周り方向)へ回転する。
【0022】
そして、図7A乃至図7Dにおいて、ワイヤー13の引っ張り力より第1の圧縮ばね34の付勢力が勝ると、第2の突起33がベース部材29の端面に形成された第1の歯面部28に押し当てられ、該第1の歯面部28の傾斜にしたがってさらに所定方向(図7Bの反時計周り方向)へ回転してクラッチギヤ25がベース部材29の端面部に保持される(第2の位置;クラッチ接続解除)。このとき、クラッチギヤ25と解除用ギヤ26は噛み合っている。クラッチギヤ25は、時計回り方向には回転を許容されるが、反対方向への回転はベース部材29の第1の歯面部28によって規制される(クラッチギヤ25のワンウェイ構造)。
【0023】
次に、解除用ギヤ26の構成について図9乃至図13を参照してより具体的に説明する。
図9Aにおいて、モータ軸18にはセンサマグネット46の近傍にスリーブ47が嵌め込まれており、平行ピンにより固定されている。センサマグネット46はモータ軸18に嵌め込まれて固定されている。解除用ギヤ26はスリーブ47の外周に同軸状に嵌め込まれる。解除用ギヤ26はモータ軸18に組み込まれた第3の圧縮ばね48により軸方向にスリーブ46側へ付勢されている(図9A参照)。尚、センサマグネット46は、スリーブ47を組み付ける際に軸方向の位置出しをするようにしてもよい。
【0024】
解除用ギヤ26の構成について説明する。図13Aにおいてスリーブ47の端面には傾斜面47aを有する段付部49が形成されている。また、図13Bにおいて、スリーブ47の端面対向する解除用ギヤ26の端面には傾斜面26aを有する段付部50が形成されている。解除用ギヤ26はスリーブ47に向かって付勢されているため、傾斜面26aは傾斜面47aに常時押し当てられている。スリーブ47は、モータ軸18の回転(例えば図9Bの反時計回り方向への回転)と共に回転し、解除用ギヤ26はスリーブ47と傾斜面26a、47aが押し当てられて若しくは段付部49、50の壁面49a、50aどうしが突き当たって連れ回りする。また、モータ軸18が上述と反対方向(図9Bの時計回り方向)へ回転すると傾斜面26a、47aどうしが斜面を滑り上がる動作を繰り返し解除用ギヤ26はフリーに回転する(解除用ギヤ26のワンウェイ構造)。
【0025】
図9A乃至図9Dにおいて、解除用ギヤ26は第3の圧縮ばね48によりスリーブ47に向けて押圧されている。このとき、クラッチギヤ25及び押動部材32もベース部材29のスリット27の端部に突き当てられて保持されている(図5A参照、第1の位置)。このとき、解除用ギヤ26はクラッチギヤ25との噛み合いが外れている。解除用ギヤ26はモータ軸18及びスリーブ47が例えば反時計回り方向へ回転すると連れ回りし、反対方向へは空転するように保持されている(図1B参照)。
【0026】
ワイヤー13を引くと(図14参照)、ワイヤー取付け板12が減速機本体17側へスライドする。このとき、図10A乃至図10Eにおいて、ワイヤー取付け板12がスライドすると、解除用ギヤ26はクラッチギヤ25と共に第3の圧縮ばね48の付勢に抗して減速機本体17(図2B参照)側へスライドする。
【0027】
図11A〜Eにおいて、解除用ギヤ26はスリーブ47上を第3の圧縮ばね48を押し縮めるようにスライドする。
【0028】
そして、図12A〜Eにおいて、クラッチギヤ25が第2の位置までスライドすると、解除用ギヤ26と噛み合う。このとき、クラッチギヤ25のワンウェイ構造は解除用ギヤ26の反時計回り方向の回転に連れ回りする方向(時計回り方向;図12B参照)のみに回転が許容されている。よって、モータ軸18が回転する際の解除用ギヤ26の反時計回り方向への回転をクラッチギヤ25の時計回り方向へのみ回転するワンウェイ構造で逃がし、クラッチギヤ25の反対方向(反時計周り方向)の回転を解除用ギヤ26に設けられた時計回り方向のみ回転するワンウェイ構造により逃がす。
【0029】
図1A−Cにおいて、操作者が操作棒15を持ってワイヤー13を引くと、ワイヤー取付け板12が第1の圧縮ばね34、第2の圧縮ばね35及び第3の圧縮ばね48の弾性力に抗して減速機本体17側に軸方向へ移動する。このとき、図2A−Cにおいて、揺動アーム23が回転支点22を中心に時計回り方向に回転するためクラッチピン21がクラッチ溝20から抜け出て、クラッチ機構9の連結が解除される(図2A−Cはワイヤー操作によりクラッチピン21が最大変位した状態を示す)。また、ワイヤー13の引っ張り力が軽減されると、第1の圧縮ばね34、第2の圧縮ばね35及び第3の圧縮ばね48の弾性力によりワイヤー取付け板12、クラッチギヤ25及び解除用ギヤ26が軸方向右側へ若干押し戻されて保持される。このとき、図3A−Cにおいて、クラッチギヤ25は、ベース部材29の端面に形成された第1の歯面部28に第2の突起33が噛み合って保持されている。
【0030】
図1B、Cにおいて、電動機8が回転駆動中にワイヤー13が操作されると、図3B、Cにおいてワイヤー取付け板12がスライドしてクラッチギヤ25及び解除用ギヤ26が互いに噛み合う第2の位置へ移動する。このとき、電動機8によるモータ軸18の反時計回り方向への回転をクラッチギヤ25のワンウェイ構造で逃がす。また、上記反対方向(時計回り方向)の回転を解除用ギヤ26に設けられたワンウェイ構造により逃がす。
よって、クラッチギヤ25及び解除用ギヤ26が互いに噛み合っている第2の位置にあるときは、電動機8の動作状態や出力軸の動作状態にかかわらず互いに向きの異なるいずれかのワンウェイ構造でギヤどうしの噛み合い部分に作用する無理な応力を逃がすことができるので、部品が破損することなくクラッチの切換え操作が行なえる。
【0031】
次に、減速機10の構成の一例である遊星歯車機構について説明する。図1Bにおいて、減速機本体17には、複数段の内歯車(第1の内歯車19及び第2の内歯車40)が軸方向に一体に組み付けられて収納されている。モータ軸18の先端に設けられた第1の太陽ギヤ36は、第1の遊星ギヤ37と噛み合っている。第1の遊星ギヤ37は第1の内歯車19と噛み合っている。第2の太陽ギヤ38は、第2の遊星ギヤ39と噛み合っている。第2の遊星ギヤ39は、第2の内歯車40と噛み合っている。
【0032】
第2の太陽ギヤ38が設けられたシャフト41には、第1のキャリヤ42が設けられている。第1のキャリヤ42には第1のピン43を中心に第1の遊星ギヤ37が設けられている。出力軸6が設けられた第2のキャリヤ44には、第2のピン45を中心に第2の遊星ギヤ39が設けられている。
【0033】
クラッチ機構9が接続された状態でモータ軸18を回転駆動すると、第1段の第1の太陽ギヤ36、第1の遊星ギヤ37、第1のキャリヤ42を通じてシャフト41(第2の太陽ギヤ38)が回転する。更に第2の太陽ギヤ38が回転すると第2の遊星ギヤ39、第2のキャリヤ44を通じて出力軸6が回転駆動される。
【0034】
尚、減速機10としては遊星歯車機構に替えて不思議遊星歯車機構を用いてもよい。不思議遊星歯車機構は、入力側(太陽ギヤ)から入力された動力を複数の遊星ピニオンや固定内歯車を通じて減速して可動内歯車より出力するようになっている。
また、上記実施例はシャッター用の電動巻取り装置について説明したが、カーテン、ブラインド、オーニングなどの他の長尺物の巻取り装置に適用しても良い。
【0035】
また、電動巻取り装置は、チューブラタイプ以外の装置構成であってもよい。即ち、図16において、ブレーキ付電動機8、クラッチ機構9、減速機10は、回転ドラム1の外部に設けられる駆動ユニット61内に収納されている。駆動ユニット61の出力軸6には駆動側スプロケット62が嵌め込まれている。回転ドラム1の巻取り軸3にはドラム側スプロケット63が嵌め込まれている。駆動側スプロケット62とドラム側スプロケット63間には無端状のチェーン64が架設されている。駆動ユニット61には電動機8を操作するスイッチ11が接続されており、クラッチ機構9を操作するワイヤー13及び操作棒15が接続されている。このように、駆動ユニット61が回転ドラム1の外部に設けられるとメンテナンスがし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】クラッチ機構の接続状態を示す軸方向正面図、矢印E−E方向断面図、矢印F−F方向断面図である。
【図2】クラッチ機構の接続解除動作中を示す軸方向正面図、矢印E−E方向断面図、矢印F−F方向断面図である。
【図3】クラッチ機構の接続解除状態を示す軸方向正面図、矢印E−E方向断面図、矢印F−F方向断面図である。
【図4】クラッチ機構の接続復帰動作中を示す軸方向正面図、矢印E−E方向断面図、矢印F−F方向断面図である。
【図5】クラッチ部品の接続状態を示す部分断面図、矢印J−J方向断面図、K部拡大図、及び斜視図である。
【図6】クラッチ部品の接続解除動作を示す部分断面図、矢印J−J方向断面図、K部拡大図、及び斜視図である。
【図7】クラッチ部品の接続解除状態を示す部分断面図、矢印J−J方向断面図、K部拡大図、及び斜視図である。
【図8】クラッチギヤのワンウェイ構造を示す分解斜視図である。
【図9】ワンウェイ部品のクラッチ接続状態を示す部分断面図、矢印J−J方向断面図、K部拡大図、及び斜視図である。
【図10】ワンウェイ部品のクラッチ接続解除状態を示す部分断面図、矢印J−J方向断面図、垂直方向断面図、K部拡大図、及び斜視図である。
【図11】ワンウェイ部品のクラッチ接続解除状態を示す部分断面図、矢印J−J方向断面図、垂直方向断面図、K部拡大図、及び斜視図である。
【図12】ワンウェイ部品のクラッチ接続解除状態を示す部分断面図、矢印J−J方向断面図、垂直方向断面図、K部拡大図、及び斜視図である。
【図13】解除用ギヤのワンウェイ構造を示す分解斜視図である。
【図14】クラッチ機構の断面図である。
【図15】電動巻取り装置の概略構成を示す説明図である。
【図16】電動巻取り装置の他の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 回転ドラム
2 シャッター
3 巻取り軸
4 アシストバネ
5 カップリング
6 出力軸
7 駆動部
8 電動機
9 クラッチ機構
10 減速機
11 スイッチ
12 ワイヤー取付け板
12a 係止部材
13 ワイヤー
14 アウターチューブ
15 操作棒
16 ダンパー
17 減速機本体
18 モータ軸
19 第1の内歯車
20 クラッチ溝
21 クラッチピン
22 回転支点
23 揺動アーム
24 クラッチ軸
25 クラッチギヤ
26 解除用ギヤ
26a、47a 傾斜面
27 スリット
28 第1の歯面部
29 ベース部材
30 第1の突起
31 第2の歯面部
32 押動部材
33 第2の突起
34 第1の圧縮ばね
35 第2の圧縮ばね
36 第1の太陽ギヤ
37 第1の遊星ギヤ
38 第2の太陽ギヤ
39 第2の遊星ギヤ
40 第2の内歯車
41 シャフト
42 第1のキャリヤ
43 第1のピン
44 第2のキャリヤ
45 第2のピン
46 センサマグネット
47 スリーブ
48 第3の圧縮ばね
49、50 段付部
49a、50a 壁面
61 駆動ユニット
62 駆動側スプロケット
63 ドラム側スプロケット
64 チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と減速機との間に、当該電動機の駆動が減速機を通じて出力軸へ伝達されるクラッチ機構を備えた電動機のクラッチ機構であって、
モータ軸と平行に設けられたクラッチ軸上に設けられ、クラッチ機構が接続される第1の位置と減速機本体に設けられたスライド部材のスライド動作に連繋してスライドしクラッチ機構の接続が解除される第2の位置で各々保持されるクラッチギヤと、第1の位置でクラッチギヤと噛み合いが外れ、第2の位置でクラッチギヤと噛み合うようにスライド部材のスライド動作に連繋してモータ軸上をスライドする解除用ギヤを備え、クラッチギヤ及び解除用ギヤは互いに向きの異なるワンウェイ構造を具備している電動機のクラッチ機構。
【請求項2】
クラッチギヤ及び解除用ギヤが互いに噛み合う第2の位置にあるときには、モータ軸の回転方向への回転をクラッチギヤのワンウェイ構造で逃がし、クラッチギヤの反対方向の回転を解除用ギヤに設けられたワンウェイ構造により逃がす請求項1記載の電動機のクラッチ機構。
【請求項3】
解除用ギヤはモータ軸に固定されたスリーブの外周に同軸状に嵌め込まれ、スリーブ端面に傾斜面を有する段付部に、対向する解除用ギヤの端面に傾斜面を有する段付部が常時押し当てられており、解除用ギヤはスリーブの回転により段付部どうしが噛み合ってモータ軸に連れ回りし、反対方向には傾斜面どうしが摺動することにより空転する請求項1記載の電動機のクラッチ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−211882(P2008−211882A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44910(P2007−44910)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】